JP5705445B2 - 精製されたコラーゲン加水分解物の製造方法 - Google Patents

精製されたコラーゲン加水分解物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、精製されたコラーゲン加水分解物の製造方法に関する。
従来、溶液中から酵母等の微生物を除去する方法として、ゲルろ過法、遠心分離法、吸着分離法、沈澱法、膜ろ過法などが利用されている。しかしながら、ゲルろ過法は、ゲルろ過に用いられる溶媒により目的物質が希釈される、大量処理に向かないなどの理由で工業的に適用するのは困難である。遠心分離法は、微生物が数μm以上の大きさであり、かつ溶液の粘度が小さい場合にのみ適用できる。吸着ろ過法は、特定の少量の微生物の除去に利用できるが、多種多様の微生物が多量に分散している溶液には適用が難しい。沈澱法は比較的多量の溶液の処理には利用できるが、この方法単独では微生物を完全に除去することが困難である。
一方、精密ろ過膜、限外ろ過膜を利用した膜ろ過法はあらゆる微生物の除去が可能で、しかも大量連続処理が可能なため工業利用に適している。
しかしながら、従来の精密ろ過膜、限外ろ過膜では膜面上で除去された微生物類、あるいはその破砕物の濃縮層が形成され膜面が閉塞するため、ろ過圧の上昇、及びろ過速度の経時的な減少が起きやすい問題があった。
このような問題を解決するために、クロスフローろ過や、逆流洗浄(逆洗)を利用したろ過方法が用いられている。例えば、特許文献1には、短時間のバックフラッシュを行いながら濁りを引き起こす成分を除去する方法が記載されている。また、特許文献2には、短時間のデッドエンドろ過と逆洗を組み合わせた除濁方法が記載されている。
特開平7−155559号公報 特開平4−260419号公報
コラーゲン加水分解物は、動物の骨、皮膚、じん帯又は腱等の結合組織から抽出することにより得ることができ、健康への関心の増加に伴って食品や飲料の原材料としての需要が高まっているが、抽出に際し、大腸菌等の微生物が混入してしまう。そのため、コラーゲン加水分解物の製造方法においては、これらの微生物を十分に除去するためのろ過工程が必要となる。
しかしながら、従来の中空糸膜を用いたクロスフローろ過では、膜面の閉塞を防ぐために処理溶液の流速を大きくする必要があり、流速を大きくすることで微生物の破砕、変形等が起きやすくなる。微生物が破砕されると、破砕物が中空糸膜を通過し、コラーゲン加水分解物に混入するという問題がある。
また、従来の中空糸膜を用いた場合、逆流洗浄により膜面上に蓄積した除去物を除去する際に、膜面に強く吸着した除去物を除去するために大量の逆洗液を流す必要があり、処理効率が低下するという問題がある。
また、特許文献1に記載の方法では、洗浄効果が十分であるとは言えず、連続的に処理を行う場合にはろ過圧力の上昇が起こる。さらに、特許文献2に記載の方法では、ろ過時の透過流速だけを見れば高くすることが可能であるが、ろ過と逆洗の切り替えが頻繁に行われる為、ろ過操作トータルでの効率が低くなってしまい工業的に利用するには不向きである。
本発明は、製造効率に優れるとともに、微生物等の破砕物の混入が少なく十分に精製されたコラーゲン加水分解物を製造可能な、製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、下記のコラーゲン加水分解物の製造方法に関する。
(1)疎水性高分子と親水性高分子のブレンド物から管壁が構成されている多孔質中空糸膜に、コラーゲン加水分解物含有溶液を流通させる内圧ろ過工程を含む、精製されたコラーゲン加水分解物の製造方法であって、上記多孔質中空糸膜は、上記管壁を膜厚方向に3等分して3つの領域に分割したときに、外側面を含む外周領域の親水性高分子の含有割合が、内側面を含む内周領域の親水性高分子の含有割合より大きく、内側面の平均孔径が、外側面の平均孔径より大きい多孔質中空糸膜である、製造方法。当該製造方法は、コラーゲン加水分解物の精製方法として捉えることもできる。
(2)上記多孔質中空糸膜が、上記内側面の平均孔径が1μm以上50μm以下であり、上記外周領域が0.1μm以上1μm未満の阻止孔径を有しており、上記管壁の膜厚が300μm以上1000μm以下の多孔質中空糸膜である、(1)に記載の製造方法。
(3)上記親水性高分子が、ポリビニルピロリドンである、(1)又は(2)に記載の製造方法。
(4)上記多孔質中空糸膜が、上記親水性高分子の含有量が、上記多孔質中空糸膜の総質量を基準として、0.2質量%以上3質量%以下の多孔質中空糸膜である、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)上記多孔質中空糸膜が、下記式(I)を満たす、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
out/Cin≧2 (I)
[式(I)中、Coutは上記親水性高分子の上記外周領域における含有割合を示し、Cinは上記親水性高分子の上記内周領域における含有割合を示す。]
(6)上記多孔質中空糸膜が、内径が1000μm以上2000μm以下の多孔質中空糸膜である、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)上記疎水性高分子が、ポリスルホンである、(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)上記内圧ろ過は、クロスフローろ過により行われ、上記コラーゲン加水分解物含有溶液は、上記多孔質中空糸膜の一端からその管内部に、線速度3.0m/sec以下で送液される、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の製造方法。
