JP5714296B2 - 顔用温熱具 - Google Patents

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Description

本発明は、目元等の顔面の所望の部位に熱を付与する顔用温熱具に関する。
従来、皮膚のかさつき、小じわ、くま、くすみ等の改善のために、肌に化粧料(薬剤)を塗布した後シート状発熱体を顔面に装着し、あるいは化粧料が予め配合されているシート状発熱体を顔面に装着し、発熱体から生じる熱を利用して、化粧料の肌への浸透を促進させ技術が提案されている。
特許文献1には、美顔用化粧用材を効率良く吸収させ、皮膚を健やかに保つため、肌と接する粘着層に美願用化粧用材が配合される美顔用粘着性発熱シートが記載されている。また、本出願人は、先に、互いに分離可能なシート状化粧料とシート状発熱具とを備える温熱化粧具を提案した(特許文献2参照)。
特開平11−299817号公報 特開2008−200435号公報
ところで、この種の温熱化粧具には、使用者が薬剤の種類や量を選択・調整して施用したいという要求がある。しかし、特許文献1では、化粧用材(薬剤)は予め粘着層に配合されているので、その他の薬剤を自由に配合することはできず、粘着層には高い含有率で薬剤を配合するのは困難である。また、柔らかさなどの使用感が十分でない場合もある。
一方、特許文献2に記載の温熱化粧具によれば、シート状化粧料とシート状発熱具は分離可能であることから、別の肌当接用のシートに自由に薬剤を含浸させたものを準備して使用することができる。しかし、使用者が別のシートを準備した場合、シート全体に薬剤を均一に供給しにくい場合があり、また均一にしようとして不必要に大量の薬剤を供給してしまいがちである。また、特許文献2では、シート状化粧料とシート状発熱具とを一体化しないことで身体への追従性を向上させているが、シート状化粧料の種類によっては身体との密着性が悪く使用中に落下したり、別体では取り扱いが面倒な場合もある。
したがって本発明の課題は、前述した欠点を解消し得る顔用温熱具を提供することにある。
本発明は、扁平状の発熱体と、該発熱体の両面を含む全体を被覆する被覆材と、該被覆材の一面の外面に配された繊維材料を含む薬剤保持用シートとを備えており、前記被覆材と前記薬剤保持用シートとは、前記発熱体上において、多数の接合部にて接合されている顔用温熱具を提供することにより、前記課題を解決したものである。
本発明の顔用温熱具は、取り扱いが容易で、また、使用者が薬剤を自由に選択し、肌当接用のシートに薬剤を均一に供給可能とすることができる。また、本発明の顔用温熱具は、柔らかく、使用感を更に高めることができる。
図1は、本発明の実施形態の顔用温熱具を一対設けた顔用温熱マスクの肌当接面側の平面図である。 図2は、図1に示す顔用温熱マスクにおける右側の本実施形態の顔用温熱具の平面図である。 図3は、図2のL1−L1線断面図である。 図4は、図1に示す顔用温熱マスクの使用方法の説明図である。 図5は、図2の顔用温熱具の有する薬剤保持用シートの平面図である。 図6は、図3の要部拡大断面図である。 図7は、本発明の別の実施形態を示す断面図(図3相当図)である。
以下、本発明の顔用温熱具について、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態の顔用温熱具1は、図1に示すように、顔用温熱マスク10に配されて使用される。本実施形態の顔用温熱具1は、図2,図3に示すように、扁平状の発熱体2と、発熱体2の両面2a,2bを含む全体を被覆する被覆材3と、被覆材3の一面3aの外面に配された繊維材料を含む薬剤保持用シート4とを備えている。顔用温熱マスク10は、図1に示すように、中心線CLに対して略左右対称に形成されている。従って以下の説明では、左右対称な部分については、主に、右側について説明する。尚、図中に示す「Y」方向とは、中心線CLと平行な方向(縦方向)であり、「X」方向とは、中心線CLに垂直な方向(幅方向)である。
