JP5708859B2 - 描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体 - Google Patents

描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体に関する。
金属、プラスチック、感熱紙等の媒体にレーザ光を照射して加熱することで、媒体に文字、数字、又は記号等を書き込む技術を活用したレーザ照射装置(レーザマーカ、又はレーザマーキング装置)が市販されている。
レーザ照射装置のレーザ光源としてガスレーザ、固体レーザ、液体レーザ、半導体レーザ等を用いてレーザ光を照射することにより、文字等を金属、プラスチック、感熱紙等の媒体に書き込むことができる。
金属やプラスチックは、レーザ光を照射して加熱することにより、削ったり焦がしたりすることで描画が行われる。一方、感熱紙は、熱により変色する性質をもっており、レーザ光照射による加熱で記録層が発色することで描画が行われる。
感熱紙は、金属やプラスチックの媒体に比べて取り扱いが容易であるため、例えば、物流等の分野で物品の宛先や物品名を描画する媒体として広く用いられている。
そして、このような感熱紙でも書き込み、消去を繰り返し行えるリライタブル(以下、サーマルリライタブルメディア又は熱可逆記録媒体と称す)のものが登場してきた。
現在まで、熱可逆記録媒体への画像記録及び画像消去は、加熱源を記録媒体に接触させて該媒体を加熱する接触式で行われている。該加熱源としては、通常、画像記録にはサーマルヘッドが用いられ、画像消去には熱ローラ、セラミックヒータなどが用いられている。
このような接触式の記録方法は、熱可逆記録媒体がフィルム、紙等のフレキシブルなものである場合には、プラテンなどによって記録媒体を加熱源に均一に押し当てることにより、均一な画像記録及び画像消去を行うことができ、かつ従来の感熱紙用のプリンタの部品を転用することによって画像記録装置及び画像消去装置を安価に製造することができるという利点があった。
図1は、サーマルリライタブルメディアの発色・消色の原理を説明するための図である。
サーマルリライタブルメディアは、熱により色調が透明状態と発色状態とに可逆的に変化する記録層を含む。この記録層は、有機低分子物質であるロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、顕色剤)で構成される。
まず、最初に、図1に示す消色状態(A)にある記録層を昇温していくと、溶融温度T2にて、ロイコ染料と顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。
一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度T1にて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、ロイコ染料と顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、ロイコ染料と顕色剤との溶融混合物(発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することによりロイコ染料と顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、記録層を溶融温度T2以上の温度T3に繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、熱可逆記録媒体を加熱する際に溶融温度T2と温度T3の差を小さくすることにより、繰返しの記録消去による媒体の劣化を抑えられる。
このようなサーマルリライタブルメディアは、例えば、物流等の分野で幅広く利用されており、記録(描画)する手法についても種々の工夫がなされていた。
例えば、隣り合う第1の線と第2の線を描画する際に、先に描画された第1の線の残存熱と第2の線の描画時の熱が相互干渉することによる記録の退色現象を抑制するために、第1の線の描画開始点から、第2の線の描画終了点まで描画する時間又は重複幅を制御することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、熱可逆記録媒体が、RF−IDタグなどを内蔵している場合には、熱可逆記録媒体の厚みが厚くなりフレキシブル性が低下して加熱源を均一に押し当てるためには高い圧力が必要となる(特許文献2及び3参照)。
また、接触式であるために、印字と消去を繰り返すと記録媒体表面が削れて凹凸が生じ、サーマルヘッドやホットスタンプ等の加熱源に接触しない部分が出てきて均一に加熱されないため濃度低下や消去不良が起こるという問題がある(特許文献4及び5参照)。
そこで、例えば熱可逆記録媒体の表面に凹凸が生じた場合や離れたところから均一に画像記録及び画像消去する方法として、レーザを用いる方法が提案されている(特許文献6参照)。この方法は、物流ラインに用いる搬送用容器に熱可逆記録媒体を使用して非接触記録を行うものであり、書き込みはレーザで実施し、消去は熱風、温水、又は赤外線ヒータで行うと記載されている。
更に、RF−IDタグが非接触で離れたところから記憶情報の読み取り及び書き換えが行われるのに対して、熱可逆記録媒体についても離れた位置から画像を書き換えたいという要望が生じてきている。
このようなレーザによる記録方法としては、高出力のレーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、その位置をコントロール可能なレーザ記録装置(レーザマーカー)が提供されている。このレーザマーカーを用いて、レーザ光を熱可逆記録媒体に照射して、媒体中の光熱変換材料が光を吸収して熱に変換し、その熱で記録及び消去を行うことが可能である。これまでレーザによる画像記録及び消去を行う方法として、ロイコ染料と可逆性顕色剤、種々の光熱変換材料を組み合わせて、近赤外レーザ光により記録する方法が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
また、レーザ光を所定の間隔で並列して照射する際に、該レーザ光を同一方向に走査させて、該レーザ光の不連続な照射を走査の一部に含む画像処理方法(描画制御方法)が提案され、例えば、レーザ光を第1開始点から終了点まで走査した時の終了点から、次の第2開始点を前記第1開始点から所定間隔に設定した位置までジャンプさせて照射することが記載されている(特許文献8参照)。
これらの従来技術を用いることで、均一に媒体の加熱が可能となり画像品質及び繰返し耐久性を改善することは可能だが、各描画線間のジャンプ及び待ち時間により、画像記録及び消去に必要な時間が長くなる課題があった。
また、レーザ光をループ状又は渦巻き状にスキャニングして、セル領域のほぼ全域に照射する方法が提案されている(特許文献9参照)。しかし、この場合、ループ状又は渦巻き状スキャンにおける折曲り部分では、過剰な熱が加わり、熱可逆媒体では繰返し耐久性の低下が発生するという問題がある。
したがって、従来技術では、繰返し耐久性に優れ印字品質良く描画でき、且つ、短時間に描画できる画像記録方法がなく、また、消去においても、均一に熱を掛け、広い消去幅を確保でき、且つ、短時間に画像消去できる画像処理方法(描画制御方法)が従来技術ではなかった。
しかしながら、上述の描画手法では次のような問題があった。
レーザマーカーによる塗り潰しは、一般的に直線を平行に複数描画することで行われるが、サーマルリライタブルメディアの場合、単純に線を平行に描いただけではきれいな塗り潰しを実現することができない。
図1で説明したように、サーマルリライタブルメディアは、消色温度が常温と発色温度の中間にある。そのため、レーザビームでメディアを加熱すると、レーザスポットの出力強度分布やメディア上の熱拡散の影響により描画した線の周囲は消色温度領域になる。またメディアの発色特性が温度に対してブロードだと線自体の濃度が幅方向に均一にならないことがあるからである。そこで、例えば、特許文献1に記載されているように、濃度が均一な塗り潰しを実現するために、直前に描いた線の残存熱で線の周囲に発生する消色温度領域をキャンセルするように、線を少し重ねて描画すると良いことが知られている。
ただし、描画線の残存熱による温度は時間経過により低下するため、残存熱を利用する描画方法は線を描く時間間隔の制御が重要になる。熱蓄積による退色も考慮すると、マーク速度が速いとか線が短い場合には長い時間間隔を設け、マーク速度が遅いとか線が長い場合には短い時間間隔を設けるなどである。
図2は、線に重複を持たせて描画を行う手法を説明する図である。図3は、往復走査による描画手法を説明する図である。
図2(a)において、長円は発色した線分の輪郭、実線の矢印は、描画を行う動作(マーク動作)、破線の矢印は、描画点を移動するジャンプ(空走)動作を示し、次に示す1から3のステップを繰り返して塗り潰しを行う。
1.レーザを点灯し一定のレーザ出力、一定の描画速度でX軸+方向に線分を描く。
2.レーザを消灯し次の線の始点位置へ(Y軸−方向へ)移動する。
3.所定の時間待機する。
これにより、図2(b)に示すような塗りつぶしが行われる。図2(a)に示す描画方法は、図2(c)に示すように、X軸+方向への描画を繰り返す間に、ジャンプ(空走)及び待機を行うため、レーザマーカーにとって塗り潰しはとても時間のかかる作業である。しかし、例えば、バーコードの太線のような描画対象を描画する場合等には、このような塗り潰しを行う描画作業を避けることができない。このため、描画時間短縮のために描画作業の高速化が求められている。
図2に挙げた塗り潰しの例は、同一方向へ繰り返し描画を行う描画方法であるが、この描画方法では、描画する線分の長さ以上の距離をジャンプ(空走)する必要があり、高速描画に適しているとはいえない。
ところで、例えば、インクジェットプリンタでは、プリンタヘッドを左右に動かしながらどちらに動く場合も描画する双方向描画が当たり前になっている。このため、レーザマーカーでも走査時間だけを考えるなら、図3(a)のような往復走査で描画するほうが高速になる。
しかしながら、描画方向を反転させる際に、直前の描画が終了した側から描画を開始するため、例えば、特許文献1に記載されているように、熱を待つための待機時間を多めに取る必要があり、必ずしも総合的な描画時間の短縮には結びつかないという問題があった。
また、直前に描いた線の残存熱の影響が次の線の始点では強く、終点では弱くなるため、弱めのレーザ出力で描画したときの発色は、図3(b)に示すように、むらが生じるという問題があった。一方、レーザ出力を高くすると、きれいな塗り潰しが得られるが、描画と消去を繰り返すと、図3(b)の濃い線分始点部分が早期に劣化してしまい、消去できなくなるといった問題が発生する。
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、レーザ光走査による、画像の形成において高品質で高い繰返し耐久性を実現するとともに、画像の消去において消去可能なエネルギー幅を広く得ることができ、かつ、短時間で画像処理が可能な描画制御方法及び描画制御装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を行い、以下の知見を得た。
円形ビーム形状のレーザ光を用いたベタ画像印字、画像消去のレーザ光走査方法としては、従来、図4a〜cに示す方法が用いられてきた。図4a〜cにおいて、太線実線部では、媒体上で等速度にレーザ光を照射しながら走査させて、点線部では、レーザ光を照射しない状態で走査させる。
図4aに示すレーザ光の走査方法では、レーザ光走査を短時間で行うことが可能で、ベタ画像印字、消去を短時間で可能であるが、描画線の折曲り部において、折曲り部の速度低下及び蓄熱影響(第1のレーザ光描画線411の終点印字直後に第2のレーザ光描画線412の始点を印字することによる)により、過剰に媒体にエネルギーを印加することで、ベタ画像部、消去部での濃度ムラ(画像部では濃度低下、消去部では発色)が発生して、更にベタ画像の繰返し耐久性が低下する。
また、図4bに示すレーザ光の走査方法では、ベタを短時間で印字可能であり、折れ曲りの速度低下の少ないレーザ光走査の画像記録方法であるが、第1のレーザ光描画線421の終点印字直後に第2のレーザ光描画線422の始点を印字することによる蓄熱影響が以前として残っており、過剰に媒体にエネルギーを印加することでベタ画像部、消去部での濃度ムラが発生して、更にベタ画像の繰返し耐久性が低下する。
また、図4cに示すレーザ光の走査方法では、折曲り部の速度低下及び蓄熱影響を改善できて、媒体に過剰にエネルギー印加することを避けられ、ベタ画像部、消去部での濃度ムラ、ベタ画像の繰返し耐久性は改善できる。しかし、レーザ光を照射しない点線部が長くなり、画像印字時間、消去時間が長くなる。また、この走査方法では、蓄熱影響を低減できる代わりに、第1のレーザ光描画線431を描画した後、第2のレーザ光描画線432を冷えた状態で印字・消去することから、蓄熱の活用ができず、高いエネルギーが必要になるため、走査速度を上げられず、画像印字、消去時間を低減することができない。
しかしながら、図5bに示すように、第1の始点から第1の終点に第1のレーザ光描画線451を描画し、第2の始点から該第1のレーザ光描画線451と平行な線に対して前記第1の始点側に傾く方向の線上に位置する第2の終点に向けて、前記第1のレーザ光描画線451に隣接する第2のレーザ光描画線452を描画するように、レーザ光を照射及び走査すると、ベタ画像部、消去部での濃度ムラを抑え、ベタ画像の繰返し耐久性を向上させることができるとともに、画像印字、消去時間を低減することができることを知見した。
本発明は、描画時間の短縮化と描画の高品質化を両立させた描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の実施の形態の一観点の描画制御装置は、熱可逆記録媒体にレーザを照射して描画対象を描画する描画装置を制御する描画制御装置であって、前記描画対象を複数行に分け、前記熱可逆記録媒体に前記複数行の各々を描画する描画位置を決定する描画位置決定手段と、相隣接する行の描画方向を反転させながら前記描画対象を描画するように前記複数行の各行の描画順を決定する描画順決定手段と、前記熱可逆記録媒体に往復走査で一の行の次に他の行を描画する際に、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギが前記他の行の終点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギよりも低くなるように調整する、又は、前記一の行の終点と前記他の行の始点との間の第1距離が前記一の行の始点と前記他の行の終点との間の第2距離よりも長くなるように前記描画位置を調整する調整手段と、前記描画位置及び前記描画順を反映した描画命令を生成する描画命令生成手段とを含む。
本発明は、描画時間の短縮化と描画の高品質化を両立させた描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を提供できる。
サーマルリライタブルメディアの発色・消色の原理を説明するための図である。 線に重複を持たせて描画を行う手法を説明する図である。 往復走査による描画手法を説明する図である。 従来技術の画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の一例を説明する図である。 従来技術の画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の他の例を説明する図である。 従来技術の画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の他の例を説明する図である。 本発明の実施の形態3に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法を説明する図である。 本発明の実施の形態4に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法を説明する図である。 実施の形態1のレーザ照射装置1の構成を示す図である。 実施の形態1の描画制御装置のブロック構成を示す図である。 実施の形態1の描画制御装置で用いる描画データのデータ構造の一例を示す図である。 実施の形態1の描画制御装置で用いる制御データのデータ構造の一例を示す図である。 実施の形態1の描画制御装置による描画データの生成処理を表すフローチャートである。 実施の形態1の描画制御装置で用いる単位線分の識別子とレーザ出力を関連付けたデータの一例を示す図である。 実施の形態1の描画制御装置によって生成される描画データに基づく描画手法を説明する図である。 実施の形態1の変形例による描画制御装置によって生成される描画データに基づく描画手法を説明する図である。 実施の形態2の描画制御装置204のブロック構成を示す図である。 実施の形態2の描画制御装置によって生成される描画データに基づく描画手法を説明する図である。 実施の形態2の描画制御装置による描画データの生成処理を表すフローチャートである。 本発明の熱可逆記録媒体の層構成の一例を示す概略断面図である。 本発明の熱可逆記録媒体の層構成の他の一例を示す概略断面図である。 本発明の熱可逆記録媒体の層構成の更に他の一例を示す概略断面図である。 RF−IDタグの一例を示す概略図である。 熱可逆記録媒体の発色−消色特性を示すグラフである。 熱可逆記録媒体の発色−消色変化のメカニズムを表す概略説明図である。 本発明の画像処理装置の概要を示す説明図である。 本発明の実施例に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の一例を説明する図である。 本発明の実施例に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の他の例を説明する図である。 比較例に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の一例を説明する図である。 比較例に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の他の例を説明する図である。 比較例に係る画像記録、及び画像消去におけるレーザ光走査方法の他の例を説明する図である。
