実施の形態1.
以下、図面を参照して、実施の形態1における回転電機に使用されるコイルを製造するコイル製造装置、及びコイル製造方法について説明する。まず、実施の形態1におけるコイル製造装置とコイル製造方法について説明する前に、実施の形態1において製造されたコイルを使用する回転電機について説明する。なお、回転電機は、電動機または発電機の場合があり、実施の形態1において電動機と発電機のどちらであっても良い。また、回転電機は、例えば、永久磁石型回転電機または誘導型回転電機である。
図1は、実施の形態1における回転電機の固定子の斜視図である。図2は、図1のA−A線に沿った回転電機の回転子及び固定子鉄心の断面図である。図1及び図2を参照して、実施の形態1において製造されたコイルを使用する回転電機について説明する。
図2に示すとおり、実施の形態1における回転電機は、回転子1を有する。回転子1は、回転子鉄心2を有する。
図2において、シャフト3は、回転子鉄心2の中心に設けられた中心穴に挿入され、回転子1に対して固定される。回転子1の回転子鉄心2は、シャフト3と同心になるように構成される。回転子鉄心2は、例えば、シャフト3に沿った回転軸を有する円柱形状に構成される。
図1に示すとおり、回転電機は、固定子4を有する。固定子4は、図1に示すとおり、固定子鉄心5及び固定子巻線6を有する。固定子鉄心5は、図2に示すとおり、回転子1と離間して、かつ、回転子1を収容するように設けられる。固定子鉄心5は、図2に示すとおり、シャフト3と同心になるように構成される。固定子鉄心5は、例えば、シャフト3に沿った回転軸を有する円筒形状に構成される。また、固定子鉄心5は、例えば、電磁鋼板等を積層して形成される。
固定子鉄心5は、図1及び図2に示すとおり、コアバック51、複数のティース52、及び複数のスロット53を有する。コアバック51は、例えば円筒形状など、環状に構成される。
ティース52は、図2に示すとおり、コアバック51に設けられ、固定子鉄心5の径方向において径方向内側へと伸びるように設けられる。複数のティース52のそれぞれは、固定子鉄心5の周方向において、一定の間隔を空けて設けられる。また、固定子鉄心5は、隣り合うティース52間に、固定子鉄心5の周方向においてスロット53を有する。なお、図1は、固定子4に関し、毎極毎相のスロット数=2(4極24スロット)の場合を示している。
なお、図1では、簡略化のため、回転子1とシャフト3の図示を省略している。同様に、図2では、簡略化のため、固定子巻線6の図示を省略している。
図3は、実施の形態1における固定子巻線を構成するコイルの正面図である。図3において、コイル61は、導体線60の複数周回分の束として形成される。
コイル61は、図3に示すとおり、全体として六角形形状である。コイル61を形成する導体線60は、図3に示すとおり、コイル61の六角形の頂点部分で屈曲させられ、塑性変形させられている。以下において、導体線60を屈曲させて塑性変形させ、屈曲点を形成することを、導体線60を折り曲げるという。
コイル61は、固定子鉄心5のスロット53内に1もしくは複数個配置される。コイル61は、例えば、絶縁紙などで周囲を保護されてスロット53に挿入される。このとき、コイル61は、図3に示すスロット挿入部SIの部分が、固定子鉄心5のスロット53内に挿入される。またこのとき、コイル61は、図3に示すコイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の部分が、固定子鉄心5のスロット53の外部へと突出させられる。
固定子巻線6は、複数のコイル61を固定子鉄心5のスロット53内に配置した後、複数のコイル61の端末同士を溶接などの方法で接続することにより、形成される。このように、回転電機の固定子4は、以上において説明した固定子鉄心5及び固定子巻線6より構成される。なお、図1において、固定子巻線6は、同相のコイル61が2スロットごとに組み込まれて形成されている。
次に、実施の形態1におけるコイル製造装置について説明する。まず、実施の形態1におけるコイル製造装置を構成する可動式導体線折り曲げ装置について説明する。図4は、実施の形態1における可動式導体線折り曲げ装置の斜視図である。図4に示すとおり、実施の形態1における可動式導体線折り曲げ装置71は、回転型駆動装置710と、並進型駆動装置720と、可動ピン730とから構成される。なお、図4においては、可動式導体線折り曲げ装置71だけでなく、導体線60も図示している。導体線折り曲げ手段とは、実施の形態1において、可動式導体線折り曲げ装置71のことである。
回転型駆動装置710は、図4に示す鉛直方向における上部に、回転部711を有する。回転部711は、回転型駆動装置710の駆動により、水平面内において、図4に示す回転部711の回転方向に回転する。回転型駆動装置710は、回転運動を出力して回転部711を回転させるサーボモータである。なお、回転型駆動装置710は、回転運動を出力して回転部711を回転させるものであれば、シリンダーやソレノイド等であっても良い。
並進型駆動装置720は、図4に示すとおり、直方体形状に構成される。また、並進型駆動装置720は、図4に示す鉛直方向における上部に、可動部721を有する。
並進型駆動装置720は、一端側が回転型駆動装置710の回転部711の上部に固定される。並進型駆動装置720は、水平面内において、回転部711から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びるように設けられる。並進型駆動装置720は、他端側が、回転型駆動装置710よりも図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと突出するように設けられる。
可動部721は、並進型駆動装置720の駆動により、水平面内において、図4に示す可動部721の可動方向に並進移動する。並進型駆動装置720は、直線運動を出力して可動部721を並進移動させるリニアサーボモータである。なお、並進型駆動装置720は、直線運動を出力して可動部721を並進移動させるものであれば、シリンダーやソレノイド等であっても良い。
可動ピン730は、図4に示すとおり、可動部721に取り付けられる。可動ピン730は、1本の棒が複数の箇所で折れ曲がったような形状に構成されている。可動ピン730は、連結部731と、折り曲げ部732と、フック部733とから構成される。可動ピン730は、連結部731と折り曲げ部732とフック部733とが、一体に設けられる。
連結部731は、図4に示す鉛直方向において、可動ピン730の下端に位置する部分である。また、連結部731は、直線の棒形状に設けられ、水平面内において、並進型駆動装置720の可動部721から、図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びるように設けられる。連結部731は、ねじ止めなどの方法により、一端が可動部721に固定される。これにより、可動ピン730は、並進型駆動装置720に固定される。
折り曲げ部732は、図4に示す鉛直方向において、可動ピン730の上方向の先端に位置する部分である。また、折り曲げ部732は、図4に示すとおり、巻棒734と、上側突部735と、下側突部736とを有する。
巻棒734は、図4に示す鉛直方向に伸びるように設けられる。巻棒734は、棒形状に設けられた部材である。巻棒734は、後述にて説明するように、コイル61を形成するための導体線60が引っ掛けられる。なお、棒状部材とは、実施の形態1において、巻棒734のことである。
上側突部735は、巻棒734の側面において、導体線60が引っ掛けられる位置よりも上側の位置に設けられる。上側突部735は、水平面内において、立設された巻棒734の側面から、図4に示す可動部721の可動方向における後方向へと突き出るようにして設けられる。なお、棒状部材の側面において導体線の係止位置より上側に設けられた突部とは、実施の形態1において、上側突部735のことである。
下側突部736は、巻棒734の側面において、導体線60が引っ掛けられる位置よりも下側の位置に設けられる。下側突部736は、上側突部735との間に、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満の間隔をあけて設けられる。下側突部736は、水平面内において、立設された巻棒734の側面から、図4に示す可動部721の可動方向における後方向へと突き出るようにして設けられる。なお、棒状部材の側面において導体線の係止位置よりも下側に設けられた突部とは、実施の形態1において、下側突部736のことである。
また、折り曲げ部732は、上側突部735と下側突部736との間において、空間を有する。この空間は、巻棒734、上側突部735、及び下側突部736により、図4に示す鉛直方向における上方向と下方向、及び図4に示す可動部721の可動方向における前方向の3方向を囲まれて形成されている。また、折り曲げ部732は、この空間が、図4に示す可動部721の可動方向における後方向に向かって開口している。この空間は、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満となるように設けられる。
折り曲げ部732は、後述にて説明するように、コイル61を形成するための導体線60を、上側突部735と下側突部736との間において巻棒734に引っ掛けることにより、当該導体線60を係止して屈曲点を形成する。
フック部733は、折り曲げ部732に対し、図4に示す鉛直方向において下方向の位置に設けられる。フック部733は、可動ピン730のうち、図4に示す鉛直方向において、連結部731と折り曲げ部732との間に位置する部分である。
フック部733は、1本の棒が2箇所で折れ曲がったような形状である。フック部733の一端は、連結部731の他端とつながっている。なお、連結部731の他端とは、連結部731の両端の端部のうち、可動部721に固定されていない側の端部のことである。また、フック部733の他端は、折り曲げ部732の巻棒734の下端とつながっている。
フック部733は、連結部731の他端及び折り曲げ部732の巻棒734の下端から、図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びるように設けられる。フック部733は、図4に示すとおり、可動部721の可動方向において、折り曲げ部732よりも前方向へと突出するように設けられる。
フック部733は、連結部731の他端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分を有する。フック部733は、連結部731の他端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びた先の部分が、図4に示す鉛直方向において、上方向へと折れ曲がっている。
また、フック部733は、折り曲げ部732の巻棒734の下端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びた先の部分が、図4に示す鉛直方向において、下方向へと折れ曲がっている。フック部733は、この下方向へと折れ曲がった先の部分が、上述の上方向へと折れ曲がった先の部分と一直線上につながっている。
フック部733は、連結部731の他端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分、上方向へと折れ曲がった先の部分、及び折り曲げ部732の巻棒734の下端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分により構成される。
また、フック部733は、図4に示す可動部721の可動方向において、後方向に、隙間737を有する。この隙間737は、フック部733が有する上述の連結部731の他端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分、上方向へと折れ曲がった先の部分、及び折り曲げ部732の巻棒734の下端から図4に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分により、図4に示す鉛直方向における下方向と上方向、及び図4に示す可動部721の可動方向における前方向の3方向を囲まれて形成されている。また、フック部733は、この隙間737が、図4に示す可動部721の可動方向における後方向、すなわち連結部731と折り曲げ部732との間に向かって開口している。
隙間737は、導体線60の1本分以上の空間を占めるように設けられる。フック部733は、後述にて説明するように、折り曲げ部732が導体線60を係止して屈曲点を形成した後、折り曲げ部732から解放されて落下した導体線60を隙間737内に収容する。
回転型駆動装置710と並進型駆動装置720には、これらの駆動装置を駆動するために、図示しないサーボアンプ等の制御装置が接続される。回転型駆動装置710は、制御装置から指令を受けて、回転部711を図4に示す回転部711の回転方向に回転させることにより、可動部721を、図4に示す回転部711の回転方向に回転させる。また、並進型駆動装置720は、制御装置から指令を受けて、可動部721を、図4に示す可動部721の可動方向に並進移動させる。可動ピン730は、可動部721の回転または並進移動にともなって、可動部721と同じ方向に移動する。このようにして、回転型駆動装置710と並進型駆動装置720が駆動することにより、可動ピン730の有する折り曲げ部732は、任意の位置に位置決めされる。なお、駆動手段とは、実施の形態1において、並進型駆動装置720のことである。
