以下、本実施形態を、図面を参照して説明する。なお、複数の図面中、同一または相当部分には同一符号を付している。
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る手元ブレーキ付きキャスター1を具備したスーツケースの外観斜視図、図2は図1で示す手元ブレーキ付きキャスター1のブレーキ操作ユニット2と、所要の2台のキャスター3にそれぞれ一体的に配設される複数台、例えば2台の制動ユニット4,4等の外観斜視図である。
図1,図2に示すように、手元ブレーキ付きキャスター1は、例えば1台のブレーキ操作ユニット2と、2台の制動ユニット4,4と、このブレーキ操作ユニット2を各制動ユニット4にそれぞれ接続する複数、例えば2本のブレーキワイヤー5,5を具備しており、図1に示すように鞄の一例であるスーツケース6に取り付けられる。
スーツケース6は、鞄本体の一例である剛性を有する角筒状のケースシェル7を有する。このケースシェル7は、有底角筒状のシェル本体部7aに、有底角筒状のシェル蓋部7bを開閉可能に設けている。
スーツケース6は、そのシェル本体部7aとシェル蓋部7bの下端部6bの各2隅角部(合計4隅角部)に、4個のキャスター3をそれぞれ配設する一方、シェル本体部7aの上端部6aに、把手9を配設し、例えばキャリーバッグ等に構成されている。
そして、スーツケース6は、その上部側面6cに、ブレーキ操作ユニット2を配設し、シェル蓋部7b側の例えば2台のキャスター3,3の内側に、図2に示すように2台の制動ユニット4をそれぞれ一体的に配設している。
ブレーキ操作ユニット2は、ブレーキ操作部であるレバースライダー2bを、図2,図3(b)で示すユニットベース2aの上部側にある制動解除操作位置と、図8で示す下部側の制動操作位置との間を上下方向(軸方向)に移動し得るように構成しており、これら2操作位置が移動の上限と下限を形成している。
すなわち、ブレーキ操作ユニット2は、可撓性を有する複数本、例えば2本のブレーキワイヤー5,5を介して2台の制動ユニット4,4に接続されている。これらブレーキワイヤー5,5は、例えばシェル蓋部7bの内面に沿って這うように配設され、途中、適宜筺所で図示省略の固定具によりシェル蓋部7bの内面に固定される。これらブレーキワイヤー5,5はシェル蓋部7bの図示省略のライナー(内張り)により被覆してもよい。
また、各ブレーキワイヤー5は、例えば弾性を有する金属製ワイヤーにより形成され、その外面を、図2等で示す可撓性を有する樹脂製等のアウターチューブ10によりそれぞれ被覆されている。
図2,図3(a)〜(c)に示すように、ブレーキ操作ユニット2は、偏平有底角筒状のユニットベース2aにブレーキワイヤー5を駆動する作動部を設けている。すなわち、この作動部はユニットベース2aの開口前面に、ブレーキ操作部の一例であるレバースライダー2bを図中上下方向(軸方向)に摺動可能に設けている。このレバースライダー2bは、その前面の図中上下方向中間部に、ユーザーの指等を係止させる、例えば円弧状の係止凹部2cを形成している。
図3(a),(b)にも示すようにユニットベース2aの開口前面に、平板状のベースカバー2fを設けて、ユニットベース2aの開口前面を閉じている。このベースカバー2fには、レバースライダー2bの前面を外部に露出させる縦長の透孔2gを開口させている。さらに、このベースカバー2fの前面には、ベースカバー2fよりも小さい図2で示す矩形平板状のフロントカバー2eがケースシェル7を介して取り付けられる。
すなわち、フロントカバー2eには、ベースカバー2fの透孔2gとほぼ同形同大かつ同位置に窓2dを開口してフロントカバー2e上にレバースライダー2bの前面部を前面に突出させている。また、フロントカバー2eは、ケースシェル7の外面側に配設され、ケースシェル7の内側に配置されるユニットベース2aのベースカバー2fに、ケースシェル7を介して複数、例えば4本の取付ねじS,S,…によるねじ止めにより固定される。なお、図3(a)中、符号tはフロントカバー2eの窓2dの上下端部と左右側面の開口周縁部に形成されたテーパ面である。
図3(b)に示すようにユニットベース2aは、その内底面ほぼ中央部上に、ほぼL字状のレバー11の支点11aを回動可能に配設すると共に、このレバー11の力点11bを有する一端部を、円弧状に回動させる円弧状のガイド溝11dを、ユニットベース2aの内底面上に形成している。
すなわち、レバー11は、その力点11bのある一端部に、レバー11の板厚方向(図3(b)では図面の表裏方向)へそれぞれ突出す上下一対の係止凸部11e,11eをそれぞれ一体に突設しており、この下係止凸部11eを円弧状のガイド溝11dに摺動可能に係合させる一方、上係止凸部11eを、図3(c)で示すレバースライダー2bの係止凹部2cの裏面側に形成された横溝2hに摺動可能に係合させる。
図3(b)に示すようにレバー11は、その力点11bから支点11aまでの長さlaを、支点11aから作用点11cまでの長さlbよりも所定長長く(la>lb)形成して、てこの原理により作用点11cに作用する力を、力点11bに加えられる力よりも増大させるようになっている。