顔用温熱マスク10は、図1に示すように、一対の顔用温熱具1,1と、一対の顔用温熱具1A,1Aを使用者に固定するためのマスク本体11とを備えている(図4参照)。マスク本体11は、使用時に使用者の両目の周囲を被覆する横長の形状に形成されている。一対の顔用温熱具1,1それぞれは、図1に示すように、マスク本体11の肌当接面11aにおける使用者の両目それぞれの目元に対応する部分に固定されている。ここで、使用者の「目の周囲」とは、開眼状態における眼瞼裂の外側の領域をいい、眼窩の領域を含み且つそれよりも広い領域を指す。また、「使用者の目元に対応する部分」とは、図1に示すように、マスク本体11の肌当接面11aにおいて、使用者の目頭(図4中の符号Eaで示す部分)と目尻(図4中の符号Ebで示す部分)との間の使用者の目の下の部位(図4中の符号Aで示す部分)から使用者の目尻を含む部位(図4中の符号Bで示す部分)に亘る部分に対応する部分を示す。
本実施形態の顔用温熱具1は、平面視して、図2に示すように、丸みを帯びた略逆L字状の形状をしている。顔用温熱具1は、図2,図3に示すように、扁平状の発熱体2と、発熱体2の両面2a,2bを含む全体を被覆する被覆材3と、被覆材3の一面3aの外面に配された薬剤保持用シート4とを備えている。具体的には、図2,図3に示すように、本実施形態の顔用温熱具1は、肌対向側の一面2a及び非肌対向側の他面2bを有する扁平状の発熱体2と、発熱体2の全体を覆う大きさで、発熱体2を内部に収容する被覆材3と、肌対向側の一面3aの外面に配され、被覆材3と同形同大の薬剤保持用シート4とを備えている。
また、顔用温熱具1においては、図2,図3に示すように、一面3aを構成する被覆材3と薬剤保持用シート4とが、発熱体2上において、多数の接合部5,5・・・にて接合されている。多数の接合部5,5・・・は、本実施形態においては、熱エンボスにより形成されており、肌対向側の一面3aを構成する被覆材3と、薬剤保持用シート4とを熱エンボスによる多数の接合部5,5・・・にて互いに接合している。発熱体2上は、発熱体2の存在する領域を意味する。本実施形態の顔用温熱具1は、熱エンボスにより接合した肌対向側の一面3aを構成する被覆材3及び薬剤保持用シート4の複合シートと、非肌対向側の他面3bを構成する被覆材3とを熱エンボス等の熱融着や接着剤等の接合手段によって互いに接合して形成された環状に閉じた形状の環状接合部6を備えている。環状接合部6は、本実施形態においては、発熱体2の外縁と、被覆材3及び薬剤保持用シート4それぞれの外縁との間に形成されており、顔用温熱具1の外縁が環状接合部6の接合手段によって硬くなって使用者の肌を傷つけないように、顔用温熱具1には、外周全域に未接合部7が設けられている。
尚、顔用温熱マスク10の左側に配される顔用温熱具1は、丸みを帯びた略L字状の形状である以外、上述した右側の丸みを帯びた略逆L字状の形状の顔用温熱具1と同様である。
顔用温熱具1は、Y方向の最も長い長さが60〜100mmであり、Y方向の最も短い長さが20〜50mmである。また、顔用温熱具1は、X方向の最も長い長さが60〜90mmであり、X方向の最も短い長さが20〜40mmである。環状接合部6の接合幅は、0.5〜3mmである。未接合部7の間隔は、使用者の肌を傷つけない観点から、1mm以上であることが好ましく、見栄えの観点から、10mm以下であることが好ましい。
顔用温熱具1は、その厚みに関しては特に制限されないが、良好な使用感を得る観点からは薄いことが好ましく、0.3〜5mm、特に0.5〜2mmが好ましい。尚、ここでいう厚みは、顔用温熱具1における発熱体2の存在領域の無荷重下における厚みである。
顔用温熱具1を構成する発熱体2は、図3に示すように、扁平状であり、本実施形態における発熱体2は、その平面視において、図2に示すように、略逆L字状の形状である。図2に示すように、発熱体2における使用者の目に近い側に配される側部2cには、その外縁2c1が目の周囲に沿うように(図4参照)、中央部2eに括れ部21が形成されている。発熱体2の側部2cは、本実施形態においては、図2に示すように、略S字状のカーブを描くように形成されている。本実施形態の顔用温熱具1においては、図2,図4に示すように、顔用温熱具1の使用時に、側部2cの括れ部21が使用者の頬骨Cに対応する部位に配され、略逆L字状の形状の発熱体2が、図4に示すように、X方向に使用者の目頭Eaから目尻Ebに延在して使用者の目の下の部位Aを覆い、Y方向に使用者の目尻Ebを越えて延在して使用者の目尻を含む部位Bを覆うように配される。