図5は、実施の形態1におけるコイル製造装置の斜視図である。図5において、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fと、図示しない固定台と、図示しないサーボアンプ等の制御装置と、図示しないノズルと、このノズルの移動経路等を制御する図示しない制御手段と、図示しない巻き始め端固定具とから構成される。なお、図5においては、コイル製造装置7aだけでなく、導体線60も図示している。図5においては、図3に示すような6箇所で折り曲げられた六角形形状のコイル61を作る場合のコイル製造装置7aを示している。
コイル製造装置7aは、図5に示すとおり、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fを環状に配置して構成される。可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fは、図示しない固定された固定台の上に設置され、この固定台に固定される。なお、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fは、図4に示す可動式導体線折り曲げ装置71と同様の構成である。以下において、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fのうちのいずれか、またはすべてを指すものとして、可動式導体線折り曲げ装置71と称する場合がある。
また、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fは、図5に示すとおり、それぞれ折り曲げ部732a、732b、732c、732d、732e、732fを有する。コイル製造装置7aは、これら6箇所の折り曲げ部732a、732b、732c、732d、732e、732fに順次、導体線60を引っ掛けていくことで、図3に示すような六角形形状のコイル61を形成する。なお、以下において、折り曲げ部732a、732b、732c、732d、732e、732fのうちのいずれか、またはすべてを指すものとして、折り曲げ部732と称する場合がある。
図5において、可動式導体線折り曲げ装置71は、環状に配置された6つの可動式導体線折り曲げ装置71が形成する当該環に関し、回転型駆動装置710及び並進型駆動装置720がこの環の外側よりの位置に、折り曲げ部732がこの環の内側よりの位置に、それぞれ位置するように設けられる。
なお、図4に示す可動部721の可動方向における前方向は、図5に示すとおり環状に配置された6つの可動式導体線折り曲げ装置71が形成する当該環に関し、この環の外側から内側へと向かう方向と一致する。図4に示す可動部721の可動方向における後方向は、図5に示すとおり環状に配置された6つの可動式導体線折り曲げ装置71が形成する当該環に関し、この環の内側から外側へと向かう方向と一致する。
また、可動式導体線折り曲げ装置71には、図示しないケーブルが接続される。このケーブルは、図示しないサーボアンプ等の制御装置と接続されている。コイル製造装置7aは、この制御装置がケーブルを介して可動式導体線折り曲げ装置71へと指令を送ることで、可動式導体線折り曲げ装置71の有する回転型駆動装置710または並進型駆動装置720を駆動させる。
図示しないノズルは、固定台の上方に、固定台から離れて設けられる。ノズルは、可動式導体線折り曲げ装置71に対し、自在に可動するように設けられる。ノズルには、図示しないケーブルを介して、このノズルの移動経路等を制御する図示しない制御手段が接続される。
図示しないノズルは、コイル61を形成するための導体線60を、一定の張力をかけたまま供給する。また、ノズルは、このノズルの移動経路等を制御する図示しない制御手段により制御され、自在に可動する。なお、導体線供給手段とは、実施の形態1において、ノズルのことである。
図示しない巻き始め端固定具は、図示しない固定台の上に固定される。巻き始め端固定具は、図示しないノズルから供給された導体線60の先端が引っ掛けられ、導体線60の先端を係止する。
図6は、実施の形態1のコイル製造方法における、コイルの形成方法を示すフローチャートである。図6を参照して、実施の形態1におけるコイルの形成方法について説明する。
図6のステップS1において、コイル61を形成するための導体線60は、図示しないノズルから一定の張力をかけたまま引き出される。ノズルから引き出された導体線60の先端は、図示しない巻き始め端固定具に係止される。
それから、図6のステップS2において、コイル製造装置7aは、形成したいコイル61の大きさ、形状等の寸法に応じて、図示しない制御装置に指令を出力させ、図4に示す回転型駆動装置710と並進型駆動装置720を駆動させる。これにより、コイル製造装置7aは、図5において、可動式導体線折り曲げ装置71の折り曲げ部732を、形成したいコイル61の寸法に合わせて任意の位置へと移動させる。このようにして、コイル製造装置7aは、折り曲げ部732a、732b、732c、732d、732e、732fの位置決めを行う。以下において、コイル製造装置7aが折り曲げ部732を任意の位置へと移動させて位置決めする工程のことを、位置決め工程という。
図6のステップS3において、コイル製造装置7aは、ノズルの移動経路等を制御する図示しない制御手段によりノズルを制御し、ノズルから導体線60を引き出しつつ、このノズルを、図5に示す6箇所の折り曲げ部732が形成する六角形の外側をまわるように移動させる。これにより、コイル製造装置7aは、導体線60を、6箇所の折り曲げ部732において、これら6箇所の折り曲げ部732の有する巻棒734に対して巻き付けるようにして引っ掛けていく。コイル製造装置7aは、図5に示すとおり、導体線60を折り曲げ部732a、732b、732c、732d、732e、732fの順に引っ掛けていく。
導体線60は、折り曲げ部732の巻棒734に対し、当該巻棒734の有する面であって、図4に示す可動部721の可動方向において後方向に位置する面と接触するように引っ掛けられる。このとき、導体線60は、巻き始め端固定具と折り曲げ部732との間、ノズルと折り曲げ部732との間、及び折り曲げ部732同士の間で引っ張られ、張力がかけられる。この張力により、折り曲げ部732は、導体線60を折り曲げ部732の巻棒734において係止するとともに、導体線60を直接塑性変形させて屈曲点を形成し、導体線60に明確な折り目を付ける。このようにして、コイル製造装置7aは、導体線60を、折り曲げ部732において折り曲げることができる。
また、導体線60に屈曲点を形成する際、コイル製造装置7aは、折り曲げ部732の有する上側突部735と下側突部736との間において、導体線60を巻棒734に引っ掛け、導体線60を係止する。これにより、導体線60は、図4に示す鉛直方向の位置が、上側突部735と下側突部736により規制される。このため、導体線60を折り曲げる際に導体線60が上下に移動して張力が緩んでしまうことがなく、導体線60に明確な折り目を確実に付けることができる。
以下において、コイル製造装置7aが、ノズルから供給される導体線60を折り曲げ部732に引っ掛け、折り曲げ部732において導体線60を折り曲げる工程のことを、折り曲げ工程という。なお、折り曲げ部732に掛けられた導体線60は、折り曲げ部732、ノズル、または巻き始め端固定具から与えられる張力により、折り曲げ部732に対する位置が拘束される。
ここで、折り曲げ部732の有する上側突部735と下側突部736は、上述のとおり、図4に示す鉛直方向において導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満の間隔をあけて設けられている。このため、図5に示す6箇所の折り曲げ部732の有する巻棒733に1周目の導体線60を引っ掛けた後、そのまま2周目の導体線60を引っ掛ける場合、2周目の導体線60は、折り曲げ部732の巻棒733に直接引っ掛けられるのではなく、1周目の導体線60に対して引っ掛けられることになる。この場合、折り曲げ部732は、2周目の導体線60を直接塑性変形させることができず、2周目の導体線60に対し、明確な折り目を付けることができない。
そこで、図6のステップS4において、コイル製造装置7aは、図5に示す6箇所の折り曲げ部732の有する巻棒733に1周目の導体線60を引っ掛けた後、2周目の導体線60を引っ掛ける前に、折り曲げ部732からフック部733の有する隙間737へと1周目の導体線60を落下させる。
図7は、実施の形態1の可動式導体線折り曲げ装置において、1周目の導体線を折り曲げ部からフック部の隙間へと落下させた後の状態を示す斜視図である。図7において、導体線60aは、折り曲げ部732の巻棒733に対して1周目に引っ掛けられた導体線60が、隙間737へと落下する前に引っ掛けられていた位置を示すものである。図7において、導体線60bは、折り曲げ部732の巻棒733に対して1周目に引っ掛けられた導体線60が、隙間737へと落下した後の位置を示すものである。つまり、図7においては、1周目の導体線60について、導体線60aに示すとおり折り曲げ部732の巻棒733に引っ掛けた後、導体線60bに示すとおり隙間737内の位置へと落下させた状態を示している。
図6のステップS4において、コイル製造装置7aは、1周目の導体線60を折り曲げ部732の巻棒733に対して図7に示す導体線60aの位置に引っ掛けた後、並進型駆動装置720を駆動させる。このとき、コイル製造装置7aは、並進型駆動装置720の可動部721を、可動部721の可動方向において前方向に、すなわち図7の矢印Bの方向に移動させる。
図7において、並進型駆動装置720が可動部721を矢印Bの方向へと移動させることにより、折り曲げ部732に係止されている導体線60は、折り曲げ部732から与えられる張力が緩められることになる。これにより、図7に示す折り曲げ部732の導体線60aの位置に引っ掛かっていた1周目の導体線60は、折り曲げ部732から解放されて落下し、その下方に設けられたフック部733の有する隙間737内の導体線60bの位置へと移動し、隙間737内に収容される。
このようにして、コイル製造装置7aは、図6のステップS4において、折り曲げ部732にかけられた1周目の導体線60をフック部733の隙間737へと落下させる。コイル製造装置7aは、折り曲げ部732a、732b、732c、732d、732e、732fについて、1周目の導体線60を隙間737へと落下させる。
以下において、折り曲げ部732の巻棒733に引っ掛かっていた導体線60を折り曲げ部732から解放し、フック部733の有する隙間737内に収容する工程のことを、収容工程という。
それから、図6のステップS5において、コイル製造装置7aは、導体線60に対し、コイル61の最終周分までの屈曲点を形成したかどうか判断する。この場合、導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成していないため、Noと判断され、図6のステップS2へと戻る。
再度の図6のステップS2において、コイル製造装置7aは、図4に示す回転型駆動装置710と並進型駆動装置720を駆動させ、作成したいコイル61の寸法に合わせて、折り曲げ部732を任意の位置に位置決めする。そして、図6のステップS3において、コイル製造装置7aは、図示しないノズルから導体線60を引き出しつつ、このノズルを、図5に示す6箇所の折り曲げ部732が形成する六角形の外側をまわるように移動させる。これにより、コイル製造装置7aは、2周目の導体線60を6箇所の折り曲げ部732へと再び引っ掛けていく。
これ以降、コイル製造装置7aは、同じ動作を繰り返す。すなわち、図6のステップS3において、コイル製造装置7aは、導体線60を折り曲げ部732へと引っ掛け、導体線60を塑性変形させて屈曲点を形成し、導体線60に明確な折り目を付ける。図6のステップS4において、コイル製造装置7aは、折り曲げた導体線60をフック部733の隙間737へと落下させる。
可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fは、図6のステップS2に示す折り曲げ部732の位置決めを行う位置決め工程、図6のステップS3に示す導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けて折り曲げる折り曲げ工程、及び図6のステップS4に示す導体線60をフック部733の有する隙間737内に落下させる収容工程、の3つの工程を、順番に行う。このようにして、コイル製造装置7aは、任意の形状のコイル61を形成していく。
その後、コイル製造装置7aが導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成し終わったとき、図6のステップS4において、コイル製造装置7aは、すべての並進型駆動装置720の可動部721を、図4に示す可動部721の可動方向において前方向に移動させる。これにより、導体線60は、すべての折り曲げ部732から解放され、可動式導体線折り曲げ装置71の各隙間737へと落下する。またこの場合、図6のステップS5において、Yesと判断される。そして、図6のステップS6において、導体線60を図示しない巻き始め端固定具から外し、可動式導体線折り曲げ装置71の各隙間737から、導体線60の複数周回分の束を取り出す。
