JP5700917B2 - 塩害耐食性に優れた自動車用燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板 - Google Patents

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本発明は、塩害環境における耐食性に優れた自動車燃料タンク用の表面処理ステンレス鋼板に関する。
昨今の環境保護やライフサイクルコスト低減のニーズから、燃料タンクには燃料透過防止性、長寿命化といった特性が要求される。たとえば、米国の法規制で15年間もしくは15万マイル走行の間の長期寿命保証が義務付けられ、これを満たすための燃料系部品が、めっき普通鋼材、樹脂、ステンレス鋼の3素材について開発されてきている。
めっき普通鋼材、樹脂、ステンレス鋼の3素材のうち、樹脂については燃料透過性やリサイクル性が問題であり、めっき普通鋼材については現在普及しつつあるバイオ燃料に対する耐久性が懸念される嫌いがある。一方、ステンレス鋼に関しては、鉄系素材としてのリサイクル容易性やバイオ燃料に対する十分な耐食性を有する利点があり、既に燃料系部品の1つである給油管の素材として実用化されてきている。
しかしながら、ステンレス鋼は、単独では、燃料タンクに適用するには塩害環境における耐食性が必ずしも十分とは言えないと評価されている。すなわち、融雪塩に曝される場合を模擬した実験室促進試験において、SUS436Lなどのフェライト系ステンレス鋼では隙間構造部あるいは溶接構造部において隙間腐食が生じ、SUS304Lなどのオーステナイト系ステンレス鋼では溶接部などで応力腐食割れが生じるとの問題がある。
応力腐食割れ感受性は残留応力にも依存し寿命予測が困難であるためオーステナイト系ステンレス鋼は現実的ではない。一方、フェライト系ステンレスの隙間腐食問題に関しては過酷環境での促進試験によって、問題の程度を知ることができるとともに、種々の防食対策を施すことによる改善効果も明らかにできるため、応力腐食割れ問題に比べて制御し易い。このため、燃料タンクや給油管に使用するステンレス鋼はフェライト系鋼を選ぶのが常套であり、既に実用化されている給油管の素材もフェライト系ステンレス鋼である。しかしながら、前述のように、フェライト系ステンレス鋼は隙間腐食に対する抵抗性が低いことが難点で、何らかの防食技術との組み合わせが必須とされる問題があった。
この問題を克服するため、いくつかの防食技術が開発されてきた。
例えば、特許文献1には、フェライト系ステンレス鋼板を素材として成形した燃料タンクの表面にカチオン電着塗装を施したり、溶接部に限定してジンクリッチ塗装を施したり、あるいは鋼板素材としてAlめっき層、Znめっき層あるいはZnとFe,Ni,Co,Mg,Cr,SnおよびAlの内の1種以上との合金からなるめっき層を形成させた鋼板を適用するといった防食方法が開示されている。
また、特許文献2には、ステンレス鋼板を素材として成形した燃料タンクにZn含有量70%以下のZn含有塗料を塗布した燃料タンクが提示されている。
また、特許文献3には、溶融アルミめっきを施した特定材質を有するフェライト系あるいはオーステナイト系のステンレス鋼板を素材として成形加工された燃料タンクが提示されている。
しかしながら、カチオン電着塗装は被塗物を塗料溶液に浸漬して電着させる方法であり、給油管には実際に適用されている技術であるが、給油管のような小物は別にしても燃料タンクのように大きな浮力が生じるものに対しては適用困難であるとの問題がある。また、隙間開口量が小さく奥行きが大きい形状の隙間に対しては必ずしも十分な防食効果が得られないとの問題もある。
また、ジンクリッチペイントに関してはカソード防食効果によって隙間内部の腐食を抑制することができるが、この種のZn含有塗料はZnを多量に含有し樹脂成分が相対的に少ないため、一般塗料に比べて塗膜密着性に劣る嫌いがある。特に過酷な塩害腐食試験において塗膜にブリスターが生成されたり、極端な場合には塗膜が剥離するという問題が生じる場合がある。塗膜密着性を改善しようとすれば、Zn含有量を低減するのが一手段となるが、これを行えば本来目的とするカソード防食効果が大きく毀損されてしまうとの問題がある。
また、アルミめっきステンレス鋼板に関しては、基材としてのステンレス鋼自体は問題ないものの、めっき層のアルミが現在普及しつつあるアルコール含有燃料に対して腐食され易いとの問題がある。アルミの腐食生成物は、フィルターや噴霧装置などの燃料供給系統部品に目詰まりを生じさせるなどの致命的トラブルの原因となる。また、アルミめっきは溶融めっき法で形成させるのが常套で、比較的高温で処理されるために溶融めっき時に脆弱な合金層が形成され、燃料タンクや燃料パイプに成形加工する段階で、合金層の破壊を起点としためっき層剥離やプレス割れが生じるとの問題もある。
このようなAlやZnに依存しない技術も開示されている。