尚、顔用温熱マスク10の左側に配される顔用温熱具1の有する発熱体2は、略L字状の形状である以外、上述した右側の略逆L字状の形状の発熱体2と同様である。
発熱体2は、Y方向の長さが50〜95mmであり、X方向の長さが40〜85mmである。Y方向の長さとは、Y方向の長さが最も長い位置での長さのことを意味し、X方向の長さとは、X方向の長さが最も長い位置での長さのことを意味する。発熱体2は、最も狭い位置での幅が、2〜10mmであり、最も広い位置での幅が、25〜50mmである。
発熱体2は、化学エネルギーを利用して発熱を起こさせる部位である。利用し得る化学エネルギーとしては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱、酸とアルカリの中和熱、無機塩類(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、ゼオライト等)の水和熱などが挙げられる。これらのうち、取り扱い性が良好であることや、発熱量が比較的大きいこと、携帯やコンパクト化が容易であることから、本実施形態においては、被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いている。
化学エネルギーを利用した発熱体2の具体的な構成は、化学エネルギーの種類に応じて適宜定められる。例えば被酸化性金属の酸化反応により生じる酸化熱を用いる場合には、金属粉(例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、銅等)、触媒となる塩類(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属の塩化物、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩化物等)、及び水を含有した組成物から構成される。この組成物には、更に保水剤(例えば、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、シリカ系多孔質物質、アルミナ、パルプ、木紛、吸水ポリマー等)、反応促進剤(例えば、活性炭、カーボンブラック、黒鉛等)等を含有させる。
発熱体2の上記構成成分において、触媒となる塩類に、例えば、塩化ナトリウムを用いる場合には、塩化ナトリウムの濃度と容量との制御により、発熱体2の発熱温度の最高温度に至るまでの時間(立ち上がり時間)を調整することができるため、触媒となる塩類には塩化ナトリウムを用いることが好ましい。具体的には、用いる塩化ナトリウムの容量を制御しても、発熱体2の最高温度自体を大きく変更することはできないが、用いる塩化ナトリウム溶液の濃度を、例えば、5〜10%の範囲よりも、高い濃度にした場合、又は低い濃度にした場合のいずれも、発熱体2の最高温度が低下し、立ち上がり時間を遅くすることができる。尚、塩化ナトリウム溶液の濃度が3%以下と低すぎる場合には、酸化反応が途中で止まり、最高温度が低化してしまう。また、用いる塩化ナトリウム溶液の濃度が同じ場合には、塩化ナトリウム溶液の容量を多くすれば立ち上がり時間を遅くし、容量を少なくすれば立ち上がり時間を早くすることができる。尚、塩化ナトリウム溶液の容量が少なすぎる場合には、発熱に必要な水分が途中でなくなってしまい、発熱体の最高温度が低下してしまう。このような特性を考慮して、塩化ナトリウムの濃度と容量とを制御すれば、立ち上がり時間をコントロールし、最高温度を維持する時間をコントロールすることができ、使用感を向上させることができる。
上記構成成分を含有する発熱体2は、本実施形態においては、発熱シートの形態となっている。発熱体2が、発熱シートの形態になっているため、取り扱いが容易で、使用中に被酸化性金属等の偏りを防止でき、均一な発熱を行うことができる。発熱シートとしては、湿式抄造により得られたシート状物や、発熱粉体を紙等で挟持してなる積層体等が挙げられる。そのような発熱シートは、例えば本出願人の先の出願に係る特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いて製造することができる。
