JP5703966B2 - 撥水性繊維シート - Google Patents
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Description
具体的には、本発明の、吸湿性、柔軟性及び撥水性に優れた片面撥水性繊維シートは、燃料電池部材、電池液等を含ませたシート、吸放出性の内装化粧材、美容液を含むシートマスク、肌着、靴下等の繊維製品や、おむつ等の衛生用品に好適である。
ロール法、浸漬法、噴霧法などの方法を利用することができる点が記載されている。すなわち、撥水剤がホットメルトとの接着性を阻害するので、撥水性と接着力を、低コスト、安全、コンパクトに得ることが求められる点が示されている。
また、繊維素材として不織布を用いることにより、製品を安定的かつ均一な品質で生産することができる。
できる。さらに、蒸着困難な低表面エネルギー材料からなる不織布等にも、強固に密着した膜を形成することが可能である。
本発明は、前記課題を解決するための撥水性繊維シートに関する発明であって、次のとおりの構成を有する。
(1)繊維素材の片面に、化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜からなる撥水層を設けた撥水性繊維シート。
(2)繊維素材が不織布であることを特徴とする上記の撥水性繊維シート。
(3)無機酸化物の蒸着膜が、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜であることを特徴とする上記の撥水性繊維シート。
(4)無機酸化物の蒸着膜が、プラズマ化学気相成長法による酸化珪素の蒸着膜であることを特徴とする上記の撥水性繊維シート。
また、繊維素材に含有させた液体等を蒸発しにくくすることができ、さらに、耐久性を向上させることができる。
さらに、本発明の無機酸化物の蒸着膜を成膜する方法では、ドライプロセスのために、成膜に使用する蒸着原料の量が極めて少なく、また繊維素材と化学結合を形成するため密着性に優れている。
特に、本発明の蒸着膜を、プラズマCVD法により設けることにより、すなわち、プラズマCVD法を用いて低温で成膜することにより、収縮や変質、黄変のない撥水性繊維シートを得ることができる。また、必要な機械物性やコストに合わせて、種々の繊維素材を基材として使用することができる。
例を示す概略的断面図である。
本発明にかかる無機酸化物の連続蒸着膜を有する撥水性繊維シートとしては、図1に示すように、繊維素材1と、該素材1の一方の面に設けた無機酸化物の連続蒸着膜(2a)とからなるものである。
(1)繊維素材
本発明の撥水性繊維シートにおいて使用する繊維素材について説明する。
本発明において、シート状物を構成する繊維素材としては、例えば、綿、麻、キュプラ繊維やレーヨン繊維、アセテート繊維等のセルロース系繊維;羊毛、毛、絹等のタンパク質繊維;アクリル繊維、ポリパラフェニレン繊維、ビニロン繊維、ポリウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維等の合成繊維が挙げられる。
本発明においては、特にセルロース系の不織布が好ましい。
本発明における一般的な添加剤としては、撥水性繊維シートとして必要な機能を維持するため、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を使用することができる。
としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエチレンあるいはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂あるいはその共重合体ないし変性樹脂等を使用することができる。
本発明の撥水性繊維シートの使用に際して、該繊維シートに含浸させる液体等としては、電池用の電解性液体、燃料電池用のアノード触媒層形成用ペースト組成物あるいはカソード触媒層形成用ペースト組成物、美容液等である。
本発明の撥水性繊維シートを適用する技術分野としては、電池部材、サンルーフ仕様車の天井表皮材、壁紙などの建築物の内装化粧材、美容用品、衛生用品などである。
従来の化粧材は吸放湿性に乏しいため、化粧材表面に結露が生じたり、カビ、ダニ等が発生したりし易く、又、住居内湿度の変動によって人の健康状態へ悪影響を及ぼしていたが、本発明による撥水性繊維シートからなる内装化粧材は、その吸放湿性を示す繊維素材に撥水性が付与されているので、内装化粧材表面に汚れが付着しても、汚染物質は繊維素材中に浸透するのが抑制されており、付着した汚れの除去が容易である。従って、本発明の撥水性繊維シートからなる内装化粧材は、優れた吸放湿性能及び耐汚染性能を有する。
無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、化学気相成長法、または、物理気相成長法、あるいは、その両者を併用したものがあり、無機酸化物の蒸着膜の1層からなる単層膜あるいは2層以上からなる多層膜または複合膜を形成して製造することができる。
本発明において用いる、化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜について説明すると、かかる化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を用いて無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができ、而して、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るためには、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
上記の図2に示すように、本発明においては、プラズマ化学気相成長装置11の真空チャンバ12内に配置された巻き出しロール13から繊維素材1を繰り出し、更に、該繊維素材1を、補助ロール14を介して所定の速度で冷却・電極ドラム15周面上に搬送する。