特許文献4には、Cr:3%超〜20%、酸可溶Al:0.005〜0.10%を含む鋼板にNi,Co,Ni−Co合金の拡散被覆層を介してSnあるいはSn−Zn合金のめっき層を形成させることによってアルコールに対する耐食性が向上するとされている。しかしながら、高Cr含有量の鋼板にSnあるいはSn−Zn合金をめっき層とする場合、溶接部に液体金属脆化割れが生じる場合がある。
一方、燃料タンク以外の自動車部品用途にステンレス鋼部材にクロムめっきを施すことによって耐食性を向上させる技術が開示されている。
例えば、特許文献5には、ステンレス鋼製品表面に厚さ0.1〜1.0μmのクロムめっきを直接施し、0.25規定塩酸(50℃)中でのアノード分極曲線の電流密度100μA/cm2に対応する電位V100.t.p.が0.5V(Ag/AgCl)以上になるように、大気中で加熱処理を施すなどの処理を加える技術である。ここで、耐食性評価方法とされたアノード分極曲線の測定条件(0.25規定塩酸、50℃)が過酷過ぎるため、目標とするV100.t.p.を得るのは容易でなく、クロムめっき後48時間以内(望ましくはめっき直後)に100〜300℃の大気中に0.5〜24時間放置する加熱処理を必要とする。このような特殊の付帯要件を伴った製品は用途によっては過剰品質である上、工程が煩雑であるため生産性を阻害するとの問題がある。
また、特許文献6には、クロムめっきと酸化皮膜から成るクロムめっき製品の、5%NaCl、pH:10〜11における自然電位が−0.3V(vs.Ag/AgCl)以上になるように、陽極電解酸化処理や化学酸化処理などの湿式酸化処理を施す技術である。特許文献5と比べて耐食性評価方法に違いがあるものの、付帯工程を必要とする点では特許文献5と同じであり、湿式処理を必要としているので廃液処理も必要となる問題がある。
また、特許文献7には、クロムめっきと酸化皮膜から成るクロムめっき製品の、5%NaCl、pH:10〜11における自然電位が−0.3V(vs.Ag/AgCl)以上になるように、クロムめっきの後にプラズマ処理を施す技術である。特許文献5、6と同様に、付帯工程を必要としている。
さらに、特許文献5から7の従来技術は、いずれも加工、成形された製品を対象としてめっきを施す場合の技術であり、前もってクロムめっきを施した製品を加工した後の耐食性を扱ったものではない。一般に、クロムめっき層は硬質であり加工によって損傷を受け易いため、燃料タンクのプレス加工時にめっき剥離が生じて満足すべき耐食性が得られないとの問題がある。
特開2003−277992号公報 特開2004−115911号公報 特開2003−221660号公報 特開昭61−91390号公報 特許2687014号公報 特開2005−232529号公報 特開2007−56282号公報
本発明は、塩害環境下での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板の提供を目的とするものである。
本発明者らは、種々のステンレス鋼材について膨大な塩害腐食試験、特に溶接隙間構造部の複合サイクル腐食試験を行ってきた。その結果、隙間腐食問題を克服するには、適正組成のステンレス鋼板基材に適正厚みのクロムめっきを施すのが極めて有用であることを見出した。
クロムめっきは、金属光沢の美しさや硬質であることから、意匠性や耐磨耗性などの向上を目的として従来から使われてきた技術であるが、めっき層が硬く延性に乏しい。このためプレス加工を施す燃料タンクに適用するには、加工した後にもめっき剥離などの損傷がなく充分な耐隙間腐食性を発揮することが必要である。
そこで、本発明者らは、クロムめっきステンレス鋼板の加工後の溶接隙間部の耐食性の支配因子について調査した。その結果、加工後の耐隙間腐食性はめっき層厚みに依存し、厚すぎるとめっき剥離が生じて耐隙間腐食性が劣化し、薄すぎるとピンホールなどのめっき欠陥が含まれて耐食性が不十分になることが判明し、めっき厚みを適正範囲に制御すれば良いことを知見した。
また、適正なクロムめっき層を有するステンレス鋼板で、目標とする耐隙間腐食性を確保するためのステンレス鋼板基材の合金組成の必要条件を明らかにした。
これらのことを、より具体的に説明する。
本発明者らは、先ず、従来から知られている標準的なクロムめっき浴であるサ−ジェント浴を用いて電気めっき法でCr含有量17%のフェライト系ステンレス鋼板にクロムめっきを施し、電解時間を変化させてめっき厚みを変えた鋼板サンプルを作製し、このサンプルから採取した試験片に燃料タンクのプレス加工を模擬したドロービード加工を加えた。この加工後の短冊板2枚を重ねてスポット溶接を施した後、腐食試験に供してクロムめっき厚みと耐隙間腐食性の関係を調査した。