図8は、実施の形態1におけるコイル製造装置から取り出した時点の導体線の正面図である。図8に示す状態において、導体線60は、コイル61の最終周分までの屈曲点が形成されているものの、決められた位置に整列していない。このため、図6のステップS6において、図8に示す導体線60の各周を束ね、導体線60を決められた位置に整列させて固定する。これにより、図8に示す導体線60は、図3に示すコイル61となる。なお、コイル製造装置7aが、フック部733に収容された複数周回分の導体線60を束ねてコイル61を整形する工程のことを、整形工程という。
このようにして、最終周まで導体線60に明確に折り目が付いたコイル61が完成する。
形成されたコイル61は、上述のとおり、図1に示す固定子鉄心5のスロット53内に配置される。そして、上述のとおり固定子4を形成し、最終的に実施の形態1において製造されたコイルを使用する回転電機が完成する。
以上において説明したとおり、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、導体線60を供給するノズルと、環状に配置され導体線60を屈曲させて塑性変形させる複数の可動式導体線折り曲げ装置71とを備え、可動式導体線折り曲げ装置71より供給される導体線60を可動式導体線折り曲げ装置71にかけ回して周回させ複数の屈曲点を有するコイル61を製造する。可動式導体線折り曲げ装置71は、ノズルより供給される導体線60を係止して屈曲点を形成する折り曲げ部732と、折り曲げ部732において屈曲点が形成された導体線60の張力を緩めて解放するように折り曲げ部732を移動する並進型駆動装置720と、折り曲げ部732の下方に設けられ、屈曲点が形成され折り曲げ部732から解放された導体線60を収容するフック部733とを備える。
これにより、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、コイル61の各周において導体線60を折り曲げ部732に直接引っ掛けることができるため、折り曲げ部732が導体線60を直接塑性変形させて屈曲点を形成することができる。このため、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、コイル61の各周において、導体線60に明確な折り目が付いたコイル61を形成することができる。
これにより、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、形成するコイル61において、図3に示す六角形の頂点部分に丸みが付いてしまうことを防ぐことができる。このため、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、最終周まで周長が正確なコイル61を形成することができる。よって、コイル製造装置7aが決められた寸法どおりの周長を持つコイル61を形成できるため、実施の形態1の回転電機において、このコイル61を回転電機の固定子4の固定子巻線6として用いた場合に、コイル61の周長が大きくなることにより固定子巻線6の有する電気抵抗が増加してしまうことを防ぐことができる。
また、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、上述のとおり導体線60に明確な折り目が付いたコイル61を形成することができ、形成するコイル61において、図3に示す六角形の頂点部分に丸みが付いてしまうことを防ぐことができる。このため、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、形成するコイル61のコイル径が決められた寸法よりも膨らんでしまうことがない。よって、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、形成するコイル61のコイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の高さが、図3に示す固定子鉄心5の軸方向において、決められた高さよりも高くなってしまうことを防ぐことができる。
実施の形態1のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置71の折り曲げ部732は、並進型駆動装置720に立設され、ノズルより供給される導体線60を係止する巻棒734と、巻棒734の側面において導体線60の係止位置より上側に設けられた上側突部735と、巻棒734の側面において導体線60の係止位置よりも下側に設けられた下側突部736と、を有する。導体線60に屈曲点を形成する際、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、上側突部735と下側突部736との間において、ノズルより供給される導体線60を巻棒734により係止して屈曲点を形成する。
これにより、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、導体線60に屈曲点を形成する際、上側突部735と下側突部736が、図4に示す鉛直方向において、導体線60の位置を規制する。このため、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、導体線60を折り曲げる際に導体線60が上下に移動して張力が緩んでしまうことがなく、導体線60に明確な折り目を確実に付けることができる。
図9は、実施の形態1におけるコイル製造装置が形成するコイルの変形例を示す正面図である。図9に示すコイル62は、図3に示すコイル61に関し、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2において、導体線60の間に空隙部621を設けたものである。実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、図3に示すコイル61だけでなく、図9に示すコイル62も容易に形成することができる。
コイル61と比較して、コイル62は、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2において、導体線60間の絶縁性能が向上したり、このコイル62を回転電機の固定子4の固定子巻線6として用いた場合に、他相の固定子巻線6として用いられる他のコイル62との干渉を低減させたりすることができるという効果を奏する。
ここで、例えば、コイル62を形成する手段としては、本実施の形態1におけるコイル製造装置7aを使用する以外に、六角形形状をした巻枠に導体線60を巻き付けていく手段が考えられる。しかし、コイル62を形成する場合、この巻枠に巻き付けていく手段では、正確な寸法精度の空隙部621を設けることが難しい。これに対し、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71が有する折り曲げ部732の位置を任意に位置決めできるため、導体線60を任意の位置で折り曲げることができる。よって、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、形成したいコイル62の寸法を自由に決定することができるので、空隙部621を持つコイル62も容易に形成することができる。
なお、実施の形態1において、コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71を6台備え、これら可動式導体線折り曲げ装置71の有する合計6箇所の折り曲げ部732に導体線60を引っ掛けていくこととしたが、これに限られるものではない。
例えば、コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71を4台備える場合、合計4箇所の折り曲げ部732を使用することにより、四角形形状のコイルを形成することができる。例えば、コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71を8台備える場合、合計8箇所の折り曲げ部732を使用することにより、八角形形状のコイルを形成することができる。例えば、コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71を10台備える場合、合計10箇所の折り曲げ部732を使用することにより、十角形形状のコイルを形成することができる。コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71を少なくとも4台備えているならば、回転電機に使用するコイルを形成することができる。
また、例えば、コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71を10台備える場合、合計6箇所の折り曲げ部732を使用することにより、六角形形状のコイルを形成することもできる。このように、コイル製造装置7aは、コイルの1周あたり、最大で可動式導体線折り曲げ装置71の数だけ、導体線60に屈曲点を形成することができる。このため、コイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置71の数を増やすことで、どんな多角形形状のコイルであっても形成することができる。
実施の形態1のコイル製造装置7aは、コイル61を形成する際、図6のステップS3において、自在に可動する図示しないノズルから導体線60を引き出しつつ、このノズルを図5に示す6箇所の折り曲げ部732が形成する六角形の外側をまわるように移動させることにより、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けることを説明した。しかし、実施の形態1のコイル製造装置7aは、これに限られるものではない。
例えば、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛ける際、作業者が手で導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けるようにしても良い。この例のような場合においても、図示しないノズルを移動させることで導体線60を折り曲げ部732に引っ掛ける場合と同様の効果を奏することができる。
実施の形態1のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置71の折り曲げ部732は、上側突部735と下側突部736を有し、上側突部735と下側突部736は、その間に導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満の間隔をあけて設けられることとしたが、これに限られるものではない。すなわち、上側突部735と下側突部736との間の間隔は、導体線60の2本分以上としても構わない。
これにより、例えば、上側突部735と下側突部736との間の間隔が導体線60の3本分以上である場合、コイル61またはコイル62の形成方法は、導体線60を折り曲げ部732に3周分引っ掛けるごとに、これらの導体線60を隙間737へと落下させるような手順とすることができる。よって、この例の場合には、図6のステップS4に示す収容工程を、3回に2回省略することができる。
また、実施の形態1のコイル製造装置7aは、折り曲げ部732が巻棒734と上側突部735と下側突部736とを有するものに限られるものでもない。折り曲げ部732は、引っ掛けられた導体線60を塑性変形させて屈曲点を形成し、折り目を付けることができる形状であれば、どのような形状であっても良い。
実施の形態1において、コイル製造装置7aは、図6のステップS2に示す位置決め工程、図6のステップS3に示す折り曲げ工程、及び図6のステップS4に示す収容工程、の3つの工程に関し、各工程を6台の可動式導体線折り曲げ装置71についてまとめて行うこととした。しかし、これらの工程の順番は、この順番に限られるものではない。
コイル製造装置7aは、例えば、1台の可動式導体線折り曲げ装置71ごとに、図6のステップS2に示す位置決め工程、図6のステップS3に示す折り曲げ工程、及び図6のステップS4に示す収容工程、の3つの工程を続けて行うようにしても良い。また、コイル製造装置7aは、例えば、図6のステップS2に示す位置決め工程、図6のステップS3に示す折り曲げ工程、及び図6のステップS4に示す収容工程、の3つの工程に関し、各工程を3台の可動式導体線折り曲げ装置71についてまとめて行うようにしても良い。
さらに、実施の形態1において、可動式導体線折り曲げ装置71は、回転型駆動装置710と並進型駆動装置720を備えることとしたが、これに限られるものでもない。折り曲げ部732の位置決めができれば良いため、可動式導体線折り曲げ装置71が備える駆動装置は、例えば、2台とも並進型駆動装置とし、これら並進型駆動装置の可動部の可動方向が直交するように設けることとしても構わない。このような構成とした場合においても、可動式導体線折り曲げ装置71が回転型駆動装置710と並進型駆動装置720を備える場合と同様な効果を奏することができる。
実施の形態2.