以下、本発明の描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体を適用した実施の形態について説明する。
ここでは、「描画対象」なる文言は、文字、数字、記号、図形等の描画の対象を表すものとして用いる。
また、「線分」とは、文字等の描画対象に含まれ、描画対象を描画するために両端の座標が決まっている区間をいう。この線分は、直線の一部だけでなく、曲線の一部も含み、太さを有する。
また、本発明の描画制御装置は、描画対象を複数行に分け、行単位で描画を行う。ここでいう「行」とは、レーザの1回の照射開始点から照射終了点までに描画される文字又は図形等の一画である。この「行」は、描画が開始される位置から次に描画が終了される位置までに連続的に描画されるストロークとして扱うこともできる。ストロークは、公的機関(例えば、日本規格協会、ISO等)等が定める一画と同じであってもよいし異なっていてもよい。
また、「描画順」なる文言は、描画対象に含まれる線分を描画する順(線分をどちらの端部から描画するかという描画順も含む)と、複数の描画対象の各々を描画する順との2つの意味を有するものとして用いる。
[実施の形態1]
図6は、実施の形態1のレーザ照射装置1の構成を示す図である。
実施の形態1のレーザ照射装置1は、レーザビームを出射するレーザ装置2、レーザ装置2から出射されたレーザビームを熱可逆記録媒体であるリライタブル媒体100に走査する走査装置3、及びレーザ照射装置1の各部を駆動制御する描画制御装置4を備える。レーザ照射装置1は、外部装置であるホストコンピュータ200から送信される描画指令に基づいてリライタブル媒体100にレーザビームを走査してリライタブル媒体100に描画対象を描画する。
レーザ装置2は、描画制御装置4からの指示に応じてレーザビームを出射する。レーザ装置2は、例えば、半導体レーザ装置やYAGレーザ装置、炭酸ガスレーザ装置等で構成されるが、これらの中でもレーザ出力の制御が比較的容易な半導体レーザ装置が好適である。
走査装置3は、レーザビームを偏向する可動ミラーであるX軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12とfθレンズ13を備える。
X軸ガルバノミラー11は、駆動源であるガルバノメータ14によって駆動され、X軸方向に沿ってレーザビームを走査する。また、Y軸ガルバノミラー12は、駆動源であるガルバノメータ15によって駆動され、Y軸方向に沿ってレーザビームを走査する。
ガルバノメータ14には、X軸サーボドライバ16が接続され、ガルバノメータ15には、Y軸サーボドライバ17が接続されている。X軸サーボドライバ16及びY軸サーボドライバ17は、描画制御装置4からの指示値に従い、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の角度をそれぞれ制御する駆動回路であり、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の各々に設けられた角度センサ(図示せず)から出力されるポジション信号と描画制御装置4からの指示値を比較し、その誤差が最小になるようにガルバノメータ14、15へ駆動信号を与える。
fθレンズ13は、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12で偏向されたレーザビームをリライタブル媒体100へ集光するとともに、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の変位角と集光スポットの変位距離とが比例するように補正を行う。
このような構成の走査装置3は、レーザ装置2から出射されたレーザビームをX軸ガルバノミラー11で偏向し、X軸ガルバノミラー11で偏向されたレーザビームをY軸ガルバノミラー12で偏向し、Y軸ガルバノミラー12で偏向されたレーザビームをfθレンズ13を介してリライタブル媒体100上に照射する。この際、X軸ガルバノミラー11とY軸ガルバノミラー12との角度を適宜変更することにより、レーザビームを2次元に偏向走査することができる。
描画制御装置4は、ASICやCPU等の処理装置、動作を制御する所定のプログラムが格納されたROMや処理装置のワーク領域となるRAM等の記憶装置(いずれも図示せず)を備えており、処理装置は記憶装置とともにコンピュータを構成している。この描画制御装置4には、ホストコンピュータ200、レーザ装置2、X軸サーボドライバ16、及びY軸サーボドライバ17が接続されている。
なお、レーザ装置2、X軸ガルバノミラー11、Y軸ガルバノミラー12、fθレンズ13、ガルバノメータ14、ガルバノメータ15、X軸サーボドライバ16、及びY軸サーボドライバ17は、熱可逆記録媒体であるリライタブル媒体100に所望の描画対象を描画する描画装置を構成する。
図7は、実施の形態1の描画制御装置のブロック構成を示す図である。
描画制御装置4は、処理装置と記憶装置に格納されたプログラムとの協働により、図7に示すように、ホストインターフェース部20、描画データ生成部30、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザ出力制御信号生成部70、及びレーザ発光制御信号生成部80の各機能部を実現する。
また、描画制御装置4は、処理装置と記憶装置に格納されたプログラムとの協働により、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザ出力制御信号生成部70及びレーザ発光制御信号生成部80を備える描画命令生成手段としての照射部90を機能部として実現する。
ホストインターフェース部20は、ホストコンピュータ200から描画指令を受け取る。描画指令は、描画対象がバーコードであれば、バーコードの種類を表す識別子、バーコードに含まれる線分の描画位置(両端の座標)、及びサイズ等を含むデータである。ホストインターフェース部20は、描画指令の終了の旨を示すコードを受け取ったところで、描画データ生成部30に描画指令を渡す。
描画データ生成部30は、描画位置決定部31、描画順決定部32、レーザ出力調整部33、及び描画速度調整部34を含み、描画指令に含まれるバーコードを表すデータを適切にエンコードし、描画データを生成する。描画データは、バーコードに含まれる複数の線分のリライタブル媒体100上における位置(座標データ)、各線分の描画順、レーザ出力、描画速度、及びレーザの点灯/消灯等の情報を含む制御フラグを有する。
描画位置決定部31は、描画指令に基づき、バーコードに含まれる複数の線分のリライタブル媒体100上における位置(座標データ)を決定する描画位置決定手段である。描画順決定部32は、バーコードに含まれる各線分の描画順を決定する描画順決定手段である。レーザ出力調整部33は、各線分を描画するためのレーザ出力の調整、及び点灯/消灯の設定を行う調整手段である。描画速度調整部34は、リライタブル媒体100に描画対象を描画する描画速度(すなわち、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12を駆動する速度)を調整する。
描画制御装置4は、ホストコンピュータ200から描画指令を受け取り、描画対象を複数の線分で定義する描画データを生成した後、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の位置、レーザ装置2のレーザビームの発光タイミング及び発光出力を制御し、リライタブル媒体100に描画対象を描画する。
図8は、実施の形態1の描画制御装置で用いる描画データのデータ構造の一例を示す図である。
描画データは、複数の単位描画データを含み、各単位描画データD1は、図8に示すように、レーザビームの移動点としての座標(X座標、Y座標)を指定する座標データ部D1a、レーザビームの出力を設定する出力係数部D1b、及び、単位描画データD1が指定する座標へ到達する間にレーザビームを点灯するか否かを設定する制御フラグ部D1cを含む。
単位描画データD1は、実施の形態1では、8バイトのデータである。座標データ部D1aのうちX座標は、2バイトの符号付きバイナリデータであり、Y座標は、2バイトの符号付きバイナリデータである。出力係数部D1bは、レーザビームの出力を基準の出力に対して1000分率で設定する。制御フラグ部D1cには、座標が描画における最後の座標であるか否かを示す最終座標フラグと、レーザの点灯/消灯を指示するレーザビームフラグとが設けられている。最終座標フラグは、例えば、15ビット目のデータとして記述され、次の単位描画データD1が無く当該描画データD1が最後の単位描画データである場合には1が設定され、次の単位描画データD1が有り当該単位描画データD1が最後でない場合には0が設定される。レーザビームフラグは、例えば14ビット目のデータとして記述され、レーザビームを消灯する場合は0が設定され、レーザビームを点灯する場合には1が設定される。このような制御フラグ部D1cによって、バーコードに含まれる各線分を描画するための描画動作と、描画において線分同士を繋がないためのジャンプ(空走)動作を指示するようになっている。
描画データ生成部30は、描画指令に基づいて描画データを生成すると、制御データ生成部40へ描画データを渡す。
制御データ生成部40は、所定の速度でX軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12を動かし、所定のタイミングでレーザを点灯または消灯し、所定のタイミングでレーザ出力を変更するための制御データを描画データを基に生成する。X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12を定速で動かすためには、描画データの座標間を所定の速度タイミングで細かく指示する必要があり、また、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の追従遅れやレーザ装置2の応答特性を考慮し、レーザの発光タイミングをX軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の位置指定に対し遅らせる必要がある。さらに、リライタブル媒体100の位置に合わせ描画データの描画位置を全体的にオフセットさせる処理もここで行う。なお、レーザ照射装置1は、描画速度やレーザの発光タイミングの標準的な値を保持しているが、その値を外部から変更することも可能となっている。
図9は、実施の形態1の描画制御装置で用いる制御データのデータ構造の一例を示す図である。
制御データは、描画データを後述するDAコンバータに対して設定する値に変換したものであり、かかるデータを用意することで高速なデータ出力を可能にしている。制御データは、複数の単位制御データD2を含み、各単位制御データD2は、図9に示すように、X出力部D2a、Y出力部D2b、出力設定部D2c、データ間隔部D2d、制御フラグ部D2eを含む。X出力部D2aは、X軸ガルバノミラー11の位置制御値を指定する部分であり、Y出力部D2bは、Y軸ガルバノミラー12の位置制御値を指定する部分であり、出力設定部D2cは、レーザ出力の出力制御値を指定する部分であり、データ間隔部D2dは、当該単位制御データD2から次の単位制御データD2までの間隔が記述される部分である。制御フラグ部D1cには、レーザ発光フラグ、XY出力指定フラグ、出力指定フラグ、エンドフラグが設けられている。レーザ発光フラグは、例えば15ビット目に記述され、レーザビームを点灯させる場合には1が設定される。XY出力指定フラグは、例えば14ビット目に記述され、X軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12の位置制御値を出力する場合には1が設定される。出力指定フラグは、例えば13ビット目に記述され、レーザ出力の出力値を出力する場合には、1が設定される。エンドフラグは、例えば12ビット目に記述され、当該単位制御データD2が最終の単位制御データD2である場合には1が設定される。
制御データ生成部40は、描画データから制御データを生成すると、制御データ出力部50へ制御データを渡す。
制御データ出力部50は、制御データのうちの最初の単位制御データを受け取ると、描画開始の指示が入力されるまで待機する。単位制御データの受信と同時に描画を開始するモードも備えるが、標準的にはリライタブル媒体100をコンベアコントローラ等の別装置が移動させることから装置外部からの描画開始信号を受けて描画対象の描画を開始する。
制御データ出力部50は、描画を開始すると、次の単位制御データの出力タイミングを作るために、単位制御データを読み込んだ最初にデータ間各地を描画制御装置4が備えるCPUタイマに設定する。こうすることで、その後の処理に差異があってもタイミングを安定させることができる。次に、単位制御データのレーザ発光フラグの値をレーザ発光制御信号生成部80に出力し、単位制御データにおいてCY出力指定フラグが立っていれば、単位制御データのX出力部D2a、Y出力部D2bの値をガルバノミラー制御信号生成部60に出力し、単位制御データの出力指定フラグが立っていれば出力設定部D2cの値をレーザ出力制御信号生成部70に出力することで1サイクルの制御データ出力を完了する。そして、タイマ割り込みを待ち、次の制御データを出力することを繰り返す。エンドフラグが立っていたら描画を終了する。
ガルバノミラー制御信号生成部60には、16ビット分解能のDAコンバータが2チャネル設けられ、それぞれX軸サーボドライバ16とY軸サーボドライバ17とに接続される。レーザ出力制御信号生成部70には、16ビット分解能のDAコンバータが1チャネル設けられ、レーザ装置2と接続される。レーザ発光制御信号生成部80は、2値のデジタル信号ポートであリ、レーザ装置2と接続される。
以上の構成によって、制御データ生成部40、制御データ出力部50、ガルバノミラー制御信号生成部60、レーザ出力制御信号生成部70、及びレーザ発光制御信号生成部80を備える照射部90は、描画データに基づいてX軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12を駆動するとともに、レーザビームの出力に応じたレーザビームをリライタブル媒体100に照射する。
これにより、レーザ照射装置1は、描画データに基づいてX軸ガルバノミラー11及びY軸ガルバノミラー12を駆動して、リライタブル媒体100にレーザビームを照射してリライタブル媒体100に描画対象を描画する。
次に、実施の形態1の描画制御装置による描画データの生成処理について説明する。
図10は、実施の形態1の描画制御装置による描画データの生成処理を表すフローチャートである。
描画データ生成部30は、描画指令に基づき、バーコードに含まれる複数の線分のリライタブル媒体100上における位置(座標データ)を決定する(ステップS1)。このステップS1の処理は、具体的には、描画データ生成部30内の描画位置決定部31によって実行される処理である。
次いで、描画データ生成部30は、バーコードに含まれる各線分の描画順を決定する(ステップS2)。このステップS2の処理は、具体的には、描画データ生成部30内の描画順決定部32によって実行される処理であり、バーコードに含まれる複数の線分の描画順を一行ずつ決定する処理である。実施の形態1の描画制御装置では、各行の線分の描画順は、相隣接する行の描画方向を反転させながら描画対象を描画するように各行の描画順が決定される。すなわち、隣接する行同士の描画方向は、互いに逆方向に設定される。
なお、「相隣接する行」には、互いに隣接する行だけでなく、互いに隣接して重複する行も含まれることとする。
次に、描画データ生成部30は、各線分を描画するためのレーザ出力の調整、及び点灯/消灯の設定を行う(ステップS3)。このステップS3の処理は、具体的には、描画データ生成部30内のレーザ出力調整部33によって実行される処理であり、ステップS2で描画順が決定された各行の描画開始位置から描画終了位置にかけてのレーザ出力を設定する処理である。