その結果を図1に示す。なお、めっき浴組成はクロム酸:100g/L、硫酸:1.0g/Lで、浴温度は50℃、電流密度は、20A/dm2、電解時間を0.5〜15secとした。めっき層の厚みは、グロー放電発光分光分析装置を用いてクロムと酸素の厚み方向元素濃度プロファイルを測定して求めた。ドロービード加工は、ビード部R=4mm、ビード高さ4mmのSKD11金型を800kgで押し付けながら板厚減少率20%の引き抜き加工を施す方法を取った。腐食試験方法としては、JASO M610−92に準じたCCT試験とし、300サイクルの試験期間経過後に溶接隙間構造を解体して隙間腐食深さを測定した。
図1より、めっき厚みによって加工後の耐隙間腐食性が支配されることがわかる。加工後の耐隙間腐食性には、めっき厚みは0.01μm以上の範囲では薄いほうが有利である。めっき厚みが厚いと加工によるめっき層損傷が激しくなるためである。
一方で、めっき厚み0.01〜0.1μmの範囲で、同一のめっき厚みでも耐食性の変動が大きいことがわかる。この原因について調査した結果、耐食性の変動は加工前のクロムめっき層の性状に依存することがわかった。すなわち、図2に示すように、加工前サンプルのカソード電流密度と加工後耐食性に明瞭な相関関係があることを知見した。
クロムめっき材の加工後耐食性は、めっき層が局部破壊されて露出された地鉄の面積率に支配される。クロムめっき層にはピンホールやミクロ亀裂などの潜在欠陥が含まれており、加工によってこれらを起点としためっき層破壊が生じて地鉄露出に至る。したがって、めっきままの状態で潜在欠陥が少なければ加工後の地鉄露出も少なく、結果として加工後の耐隙間腐食性もより良好となる。
そして、この潜在欠陥の寡多はカソード電流密度で表現できる。めっき層の外層は水和クロム酸化物であり、ここではカソード反応がほとんど起こらない。この外層に欠陥があって下地の金属クロム層あるいはさらに下地の地鉄が露出していればカソード反応が起こる。したがって、カソード電流密度の大小はめっき層外層の欠陥面積率に対応するものであり、これがクロムめっき層全体における潜在欠陥の量と相関関係にある。
以上より、良好な加工後耐食性を得るためには、めっき層厚みが適正であることが必要で、加えて、めっきままの状態でのカソード電流密度が適正であること、がより望ましいとの知見を得た。
次に、素材の影響について検討した。鋼成分を種々変化させた実験室溶製材を用いて冷延板を作製し、サージェント浴を用いた電気めっき法でクロムめっきを施し、めっき厚み0.02μm、カソード電流密度0.3〜0.6μA/cm2のクロムめっきサンプルを作製し、前記のドロービード加工を施した短冊板2枚を重ねてスポット溶接した腐食試験片を作製して溶接隙間部の耐食性を調査した。結果の一例を図3に示す。
これより、素材のCr含有量が不十分の場合には、満足すべき耐隙間腐食性が得られないことがわかる。加工性確保のためにクロムめっき層厚みを薄くしているので、隙間内部の過酷環境で局部的にめっき層が消耗された部位でガルバニック腐食が生じるためである。したがって、素材の自然電位はめっき層の電位より貴であることが必要であり、これを満たすためにはCr含有量が少なくとも15.0%以上でなければならないとの知見を得た。なお、ここで例示した鋼板組成はCr量のみを変化させたものでCr以外のNi,Cu,Mo,Vといった耐食性向上元素を含有せず耐食性はCrのみに依存してるので、前記条件を満たせば他の合金元素は、加工性やコストを大幅に害さない範囲で適宜選択して含有させれば良い。
このように、特定組成のステンレス鋼板基材に適正厚みのクロムめっき層を施すことによって塩害環境での隙間腐食問題が解消されることが明らかになった。
さらに、燃料タンクへの加工工程で重視しておくべき特性として、プレス加工性がある。これらプレス成形性をはじめとした冷間加工性は素材自体の材質特性と素材表面の摺動抵抗が支配因子となる。クロムめっき層は硬質であるため加工時に亀裂、剥離、カジリなどの不具合が生じ易い。この点を踏まえて、クロムめっき層の存在を前提とした場合の、ステンレス鋼板基材に必要な材質特性、およびクロムめっき層の上部に形成させる潤滑皮膜の条件を設定したものである。
本発明は前記知見に基づいて構成したものであり、その要旨は以下の通りである。
(1)質量%で、C:≦0.030%、Si:≦2.00%、Mn:≦2.00%、P≦0.050%、S:≦0.010%、N:≦0.030%、Al:0.010〜0.100%、Cr:15.00〜25.00%を含有し、加えて(Ti+Nb)/(C+N):5.0〜30.0(質量比)を満たすTi,Nbの1種または2種を含有し、残部が不可避的不純物およびFeよりなるステンレス鋼板基材の表面に、外層が水和クロム酸化物層で内層が金属クロム層から成る防食めっき層を有し、前記防食めっき層の厚みが0.01〜0.10μmであり、大気開放状態での30℃の3.5%NaCl溶液中で測定されるカソード電流密度が銀/塩化銀標準電極基準−0.6Vの条件において2.5μA/cm 2 以下であることを特徴とする塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