(9)上記内圧ろ過は、デッドエンドろ過により行われ、上記コラーゲン加水分解物含有溶液は、上記多孔質中空糸膜の一端からその管内部に、線速度3.0m/sec以下で送液される、(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法。
(10)上記内圧ろ過工程で得られるろ液を用いて、上記多孔質中空糸膜を逆流洗浄する工程をさらに含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の製造方法。
本発明によれば、従来の多孔質中空糸膜を用いるろ過方法と比較して、高いろ過速度を長時間維持可能であり、微生物の破壊や変形が少なく、かつ、膜の洗浄が容易で処理効率の高い内圧ろ過工程を含む、製造効率に優れ、微生物等の破砕物の混入が少なく十分に精製されたコラーゲン加水分解物を製造可能な、製造方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法は、疎水性高分子と親水性高分子のブレンド物から管壁が構成されている多孔質中空糸膜に、コラーゲン加水分解物含有溶液を流通させる内圧ろ過工程を含む。
ここで多孔質中空糸膜は、管壁を膜厚方向に3等分して3つの領域に分割したときに、外側面を含む外周領域の親水性高分子の含有割合が、内側面を含む内周領域の親水性高分子の含有割合より大きく、内側面の平均孔径が、外側面の平均孔径より大きい多孔質中空糸膜である。
管壁を膜厚方向に3等分して3つの領域に分割するには、例えば、多孔質中空糸膜の管壁(中空環状の多孔質中空糸膜を構成する側壁をいう。)の一部を切り出して、フィルム状の管壁を得、それを膜厚方向に3等分にスライスすればよい。この場合、外側面を含む厚さ1/3の領域を「外周領域」、内側面を含む厚さ1/3の領域を「内周領域」と呼ぶ。なお、中心部分を「中心領域」と呼ぶことができる。
疎水性高分子とは、20℃での臨界表面張力(γc)が50nN/m以上である高分子を表し、親水性高分子とは、20℃での臨界表面張力(γc)が50nN/m未満である高分子を表す。また、平均孔径は、内側面又は外側面を、電子顕微鏡を用いて1視野において10個以上の孔が観測可能な倍率で観測し、得られた顕微鏡写真における細孔を円形近似処理し、その面積平均値から直径を求めることにより、算出することができる。疎水性高分子と親水性高分子のブレンド物は、疎水性高分子と親水性高分子の双方を含有する混合物を意味し、その相構造を問わない(例えば、相溶系か相分離系かを問わないが、完全相溶系でないことが好ましい。)。
多孔質中空糸膜は、中空環状の形態をもつ膜であり、このような形状であることで平面状の膜に比べて、モジュール単位体積当たりの膜面積を大きくすることができる。
多孔質中空糸膜は、外側面を含む外周領域の親水性高分子の含有割合が、内側面を含む内周領域の親水性高分子の含有割合より大きく、内側面の平均孔径が、外側面の平均孔径より大きい。上記構成を有することで、多孔質中空糸膜は、従来の多孔質中空糸膜と比較して、温度変化や圧力変化に耐える高い強度を有し、ろ過速度と分画性とを両立可能であり、膜面及び膜内部に除去物が蓄積しにくく、膜孔の閉塞が起こりにくく、高いろ過速度を長時間維持可能であり、かつ、公知の中空糸膜洗浄方法により容易に洗浄が可能となる。洗浄方法としては、例えば、外側面から洗浄液を流入させる逆流洗浄や、モジュール内に気泡を導入することで膜を揺らして堆積物を除去するエアースクラビング等が挙げられる。
多孔質中空糸膜は、上記構成を有することで、内周領域においては、膜孔より小さい粒子を膜内部に保持して除去するデプスろ過の効果を十分発揮することができる。一方、外周領域においては、親水性高分子の含有割合が多く、粒子と膜との吸着力が低いため、粒子の吸着による膜孔の閉塞を防止することができる。孔径の小さな外周領域で粒子の吸着による膜孔の閉塞を防止することで、高いろ過速度を長時間維持することができる。また、孔径の大きな内周領域でデプスろ過の効果を十分に発揮できることから、分画性等のろ過性能に優れる。
親水性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、セルロース、およびそれらからの派生物質等が挙げられる。これらのうち、親水性高分子としては、ポリビニルピロリドンが好ましい。これらの親水性高分子は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの親水性高分子であれば、疎水性高分子との相溶性に優れ、多孔質中空糸膜が均一で機械的強度に優れる膜となる。また、膜面及び膜内部における除去物の吸着を一層防止することが可能であるとともに、洗浄が容易となる。
疎水性高分子としては、例えば、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。これらのうち、疎水性高分子としては、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。これらの疎水性高分子は、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの疎水性高分子であれば、多孔質中空糸膜が温度変化や圧力変化に対する強度に一層優れ、高いろ過性能を発現することができる。