ステップS3では、各行のうち1行目の線分については描画開始位置から描画終了位置まで同一のレーザ出力(例えば、レーザ装置2の定格出力)に設定し、各行のうち2行目以降の線分については、線分をさらに単位線分に分け、線分の描画開始位置から描画終了位置にかけて、レーザ出力が単位線分毎に増大するようにレーザ出力を設定する処理である。例えば、2行目以降の線分について一行の線分を10個の単位線分に分割する場合は、レーザ出力が千分率で820、840、860、880、900、920、940、960、980、1000と段階的に増大するように設定される。すなわち、描画開始位置におけるレーザ出力は、レーザ装置2の最大出力(定格出力)の840/1000の出力であり、レーザ出力は段階的に増大されて描画終了位置において最大出力(1000/1000)となるように設定される。
このようなレーザ出力の設定は、例えば、図11に示すように、単位線分の識別子と、各単位線分におけるレーザ出力とを予め定めたテーブル形式のデータをレーザ出力調整部33が参照することによって実現することができる。なお、図11に示すデータでは、一行の線分の分割数が10であり、単位線分の識別子は、一行の線分の描画開始位置から描画終了位置にかけて番号が振られている。
このように、実施の形態1では、2行目以降の線分について各行の描画開始位置から描画終了位置にかけて、レーザによってリライタブル媒体100が受けるエネルギ量を増大させる。
次いで、描画データ生成部30は、線分の描画速度を設定する(ステップS4)。このステップS4の処理は、具体的には、描画データ生成部30内の描画速度調整部34によって実行される処理であり、一行の描画開始位置から描画終了位置にわたる線分(すなわち、ステップS3で分割された10個の単位線分を含む1つの線分)を描画する描画速度を決定する処理である。実施の形態1では、描画速度は、千分率で1000に設定される。
次いで、描画データ生成部30は、描画データを生成する(ステップS5)。これにより、図8に示す描画データが各単位線分について生成される。
次いで、描画データ生成部30は、すべての行の線分について描画データの生成が終了したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の処理は、すべての行の線分に含まれるすべての単位線分について図8に示す描画データが生成されたか否かを判定する処理である。
ステップS6において、すべての行の線分についての設定が終了していないと判定した場合は、描画データ生成部30は、フローをステップS3にリターンする。これにより、ステップS3乃至S6の処理が繰り返し実行され、すべての行の線分についてレーザ出力と描画速度が設定されることになる。
ステップS6において、すべての行の線分についての設定が終了したと判定した場合は、生成された描画データが図9に示す制御データに変換され、描画が行われる。
図12は、実施の形態1の描画制御装置によって生成される描画データに基づく描画手法を説明する図である。
実施の形態1の描画制御装置によって生成される描画データは、相隣接する行の描画方向を反転させながら描画対象を描画するように各行の描画順を決定するため、各行の描画順は、図12(a)に実線の矢印で示すように、隣接する行同士で、描画方向がX軸方向において互いに逆方向となる。すなわち、実施の形態1では、相隣接する行の描画方向を反転させながら描画対象を描画する。
図12(a)に実線で示す矢印は、線分を描画する位置及び方向を示し、矢印の起点は描画開始位置を表し、矢印の先端は描画終了位置を示す。また、破線でY軸方向に示す矢印は、ジャンプ(空走)を示す。なお、実施の形態1の描画制御装置では、各行を描画する間に待機時間は挿入しない。
また、実施の形態1の描画制御装置では、1行目の線分についてのレーザ出力は描画開始位置から描画終了位置まで一定であるが、2行目以降の線分についてのレーザ出力は、各行の描画開始位置から描画終了位置にかけて(単位線分毎に)段階的に増大するように設定されているため、2行目以降の各行の線分は、図12(b)に示すように、描画開始位置から描画終了位置にかけて、線分の太さが徐々に太くなる。
このような描画方法は、図12(c)に示すタイムチャートの通りに実行される。図12(c)において、X座標方向ビーム速度はX軸方向の描画速度を表し、1行目から5行目の線分についてすべて同一、かつ時間経過に対して一定の速度に設定される。各線分の間でX座標方向ビーム速度が零(0)になっている区間は、図12(a)に破線で示すジャンプ(空走)の区間に相当する。
レーザ出力は、1行目の線分については描画開始位置から描画終了位置まで(1000/1000で)一定であるが、2行目から5行目の線分のすべてにおいて、描画開始位置から描画終了位置にかけて(すなわち、時間の経過に伴って)820/1000から1000/1000まで増大するように設定されている。
このような描画方法によるビームのX座標位置とY座標位置は、図12(c)に示す通りとなる。
ここで、図12(b)に示す1行目の線分をX軸方向における正(+)の方向に描画し終えた後に、2行目の線分をX軸方向における負(−)の方向に描画する際に、1行目の線分における描画開始位置(図中X軸方向における左端)よりも描画終了位置(図中X軸方向における右端)の方がレーザ照射による熱が多く残存した状態となる。
しかしながら、実施の形態1の描画制御装置では、2行目の線分をX軸方向における負(−)の方向に描画する際に、描画開始位置(図中X軸方向における右端)から描画終了位置(図中X軸方向における左端)にかけて段階的にレーザ出力を増大するので、2行目の線分の描画開始位置側と描画終了位置側とでリライタブル媒体100が受ける熱エネルギのバランスが取られることになる。これは、2行目の3行目の線分同士の間、3行目の4行目の線分同士の間、4行目の5行目の線分同士の間においても同様である。
この結果、従来技術の問題点として図3(b)に示したような塗りむらを抑制することができ、きれいな塗り潰しが得られる。また、実施の形態1の描画制御装置によれば、各線分を描画する間に待機時間を要しないため、描画対象全体を描画するための描画時間の短縮化を図ることができる。また、従来は塗りむらを抑制するためにレーザ出力を通常よりも増大することが行われていたが、実施の形態1の描画制御装置によれば、レーザ装置2の最大出力値(定格値)を上昇させる必要がないため、リライタブル媒体100に局所的に多くの熱量を加えることが無く、リライタブル媒体100の破損が抑制され、長寿命化を図ることができる。
以上、実施の形態1の描画制御装置によれば、相隣接する行の描画方向を反転させながら描画対象を描画する際に、各行の描画開始位置から描画終了位置にかけてレーザ出力を増大させるので、塗りむらを抑制することができ、きれいな塗り潰しが得られる。また、描画時間の短縮化と、リライタブル媒体100の長寿命化を図ることができる。
なお、以上では、1行目の線分を描画するレーザ出力については描画開始位置から描画終了位置まで一定とし、2行目以降の各行の線分を描画する出力を描画開始位置から描画終了位置にかけて増大させる形態について説明した。しかしながら、例えば、レーザ出力やリライタブル媒体100の熱特性等により、1行目の線分についても描画開始位置から描画終了位置にかけて増大させる方が綺麗に描画を行える場合は、1行目の線分についてもレーザ出力が描画開始位置から描画終了位置にかけて増大するように設定してもよい。
また、以上では、2行目以降の各行の線分の描画開始位置におけるレーザ出力が描画終了位置におけるレーザ出力の820/1000である形態について説明した。これは、各行の描画開始位置におけるレーザ出力は、描画終了位置におけるレーザ出力の約8割程度であることが好ましいという結果が得られたことに基づくものである。しかしながら、各行の線分の描画開始時におけるレーザ出力は、上述した値に限定されるものではなく、レーザ装置2の定格出力やリライタブル媒体100の熱特性等に応じて適切な値に設定することができる。
また、以上では、各行の線分を10個の単位線分に分割して単位線分毎にレーザ出力を設定する形態について説明したが、レーザ出力が同一の値に設定される単位線分が連続するようにしてもよい。
また、単位線分の数は10に限らず、任意の値をとることができる。また、必ずしも各行の線分を複数の単位線分に分割する必要はなく、一本の線分を描画するためのレーザ出力を描画開始位置から描画終了位置にかけて連続的に増大させるようにしてもよい。
また、以上では、各行の描画開始位置から描画終了位置にかけてレーザ出力を増大させることにより、レーザによってリライタブル媒体100が受けるエネルギ量を増大させるように構成したが、描画開始位置から描画終了位置にかけてのレーザ出力を一定にするとともに、描画開始位置から描画終了位置にかけて描画速度を徐々に低下させることによってレーザによってリライタブル媒体100が受けるエネルギ量を増大させるように構成してもよい。
図13は、実施の形態1の変形例による描画制御装置によって生成される描画データに基づく描画手法を説明する図である。
図13に示す描画手法では、1行目の線分を描画する描画速度は一定(千分率で1000/1000、1000は図12に示す1000の描画速度と同一)であるが、2行目以降の各行の線分を描画する描画速度は、描画開始位置から描画終了位置にかけて徐々に低下するように設定されている。また、各行の線分を描画するレーザ出力は、画開始位置から描画終了位置にかけて一定に設定されている。これは、図11に示したレーザ出力についてのテーブル形式のデータと同様のテーブル形式のデータを描画速度について作成し、2行目以降の線分について描画データ生成部30の描画速度調整部34が参照するように構成することによって実現することができる。すなわち、2行目以降の各行の線分を10個の単位線分に分割し、各単位線分の描画速度を段階的に低い値に設定すればよい。例えば、描画速度の標準値が千分率で1000である場合に、2行目以降の線分に含まれる10個の単位線分について、描画開始位置から描画終了位置にかけて、1180、1160、1140、1120、1100、1080、1060、1040、1020、1000と低下するように構成したテーブル形式の描画速度のデータを描画速度調整部34が参照するようにすればよい。なお、図13に示す実施の形態1の変形例の描画制御装置においては、描画速度調整部34が調整手段として機能することになる。
このように、レーザ出力を一定にしつつ描画速度を徐々に下げることによっても、各線分の描画開始位置側と描画終了位置側とでリライタブル媒体100が受ける熱エネルギのバランスが取ることができ、塗りむらを抑制して、きれいな塗り潰しを描画することができる。また、各線分を描画する間に待機時間を要しないため、描画対象全体を描画するための描画時間の短縮化を図ることができる。また、レーザ出力の最大値を上昇させることなく描画を行うことができるため、リライタブル媒体100に局所的に多くの熱量を加えることが無く、リライタブル媒体100の長寿命化を図ることができる。
[実施の形態2]
図14は、実施の形態2の描画制御装置204のブロック構成を示す図である。
実施の形態2の描画制御装置204は、描画データ生成部230が線分の描画開始位置と描画終了位置の座標を変更する描画位置変更部235を含む点が実施の形態1の描画制御装置4と異なる。その他の構成は、実施の形態1の描画制御装置4と同一であるため、同一の要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
図15は、実施の形態2の描画制御装置によって生成される描画データに基づく描画手法を説明する図である。
実施の形態2の描画制御装置204による描画手法は、2行目以降の各行の線分を所定数(ここでは10)の単位線分に分け、線分の描画開始位置側から描画終了位置側にかけて、単位線分毎にレーザ出力を増大させる点は実施の形態1の描画手法と同一である。なお、実施の形態1と同様に、図15(a)で線分の描画順を示す実線の矢印は、起点が描画開始位置を示し、矢印の先端が描画終了位置を示す。
実施の形態2の描画制御装置204は、図15(a)に示すように、2行目以降の行の線分の描画開始位置をY軸−方向にずらして描画を行うものである。描画開始位置の変更は、描画位置変更部235が描画データに含まれる線分の描画開始位置のY座標値を変更することによって実現される。
このように、2行目以降の行の描画開始位置を変更するのは、2行目以降では、前の行の描画によってリライタブル媒体100に残存する熱は、前の行の描画開始位置側よりも描画終了位置側で多い。このため、次の行の描画開始位置を前の行の描画終了位置から遠ざけることにより、前の行の描画とその次の行の描画とによってリライタブル媒体100が受ける熱量を重複部分及びその周辺で、よりバランス良くするためである。
ここで、2行目以降の行の線分の描画開始位置をY軸−方向にずらす量は、描画される線分の幅(Y軸方向の幅)の1/6〜2/3であることが好適である。
図16は、実施の形態2の描画制御装置による描画データの生成処理を表すフローチャートである。
ステップS201、S202は、図10に示すステップS1、S2とそれぞれ同一である。
ステップS202で描画順が決定されると、描画データ生成部30は、2行目以降の線分について描画開始位置の座標を変更する処理を行う(ステップS203)。このステップS203の処理は、描画データ生成部30内の描画位置変更部235が実行する処理であり、図15を用いて上述したように、2行目以降の線分の描画開始位置を前の線分から遠ざけるために行う処理である。
ステップS203の処理が終了すると、描画データ生成部30は、フローをステップS204に進行させる。ステップS204乃至S208の処理は、実施の形態1におけるステップS3乃至S7の処理と基本的に同一であるが、ステップS206で生成される描画データに含まれる2行目以降の線分のY座標は、描画位置変更部235によって変更された座標値となる点が実施の形態1と異なる。
ステップS204乃至S207の処理が繰り返し実行され、すべての行の線分についてレーザ出力と描画速度が設定されると、ステップS208において、生成された描画データが制御データ(図9参照)に変換され、描画が行われる。
以上、実施の形態2の描画制御装置によれば、相隣接する行の描画方向を反転させながら描画対象を描画する際に、2行目以降の線分の描画開始位置を前の線分から遠ざけるように座標値を変更するとともに、各行の描画開始位置から描画終了位置にかけてレーザ出力を増大させる。
このため、相隣接する線分の重複部分及びその周辺で、リライタブル媒体100が受ける熱量のバランスが良好になり、塗りむらを抑制して、きれいな塗り潰しを得ることができる。また、実施の形態2の描画制御装置によれば、各線分を描画する間に待機時間を要しないため、描画対象全体を描画するための描画時間の短縮化を図ることができる。また、リライタブル媒体100の長寿命化を図ることができる。
なお、以上では、2行目以降の行の線分の描画開始位置をY軸−方向に(前の行よりも遠ざける方向に)ずらす形態について説明したが、これに加えて、描画終了位置についても位置をずらすようにしてもよい。すなわち、2行目以降の行の線分の描画開始位置をY軸−方向にずらすとともに、同線分の描画終了位置をY軸+方向にずらしてから2行目以降の描画を行うように構成してもよい。このような描画開始位置と描画終了位置の変更は、レーザ装置2のレーザ出力やリライタブル媒体100の熱特性等に応じて適切な値を選択して行えばよい。
なお、以上の実施の形態1、2では、描画対象がバーコードである場合について説明したが、実施の形態1、2の描画制御装置によって制御される描画装置が描画する描画対象は、バーコードに限られるものではなく、文字、数字、記号、又は図形等であってもよい。
また、実施の形態1、2のレーザ照射装置1で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、実施の形態1、2のレーザ照射装置1で案行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、実施の形態1のレーザ照射装置1で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
次に、実施の形態3及び4について説明する。
(描画制御方法)
本発明の描画制御方法は、画像記録工程、及び画像消去工程の少なくともいずれかを含む。なお、本発明の前記描画制御方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非可逆の記録媒体に対する画像形成方法として用いることもできるが、可逆性を有する熱可逆記録媒体に対する画像の記録及び消去を行う描画制御方法として用いることが好ましい。
<画像記録工程>
前記画像記録工程は、熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体にレーザ光描画線で形成される画像を記録する工程である。
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の出力の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1W以上が好ましく、3W以上がより好ましく、5W以上が特に好ましい。
