JP5702186B2 - タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
本発明に使用されるゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能がバランスよく得られるという理由から、BR、SBRが好ましい。
そして、下記式(III)で表される化合物に基づく構成単位、上記式(A)で表される化合物による末端変性を組み合わせた上記主鎖末端変性SBRは、特定の表面処理シリカと共に用いることにより、良好な加工性、作業性を維持しつつ、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をより向上でき、特に耐摩耗性については相乗的に向上できる。
通常、主鎖に官能基を有する重合体(主鎖変性重合体)の末端を変性した場合であっても、上記性能が向上するとは一概には言えない。これは、官能基の種類によりシリカとの親和性が異なるためであり、性能を好適に向上させるためには官能基の組合せが非常に重要である。特に、本発明では、特定の表面処理シリカと併用するため、官能基の組合せがより重要となる。本発明では、下記式(III)で表される化合物に基づく構成単位、上記式(A)で表される化合物による末端変性の組合せが非常に良好であるため、低燃費性、耐摩耗性、ウェットグリップ性能をより向上でき、特に耐摩耗性については相乗的に向上できるものと推測される。
なお、アルコキシスチレン成分含有量は、NMR(例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズの装置)を用いて測定できる。
本発明では、上記式(I)で表される化合物及び上記式(II)で表される化合物によりシリカ表面に化学処理が施された表面処理シリカが使用される。
R3の炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3)の炭化水素基としては、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基(例えば、ビニル基)、炭素数2〜18のアルキニル基(例えば、エチニル基)、炭素数6〜18のアリール基(例えば、フェニル基)等が挙げられる。
工程Iでは、ケイ酸ナトリウムから湿式法シリカ(含水ケイ酸)を製造する。湿式法シリカは、従来公知の方法で製造でき、例えば、ケイ酸ナトリウムと酸の中和反応により湿式法シリカが合成される。具体的には、例えば、ケイ酸ナトリウム水溶液のpHを9〜11に調整して、温度10〜98℃で0.5〜72時間反応させた後、pHを3〜4に調整し、得られた反応物をろ過、洗浄、乾燥することにより湿式法シリカが得られる。なお、pHを調整する手法は特に限定されず、酸(例えば、硫酸)又はアルカリ(例えば、NaOH)の添加、イオン交換樹脂の使用など、従来公知の方法で実施できる。
Na2O・nSiO2・mH2O
上記係数nは、SiO2/Na2Oの分子比で示される値であって、一般にモル比と呼ばれるJIS K 1408−1966に規定の範囲である。この係数nは、特に限定されないが、好ましくは2.1〜3.3であり、より好ましくは3.1〜3.3である。上記係数nが3.1〜3.3であるときは、水ガラス中のシリカ成分(SiO2換算量)が多くなることから、収率よくシリカを合成できる。
工程IIでは、上記式(I)で表される化合物及び上記式(II)で表される化合物により、工程Iにより得られた湿式法シリカの表面に化学処理を施す。化学処理(表面処理)は、上記式(I)で表される化合物及び上記式(II)で表される化合物とシリカ表面を接触させる方法であれば特に限定されないが、シリカが溶媒中に分散した懸濁液(シリカ分散液)中で接触させることが好ましい。なお、工程Iにより得られた湿式法シリカの代わりに市販のシリカ(湿式法シリカ、乾式法シリカ)を使用してもよい。
上記式(I)で表される化合物の使用比率が大きいと、表面処理シリカのメルカプト基含有量が高くなりすぎて、充分な耐摩耗性が得られないおそれがある。
工程IIIでは、工程IIが終了した後(化学処理した後)、上記式(II)で表される化合物が加水分解された際に生じた酸、及びpH調製の際に添加した酸を中和する。具体的には、シリカ分散液のpHを、通常、3〜10に調整すればよい。なお、pHの調整は、水酸化ナトリウム等のアルカリの添加など、公知の方法で実施できる。そして、pH調製をした後、ろ過、洗浄、乾燥することにより、表面処理シリカが得られる。なお、ろ過する前に、トルエン等の水不混和性溶媒をシリカ分散液に添加してもよい。
なお、本明細書において、炭素含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
なお、本明細書において、メルカプト基含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定した値である。
なお、CTAB比表面積は、JIS K6430(2008)に準拠して測定される。
ケイ酸ナトリウム:富士化学(株)製の水ガラス3号(Na2O・nSiO2・mH2O、n=3.2、シリカ成分(SiO2換算量)含有量:28質量%)
濃硫酸:和光純薬工業(株)製
濃塩酸:和光純薬工業(株)製
イソプロピルアルコール:関東化学製
トルエン:関東化学製
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS):信越シリコーン社製
ジメチルジクロロシラン(DMDCS):信越シリコーン社製
水酸化ナトリウム:和光純薬工業(株)製
ケイ酸ナトリウムと水とを混合しケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2濃度150g/l)を調整した。ケイ酸ナトリウム水溶液と水をSiO2濃度60g/lとなるように投入し、温度80℃にした。次に投入したケイ酸ナトリウムの中和に要する全量の25%に相当する量の98質量%濃硫酸を5分間で添加した。添加後、加熱して96℃とした。次に、中和当量の20%相当の同硫酸を5分間で添加した後20分間熟成することを3回繰り返した。次いで中和当量の約10%相当の同硫酸の添加を5分間行った。その時のpHは9.0であった。この間温度は96℃で60分間を保った。その後、同硫酸を10分間更に添加してpH3.5で停止して反応を終了した。その後得られた反応物を、濾過、水洗、スプレー乾燥して湿式沈殿法による含水ケイ酸を得た。