内側面の平均孔径は、1μm以上50μm以下であると好ましく、5μm以上40μm以下であるとより好ましく、10μm以上30μm以下であるとさらに好ましい。内側面の平均孔径が1μm未満である場合、除去物を膜内部に保持するデプスろ過の効果を十分に得ることができず、膜面への除去物の堆積による膜孔の閉塞が起こり易くなる場合がある。また、内側面の平均孔径が50μmより大きい場合、膜面における孔が占める割合が大きくなるため、多孔質中空糸膜の強度が低下する傾向にある。なお、内側面の平均孔径を上記範囲とするためには、以下に述べる製造法において、例えば、内部凝固液の良溶剤濃度を85質量%以上とすればよい。
外側面の平均孔径は、0.1μm以上20μm以下であると好ましく、0.2μm以上15μm以下であるとより好ましく、0.3μm以上10μm以下であるとさらに好ましい。なお、外側面の平均孔径を上記範囲とするためには、以下に述べる製造法において、例えば、外部凝固液の温度を50℃以上90℃以下とすればよい。
外周領域は、0.05μm以上1μm未満の阻止孔径を有することが好ましく、0.1μm以上1μm未満の阻止孔径を有することがさらに好ましく、0.2μm以上0.8μm以下の阻止孔径を有することがより好ましい。阻止孔径が0.05μm未満であると、透過抵抗が大きくなり、ろ過に要する圧力が高くなり、微生物の破壊、変形による膜面閉塞、ろ過効率の低下等が起こる場合がある。また、1μm以上であると、十分な分画性が得られない傾向にある。なお、外周領域の阻止孔径を上記範囲とするためには、以下に述べる製造法において、例えば、外部凝固液の温度を50℃以上90℃以下とすればよい。
ここで阻止孔径とは、多孔質中空糸膜を用いて、一定孔径の粒子が分散した粒子分散液をろ過した場合に、当該粒子の透過阻止率が90%であるときの粒子の孔径を意味する。具体的には、例えば、粒子分散液のろ過を行い、ろ過前後の粒子の濃度変化を測定する。この測定を、0.1μmから約0.1μm刻みで粒子径を変えながら行い粒子の阻止曲線を作成する。この阻止曲線から90%阻止できる粒子径を読み取り、その径を阻止孔径とすることができる。
多孔質中空糸膜は、外周領域に最小孔径層を含むことが好ましい。親水性高分子の含有割合が多い外周領域に最小孔径層が存在することで、粒子の吸着による膜孔の閉塞を、より確実に防止することができる。なお、ここで最小孔径層とは、膜の断面を電子顕微鏡で観察した際に最も小さい孔径を含む層を示す。最小孔径層の孔径は、阻止孔径とほぼ等しく、阻止孔径の測定により最小孔径層の孔径を得ることができる。最小孔径層の孔径としては、0.05μm以上1μm未満が好ましく、0.1μm以上1μm未満がより好ましく、0.2μm以上0.8μm以下がさらに好ましい。なお、外周領域に最小孔径層を含むようにするためには、以下に述べる製造法において、例えば、内部凝固液の良溶剤濃度を85質量%以上、かつ外部凝固液の良溶剤濃度を50質量%以下とすればよい。
多孔質中空糸膜は、内側面から最小孔径層まで連続的に孔径が小さくなることが好ましい。このような構成を有することで、膜内部に除去物を保持するデプスろ過の効果を一層得ることができるとともに、高いろ過速度をより長時間維持することができる。なお、内側面から最小孔径層まで連続的に孔径が小さくなるようにするためには、以下に述べる製造法において、例えば、内部凝固液の良溶剤濃度を85質量%以上、かつ外部凝固液の良溶剤濃度を50質量%以下とすればよい。
多孔質中空糸膜は、膜厚が300μm以上1000μm以下であることが好ましく、350μm以上800μm以下であることがより好ましい。膜厚が300μm未満の多孔質中空糸膜では、膜内部の除去物を保持可能な範囲が制限されるため、デプスろ過の効果を十分に得られない場合があり、かつ、ろ過速度の低下が起こり易くなる傾向にある。膜厚が1000μmより大きい多孔質中空糸膜では、膜内部に堆積した除去物を洗浄することが困難となり、洗浄後にろ過性能が十分に回復しない場合がある。なお、膜厚を上記範囲にするためには、以下に述べる製造法において、例えば、二重管状ノズルの外側流路の200μm〜1200μm(好ましくは、300μm〜1000μm)とすればよい。
多孔質中空糸膜は、親水性高分子の含有量が、多孔質中空糸膜の総質量を基準として、0.2質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることがより好ましい。親水性高分子の含有量が0.2質量%未満である多孔質中空糸膜では、除去物が膜面及び膜内部に吸着しやすくなり、膜孔の閉塞が起こり易くなるとともに、洗浄が困難となる傾向がある。親水性高分子の含有量が3質量%より多い多孔質中空糸膜では、親水性高分子の膨潤により膜孔が閉塞し、透過抵抗が大きくなる場合がある。また、親水性高分子の含有量が上記範囲であることで、洗浄性に優れ、ろ過と洗浄とを繰り返した場合でも高いろ過性能を維持することができる。なお、親水性高分子の含有量を上記範囲にするためには、以下に述べる製造法において、例えば、疎水性高分子と親水性高分子のブレンド物における、疎水性高分子と親水性高分子の比を、前者:後者=(1):(0.1〜1.5)(好ましくは、前者:後者=(1):(0.5〜1.3))とすればよい。
多孔質中空糸膜は、下記式(I)を満たすことが好ましい。
out/Cin≧2 (I)