そして、レバー11は作用点11cに、カム12を一体に形成している。カム12は、矩形枠状のヨーク13の矩形の係合孔13aの上端部内側に摺動可能に係止し、ヨーク13はユニットベース2aの内底面上に図中上下方向に摺動可能に配設されている。
ヨーク13は、その図中下端部の左右端部に、左右一対のブレーキワイヤー5,5を接続している。これらブレーキワイヤー5,5には、後述する制動ユニット4,4により図中下方へ引っ張る引張力が常時負荷される。
各ブレーキワイヤー5は、例えば樹脂製で可撓性を有するアウターチューブ10によりそれぞれ被覆されている。
図8(b)に示すようにヨーク13は、その係合孔13aの上端部の右端隅角部に、偏心凹部13bを一体に連成している。偏心凹部13bは、レバー11の支点11aから偏心した箇所に形成され、カム12の揺動により、ヨーク13が上死点に移動し、かつ左右一対のブレーキワイヤー5,5に図中下方へ引っ張る引張力が作用しているときに、カム12と係止位置を保持させる係止凹部である。
図4は、一対のブレーキワイヤー5,5にそれぞれ接続される制動可能のキャスター3,3の概略側面図である。この制動可能のキャスター3,3は、制動可能に構成されていない非制動のキャスター3,3と同様に、図2,図5,図6でも示すように、平面形状がほぼ楕円状のベース3aをスーツケース6のケースシェル7の外底面の各隅角部に、後述する複数の取付ねじa,a,…により固定されている。
すなわち、各キャスター3は、そのベース3aを、キャスター本体3bがベアリング3cを介して中空の旋回軸3d回りに旋回できるように、ケースシェル7の底部外面に取り付けられている。キャスター本体3bは、例えば2股状のフォーク3e,3eを有し、これら2股状のフォーク3e,3eは、車輪3fの車軸3gの両端を回転可能に支持している。車軸3gは旋回軸3dに対し偏心した位置にある。
車輪3fはリム3hの外周に、ゴム等の弾性を有するタイヤ3iを嵌合固定して構成されている。
そして、制動可能のキャスター3,3は、その中空の旋回軸3dの内部空間に、直棒状のブレーキピン14を軸方向に移動可能に同心状に挿通し、このブレーキピン14を制動ユニット4により図中下方へ押圧し、ブレーキピン14の円弧状下端部をタイヤ3iに所定圧で押圧することにより、車輪3fの回転をロックしブレーキを掛けるようになっている。
なお、上記非制動のキャスター3,3は、ブレーキピン14を具備していない点で制動可能のキャスター3,3と相違し、これ以外の構成は同一である。また、制動可能の2台のキャスター3,3は例えばシェル蓋部7bに配設され、2台の非制動のキャスター3,3はシェル本体部7aに配設される。
すなわち、図2,図5〜図7に示すように制動ユニット4は、スーツケース6のシェル蓋部7b側に取り付けられる制動可能のた左右一対のキャスター3,3に取り付けられ、非制動のキャスター3,3には取り付けられない。
制動ユニット4は、矩形平板状の底板4a上に、多角筒状のワイヤー端部収容部4bと横長四角筒状のばね収容部4cとを一体に連成してケース本体4dを形成している。
図6に示すように各底板4aは、キャスター3のベース3aの内底面上に立設された複数の取付ボス(図示省略)の図中上端のねじ孔内に、複数の取付ねじa,a,…をねじ込み結合させることにより、キャスター3のベース3aに固定される。
すなわち、各底板4aと、キャスター3のベース3aの上記複数の取付ボスの上端面との間に、スーツケース6のシェル蓋部7bの底部を介在させた状態で取付ねじa,a,…を、キャスター3のベース3a上の取付ボスのねじ孔内にねじ込み、結合させることにより、キャスター3をシェル蓋部7bの底部外面に装着する。この装着状態では、キャスター3の中空の旋回軸3dは底板4aの貫通孔を挿通してばね収容部4c内に延在する。
そして、制動ユニット4は、ばね収容部4cの外側面にて底板4a上に、複数の取付ボス4e,4e,…を一体に立設しており、これら複数の取付ボス4e,4e,…に複数の取付ねじb,b,…をねじ込み、結合させることにより、ばね収容部4cを底板4a上に固定すると共に、ばね収容部4cの図2中上端開口を閉じる蓋を固定している。
なお、シェル本体部7aの底部外面には、制動ユニット4を有しない非制動のキャスター3が装着される。すなわち、非制動のキャスター3も、制動可能のキャスター3と同様に、キャスター3のベース3aの複数の取付ボスの上端面上に、シェル本体部7aの底部を配置してから、これらベース3aの取付ボスのねじ孔内に取付ねじaをそれぞれねじ込み結合させることにより、シェル本体部7aの底部外面にキャスター3を装着している。これらキャスター3のスーツケース6への取付作業は、スーツケース製造工場等により行われる。
上記ワイヤー端部収容部4bは、その内部に、ブレーキワイヤー5の下端部と、その下端部に接続された係止用小球5aを収容し、ばね収容部4c内には、弾性保持手段の一例であるトーションばね15と、ブレーキピン14の上部を収容している。ブレーキピン14の上部は底板4aの貫通孔を貫通してばね収容部4c内に延在している。