前記レーザ光の出力が、1W未満であると、画像記録に時間がかかり、画像記録時間を短くしようとすると出力が不足してしまう。
また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が特に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くことがある。
前記画像記録工程において照射されるレーザ光の走査速度の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300mm/s以上が好ましく、500mm/s以上がより好ましく、700mm/s以上が特に好ましい。
前記走査速度が、300mm/s未満であると、画像記録に時間がかかる。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15,000mm/s以下が好ましく、10,000mm/s以下がより好ましく、8,000mm/s以下が特に好ましい。
前記走査速度が、15,000mm/sを超えると、均一な画像が形成し難くなる。
前記画像記録工程において照射されるレーザ光のスポット径の下限としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.02mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましく、0.15mm以上が特に好ましい。
また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3.0mm以下が好ましく、2.5mm以下がより好ましく、2.0mm以下が特に好ましい。
前記スポット径が、0.02mm未満であると、画像の線幅が細くなり、視認性が低下する。また、前記スポット径が3.0mmを超えると、画像の線幅が太くなり、隣接する線が重なり、小さいサイズの画像記録が不可能となる。
前記レーザ光のレーザ光源としては、特に制限はないが、目的に応じて適宜選択することができるが、YAGレーザ光、ファイバーレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
<画像消去工程>
前記画像消去工程は、前記熱可逆記録媒体に対してレーザ光を照射して加熱することにより前記熱可逆記録媒体に記録された前記画像を消去する工程である。
前記画像消去工程において照射されるレーザ光の出力の下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5W以上が好ましく、7W以上がより好ましく、10W以上が特に好ましい。
前記レーザ光の出力が、5W未満であると、画像消去に時間がかかり、画像消去時間を短くしようとすると出力が不足して画像の消去不良が発生する。
また、前記レーザ光の出力の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200W以下が好ましく、150W以下がより好ましく、100W以下が特に好ましい。前記レーザ光の出力が、200Wを超えると、レーザ装置の大型化を招くおそれがある。
前記画像消去工程において照射されるレーザ光の走査速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100mm/s以上が好ましく、200mm/s以上がより好ましく、300mm/s以上が特に好ましい。
前記走査速度が、100mm/s未満であると、画像消去に時間がかかる。
また、前記レーザ光の走査速度の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20,000mm/s以下が好ましく、15,000mm/s以下がより好ましく、10,000mm/s以下が特に好ましい。
前記走査速度が、20,000mm/sを超えると、均一な画像消去がし難くなることがある。
前記熱可逆記録媒体に対し、レーザ光を照射して加熱することにより画像を消去する画像消去工程において照射されるレーザ光のスポット径としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上がより好ましく、2.0mm以上が特に好ましい。また、前記レーザ光のスポット径の上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、14.0mm以下が好ましく、10.0mm以下がより好ましく、7.0mm以下が特に好ましい。
前記スポット径が0.5mm未満であると、画像消去に時間がかかる。また、スポット径が14.0mmを超えると、出力が不足して画像の消去不良が発生することがある。
前記レーザ光のレーザ光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、YAGレーザ光、ファイバーレーザ光、及び半導体レーザ光の少なくともいずれかであることが好ましい。
前記画像記録工程及び前記画像消去工程において照射されるレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が特に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が特に好ましい。
レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また熱可逆記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
本発明の描画制御方法は、前記画像記録工程及び前記画像消去工程の少なくともいずれかが、第1の始点から第1の終点に第1のレーザ光描画線を描画し、第2の始点から第1のレーザ光描画線と平行な線に対して前記第1の始点側に傾く方向の線上に位置する第2の終点に向けて、前記第1のレーザ光描画線に隣接する第2のレーザ光描画線を描画することを含む。
前記描画制御方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記第2のレーザ光描画線の描画後に、第3の始点から第2のレーザ光描画線と平行な線に対して第2の始点側に傾く方向の線上に位置する第3の終点に向けて、前記第2のレーザ光描画線に隣接する第3のレーザ光描画線を描画することが好ましい。
この方法によれば、第2のレーザ光描画線の終点及び第3のレーザ光描画線の始点との間の折曲り部における第2のレーザ光描画線の終点印字直後に第3の描画線の始点を印字することによる蓄熱の影響を低減することが可能となる。
この際、前記第3の描画線としては、特に制限はないが、前記第1のレーザ光描画線と平行に描画されることが好ましい。
この方法によると、画像記録領域及びベタ画像印字領域において、濃度ムラなく画像記録及び画像消去を行うことができる。
なお、平行とは、厳密に平行である場合に加え、画像処理上の性能に基づき略平行となる場合を含む。
また、前記描画制御方法は少なくとも傾斜した描画線を含むものであるが、隣接する描画線の一部において、平行で同一方向の描画線が描画されることが含まれることもある。
つまり、複数線で形成されるベタ画像の大きさにより描画線が偶数本になる場合に、最後の傾きを持った描画線により前記描画線で形成されたベタ画像が傾きを持ってしまうので、その場合、1本は平行にすることが望ましい。
また、始点及び終点とは、本明細書において特に断りのない限り、連続した描画線における始点及び終点に加え、連続した描画線が折曲げ部を含む場合、該折曲げ部の角を始点及び終点とする場合を含む。
前記描画制御方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一のレーザ光描画線の終点と、該レーザ光描画線に隣接する他のレーザ光描画線の始点との間においてレーザ光を照射しないことが好ましい。
この方法によれば、レーザ光走査を短時間で行うことが可能で、ベタ画像印字、消去を短時間で可能であり、折曲り部での蓄熱影響を低減することが可能となる。
また、前記一のレーザ光描画線の終点から、該レーザ光描画線と直交する方向の線上に前記他のレーザ光描画点の始点が位置するように描画することが好ましい。
この方法によれば、矩形状の描画セル内にベタ画像を濃度ムラなく、効率的に印字記録することができる。また、印字記録された画像を効率よく消去することができる。
更に、前記描画制御方法としては、特に制限はないが、第1のレーザ光描画線におけるレーザ光の照射エネルギーが、他の描画線におけるレーザ光の照射エネルギーより高いことが好ましい。
この場合、前記第1のレーザ光描画線は、描画対象となる領域に対して最初に描画され、前記他の描画線は、該第1のレーザ光描画線の描画による蓄熱を利用しながら描画することができるため、前記第1のレーザ光描画線は、前記他の描画線におけるレーザ光の照射エネルギーより高いエネルギーで描画し、前記他の描画線を前記第1のレーザ光描画線より低いエネルギーで描画することで、過剰なエネルギーが加わることを抑制することができる。
以下に本発明の形態について図5a及び図5bを用いて、本発明の実施の形態3及び実施の形態4について説明する。
図5aは、本発明の実施の形態3に係る画像記録、画像消去を行う際のレーザ光走査方法を示す図である。図5aに示すように、実施の形態3に係るレーザ光走査方法は、図4aのレーザ光走査方法のように、第2のレーザ光描画線412が第1のレーザ光描画線411に平行でなく、第1のレーザ光描画線451に対して、第2のレーザ光描画線452を傾けてレーザ光を走査させるものである。すなわち、第1のレーザ光描画線451の終点と第2のレーザ光描画線452の始点との間の第1距離が第1のレーザ光描画線451の始点と第2のレーザ光描画線452の終点との間の第2距離よりも長くなるように描画位置を調整する。
第1のレーザ光描画線451に対して第2のレーザ光描画線452を傾けるとは、図5aのピッチ幅に対する傾け量が、(傾け量)/(ピッチ幅)が0.1以上であることを示す。
前記(傾け量)/(ピッチ幅)としては、0.1以上であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該(傾け量)/(ピッチ幅)は小さいと蓄熱影響の低減が小さくなり、大きすぎると媒体への印加エネルギーが不十分となることから、0.2〜0.8が好ましい。
ここで、本明細書において、傾け量とは、第2のレーザ光描画線の長さ方向における中心地点と、第1のレーザ光描画線との間の最短距離を示す。
また、ピッチ幅とは、第2のレーザ光描画線の長さ方向における中心地点と、第2の始点から第1のレーザ光描画線と平行に引かれた線との最短距離を示す。
該描画制御方法によれば、レーザ光走査を短時間で行うことが可能で、ベタ画像印字、消去を短時間で可能であり、折曲り部での蓄熱影響(第1のレーザ光描画線1の終点印字直後に第2のレーザ光描画線2の始点を印字することによる)を低減することが可能となる。
図5bは、本発明の実施の形態4に係る画像記録、画像消去を行う際のレーザ光走査方法を示す図である。該図5bに示すように、実施の形態4に係るレーザ光走査方法は、図4bのレーザ光走査方法のように、第2のレーザ光描画線412が第1のレーザ光描画線411に平行でなく、第1のレーザ光描画線451に対して、第2のレーザ光描画線452を傾けてレーザ光を走査させるものである。
また、該描画制御方法によれば、実施の形態3における効果に加え、第1終点から第2始点までの折曲げ部に相当する領域においてレーザ光が照射されないことから、折曲り部の速度低下により過剰に媒体にエネルギーを印加することを避けることができ、特に好ましい。
なお、実施の形態4において、第1終点から第2始点までの折曲げ部に相当する領域においてレーザ光が照射されないこと以外は、実施の形態3と同様とすることができ、実施の形態3において説明した事項を適用することができる。
<熱可逆記録媒体>
前記熱可逆記録媒体は、温度に依存して透明度及び色調のいずれかが可逆的に変化するものである。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、支持体と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層と、光熱変換層と、第2の熱可逆記録層とをこの順に有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、第1の酸素バリア層、第2の酸素バリア層、紫外線吸収層、バック層、保護層、中間層、アンダーコート層、接着層、粘着層、着色層、空気層、光反射層等のその他の層を有してなる。これら各層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。ただし、前記光熱変換層の上に設ける層においては、照射する特定波長のレーザ光のエネルギーロスを少なくするために該特定波長において吸収の少ない材料を用いて層を構成させることが好ましい。
ここで、熱可逆記録媒体500の層構成としては、図17aに示すように、支持体501と、該支持体上に、第1の熱可逆記録層502と、光熱変換層503と、第2の熱可逆記録層504とをこの順に有する態様がある。
また、図17bに示すように、支持体501と、該支持体上に、第1の酸素バリア層505、第1の熱可逆記録層502と、光熱変換層503と、第2の熱可逆記録層504と、第2の酸素バリア層506とをこの順に有する態様がある。
また、図17cに示すように、支持体501と、該支持体上に、第1の酸素バリア層505、第1の熱可逆記録層502と、光熱変換層503と、第2の熱可逆記録層504と、紫外線吸収層507と、第2の酸素バリア層506とをこの順に有してなり、支持体501の熱可逆記録層等を有していない側の面にバック層508を有する態様がある。
なお、図示を省略しているが、図17aの第2の熱可逆記録層504上、図17bの第2の酸素バリア層506上、図17cの第2の酸素バリア層506上の最表層に保護層を形成してもよい。
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記熱可逆記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材料としては、例えば、無機材料、有機材料などが挙げられる。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、紙、三酢酸セルロース等のセルロース誘導体、合成紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のフィルムなどが挙げられる。
前記無機材料及び前記有機材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機材料が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等のフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
前記支持体には、塗布層の接着性を向上させることを目的として、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理、などを行うことにより表面改質するのが好ましい。
前記支持体に、酸化チタン等の白色顔料などを添加することにより、白色にするのが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10μm〜2,000μmが好ましく、50μm〜1,000μmがより好ましい。
−第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層−
前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層(以下、「熱可逆記録層」と称することがある)は、いずれも電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である顕色剤を含み、熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録層であり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
前記熱により色調が可逆的に変化する電子供与性呈色性化合物であるロイコ染料、電子受容性化合物である可逆性顕色剤は、温度変化により目に見える変化を可逆的に生じる現象を発現可能な材料であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の違いにより、相対的に発色した状態と消色した状態とに変化可能である。
−−ロイコ染料−−
前記ロイコ染料は、それ自体無色又は淡色の染料前駆体である。該ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、トリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、チオフェルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好適に挙げられる。これらの中でも、発消色特性、色彩、保存性等に優れる点で、フルオラン系又はフタリド系のロイコ染料が特に好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、異なる色調に発色する層を積層することにより、マルチカラー、フルカラーに対応させることもできる。