上記式(I)中、Coutは親水性高分子の外周領域における含有割合を示し、Cinは親水性高分子の内周領域における含有割合を示す。親水性高分子がこのような分布を示す多孔質中空糸膜は、内周領域における、デプスろ過の効果と、外周領域における、除去物の吸着による膜孔の閉塞防止効果とに一層優れる。また、洗浄性に優れ、ろ過と洗浄とを繰り返した場合でも高いろ過性能を維持することができる。なお、下記式(I)を満たすようにするためには、以下に述べる製造法において、例えば、疎水性高分子と親水性高分子のブレンド物における、疎水性高分子と親水性高分子の比を、前者:後者=(1):(0.1〜1.5)(好ましくは、前者:後者=(1):(0.3〜1.2))とすればよい。
多孔質中空糸膜は、内径が1000μm以上2000μm以下であることが好ましい。内径が1000μm未満であると、微生物など凝集しやすい懸濁物質をろ過する際、中空糸の入口が凝集した懸濁物質で閉塞してしまいろ過が継続できなくなってしまう場合がある。また、内径が2000μmより大きい場合、多孔質中空糸膜1本が太くなり、モジュールあたりの有効な膜面積が減少し、ろ過性能が低下する傾向にある。なお、膜厚を上記範囲にするためには、以下に述べる製造法において、例えば、二重管状ノズルの内側流路の径を500μm〜2500μm(好ましくは、600μm〜2200μm)とすればよい。
多孔質中空糸膜は、オートクレーブ処理により滅菌しても良い。オートクレーブ処理により滅菌することで、多孔質中空糸膜は、コラーゲン加水分解物のろ過に好適に使用することができる。オートクレーブ処理を行う場合、疎水性高分子としては、オートクレーブ処理前後での透水性能変化が少ないことが好ましい。具体的には、オートクレーブ処理前の純水透水量(F)と処理後の純水透水量(FAC)から求められるオートクレーブ処理前後の透水量変化率(FAC/F)が、0.9以上1.1未満であることが好ましい。このような疎水性高分子としては、例えば、ポリスルホンが挙げられる。
以下、多孔質中空糸膜の製造方法について、詳細に説明する。
多孔質中空糸膜の製造方法は、以下の(1)(2)の流出(押し出し)を同時に行って、外部凝固液中で凝固させる凝固工程を含む。
(1)二重管状ノズルの内側流路からの、内部凝固液の流出
(2)二重管状ノズルの外側流路からの、疎水性高分子、親水性高分子、これらの高分子双方に対する良溶剤及び該疎水性高分子に対する非溶剤を含有する製造原液の流出
このような製造方法によれば、多孔質中空糸膜を簡便に得ることができる。なお、(1)(2)の流出(押し出し)の後、外部凝固液中での凝固の前に、空走部分を通過させることが好ましい。ここで、「空走部分を通過」とは、二重管状ノズルから流出された製造原液が、直ぐに外部凝固液に接触しないように、一旦、空気中(又は不活性ガス等の気体中)を通過させることをいう。
ここで、二重管状ノズルとは、ノズルの中心部分に内側流路が形成され、それを取り囲むようにして外側流路が形成され、両流路間には隔壁が形成されているノズルをいう。二重管状ノズルの内側流路は、好ましくは、ノズルの長手方向に垂直な断面が円状のものであり、二重管状ノズルの外側流路は、好ましくは、ノズルの長手方向に垂直な断面が環状のものであり、両流路は同心(中心が共通)であることが好ましい。
内部凝固液としては、疎水性高分子の良溶剤を、内部凝固液の総質量を基準として、80質量%以上100質量%未満含有する水溶液が好ましい。また、内側面の孔径が5μm以上である多孔質中空糸膜を得る観点からは、85質量%以上98質量%未満含有する水溶液が好ましい。
外部凝固液としては、内部凝固液より製造原液に対する凝固力が高い、水を主成分とする凝固液が好ましい。このような外部凝固液を用いれば、内側面孔径が外側面孔径より大きく、内側面から最小孔径層まで連続的に孔径が小さくなる多孔質中空糸膜を得ることができる。凝固力は、透明な製膜原液をガラス上に薄くキャストし、そこにそれぞれの凝固液を垂らしたときに濁りを生じる速度によって測定することができ、濁りを生じる速度が速い凝固液が、凝固力が強い凝固液を示す。
疎水性高分子と親水性高分子の双方に対する良溶剤とは、疎水性高分子又は親水性高分子30gを100gの溶剤に溶解したときに、不溶成分が観察されない溶媒をいう。双方の高分子を溶かす良溶剤としては、製造原液の安定性の観点から、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルアセトアミド(DMAC)から選ばれる1種又は2種以上の混合溶媒を80%以上含む溶剤が好ましく、90%以上含む溶剤がより好ましい。また、取り扱いの簡便さと高い透水性を得る観点から、良溶剤は、N−メチルピロリドンを含有することが好ましい。
製造原液中の、疎水性高分子と親水性高分子の双方に対する良溶剤の含有量としては、製造原液の総質量を基準として、40質量%以上75質量%以下であることが好ましく、50質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
疎水性高分子に対する非溶剤とは、疎水性高分子5gを100gの溶剤に溶解したときに、不溶成分が観察される溶媒をいう。疎水性高分子に対する非溶剤としては、水、アルコール化合物等が挙げられる。これらのうち、製膜原液の調整の容易さ、保存中の組成変化の起きにくさ、取り扱いの容易さ等の観点から、グリセリンが好ましい。
製造原液中の、非溶剤の含有量としては、製造原液の総質量を基準として、0.5質量%以上15質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