トーションばね15は、弾性保持手段の一例であって、ばね収容部4c内に横架された支軸16の外周に巻回された2個の捩りコイルばね15a,15bを一体に結合させたダブルトーションばねであり、2個の捩りコイルばね15a,15bの内端同士をブレーキワイヤー5側へ延伸させ、これら延伸端同士を一体に連結させて、外方に突出した平面形状がU字状の平面U字状係止端部15cを形成している。この平面U字状係止端部15cの対向間隙にはブレーキワイヤー5の下端部を挿通し、その挿通端部に、平面U字状係止端部15cの間隙よりも直径が大きい係止用小球5aを接続し、この係止用小球5aにより平面U字状係止端部15cに係止させている。
また、トーションばね15は、2個の捩りコイルばね15a,15bの外端同士を、ブレーキワイヤー5と反対側のブレーキピン14側へ直状に延伸させ、側面形状がほぼU字状の側面U字状係止端部15d,15eをそれぞれ形成している。これら一対の側面U字状係止端部15d,15eは、ブレーキピン14の上端部に突設した左右一対の軸状の係止軸14a,14bに引っ掛けられて係止され、ブレーキピン14を常時、ロック解除側(図4,図5では図中上方)へ付勢する一方、ブレーキピン14のロック時に、そのロック状態を弾性的に保持するようになっている。なお、図5〜図7中、支軸16の外径は、図示の都合上、左右一対の捩りコイルばね15a,15bの内径よりも過大に小径に図示されているが、本実施形態では、一対の捩りコイルばね15a,15bを若干の遊びを持たせて外嵌させる太さに形成されている。
そして、図5〜図7に示すようにブレーキピン14は、その左右一対の係止軸14a,14bよりも下方において、旋回軸3dの上端部との間の外周に、コイル状の押しばね17を介在させている。
図7に示すように、押しばね17は、図中上部から下部へ向けて漸次拡径させた円錐台状のコイルばねにより形成され、ブレーキピン14の外周面に若干の遊びを持って外嵌されている。これにより、押しばね17は、ブレーキピン14の左右一対の係止軸14a,14bと、底板4aとの間に介装され、ブレーキピン14を常時図7中上方へ付勢することにより車輪3fのロックを解除する方向に付勢すると共に、ブレーキピン14が車輪3fのタイヤ3iへ押圧されて車輪3fをロックさせるときの押圧力が過大になるのを緩和調整するようになっている。
図8は、図3(a)〜(c)で示すブレーキ操作ユニット2をロック操作するときの状態を示す。
すなわち、図8(a)に示すようにユーザーがブレーキ操作ユニット2のレバースライダー2bの係止凹部2cに指を押し当て、図中下方へレバースライダー2bを押し下げて図中下方の制動操作位置に移動させると、図8(b)に示すようにレバースライダー2bの裏面側の横溝2h(図3(c)参照)に嵌合しているレバー11の作用点11cの係止凸部11eが円弧状のガイド溝11dを摺動して図中下方へ押し下げられる。
このために、レバー11が支点11a回りに回動するので、レバー11の作用点11cのカム12がヨーク13の係合孔13aの上端部に摺動して、ヨーク13を図中上方へ押し上げる力が作用する。これにより、ヨーク13に固着された左右一対のブレーキワイヤー5,5にも軸方向上方へ引き上げようとする力が作用する。
しかし、このとき、一対のブレーキワイヤー5,5には、制動ユニット4のトーションばね15により常時下方へ弾性的に引き下げる力が作用している。したがって、レバースライダー2bには、一対のブレーキワイヤー5,5を介してトーションばね15の引き下げ力が常時作用している。しかし、レバースライダー2bの押下げ力はレバー11のてこの作用により増大されるので、レバースライダー2bの小さい押下げ力により下方へ押し下げる操作を容易に行うことができる。
このために、ヨーク13と一対のブレーキワイヤー5,5はトーションばね15のばね力に抗して上方へ引き上げられる。
そして、このようにヨーク13は常時下方へ引き下げるばね力が作用しているうえに、偏心凹部13bに係合しているレバー11の作用点11cにあるカム12の中心が、レバー11の支点11aから図8(b)の図中やや右側へ偏心しているために、ヨーク13が上死点まで上昇したときに、カム12の係合位置が保持される。このために、一対のブレーキワイヤー5,5もこの引き上げ位置に保持される。
これにより、図7に示すように、一対のブレーキワイヤー5,5の下端部に固着された係止用小球5a,5aが図中上方へ引き上げられる。
このために、これら係止用小球5a,5aに係止されているトーションばね15の図7中左端の平面U字状係止端部15cがトーションばね15のばね力に抗して引き上げられる。
これにより、トーションばね15の図7中右端の左右一対の側面U字状係止端部15d,15e側では、ブレーキピン14に、押しばね17のばね力に抗して図7中、下方へ押し下げる押圧力が作用する。
このために、図4で示すようにブレーキピン14が図中下方へ押し下げられ、ブレーキピン14の円弧状先端部が制動可能の左右一対のキャスター3の車輪3fのタイヤ3iに押圧される。その結果、車輪3fがロックされ、その回転が強制的に阻止される。これにより、スーツケース6のシェル蓋部7b側の図1中、左右一対のキャスター3,3の車輪3f,3fがそれぞれロックされる。
このために、スーツケース6が置かれた床等の傾斜により移動したり、電車等の移動体の床の揺れ等により揺れ動くことを防止できる。また、左右一対のキャスター3,3の車輪3f,3fをほぼ同時にロックするので、従来のように車輪3fを1個ずつ順次ロックする場合のスーツケース6の回転の防止を図ることができる。