(2)更に、質量%で、Ni:0.10〜4.00%、Cu:0.10〜2.00%、Mo:0.10〜2.00%、V:0.10〜1.00%の1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
(3)更に、質量%で、B:0.0002〜0.0020%を含有することを特徴とする(1)または(2)のいずれか1項に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
(4)前記ステンレス鋼板基材の平均r値が1.4以上、全伸びが30%以上であることを特徴とする(1)から(3)のいずれか1項に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
(5)前記防食めっき層の上に摩擦係数が0.15以下となる可水溶性潤滑皮膜を有することを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。

以上述べたように、本発明によって、塩害環境下での耐食性に優れた燃料タンク用の表面処理ステンレス鋼板が得られるので、産業上の効果は大きい。
めっき層厚みと耐隙間腐食性の関係を示す図である。 めっきまま状態でのカソード電流密度と耐隙間腐食性の関係を示す図である。 素材のCr含有量と耐隙間腐食性の関係を示す図である。 ドロービード加工に用いる工具の形状を示す図である。 プレス加工性評価に用いたタンクの形状を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
先ず、本発明における燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板について説明する。
ステンレス鋼板基材の成分について述べる。
Cr:Crは素材の耐食性を支配する主要元素であり適量を含有させる。加工によって、めっき層が局部的に破壊されて一部で地鉄が露出する部位が形成されるが、当該部の腐食進展を極力抑制するには、めっき層と地鉄の間の電位差を極力小さくしておく必要がある。このために必要最小のCr含有量は15.00%であり、これを下回るとガルバニック作用の悪影響が生じ、図3に示すように満足すべき耐隙間腐食性が得られなくなる。Cr含有量の上限は、耐食性の観点からは特に規定する必要はないが、素材自体の加工性やコスト等を考慮して25.0%を上限とするのが良い。
Cr以外の合金元素については、加工性とコストを大幅に阻害しない範囲で適量を含有させるが、その望ましい含有量について以下に述べる。
C、N:CおよびNは鋼板の延性を低下させプレス成形などの冷間加工性を劣化させると共に溶接部における粒界腐食の原因となる元素である。したがって、これら元素の含有量は可及的低レベルに制限するのが望ましく、C、Nの上限を0.030%とする。Cの上限は0.0100%とするのが望ましく、Nの望ましい上限は0.0200%であり、より望ましは0.0150%である。
Si:Siも鋼板の延性を劣化させるため多量に含有させるべきではなく、上限を2.00%に、望ましくは1.00%に制限する。より望ましくは、上限を0.60%に制限するのがよい。Si含有量はゼロでもかまわない。
Mn:Mnも鋼板の延性を劣化させる元素であり、含有量の上限を2.00%に、望ましくは1.00%に制限する。より望ましくは、上限を0.60%に制限するのがよい。Mn含有量はゼロでもかまわない。
P:Pも鋼板の延性を劣化させる元素であり、含有量は可及的低レベルが望ましい。許容可能な含有量の上限を0.050%とする。望ましいPの上限値は0.040%であり、さらに望ましくは0.030%である。
S:鋼板基材の耐食性を劣化させる元素でもあり含有量は可及的低レベルが望ましい。許容可能な含有量の上限を0.010%とする。望ましいS含有量の上限値は0.0050%であり、さらに望ましくは0.0030%である。
Al:Alは脱酸元素として有用であり、適量を含有させるが多く含有させても効果は飽和するので、含有量の範囲としては0.010〜0.100%を適正とした。
Ti、Nb:Ti,NbはC,Nを炭窒化物として固定して粒界腐食を抑制する作用も有する。このためTi,Nbの1種以上を含有させる。一方、鋼板基材の延性には有害であるため上限を規制する。Ti,Nbの適正含有量として、質量比で、C,N合計含有量の5倍量以上かつ30倍量以下が望ましい。
Ni:Niは、鋼板基材の耐食性を高めるため、より高度の耐食性を追求して含有させても良い。その場合の下限含有量は0.10%とする。一方、多量の含有はコストと加工性を害するので4.00%を上限とする。
Cu:Cuも鋼板基材の耐食性を高めるのに有用な元素であるため、より高度の耐食性を追求して含有させても良い。その場合の下限含有量は0.10%とする。一方、多量の含有はコストと加工性を害するので2.00%を上限とする。
Mo:Moも基材の耐食性を向上させるのに極めて有用な元素でもあるため、より高度の耐食性を追求して含有させても良い。その場合の下限含有量は0.10%とする。一方、多量の含有はコストと加工性を害するので2.00%を上限とする。