実施の形態2におけるコイル製造装置、及びコイル製造方法について説明する。実施の形態1と同一または同等の手段、構成等に関しては、同一の名称と符号とを用いて説明を省略する。なお、実施の形態2において、回転電機は、実施の形態1の場合と同様の構成である。
図10は、実施の形態2における可動式導体線折り曲げ装置の斜視図である。図10に示すとおり、実施の形態2における可動式導体線折り曲げ装置72は、回転型駆動装置710と、並進型駆動装置720と、可動ピン740とから構成される。なお、図10においては、可動式導体線折り曲げ装置72だけでなく、導体線60c、60d、60e、及び60fも図示している。導体線折り曲げ手段とは、実施の形態2において、可動式導体線折り曲げ装置72のことである。駆動手段とは、実施の形態2において、並進型駆動装置720のことである。
図10に示すとおり、可動ピン740は、連結部741と、折り曲げ部742と、フック部743と、後述するガイド部751と、から構成される。可動ピン740の有する連結部741及びフック部743は、実施の形態1の可動ピン730の有する連結部731及びフック部733と同様の構成である。
なお、フック部743は、実施の形態1のフック部733と同様に、連結部741の他端から図10に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分と、図10に示す鉛直方向における上方向へと折れ曲がった先の部分と、を有する。
連結部741の他端から図10に示す可動部721の可動方向における前方向へと伸びる部分のことを、実施の形態2において、底部748と称する。また、図10に示す鉛直方向における上方向へと折れ曲がった先の部分のことを、実施の形態2において、柱状部749と称する。底部748は、フック部743が収容した導体線60を受容する。また、柱状部749は、底部748から図10に示す鉛直方向における上方向へと延設されている。
図10において、可動ピン740の折り曲げ部742は、実施の形態1の可動ピン730の折り曲げ部732と同様に、巻棒744と、上側突部745とを有する。なお、棒状部材とは、実施の形態2において、巻棒744のことである。
また、折り曲げ部742は、巻棒744の側面において、導体線60が引っ掛けられる位置よりも下側の位置に、下側突部746を有する。下側突部746は、上側突部745との間に、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満の間隔をあけて設けられる。下側突部746は、水平面内において、巻棒744から図10に示す可動部721の可動方向における後方向へと突出するように設けられる。
また、下側突部746は、実施の形態1の折り曲げ部732の有する下側突部736と異なり、下側突部746の有する面であって、図10の鉛直方向における上方向に位置する面として、斜面750が設けられる。斜面750は、導体線60が折り曲げ部742の有する巻棒744において係止させられた際、この導体線60の下方に位置する面である。斜面750は、図10に示すとおり、その表面を導体線60が滑って落下するように、図10の鉛直方向における下方向へと傾斜した形状に設けられる。また、斜面750は、次に説明するガイド部751へと向かって傾斜するように設けられる。
可動ピン740には、図10に示すとおり、連結部741とフック部743との接続部分において、ガイド部751が設けられる。ガイド部751は、折り曲げ部742に対し、図10に示す鉛直方向における下方向の位置に設けられる。ガイド部751は、1本の棒が2箇所で折れ曲がったような形状である。ガイド部751は、図10に示すとおり、規制部752と、導入部753と、を有する。
規制部752は、連結部741とフック部743との接続部分における上面から、図10に示す鉛直方向における上方向へと伸びるように設けられる。ガイド部751は、この規制部752が、柱状部749に対して平行に設けられる。
導入部753は、柱状部749の上方に設けられる。導入部753は、柱状部749の上端とつながっている。導入部753は、柱状部749の上端から、図10に示す可動部721の可動方向における後方向へと伸びるように設けられる。また、導入部753は、この後方向へと伸びた先の部分が、図10に示す鉛直方向における上方向へと向けて、斜めに折れ曲がっている。導入部753は、この上方向へと向けて斜めに折れ曲がった先の先端が、図10に示す可動部721の可動方向において、折り曲げ部742の後方向に位置している。
導入部753は、柱状部749の上端から図10に示す可動部721の可動方向における後方向へと伸びるように設けられた部分、及び図10に示す鉛直方向における上方向へと向けて斜めに折れ曲がった先の部分により構成される。
導入部753は、図10に示す鉛直方向における上方向へと向けて斜めに折れ曲がった先の部分が、その上を導体線60が滑って落下するように、図10に示す鉛直方向における下方向へと傾斜した形状に設けられる。また、導入部753は、当該部分が、フック部743へと向かって傾斜するように設けられる。ガイド部751は、この導入部753が、折り曲げ部742から斜面750を滑って落下してきた導体線60をその表面に沿って案内し、フック部743に導き入れる。
可動ピン740は、図10に示す可動部721の可動方向において、フック部743とガイド部751の間に隙間747を有する。この隙間747は、図10に示すとおり、底部748と柱状部749と規制部752とにより、図10に示す鉛直方向における下方向、及び図10に示す可動部721の可動方向における前方向と後方向を囲まれて形成されている。また、この隙間747は、その上方部分が、フック部743とガイド部751の間において、図10に示す可動部721の可動方向における後方向に向かって開口している。
隙間747は、図10に示すとおり、鉛直方向に長い縦長の形状に設けられる。フック部743は、折り曲げ部742から落下しガイド部751により案内されてきた導体線60を隙間747内に収容する。導体線60は、隙間747内において、底部748、柱状部749、または規制部752と接触する。
また、柱状部749と規制部752との間の間隔のことを、隙間747の幅と称する。隙間747は、この隙間747の幅が、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満となるように設けられる。つまり、隙間747の幅は、図10に示す可動部721の可動方向において、隙間747が導体線60の1本分だけを収容できる幅である。
なお、図10において、導体線60cは、折り曲げ部742に対して1周目に引っ掛けられた導体線60である。図10において、導体線60dは、折り曲げ部742に対して2周目に引っ掛けられた導体線60である。図10において、導体線60eは、折り曲げ部742に対して3周目に引っ掛けられた導体線60である。図10において、導体線60fは、折り曲げ部742に対して4周目に引っ掛けられた導体線60である。つまり、図10においては、1周目の導体線60c、2周目の導体線60d、及び3周目の導体線60eを隙間747へと落下させた後、4周目の導体線60fを折り曲げ部742に引っ掛けた状態を示している。
次に、実施の形態2におけるコイル製造装置について説明する。実施の形態2において、図示しないコイル製造装置7aは、実施の形態1のコイル製造装置7aが、実施の形態1の図4に示した可動式導体線折り曲げ装置71の代わりに、図10に示す可動式導体線折り曲げ装置72を備えたものである。実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、そのほかの構成に関して、実施の形態1におけるコイル製造装置7aと同様の構成である。
次に、実施の形態2におけるコイル製造方法について説明する。なお、ここでは、実施の形態2のコイル製造方法において、実施の形態1のコイル61の形成方法と異なる点のみ説明し、実施の形態1と同じ動作等に関しては、説明を省略する。
実施の形態2において、コイル製造装置7aは、実施の形態1の場合と同様に、折り曲げ部742の位置決めを行う位置決め工程、及び導体線60を折り曲げ部742に引っ掛けて折り曲げる折り曲げ工程を行う。それから、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、導体線60をフック部743の有する隙間747内に落下させる収容工程を行う。例えば、図10において、4周目の導体線60fを折り曲げ部742に引っ掛けた後、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、並進型駆動装置720を駆動させる。このとき、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、並進型駆動装置720の可動部721を、可動部721の可動方向において前方向に、すなわち図10の矢印Cの方向に移動させる。なお、この矢印Cの方向は、折り曲げ部742から導体線60に対して与えられる張力が緩められる方向である。
これにより、図10において、折り曲げ部742に引っ掛かっている導体線60fは、この折り曲げ部742から解放され、斜面750を滑ってガイド部751へと落下することになる。また、導体線60fは、ガイド部751へと落下した後、このガイド部751に案内され、隙間747内であって導体線60eよりも図10の鉛直方向における上方向の位置へと移動し、隙間747内に収容されることになる。
その後、コイル製造装置7aは、位置決め工程、折り曲げ工程、及び収容工程、の3つの工程を、順番に行う。このようにして、コイル製造装置7aは、任意の形状のコイル61を形成していく。
コイル製造装置7aが導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成し終わったとき、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、実施の形態1の場合と同様に、導体線60をすべての折り曲げ部742から解放して落下させ、可動式導体線折り曲げ装置72の各隙間747へと収容する。それから、可動式導体線折り曲げ装置72の各隙間747から、導体線60の複数周回分の束を取り出す。
ここで、実施の形態2のコイル製造装置7aにおいて、隙間747は、上述のとおり、フック部743の有する柱状部749とガイド部749の有する規制部752との間に形成されている。また、この隙間747の幅は、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満となるように設けられている。つまり、隙間747の形状は、導体線60の1本分だけを収容できる幅を持つ、図10の鉛直方向に長い縦長の形状としている。
これにより、可動式導体線折り曲げ装置72のフック部743は、図10において、最初に折り曲げ部742に引っ掛けられた導体線60cを隙間747の一番下に収容し、続いて2周目に引っ掛けられた導体線60d、3周目に引っ掛けられた導体線60e、4周目に引っ掛けられた導体線60f、の順番で隙間747内に収容する。つまり、導体線60は、隙間747内において、折り曲げ部742に引っ掛けられた順番で鉛直方向に1列に並んで収容されている。
このため、実施の形態2において、フック部743に収容された複数周回分の導体線60を束ねてコイル61を整形する整形工程は、実施の形態1の整形工程と異なり、隙間747内に1列に並んで収容されている導体線60を取り出して束ねるだけで良い。このとき、折り曲げ部742へと引っ掛けた順番が前後して隙間747内に収容された導体線60を、決められた位置に整列させるような作業が発生しない。そして、隙間747から取り出した導体線60の各周を束ねて固定することにより、最終周まで導体線60に明確に折り目が付いたコイル61が完成する。
以上において説明したとおり、実施の形態2のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置72は、屈曲点が形成され折り曲げ部742から解放された導体線60をフック部743へと案内するガイド部751をさらに備える。このため、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、収容工程において、折り曲げ部742から解放され斜面750を滑ってガイド部751へと落下した導体線60が、ガイド部751に案内され、隙間747内へと移動する。このため、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、収容工程において、実施の形態1よりもスムーズに導体線60を隙間747内へと落下させ収容することができる。
また、実施の形態2のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置72のフック部743は、収容した導体線60を受容する底部748と、底部748から延設された柱状部749と、を有する。可動式導体線折り曲げ装置72のガイド部751は、導体線60をフック部743に導き入れる導入部753と、この導入部753の下方にあって柱状部749と平行をなす規制部752と、を有する。そして、この規制部752と柱状部749との間の間隔を、ノズルより供給される導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満としている。つまり、柱状部749と規制部752との間に形成される隙間747の形状は、導体線60の1本分だけを収容できる幅を持つ、図10の鉛直方向に長い縦長の形状としている。このため、屈曲点が形成され折り曲げ部742から解放された導体線60は、隙間747内において、折り曲げ部742に引っ掛けられた順番で鉛直方向に1列に並んで収容される。