また、この車輪3f,3fのロック時には、そのロック状態を保持するようにブレーキピン14をトーションばね15により弾性的に保持するので、ロック時の車輪3f,3fの反力により、そのロックが解除されることを低減できる。また、ブレーキピン14の押下げ力を押しばね17により緩和するので、ブレーキピン14による急激なロックを緩和するダンパー効果を奏することでがきる。
一方、これら一対のキャスター3のロックを解除する場合は、ブレーキ操作ユニット2の下端へ押し下げられているレバースライダー2bを上方へ押し上げ、図3(a)で示すように上端の制動解除操作位置へ移動させる。すると、レバー11のカム12とヨーク13の偏心凹部13bとの係合が強制的に解除されるので、ヨーク13にはトーションばね15と押しばね17の弾性復原力により図7中下方へ引き下げる力が一対のブレーキワイヤー5,5を介して作用する。
これにより、ヨーク13が図中下方へ押し下げられ、一対のブレーキワイヤー5,5も下方へ押し下げられる。このために、トーションばね15と押しばね17の弾性復原力によりブレーキピン14が上方へ引き上げられ、キャスター3の車輪3fのタイヤ3iから引き離されてロックが解除される。このために、スーツケース6のシェル蓋部7b側の制動可能の左右一対のキャスター3,3が非制動のキャスター3,3と同様に走行可能になる。
したがって、この手元ブレーキ付きキャスター1によれば、ユーザーがブレーキ操作を行うブレーキ操作ユニット2をユーザーが操作し易いスーツケース6の手元側の上部に配設しているので、ロック操作とそのロック解除操作の両方の操作がし易い。
しかも、これらブレーキ操作ユニット2の操作は、単にレバースライダー2bを上下させる上下動(往復動)によりロック操作とロック解除操作を行うことができるので、ブレーキ操作ユニット2が例えば回転体を回転操作させる構成である場合に比して、ブレーキ操作ユニット2の幅寸法の縮小を図ることができる。
このために、ブレーキ操作ユニット2の小型軽量化を図ることができ、スーツケース6の側面等比較的狭い部分に配設することができる。なお、ブレーキ操作ユニット2をケースシェル7(スーツケース6)の上端部6aに設け、ブレーキ操作部の一例であるレバースライダー2bを、図1中、左右方向(横方向)に往復動可能に設けてもよい。
また、ブレーキ操作ユニット2と制動ユニット4はユニット化されているので、ブレーキワイヤー5を含めた部品数の減少を図ることができ、コスト低減を図ることができる。これにより、手元ブレーキ付きキャスター1全体を工場で生産し組み立てて、スーツケース製造工場へ出荷する際の生産、組立、出荷の容易性の向上を図ることができる。
また、スーツケース製造工場では、スーツケース6に、ブレーキ操作ユニット2を複数本の取付ねじS,S,…により簡単かつ迅速に取り付けることができる。すなわち、ブレーキ操作ユニット2は、そのユニットベース2aとフロントカバー2eとを、これらの間に、ケースシェル7の側面の一部を介在させた状態で、例えば4本の取付ねじS,S,…により共締めすることにより、ケースシェル7の側面に取り付けられるので、ケースシェル7にブレーキ操作ユニット2を簡単かつ迅速に取り付けることができる。
さらに、制動ユニット4も、その底板4aを、スーツケース6に取り付けた制動可能のキャスター3の内端部上に、取付ねじa,a,…、b,b,…の締付けによりスーツケース6に簡単かつ迅速に取り付けることができる。
また、ブレーキ操作ユニット2のレバースライダー2bの上下方向等の往復動の操作ストローク(行程)を適宜長くすることができるので、ブレーキピン14による車輪3fのロック操作位置とそのロック解除操作位置との間隔を大きくすることができる。このために、ブレーキワイヤー5の長さに製造上のばらつきが若干ある場合でも、ロック動作やそのロック解除動作に影響を与える虞を低減できる。
したがって、スーツケース6の製造工場の現場において、ブレーキワイヤー5の長さを調整して車輪3fのロック動作とそのロック解除動作を確認する工程をほぼ省略することができる。また、ブレーキワイヤー5の長さを調整するための調整ねじ等の調整部品の削減を図ることができる。これにより、スーツケース製造工場におけるスーツケース6の製造効率の向上を図ることができる。
そして、左右一対の制動ユニット4は、スーツケース6のシェル蓋部7b側の左右一対のキャスター3,3に設けられているので、万一、ブレーキ操作ユニット2のロック解除操作を忘れた場合でもスーツケース6を走行できる。
すなわち、把手9を持ってスーツケース6を走行させる場合は、スーツケース6が前方に傾斜した状態で走行するので、シェル蓋部7b側のロックされた左右一対のキャスター3,3が空中に浮き、シェル本体部7a側のロックできない非制動の左右一対のキャスター3,3が接地するので、走行することができる。
しかも、その走行を止めて、スーツケース6を床上にほぼ垂直に起立させた場合には、シェル蓋部7b側のロックされた左右一対のキャスター3,3も床上に接地するので、スーツケース6の走行を停止させ、静止させることができる。