而して、本発明においては、ガス供給装置16、17および、原料揮発供給装置18等から不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガス、その他等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しなから原料供給ノズル19を通して真空チャンバ12内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム15周面上に搬送された繊維素材1の上に、グロー放電プラズマ20によってプラズマを発生させ、これを照射して、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を製膜化する。
次いで、上記で酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成した繊維素材1は、補助ロール23を介して巻き取りロール24に巻き取って、本発明にかかるプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を形成することができる。
上記の例示は、その一例を例示するものであり、これによって本発明は限定されるものではないことは言うまでもない。
上記において、真空チャンバ内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調製することが望ましい。
この場合、混合ガス中の蒸着用モノマーガスと不活性ガスとの混合比は、求める撥水性等に応じて任意の比であってよい。好適には、蒸着用モノマーガス100質量部に対して、不活性ガス30〜100質量部とすることができる。不活性ガスの量が少ないと製膜ができず、多過ぎると、蒸着膜の撥水性が損なわれ得る。
なお、このときの真空チャンバ内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr位、好ましくは、真空度1×10-1〜1×10-2Torr位に調製することが望ましく、また、繊維素材の搬送速度は、10〜300m/分位、好ましくは、20〜150m/分位に調製することが望ましい。
形成は、繊維素材の上に、プラズマ化した原料ガスをSiOX等の形で薄膜状に形成されるので、当該形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜は、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となるものであり、従って、酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜の撥水性は、極めて高いものとなり、薄い膜厚で十分な撥水性を得ることができる。
而して、上記の酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、撥水性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。
例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合がある。
具体例を挙げると、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。
而して、上記の化合物が、酸化珪素の蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜80%位、好ましくは、5〜60%位が望ましい。
上記において、含有率が、0.1%未満であると、酸化珪素の蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高い撥水性を安定して維持することが困難になり、また、80%を越えると、撥水性及び蒸着膜の密着性が低下して好ましくない。
次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析する方法を利用して、酸化珪素の蒸着膜の元素分析を行うことより、上記のような物性を確認することができる。
また、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
而して、上記の異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、繊維素材の上に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る無機酸化物の蒸着膜を設け、次いで、該無機酸化物の蒸着膜の上に、物理気相成長法による無機酸化物の蒸着膜を設けて、2層以上からなる複合膜からなる無機酸化物の蒸着膜を構成することが望ましい。
たは金属の酸化物の種類等によって異なるが、蒸着膜の合計として、膜厚2nm〜400nm位であることが望ましく、具体的には、その膜厚としては、5〜200nm位が望ましく、而して、上記において、200nm、更には、400nmより厚くなると、その膜にクラック等が発生し易くなるので好ましくなく、また、5nm、更には、2nm未満であると、撥水性の効果を奏することが困難になることから好ましくない。
1.水接触角
接触角計(Drop Master 協和界面科学製)で実施例1、2及び比較例1、2の表裏の水接触角を確認した。
製造した撥水性繊維シートの撥水層表裏の撥水性を評価するため、作成した撥水性繊維シートの表面に対する水の接触角を、接触角計を用いて、異なる場所で5回測定を実施し、5回の平均値を以て各接触角の測定値を求めた。
2.通気性の測定
撥水性繊維シートの通気度の測定は、JIS L−1096 一般織物試験法の通気度測定(フラジール法)に従って行い、5回の測定の平均値を採用した。
3.手触りの官能試験
撥水性繊維シートの不織布表面の手触りを、セルロース不織布単体と比較して差があるか否かを確認した。
○ セルロース不織布単体と差がない
× セルロース不織布の柔らかさを失った。
4.生分解性の測定
