以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る液晶装置100の概略構成を示すブロック図である。液晶装置100は、液晶パネル100A、処理回路150、電圧生成回路160、操作子170から構成されている。液晶パネル100Aは、反射式のアクティブマトリクス型のものである。なお、液晶パネル100Aの詳細な構成については後述する。
処理回路150は、制御回路152及び表示データ処理回路156を含み、データ信号Vidの出力に合わせて液晶パネル100Aの動作を制御する回路モジュールである。この処理回路150は、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)基板によって、液晶パネル100Aと接続されている。
制御回路152には、タイミング信号発生回路153が内蔵されている。このタイミング信号発生回路153には、クロック発生回路154が附属している。クロック発生回路154は、各部の制御動作の基準となるクロック信号を生成してタイミング信号発生回路153に出力する。タイミング信号発生回路153は、外部装置(図示略)から供給される垂直同期信号Vs、垂直同期信号Hs及びドットクロック信号Dclkに同期して、液晶パネル100Aを制御するための各種の制御信号を生成する。制御回路152は、タイミング信号発生回路153、後述する表示データ処理回路156及び電圧生成回路160などの各種回路を制御する。
電圧生成回路160は、DC/DCコンバーターを含んで構成される。この電圧生成回路160は、外部装置から供給される直流電力から、各部で使用する複数の直流電圧を生成する。また、電圧生成回路160は、液晶パネル100Aの対向電極22に印加される対向電極電位Vcomを生成し、液晶パネル100Aに供給する。
操作子170は、例えばユーザー等により操作され、その操作に応じた指定値Qを例えば「−10」から「0」までの範囲で出力するものである。具体的には、操作子170が電子機器に搭載された場合には、その操作パネルやリモコン等の操作部によって、操作可能に設けられている。なお、この指定値Qにより、後述するように第2スタートパルスDybの出力タイミングを前後に移動させるようになっている。
表示データ処理回路156には、フレームメモリ157及びDAコンバーター158が附属している。表示データ処理回路156は、外部装置から供給される表示データVideoを、制御回路152による制御に従ってフレームメモリ157に記憶した後、液晶パネル100Aの駆動に同期して読み出すとともに、DAコンバーター158によってアナログのデータ信号Vid(駆動電圧)に変換する。なお、表示データVideoは、液晶パネル100Aにおける画素の階調を規定しており、垂直同期信号Vsの供給タイミングを契機として1フレーム分供給されるとともに、垂直同期信号Hsの供給タイミングを契機として1行分供給される。
ここで、本実施形態における垂直同期信号Vsは、周波数120Hz(周期8.33ミリ秒)とするが、これに限定されるものではない。また、ドットクロック信号Dclkについては、表示データVideoのうち、1画素分が供給される期間を規定するものとする。つまり、制御回路152は、表示データVideoの供給に同期して各部を制御している。
図2は、第1実施形態に係る液晶パネル100Aの概略構成を示す図である。図3は、画素の透過回路図である。
図2に示すように、液晶パネル100Aは、表示領域70の周辺に走査線駆動回路130及びデータ線駆動回路140を内蔵した構成となっている。表示領域70には、480行の走査線61が行(X)方向に延在するように設けられている。また、表示領域70には、640列のデータ線62が列(Y)方向に延在するように設けられている。各データ線62は、各走査線61と互いに電気的に絶縁を保つように配置されている。また、480行の走査線61と640列のデータ線62との交差に対応して、複数の画素70aが形成されている。具体的には、複数の画素70aが、縦480行×横640列のマトリクス状に配列されている。
なお、本実施形態では、実際のところ、複数の画素70aが縦1080行×横1920列のマトリクス状に配列された、FHD(フルHD)の解像度となっているが、説明を容易にするために、解像度をVGA(Video Graphics Array)としている。また、解像度としてはこれに限らず、例えば、XGA(eXtended Graphics Array)や、SXGA(Super-XGA)などの解像度であってもよい。