このために、仮に床が傾斜している場合でもスーツケース6の意図しない走行を停止させ、静止させることができる。
そして、ブレーキワイヤー5およびアウターチューブ10は可撓性を有するので、これらをスーツケース6内に配線する場合の自由度を高めることができる。このために、ブレーキワイヤー5をスーツケース6内に配線する際の作業性と容易性の向上を図ることができる。
また、ブレーキワイヤー5により、ブレーキ操作ユニット2のブレーキ操作力を、制動ユニット4に伝動するので、従来のように金属製のロッドやプレートを用いたリンク機構により伝動する場合よりも、構成の簡単化と小型軽量化を図ることができる。
なお、上記実施形態ではスーツケース6のシェル蓋部7b側の左右一対の制動可能のキャスター3,3に制動ユニット4,4をそれぞれ設け、シェル本体部7a側に非制動のキャスター3,3を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、非制動のキャスター3,3と制動可能のキャスター3,3の配設箇所を逆にしてもよい。さらに、例えば4台のキャスター3,3,…に制動ユニット4をそれぞれ設け、4台のキャスター3,3,…をそれぞれロックできるように構成してもよい。
この場合、ブレーキワイヤー5,5も4本必要になるが、この場合は2本のブレーキワイヤー5,5の途中等に、別途のブレーキワイヤー5,5をそれぞれ接続してもよい。
(第2の実施形態)
図9は第2の実施形態に係るブレーキ操作ユニット102の正面図である。すなわち、図9は図3(b)で示す第1の実施形態に係るブレーキ操作ユニット2と同様に、図2で示すフロントカバー2eとベースカバー2fを取り外した後のブレーキ操作ユニット102の正面図を示している。
また、この図9は、図3(a)に示すように、ブレーキ操作部であるレバースライダー2bが図中下部の制動解除操作位置に手動操作されたときのブレーキ操作ユニットの正面図を示している。
このブレーキ操作ユニット102は、上記第1の実施形態のブレーキ操作ユニット2と同様に、偏平有底角筒状のユニットベース102aに、ブレーキワイヤー5を軸方向に駆動する作動部を設けている。
すなわち、この作動部は、ユニットベース102aの内底面中央部上に、ほぼ三角形板状のレバー103をレバー支軸105回りに回転可能に配設し、ユニットベース102aの内底面上に、円弧状のガイドリブ104を突設している。
レバー103は、その三角形板の図9中右下角部に、支点を形成するレバー支軸105を設ける一方、力点を形成する図中右上角部に、操作軸106を設け、さらに、作用点を形成する図中左下角部に、揺動軸107を設けている。
これら支軸105、操作軸16および揺動軸107の中心軸同士を結ぶ仮想軸は、いわばL字状を形成するので、上記第1の実施形態に係るL字状のレバー11とほぼ同様のてこの作用効果を奏する。すなわち、レバー103は、力点をなす操作軸106の中心から支点をなすレバー支軸105の中心までの長さLaを、支点の支軸105の中心から作用点をなす揺動軸107の中心までの長さLbよりも所定長長く(La>Lb)なるように形成して、この原理により、作用点に作用する力が力点に加えられる操作力よりも増大できる。
図10に示すようにレバー支軸105は、レバー103の板厚方向に貫通してユニットベース102aの内底面側へ延在する内端部105aを有し、この内端部105aをユニットベース102aの図示省略の取付孔に回転可能に取り付け、回動可能に構成されている。
操作軸106は、レバー103の板厚方向に貫通してユニットベース102aの内底面側へ延在する内端部106aを有する。この内端部106aはガイドリブ104上に沿って円弧状に回動する。
操作軸106は、その外端部106bを、図3(c)で示すブレーキ操作部であるレバースライダー2bの裏面側の横溝2h内に摺動可能に係合されており、レバースライダー2bの図3(c)中、上下方向の移動に応じて、円弧状のガイドリブ104に沿って円弧状に回動するように構成されている。
図10に示すように揺動軸107は、その軸方向中間部に、弾性保持手段の一例であるダブルトーションばね108の軸方向両端部108c,108dを取り付けている。
すなわち、ダブルトーションばね108は、その軸方向両端部に、2個一対の捩りコイルばね108a,108bを一体に結合し、これら一対の捩りコイルばね108a,108bの各外端部108c,108dを揺動軸107の軸方向両端部の図中右側面側から巻き付けて取り付けている。
また、これら捩りコイルばね108a,108bの内端部同士を図中上端において、水平方向外側方へそれぞれ延伸させてU字状に連結させることにより、U字状上端部108eを形成している。
図11に示すように上記レバー支軸105、揺動軸107およびダブルトーションばね108は角筒枠状のヨーク109内に配設されている。
ヨーク109は、その矩形の前面と背面とをほぼ全面的に開口させる矩形の開口部109aを形成し、この開口部109a内の上部には、図中前後方向中間にて、倒立L字状の仕切板109bを固着している。
仕切板109bは、ダブルトーションばね108の前後一対の捩りコイルばね108a,108b同士の対向間隙内に介在して、U字状上端部108eを挿入させる切込み109cを形成し、このU字状上端部108eをヨーク109の上端に配置している。