これにより、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、折り曲げ部742が折り曲げた導体線60を順次隙間747に収容していく際、導体線60を、折り曲げ部742へと引っ掛けた順番が前後することなく隙間747内に1列に収容することができる。よって、実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成した後、隙間747から導体線60の束を取り出してコイル61を整形する際、隙間747内に1列に並んで収容されている導体線60を取り出して束ねるだけで良く、整形工程において導体線60を整列させる作業が容易になり、手早くコイル61を完成させることができる。
なお、実施の形態2において、導入部753は、柱状部749の上端から図10に示す可動部721の可動方向における後方向へと伸びるように設けられた部分、及び図10に示す鉛直方向における上方向へと向けて斜めに折れ曲がった先の部分により構成されることとしたが、これに限られるものではない。導入部753は、例えば、柱状部749の上端から、図10に示す可動部721の可動方向における後方向であって図10に示す鉛直方向における上方向へと、斜めに伸びるように設けられることとしても良い。このような構成とした場合においても、上述のように導入部753が途中で折れ曲がっている場合と同様の効果を奏することができる。
実施の形態3.
実施の形態3におけるコイル製造装置、及びコイル製造方法について説明する。実施の形態1と同一または同等の手段、構成等に関しては、同一の名称と符号とを用いて説明を省略する。
まず、実施の形態3におけるコイル製造装置とコイル製造方法について説明する前に、実施の形態3において製造され回転電機に使用されるコイルについて説明する。図11は、実施の形態3における回転電機の固定子巻線を構成するコイルの正面図である。図11において、コイル63は、導体線60の複数周回分を束ねて形成され、全体として六角形形状に形成される。コイル63を形成する導体線60は、図11に示すとおり、コイル63の六角形の頂点部分で屈曲させられ、塑性変形させられている。実施の形態3において、導体線60を屈曲させて塑性変形させ、屈曲点を形成することを、導体線60を折り曲げるという。
図12は、実施の形態3の回転電機の固定子巻線を構成するコイルにおいて、図11に示す破線部Dを、図11の矢印Eの方向から見た斜視図である。図13は、実施の形態3のコイルを形成する導体線を示す図であって、図11に示す破線部Dの部分の導体線を示す斜視図である。図12及び図13に示すとおり、実施の形態3におけるコイル63を形成する導体線60は、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631において、折り目とともに段差601が形成されている。
以下において、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631において、導体線60に形成された折り目及び段差601の部分のことを、頂点部631の屈曲点と称する。コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631において導体線60を折り曲げる際、実施の形態3では、導体線60に対して折り目とともに図12及び図13に示す段差601を形成し、すなわち頂点部631の屈曲点を形成する。
実施の形態3において、図示しない回転電機は、実施の形態1の回転電機が、実施の形態1のコイル61またはコイル62の代わりに、図11に示すコイル63を備える。
次に、実施の形態3におけるコイル製造装置を構成する可動式導体線折り曲げ装置について説明する。図14は、実施の形態3における可動式導体線折り曲げ装置の斜視図である。図14に示すとおり、実施の形態3における可動式導体線折り曲げ装置73は、回転型駆動装置710と、並進型駆動装置720と、可動ピン760とから構成される。可動式導体線折り曲げ装置73は、図11に示すコイル63を形成する。なお、図14においては、可動式導体線折り曲げ装置73だけでなく、導体線60も図示している。導体線折り曲げ手段とは、実施の形態3において、可動式導体線折り曲げ装置73のことである。駆動手段とは、実施の形態3において、並進型駆動装置720のことである。
図14に示すとおり、可動ピン760は、連結部761、折り曲げ部762、及びフック部763を有する。可動ピン760の有する連結部761及びフック部763は、実施の形態1の可動ピン730の有する連結部731及びフック部733と同様の構成である。また、隙間767は、実施の形態1の隙間737と同様に、フック部763により囲まれて形成されている。
折り曲げ部762は、図14に示す鉛直方向において、可動ピン760の上方向の先端に位置する部分である。折り曲げ部762は、実施の形態1の折り曲げ部762と異なり、図14に示すとおり、切り込みの入った平板として構成される。より詳細には、折り曲げ部762は、図14に示すとおり、巻板764と、左側突部765と、右側突部766とを有する。
巻板764は、水平面内に位置するように設けられる。巻板764は、図14に示す鉛直方向に任意の厚さを持つ、板形状に設けられた部材である。巻板764は、コイル63を形成するための導体線60がかけられ、この導体線60を係止して屈曲点を形成する。なお、板状部材とは、実施の形態3において、巻板764のことである。
左側突部765は、巻板764の側面において、導体線60が引っ掛けられる位置よりも横方向における左側の位置に設けられる。なお、横方向とは、図14に示すとおり、水平面内であって、可動部721の可動方向と直交する方向のことである。
また、左側突部765は、水平面内において、横設された巻板764の側面から図14に示す可動部721の可動方向における後方向へと突き出るようにして設けられる。左側突部765は、図14に示す鉛直方向における上方向に位置する面が、巻板764の有する面であって、図14に示す鉛直方向における上方向に位置する面と面一に設けられる。同様に、左側突部765は、図14に示す鉛直方向における下方向に位置する面が、巻板764の有する面であって、図14に示す鉛直方向における下方向に位置する面と面一に設けられる。なお、板状部材の側面において導体線の係止位置よりも一端側に設けられた突部とは、実施の形態3において、左側突部765のことである。
右側突部766は、巻板764の側面において、導体線60が引っ掛けられる位置よりも横方向における右側の位置に、左側突部765と並ぶように設けられる。右側突部766は、左側突部765との間に、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満の間隔をあけて設けられる。
また、右側突部766は、水平面内において、横設された巻板764の側面から図14に示す可動部721の可動方向における後方向へと突き出るようにして設けられる。右側突部766は、図14に示す鉛直方向における上方向に位置する面が、巻板764の有する面であって、図14に示す鉛直方向における上方向に位置する面と面一に設けられる。同様に、右側突部766は、図14に示す鉛直方向における下方向に位置する面が、巻板764の有する面であって、図14に示す鉛直方向における下方向に位置する面と面一に設けられる。なお、板状部材の側面において導体線の係止位置よりも他端側に設けられた突部とは、実施の形態3において、右側突部766のことである。
折り曲げ部762において、巻板764と左側突部765と右側突部766は、図14に示す鉛直方向における厚さが、同じになるように設けられる。
折り曲げ部762は、左側突部765と右側突部766との間において、空間を有する。この空間は、巻板764、左側突部765、及び右側突部766により、図14に示す可動部721の可動方向における前方向、及び図14に示す横方向における左方向と右方向の3方向を囲まれて形成されている。また、折り曲げ部762は、この空間が、図14に示す可動部721の可動方向における後方向に向かって開口している。この空間は、導体線60の1本分以上、かつ、2本分未満となるように設けられる。
実施の形態3において、図示しないノズルから供給された導体線60は、図14に示すとおり、折り曲げ部762の有する左側突部765と右側突部766との間に引っ掛けられる。なお、導体線供給手段とは、実施の形態3において、ノズルのことである。
図14に示すとおり、導体線60は、折り曲げ部762の巻板764の一方の面から入って反対側の面から出るように引っ掛けられる。折り曲げ部762は、導体線60が左側突部765と右側突部766との間において巻板764に直接引っ掛けられることで、ノズルとの間で導体線60を引っ張り、導体線60に張力を与える。この張力により、折り曲げ部762は、導体線60を左側突部765と右側突部766との間において係止するとともに、導体線60を直接塑性変形させて屈曲点を形成し、導体線60に明確な折り目を付ける。
またこのとき、折り曲げ部762において、導体線60は、ノズルによって図14に示す横方向に引っ張られる。これにより、折り曲げ部762は、導体線60に対して屈曲点を形成するのと同時に、導体線60に対して図12及び図13に示す段差601を形成する。この段差601は、巻板764と左側突部765と右側突部766の厚さ、すなわち折り曲げ部762の平板の厚さ分だけ形成される。
次に、実施の形態3におけるコイル製造装置について説明する。実施の形態3において、図示しないコイル製造装置7aは、実施の形態1のコイル製造装置7aについて、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631の屈曲点を形成するための可動式導体線折り曲げ装置71の2つを、図14に示す可動式導体線折り曲げ装置73に置き換えたものである。実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、そのほかの構成に関して、実施の形態1におけるコイル製造装置7aと同様の構成である。
次に、実施の形態3におけるコイル製造方法について説明する。なお、ここでは、実施の形態3のコイル製造方法において、実施の形態1のコイル61の形成方法と異なる点のみ説明し、実施の形態1と同じ動作等に関しては、説明を省略する。
実施の形態3において、導体線60は、図示しないノズルから供給される。実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、実施の形態1の場合と同様に、導体線60を折り曲げ部732または折り曲げ部762に引っ掛けて折り曲げる折り曲げ工程において、折り曲げ部732または折り曲げ部762に対し、導体線60を引っ掛けていく。このとき、折り曲げ部762は、導体線60に対し、図12及び図13に示すような折り目と段差601を形成する。
ここで、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、折り曲げ部762の位置決めを行う位置決め工程において、可動式導体線折り曲げ装置73が有する回転型駆動装置710と並進型駆動装置720を駆動させ、折り曲げ部762を任意の位置に位置決めする。このとき、コイル製造装置7aは、位置決め工程ごとに、折り曲げ部762の位置を、図11及び図12に示す固定子鉄心5の周方向において一定方向に一定間隔ずつずらしていく。これにより、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、図11及び図12に示すような、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631において、各周における折り目と段差601の位置が固定子鉄心5の周方向にずれたコイル63を形成できる。
形成されたコイル63は、実施の形態1の場合と同様に、図示しない固定子鉄心5のスロット53内に配置される。そして、実施の形態1の場合と同様に固定子4を形成し、最終的に実施の形態3において製造されたコイルを使用する回転電機が完成する。
なお、実施の形態1のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置71の折り曲げ部732は、上述のとおり、導体線60を係止して屈曲点を形成することができるように、巻棒734と上側突部735と下側突部736とを有していた。また、同様に、実施の形態2のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置72の折り曲げ部742も、上述のとおり、導体線60を係止して屈曲点を形成することができるように、巻棒744と上側突部745と下側突部746とを有していた。しかし、これら折り曲げ部732または折り曲げ部742のような構造では、導体線60に対し、折り目を付けることはできても、段差601を形成することができない。