製造原液は、二重管状ノズルから流出させる温度における溶液粘度が30Pa・sec以上200Pa・sec以下であることが好ましく、40Pa・sec以上150Pa・sec以下であることがより好ましい。溶液粘度が30Pa・sec未満であると、二重管状ノズルの外側流路から流出させた製膜原液が、自重で垂れ落ちるため、空走時間を長く取ることが困難となり、膜厚が300μm以上であり、かつ、孔径が0.1μm以上の多孔質中空糸膜を製造することが困難となる。また、溶液粘度が200Pa・secより大きいと、二重管状ノズルから安定して押し出すことが困難となり、膜性能にばらつきが生じる場合がある。
上記製造方法において、親水性高分子としては、重量平均分子量400000以上800000以下のポリビニルピロリドンが好ましい。このような親水性高分子を用いることで、溶液粘度が上記好適な範囲内である製造原液を、容易に調整することができる。
製造原液中の、親水性高分子の含有量としては、製造原液の総質量を基準として、8質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。また、製造原液中の、疎水性高分子の含有量としては、製造原液の総質量を基準として、15質量%以上30質量%以下であることが好ましく、18質量%以上25質量%以上であることがより好ましい。親水性高分子と疎水性高分子の含有量が上記範囲であると、溶液粘度が上記好適な範囲内である製造原液を容易に調整することができるとともに、親水性高分子の含有量が上記好適な範囲内である多孔質中空糸膜を得ることができる。
上記製造方法としては、凝固工程と同時又はその後に(好ましくは、凝固工程の後に)、親水性高分子の一部を、酸化剤含有水溶液を用いて除去することが好ましい。酸化剤含有水溶液としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液、過酸化水素水溶液など挙げられる。このような製造方法によれば、親水性高分子の含有量が上記好適な範囲内であり、ろ過性能及び洗浄性に一層優れる多孔質中空糸膜を得ることができる。
本実施形態における「コラーゲン加水分解物」とは、動物の骨、皮膚、じん帯又は腱等の結合組織から得たコラーゲンを加水分解して得られる物質の総称であり、コラーゲン加水分解物としては、例えば、ゼラチン、にかわ、コラーゲンペプチド等が挙げられる。
本実施形態における「コラーゲン加水分解物含有溶液」としては、コラーゲン加水分解物が溶解した水溶液、コラーゲン加水分解物が分散した水溶液等が挙げられる。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法では、微生物等の除去物を含有するコラーゲン加水分解物含有溶液を、上記多孔質中空糸膜に流通させる。これにより、除去物が多孔質中空糸膜により除去され、コラーゲン加水分解物含有溶液が清澄化される。そして、清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液から、精製されたコラーゲン加水分解物を得ることができる。
コラーゲン加水分解物含有溶液としては、例えば、動物の骨、皮膚、じん帯又は腱等の結合組織を温水に数時間浸漬して、当該温水中にコラーゲン加水分解物を溶出させて得られる溶液が挙げられる。
また、コラーゲン加水分解物含有溶液としては、例えば、菌体濃度が10万個/g(食品衛生検査指針)未満である溶液が挙げられる。コラーゲン加水分解物含有溶液の菌体濃度が10万個/g未満であると、微生物等の破砕物の混入が一層少ないコラーゲン加水分解物が得られる。
コラーゲン加水分解物含有溶液のpHは、3.0以上8.0以下であることが好ましく、4.0以上7.0以下であることがより好ましい。pHが上記範囲内であると、飲料等の最終製品に用いた際に食味のよいコラーゲン加水分解物を得ることができる。
コラーゲン加水分解物がゼラチンである場合、コラーゲン加水分解物含有溶液としては、ゼラチンの濃度が5質量%以上70質量%以下である溶液が好ましく、20質量%以上50質量%以下である溶液がより好ましい。コラーゲン加水分解物がゼラチンである場合、そのコラーゲン加水分解物含有溶液における濃度が5重量%以上であると、生産性良くコラーゲン加水分解物を得ることができる。また、コラーゲン加水分解物含有溶液における濃度が70質量%以下であると、コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度上昇に起因するろ液流速の低下が起こり難く、安定なろ過処理が可能となる。
コラーゲン加水分解物がゼラチンである場合、コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度(JIS K6503:2001に従って測定した粘度)が、1.1mPa・sec以上13mPa・sec以下であることが好ましい。コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度が1.1mPa以上であると、ゼラチンの含有量が適切であり固体化に要するエネルギーが少なくなる。そのため、多孔質中空糸膜を通過した溶液から、固体化したゼラチンを容易に得ることができる。一方、コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度が13mPa・sec以下であると、粘度が大きすぎずに多孔質中空糸膜を通過しやすいため、処理速度が一層向上する。また、当該粘度は、1.5mPa・sec以上6mPa・sec以下であることがより好ましい。
コラーゲン加水分解物がコラーゲンペプチドである場合、コラーゲン加水分解物含有溶液としては、コラーゲンペプチドの濃度が5質量%以上70質量%以下である溶液が好ましく、30質量%以上60質量%以下である溶液がより好ましい。コラーゲン加水分解物がコラーゲンペプチドである場合に、そのコラーゲン加水分解物含有溶液における濃度が上記範囲内であると、生産性を保った上で、効率的なろ過流速も得られるという効果が奏される。