ヨーク109は、ユニットベース102a内に、図9中上下方向に摺動可能に収容されており、ヨーク109の下端部には、図中左右一対のブレーキワイヤー5,5が取り付けられている。
図9で示すブレーキ操作ユニット102では、操作軸106が制動解除(FREE)の位置に操作されているので、ヨーク109はユニットベース102a内の下部に移動している。このために、一対のブレーキワイヤー5,5は図9中下部へ押し下げられ、ブレーキ操作が解除(フリー)される状態にある。
これに対し図12は図2等で示すブレーキ操作部であるレバースライダー2bが図8(a)に示すように図中下方へ押し下げられて、操作軸106が制動操作位置に手動操作されたときの状態を示している。
すなわち、レバースライダー2bが制動操作位置に手動操作されると、図12に示すように操作軸106の内端部106aがガイドリブ104上に沿って円弧状に回動し、ガイドリブ104終端(図9では下端)まで移動する。
このために、レバー103がレバー支軸105を中心に回動し、揺動軸107がレバー支軸105よりも図中上方へ移動し、ダブルトーションばね108によりヨーク109全体を図中上方へ押し上げる。
これにより、ダブルトーションばね108のU字状上端部108eと、左右一対の軸方向両端部108c,108dとにより形成されるくの字状の開口角が弾性的に縮小する。このために、ヨーク109に接続されている左右一対のブレーキワイヤー5,5が図中上方へ引き上げられるように軸方向に移動し、この位置に保持される。
図13は第2の実施形態に係る制動ユニット110の斜視図、図14は、同,平面図である。これら図13,図14に示すように制動ユニット110は平板状の底板110a上に、角筒状のケース本体110bを配設している。ケース本体110bは、その外側面に一体に連成した複数の取付ボス110c,110c,…にねじbを挿通して底板110aにねじ込むことにより、ケース本体110bを取り付けると共に、ケース本体110bの上端開口を閉じる蓋(図示省略)を取り付けて閉じている。
また、底板110aは、これに形成した複数のねじ孔にねじaを締め付けることにより、キャスター3のベース3aの取付ボス(図示省略)に取り付けられている。
なお、このキャスター3は、上記図4で示すキャスター3と同様に制動可能に構成されているので、同一符号を付して、その重複した説明は省略している。
制動ユニット110は、ケース本体110b内に、上記ブレーキピン14の上部とこれを駆動する第1のリンク機構111を収容している。
ブレーキピン14は、上記第1の実施形態に係るブレーキピン14と同様に構成されており、ブレーキピン14の図中上端部(頭部)に突設された左右一対の係止軸14a,14bを具備している。
ケース本体110bは、このブレーキピン14の一対の係止軸14a,14bの外端部を図中上下方向に摺動可能に収容する左右一対の縦溝110d,110eを形成している。
ブレーキピン14は、その外周に、押しばね17を左右一対の係止軸14a,14bとケース本体110bの底板110aとの間において嵌合させている。
そして、図4に示すようにブレーキピン14は、その図中下端部を、キャスター3の中空旋回軸3dの内部を軸方向に挿通させて車輪3fのタイヤ3iの近傍まで延在させている。
図15(a),(b)にも示すように、第1のリンク機構111は平面形状がほぼL字状のLリンク111aを具備している。
Lリンク111aは、L字状のL溝111bをほぼ全長に亘って形成している。このL溝111bは、その一端部を、閉じた閉塞端部111cに形成する一方、その他端を開口端部111dに形成している。
開口端部111dは、L溝111bの幅を、ブレーキピン14の頭部(上端部)を遊びを持って十分に挿入し得る大きい開口に形成し、ブレーキピン14の頭部を上下動可能に支持する支持部111eを形成している。この支持部111eはブレーキピン14の左右一対の係止軸14a,14bを遊びを持って挿通させる左右一対の長孔111f,111gを形成している。これら長孔111f,111gに挿通された係止軸14a,14bは、その挿通先端部を図13,図14で示すケース本体110bの一対の摺動縦溝110d,110eに収容している。
Lリンク111aは、その直状の軸方向中間部にて幅方向に貫通するリンク支軸111hを固着している。このリンク支軸111hの軸方向両端部は、図13,図14に示すようにケース本体110bの左右一対の側壁110f,110gに形成した左右一対の支持孔110h,110i内に回転可能に挿入されて支持される。
図15(a),(b)で示すようにLリンク111aは、その閉塞端部111c側に、L溝111bの開口幅が開孔端部111dの開口幅よりも狭い小溝部111iを形成している。この小溝部111iには、ブレーキワイヤー5が直交方向から挿通され、この挿通端部には、小L溝111iの幅よりも大径の係止用小球5aを取り付けている。なお、図13,図14中、符号112は上記L溝111bの小溝部111iと、係止用小球5aとが係止可能に連結する連結部を収容する小ボックスであり、ケース本体110の一方の側壁(例えば110g)の外面に配設される。
