積載された原稿や記録紙等のシートを給送時に分離する方法としては、従来、摩擦力を用いた分離方法や、エアー吸引による分離方法が知られている。
このうち、摩擦力を用いた方法では、給送ローラにゴム材料等を用いるため、磨耗などの経時変化によって摩擦力が変化し、分離性能が低下する。
また、摩擦係数が変化(バラツキ)するシートや、摩擦係数の異なるシートを同時に分離する場合には、複数枚を同時に給送する重送や、積載シートからシートを分離できないといった分離不良が発生することがある。
さらに、シートの分離時に圧力を加えて分離する構成のため、シートにシワやスジが発生する場合や、汚れる場合がある。
一方、エアー吸引を用いた分離方法は、ローラやシートの摩擦係数に依存しない非摩擦分離方式ではあるが、エアー吸引ブロワやエアーダクトを必要とするため、装置が大型化すると共に、エアー吸引音が騒音となり、オフィスで使用する装置としては不向きのものである。
そこで、非摩擦分離方式の一種で、誘電体ベルトに電界を形成し、これをシートに接触させて吸着し、分離する静電吸着分離方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、複数のローラに巻き掛けられた無端誘電体ベルトに交番電荷を付与した吸着ベルト、該吸着ベルトをシートに対して揺動または、平行移動させて近接または接触させ、最上シートを吸着ベルトに吸着後、この吸着ベルトを積載シート束から離間する方向に移動させることで分離するようになっている。
静電吸着分離方式を用いた分離給送装置は、磨耗、シートの痛み、騒音の発生等がなく、しかも、装置の小型化を達成し得る点で優れている。
特許文献1に記載のように、この分離給送装置では、以下のような分離給送フローをとることでシートの分離および給送を行う。すなわち、分離給送フローにおいては、まず、(A)吸着ベルトが下方へ移動し積層シート群の最上面シートが吸着ベルト下面へ接触する。ついで、(B)所定時間接触状態にて待機することで最上面シートをベルト下面へ吸着する。ついで、(C)最上面シートを吸着保持した状態にて吸着ベルトが上方へ移動し、吸着ベルトとシート束を離間する。ついで、(D)吸着ベルトを保持する2つの張架ローラを回転させシートを搬送する。また、(E)シート搬送終了後、連続通紙時は再び(A)から実行する。
特許文献1では、分離給送フローの一連の動作において(C)、(E)の「ベルトの上下動」により、ベルトに吸着したシートをシート束から離間することで、分離性を確保している。
この静電吸着分離方式において、無端誘電体ベルトを離間する方向に移動させる技術としては、ソレノイドを用いて吸着ベルトを移動させる技術(例えば、特許文献2参照)や、吸着ベルトを有する吸着分離ユニットにギヤ部を設けるとともに、このギヤ部と噛合するギヤをモータで駆動することにより、吸着分離ユニットを回動軸周りに回動動作させる技術(例えば、特許文献3参照)が知られている。
この静電吸着分離方式にて分離給送を行うとき、特許文献2のようにソレノイドを用いた方法は、ソレノイドの応答速度の制約を受けるために高速な動作を実現するのには不向きであり、一方、特許文献3のようにギヤ部と噛合したギヤにて吸着分離ユニットを回動軸周りにてモータにて回動動作させる方式(以下「ギヤ方式」という)は、高速な動作を行うことを考えたとき有利である。このため、ギヤ方式を採用することが望まれる。
ギヤ方式においては、吸着分離ユニットに設置されたギヤ部とステッピングモータまたはDCモータ等の駆動手段に連結されたギヤとの噛合いにて吸着分離ユニットの位置が保持されるために、モータの回転量を調整することで回動軸上での吸着分離ユニットの位置が固定的に決まり、シートに対する吸着ベルトの位置も固定的に決まる。
そのため、吸着分離ユニットの吸着ベルトをシート上面に対して接触した状態で停止させるためには、吸着分離ユニットの位置を精密に制御する必要がある。また、連続的に給送を行う場合、通紙したシート枚数に応じて、吸着する際の吸着分離ユニットの停止位置は異なってくるため、シートの残り枚数に応じて吸着分離ユニットの位置を制御する必要がある。