V:Vも基材の耐食性を向上させるのに有用な元素でもあるため、より高度の耐食性を追求して含有させても良い。その場合の下限含有量は0.10%とする。一方、多量の含有はコストと加工性を害するので1.00%を上限とする。
B:低温脆化あるいは2次加工脆化に対する抵抗性を高める元素として有用である。しかしながら、多量に含有させると硼化物が析出して耐食性が劣化する。このため、含有させる場合の適正量は0.0002〜0.0020%の範囲とする。
さらに、前記フェライト系ステンレス鋼板の材質特性は、プレス成形性の点から、平均r値が1.4以上、全伸びが30%以上の2要件を共に満たすことが望ましい。これらのうち1要件でも満足されない鋼板は、プレス成形時にめっき剥離を起点としたカジリや割れが生じ易くなるためである。特に、防食めっき層厚みが厚くなるほど、材質因子の影響が顕在化し易いので、前記2条件を共に満たす鋼板素材を用いるのが望ましい。しかしながら、材質特性がこの範囲を満たさない場合でも、部品形状を加工度がマイルドになるように変更したり潤滑を工夫する等の処置を施せばプレス可能となる。
なお、前記材質特性はJISZ2201に規定される13B号試験片を用いた引張試験によって求められる。全伸びは、引張試験前後の標点間距離の変化量から求めるものとする。平均r値は、(rL+rC+2rD)/4で定義し、rL、rC、rDは、それぞれ、圧延方向、圧延方向と直交する方向、圧延方向に対して45度の方向のランクフォード値である。加工硬化率は、30%および40%の引張歪を付与したときの応力をそれぞれ測定して2点間の勾配を算出することによって求める。
前記組成のステンレス鋼板は、転炉や電気炉などで溶製、精錬された鋼片を熱間圧延、酸洗、冷延、焼鈍、仕上酸洗等を施す通常のステンレス鋼板の製造方法によって製造される。また、前記材質特性は、冷延圧下率増大や高温焼鈍など既知の要素技術を適宜組み合わせて用いることによって得られる。
次に、本発明における防食めっき層について説明する。
本発明における防食めっき層は、下層が金属クロム層で上層が水和クロム酸化物層から成り、0.01〜0.10μmの厚みを有するものとする。
めっき層の上層に水和クロム酸化物層を配するのは、この表面ではカソード反応が生じないためである。加工によって地鉄露出に至るめっき欠陥が生じると当該部が腐食起点となる。ここで腐食が継続、成長していくには地鉄部のアノード溶解を支えるカソードがある面積で必要である。しかしながら欠陥周辺が水和クロム酸化物層で覆われていれば、ここではカソード反応が起こらないので、アノード溶解を支えられず、地鉄が露出していても極めて小規模で地鉄露出面上でのカソード反応が小さい場合には、腐食は容易に成長しない。このように、水和クロム酸化物層は、腐食の成長を抑止するために極めて重要な役割を果たす。なお、水和クロム酸化物層の存在は、X線光電子分光(XPS)やX線吸収端微細構造解析(EXAFS)などの表面分析法を用いて金属―酸素、金属―酸素―水素の結合を同定することによって確認できる。また、簡便には、オージェ電子分光(AES)やグロー放電電子分光(GDS)を用いて、めっき層厚み方向の元素濃度分布を測定することによって、水和クロム酸化物層の存在と厚みを把握できる。
めっき層の厚みを規定するのは、良好な加工後耐食性を確保するためである。すなわち、図1に示すように、めっき層厚みが0.10μmを超えると満足すべき耐食性が得られなくなる。これは、めっき層が厚くなることによって、ミクロ亀裂などの潜在欠陥への歪集中が増大して大規模なめっき層損傷を引き起こし地鉄露出面積が大きくなるためである。地鉄露出面積が大きくなれば、周囲が水和クロム酸化物で覆われていても地鉄面上でカソード反応が進むようになるので、腐食が成長し耐食性は劣化する。一方、めっき層が0.01μmより薄過ぎるとピンホールが増大して地鉄露出が増えるので耐食性も不十分となる。したがって、めっき層厚みは、厚すぎず薄すぎず、0.01〜0.10μmの範囲に制御するのが良く、より好ましい耐食性を得るには0.01〜0.05μmの範囲に留めるのが良い。なお、本発明で規定するめっき層厚みは、下層:金属クロム層と上層:水和クロム酸化物層の厚みの総和である。
さらに、加工前のめっき層に含まれる潜在欠陥は可及的に少ないことが望ましい。潜在欠陥が多ければ、それだけ加工によってめっき層が損傷され易くなるからである。この潜在欠陥の多寡は、カソード電流密度を指標として知ることができる。めっき層の上層を被覆する水和クロム酸化物層上ではカソード反応は生じず、下層の金属クロム層あるいは地鉄上でのみカソード反応が起こるので、カソード電流密度を測定することによって潜在欠陥の程度を知ることができ、図2に示すように、耐食性のより良好なめっき層を得ることができる。なお、ここで言うカソード電流密度は潜在欠陥面積率に対応するため、主にはめっき条件に依存するが、形成させるめっき厚みが極めて薄いため、めっき後のハンドリング等によって導入されるキズをも含んだ指標である。