顔用温熱具1を構成する被覆材3は、図3に示すように、発熱体2の肌対向側の一面2a及び非肌対向側の他面2bを含む全体を被覆している。被覆材3は、図3に示すように、肌対向側の一面3aを構成するシート材と、非肌対向側の他面3bを構成するシート材とから形成されている。肌対向側の一面3aを構成する被覆材3の形状と、非肌対向側の他面3bを構成する被覆材3の形状とは、顔用温熱具1の形状を形成するように、丸みを帯びた略逆L字状の形状である。
肌対向側の一面3aを構成する被覆材3は、後述する薬剤保持用シート4に保持された薬剤が発熱体2に浸透しないように、非透水性のシート材であることが好ましい。肌対向側の一面3aを構成する被覆材3が、非透水性のシート材であったとしても、非通気性である必要はなく、用途等に応じて、通気性を有していてもよい。その場合の通気度(JIS P8117B型で規定、以下、通気度というときにはこの方法の測定値を言う)としては、好ましくは5,000〜100,000sec/100cc、更に好ましくは10,000〜40,000sec/100ccから適宜選定される。肌対向側の一面3aを構成する被覆材3が、非透水性のシート材である場合には、メルトブローン不織布や、PET、PP、PE等の熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられる。
非肌対向側の他面3bを構成する被覆材3は、他面3bを透過してきた空気(酸素)が、被覆材3の内部に収容されている発熱体2を構成する被酸化性金属と反応し、それによって発熱が起こる観点から、通気性のシート材であることが好ましい。その場合の通気度(JIS P8117で規定)としては、好ましくは500〜60,000sec/100cc、更に好ましくは1500〜20,000sec/100ccから適宜選定される。通気性のシート材としては、各種不織布、紙、または熱可塑性樹脂からなるフィルムがあげられ、その中でもPET、PP、PE等の熱可塑性樹脂と無機フィラーとを溶融混練して押し出した溶融物をフィルム状に成形し、成形されたフィルムを一軸又は二軸延伸することで製造されフィルムが好ましく用いられる。
顔用温熱具1を構成する薬剤保持用シート4は、図3に示すように、肌対向側の一面3aを構成する被覆材3の外面に配されている。薬剤保持用シート4は、本実施形態においては、肌対向側の一面3a及び非肌対向側の他面3bを構成する被覆材3と同形同大である。薬剤保持用シート4は、使用時に使用者が供給する薬剤を保持するシートである。薬剤保持用シート4は、図3に示すように、本実施形態においては、肌対向側の一面3aを構成する被覆材3の外面に熱エンボスにより接合されている。
繊維材料を含む薬剤保持用シート4としては、柔軟性や伸縮性を有する材料からなる繊維シートを用いることが、使用者の肌に優しい観点から好ましい。そのような材料としては、紙や各種不織布を挙げることができ、各種不織布の具体例としては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、これらの不織布の複合材料、これらの不織布とフィルムとの複合材料などが挙げられる。後述する被覆材3を構成するシート材と薬剤保持用シート4との接合部5が、本実施形態のように、熱エンボスにより形成される場合には、特に、少量の熱融着性繊維をコットンに混綿したスパンレース不織布を用い、接合部5が接着剤により形成される場合には、特に、コットン100%のスパンレース不織布を用いることが、使用者の肌に優しい観点から好ましい。薬剤保持用シート4の坪量は、使用者が供給する薬剤の供給量や取り扱い性等を考慮して決定され、例えば20〜200g/m2、特に40〜120g/m2であることが好ましい。