吸着分離ユニットの位置を制御するためには、駆動手段としてのDCモータと、シート上面位置を検知する検知センサ、モータの回転量を検知するエンコーダ、検知情報を演算しフィードバックを行う制御装置等が必要となる。
なお、駆動手段としてステッピングモータを用いた場合、これら構成は簡易に実現可能ではあるが、ステップ角により停止位置が厳密には離散的であるため、接触状態を一定にすることができない。
このため、ギヤ方式の構成により、吸着ベルトとシートとの接触を確保するとともに吸着ベルトへの接触圧を確保することが望まれる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
まず、構成について説明する。
図1に示すように、第1の実施の形態において、画像形成装置100は、電子写真方式のデジタル複写機として構成されており、原稿を自動的に搬送するADFユニット59と、原稿を読取る原稿読取部58と、シート分離給送装置52から給紙されるシート(記録紙)に対し原稿読取部58が読取った画像を形成する画像形成部50と、複数のシートからなるシート束1を収納するとともに吸着分離ユニット107により1枚のシートを分離して画像形成部50に給送するシート分離給送装置52とを備えている。
シート分離給送装置52により給紙されたシートは、給紙ローラ対9および搬送ローラ対53により搬送経路51を通って画像形成部50に移送され、画像形成部50で形成されたトナー画像が転写装置54により転写され、このトナー画像が定着器55により熱転写され、排紙ローラ対56により排紙トレイ57に排出されるようになっている。
なお、画像形成装置100は、電子写真方式に限らず、例えばインクジェット方式等、他の方式を採用してもよく、また、複写機に限らず、ファクシミリ装置、印刷機または複合機として構成してもよい。
図2、図3に示すように、シート分離給送装置52は、シートをピックアップして分離する部材である吸着分離ユニット107として、下流ローラ5と、上流ローラ6と、これら下流ローラ5および上流ローラ6に巻掛けられた無端状の吸着ベルト2と、を備えている。
下流ローラ5と、上流ローラ6、吸着ベルト2、この吸着ベルト2を帯電させる後述する帯電用の部材およびユニットブラケット12は、吸着分離ユニット107を構成している。また、シート分離給送装置52は、制御部70(図2参照)を備えている。
制御部70は、シート分離給送装置52の各種の動作を制御するものであり、例えば、シート分離給送装置52に設けられた各センサからの検知信号に基づいて、モータ等の各駆動部の駆動量の算出および駆動制御等を行うようになっている。
下流ローラ5は、図示しない駆動源に連結されて駆動される駆動ローラとして構成されている。また、上流ローラ6は、吸着ベルト2を介して従動する従動ローラとして構成されるとともに図示しないスプリングに支持されることで吸着ベルト2に張力をかけるようになっており、吸着ベルト2の張力と吸着ベルト2の内面の摩擦により下流ローラ5に対して従動する。
通常、シートの給送に必要な搬送力は5N以下であり、高い搬送力は必要とされないが、密着力の高いシート等を用いる特殊な条件の場合、吸着ベルト2と下流ローラ5および上流ローラ6との間でスリップが起こる場合も考えられる。その際には吸着ベルト2の内面と下流ローラ5および上流ローラ6との接触面の摩擦係数を高くすることでスリップを防止することができる。
吸着ベルト2は、表面層が108Ωcm以上の抵抗を有する50μm程度の厚さのポリエチレンテレフタレート表装の裏面にアルミ蒸着により106Ωcm以下の抵抗を有する導電層を形成した2層ベルトの構造を有しており、静電気の吸着力によりシートを吸着する静電吸着ベルトとして構成されている。
また、下流ローラ5は、抵抗値が106Ωcmの導電性ゴム層が表面に設けられ、上流ローラ6は、金属ローラから構成されている。下流ローラ5および上流ローラ6は、ともに電気的に接地されている。
駆動が伝達される下流ローラ5は、ユニットブラケット12に保持され、下流ローラ5の回転軸の位置もユニットブラケット12に固定される。下流ローラ5は吸着ベルト2から曲率によりシートを分離するのに適した小径に形成されている。