これに対し、実施の形態3のコイル製造装置7aにおいて、可動式導体線折り曲げ装置73の折り曲げ部762は、並進型駆動装置720に横設され、ノズルより供給される導体線60を係止する巻板764と、巻板764の側面において導体線60の係止位置より一端側に設けられた左側突部765と、巻板764の側面において導体線60の係止位置よりも他端側に設けられた右側突部766と、を有する。導体線60に屈曲点を形成する際、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、左側突部765と右側突部766との間において、折り曲げ部762の巻板764の一方の面から入って反対側の面から出るようにして導体線60を巻板764に引っ掛ける。このとき、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、ノズルにより、図14に示す横方向に導体線60を引っ張る。
このため、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、折り曲げ部762において、導体線60に対し、図12及び図13に示すような折り目と平板の厚さ分だけの段差601を同時に形成することができる。
また、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、折り曲げ部762の位置を任意に位置決めできる。このため、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、図12及び図13に示すような折り目と段差601を、導体線60に対し、任意の位置に形成することができる。これにより、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、図11及び図12に示すような、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631において、各周における折り目と段差601の位置が固定子鉄心5の周方向にずれたコイル63を形成できる。つまり、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、導体線60に折り目と段差を形成する際の位置について、精度が求められるコイル63であっても、容易に形成することができる。
また、コイル63は、図11及び図12に示すように、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631において、導体線60が折り曲げられるとともに段差601が形成されている。これにより、コイル63は、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2における導体線60の頂点部631の屈曲点の位置が、各周において固定子鉄心5の周方向にずらされるようにして形成されている。
このため、コイル63は、図11に示す固定子鉄心5の軸方向における高さが、コイル61またはコイル62よりも、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2における各導体線60の頂点部631の屈曲点の位置を各周でずらした分だけ低減される。よって、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、コイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2において、図11に示す固定子鉄心5の軸方向の高さを、コイル61またはコイル62よりも低減したコイル63を形成できるという効果を奏する。
実施の形態4.
実施の形態4におけるコイル製造装置、及びコイル製造方法について説明する。実施の形態1と同一または同等の手段、構成等に関しては、同一の名称と符号とを用いて説明を省略する。なお、実施の形態4において、回転電機は、実施の形態1の場合と同様の構成である。
図15は、実施の形態4における可動式保持装置の斜視図である。図15に示すとおり、実施の形態4における可動式保持装置74は、並進型駆動装置770と、鉛直移動型駆動装置780とから構成される。なお、図15においては、可動式保持装置74だけでなく、導体線60も図示している。
並進型駆動装置770は、図15に示す鉛直方向における上部に、図示しない可動部を有する。図示しない可動部は、並進型駆動装置770の駆動により、水平面内において、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向に並進移動する。並進型駆動装置770は、直線運動を出力して可動部を並進移動させるリニアサーボモータである。なお、並進型駆動装置770は、直線運動を出力して可動部を並進移動させるものであれば、シリンダーやソレノイド等であっても良い。
鉛直移動型駆動装置780は、並進型駆動装置770が有する図示しない可動部の上に固定される。また、鉛直移動型駆動装置780は、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向における前方向に、上側保持部781と下側保持部782とを有する。
上側保持部781は、水平面内において、鉛直移動型駆動装置780の本体から図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向における前方向へと突出するように設けられる。
下側保持部782は、図15に示す鉛直方向において、上側保持部781よりも下方向の位置に設けられる。下側保持部782は、水平面内において、鉛直移動型駆動装置780の本体から図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向における前方向へと突出するように設けられる。
上側保持部781と下側保持部782は、その間に導体線60を挟んで保持することができるように、図15に示すとおり板状に形成される。また、上側保持部781と下側保持部782は、鉛直移動型駆動装置780の駆動により、図15に示す鉛直方向に移動する。鉛直移動型駆動装置780は、直線運動を出力して上側保持部781または下側保持部782を図15に示す鉛直方向に移動させるリニアサーボモータである。なお、鉛直移動型駆動装置780は、直線運動を出力して上側保持部781または下側保持部782を図15に示す鉛直方向に移動させるものであれば、シリンダーやソレノイド等であっても良い。
上側保持部781には、図15に示す鉛直方向における下方向の面に、上側溝783が設けられる。上側溝783は、水平面内において、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向と直交する方向に設けられる。また、上側溝783は、上側保持部781の有する下方向の面において、一端から他端まで一直線上につながって設けられる。
同様に、下側保持部782には、図15に示す鉛直方向における上方向の面に、下側溝784が設けられる。下側溝784は、水平面内において、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向と直交する方向に設けられる。また、下側溝784は、下側保持部782の有する下方向の面において、一端から他端まで一直線上につながって設けられる。
上側溝783と下側溝784は、上側保持部781と下側保持部782に対し、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向における位置が一致するように設けられる。つまり、上側溝783と下側溝784は、図15に示す鉛直方向において、互いに向かい合った位置に設けられる。上側溝783と下側溝784は、上側保持部781と下側保持部782が導体線60を正確な位置で挟むことができるように、導体線60の太さや形状に合わせて設けられる。
並進型駆動装置770と鉛直移動型駆動装置780には、これらの駆動装置を駆動するために、図示しないサーボアンプ等の制御装置が接続される。並進型駆動装置770は、制御装置から指令を受けて、図示しない可動部と鉛直移動型駆動装置780を、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向に並進移動させる。また、鉛直移動型駆動装置780は、制御装置から指令を受けて、上側保持部781または下側保持部782を、図15に示す鉛直方向に移動させる。このようにして、並進型駆動装置770と鉛直移動型駆動装置780が駆動することにより、上側保持部781と下側保持部782は、任意の位置に位置決めされる。
図16は、実施の形態4におけるコイル製造装置の斜視図である。図16に示すとおり、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fと、可動式保持装置74a、74bと、図示しない固定台と、図示しないサーボアンプ等の制御装置と、図示しないノズルと、このノズルの移動経路等を制御する図示しない制御手段と、図示しない巻き始め端固定具とから構成される。つまり、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、実施の形態1におけるコイル製造装置7aが、可動式保持装置74a、74bをさらに備えることとしたものである。なお、図16においては、コイル製造装置7bだけでなく、導体線60も図示している。
なお、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fは、実施の形態1における可動式導体線折り曲げ装置71と同様の構成である。導体線折り曲げ手段とは、実施の形態4において、可動式導体線折り曲げ装置71のことである。
可動式保持装置74aは、図16に示すとおり、可動式導体線折り曲げ装置71cと可動式導体線折り曲げ装置71dの間の位置に設けられる。可動式保持装置74bは、図16に示すとおり、可動式導体線折り曲げ装置71fと可動式導体線折り曲げ装置71aの間の位置に設けられる。
なお、可動式保持装置74a、74bは、図15に示す可動式保持装置74と同様の構成である。以下において、可動式保持装置74a、74bをまとめて、可動式保持装置74と称する。なお、保持手段とは、実施の形態4において、可動式保持装置74のことである。
また、可動式保持装置74には、図示しないケーブルが接続される。このケーブルは、図示しないサーボアンプ等の制御装置と接続されている。コイル製造装置7bは、この制御装置がケーブルを介して可動式保持装置74へと指令を送ることで、可動式保持装置74の有する並進型駆動装置770または鉛直移動型駆動装置780を駆動させる。
図17は、実施の形態4のコイルの製造方法における、コイルの形成方法を示すフローチャートである。図17を参照して、実施の形態4におけるコイルの形成方法について説明する。
図17において、実施の形態4におけるコイル61の形成方法は、ステップS11、ステップS12、ステップS13、ステップS14、ステップS15、及びステップS16が、実施の形態1における図6のステップS1、ステップS2、ステップS3、ステップS4、ステップS5、及びステップS6と同様の動作等である。実施の形態4におけるコイル61の形成方法は、図17に示すステップS21において、可動式保持装置74が導体線60を保持する工程を備える点について、実施の形態1の場合と異なる。
コイル61を形成する際、導体線60は、実施の形態1の場合と同様に、図示しないノズルから供給される。なお、導体線供給手段とは、実施の形態4において、ノズルのことである。
図17において、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、実施の形態1の場合と同様に、ステップS12に示す折り曲げ部732の位置決めを行う位置決め工程、及びステップS13に示す導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けて折り曲げる折り曲げ工程を、図16に示す可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71cの順番で行う。
それから、図17のステップS21において、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aが有する鉛直移動型駆動装置780を駆動させ、上側保持部781及び下側保持部782を、図15の鉛直方向に移動させる。このとき、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aが有する下側保持部782を図15の鉛直方向において上方向へと移動させるとともに、可動式保持装置74aが有する上側保持部781を図15の鉛直方向において下方向へと移動させる。このようにして、コイル製造装置7bは、折り曲げ部732cにより屈曲点が形成された導体線60について、折り曲げ部732cとノズルとの間の部分を、可動式保持装置74aに、上側溝783と下側溝784の間に挟むようにして保持させる。
なお、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aが有する下側保持部782のみを、図15の鉛直方向において上方向へと移動させるようにしても良い。また、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aが有する上側保持部781のみを、図15の鉛直方向において下方向へと移動させるようにしても良い。
図17のステップS14において、コイル製造装置7bは、実施の形態1の場合と同様に、導体線60をフック部733の有する隙間737内に落下させる収容工程を、図16に示す可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71cについて行う。