−−可逆性顕色剤−−
前記可逆性顕色剤としては、熱を因子として発消色を可逆的に行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(1)前記ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造(例えば、フェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基等)、及び、(2)分子間の凝集力を制御する構造(例えば、長鎖炭化水素基が連結した構造)、から選択される構造を分子内に1つ以上有する化合物が好適に挙げられる。なお、連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していてもよく、また、長鎖炭化水素基中にも、同様の連結基及び芳香族基の少なくともいずれかが含まれていてもよい。
前記(1)ロイコ染料を発色させる顕色能を有する構造としては、フェノールが特に好ましい。
前記(2)分子間の凝集力を制御する構造としては、炭素数8以上の長鎖炭化水素基が好ましく、該炭素数は11以上がより好ましく、また炭素数の上限としては、40以下が好ましく、30以下がより好ましい。
前記可逆性顕色剤の中でも、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるフェノール化合物がより好ましい。
Figure 0005708859
Figure 0005708859
ただし、前記一般式(1)及び(2)中、Rは、単結合又は炭素数1〜24の脂肪族炭化水素基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数2以上の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。Rは、炭素数1〜35の脂肪族炭化水素基を表し、該炭素数としては、6〜35が好ましく、8〜35がより好ましい。これらの脂肪族炭化水素基は、1種単独で有していてもよいし、2種以上を併用して有していてもよい。
前記R、前記R、及び前記Rの炭素数の和としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、下限としては、8以上が好ましく、11以上がより好ましく、上限としては、40以下が好ましく、35以下がより好ましい。
前記炭素数の和が、8未満であると、発色の安定性や消色性が低下することがある。
前記脂肪族炭化水素基は、直鎖であってもよいし、分枝鎖であってもよく、不飽和結合を有していてもよいが、直鎖であるのが好ましい。また、前記炭化水素基に結合する置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
X及びYは、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、N原子又はO原子を含む2価の基を表し、具体例としては、酸素原子、アミド基、尿素基、ジアシルヒドラジン基、シュウ酸ジアミド基、アシル尿素基等が挙げられる。これらの中でも、アミド基、尿素基が好ましい。
nは、0〜1の整数を示す。
前記電子受容性化合物(顕色剤)は、消色促進剤として分子中に−NHCO−基、−OCONH−基を少なくとも一つ以上有する化合物を併用することにより、消色状態を形成する過程において消色促進剤と顕色剤の間に分子間相互作用が誘起され、発消色特性が向上するので好ましい。
前記消色促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記熱可逆記録層には、バインダー樹脂、更に必要に応じて熱可逆記録層の塗布特性や発色消色特性を改善、制御するための各種添加剤を用いることができる。これらの添加剤としては、例えば、界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤、消色促進剤などが挙げられる。
−−バインダー樹脂−−
前記バインダー樹脂としては、支持体上に熱可逆記録層を結着することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、従来から公知の樹脂の中から1種又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱硬化性樹脂が好適である。該熱硬化性樹脂としては、例えば、水酸基やカルボキシル基等の架橋剤と反応する基を持つ樹脂、又は水酸基やカルボキシル基等を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂などが挙げられる。このような熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、等が挙げられる。これらの中でも、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂が特に好ましい。
前記熱可逆記録層中における前記発色剤とバインダー樹脂との混合割合(質量比)は、発色剤1に対して0.1〜10が好ましい。バインダー樹脂が少なすぎると、前記熱可逆記録層の熱強度が不足することがあり、一方、バインダー樹脂が多すぎると、発色濃度が低下して問題となることがある。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート類、アミノ樹脂、フェノール樹脂、アミン類、エポキシ化合物、等が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート類が好ましく、特に好ましくはイソシアネート基を複数持つポリイソシアネート化合物である。
前記架橋剤のバインダー樹脂に対する添加量としては、特に制限はないが、バインダー樹脂中に含まれる活性基の数に対する架橋剤の官能基の比は0.01〜2が好ましい。これ以下では熱強度が不足してしまい、また、これ以上添加すると発色及び消色特性に悪影響を及ぼす。
更に、架橋促進剤としてこの種の反応に用いられる触媒を用いてもよい。
前記熱架橋した場合の熱硬化性樹脂のゲル分率としては、特に制限はなく、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上が特に好ましい。前記ゲル分率が30%未満であると、架橋状態が十分でなく耐久性に劣ることがある。
前記バインダー樹脂が架橋状態にあるのか非架橋状態にあるのかを区別する方法としては、例えば、塗膜を溶解性の高い溶媒中に浸すことによって区別することができる。即ち、非架橋状態にあるバインダー樹脂は、溶媒中に該樹脂が溶けだし溶質中には残らなくなる。
前記熱可逆記録層におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像の記録を容易にする観点から、界面活性剤、可塑剤などが挙げられる。
前記熱可逆記録層用塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は公知の方法を用いることができる。
なお、熱可逆記録層用塗布液は前記分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散してもよいし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせてもよい。更に加熱溶解して急冷又は徐冷によって析出させてもよい。
前記熱可逆記録層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)前記樹脂、及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を溶媒中に溶解乃至分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にするのと同時に又はその後に架橋する方法、(2)前記樹脂のみを溶解した溶媒に前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤を分散させた熱可逆記録層用塗布液を支持体上に塗布し、該溶媒を蒸発させてシート状等にすると同時に又はその後に架橋する方法、(3)溶媒を用いず、前記樹脂と前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤とを加熱溶融して互いに混合し、この溶融混合物をシート状等に成形して冷却した後に架橋する方法、などが好適に挙げられる。なお、これらにおいて、前記支持体を用いることなく、シート状の熱可逆記録媒体として成形することもできる。
前記(1)又は(2)において用いる溶剤としては、前記樹脂及び前記ロイコ染料及び可逆性顕色剤の種類等によって異なり一概には規定することはできないが、例えば、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム、四塩化炭素、エタノール、トルエン、ベンゼンなどが挙げられる。
なお、前記可逆性顕色剤は、前記熱可逆記録層中では粒子状に分散して存在している。
前記熱可逆記録層用塗布液には、コーティング材料用としての高度な性能を発現させる目的で、各種顔料、消泡剤、顔料、分散剤、スリップ剤、防腐剤、架橋剤、可塑剤等を添加してもよい。
前記熱可逆記録層の塗工方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ロール状で連続して、又はシート状に裁断した支持体を搬送し、該支持体上に、例えば、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法で塗布する。
前記熱可逆記録層用塗布液の乾燥条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温〜140℃の温度で、10秒間〜10分間程度、などが挙げられる。
前記熱可逆記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1μm〜20μmが好ましく、3μm〜15μmがより好ましい。前記熱可逆記録層の厚みが薄すぎると発色濃度が低くなるため画像のコントラストが低くなることがあり、一方、厚すぎると層内での熱分布が大きくなり、発色温度に達せず発色しない部分が発生し、希望とする発色濃度を得ることができなくなることがある。
−光熱変換層−
前記光熱変換層は、前記レーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。また熱可逆記録層と光熱変換層の間に両層が相互作用を抑制する目的でバリア層を形成することがあり、材料として熱伝導性のよい層が好ましい。前記熱可逆記録層と光熱変換層の間に挟む層は、目的に応じて適宜選択することができ、これらに限定されるものではない。
前記光熱変換材料は、無機系材料と有機系材料とに大別できる。
前記無機系材料としては、例えば、カーボンブラックやGe、Bi、In、Te、Se、Cr等の金属又は半金属及びそれを含む合金が挙げられ、これらは、真空蒸着法や粒子状の材料を樹脂等で接着して層状に形成される。
前記有機系材料としては、吸収すべき光波長に応じて各種の染料を適宜用いることができるが、光源として半導体レーザを用いる場合には、700nm〜1,500nmの波長範囲内に吸収ピークを有する近赤外吸収色素が用いられる。具体的には、シアニン色素、キノン系色素、インドナフトールのキノリン誘導体、フェニレンジアミン系ニッケル錯体、フタロシアニン系化合物などが挙げられる。繰返し画像処理を行うためには、耐熱性に優れた光熱変換材料を選択するのが好ましく、この点からフタロシアニン系化合物が特に好ましい。
前記近赤外吸収色素は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光熱変換層を設ける場合には、通常、前記光熱変換材料は、樹脂と併用して用いられる。該光熱変換層に用いられる樹脂としては、特に制限はなく、前記無機系材料及び有機系材料を保持できるものであれば、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが好ましく、前記記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。これらの中でも、繰り返し時の耐久性を向上させるため、熱、紫外線、電子線などによって硬化可能な樹脂が好ましく用いられ、特にイソシアネート系化合物などを架橋剤として用いた熱架橋樹脂が好ましい。前記バインダー樹脂において、その水酸基価は50mgKOH/g〜400mgKOH/gであることが好ましい。
前記光熱変換層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜20μmであることが好ましい。
−第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層−
第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層(以下、単に酸素バリア層と称することがある)としては、熱可逆記録層に酸素が進入することを防ぐことにより、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を防止する目的で、第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層の上下に酸素バリア層を設けることが好ましい。即ち、支持体と第1の熱可逆記録層との間に第1の酸素バリア層を設け、第2の熱可逆記録層上に第2の酸素バリア層を設けることが好ましい。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、可視部の透過率が大きく、酸素透過度が低い樹脂又は高分子フィルム等が挙げられる。該酸素バリア層は、その用途、酸素透過性、透明性、塗工のしやすさ、接着性等によって選択される。
前記酸素バリア層の具体例としては、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリロニトリル、ポリアルキルビニルエステル、ポリアルキルビニルエーテル、ポリフッ素化ビニル、ポリスチレン、酢酸ビニル共重合体、酢酸セルロース、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、アセトニトリル共重合体、塩化ビニリデン共重合体、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン−6及びポリアセタール等の樹脂、又はポリエチレンテレフタレートやナイロン等の高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したシリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム、シリカ/アルミナ蒸着フィルムなどが挙げられる。これらの中でも高分子フィルム上に無機酸化物を蒸着したフィルムが好ましい。
前記酸素バリア層の酸素透過度としては、特に制限はないが、20ml/m/day/MPa以下が好ましく、5ml/m/day/MPa以下がより好ましく、1ml/m/day/MPa以下が特に好ましい。前記酸素透過度が、20ml/m/day/MPaを超えると、前記第1の熱可逆記録層及び第2の熱可逆記録層中のロイコ染料の光劣化を抑制できないことがある。
前記酸素透過度は、例えばJIS K7126 B法に準じた測定法により測定することができる。
前記酸素バリア層は前記熱可逆記録層の下側又は支持体の裏面など、前記酸素バリア層で熱可逆記録層を挟み込むように設けることもできる。これにより、熱可逆記録層への酸素侵入をより効果的に防ぐことができ、ロイコ染料の光劣化をより少なくすることができる。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、溶融押出し法、コーティング法、ラミネート法、などが挙げられる。
前記第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の厚みは、樹脂又は高分子フィルムの酸素透過性によって異なるが、0.1μm〜100μmが好ましい。これより薄いと酸素バリアが不完全であり、厚いと透明性が低下するので好ましくない。
前記酸素バリア層と下層の間には、接着層を設けてもよい。前記接着層の形成方法は、特に制限なく通常のコーティング法、ラミネート法等を挙げることができる。接着層の厚さは特に制限ないが、0.1μm〜5μmが好ましい。前記接着層は、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記熱可逆記録層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
−保護層−
本発明の熱可逆記録媒体には、前記熱可逆記録層を保護する目的で該熱可逆記録層上に保護層を設けることが好ましい。該保護層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層以上に形成してもよく、露出している最表面に設けることが好ましい。