ユニットブラケット12は、吸着分離ユニット107の一部である。下流ローラ5は、ユニットブラケット12による軸支部を回転中心として回転し、上流ローラ6は、図4(a)、図4(b)に示すように、ユニットブラケット12に設けられた突き当て部41の内部で軸支されて回動自由となっている。
ユニットブラケット12の回転により下流ローラ5がシート束1に接触した際、この上流ローラ6の自由回動動作により下流ローラ5の停止位置によらず、吸着ベルト2の下面がシート束1の上面に面接触する。
ユニットブラケット12の回動中心となる端部には、回動軸14が設けられており、ユニットブラケット12は、この回動軸14を中心に回動可能に構成されている。また、ユニットブラケット12の回動中心となる端部には、ユニット側ギヤ13が設けられており、ユニット側ギヤ13は駆動側ギヤ15と噛合い、駆動側ギヤ15はユニット駆動モータ16と連結されている。
ユニット側ギヤ13は、ユニットブラケット12と同一部品として構成することも可能であり、またユニットブラケット12の回動角度範囲で駆動側ギヤ15と噛合すればよいので、半月ギヤ(セクタギヤ)形状であっても構わない。
続いて、吸着ベルト2へ吸着力を発生させる帯電動作、および吸着原理に関して説明する。
図2に示すように、吸着ベルト2が下流ローラ5に巻回された位置には、交流電源4に接続されたローラ電極3が吸着ベルト2に接触する状態で設けられている。ローラ電極3は、吸着分離ユニット107の一部であり、吸着ベルト2に接するよう固定され、吸着ベルト2に対する位置は一意的に決定されている。
吸着ベルト2の給紙方向下流側には、シートの搬送をガイドするガイド板10と給紙ローラ対9とが設けられている。吸着ベルト2の両側端縁の内側には寄止め用の図示しないリブが設けられており、下流ローラ5、上流ローラ6の両側端面と係合し、吸着ベルト2の寄りを防止している。
下流ローラ5は、図示しない駆動モータにより給紙信号に応じて間欠的に駆動される。駆動モータから下流ローラ5までの駆動伝達経路に電磁クラッチを介するように構成してもよい。
吸着分離ユニット107は、通常は、吸着ベルト2がシートから離間した待機位置にて待機しており、給紙信号が入ると、まず、下流ローラ5が回転駆動され、周動を開始した吸着ベルト2には、ローラ電極3を介して交流電源4より交番電圧が印加され、吸着ベルト2の表面には交流電源周波数と吸着ベルト2の周動速度に応じたピッチ(ピッチは5mm〜15mm程度とするのが好ましい)で交番する電荷パターンが形成される。
このように吸着ベルト2に帯電を行った後、吸着ベルト2をシート束1に接触させると、誘電体である最上位シート1aには吸着ベルト2の表面の電荷パターンにより形成される不平等電界により、Maxwellの応力が働き、最上位シート1aのみが吸着ベルト2に吸着して保持され進行に伴い曲率分離され給紙方向へ繰り出され、ガイド板10、給紙ローラ対9により画像形成部50へ搬送される。
電荷パターンによるシート吸着力は最上位シート1aにのみ作用し、2枚目シート1b以下の紙には作用しない。本給紙方式では吸着分離ユニット107とシートとの間の摩擦力を利用しないので、吸着ベルト2とシート束1との接触圧は充分小さくすることができるので、摩擦による重送が発生することはない。
給紙ローラ対9と吸着ベルト2の線速は同一にされており、給紙ローラ対9がタイミングを取って間欠駆動されているような場合は吸着ベルト2も間欠駆動されるように制御される。
吸着ベルト2は最上位シート1aの後端が上流ローラ6の対向位置に達する前にシート束1より離間されるようになっている。これにより、2枚目シート1bが最上位シート1aと同時に吸着ベルト2に吸着されることが防止される。また、下流ローラ5の部分での吸着ベルト2からのシートの分離は、曲率分離により行われる。
交流電源4は、交流の他、直流を高低交互の電位に変化させたものでもよく、矩形波、正弦波などが考えられる。本実施の形態では吸着ベルト2の表面に対して4KVの電圧の振幅を持った矩形波を印加するものとしている。