図17のステップS15において、コイル製造装置7bは、導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成したかどうか判断する。この場合、導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成していないため、Noと判断され、図17のステップS12へと戻る。
図17において、コイル製造装置7bは、ステップS12に示す位置決め工程、及びステップS13に示す折り曲げ工程を、図16に示す可動式導体線折り曲げ装置71d、71e、71fの順番で行う。
この際、図示しないノズルから引き出された導体線60が可動式導体線折り曲げ装置71dの折り曲げ部732dに引っ掛けられることにより、この導体線60は、折り曲げ部732dとノズルとの間で引っ張られ、張力がかけられる。この張力により、折り曲げ部732dは、導体線60を折り曲げ部732dの有する巻棒734に係止するとともに、導体線60を直接塑性変形させて屈曲点を形成し、導体線60に明確な折り目を付ける。
このとき、導体線60は、上述のとおり可動式保持装置74aにより保持されている。このため、導体線60は、可動式導体線折り曲げ装置71dの折り曲げ部732dに引っ掛けられる前において、可動式保持装置74aとノズルとの間で引っ張られ、適度な張力がかけられた状態となっている。よって、コイル製造装置7bは、導体線60を折り曲げ部732dに引っ掛けて折り曲げる際に、導体線60が撓んでしまうことを防止できる。
導体線60を可動式導体線折り曲げ装置71fの折り曲げ部732fに引っ掛けた後、図17のステップS21において、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74bが有する鉛直移動型駆動装置780を駆動させ、上側保持部781及び下側保持部782を、図15の鉛直方向に移動させる。このとき、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74bが有する下側保持部782を図15の鉛直方向において上方向へと移動させるとともに、可動式保持装置74bが有する上側保持部781を図15の鉛直方向において下方向へと移動させる。このようにして、コイル製造装置7bは、折り曲げ部732fにより屈曲点が形成された導体線60について、折り曲げ部732fとノズルとの間の部分を、可動式保持装置74bに、上側溝783と下側溝784の間に挟むようにして保持させる。
なお、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74bが有する下側保持部782のみを、図15の鉛直方向において上方向へと移動させるようにしても良い。また、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74bが有する上側保持部781のみを、図15の鉛直方向において下方向へと移動させるようにしても良い。
これにより、導体線60は、可動式導体線折り曲げ装置71aの折り曲げ部732aに引っ掛けられる前に、可動式保持装置74bと図示しないノズルとの間で引っ張られ、適度な張力がかけられた状態となる。このため、コイル製造装置7bは、導体線60を次に折り曲げ部732aに引っ掛けて折り曲げる際に、導体線60が撓んでしまうことを防止できる。
なお、以下において、可動式保持装置74aまたは可動式保持装置74bが導体線60を挟んで保持する工程のことを、保持工程と称する。
そして、図17のステップS14において、コイル製造装置7bは、実施の形態1の場合と同様に、収容工程を、可動式導体線折り曲げ装置71d、71e、71fについて行う。また、図17のステップS15において、コイル製造装置7bが、導体線60に対してコイル61の最終周分までの屈曲点を形成していないため、Noと判断され、図17のステップS12へと戻る。
これ以降、コイル製造装置7bは、同じ動作を繰り返し、引き続き可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71cの順番で、図17のステップS12に示す位置決め工程、図17のステップS13に示す折り曲げ工程、及び図17のステップS14に示す収容工程を行う。また、コイル製造装置7bは、可動式導体線折り曲げ装置71cの折り曲げ部732cに導体線60を引っ掛けた後であって、この導体線60を可動式導体線折り曲げ装置71cが有する隙間737に落下させる前に、図17のステップS21において、可動式保持装置74aがこの導体線60を挟んで保持する保持工程を行う。
さらに、図17のステップS15においてNoと判断された後、コイル製造装置7bは、可動式導体線折り曲げ装置71d、71e、71fの順番で、図17のステップS12に示す位置決め工程、図17のステップS13に示す折り曲げ工程、及び図17のステップS14に示す収容工程を行う。そして、コイル製造装置7bは、可動式導体線折り曲げ装置71fの折り曲げ部732fに導体線60を引っ掛けた後であって、この導体線60を可動式導体線折り曲げ装置71fが有する隙間737に落下させる前に、図17のステップS21において、可動式保持装置74bがこの導体線60を挟んで保持する保持工程を行う。
このようにして、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、任意の形状のコイル61を形成していく。なお、実施の形態4におけるコイル61の形成方法において、この後の動作等は、実施の形態1におけるコイル61の形成方法と同様である。
以上において説明したように、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、複数の可動式導体線折り曲げ装置71の間に設けられ、折り曲げ部732により係止され屈曲点が形成された導体線60の当該折り曲げ部732とノズルとの間の部分を保持する可動式保持装置74をさらに備える。実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、コイル61を形成する際、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けた後であって、この導体線60を隙間737に落下させる前に、可動式保持装置74がこの導体線60を挟むようにして保持する。
これにより、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、導体線60に対して常に適度な張力をかけ続けることができるため、導体線60を折り曲げる際に導体線60が撓んでしまうことを防止できる。
このため、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、形成するコイル61の各周において、導体線60に対し、実施の形態1から実施の形態3の場合よりも正確な位置に明確な折り目を付けることができる。これにより、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、形成するコイル61において、六角形の頂点部分に丸みが付いてしまうことをより確実に防ぐことができる。このため、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、最終周まで周長がより正確なコイル61を形成することができる。よって、コイル製造装置7bが決められた寸法どおりの周長を持つコイル61を形成できるため、実施の形態4の回転電機において、このコイル61を回転電機の固定子4の固定子巻線6として用いた場合に、コイル61の周長が大きくなることにより固定子巻線6の有する電気抵抗が増加してしまうことを、実施の形態1から実施の形態3の場合よりも確実に防ぐことができる。
また、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、上述のとおり、コイル61を形成する際に、導体線60に対して常に適度な張力をかけ続けることができる。これにより、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、上述のとおり、形成するコイル61の各周において、導体線60に対し、実施の形態1から実施の形態3の場合よりも正確な位置に明確な折り目を付けることができ、形成するコイル61において六角形の頂点部分に丸みが付いてしまうことをより確実に防ぐことができる。このため、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、形成するコイル61のコイル径が決められた寸法よりも膨らんでしまうことがない。よって、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、形成するコイル61のコイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の高さが、固定子鉄心5の軸方向において、決められた高さよりも高くなってしまうことを、実施の形態1から実施の形態3の場合よりも確実に防ぐことができる。
なお、実施の形態4において、コイル製造装置7bは、図16に示すとおり、可動式導体線折り曲げ装置71cと可動式導体線折り曲げ装置71dの間の位置に可動式保持装置74aを、可動式導体線折り曲げ装置71fと可動式導体線折り曲げ装置71aの間の位置に可動式保持装置74bを設けることとした。また、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、これら2台の可動式保持装置74が導体線60を保持することとした。しかし、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、これに限られるものではない。例えば、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aと可動式保持装置74bを、上述とは異なる位置に設置しても良い。
また、導体線60に対して常に適度な張力をかけ続ける場合、コイル製造装置7bは、上述において説明したように、可動式保持装置74を2台備えるのが良い。しかし、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、これに限られず、可動式保持装置74を3台もしくはそれ以上有するものとしても良い。これらの場合においても、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、可動式保持装置74を2台備える場合と同様の効果を奏することができる。
さらに、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、可動式保持装置74を1台だけ有するものとしても良い。この場合においても、実施の形態1のように可動式保持装置74を備えない場合と異なり、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けて折り曲げる際に、導体線60に対して適度な張力をかけることができるため、実施の形態4における上述の効果を奏することができる。
実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、導体線60を保持する箇所を1箇所だけ設けることとしても良い。このため、例えば、可動式保持装置74bが導体線60を保持した後、可動式保持装置74aは、導体線60の保持をやめるようにしても良い。この場合、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aが有する上側保持部781を、図15の鉛直方向において上方向へと移動させるとともに、可動式保持装置74aが有する下側保持部782を、図15の鉛直方向において下方向へと移動させる。このようにして、可動式保持装置74aが有する上側保持部781と下側保持部782を離れさせることで、コイル製造装置7bは、可動式保持装置74aによる導体線60の保持をやめさせることができる。この場合においても、実施の形態4における上述の効果を奏することができる。
なお、可動式保持装置74aが有する上側保持部781と下側保持部782を離れさせる際、コイル製造装置7bは、上側保持部781のみを、図15の鉛直方向において上方向へと移動させるようにしても良い。また、コイル製造装置7bは、下側保持部782のみを、図15の鉛直方向において下方向へと移動させるようにしても良い。
また、コイル61を形成する際、導体線60を保持していない可動式保持装置74の鉛直移動型駆動装置780が、前方向、すなわち図15の矢印Fの方向に移動した後の状態である場合、鉛直移動型駆動装置780は、コイル61を形成する作業の邪魔になってしまう。このため、可動式保持装置74が導体線60を保持していない場合、コイル製造装置7bは、この可動式保持装置74が有する鉛直移動型駆動装置780を、図15に示す並進型駆動装置770の可動部の可動方向において後方向に、すなわち矢印Fとは逆の方向に移動させると良い。
これにより、鉛直移動型駆動装置780、上側保持部781、及び下側保持部782は、図15の後方向に移動する。このようにすることで、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、コイル61を形成する際において、導体線60を保持していない可動式保持装置74の鉛直移動型駆動装置780が図15の前方向にあることにより、コイル61を形成する作業の邪魔になってしまうことを防ぐことができる。
実施の形態5.