前記保護層は、バインダー樹脂、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記保護層のバインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記UV硬化性樹脂は、硬化後非常に硬い膜を形成することができ、表面の物理的な接触によるダメージやレーザ加熱による媒体変形を抑止することができるため繰り返し耐久性に優れた熱可逆記録媒体が得られる。
また、前記熱硬化性樹脂は、前記UV硬化性樹脂にはやや劣るが同様に表面を硬くすることができ、繰り返し耐久性に優れる。
前記UV硬化性樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ビニル系、不飽和ポリエステル系のオリゴマーや各種単官能、多官能のアクリレート、メタクリレート、ビニルエステル、エチレン誘導体、アリル化合物等のモノマーが挙げられる。これらの中でも、4官能以上の多官能性のモノマー又はオリゴマーが特に好ましい。これらのモノマー又はオリゴマーを2種類以上混合することで樹脂膜の硬さ、収縮度、柔軟性、塗膜強度等を適宜調節することができる。
また、前記モノマー又はオリゴマーを、紫外線を用いて硬化させるためには、光重合開始剤、光重合促進剤を用いる必要がある。
前記光重合開始剤又は光重合促進剤の添加量としては、特に制限はないが、前記保護層の樹脂成分の全質量に対し0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜10質量%がより好ましい。
前記紫外線硬化樹脂を硬化させるための紫外線照射としては、公知の紫外線照射装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、光源、灯具、電源、冷却装置、搬送装置等を備えたものが挙げられる。
前記光源としては、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、カリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどが挙げられる。該光源の波長は、前記熱可逆記録媒体用組成物に添加されている光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記樹脂を架橋するために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度等を決めればよい。
また、搬送性を良好にするため、重合性基を持つシリコーン、シリコーングラフトをした高分子;ワックス、ステアリン酸亜鉛等の離型剤;シリコーンオイル等の滑剤を添加することができる。これらの添加量としては、保護層の樹脂成分全質量に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.1質量%〜40質量%がより好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、静電気対策として導電性フィラーを用いることが好ましく、針状導電性フィラーを用いることが特に好ましい。
前記無機顔料の粒径としては、特に制限はないが、例えば、0.01μm〜10.0μmが好ましく、0.05μm〜8.0μmがより好ましい。前記無機顔料の添加量としては、前記耐熱性樹脂1質量部に対し、0.001質量部〜2質量部が好ましく、0.005質量部〜1質量部がより好ましい。
なお、前記保護層には、添加剤として従来公知の界面活性剤、レベリング剤、帯電防止剤等を含有していてもよい。
また、前記熱硬化性樹脂としては例えば、前記熱可逆記録層で用いられたバインダー樹脂と同様なものを好適に用いることができる。
前記熱硬化性樹脂は架橋されていることが好ましい。従って熱硬化性樹脂としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し画像記録・消去を行っても熱可逆記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記硬化剤としては、特に制限はなく、例えば、前記熱可逆記録層で用いられた硬化剤と同様なものを好適に用いることができる。
前記保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、保護層の塗工方法、乾燥方法等としては、特に制限はなく前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。紫外線硬化樹脂を用いた場合には塗布して乾燥を行った紫外線照射による硬化工程が必要となるが、紫外線照射装置、光源、照射条件については前記の通りである。
前記保護層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜10μmがより好ましく、1.5μm〜6μmが特に好ましい。前記厚みが0.1μm未満であると、熱可逆記録媒体の保護層としての機能を十分に果たすことができず、熱による繰り返し履歴によりすぐに劣化し、繰り返し使用することができなくなってしまうことがあり、20μmを超えると、保護層の下層にある感熱に十分な熱を伝えることができなくなり、熱による画像記録と消去が十分にできなくなってしまうことがある。
−紫外線吸収層−
前記熱可逆記録媒体としては、前記熱可逆記録層中のロイコ染料の紫外線による着色及び光劣化による消え残りを防止する目的で、支持体と反対側に位置する熱可逆記録層の支持体とは反対側に紫外線吸収層を設けることが好ましく、これによって前記記録媒体の耐光性が改善できる。紫外線吸収層は390nm以下の紫外線を吸収するように、紫外線吸収層の厚みを適宜選択することが好ましい。
前記紫外線吸収層は、少なくともバインダー樹脂と紫外線吸収剤を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有してなる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収構造を持つポリマー(以下、「紫外線吸収ポリマー」と称することもある)を用いることが好ましい。
ここで、前記紫外線吸収構造を持つポリマーとは、紫外線吸収構造(例えば、紫外線吸収性基)を分子中に有するポリマーを意味する。該紫外線吸収構造としては、例えば、サリシレート構造、シアノアクリレート構造、ベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造などが挙げられ、これらの中でも、ロイコ染料の光劣化の原因である340〜400nmの紫外線を吸収することからベンゾトリアゾール構造、ベンゾフェノン構造が特に好ましい。
前記紫外線吸収ポリマーは架橋されていることが好ましい。従って紫外線吸収ポリマーとしては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基等のような、硬化剤と反応する基を有しているものを用いることが好ましく、特に水酸基を有しているポリマーが好ましい。該紫外線吸収構造を持つポリマー含有層の強度を向上させるためには該ポリマーの水酸基価が10mgKOH/g以上のポリマーを用いると十分な塗膜強度が得られ、より好ましくは30mgKOH/g以上であり、更に好ましくは40mgKOH/g以上である。十分な塗膜強度を持たせることで繰り返し消去印字を行っても記録媒体の劣化が抑えることができる。
前記紫外線吸収層の厚みとしては、特に制限はないが、0.1μm〜30μmが好ましく、0.5μm〜20μmがより好ましい。前記紫外線吸収層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、紫外線吸収層の塗工方法、紫外線吸収層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
−中間層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、前記熱可逆記録層と前記保護層の接着性向上、保護層の塗布による熱可逆記録層の変質防止、保護層中の添加剤の熱可逆記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることが好ましく、これによって発色画像の保存性が改善できる。
前記中間層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記熱可逆記録層のバインダー樹脂や熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂成分を用いることができる。該樹脂成分としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
また、前記中間層には、紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。該紫外線吸収剤としては、有機系及び無機系化合物のいずれでも用いることができる。
また、紫外線吸収ポリマーを用いてもよく、架橋剤により硬化してもよい。これらは前記保護層で用いられたものと同様のものを好適に用いることができる。
前記中間層の厚みは、0.1μm〜20μmが好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。前記中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、中間層の塗工方法、中間層の乾燥・硬化方法等は、前記熱可逆記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
−アンダー層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はないが、印加した熱を有効に利用し高感度化するため、又は支持体と熱可逆記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的として、前記熱可逆記録層と前記支持体の間にアンダー層を設けてもよい。
前記アンダー層としては、少なくとも中空粒子を含有してなり、バインダー樹脂、更に必要に応じてその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記中空粒子としては、中空部が粒子内に一つ存在する単一中空粒子、中空部が粒子内に多数存在する多中空粒子、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記中空粒子の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱可塑性樹脂などが好適に挙げられる。前記中空粒子は、適宜製造したものであってもよいし、市販品であってもよい。該市販品としては、例えば、マイクロスフェアーR−300(松本油脂株式会社製);ローペイクHP1055、ローペイクHP433J(いずれも、日本ゼオン株式会社製);SX866(JSR株式会社製)などが挙げられる。
前記中空粒子の前記アンダー層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば10質量%〜80質量%が好ましい。
前記バインダー樹脂としては、前記熱可逆記録層、又は前記紫外線吸収構造を持つポリマーを含有する層と同様の樹脂を用いることができる。
前記アンダー層には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク等の無機フィラー及び各種有機フィラーの少なくともいずれかを含有させることができる。
なお、前記アンダー層には、その他、滑剤、界面活性剤、分散剤などを含有させることもできる。
前記アンダー層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1μm〜50μmが好ましく、2μm〜30μmがより好ましく、12μm〜24μmが特に好ましい。
−バック層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、カール及び帯電防止、搬送性の向上のために支持体の熱可逆記録層を設ける面と反対側にバック層を設けてもよい。
前記バック層としては、特に制限はなく、少なくともバインダー樹脂を含有し、更に必要に応じて、フィラー、導電性フィラー、滑剤、着色顔料等のその他の成分を含有するものが挙げられる。
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線(UV)硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、等が挙げられ、これらの中でも、紫外線(UV)硬化性樹脂、熱硬化性樹脂が特に好ましい。
前記紫外線硬化樹脂、前記熱硬化性樹脂、前記フィラー、前記導電性フィラー、及び前記滑剤については、前記熱可逆記録層、又は前記保護層で用いられたものと同様なものを好適に用いることができる。
−接着層又は粘着層−
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、支持体の記録層形成面の反対面に接着剤層又は粘着剤層を設けて熱可逆記録ラベルとすることができる。前記接着剤層又は粘着剤層の材料は一般的に使われているものが使用可能である。
前記接着剤層又は粘着剤層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、酢ビ系樹脂、酢酸ビニル−アクリル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル酸エステル系共重合体、メタクリル酸エステル系共重合体、天然ゴム、シアノアクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
前記接着剤層又は粘着剤層の材料はホットメルトタイプでもよい。剥離紙を用いてもよいし、無剥離紙タイプでもよい。このように接着剤層又は粘着剤層を設けることにより、記録層の塗布が困難な磁気ストライプ付塩ビカードなどの厚手の基板の全面若しくは一部に貼ることができる。これにより磁気に記憶された情報の一部を表示することができる等、この媒体の利便性が向上する。このような接着剤層又は粘着剤層を設けた熱可逆記録ラベルは、ICカードや光カード等の厚手カードにも適用できる。
前記熱可逆記録媒体としては、特に制限はなく、前記支持体と前記記録層との間に視認性を向上させる目的で、着色層を設けてもよい。
前記着色層としては、特に制限はなく、着色剤及び樹脂バインダーを含有する溶液、又は分散液を対象面に塗布し、乾燥するか、あるいは単に着色シートを貼り合せることにより形成することができる。
前記熱可逆記録媒体には、カラー印刷層を設けることもできる。前記カラー印刷層における着色剤としては、従来のフルカラー印刷に使用されるカラーインク中に含まれる各種の染料及び顔料等が挙げられ、前記樹脂バインダーとしては各種の熱可塑性、熱硬化性、紫外線硬化性又は電子線硬化性樹脂等が挙げられる。該カラー印刷層の厚みとしては、印刷色濃度に対して適宜変更されるため、所望の印刷色濃度に合わせて選択することができる。
前記熱可逆記録媒体としては、非可逆性記録層を併用しても構わない。この場合、それぞれの記録層の発色色調は同じでも異なってもよい。また、本発明の熱可逆記録媒体の記録層と同一面の一部もしくは全面、又は/もしくは反対面の一部分に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、又はインクジェットプリンタ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けてもよく、更に着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けてもよい。前記任意の絵柄としては、文字、模様、図柄、写真、赤外線で検知する情報などが挙げられる。また、単純に構成する各層のいずれかに染料や顔料を添加して着色することもできる。
前記熱可逆記録媒体として、セキュリティのためにホログラムを設けることもできる。また、意匠性付与のためにレリーフ状、インタリヨ状に凹凸を付けて人物像や社章、シンボルマーク等のデザインを設けることもできる。
前記熱可逆記録媒体は、その用途に応じて所望の形状に加工することができ、例えば、カード状、タグ状、ラベル状、シート状、ロール状などに加工される。また、カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカード、更にはクレジットカードなどへの応用が挙げられる。カードサイズよりも小さなタグ状のサイズでは値札等に利用できる。また、カードサイズよりも大きなタグ状のサイズでは工程管理や出荷指示書、チケット等に使用できる。ラベル状のものは貼り付けることができるために、様々な大きさに加工され、繰り返し使用する台車や容器、箱、コンテナ等に貼り付けて工程管理、物品管理等に使用することができる。また、カードサイズよりも大きなシートサイズでは画像記録する範囲が広くなるため一般文書や工程管理用の指示書等に使用することができる。