なお、本実施の形態では、帯電手段として図5(a)に示すようなローラ電極3を用いて吸着ベルト2を帯電しているが、図5(b)に示すように、ブレード状の帯電部材40を用いて吸着ベルト2に帯電するように構成してもよい。
ブレード状の帯電部材40は、ローラ状の帯電部材であるローラ電極3に比べ、ピッチ幅の小さい電荷パターンを形成することが可能となり、シート束1の最上位のシートに対する吸着力増加が早く、また、2枚目以降のシートに作用する吸着力の減少が早くなるため、分離動作に要する時間短縮が図れる点で有利である。
図6に示すように、本実施の形態では、シート分離給送装置52は、2つの底板、すなわち第1底板20と第2底板7を有している。第1底板20は、シート束1が直接載置されるものであり、第2底板7は、第1底板20の下部に後述する弾性部材21を介して配置されるものである。
待機時、およびシート補給時は、第2底板7は主に最下位置、少なくともシート束1の上面が吸着ベルト2に接触しない下降状態にて待機する。シート分離給送装置52は、第2底板7を昇降させる昇降機構8を備えている。
第1底板20、第2底板7および昇降機構8は、給紙トレイ11に収容されており、この給紙トレイ11は、画像形成装置100の本体から引き出すことができるようになっている。
第1底板20と第2底板7の間には、弾性部材21が設けられており、この弾性部材21は、第1底板20にシート束1が積載されていないときは、第1底板20の自重のみにて圧縮された状態となっている。
第1底板20の自重のみによる弾性部材21の変形量を変形量X1とする。弾性部材21としては、圧縮スプリングを代表として、弾性ゴム、発泡ポリウレタン等弾力性を有する部材が使用可能である。
この状態でシート束1を第1底板20上に積載すると弾性部材21はさらにシート束1の重さ分沈みこむ。シート束1の重さによる弾性部材21の変形量を変形量X2とする。弾性部材21は、装置にて規定されたシート束積載量の最大重さを積載した際にも弾性部材21が縮みきらず、さらなる変形量の余裕があるよう、その剛性および可変長さが設計されている。
シートセット後、昇降機構8による第2底板7の上昇により、第1底板20と第2底板7は、互いに略水平を保ったまま上昇し、シート束1の上面が検知センサ30をオンにした際(もしくは検知センサ30をオンにした後所定時間上昇した後)に、昇降機構8は、第2底板7の上昇を停止する。
検知センサ30はフィラーセンサ等、所定高さを通過したことが検知できるものを用いる。吸着分離ユニット107の下降位置よりもシート束1の上面位置が上方になるように上昇させる。吸着分離ユニット107の下降位置よりもシート束1の上面位置が上方になることに生じる弾性部材21の変形量を変形量X3とする。
この状態で第2底板7の位置を停止させることで、吸着ベルト2に対してシートを弾性的に接触させることが可能である。
このとき弾性部材21の変形量Xは、X=X1+X2+X3にて算出され、同時に弾性部材21による吸着ベルト2への接触圧もXと弾性係数により定義される。しかし、このうち、X2は積載シート量により変化するために一意的に規定できない上に、装置が通紙していくうちに変化していくため、接触圧も変化する。
そこで、本実施の形態では、図7に示すように、第1底板20と第2底板7の間の距離を測定する測距センサ31を用いて、接触圧の調整を行うようになっている。具体的には、測距センサ31により、第2底板7に対して第1底板20がXとなるように第2底板7の上昇量を調整する。
他の例として、図8に示すように、第2底板7が弾性部材21を保持する保持部に圧力センサ32を配置する構成としてもよい。初期のシート積載状態での圧力センサ32の値をY1とする。
この圧力センサ32により弾性部材21の押圧を検知し、検知センサ30がONとなり、吸着ベルト2とシート束1が接触した後、所定の接触圧となるまで第2底板7を上昇させる。吸着ベルト2とシートの接触圧Yは、上昇時の圧力センサ32の値をY2とすると、Y=Y2−Y1にて求めることができるので、満足するY2となるまで第2底板7の上昇量を調整する。
図6〜図8の構成においては、第1底板20は弾性部材21にて保持されるために、高さ方向のみに移動自由度を持つようにガイドを設けるとよい。