コラーゲン加水分解物がコラーゲンペプチドである場合、コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度(JIS K6503:2001における、「にかわ」の濃度測定方法に従って測定した値)が、0.5mPa・sec以上3.2mPa・sec以下であることが好ましい。コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度が0.5mPa・sec以上であると、コラーゲンペプチドの含有量が適切であり固体化に要するエネルギーが少なくなる。そのため、多孔質中空糸膜を通過した溶液から、固体化したコラーゲンペプチドを容易に得ることができる。一方、コラーゲン加水分解物含有溶液の粘度が3.2mPa・sec以下であると、粘度が大きすぎずに多孔質中空糸膜を通過しやすいため、処理速度が一層向上する。また、当該粘度は、0.6mPa・sec以上2mPa・sec以下であることがより好ましい。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法は、上記多孔質中空糸膜に、コラーゲン加水分解物含有溶液を流通させる内圧ろ過工程を含むが、当該内圧ろ過工程は、従来の中空糸膜を用いる方法と比較して、高いろ過速度を長時間維持可能であり、微生物の破壊や変形が少なく、膜の洗浄が容易で処理効率に優れる。
内圧ろ過工程における内圧ろ過は、高いろ過速度を長時間維持することができるという観点からは、クロスフローろ過により行われることが好ましい。クロスフローろ過とは、多孔質中空糸膜の一端からその管内部にコラーゲン加水分解物含有溶液を導入して管壁に沿って送液するとともに、管壁でろ過して孔から清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液を流出させ、ろ過により濃縮されたコラーゲン加水分解物含有溶液を多孔質中空糸膜の他端から抜き出すろ過方法をいう。
クロスフローろ過におけるコラーゲン加水分解物含有溶液の送液速度は、線速度で3.0m/sec以下であることが好ましく、2.0m/sec以下であることがより好ましい。送液速度が3.0m/sec以下であると、多孔質中空糸膜にかかるエネルギー負荷が少なく、多孔質中空糸膜を長期間使用することができる。また、0.2m/sec以上、1.5m/sec以下であると、十分に高い処理速度を維持しつつ、多孔質中空糸膜をより長期間使用することができるようになる。
内圧ろ過工程における内圧ろ過は、エネルギー効率良く内圧ろ過工程を行うことができるという観点からは、デッドエンドろ過により行うこともできる。デッドエンドろ過とは、多孔質中空糸膜の一端を閉じ、他端からその管内部にコラーゲン加水分解物含有溶液を導入するとともに、管壁でろ過して孔から清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液を流出させ、膜面及び膜内部に微生物等の除去物を蓄積させるろ過方法をいう。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法は、内圧ろ過工程で得られる清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液から、固体化されたコラーゲン加水分解物を得る固体化工程を含んでいてもよい。
固体化工程では、例えば、清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液を乾燥機に入れて固化する。
このような固体化工程によれば、清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液から、コラーゲン加水分解物を容易に得ることができる。そして、清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液を使用しているため、微生物やその破砕物等の含有量が少なく、精製されたコラーゲン加水分解物を得ることができる。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法は、動物の骨、皮膚、じん帯又は腱等の結合組織からコラーゲン及び/又はコラーゲン加水分解物を含む抽出物を得る、抽出工程を含んでいてもよい。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法はまた、上記抽出工程で得られる抽出物中のコラーゲンを加水分解する、加水分解工程を含んでいてもよい。
抽出工程は、例えば、動物の骨、皮膚、じん帯又は腱等の結合組織を数時間温水に浸漬し、コラーゲン及び/又はコラーゲン加水分解物を温水中に溶出させることにより行うことができる。
加水分解工程における加水分解としては、温水中での熱加水分解や、酵素処理による加水分解等が挙げられる。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法はさらに、内圧ろ過工程で得られるろ液(清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液)を用いて、多孔質中空糸膜を逆流洗浄する工程をさらに含むことが好ましい。逆流洗浄により、多孔質中空糸膜の膜面や膜内部の堆積物を定期的に除去することで、多孔質中空糸膜のろ過性能を長時間維持することが可能となる。また、低圧及び低送液速度で十分なろ過速度を長時間維持できるため、コラーゲン加水分解物含有溶液中に含まれる微生物等の破砕を一層防止することができる。