本発明でカソード電流密度の望ましい条件は、図2から明らかなように、大気開放状態での30℃の3.5%NaCl溶液中で測定されるカソード電流密度が銀/塩化銀標準電極基準−0.6Vの条件において4.5μA/cm2以下であり、より望ましくは、2.5μA/cm2以下である。
カソード電流密度が上記好ましい要件を満たす防食めっき層は、通常の電気めっき法で得られる。即ち、めっき厚みが本発明範囲にあるめっき層を通常の電気めっき法で形成することにより、カソード電流密度を4.5μA/cm2以下とすることができる。また、このようにして製造しためっき鋼板について機械キズをつけないようにハンドリングすることにより、カソード電流密度を2.5μA/cm2以下とすることができる。めっき浴組成は特に限定する必要はなく、従来から知られているサージェント浴などを用いることができる。めっき浴としては、クロム酸:100〜400g/L、硫酸:1.0〜4.5g/Lの組成が好ましく、めっき条件としては、温度:45〜55℃、電流密度:10〜80A/dm2の条件が好ましい。なお、クロム酸を主体とするめっき浴を用いて電気めっきを行えば、めっき層構造は自動的に下層が金属クロム層で上層が水和クロム酸化物層の2層構造となる。
めっき層の厚みは、グロー放電発光分光分析法によって求められるCrと酸素の厚み方向濃度分布データから求めるものとする。すなわち、表面から1.0μm深さにおけるクロム濃度を基材中のクロム濃度とし、これより5.0%高く、かつ酸素濃度が10.0%未満の値を示す表面からの深さ位置をめっき厚みとして定義する。本発明で用いた機器は、JOBIN YVON社製JY5000RF−PSS型であり、分析条件としては、Current Method Program:CNBisteel-05NNN-0, Mode: Constant Electric Power 40W, Ar Pressure:775MPa, Analytical Time:90sec, Sampling Time:0.020(sec/point)とした。
また、カソード電流密度の測定は、静止状態かつ大気開放状態の30℃の3.5%NaCl溶液中で銀/塩化銀標準電極を参照電極としてポテンシオスタットを用いた動電位法によって測定されるカソード分極曲線から求めるものとする。本発明では、東方技研(株)製ポテンシオスタットPS−08型を用い、試験片を前記溶液に浸漬後1分経過時点から掃引速度20mV/minでカソード分極曲線を測定し、銀/塩化銀標準電極基準−0.6Vにおける電流密度を本発明で言うカソード電流密度として求めた。
また、耐隙間腐食性の評価方法としては、ドロービード加工を施した幅40mmの短冊試験片2枚を重ねてスポット溶接を施した溶接隙間試験片を用いてCCT試験を行って評価するものとする。ドロービード加工は、短冊試験片に予め潤滑油(カストロールNo.122)を塗布し、図4に示す形状の1対の工具を荷重800kgで押し付けながら引き抜き速度:200mm/minで板厚減少率20%の引き抜き加工を施すものとする。CCT試験は、JASO M610−92に規定される条件で行い、300サイクル経過後に溶接隙間構造を解体し除錆後に隙間内部の腐食深さを顕微鏡焦点深度法で測定した。
また、プレス成形などの冷間加工時の加工性をより確かなものとするために、防食めっき層の上に有機系潤滑皮膜を形成するのが好ましい。この場合の潤滑皮膜は、摩擦係数が0.15以下であることが望ましい。
潤滑皮膜の組成としては、潤滑膜の樹脂成分が温水やアルカリ水に溶解されることで、プレス加工などの冷間成形の後でかつ溶接やロウ付け施工の前の段階で、容易に除去できるものであることが望ましい。有機物である潤滑皮膜は、溶接による昇熱によって分解されて熱影響部に浸炭が起こり粒界腐食感受性が高まって長期耐食性を劣化させる懸念がある。また、昇熱による皮膜の分解生成物はヒュームとなり異臭を発生させ、溶接作業環境を劣悪にする。このような問題を解消するには、溶接に先立って潤滑皮膜を除去すればよく、プレス加工後に温水やアルカリ水を用いて洗浄する程度の簡便な手段で潤滑皮膜が除去できるのが望ましい。このような可水溶性潤滑皮膜は、潤滑機能付与剤とバインダー成分から構成される。そのバインダー成分としてポリエチレングリコール系、ポリプロピレングリコール系、ポリビニルアルコール系、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系などの樹脂水分散体あるいは水溶性樹脂の中から選定し、また、潤滑機能付与剤としては、ポリオレフィン系ワックス、フッ素樹脂系ワックス、パラフィン系ワックス、ステアリン酸系ワックスの中から選定して適用すればよい。