また、シート束1を積載した際にも水平性を保つために、弾性部材21を、奥行き方向&左右方向それぞれ2箇所以上、すなわち計4個以上設置するとよい。特に、図9に示すように、吸着ベルト2の鉛直下方に弾性部材21を設置することで弾性部材21の押圧を接触圧として効果的に発揮できる。
次に、動作を説明する。
図6の構成において、シート束1が第1底板20の上部にセットされると、弾性部材21に支えられた第1底板20はシート束1の自重により弾性的に第2底板7に向かい沈みこむ。
その後、分離給送動作においてシート束1を吸着ベルト2にシート束1が接触可能な位置まで移動させる際には、第2底板7が別途駆動手段により移動し、第1底板20もそれに同期して移動する。
底板の上昇量はシート上面が吸着ベルト2の下面に接触する位置よりも上昇させるよう制御すると、第1底板20はシート束1を介して吸着ベルト2に押し下げられる。これにより、吸着ベルト2とシート束1の上面は底板間の弾性部材21により弾性的に当接される。
シート束1が吸着ベルト2に接触した位置よりもさらに底板を上昇させることにより、確実に吸着ベルト2とシートを接触させることが可能であり、弾性部材21の長さ、弾性係数と底板上昇量を調整することにより、シート積載枚数が変化した際にもシート上面が吸着ベルト2へ接触するよう追従しながら接触圧をかけることが可能となる。
図7の構成において、底板が下方位置にある状態から給送動作に入る場合、まず底板は上昇動作に入る。シート束1の最上面が吸着ベルト2に接触をする位置まで移動する検知手段を有することで吸着ベルト2にシート束1の最上面が接触した状態にて底板上昇機構を停止することが可能であるが、装置にとっては、シート積載量が不明のため弾性部材21の変形量も不明であり、上昇量により接触圧を厳密に規定することが困難である。
そこで、第2底板7に対する第1底板20の高さを検知することで弾性部材21の変形量を算出し、そこから適正な押圧がかかるよう弾性部材21が変形する量だけ第2底板7を上昇させる。
これにより、吸着ベルト2に対してシートを適正な押圧で接触させることができ、吸着ベルト2に対するシートの接触圧を厳密に規定することができる。
図8の構成において、シート束1の最上面の高さを検知した上で、第1底板20に対する下部の弾性部材21の押圧を検知し、適正な押圧がかかるよう弾性部材21が変形する量だけ第2底板7を上昇させる。
これにより、吸着ベルト2に対してシートを適正な押圧で接触させることができ、吸着ベルト2に対するシートの接触圧を厳密に規定することができる。また、吸着ベルト2に接触するまでの状態において、弾性部材21にかかる圧力を検知することで、第1底板20に荷重がかかるシート束1の量を検出することが可能であり、積載されたシート束1の残量を検出することができる。これにより、シート残量検知用のセンサの設置を省略することができる。
図9の構成において、吸着ベルト2へのシートの接触圧は第1底板20の下部の弾性部材21により発生されるが、弾性部材21からの押圧は第1底板20の接触位置にかかるため、吸着ベルト2の位置と第1底板20の接触位置が異なる場合、底板の変形、たわみなどにより接触圧の圧抜けが発生してしまう。
そこで、吸着ベルト2の下方(下部の位置)に弾性部材21を配置すると、弾性部材21の押圧が、損失なく吸着ベルト2への接触圧として伝わる。
以上のように、本実施の形態に係るシート分離給送装置52は、複数のシートが積層されてなるシート束1が載置される第1底板20と、載置されたシート束1の上面に対向配置された下流ローラ5および上流ローラ6で張架された吸着ベルト2、およびこの吸着ベルト2の表面を帯電させるローラ電極3とを有する吸着分離ユニット107と、吸着分離ユニット107に固定されたユニット側ギヤ13と噛合する駆動側ギヤ15に接続され、駆動側ギヤ15を駆動させて吸着分離ユニット107を回動軸周りに回転動作させるユニット駆動モータ16と、第1底板20の下部に弾性部材21を介して設けられ、第1底板20を弾性部材21により弾性的に支持する第2底板7と、第2底板7を昇降移動させる昇降機構8と、昇降機構8を駆動制御する制御部70と、を備えたことを特徴とする。