薬剤保持用シート4は、その構成繊維の配向方向(図5参照)が、顔用温熱具1の幅の最も広い位置を通る仮想直線L(図2参照)の傾斜方向と略一致していることが好ましく、顔用温熱具1の有する発熱体2の幅の最も広い位置を通る仮想直線(本実施形態においては上記仮想直線Lと同じ位置)の傾斜方向と略一致していることが更に好ましい。このように配向した繊維からなる薬剤保持用シート4を有することにより、使用者により使用時に供給される薬剤を、構成繊維の配向方向、即ち、顔用温熱具1の幅の最も広い位置を通る仮想直線L(図2参照)の傾斜方向へ優先的に拡散させることができる。特に、顔用温熱具1の有する発熱体2の幅の最も広い位置を通る仮想直線の傾斜方向へ優先的に拡散させることにより、発熱体2から付与される熱が有効に薬剤保持用シート4に伝わり易くなる。
薬剤保持用シート4の構成繊維の配向方向は、構成繊維の始点と終点とを結んだベクトルが、顔用温熱具1の幅の最も広い位置を通る仮想直線L(発熱体2の幅の最も広い位置を通る仮想直線)の傾斜方向に略一致していればよく、始点と終点との間でねじれや絡み合い等が生じていることに起因して構成繊維の一部が薬剤保持用シート4の厚み方向に向いていても、構成繊維が全体として仮想直線L(発熱体2の幅の最も広い位置を通る仮想直線)の傾斜方向に向いていればよい。
薬剤保持用シート4の構成繊維の配向度は、好ましくは1.2以上、更に好ましくは1.4以上である。配向度の上限値は、特に制限されるものではなく高いほど好ましい。構成繊維の配向度は、KANZAKI社のMicrowave molecular orientation analyzer MOA-2001Aを用いて測定する。測定サンプルのサイズは縦方向(Y方向)に50mm、幅方向(X方向)に50mmの矩形とし、3点の平均値を配向度とする。測定サンプルのサイズがこの大きさに満たない場合は、複数の測定サンプルを互いに重ならないように配して測定する。
薬剤保持用シート4の構成繊維の配向度が大きいと、薬剤保持用シート4の外面から構成繊維の配向方向を視認し易くなり(シートの模様が見える)、仮想直線L(発熱体2の幅の最も広い位置を通る仮想直線)の傾斜方向と構成繊維の配向方向とを略同じ方向に合わせ易くなる。
顔用温熱具1においては、図2,図3に示すように、被覆材3の一面3aを構成するシート材と薬剤保持用シート4とが、発熱体2上において、多数の接合部5,5・・・にて接合されている。多数の接合部5,5・・・は、本実施形態においては、熱エンボスにより形成されている。多数の接合部5,5・・・の形状としては、特に制限はなく、例えば、点ドット、亀甲、格子、縦縞、横縞、編み目、絵柄等、またその組み合わせ模様等が挙げられる。多数の接合部5,5・・・の接合面積率は、顔用温熱具1の薬剤保持用シート4全体に対して、薬剤のシートへ含浸性及び薬液の保持を高める観点、並びに肌触り及びシートの柔らかさ観点から3〜50%であるのが好ましく、5〜30%であるのが更に好ましい。
ここで、「接合面積率」とは、一面3aを構成する被覆材3と薬剤保持用シート4とを接合する多数の接合部5,5・・・の総面積を求め、その総面積の薬剤保持用シート4全体の面積に対する比、又はその総面積の発熱体2の一面2a全体の面積に対する比を意味する。
本実施形態の顔用温熱具1においては、図2に示すように、多数の接合部5,5・・・のそれぞれ形状は、菱形状であり、多数の接合部5,5・・・は、規則的に散点状に配されている。具体的には、多数の接合部5,5・・・は、図2に示すように、等間隔を空けて多数の接合部5,5・・・からなる群50を形成し、隣り合う多数の接合部5,5・・・からなる群50同士を、前記間隔を空けて等間隔に配して、規則的に散点状に配されている。多数の接合部5,5・・・が配されて形成される群50は、X方向に平行な直線に対する傾斜角度αが、25〜75°であることが好ましく、30〜60°であることが更に好ましい。尚、多数の接合部5,5・・・が配されて形成される群50の傾斜方向は、顔用温熱具1の幅の最も広い位置を通る仮想直線Lと略一致することが更に好ましく、発熱体2の幅の最も広い位置を通る仮想直線の傾斜方向と略一致することが特に好ましい。本実施形態においては、接合部5の形状が、菱形状の点ドットであるが、円状、楕円状、その他の多角形状等からなる点ドットの場合も同様である。