潤滑皮膜の厚みについては、薄過ぎれば潤滑効果が不十分となるので、ある程度の厚みが必要であり、0.5μmが必要下限膜厚として管理するのが望ましい。上限については、厚過ぎると皮膜除去に時間がかかったり使用するアルカリ液の劣化を早めるなど、皮膜除去工程に悪影響を与えるので、5μmを上限としておくのが望ましい。
潤滑皮膜の形成手段としては、特に規定するものではないが、膜厚を均一に制御する観点からロールコートが望ましい。
実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
(実施例1:耐隙間腐食性)
表1に示す組成のステンレス鋼を150kg真空溶解炉で溶製し、50kg鋼塊に鋳造した後、熱延−熱延板焼鈍−酸洗−冷延−中間焼鈍−酸洗−冷延−仕上焼鈍−仕上酸洗の工程を通して板厚0.8mmの鋼板を作製した。
Figure 0005700917
この鋼板よりカットサンプルを採取して、クロムめっきを施した。一部のサンプルは、めっき後のハンドリングによってめっき層が傷つくことを想定して機械キズを付与した。めっき層厚み、カソード電流密度を測定すると共に、ドロービード加工を施した短冊2枚を重ねてスポット溶接を施した後、耐食性評価試験に供した。
めっき浴組成はクロム酸:100g/L、硫酸:1.0g/Lで、浴温度は50℃、電流密度は、20A/dm2とし電解時間を変化させてめっき層厚みを変えた。
めっき層の厚みは、前述の方法で、グロー放電発光分光分析装置を用いてクロムと酸素の厚み方向元素濃度プロファイルから求めた。
ドロービード加工は、予め潤滑油(カストロールNo.122)を塗布した幅40mmの短冊試験片に、図4に示す形状の1対の工具を800kgで押し付けながら引き抜き速度:200mm/minで板厚減少率20%の引き抜き加工を施す方法を取った。
耐食性評価方法としては、JASO M610−92のCCT試験とし、試験期間は300サイクルとした。300サイクル経過後に隙間内部の腐食深さを測定し、最大腐食深さが400μm未満になる場合を合格と評価した。
Figure 0005700917
試験の条件と結果を表2に示す。本発明No.1〜7、No,11〜13,15は、素材のCr含有量とめっき層厚みが適正であり、カソード電流密度も望ましい範囲にあるため、優れた耐隙間腐食性を示した。本発明No.14、16,17は、カソード電流密度のみが、望ましい範囲を外れているので、本発明No.13.15に比べて耐食性は若干劣位となるが充分に満足できるレベルにある。一方、比較例No.101〜103は、素材のCr含有量が少なすぎ、比較例No.109〜110は、めっき層厚みが不適切であり、比較例No.104〜108はめっき厚み、カソード電流密度ともに不適切であるため、満足すべき耐隙間腐食性が得られない。なお、比較例No.201、202は、めっきを施さない場合のステンレス鋼板自体の耐食性を示す。これらを基準に17%Cr鋼板を素材とした本発明No.No.3、12〜17を比較すると、本発明のクロムめっきによってMoを含有させない鋼板であってもMo含有鋼板(比較例No.202)を超える優れた耐隙間腐食性が得られることがわかる。
(実施例2:加工性)
表3に示す組成のフェライト系ステンレス鋼W,X,Y,Zの鋼塊を、熱延−酸洗−1回目冷延−中間焼鈍−酸洗−2回目冷延−仕上焼鈍−仕上酸洗の工程を通して板厚0.8mmの鋼板を製造した。冷延圧下率は累積で73〜75%とし、中間焼鈍は850℃または900℃、仕上焼鈍は830〜950℃とした。中間焼鈍と2回目冷延の有無、および仕上焼鈍温度を変化させて材質特性を変化させた。この鋼板に対して、実施例1に記載した方法で防食めっき層を形成させ、めっき厚みを測定した。また、この鋼板より引張試験片を採取して引張試験を行い材質特性を把握した。
Figure 0005700917
このようにして製造しためっき鋼板をプレス試験に供した。成形したタンクの形状を図5に示す。アッパー、ロアーの両シェルには、タンクの剛性を高める凹み、タンク吊り下げバンドを架ける部位への凹み、車体に接する部位における突起などが随所に形成させた。成形高さは両シェルともに約150mmとした。アッパー側の方がロアー側より形状が複雑で加工条件が厳しい。殆どの試験は、めっきままの鋼板に対して潤滑油(カストロールNo.122)を塗布した状態でプレスしたが、一部の試験では可水溶型潤滑皮膜を形成させた後に供試した。潤滑皮膜の形成方法は以下の通りである。