この構成により、吸着ベルト2とシート束1の上面は弾性部材21により弾性的に当接されることとなる。したがって、ギヤ方式を用いた静電吸着分離方式において吸着ベルト2とシートとの接触を確保するとともに吸着ベルト2への接触圧を確保することで目的の吸着性能を確保できる。
また、本実施の形態に係るシート分離給送装置52は、シート束1の最上面が所定の高さにあることを検知する検知センサ30と、第2底板7から第1底板20までの高さを検知する測距センサ31と、を備え、制御部70が、昇降機構8により第2底板7を上昇させ、検知センサ30がシート束1の上面を検知した後、測距センサ31が検知する高さに基づいて弾性部材21の変形量を算出し、変形量が弾性部材21にかかる所定圧力に対応する変形量となるよう、昇降機構8により第2底板7をさらに上昇させるよう制御することを特徴とする。
この構成により、第2底板7に対する第1底板20の高さを検知することで弾性部材21の変形量を算出し、そこから適正な押圧がかかるよう弾性部材21が変形する量だけ第2底板7を上昇させるので、吸着ベルト2に対してシートを適正な押圧で接触させることができ、吸着ベルト2に対するシートの接触圧を厳密に規定することができる。
また、本実施の形態に係るシート分離給送装置52は、シート束1の最上面が所定の高さにあることを検知する検知センサ30と、弾性部材21にかかる圧力を検知する圧力センサ32と、を備え、制御部70が、昇降機構8により第2底板7を上昇させ、検知センサ30がシート束1の上面を検知した後、圧力センサ32が検知する圧力が所望圧力となるよう、昇降機構8により第2底板7をさらに上昇させるよう制御することを特徴とする。
この構成により、シート束1の最上面の高さを検知した上で、第1底板20に対する弾性部材21の押圧を検知し、この押圧が所望の圧力となるよう第2底板7を上昇させるので、吸着ベルト2に対してシートを適正な押圧で接触させることができ、吸着ベルト2に対するシートの接触圧を厳密に規定することができる。
また、本実施の形態に係るシート分離給送装置52は、弾性部材21が、吸着ベルト2の下方の位置に設けられたことを特徴とする。
この構成により、そこで、吸着ベルト2の下方に弾性部材21を配置することで、弾性部材21の押圧を損失なく吸着ベルト2への接触圧として伝えることができる。
また、本実施の形態に係る画像形成装置100は、前述のシート分離給送装置52を備えたことを特徴とする。
この構成により、画像形成装置100において、ギヤ方式を用いた静電吸着分離方式において吸着ベルト2とシートとの接触を確保するとともに吸着ベルト2への接触圧を確保することで目的の吸着性能を確保できる。
(第2の実施の形態)
図10に示すように、第2の実施の形態では、シート分離給送装置52は、図6で説明した第1の実施の形態と同様に、2つの底板、すなわち第1底板20と第2底板7を有している。第1底板20は、シート束1が直接載置されるものであり、第2底板7は、第1底板20の下部に後述する弾性部材21を介して配置されるものである。
待機時、およびシート補給時は、第2底板7は主に最下位置、少なくともシート上面が吸着ベルト2に接触しない下降状態にて待機する。シート分離給送装置52は、第2底板7を昇降させる昇降機構8を備えている。
第1底板20と第2底板7の間には、弾性部材21が設けられており、この弾性部材21は、シートを積載しない状態では、第1底板20の自重のみにて圧縮された状態となっている。
第1底板20の自重のみによる弾性部材21の変形量を変形量X1とする。弾性部材21としては圧縮スプリングを代表として、弾性ゴム、発泡ポリウレタン等弾力性を有する部材が使用可能である。
この状態でシート束1を第1底板20上に積載すると弾性部材21はさらにシート束1の重さ分沈みこむ。シート束1の重さによる弾性部材21の変形量を変形量X2とする。弾性部材21は、装置にて規定されたシート束積載量の最大重さを積載した際にも弾性部材21が縮みきらず、さらなる変形量の余裕があるよう、その剛性および可変長さが設計されている。