顔用温熱具1の使用時に、使用者により薬剤保持用シート4に供給される薬剤としては、化粧水や美容液等が挙げられ、その剤状は流動性を有しているものであれば特に限定されず、水系の液体、乳化物、ゲル、クリーム、ワセリン等種々のものが挙げられる。薬剤の組成も特に限定されず、任意のものを使用できる。また薬剤は水性であっても良く、油性であっても良い。薬剤の含有成分としては、例えば、経皮吸収されて真皮引き締め、美白、血行促進、脂肪分解促進、抗炎症等の効果を発現する物質が挙げられる。具体的には、植物抽出物、動物抽出物、グアニジン誘導体、カテコールアミン類、アミノ酸、ビタミン類、ホルモン、有機酸、天然抽出のスフィンゴシン誘導体、合成セラミド類似体等が挙げられる。
上述したように、本実施形態の顔用温熱具1は、図1に示すように、顔用温熱マスク10を構成するマスク本体11の使用者の肌当接面11aに、且つ後述するマスク本体11の使用者の両目に対応する開口部12それぞれの開口周縁に沿うように配されて使用される。顔用温熱具1は、発熱体2の発熱に必要な酸素の供給を妨げず、熱伝達も妨げず、熱による接着手段の物性変化を防止する観点から、非肌対向側の他面3bを構成する被覆材3における未接合部7において、熱融着や接着剤等の公知の接合手段によってマスク本体11に固定されていることが好ましい。
マスク本体11は、略扁平状の1枚のシート材から形成されており、使用時に使用者の両目の周囲を覆うに足る形状及び大きさを有している。より具体的には、マスク本体11は、図1に示すように、Y方向において、顔の額(眉)から鼻尖にかけての部位を被覆し、X方向において、両頬間の部位を被覆するような大きさ及び形状をしている(図4参照)。使用者の両目それぞれに対応する部分は切り抜かれて開口部12,12が形成されており、また、使用者の鼻に対応する部分は切り欠かれて切り欠き部13が形成されている。扁平状のマスク本体11は、使用者の肌に当接する肌当接面11a及びそれと反対側に位置する非肌当接面11bを有している。
マスク本体11は、使用時に耳を掛ける一対の耳掛け部14,14を有している。耳掛け部14は、マスク本体11に配される顔用温熱具1よりもX方向外方に延出する延出部において、使用者の耳の位置に対応する部分を切り抜いて形成されている。耳掛け部14の切り抜いた開口部に耳を通すことにより、顔用温熱マスク10を、両目の周囲を覆うように、使用者の顔面に固定することができる。
マスク本体11は、使用者の顔面にフィットする観点から、X方向に伸長性を有していることが好ましい。ここで、マスク本体11が伸長性を有しているとは、マスク本体11全体が伸長性を有している場合、及びマスク本体11の一部(例えば、耳掛け部14)のみが伸長性を有している場合の両方の場合を含む。
マスク本体11の厚み(無荷重下における厚み)は、特に制限されないが、良好な使用感を得る観点からは薄いことが好ましく、0.3〜5mm、特に0.5〜2mmが好ましい。
マスク本体11を構成するシート材としては、通気性及び伸長性を有しているものが好ましく、特に通気性及び伸縮性を有しているものが好ましい。具体的には、例えばスパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、伸縮性を有するスパンボンド不織布等が挙げられる。マスク本体11を構成するシート材の坪量は、肌触りの観点から、50〜300g/m2であることが好ましい。
以上のように構成された本実施形態の顔用温熱具1を備える顔用温熱マスク10は、使用前は、一対の顔用温熱具1,1が互いに重なるように、中心線CLにて二つ折りされた状態で、酸素バリア性を有する包装材(図示せず)に包装されており、顔用温熱具1の発熱体2が空気中の酸素と接触しないようになっている。酸素バリア性の材料としては、例えば、その酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm3・mm/(m2・day・MPa)以下、特に2cm3・mm/(m2・day・MPa)以下のものが好ましい。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル等のフィルムや、そのようなフィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルムが挙げられる。