また、図14に示すように、この小溝部111iと、係止用小球5aとの係止部であるブレーキワイヤー5の力点Sは、ブレーキピン14の作用点dに対し、図14中、上下方向で示すスーツケース6の厚さ方向で所要長偏心している。
したがって、図8(a)で示すように、ユーザの手動操作によりブレーキ操作部であるレバースライダー2bが、その移動下限である制動操作位置へ押し下げられると、図12に示すように操作軸106の下端である制動操作位置に移動する。
このために、レバー103がレバー支軸105を中心に所要角回動し、揺動軸107がレバー支軸105の図中上方へ移動し、ダブルトーションばね108が弾性的に捩れて、U字状上端部108eと、左右一対の軸方向両端部108c,108dとにより形成されるくの字状の開口角が弾性的に縮小し、ヨーク109が図中上方へ押し上げられ、その位置に保持される。
これにより、ヨーク109に接続されている左右一対のブレーキワイヤー5,5が図中上方へ引き上げられる。
このために、図15(b)で示すように制動ユニット110では、Lリンク111aの閉塞端部111cが図中上方へ引き上げられるので、Lリンク111aがリンク支軸111h回りに回動し、Lリンク111aの開口端部111d側が押えばね17のばね力に抗して収縮し、図中下方へ押し下げられる。
これにより、ブレーキピン14の先端部(図中下端部)がキャスター3の車輪3fのタイヤ3iに押圧され、車輪3fがロック(制動)される。
このロック時、ブレーキピン14にはダブルトーションばね108の弾性力が加えられているので、車輪3fのタイヤ3iからブレーキピン14に作用する反力により、ブレーキピン14が車輪3fのタイヤ3iから外れ、ロックが外れることを低減できる。
また、このロック時には、ブレーキピン14に加わる押圧力を押しばね17のばね力により緩和するダンパー効果があるので、車輪3fの急激なロックを低減し、スムースにロックすることができる。
一方、この車輪3fのロックを解除する場合は、図2,図3(a)に示すようにレバースライダー2bを、その移動上端の制動解除操作位置まで手動操作により押し上げる。
すると、図9に示すように操作軸106が円弧状のガイドリブ104上に沿って移動して、その上限端へ移動し、レバー103がレバー支軸105を中心にして回動し、揺動軸107がレバー支軸105のほぼ横の位置まで押し下げられる。
これにより、ダブルトーションばね108のU字状上端部108eと、左右一対の軸方向両端部108c,108dとにより形成されるくの字状の開口角が弾性的に拡大し、ダブルトーションばね108が上記制動操作時の位置よりも下方に押し下げられるので、ヨーク109が図中下方へ押し上げられ、左右一対のブレーキワイヤー5,5も図中下方へ押し上げられ、ブレーキワイヤー5,5の軸方向引き上げ力が無くなる。
このために、押しばね17がその弾性復原力により軸方向に伸長するので、Lリンク111aの開口部111d側が閉塞端部111c側よりも上方に押し上げられる。
これにより、左右一対のブレーキピン14,14が各車輪3fのタイヤ3iから上方へ引き上げられ、ブレーキピン14,14と各車輪3fのロックが解除される。
したがって、この第2の実施形態に係る手元ブレーキ付きキャスターによっても、上記第1の実施形態と同様に、ブレーキ操作部であるレバースライダー2bを制動操作位置に手動操作することにより、キャスター3の車輪3fを確実かつスムースにロックすることができる一方、レバースライダー2bを制動解除操作位置に手動操作することにより、車輪3fのロックを解除することができる。
このために、第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態とほぼ同様の効果を奏することができる。
また、第2の実施形態によれば、制動ユニット110に、りンク機構111を設けているが、このリンク機構111は主にLリンク111aより構成され、第1の実施形態に係るトーションばね15またはこれに相当するばね等を有しないので、その分、制動ユニット110の構成の簡単化と部品数の削減を図ることができる。
そして、第2の実施形態によれば、ブレーキ操作ユニット102の制動操作時に、キャスター3の車輪3fのタイヤ3iに押圧されてロックするブレーキピン14を、ダブルトーションばね108のばね力により、そのロック状態を弾性的に保持するので、車輪3fのタイヤ3iからブレーキピン14に作用する反力によりロックが解除されることを低減できる。
また、図14に示すように制動ユニット110のブレーキワイヤー5の力点Sはブレーキピン14の作用点dに対しスーツケース6の厚さ方向に偏心しているので、その分、ブレーキワイヤー5をスーツケース6の内壁面に近付けるように寄せて配線することができる。このために、スーツケース6内に収容物にブレーキワイヤー5が干渉する虞を低減できる。
(第3の実施形態)
図16は、第3の実施形態に係る制動ユニット110Aの平面図、図17(a)は、同,制動解除動作時の主要部の斜視図、図17(b)は、同,制動動作時の主要部の斜視図である。
第3の実施形態は、制動ユニット110Aの構成が上記第1,第2の実施形態の制動ユニット4,110と相違し、ブレーキ操作ユニットの構成は第1,第2の実施形態のブレーキ操作ユニット2,102とそれぞれ同一であるので、その説明は省略する。