また、本実施の形態では、シート分離給送装置52は、第2底板7が最下位置にあるときに、第1底板20を押圧して、第2底板7に対して弾性部材21を介して近接するよう連結させる押圧部材60を備えている。この押圧部材60は、例えばソレノイドなどにより駆動され、第1底板20の押圧および解除が可能な構成となるよう、第1底板20の昇降方向(図10の上下方向)と直交する方向(図10の水平方向)に移動可能に構成されている。
押圧部材60により第1底板20が第2底板7を押圧すると、第1底板20と第2底板7は弾性部材21を介して近接するよう連結した状態となる。このため、第2底板7が最下位置にあるときに、第1底板20上に載置されたシート束1の量に関わらず、正確にシート束1の高さを検出することが可能となる。なお、第2底板7の上昇時には、押圧部材60が解除され、第1底板20は第2底板7に対して弾性的に支持された状態となる。
さらに、図11に示すように、第1底板に積載されたシート束1の高さを検知する検知センサ61を備えるように構成してもよい。この検知センサ61は、第2底板7が最下位置(第1底板20と第2底板7が弾性部材21を介して近接するよう連結)にあるときのシート束1の上面の高さを検知するものであり、第1底板20の上昇方向と直交する方向(水平方向)に移動可能に構成され、底板上昇時には水平方向に移動してシート束1から退避する構成となっている。
本実施の形態では、第2底板7が最下位置にあるときに第1底板20を第2底板7に弾性部材21を介して近接するよう連結することで、第1底板20も最下位置に配置し、この状態で検知センサ61により検知されたシート束1の上面の高さと、予め記憶しておいた1枚のシートの厚さおよび重量に基づいて、シート束1の重量を算出する。
そして、底板を上昇させてシート束1の上面と吸着ベルト2を接触させる際に、検知センサ61により検知されたシート束1の上面の高さ、シート束1の重量から算出した弾性部材21の変形量を加味した量に応じて、第2底板7の上昇量を決定し、吸着分離ユニット107の下降位置よりもシート束1の上面位置が上方になるよう第2底板7を上昇させて停止させる(変形量X3)ことで、吸着ベルト2に対してシートを弾性的に接触させることが可能になる。
このときの弾性部材21の変形量Xは、X=X1+X2+X3にて算出され、同時に弾性部材21による吸着ベルト2への接触圧もXと弾性係数により定義される。しかし、X2は積載シート量により変化するために一意的に規定できない上に、装置が通紙していくうちに変化していくため、接触圧も変化する。ただし、必要な接触圧には許容値幅があるため、弾性部材21の弾性領域内であれば設定が可能である。また、シート送り出し量に応じて、第2底板7を上昇させ接触圧を適正に保つことも可能である。
次に、動作を説明する。
検知センサ61は、第2底板7が最下位置にあるときに、シート束1の高さを検知する。底板を上昇させてシート束1の上面と吸着ベルト2を接触させるとき、検知センサ61が検知したシート束1の高さ、シート束1の重量から算出した弾性部材21の変形量を加味した量に応じて、第2底板7の上昇量を決定し、吸着分離ユニット107の下降位置よりもシート束1の上面位置が上方になるように第2底板7を上昇させて停止する。これにより、吸着ベルト2に対してシートを弾性的に接触させることが可能になる。
以上のように、本実施の形態に係るシート分離給送装置52は、第1底板20および第2底板7が下降して待機している状態のときに、第1底板20と第2底板7とを弾性部材21を介して近接するよう連結する押圧部材60を備えたことを特徴とする。
この構成により、検知センサ61を用いることで、第1底板20上に載置されたシート束1の量に関わらず、正確にシート束1の高さを検出することが可能となる。
また、本実施の形態に係るシート分離給送装置52は、第1底板20と第2底板7が押圧部材60により弾性部材21を介して近接するよう連結されている状態において、シート束1の積載高さを検知する検知センサ61を備えたことを特徴とする。
この構成により、1つの検知センサ61により、シート束1と吸着ベルト2との接触圧を適正に設定することが可能となる。