シリカ(含水ケイ酸)、イソプロピルアルコール、水の質量比が、1:5:10である沈降シリカ懸濁液を調整し、撹拌しながら加熱すると同時に表1に示す量の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を添加した。MPTMS添加後、濃塩酸を滴下し、pHを約0.3とした。
混合物を約68℃に加熱して、この温度を約30分間保持した。冷却しながら水酸化ナトリウムを添加し、pHを約3.5とした。NaOHの添加後に、十分な量のトルエンを混合物に加えて、疎水性の沈降シリカ(表面処理シリカ)を、エマルションを形成させずに、水相から分離した。
疎水性の沈降シリカを含む容器内で撹拌した混合物を、多量の水で洗浄した。更に十分な量のトルエンを混合物に添加して、疎水性の沈降シリカを、エマルションを形成させずに、水相から分離した。その後、疎水性の沈降シリカを含む混合物を、多量の水を用いて更に2回洗浄した。
洗浄を完了した後、十分な量のトルエンを混合物に添加して、容器から容易に移し変え可能な流動性の固体を含む液体懸濁液を作成した。得られた懸濁液を真空下、140℃以上で充分に乾燥させ、表面処理シリカAを得た。
含水ケイ酸を得るまでは、表面処理シリカAの場合と同様に行った。
次に、シリカ(含水ケイ酸)、イソプロピルアルコール、水の質量比が、1:5:10である沈降シリカ懸濁液を調整し、撹拌しながら加熱すると同時に、表1に示す量の3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を添加した。更に、表1に示す量のジメチルジクロロシラン(DMDCS)を同じく添加した。MPTMS、DMDCS添加後の溶液のpHは、約1.5〜約2.2の範囲であった。
そして、混合物(MPTMS、DMDCS添加後の溶液)を約68℃に加熱して、この温度を約30分間保持した。この後は、表面処理シリカAの場合と同様に行い、表面処理シリカBを得た。
MPTMS及びDMDCSの添加量を変えた点以外は、表面処理シリカBと同様の方法により表面処理シリカC〜Fを調製した。
元素分析装置を用いたCHN分析により、炭素含有量(質量%)を求めた。
得られた表面処理シリカ3.0mgにイソプロピルアルコール75mLを添加して撹拌している中に市販品の0.01Nヨード液を用いて、僅かに黄色を呈する終点まで素早く滴定し、以下の式によりメルカプト基含有量(質量%)を測定した。
a2:ブランク試料の滴定時に使用したヨード液の体積
c:表面処理シリカの重量(g)
N:0.01(ヨード液の規定度)
なお、ブランク試料として、イソプロピルアルコール75mLを用いた。
表面処理シリカのCTAB比表面積は、JIS K6430(2008)に準拠し、臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(CTAB)吸着量より求めた。
300mLビーカーに表面処理シリカ10gとイソプロパノール100mL、脱イオン水100mLを添加し、撹拌して懸濁液を得た。pH電極を懸濁液に入れ、25℃におけるpHを求めた。
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
p−メトキシスチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
変性剤:アヅマックス社製の3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン(上記式(A)で表される化合物)
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、p−メトキシスチレン5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間撹拌した。その後、変性剤を0.15mmol加えて、0℃で1時間撹拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴムを得た。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
変性ジエン系ゴム中のアルコキシスチレン成分含有量、スチレン成分含有量は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて測定した。
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol NS116(S−SBR、ビニル含有量:60質量%、スチレン含有量:20質量%)
変性SBR:上記で調製した主鎖末端変性溶液重合スチレンブタジエンゴム(上記式(III)で表される化合物に基づく単位(アルコキシスチレン単位)を主鎖中に有し、上記式(A)で表される化合物により末端変性されたスチレンブタジエンゴム、Mw:500000、アルコキシスチレン成分含有量:1.2質量%、スチレン成分含有量:19質量%)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含有量:97質量%)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラジルVN3(N2SA:175m2/g)
表面処理シリカA〜F:上記で調製した表面処理シリカA〜F
表面処理シリカG:PPG Industries社製のAgilon400G(上記式(I)で表される化合物及び上記式(II)で表される化合物によりシリカ表面に化学処理が施された表面処理シリカ、炭素含有量:4質量%以下、メルカプト基含有量:0.5質量%)