攪拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管、温度計を備えた4つ口フラスコに、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート87.11g、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン31.88g、ジメチロールプロピオン酸41.66g、トリエチレングリコール4.67g、アジピン酸、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオールからなる分子量2000のポリエステルポリオール62.17g、溶剤としてアセトニトリル122.50gを加え、窒素雰囲気下で70℃に昇温し4時間攪拌してポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。このポリウレタンプレポリマー液346.71gを、水酸化ナトリウム12.32gを639.12gの水に溶解した水溶液にホモデイスパーを用いて分散、エマルション化し、これに2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール12.32gを水110.88gで希釈した溶液を添加して鎖伸長反応させ、さらに50℃、150mmHgの減圧下でポリウレタンプレポリマー合成時に使用したアセトニトリルを留去することによって、溶剤を実質的に含まない、酸値69、固形分濃度25%、粘度30mPa・sのポリウレタン水性組成物を得た。このポリウレタン水性組成物に、軟化点110℃平均粒径2.5μmの低密度ポリエチレンワックス、平均粒径3.5μmのポリテトラフルオロエチレンワックス、融点105℃平均粒径3.5μmの合成パラフィンワックス、平均粒径5.0μmのステアリン酸カルシウムワックス、1次平均粒径20nm加熱残分20%のコロイダルシリカの中から1種または2種を配合して塗料とした。ポリウレタン水性組成物に対するワックス成分の配合比率を変化させて、形成される潤滑皮膜の摩擦係数を変化させることにした。この塗料を、前記防食めっき鋼板にロールコート法で塗装して板温80℃で焼付けて可溶型潤滑皮膜を形成させた。膜厚は1.0μmとした。
このプレス成形試験後のアッパー、ロアーの両プレス品で、基材割れおよびめっき剥離の有無を評価した。
Figure 0005700917
試験結果を表4に示す。比較例No.602、603は、めっき厚みが本発明範囲を僅かに外れ、r値もしくは全伸びのいずれかが本発明の好適範囲を外れているため、プレスによってめっき剥離が生じ、カジリが生じて最終的に割れにつながった。また、比較例No.601は、r値と伸びは適正であるが、めっき厚みが厚すぎるため、めっき剥離が生じて基材割れにつながった。比較例No.604、605は、めっき厚みは適正であるが、それぞれr値、伸びの一方が本発明好適範囲を外れているため、加工度が比較的マイルドなロワーについては成形できたが、加工度が厳しいアッパーは割れが生じて成形できなかった。一方、本発明No.501〜504およびNo.509〜510では、めっき厚みが適正である上、r値、全伸びも適正であるため、割れを起こさずにプレス成形できる。また、本発明No.505〜508では、めっき厚みが適正である上、r値、全伸びはもとより、潤滑皮膜の摩擦係数も適正であるため、潤滑油を塗布せずとも割れを起こさずにプレス成形できる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:≦0.030%、Si:≦2.00%、Mn:≦2.00%、P≦0.050%、S:≦0.010%、N:≦0.030%、Al:0.010〜0.100%、Cr:15.00〜25.00%を含有し、加えて(Ti+Nb)/(C+N):5.0〜30.0(質量比)を満たすTi,Nbの1種または2種を含有し、残部が不可避的不純物およびFeよりなるステンレス鋼板基材の表面に、外層が水和クロム酸化物層で内層が金属クロム層から成る防食めっき層を有し、前記防食めっき層の厚みが0.01〜0.10μmであり、大気開放状態での30℃の3.5%NaCl溶液中で測定されるカソード電流密度が銀/塩化銀標準電極基準−0.6Vの条件において2.5μA/cm 2 以下であることを特徴とする塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
  2. 更に、質量%で、Ni:0.10〜4.00%、Cu:0.10〜2.00%、Mo:0.10〜2.00%、V:0.10〜1.00%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
  3. 更に、質量%で、B:0.0002〜0.0020%を含有することを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
  4. 前記ステンレス鋼板基材の平均r値が1.4以上、全伸びが30%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
  5. 前記防食めっき層の上に摩擦係数が0.15以下となる可水溶性潤滑皮膜を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の塩害環境での耐食性に優れた自動車燃料タンク用表面処理ステンレス鋼板。
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