図3は、i行及びこれと1行下で隣接する(i+1)行と、j列及びこれと1列右で隣接する(j+1)列との交差に対応する2×2の計4画素分の構成を示している。なお、i、(i+1)は、画素が配列する行を示しており、ここでは、1以上480以下の整数となる。また、j、(j+1)は、画素が配列する列を示しており、ここでは、1以上640以下の整数となる。走査線61とデータ線62との各交差点付近に、各画素70aと1対1で対応するスイッチング素子40が設けられている。このスイッチング素子は、薄膜トランジスター(以下、TETという)により構成されている。具体的には、複数の画素70aの各々は、nチャネル型のTFT40と液晶容量120とを含んで構成されている。
ここで、各画素70aについては互いに同一構成なので、i行j列に位置する画素で代表して説明する。当該i行j列の画素におけるTFT40のゲート電極41は、i行目の走査線61に接続されている。一方、TFT40のソース電極は、j列目のデータ線62に接続され、そのドレイン電極は、液晶容量120の一端である画素電極12に接続されている。また、液晶容量120の他端は、対向電極22に接続されている。この対向電極22は、全ての画素に亘って共通であって、時間的に一定の対向電極電位Vcomが印加されている。なお、詳細は後述するが、対向電極電位Vcomは、前述した第1の現象における直流電圧成分を補償するための補正電圧分だけ基準値からシフトされた値となっている。
液晶パネル100Aは、素子基板10と対向基板20との一対の基板が一定の間隙を保って貼り合わされるとともに、この間隙に液晶が封止された構成となっている。このうち、素子基板10には、走査線61、データ線62、TFT40及び画素電極12が走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140とともに形成されている。一方、対向基板20には、対向電極22が形成されている。そして、これらの電極形成面が互いに対向するように一定の間隙を保って貼り合わされている。このため、液晶容量120は、画素電極12と対向電極22とが液晶120aを挟持することによって構成されている。
なお、本実施形態では、液晶容量120において保持される電圧実効値がゼロに近ければ、液晶容量120を通過する光の透過率が最小となって黒色表示になる。一方、液晶容量120において保持される電圧実効値が大きくなるにつれて透過する光量が増加して、ついには透過率が最大の白色表示になる。すなわち、液晶パネル100Aはノーマリーブラックモードに設定されているものとする。
この構成において、走査線61に選択電圧を印加し、TFT40をオン(導通)させるとともに、画素電極12に、データ線62及びオン状態のTFT40を介して、階調(明るさ)に応じた電圧のデータ信号Vidを供給すると、選択電圧を印加した走査線61とデータ信号Vidを供給したデータ線62との交差に対応する液晶容量120に、階調に応じた電圧実効値を保持させることができる。
なお、走査線61が非選択電圧になると、TFT40がオフ(非導通)となるが、このときのオフ抵抗が理想的に無限大とはならないので、液晶容量120に蓄積された電荷が少なからずリークする。このオフリークの影響を少なくするために、蓄積容量50が画素毎に形成されている。この蓄積容量50の一端は、画素電極12(TFT40のドレイン)に接続されている。一方、蓄積容量50の他端は、全画素に亘って容量線64に共通接続されている。この容量線64は、時間的に一定の電位、例えば対向電極22と同じ対向電極電位に保たれている。
走査線駆動回路130は、走査信号G1、G2、G3、…、G480を、それぞれ1、2、3、…、480行目の走査線61に供給するものである。走査線駆動回路130は、選択した走査線61への走査信号を電圧に相当するHレベルとし、それ以外の走査線61への走査信号を非選択電圧(接地電位)に相当するLレベルとする。
データ線駆動回路140は、サンプリング信号出力回路142と、各データ線62にそれぞれ対応して設けられたnチャネル型のTFT40とによって構成される。データ線駆動回路140は、選択された走査線61における各画素70aに当該画素の階調を規定するデータ信号Vid(駆動電圧)を供給する。
図4は、第1実施形態に係る素子基板10をその上に形成された各構成要素とともに対向基板20の側から視た液晶パネル100Aの平面図である。図5は、第1実施形態に係る液晶パネル100Aの概略構成を示す断面図である。なお、図4においては、便宜上、走査線駆動回路130やデータ線駆動回路140等の各種駆動回路の図示を省略している。また、図5においては、便宜上、液晶層やシール材71の図示を省略している。
図4に示すように、素子基板10の中央には表示領域70が形成されている。この表示領域70の周縁部には、枠状の遮光領域74が設けられており、この遮光領域74を囲むようにシール材71が配設されている。かかるシール材71により素子基板10と対向基板20とを貼り合わせ、両基板とシール材71とに囲まれる領域内に液晶層(不図示)が封入される。そして、シール材71に設けられた液晶注入口は、封止部72により封止される。