第3の実施形態に係る制動ユニット110Aは上記図13〜図15(b)で示す第2の実施形態に係る平面L字状のLリンク111aを、図16〜図17(b)で示す縦Lリンク111Xに構成して、ブレーキワイヤー5を横引き可能に構成した点に主な相違点を有し、この相違点以外の構成は上記第2の実施形態の構成と同一であるので、その同一または相当部分には、同一符号を付している。
すなわち、縦Lリンク111Xは、第2の実施形態に係る平面L字状のLリンク111aの軸方向中間部の屈曲部から閉塞端部111cまでの部位を、小縦Lリンク部114に構成することにより、ブレーキワイヤー5を図中水平方向に引く、横引き可能に構成した点に特徴がある。
つまり、縦Lリンク111Xは開口端部111dからLリンク111aの直状部の終端部(図16,図17(a),(b)では右端部)に、平面矩形の連結板113を設け、この連結板113と直状部終端部とに、小縦Lリンク部114を直交するように一体に連結している。
小縦Lリンク部114は、閉塞端部111cをLリンク111aの図中直状部上面を含む水平面に対し、垂直方向下方へ屈曲する下向きのLリンクにより構成され、縦方向の縦L溝114aを形成している。
この縦L溝114aは、その開口幅を、ブレーキワイヤー5の外径よりも若干大きく、かつ係止用小球5aの球径よりも小さく形成している。この縦L溝114aの閉塞端部111c側にはその横方向外方からブレーキワイヤー5が厚さ方向に挿通し、この挿通先端部には係止用小球5aが接続されている。
したがって、上記ブレーキ操作ユニット102のレバースライダー2bが制動操作位置に手動操作されると、図17(b)に示すようにブレーキワイヤー5が横方向に引っ張られる。
このために、小縦Lリンク部114の図中下端部の閉塞端部111cが図中外側方へ揺動するので、縦Lリンク114Xがリンク支軸111h回りに回動し、支持部111eが図中下方へ押し下げられる。
これにより、支持部111eにより支持されたブレーキピン14が押しばね17のばね力に抗してキャスター3の車輪3fのタイヤ3iへ押圧され、車輪3fをロックして制動する。
この制動(ロック)時、ブレーキピン14には、ブレーキ操作ユニット102のダブルトーションばね108の押圧力が弾性的に加えられているので、ロック時、車輪3fのタイヤ3iからブレーキピン14に作用する反力によりブレーキピン14が車輪3fのタイヤ3iから外れてロックが解除されることを低減できる。
一方、この車輪3fのロックを解除する場合は、ブレーキ操作ユニット102のレバースライダー2bを制動解除操作位置に手動操作する。
すると、ブレーキ操作ユニット102のダブルトーションばね108の弾性復原力によりブレーキワイヤー5を制動解除位置に戻すので、ロック時に軸方向に収縮していた押しばね17がその弾性復原力により軸方向に伸長する。このために、支持部111eがリンク支軸111h回りに回動してブレーキピン14を図中上方へ押し上げる。
これにより、ブレーキピン14が車輪3fのタイヤ3iから上方へ引き離されるので、ブレーキピン14による車輪3fのロックが解除される。
したがって、この第3の実施形態によっても、上記第1,第2の実施形態と同様に、ブレーキ操作ユニット102のレバースライダー2bを単に制動操作位置に手動操作することにより車輪3fをブレーキピン14により確実かつスムースにロックする一方、レバースライダー2bを単に制動解除位置に手動操作することにより、車輪3fとブレーキピン14とのロックを解除することができる。
このために、第3の実施形態によっても、上記第2の実施形態とほぼ同様の作用効果を奏することができる。
すなわち、ブレーキワイヤー5の力点Sとブレーキピン14の作用点dをスーツケース6の厚さ方向で偏心させているので、その偏心の分だけ、各ブレーキワイヤー5をスーツケース6の内壁面に寄せて配線できる。このために、スーツケース6内の収容物にブレーキワイヤー5が干渉する虞を低減できる。
さらに、制動ユニット110Aのブレーキワイヤー5を横引き可能に構成したので、スーツケース6の大きさや形状、構造等に応じてブレーキ操作ユニット102をスーツケース6に配設する場合の配設箇所の自由度の拡大と、ブレーキワイヤー5を配線する場合の配線の自由度の拡大を図ることができる。
なお、リンク機構111のリンクは、上記Lリンク111aと縦Lリンク114Xに限定されるものではなく、例えば図18(a),(b)で示す平面形状がクランク形のクランク形リンク111Yに置換してもよい。
すなわち、リンク機構111のリンクの形状や構成を、スーツケース6の大きさや形状、構造等、必要に応じて種々変更してもよい。
また、上記第2,第3実施形態では、ブレーキ操作ユニット102に、ダブルトーションばね108を設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ダブルトーションばね108を他のばねに置換してもよく、一対のブレーキワイヤー5,5の軸方向の移動に弾性力を付与し得るばねであればよい。
以上、本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。