以上の構成を有する本実施形態の顔用温熱具1の使用方法について説明する。
顔用温熱具1を備える顔用温熱マスク10を、酸素バリア性を有する包装材から取りだし、二つ折りされた顔用温熱マスク10を開く。次に、使用者が、使用者自ら選んだ薬剤を、一対の顔用温熱具1,1それぞれの薬剤保持用シート4に供給する。次に、一対の顔用温熱具1,1それぞれの薬剤保持用シート4が、使用者の肌に当接するように、顔用温熱マスク10の耳掛け部14の切り抜いた開口部に耳を通すことにより、顔用温熱マスク10を、両目の周囲を覆うように、使用者の顔面に固定して使用する。
本実施形態の顔用温熱具1は、図1に示すように、マスク本体11の肌当接面11aにおける使用者の両目それぞれの目元に対応する部分であって、マスク本体11の開口部12それぞれの開口周縁に沿うように配されている。従って、耳掛け部14により、顔用温熱マスク10を、両目の周囲を覆うように、使用者の顔面に固定すると、顔用温熱具1の発熱体2は、図4に示すように、顔用温熱具1の使用時に、使用者の目の下の部位Aから使用者の目尻を含む部位Bに亘って配され、側部2cの括れ部21が、使用者の頬骨Cに対応する部位に配される。
以上の構成を有する本実施形態の顔用温熱具1の作用効果について説明する。
顔用温熱具1は、発熱体2の全体が被覆材3により覆われているので、取り扱いが容易で、また、顔用温熱具1は、使用者が薬剤を自由に選択でき、被覆材3の一面3aと薬剤保持用シート4とが、多数の接合部5,5・・・にて接合されているので、薬剤保持用シート4の全面に粗密勾配が発生しており、一部に薬剤が滞留することなく、すばやく薬剤保持用シート4全体に薬剤が拡散され、肌当接用のシートに薬剤を均一に供給可能とすることができる。上述したように、顔用温熱具1の使用時には、図4に示すように、薬剤が保持された薬剤保持用シート4が使用者の目元に当接されて使用されるので、発熱体2から付与される熱が薬剤保持用シート4に伝わって、薬剤保持用シート4に保持されている薬剤の有効成分が使用者の目元の皮膚に浸透し易くなる。また発生した熱が使用者の肌にも伝わって毛穴が開き、それによっても薬剤保持用シート4に保持されている薬剤の有効成分が使用者の肌に浸透し易くなる。
また、被覆材3の一面3aを構成するシート材と薬剤保持用シート4とが、図2に示すように、多数の接合部5,5・・・にて接合されているので、被覆材3の一面3aを構成するシート材と薬剤保持用シート4とを全面ベタで接合する場合に比べ、薬剤保持用シート4の柔らかさを損ない難く、使用感を更に高めることができる。この効果と共に、発熱体2上において、被覆材3の一面3aを構成するシート材と薬剤保持用シート4とが多数の接合部5,5・・・にて接合されているので、発熱体2から付与される熱が薬剤保持用シート4に伝わり易く、使用感を更に高めることができる。
また、顔用温熱具1は、多数の接合部5,5・・・が、熱エンボスにより形成されているので、図6に示すように、熱エンボスにより形成された接合部5の周囲の構成繊維の密度が高くなり、薬剤保持用シート4の面方向に構成繊維の疎な部分と密な部分が形成される。このように、薬剤保持用シート4の面方向に構成繊維の疎な部分と密な部分(接合部5の周囲の部分)が形成されるので、使用時に使用者が供給した薬剤を保持することができ、平面方向へ薬剤を拡散することができる。特に、熱エンボスにより形成された多数の接合部5,5・・・が、規則的に散点状に配されているので、使用者が供給した薬剤を各接合部5にて略均等に保持することができ、薬剤の有効成分が使用者の肌にバラツキなく浸透し易くなる。
本発明の顔用温熱具は、上述の実施形態の顔用温熱具に何ら制限されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、上述の実施形態の顔用温熱具1においては、図1に示すように、顔用温熱マスク10に配されて使用されるが、使用者の両目それぞれの目元に直接配して使用してもよい。直接配して使用する場合には、図7に示す顔用温熱具1Bのように、発熱体2の発熱に必要な酸素の供給を妨げず、熱伝達も妨げず、熱による接着手段の物性変化を防止する観点から、肌対向側の一面3aを構成する被覆材3における未接合部7に、粘着剤8を配することが好ましい。粘着剤8は、使用者の顔に固定する固定手段としての働きを有するものである。粘着剤8としては、例えば、ホットメルト接着剤を用いることができる。ホットメルト接着剤は、一般的に、粘着基剤、粘着付与樹脂及び軟化剤を構成成分として含有している。