市販の腐葉土中に実施例1、2及び比較例1、2を50mm×50mmにカットして入れ、40℃で保管し、水分を補給しながら30日後に不織布の分解状況を目視で判断した。
○ 不織布が分解されている
× 不織布が残っている
繊維素材として、厚さ12μmのセルロース不織布(旭化成製:ベンリーゼSD30G)を用い、該セルロース不織布を巻き取り式PE−CVD法蒸着装置の繰り出し側に、片面が被蒸着面となるように設置し、その後、該繊維素材を巻き出し、巻き上げ張力を1.4N/mに設定し、巻き取り式PE−CVD法蒸着装置の容器を密閉し、排気ポンプを稼動させて減圧するとともに、蒸着ドラムの冷却装置の出口側温度を0℃に冷却した。
、蒸着材料としてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を採用し、HMDSOは常温で液体状態であるので、液体状態で流量を計量し、その供給ラインの流量を4000sccm(standard cc/min、1atm、0℃で規格化されたsccmを意味する) に、また、装置内の雰囲気ガスとしてアルゴンを用い、その供給ラインの流量を1500sccmに、それぞれ設定し、PE−CVD法蒸着装置の真空チャンバ内へ供給し、PE−CVD法蒸着装置の容器内の圧力を5.0Paに調整した。
(蒸着条件)
繊維素材: セルロース不織布(旭化成せんい ベンリーゼSD30G)
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)
雰囲気ガス: アルゴンガス
導入ガス比: HMDSO:Ar=4000:1500[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、4kW
フィルムの搬送速度: L/S=30m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
基材としてのセルロース不織布(旭化成製:ベンリーゼSD30G)の片面にプラズマCVDを用いて酸化珪素の蒸着膜を成膜し、撥水層をもうけた。
(蒸着条件)
基材: セルロース不織布(旭化成せんい ベンリーゼSD30G)
蒸着材料: ヘキサメチレンジシロキサン(HMDSO)
雰囲気ガス: アルゴンガス
導入ガス比: HMDSO:Ar=4000:1500[sccm]
巻き取り型PE−CVD装置
印加電圧: 40KHz交流電源、4kW
フィルムの搬送速度: L/S=90m/min
成膜圧力: 5.0[Pa]
基材保持温度: 0℃
セルロース不織布(旭化成製:ベンリーゼSD30G)
セルロース不織布を、不揮発成分濃度2%に調整されたゲラネックスF−2(フッ素系撥水剤:松本油脂製薬製)希釈液に浸漬後、一対の絞りロールによりWPU100%に調整して、撥水性不織布を得た。次いで、得られた撥水性不織布とベンリーゼ単体とをニードルパンチマシーンにより打ち込み深さ6mm、70P/cm2で一体化させた。
上記各実施例及び比較例に記載された方法により得られた繊維シートに対して、水接触
角、通気性、手触りの官能試験及び生分解性について測定し、それぞれの繊維シートの評価を行った。その結果は、以下のとおりである。
実施例1及び2は、セルロース不織布にプラズマCVD法で撥水層を設けるだけで、成膜面のみ撥水性を示し、また、セルロースの特徴である吸水性、通気性、風合い、生分解性を維持しているものである。
比較例1は、セルロース不織布そのものの特徴を現し、撥水性を持たない。
また、一般的に不織布に撥水性を持たせる方法の一つである貼り合わせの例として比較例2があるが、工程数が増えることとセルロースの特徴が失われていることから、CVD法で膜をつけたときの片面撥水膜が優位性を持つといえる。
1:繊維素材(基材)
2:無機酸化物蒸着膜(撥水層)
11:プラズマ化学気相成長装置
12:真空チャンバ
13:巻き出しロール
14、23:補助ロール
15:冷却・電極ドラム
16、17:ガス供給装置
18:原料揮発供給装置
19:原料供給ノズル
20:グロー放電プラズマ
21:電源
22:マグネット
24:巻き取りロール
25:真空ポンプ
Claims (5)
- 不織布の片面に、プラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜からなる撥水層を設けた撥水性繊維シートであって、
該不織布を、真空度が1×10 -1 〜1×10 -2 Torrの真空チャンバ内に設置された冷却・電極ドラム周面上に20〜150m/分の速度で搬送し、
蒸着用混合ガス組成物として、ガス供給装置及び原料揮発供給装置から、不活性ガス及び有機珪素化合物からなる蒸着用モノマーガスを供給し、
ここで上記真空チャンバー内に供給される上記蒸着用混合ガス組成物は、蒸着用モノマーガス100質量部に対して不活性ガス30〜100質量部であり、
さらに、上記の冷却・電極ドラム周面上に搬送された不織布上に、グロー放電プラズマによってプラズマを発生させて、膜厚5〜200nmの無機酸化物からなる蒸着膜を連続膜として成膜し撥水層とした上記撥水性繊維シート。 - 無機酸化物の蒸着膜が、プラズマ化学気相成長法による酸化珪素の蒸着膜であることを特徴とする上記請求項1に記載の撥水性繊維シート。
- 不織布が、セルロース系の不織布であることを特徴とする上記請求項1または2に記載の撥水性繊維シート。
- 不織布の表面に、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガス若しくは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理のうちのいずれかの前処理を施したことを特徴とする上記請求項1〜3のいずれか1項に記載の撥水性繊維シート。
- 上記請求項1〜4のいずれか1項に記載の撥水性繊維シートの製造方法であって、撥水層をプラズマ化学気相成長法による無機酸化物の蒸着膜からなる連続膜として成膜する、上記撥水性繊維シートの製造方法。
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