<熱可逆記録部材 RF−IDとの組み合わせ例>
本発明で用いられる熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを、同一のカードやタグに設け(一体化させ)、該情報記憶部の記憶情報の一部を記録層に表示することにより、特別な装置がなくてもカードやタグを見るだけで情報を確認することができ、利便性に優れる。また、情報記憶部の内容を書き換えた時には熱可逆記録部の表示を書き換えることで、熱可逆記録媒体を繰り返し何度も使用することができる。
前記情報記憶部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、磁気記録層、磁気ストライプ、ICメモリー、光メモリー、RF−IDタグなどが好ましく用いられる。工程管理や物品管理等に使用する場合には特にRF−IDタグが好ましく用いられる。なお、前記RF−IDタグはICチップと、該ICチップに接続したアンテナとから構成されている。
前記熱可逆記録部材は、前記可逆表示可能な記録層と情報記憶部とを有し、該情報記憶部の好適なものとしてRF−IDタグが挙げられる。
ここで、図18は、RF−IDタグ485の概略図の一例を示す。このRF−IDタグ485はICチップ481と、該ICチップに接続したアンテナ482とから構成されている。前記ICチップ481は記憶部、電源調整部、送信部、受信部の4つに区分されており、それぞれが働きを分担して通信を行っている。通信はRF−IDタグとリーダライタのアンテナが電波により通信してデータのやり取りを行う。具体的には、RF−IDのアンテナがリーダライタからの電波を受信し共振作用により電磁誘導により起電力が発生する電磁誘導方式と放射電磁界により起動する電波方式の2種類がある。共に外部からの電磁界によりRF−IDタグ内のICチップが起動し、チップ内の情報を信号化し、その後、RF−IDタグから信号を発信する。この情報をリーダライタ側のアンテナで受信してデータ処理装置で認識し、ソフト側でデータ処理を行う。
前記RF−IDタグはラベル状又はカード状に加工されており、RF−IDタグを前記熱可逆記録媒体に貼り付けることができる。RF−IDタグは記録層面又はバック層面に貼ることができるが、バック層面に貼ることが好ましい。RF−IDタグと熱可逆記録媒体を貼り合わせるためには公知の接着剤又は粘着剤を使用することができる。
また、熱可逆記録媒体とRF−IDをラミネート加工等で一体化してカード状やタグ状に加工してもよい。
<画像記録及び画像消去のメカニズム>
前記画像記録及び画像消去のメカニズムは、熱により色調が可逆的に変化する態様である。前記態様はロイコ染料及び可逆性顕色剤(以下、「顕色剤」と称することがある)からなり、色調が透明状態と発色状態とに熱により可逆的に変化する。
図19aに、前記樹脂中に前記ロイコ染料及び前記顕色剤を含んでなる熱可逆記録層を有する熱可逆記録媒体について、その温度−発色濃度変化曲線の一例を示し、図19bに、透明状態と発色状態とが熱により可逆的に変化する前記熱可逆記録媒体の発消色メカニズムを示す。
まず、初め消色状態(A)にある前記記録層を昇温していくと、溶融温度Tにて、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが溶融混合し、発色が生じ溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると、発色状態のまま室温に下げることができ、発色状態が安定化されて固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られたかどうかは、溶融状態からの降温速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が生じ、初期と同じ消色状態(A)、あるいは急冷による発色状態(C)よりも相対的に濃度の低い状態となる。一方、発色状態(C)から再び昇温していくと、発色温度よりも低い温度Tにて消色が生じ(DからE)、この状態から降温すると、初期と同じ消色状態(A)に戻る。
溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は、前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分子同士で接触反応し得る状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態では、前記ロイコ染料と前記顕色剤との溶融混合物(前記発色混合物)が結晶化して発色を保持した状態であり、この構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は、両者が相分離した状態である。この状態は、少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり、結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより前記ロイコ染料と前記顕色剤とが分離して安定化した状態であると考えられる。多くの場合、このように、両者が相分離して前記顕色剤が結晶化することにより、より完全な消色が生じる。
なお、図19aに示す、溶融状態から徐冷による消色、及び発色状態からの昇温による消色はいずれもTで凝集構造が変化し、相分離や前記顕色剤の結晶化が生じている。
更に図19aにおいて、前記記録層を溶融温度T以上の温度Tに繰返し昇温すると消去温度に加熱しても消去できない消去不良が発生したりする場合がある。これは、前記顕色剤が熱分解を起こし、凝集あるいは結晶化しにくくなってロイコ染料と分離しにくくなるためと思われる。繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えるためには、前記熱可逆記録媒体を加熱する際に図19aの前記溶融温度Tと前記温度Tの差を小さくすることにより、繰返しによる前記熱可逆記録媒体の劣化を抑えられる。
(画像処理装置)
本発明の画像処理装置は、本発明の前記描画制御方法に用いられ、レーザ光照射手段と、該レーザ光をレーザ光出射面に走査させるレーザ光走査手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を有する。
また、前記熱可逆記録媒体において、高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。例えば本発明における熱可逆記録媒体はレーザ光を高効率で吸収し発熱する役割を有する光熱変換材料を少なくとも含有してなる。よって含有させる光熱変換材料が他材料に比べ最も高効率でレーザ光を吸収するように、出射するレーザ光の波長を選択する必要がある。
−レーザ光出射手段−
前記レーザ光出射手段から出射されるレーザ光の波長としては、700nm以上が好ましく、720nm以上がより好ましく、750nm以上が特に好ましい。前記レーザ光の波長の上限としては、目的に応じて適宜選択することができるが、1,500nm以下が好ましく、1,300mm以下がより好ましく、1,200nm以下が特に好ましい。
レーザ光の波長を700nmより短い波長にすると、可視光領域では媒体の画像記録時のコントラストが低下したり、媒体が着色してしまうという問題がある。更に短い波長の紫外光領域では、媒体の劣化が起こりやすくなるという問題がある。また熱可逆記録媒体に添加する光熱変換材料には、繰返し画像処理に対する耐久性を確保するために高い分解温度を必要とし、光熱変換材料に有機色素を用いる場合、分解温度が高く吸収波長が長い光熱変換材料を得るのは難しい。これよりレーザ光の波長としては1,500nm以下が好ましい。
前記レーザ光出射手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えばYAGレーザ、ファイバーレーザ、半導体レーザ(LD)が挙げられる。これらの中でも波長選択性が広いことで光熱変換材料の選択肢が増え、レーザ装置としては、レーザ光源自体が小さく、装置の小型化、更には低価格化が可能であるという点から、半導体レーザ光が特に好ましい。
前記画像処理装置は、前記レーザ光出射手段を少なくとも有している以外、その基本構成としては、通常レーザマーカーと呼ばれるものと同様であり、発振器ユニット、電源制御ユニット、及びプログラムユニットを少なくとも備えている。
ここで、図20に、本発明で用いられる画像処理装置の一例についてレーザ照射ユニットを中心に示す。
発振器ユニットは、レーザ発振器401、ビームエキスパンダ402、スキャンニングユニット5(レーザ光走査手段)などで構成されている。
前記レーザ発振器401は、光強度が強く、指向性の高いレーザ光を得るために必要なものであり、例えば、レーザ媒質の両側にミラーを配置し、該レーザ媒質をポンピング(エネルギー供給)し、励起状態の原子数を増やし反転分布を形成させて誘導放出を起こさせる。そして、光軸方向の光のみが選択的に増幅されることにより、光の指向性が高まり出力ミラーからレーザ光が放出される。
前記スキャンニングユニット5は、ガルバノメータ404と、該ガルバノメータ404に取り付けられたミラー4Aとで構成されている。そして、前記レーザ発振器401から出力されたレーザ光を、前記ガルバノメータ404に取り付けられたX軸方向とY軸方向との2枚のミラー4Aで高速回転走査することにより、熱可逆記録媒体407上に、画像の形成又は消去を行うようになっている。
前記電源制御ユニットは、レーザ媒質を励起する光源の駆動電源、ガルバノメータの駆動電源、ペルチェ素子などの冷却用電源、画像処理装置全体の制御を司る制御部等などで構成されている。
前記プログラムユニットは、タッチパネル入力やキーボード入力により、画像の記録又は消去のために、レーザ光の強さ、レーザ走査の速度等の条件入力や、記録する文字等の作製及び編集を行うユニットである。
なお、前記レーザ照射ユニット、即ち、画像記録/消去用ヘッド部分は、画像処理装置に搭載されているが、該画像処理装置には、このほか、前記熱可逆記録媒体の搬送部及びその制御部、モニタ部(タッチパネル)等を有している。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(製造例1)
<熱可逆記録媒体の製造>
熱により色調が可逆的に変化する熱可逆記録媒体を、以下のようにして作製した。
−支持体−
支持体として、厚み125μmの白濁ポリエステルフィルム(帝人デュポン株式会社製、テトロンフィルムU2L98W)を用いた。
−第1の熱可逆記録層の形成−
下記構造式(1)で表される可逆性顕色剤5質量部、下記構造式(2)及び(3)で表される2種類の消色促進剤をそれぞれ0.5質量部ずつ、アクリルポリオール50質量%
溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン80質量部を、ボールミルを用いて平均粒径が約1μmになるまで粉砕分散した。
Figure 0005708859
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Figure 0005708859
次に、前記可逆性顕色剤を粉砕分散させた分散液に、前記ロイコ染料としての2−アニリノ−3−メチル−6ジブチルアミノフルオラン1質量部、及びイソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)5質量部を加え、よく撹拌して、熱可逆記録層用塗布液を調製した。
得られた熱可逆記録層用塗布液を、前記支持体上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み9.6μmの第1の熱可逆記録層を形成した。
−光熱変換層の形成−
フタロシアニン系光熱変換材料(株式会社日本触媒製、IR−14、吸収ピーク波長:824nm)1質量%溶液を4質量部、アクリルポリオール50質量%溶液(水酸基価=200mgKOH/g)10質量部、及びメチルエチルケトン20質量部、架橋剤としてイソシアネート(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン株式会社製)5質量部をよく攪拌し、光熱変換層塗布液を調製した。得られた光熱変換層用塗布液を、前記第1の熱可逆記録層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、90℃にて1分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚さ4μmの光熱変換層を形成した。
−第2の熱可逆記録層の形成−
前記第1の熱可逆記録層と同じ熱可逆記録層用組成物を、前記光熱変換層上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、100℃にて2分間乾燥した後、60℃にて24時間キュアーを行って、厚み2.4μmの第2の熱可逆記録層を形成した。
−紫外線吸収層の形成−
紫外線吸収ポリマーの40質量%溶液(株式会社日本触媒製、UV−G300)10質量部、イソシアネート(日本ポリウレタン株式会社製、コロネートHL)1.5質量部、及びメチルエチルケトン12質量部を加え、よく攪拌して紫外線吸収層用塗布液を調製した。
次に、前記第1の熱可逆記録層、前記光熱変換層、及び前記第2の熱可逆記録層が形成された支持体に、前記紫外線吸収層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、60℃にて24時間加熱し、厚み2μmの紫外線吸収層を形成した。
ここでは、前記紫外線吸収層上、及び前記第1の熱可逆記録層と支持体との間に、以下のように下記の第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層を設けた。
−第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層の形成−
ウレタン系接着剤(東洋モートン株式会社製、TM−567)5質量部、イソシアネート(東洋モートン株式会社製、CAT−RT−37)0.5質量部、及び酢酸エチル5質量部を加え、よく攪拌して酸素バリア層用塗布液を調製した。
次に、シリカ蒸着PETフィルム(三菱樹脂株式会社製、テックバリアHX、酸素透過度:0.5ml/m/day/MPa)上に、上記酸素バリア層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、80℃にて1分間加熱及び乾燥した後、前記紫外線吸収層上、及び支持体上に貼合せ、50℃にて24時間加熱し、厚み12μmの第1の酸素バリア層及び第2の酸素バリア層を形成した。
−バック層の形成−
ペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)7.5質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(根上工業株式会社製、アートレジンUN−3320HA)2.5質量部、針状導電性酸化チタン(石原産業株式会社製、FT−3000、長軸=5.15μm、短軸=0.27μm、構成:アンチモンドープ酸化スズ被覆の酸化チタン)2.5質量部、光重合開始剤(日本チバガイギー株式会社製、イルガキュア184)0.5質量部、及びイソプロピルアルコール13質量部を加え、ボールミルにてよく攪拌してバック層用塗布液を調製した。
次に、前記支持体における、前記各層が形成されていない側の面上に、前記バック層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃にて1分間加熱及び乾燥した後、80W/cmの紫外線ランプで架橋させて、厚み4μmのバック層を形成した。以上により、製造例1における熱可逆記録媒体を製造した。
(製造例2)
<熱可逆記録媒体の製造>
製造例1において、光熱変換材料として、フタロシアニン系光熱変換材料1質量%溶液を4質量部添加することに代えてシアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900、吸収ピーク波長:830nm)0.5質量%溶液を2質量部添加した光熱変換層用塗布液を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、製造例2における熱可逆記録媒体を製造した。なお、シアニン系光熱変換材料(株式会社山本化成製、YKR−2900)の添加量は、製造例1と同様の感度になる添加量とした。
−ベタ画像印字(画像記録)−
(実施例1)
製造例1における熱可逆記録媒体に対して、QPC社製ファイバ結合LD(半導体レーザ)のES-6200-A(中心波長:808nm)でレーザ光照射して、2枚のコリメータレンズ(焦点距離26mm)で平行光にして、Cambridge社製ガルバノスキャナー6230Hでレーザ光を走査させて、fθレンズ(焦点距離141mm)で媒体上に集光させるLDマーカー装置で画像記録を行った。ワーク間距離を141mm(ビーム径0.65mm)、線速2,500mm/sとなるように調整して、図21aに示すレーザ光走査方法(A方向の描画線を4本、B方向の描画線を6本、C方向の描画線を3本)により、A方向の描画線と隣接するC方向の描画線とのピッチ幅0.20mm、A方向の描画線に対するC方向の描画線の傾け量0.09mm、A方向の描画線長さ10mmとしてベタ画像を記録して、実施例1における画像記録を行った。レーザ光の照射パワーは画像濃度が飽和する時のパワーを選択している。