また、上述の実施形態の顔用温熱具1においては、多数の接合部5,5・・・が、熱エンボスにより形成されているが、ホットメルト接着剤により形成されていてもよい。ホットメルト接着剤は、一般的に、粘着基剤、粘着付与樹脂及び軟化剤を構成成分として含有している。
また、上述の実施形態の顔用温熱具1においては、被覆材3の一面3aと薬剤保持用シート4とは、発熱体2上において、多数の接合部5,5・・・にて接合されているが、発熱体2の外方であって、且つ環状接合部6の外方においても、多数の接合部5,5・・・にて接合されていてもよい。
また、上述の実施形態の顔用温熱具1においては、図2に示すように、平面視した形状が、丸みを帯びた略逆L字状の形状であるが、この形状に限らない。同様に、上述の実施形態の顔用温熱具1を構成する発熱体2は、図2に示すように、平面視した形状が、略逆L字状の形状であるが、この形状に限らない。
また、上述の実施形態の顔用温熱具1においては、図2に示すように、肌対向側の一面3aを構成する被覆材3、非肌対向側の他面3bを構成する被覆材3、及び薬剤保持用シート4は、同形同大であるが、同形同大でなくてもよい。
また、上述の実施形態の顔用温熱具1は、図4に示すように、目元に配して使用する目元用温熱具であるが、本発明の顔用温熱具は目元用に限定されず、顔面の所望の部位に熱を付与するように適宜設計可能であり、例えば、小顔になるために顎に配して使用する顎用温熱具であってもよい。
また、顔用温熱具1は、両面を肌対向可能な面として、一面3aだけでなく、被覆材3の他面3bの外面にも薬剤保持用シート4を多数の接合部5にて接合してもよい。
1,1B 顔用温熱具
2 発熱体
2a 発熱体の肌対向側の一面,2b 発熱体の非肌対向側の他面
2c 発熱体の目に近い側に配される側部
2c1 外縁
2e 発熱体の中央部
21 括れ部
3 被覆材
3a 被覆材の肌対向側の一面
3b 被覆材の非肌対向側の他面
4 薬剤保持用シート
5 接合部
50 多数の接合部5,5・・・が配されて形成される群
6 環状接合部
7 未接合部
8 粘着剤
10 顔用温熱マスク
11 マスク本体
11a マスク本体の肌当接面,11b マスク本体の非肌当接面
12 開口部
13 切り欠き部
14 耳掛け部

Claims (4)

  1. 扁平状の発熱体と、該発熱体の両面を含む全体を被覆する被覆材と、該被覆材の一面の外面に配された繊維材料を含む薬剤保持用シートとを備えた顔用温熱具であって、
    前記被覆材と前記薬剤保持用シートとは、前記発熱体上において、多数の接合部にて接合されており、
    前記多数の接合部の接合面積率は、前記顔用温熱具の前記薬剤保持用シート全体に対して、3〜50%であり、
    多数の前記接合部は、熱エンボスにより形成されており、
    前記薬剤保持用シートは、熱融着性繊維をコットンに混綿したスパンレース不織布であり、
    前記薬剤保持用シートが外面に配された前記被覆材は、非透水性のシート材である顔用温熱具。
  2. 多数の前記接合部は、規則的に散点状に配されている請求項1に記載の顔用温熱具。
  3. 前記薬剤保持用シートは、その構成繊維の配向方向が、前記顔用温熱具の幅の最も広い位置を通る仮想直線の傾斜方向と略一致している請求項1又は2に記載の顔用温熱具。
  4. 請求項1〜の何れか1項に記載の一対の顔用温熱具と、使用時に使用者の両目の周囲を被覆する横長のマスク本体とを備え、一対の前記顔用温熱具それぞれが、前記マスク本体の肌当接面における前記使用者の両目それぞれの目元に対応する部分に配されている顔用温熱マスク。
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