本実施形態に係るコラーゲン加水分解物の製造方法によれば、従来の多孔質中空糸膜を用いるろ過方法と比較して、高いろ過速度を長時間維持可能であり、微生物の破壊や変形が少なく、かつ、膜の洗浄が容易で処理効率の高い内圧ろ過工程を含む、製造効率に優れ、微生物等の破砕物の混入が少なく十分に精製されたコラーゲン加水分解物を製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態ではコラーゲン加水分解物の製造方法として説明したが、本発明は、コラーゲン加水分解物含有溶液の清澄化方法であってもよく、清澄化されたコラーゲン加水分解物含有溶液の製造方法であってもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
下記実施例及び比較例の多孔質中空糸膜について、内側面孔径及び最小孔径層の位置の測定、最小孔径層の孔径の測定、内径、外径及び膜厚の測定、ポリビニルピロリドンの含有割合の測定、ポリビニルピロリドンの分布の測定、製膜原液の溶液粘度測定、ポリビニルピロリドンの重量平均分子量測定を、以下の方法で行った。
(1)内側面孔径及び最小孔径層の位置の測定
凍結乾燥した多孔質中空糸膜の内側面を、電子顕微鏡を用いて1視野において10個以上の孔が観測可能な倍率で観察した。得られた顕微鏡写真における細孔を円形近似処理し、その面積平均値から求めた直径を内側面孔径とした。凍結乾燥した多孔質膜の断面を内側面側から外側面側へ向かって連続して観察し、断面孔径が最小になる層の位置を確認した。
(2)最小孔径層の孔径決定法
ポリスチレンラテックス粒子を、0.5wt%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液に、粒子濃度が0.01wt%になるように分散させ、ラテックス粒子分散液を調整した。多孔質中空糸膜を用いてラテックス粒子分散液のろ過を行い、ろ過前後のラテックス粒子の濃度変化を測定した。この測定を、0.1μmから約0.1μm刻みでラテックス粒子径を変えながら行いラテックス粒子の阻止曲線を作成した。この阻止曲線から、90%透過阻止可能な粒子径を読み取り、その径を最小孔径層の孔径とした。
(3)多孔質中空糸膜の内径、外径及び膜厚の測定
多孔質中空糸膜を円管状に薄くきりそれを測定顕微鏡で観察し、多孔質中空糸膜の内径(μm)、外径(μm)を測定した。得られた内径、外径から下記の式(II)を用いて膜厚を算出した。
膜厚(μm)=(外径−内径)/2 (II)
(4)ポリビニルピロリドンの含有割合の測定(ポリスルホン膜の場合)
多孔質中空糸膜の1H−NMR測定を下記の条件で実施し、得られたスペクトルにおいて1.85〜2.5ppm付近に現れるポリビニルピロリドン(4H分)由来のシグナルの積分値(IPVP)と7.3ppm付近に現れるポリスルホン(4H分)由来のシグナルの積分値(IPSf)から、下記式(III)によって算出した。
[測定条件]
装置:JNM−LA400(日本電子株式会社)
共鳴周波数:400.05MHz
溶媒:重水素化DMF
試料濃度:5質量%
積算回数:256回
[式(III)]
ポリビニルピロリドン含有割合(質量%)=111(IPVP/4)/{442(IPSf/4)+111(IPVP/4)}×100
(5)ポリビニルピロリドンの分布の測定
多孔質中空糸膜の管壁を膜厚方向に3等分して3つの領域に分割したときに、外側面を含む外周領域の部分と、内側面を含む内周領域の部分とをサンプリングし、多孔質中空糸膜中に含まれるポリビニルピロリドンの含有割合を上記測定と同様にしてNMR測定より求めた。得られた外周領域におけるポリビニルピロリドンの含有割合(Cout)と、内周領域における含有割合(Cin)から下記式(IV)によりポリビニルピロリドンの分布を求めた。
ポリビニルピロリドンの分布=Cout/Cin (IV)
(6)製膜原液の溶液粘度測定
広口ビンに入れた製膜原液を恒温槽に入れ、液温が二重管ノズルから押し出される温度になるように設定した。B型粘度計を用いて粘度の測定を行った。
(7)ポリビニルピロリドンの重量平均分子量測定
ポリビニルピロリドンを1.0mg/mlの濃度でDMFに溶かした試料液を作製し、以下の条件でGPC測定を行いその重量平均分子量(PMMA換算)を求めた。
装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社)
カラム:ShodexKF−606M、KF−601
オーブン:40℃
移動相:0.6ml/min DMF
検出器:示差屈折率検出器
(実施例1)
[多孔質中空糸膜の製造]
ポリスルホン(SOLVAY ADVANCED POLYMERS社製、Udel P3500)18質量%、ポリビニルピロリドン(BASF社製、Luvitec k80)15質量%を、N−メチル−2−ピロリドン62質量%に70℃で撹拌溶解し、グリセリン5質量%を加えてさらに撹拌し製膜原液を調整した。この製膜原液を二重環紡糸ノズル(最外径2.4mm、中間径1.2mm、最内径0.6mm、以下の実施例でも同じ物を用いた)から内部凝固液の90質量%NMP水溶液と共に押し出し、50mmの空走距離を通し、80℃の水中で凝固させた。水中で脱溶媒を行った後、2000ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液中で脱PVP処理後、水洗を行い、多孔質中空糸膜を得た。得られた多孔質中空糸膜の評価結果を表1に示す。