シランカップリング剤A:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤B:エボニックデグッサ社製のSi363(下記式で表されるシランカップリング剤)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
表3,4に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
更に、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材とはりあわせ、170℃で10分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を作製した。
得られた未加硫ゴム組成物について、JIS K6300に準拠したムーニー粘度の測定方法に従い、130℃で測定した。比較例1のムーニー粘度(ML1+4)を100とし、下記計算式により指数表示した(ムーニー粘度指数)。指数が大きいほどムーニー粘度が低く、加工性に優れる。
(ムー二粘度指数)=(比較例1のML1+4)/(各配合のML1+4)×100
得られた未加硫ゴム組成物を押出し成形した直後のシート性状を目視により以下の基準で評価した。シート性状が良好なほど、作業性に優れることを示す。
◎:シート形状が非常に良好
○:シート形状が良好
×:シート形状がボロボロ
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合(各加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例1の損失正接tanδを100として、下記計算式により指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど、低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1のtanδ)/(各配合のtanδ)×100
得られた加硫ゴム組成物について、ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例1のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合(加硫物)の容積損失量を指数表示した。なお、ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例1の容積損失量)/(各配合の容積損失量)×100
得られた加硫ゴム組成物について、(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてウェットグリップ性能を評価した。幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片(加硫ゴム組成物)を用い、速度20km/h、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0〜50%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。結果は比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
水を撒いて湿潤路面としたテストコースにて、試験用タイヤを排気量2000ccの国産FR車に装着し、速度70km/hで制動し、タイヤに制動をかけてから停車するまでの走行距離(制動距離)を測定し、その距離の逆数の値を比較例1を100として、それぞれ指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
Claims (10)
- 下記式(I)で表される化合物及び下記式(II)で表される化合物によりシリカ表面に化学処理が施された表面処理シリカと、1,3−ブタジエン、スチレン及び下記式(III)で表される化合物を共重合して得られる変性ジエン系ゴムとを含むタイヤ用ゴム組成物。
- 前記変性ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端が窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基を有する変性剤で変性されている請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記表面処理シリカの炭素含有量が1〜6質量%である請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記表面処理シリカのメルカプト基含有量が0.15質量%以上である請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記表面処理シリカは、該表面処理シリカ10g、イソプロパノール100ml、及び脱イオン水100mlの混合液を撹拌した懸濁液の25℃におけるpHが5〜10となるものである請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記表面処理シリカのCTAB比表面積が20〜500m2/gである請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記式(I)で表される化合物及び前記式(II)で表される化合物によるシリカ表面への化学処理が、懸濁液中で行われる請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 前記表面処理シリカをゴム成分100質量部に対して、5〜150質量部含む請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- トレッド用ゴム組成物として用いられる請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
- 請求項1〜9のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。
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