実施の形態5におけるコイル製造装置、及びコイル製造方法について説明する。実施の形態1と同一または同等の手段、構成等に関しては、同一の名称と符号とを用いて説明を省略する。なお、実施の形態5において、回転電機は、実施の形態1の場合と同様の構成である。
図18は、実施の形態5におけるコイル製造装置の斜視図である。図18に示すとおり、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fと、可動式保持装置74a、74bと、回転台75と、回転接続用コネクタ76と、図示しないサーボアンプ等の制御装置と、図示しない回転台制御装置と、図示しないノズルと、図示しない巻き始め端固定具とから構成される。つまり、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、実施の形態1におけるコイル製造装置7aが、可動式保持装置74a、74bと回転台75と回転接続用コネクタ76と回転台制御装置とをさらに備えるとともに、ノズルの移動経路等を制御する制御手段を備えないこととしたものである。
図18に示すとおり、回転台75の上には、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fと、可動式保持装置74a、74bと、図示しない巻き始め端固定具と、を設置する。これらの可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fと可動式保持装置74a、74bと巻き始め端固定具とは、回転台75に固定する。
なお、可動式導体線折り曲げ装置71a、71b、71c、71d、71e、71fは、実施の形態1における可動式導体線折り曲げ装置71と同様の構成である。導体線折り曲げ手段とは、実施の形態5において、可動式導体線折り曲げ装置71のことである。また、可動式保持装置74a、74bは、実施の形態4における可動式保持装置74と同様の構成である。保持手段とは、実施の形態5において、可動式保持装置74のことである。
また、回転台75の下部には、図18に示すとおり、回転接続用コネクタ76が接続される。回転接続用コネクタ76は、回転台75と、可動式導体線折り曲げ装置71と、可動式保持装置74とに対し、これらを駆動するための電力や指令等を、コイル製造装置7cの外部から供給する。なお、実施の形態5において、回転接続用コネクタ76は、静止しているケーブル等から回転している物体へと電力や指令等を供給できるスリップリングである。
回転接続用コネクタ76には、ケーブルを介して、図示しないサーボアンプ等の制御装置が接続される。コイル製造装置7cは、この制御装置が可動式導体線折り曲げ装置71あるいは可動式保持装置74に対して指令を送ることで、可動式導体線折り曲げ装置71の有する回転型駆動装置710または並進型駆動装置720、あるいは可動式保持装置74の有する並進型駆動装置770または鉛直移動型駆動装置780を駆動させる。さらに、回転接続用コネクタ76には、図示しない回転台制御装置が接続される。コイル製造装置7cは、この回転台制御装置が回転台75に対して指令を送ることで、回転台75を、図18に示す回転台75の回転方向に回転させる。
図示しないノズルは、回転台75の上方に、回転台75から離れて設けられる。実施の形態5のコイル製造装置7cにおいて、ノズルは、回転台75から独立して設けられ、回転台75とは別個に位置が固定される。ノズルは、コイル61を形成するための導体線60を、一定の張力をかけたまま供給する。なお、導体線供給手段とは、実施の形態5において、ノズルのことである。
次に、実施の形態5におけるコイル製造方法について説明する。なお、ここでは、実施の形態5のコイル製造方法において、実施の形態1のコイル61の形成方法と異なる点について説明する。実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、実施の形態1の場合と同様に、折り曲げ部732の位置決めを行う位置決め工程、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けて折り曲げる折り曲げ工程、及び導体線60をフック部733の有する隙間737内に落下させる収容工程を行う。
また、実施の形態1のコイル61の形成方法に加えて、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けた後であって、この導体線60を隙間737に落下させる前に、可動式保持装置74が導体線60を挟んで保持する保持工程を、実施の形態4の場合と同様に行う。実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、これらの4つの工程を、順番に行う。
コイル製造装置7cは、折り曲げ工程において、図示しないノズルから供給された導体線60を、可動式導体線折り曲げ装置71の折り曲げ部732に引っ掛けていく。このとき、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、実施の形態1の場合と異なり、図示しないノズルを移動させない。代わりに、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、回転台75を、図18に示す回転台75の回転方向に回転させる。これにより、コイル製造装置7cは、導体線60を、図18に示す6箇所の折り曲げ部732に対し、これら6箇所の折り曲げ部732が形成する六角形の外側から巻き付けるようにして引っ掛けていく。
なお、実施の形態1において、コイル61を形成する際、コイル製造装置7aが、導体線60が引き出されるノズルを任意に移動させ、導体線60を折り曲げ部732に引っ掛けていくことを説明した。しかし、この場合、ノズルが可動式導体線折り曲げ装置71にぶつかってしまうこと等のないよう、ノズルの移動経路等を精度良く制御する必要がある。つまり、実施の形態1におけるコイル製造装置7aは、ノズルの移動経路等を精度良く制御するための制御手段を備える必要があり、コイル製造装置7a全体が大掛かりなものになってしまう。
これに対し、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、可動式導体線折り曲げ装置71が設置され、ノズルより供給される導体線60を可動式導体線折り曲げ装置71にかけ回して周回させるように可動式導体線折り曲げ装置71を回転させる回転台75をさらに備える。実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、この回転台75の上にコイル61を作成するための装置一式が設置される。そして、コイル61を形成する際、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、回転台75を回転させてコイル製造装置7cの全体を回転させることにより、導体線60を、図18に示す6箇所の折り曲げ部732に引っ掛けていく。
これにより、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、導体線60が引き出されるノズルを移動させることなく、コイル61を形成することができる。よって、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、ノズルの移動経路等を精度良く制御するための制御手段を備える必要がない。
また、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、回転台75の下部に、静止しているケーブル等から回転している物体へと電力や指令等を供給できるスリップリングである回転接続用コネクタ76を接続する。実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、この回転接続用コネクタ76から回転台75、可動式導体線折り曲げ装置71、及び可動式保持装置74へと電力や指令等を供給する。
このため、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、回転台75を回転させたとしても、回転接続用コネクタ76に接続されたケーブル等が絡まることはない。よって、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、回転台75の回転中においても、回転台75、可動式導体線折り曲げ装置71、及び可動式保持装置74に対して電力や指令等を供給することが可能になる。
なお、実施の形態5において、可動式保持装置74には、コイル61を形成する際に導体線60が引っ掛かってしまう可能性がある。このため、例えば、コイル製造装置7cは、可動式保持装置74が有する鉛直移動型駆動装置780を、並進型駆動装置770の可動部に対し、図15の鉛直方向における下方向に向かって可動できるように、斜めに取り付けると良い。また、例えば、コイル製造装置7cは、可動式保持装置74を、図18の鉛直方向において下方向へと移動可能な駆動装置に固定しても良い。
そして、コイル61を形成する際、コイル製造装置7cは、導体線60を保持していない可動式保持装置74について、鉛直移動型駆動装置780または可動式保持装置74自身を、図18の鉛直方向において下方向へと移動させる。これにより、実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、コイル61を形成する際において、導体線60が可動式保持装置74に引っ掛かってしまうことを防ぐことができる。
なお、実施の形態2において、コイル製造装置7aは、コイル61を形成するとして説明した。実施の形態4において、コイル製造装置7bは、コイル61を形成するとして説明した。実施の形態5において、コイル製造装置7cは、コイル61を形成するとして説明した。しかし、実施の形態2におけるコイル製造装置7a、実施の形態4におけるコイル製造装置7b、及び実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、これに限られるものではない。
実施の形態2におけるコイル製造装置7aは、実施の形態1の場合と同様に、コイル62を形成することとしても良い。実施の形態4におけるコイル製造装置7bも、実施の形態1の場合と同様に、コイル62を形成することとしても良い。実施の形態5におけるコイル製造装置7cも、実施の形態1の場合と同様に、コイル62を形成することとしても良い。この場合においても、実施の形態2におけるコイル製造装置7a、実施の形態4におけるコイル製造装置7b、及び実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、コイル61を形成する場合において得られる効果と同様の効果を奏することができる。
また、実施の形態3におけるコイル製造装置7aは、可動式導体線折り曲げ装置73以外に備える可動式導体線折り曲げ装置71を、実施の形態2における可動式導体線折り曲げ装置72に置き換えることとしても良い。実施の形態4におけるコイル製造装置7bも、可動式導体線折り曲げ装置71の代わりに、実施の形態2における可動式導体線折り曲げ装置72を備えることとしても良い。実施の形態5におけるコイル製造装置7cも、可動式導体線折り曲げ装置71の代わりに、実施の形態2における可動式導体線折り曲げ装置72を備えることとしても良い。この場合においても、実施の形態3におけるコイル製造装置7a、実施の形態4におけるコイル製造装置7b、及び実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、可動式導体線折り曲げ装置71を備える場合において得られる効果と同様の効果を奏することができる。
さらに、実施の形態4におけるコイル製造装置7bは、図3に示すコイル61のコイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631の屈曲点を形成するための可動式導体線折り曲げ装置71を、可動式導体線折り曲げ装置73に置き換えることとしても良い。また、実施の形態5におけるコイル製造装置7cも、図3に示すコイル61のコイルエンド部CE1及びコイルエンド部CE2の頂点部631の屈曲点を形成するための可動式導体線折り曲げ装置71を、可動式導体線折り曲げ装置73に置き換えることとしても良い。この場合、実施の形態4におけるコイル製造装置7b及び実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、実施の形態3におけるコイル製造装置7aと同様に、図11に示すコイル63を形成できる。この場合においても、実施の形態4におけるコイル製造装置7b及び実施の形態5におけるコイル製造装置7cは、コイル61またはコイル62を形成する場合において得られる効果と同様の効果を奏することができる。