[コラーゲン加水分解物の製造]
有効長20cmのモジュールケースに膜面積が1200cmとなるように得られた多孔質中空糸膜を入れ、クロスフロー型のミニモジュールを作製した。そのモジュールに、ろ過圧力60kPa、線速度0.5m/secで未ろ過のコラーゲンペプチドを送液し、平均透過速度を測定した。測定結果を表1に示す。また、本実施例では高いろ過速度を1時間以上維持することができた。
未ろ過のコラーゲンペプチドは、濃度が52%、JIS K6503:2001におけるにかわの濃度測定方法により測定した値が1.6mPa・sec、pHが6.0、菌体濃度が10万個/gであった。一方、ろ過後のコラーゲンペプチドは、菌体濃度が500個/g以下であり、十分に微生物やその破砕物が除去されていることが確認された。
ろ過後のコラーゲンペプチドを、乾燥機にて乾燥することにより、固体化したコラーゲンペプチドが得られた。得られたコラーゲンペプチドは、微生物やその破砕物の含有が除去され、精製されたものであることが確認された。
(実施例2)
[コラーゲン加水分解物の製造]
実施例1と同様のミニモジュールの片端にバルブを取り付けて閉止し、多孔質中空糸膜の片端が塞がった状態とした。このモジュールに、ろ過圧力60kPa、で未ろ過のコラーゲンペプチドを送液し、デッドエンドでろ過を行い、平均透過速度を測定した。測定結果を表1に示す。また、本実施例では高いろ過速度を1時間以上維持することができた。
未ろ過のコラーゲンペプチドは、濃度が52%、JIS K6503:2001におけるにかわの濃度測定方法により測定した値が1.6mPa・sec、pHが6.0、菌体濃度が10万個/gであった。また、ろ過後のコラーゲンペプチドは、菌体濃度が500個/g以下であり、十分に微生物やその破砕物が除去されていることが確認された。
ろ過後のコラーゲンペプチドを、乾燥機で乾燥することにより、固体化したコラーゲンペプチドが得られた。得られたコラーゲンペプチドは、微生物やその破砕物の含有が除去され、精製されたものであることが確認された。
(比較例1)
[コラーゲン加水分解物の製造]
実施例1の多孔質中空糸膜に代えて平均孔径0.45μmのポリフッ化ビニリデン均質膜を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、コラーゲン加水分解物の精製を行った。測定結果を表1に示す。中空糸膜を用いた場合、膜が目詰まりを起こした結果、ろ過速度の著しい低下が見られた。
Figure 0005705445

Claims (10)

  1. 疎水性高分子と親水性高分子のブレンド物から管壁が構成されている多孔質中空糸膜に、コラーゲン加水分解物含有溶液を流通させる内圧ろ過工程を含む、精製されたコラーゲン加水分解物の製造方法であって、
    前記多孔質中空糸膜は、前記管壁を膜厚方向に3等分して3つの領域に分割したときに、外側面を含む外周領域の親水性高分子の含有割合が、内側面を含む内周領域の親水性高分子の含有割合より大きく、内側面の平均孔径が、外側面の平均孔径より大きい多孔質中空糸膜である、製造方法。
  2. 前記多孔質中空糸膜が、前記内側面の平均孔径が1μm以上50μm以下であり、前記外周領域が0.1μm以上1μm未満の阻止孔径を有しており、前記管壁の膜厚が300μm以上1000μm以下の多孔質中空糸膜である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記親水性高分子が、ポリビニルピロリドンである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記多孔質中空糸膜が、前記親水性高分子の含有量が、前記多孔質中空糸膜の総質量を基準として、0.2質量%以上3質量%以下の多孔質中空糸膜である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記多孔質中空糸膜が、下記式(I)を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
    out/Cin≧2 (I)
    [式(I)中、Coutは前記親水性高分子の前記外周領域における含有割合を示し、Cinは前記親水性高分子の前記内周領域における含有割合を示す。]
  6. 前記多孔質中空糸膜が、内径が1000μm以上2000μm以下の多孔質中空糸膜である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記疎水性高分子が、ポリスルホンである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記内圧ろ過は、クロスフローろ過により行われ、
    前記コラーゲン加水分解物含有溶液は、前記多孔質中空糸膜の一端からその管内部に、線速度3.0m/sec以下で送液される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記内圧ろ過は、デッドエンドろ過により行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記内圧ろ過工程で得られるろ液を用いて、前記多孔質中空糸膜を逆流洗浄する工程をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
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