(実施例2)
実施例1において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて、図21bに示すレーザ光走査方法(A方向の描画線を4本、C方向の描画線を3本、B方向には描画しない)により、A方向の描画線と隣接するC方向の描画線とのピッチ幅0.20mm、A方向の描画線に対するC方向の描画線の傾け量0.09mm、A方向の描画線長さ10mmとしてベタ画像を記録したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における画像記録を行った。
(実施例3)
実施例2において、C方向の描画線の傾け量を0.09mmから0.045mmに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例3における画像記録を行った。
(実施例4)
実施例2において、C方向の描画線の傾け量を0.09mmから0.155mmに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例4における画像記録を行った。
(実施例5)
実施例2において、C方向の描画線の傾け量を0.09mmから0.02mmに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例5における画像記録を行った。
(実施例6)
実施例2において、C方向の描画線の傾け量を0.09mmから0.18mmに変えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例6における画像記録を行った。
(実施例7)
実施例2において、図21bに示すレーザ光走査方法(A方向の描画線を4本、C方向の描画線を3本、B方向には描画しない)により、A方向の描画線の1本目の照射パワーを他の描画線に対して10%高く設定したこと以外は、実施例2と同様にして、実施例7における画像記録を行った。このときの1本目の照射パワーは21.0Wで2本目以降の照射パワーは19.1Wであった。
(実施例8)
実施例2において、製造例1における熱可逆記録媒体に代えて製造例2における熱可逆記録媒体を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例8における画像記録を行った。
(比較例1)
実施例1において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図22aに示すレーザ光走査方法(A方向の描画線を7本、B方向の描画線を6本、C方向には描画しない)により、隣接するA方向の描画線間のピッチ幅0.20mm、A方向の描画線間の描画線長さ20mmとしてベタ画像を記録したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における画像記録を行った。
(比較例2)
実施例1において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図22bに示すレーザ光走査方法(A方向の描画線を7本、B方向及びC方向には描画しない)により、隣接するA方向の描画線間のピッチ幅0.20mm、A方向の描画線間の描画線長さ20mmとしてベタ画像を記録したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2における画像記録を行った。
(比較例3)
実施例1において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図22cに示すレーザ光走査方法(A方向の描画線を7本、B方向及びC方向には描画しない)により、隣接するA方向の描画線間のピッチ幅0.20mm、A方向の描画線間の描画線長さ20mmとしてベタ画像を記録したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3における画像記録を行った。
−画像消去−
(実施例9)
製造例1における熱可逆記録媒体のベタ画像印字領域に対して、LDマーカー装置で、走査速度1,000mm/s、ワーク間距離を180mmに設定して(ビーム径3.0mm)、図21aに示すレーザ光走査方法(ただし、A方向の描画線を14本、B方向の描画線を27本、C方向に描画線を14本とする)により、A方向の描画線と隣接するC方向の描画線とのピッチ幅0.6mm、A方向の描画線に対するC方向の描画線の傾け量0.24mm、A方向の描画線長さ40mmとして、実施例9における画像消去を行った。
(実施例10)
実施例9において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図21bに示すレーザ光走査方法(ただし、A方向の描画線を14本、C方向に描画線を14本、B方向には描画しない)により、A方向の描画線と隣接するC方向の描画線とのピッチ幅0.6mm、A方向の描画線に対するC方向の描画線の傾け量0.24mm、A方向の描画線長さ40mmとして画像消去を行ったこと以外は、実施例9と同様にして、実施例10における画像消去を行った。
(実施例11)
実施例10において、C方向の描画線の傾け量を0.24mmから0.13mmに変えたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例11おける画像消去を行った。
(実施例12)
実施例10において、C方向の描画線の傾け量を0.24mmから0.46mmに変えたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例12おける画像消去を行った。
(実施例13)
実施例10において、C方向の描画線の傾け量を0.24mmから0.08mmに変えたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例13おける画像消去を行った。
(実施例14)
実施例10において、C方向の描画線の傾け量を0.24mmから0.54mmに変えたこと以外は、実施例10と同様にして、実施例14おける画像消去を行った。
(比較例4)
実施例9において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図22aに示すレーザ光走査方法(ただし、A方向の描画線を28本、B方向の描画線を27本、C方向には描画しない)により、隣接するA方向の描画線間のピッチ幅0.6mm、A方向の描画線長さ40mmとしてレーザ光を照射して画像消去を行ったこと以外は、実施例9と同様にして、比較例4における画像消去を行った。
(比較例5)
実施例9において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図22bに示すレーザ光走査方法(ただし、A方向の描画線を28本、B方向及びC方向には描画しない)により、隣接するA方向の描画線間のピッチ幅0.6mm、A方向の描画線長さ40mmとしてレーザ光を照射して画像消去を行ったこと以外は、実施例9と同様にして、比較例5における画像消去を行った。
(比較例6)
実施例9において、図21aに示すレーザ光走査方法に代えて図22cに示すレーザ光走査方法(ただし、A方向の描画線を28本、B方向及びC方向には描画しない)により、隣接するA方向の描画線間のピッチ幅0.6mm、A方向の描画線長さ40mmとしてレーザ光を照射して画像消去を行ったこと以外は、実施例9と同様にして、比較例6における画像消去を行った。
−画像印字、及び繰返し耐久性の評価−
実施例1〜8及び比較例1〜3における画像記録に関し、ベタ画像の印字時間及び画像濃度が飽和する時のレーザ光照射パワーを下記表1に示す。
また、実施例1〜8及び比較例1〜3における画像記録後に、比較例6における画像消去方法で消去パワー中心にて画像消去を行い、画像記録及び画像消去からなる画像処理を繰返し行った。該画像処理の画像記録時のベタ画像濃度が1.3以下となるときの、または、該画像処理の画像消去時の消え残り濃度が0.020を超えたときの繰返し回数を、繰返し耐久性の評価結果として、下記表1に示す。
なお、ベタ画像の濃度、消え残り濃度の測定は、グレースケール(Kodak社製)をスキャナー(キャノン株式会社製、Canoscan4400)で取り込み、得られたデジタル階調値と反射濃度計(マクベス社製、RD−914)で測定した濃度値との間で相関を取り、記録した画像及び消去した消去部を前記スキャナーで取り込んで得られたデジタル階調値を濃度値に変換して行い、濃度値を求めた。
Figure 0005708859
−画像消去特性−
実施例2における画像記録により形成されたベタ画像印字領域に対して、実施例9〜14及び比較例4〜6におけるそれぞれの画像消去条件をもとに、レーザ光の照射パワー(W)を低いパワーから高いパワーに順次変更して画像消去を行い、消去時間、消去パワー中心、及び消去幅を求めた。結果を下記表2に示す。
なお、消去パワー中心は、ベタ画像を消去した後の地肌濃度が該ベタ画像を形成する前の地肌濃度に対して+0.02以下になるときのレーザ光の照射パワーを消去パワーとし、該消去パワーの最大値と最小値との平均値と定義する。また、消去幅は、(最大値−最小値)/(最大値+最小値)と定義する。ここで、地肌濃度の測定は、ベタ画像の濃度、消え残り濃度の測定と同様にして行った。
Figure 0005708859
以上、本発明の例示的な実施の形態の描画制御装置、レーザ照射装置、描画制御方法、描画制御プログラム、及びこれを記録した記録媒体について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
本発明の描画制御方法は、ベタ画像等の画像記録方法、及び画像消去方法として、印字品質よく、繰り返し耐久性に優れた画像を得ることができ、短時間に処理を行うことができ、ベタ画像、バーコード・QRコード(登録商標)印字、文字の太線印字等に応用することができるため、物流及び配送システムに用いられる記録媒体に対する描画制御方法として、特に好適に使用可能である。
1 レーザ照射装置
2 レーザ装置
3 走査装置
4、204 描画制御装置
11 X軸ガルバノミラー
12 Y軸ガルバノミラー
13 fθレンズ
14 ガルバノメータ
15 ガルバノメータ
16 X軸サーボドライバ
17 Y軸サーボドライバ
20 ホストインターフェース部
30、230 描画データ生成部
31 描画位置決定部
32 描画順決定部
33 レーザ出力調整部
34 描画速度調整部
40 制御データ生成部
50 制御データ出力部
60 ガルバノミラー制御信号生成部
70 レーザ出力制御信号生成部
80 レーザ発光制御信号生成部
90 照射部
100 リライタブル媒体
200 ホストコンピュータ
235 描画位置変更部
401 レーザ発振器
402 ビームエキスパンダ
403 マスクまたは非球面レンズ
404 ガルバノメータ
404A ガルバノミラー
405 スキャニングユニット
406 fθレンズ
407 熱可逆記録媒体
411、421、431、451 第1のレーザ光描画線
412、422、432、452 第2のレーザ光描画線
481 ICチップ
482 アンテナ
485 RF−IDタグ
500 熱可逆記録媒体
501 支持体
502 第1の熱可逆記録層
503 光熱変換層
504 第2の熱可逆記録層
505 第1の酸素バリア層
506 第2の酸素バリア層
507 紫外線吸収層
508 バック層
特開2008−62506号公報 特開2004−265247号公報 特許第3998193号公報 特許第3161199号公報 特開平9−30118号公報 特開2000−136022号公報 特開平11−151856号公報 特開2008−213439号公報 特許第3557512号

Claims (8)

  1. 熱可逆記録媒体にレーザを照射して描画対象を描画する描画装置を制御する描画制御装置であって、
    前記描画対象を複数行に分け、前記熱可逆記録媒体に前記複数行の各々を描画する描画位置を決定する描画位置決定手段と、
    相隣接する行の描画方向を反転させながら前記描画対象を描画するように前記複数行の各行の描画順を決定する描画順決定手段と、
    前記熱可逆記録媒体に往復走査で一の行の次に他の行を描画する際に、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギが前記他の行の終点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギよりも低くなるように調整する調整手段と、
    前記描画位置及び前記描画順を反映した描画命令を生成する描画命令生成手段と
    を含む、描画制御装置。
  2. 前記調整手段は、前記各行の始点から終点の間を複数の単位線分に分け、前記単位線分毎に、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力が前記他の行の終点側を描画するレーザ出力よりも低くなるように調整する、請求項1に記載の描画制御装置。
  3. 前記調整手段は、前記他の行の前記始点から前記終点にかけて、前記熱可逆記録媒体に描画を行う速度を低下させることにより、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギが前記他の行の終点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギよりも低くなるように調整する、請求項1又は2に記載の描画制御装置。
  4. 前記調整手段は、前記他の行の前記始点から前記終点にかけて、前記描画装置が前記熱可逆記録媒体に照射する前記レーザのレーザ出力を増大させることにより、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギが前記他の行の終点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギよりも低くなるように調整する、請求項1又は2に記載の描画制御装置。
  5. レーザを照射するレーザ発振器と、
    前記レーザ発振器が照射するレーザの照射方向を制御する方向制御ミラーと、
    前記方向制御ミラーを駆動する方向制御モータと、
    前記描画命令に基づき、前記レーザ発振器の照射出力の制御、及び前記方向制御モータの駆動制御を行う、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の描画制御装置と
    を有する、レーザ照射装置。
  6. 熱可逆記録媒体にレーザを照射して描画対象を描画する描画装置をコンピュータが制御する描画制御方法であって、
    前記コンピュータは、
    前記描画対象を複数行に分け、前記熱可逆記録媒体に前記複数行の各々を描画する描画位置を決定する描画位置決定工程と、
    相隣接する行の描画方向を反転させながら前記描画対象を描画するように前記複数行の各行の描画順を決定する描画順決定工程と、
    前記熱可逆記録媒体に往復走査で一の行の次に他の行を描画する際に、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギが前記他の行の終点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギよりも低くなるように調整する、又は、前記一の行の終点と前記他の行の始点との間の第1距離が前記一の行の始点と前記他の行の終点との間の第2距離よりも長くなるように前記描画位置を調整する調整工程と、
    前記描画位置及び前記描画順を反映した描画命令を生成する描画命令生成工程と
    を実行する、描画制御方法。
  7. コンピュータに、熱可逆記録媒体にレーザを照射して描画対象を描画する描画装置を制御する制御処理を実行させるための描画制御プログラムであって、
    前記コンピュータを
    前記描画対象を複数行に分け、前記熱可逆記録媒体に前記複数行の各々を描画する描画位置を決定する描画位置決定部、
    相隣接する行の描画方向を反転させながら前記描画対象を描画するように前記複数行の各行の描画順を決定する描画順決定部、
    前記熱可逆記録媒体に往復走査で一の行の次に他の行を描画する際に、前記他の行の始点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギが前記他の行の終点側を描画するレーザ出力により前記熱可逆記録媒体が受ける照射エネルギよりも低くなるように調整する、又は、前記一の行の終点と前記他の行の始点との間の第1距離が前記一の行の始点と前記他の行の終点との間の第2距離よりも長くなるように前記描画位置を調整する調整部、及び
    前記描画位置及び前記描画順を反映した描画命令を生成する描画命令生成部
    として機能させる、描画制御プログラム。
  8. 請求項7に記載の描画制御プログラムを記録した記録媒体。
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