シール材71の外側には、図示はしないが走査線61に走査信号を供給する走査線駆動回路130と、データ線62に画像信号を供給するデータ線駆動回路140とが実装されている。素子基板10の端部には外部回路に接続する複数の接続端子75が設けられている。図示はしないが、かかる接続端子75には駆動回路から延びる配線が形成されている。シール材71の四隅には素子基板10と対向基板20とを電気的に接続する基板間導通部73が設けられている。この基板間導通部73も配線を介して接続端子75と電気的に接続されている。
図5に示すように、液晶パネル100Aは、素子基板10と、これに対向配置された対向基板20と、これらの間に挟持された液晶層とを備えて構成されている。素子基板10は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体11、及びその内側(液晶層側)に形成されたTFT40や画素電極12、さらにこれを覆う増反射膜37、第1配向下地膜38A及び第1配向膜13などを備えている。一方の対向基板20は、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体21、及びその内側(液晶層側)に形成された遮光膜24、この遮光膜24を覆う対向電極22、さらにこれを覆う第2配向下地膜38B及び第2配向膜23などを備えている。
素子基板10の側には、画素電極12が設けられており、その上側には、第1配向膜13が設けられている。画素電極12は、例えばアルミニウム(Al)等の導電性膜からなる。
他方、対向基板20の側には、その全面に渡って対向電極22が設けられており、その上側には、第2配向膜23が設けられている。この対向電極22は、例えばITO膜等の透明導電性膜からなっている。対向電極22の厚さは、例えば120nm以上160nm以下になっている。また、第2配向膜23の膜厚は、例えば40nm以上80nm以下となっている。
このように対向配置された素子基板10及び対向基板20間には、前述のシール材71により囲まれた空間に液晶が封入され、液晶層が形成される。液晶層は、画素電極12からの電界が印加されていない状態で配向膜により所定の配向状態をとる。なお、液晶層の液晶は、ツイストネマチックの液晶や、垂直配向用の液晶でも良い。
一方、素子基板10上には、前記の画素電極12及び第1配向膜13の他、これらを含む各種の構成が積層構造をなして備えられている。この積層構造は、下から順に、走査線61を含む第1層、ゲート電極41を含むTFT40等を含む第2層、蓄積容量50を含む第3層、データ線62等を含む第4層、容量線64等を含む第5層、前記の画素電極12及び配向膜等を含む第6層(最上層)からなる。
また、第1層及び第2層間には下地絶縁膜30が、第2層及び第3層間には第1層間絶縁膜31が、第3層及び第4層間には第2層間絶縁膜32が、第4層及び第5層間には第3層間絶縁膜33が、第5層及び第6層間には第4層間絶縁膜34及び第5層間絶縁膜35が、それぞれ設けられており、前述の各要素間が短絡することを防止している。また、これら各種の絶縁膜には、例えば、TFT40の半導体層44中の高濃度ソース領域とデータ線62とを電気的に接続するコンタクトホール等も設けられている。以下では、これらの各要素について、下から順に説明を行う。
第1層には、例えばタングステンシリサイド(WSi)からなる走査線61が設けられている。この走査線61の膜厚(Z方向の厚さ)は、例えば180nm以上220nm以下になっている。また、この走査線61は遮光性を有しており、画素電極12が形成されない領域を略埋めるように形成されている。このため、走査線61はTFT40に下側から入射しようとする光を遮る機能を有している。
第2層には、ゲート電極41を含むTFT40が設けられている。TFT40 は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有している。その構成要素としては、上述したゲート電極41、例えば導電性のポリシリコン膜からなりゲート電極41からの電界によりチャネルが形成される半導体層44のチャネル領域、ゲート電極41と半導体層44とを絶縁する熱酸化したゲート絶縁膜43を含むゲート絶縁膜42、半導体層44における低濃度ソース領域及び低濃度ドレイン領域並びに高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を備えている。なお、ゲート電極41の膜厚は、例えば15nm以上105nm以下となっている。また、半導体層44の膜厚は、例えば40nm程度となっている。また、熱酸化したゲート絶縁膜43の膜厚は、例えば28nm以上35nm以下となっている。また、ゲート絶縁膜42の膜厚は、例えば43nm以上56nm以下となっている。
走査線61の上、かつ、TFT40の下には、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)からなる下地絶縁膜30が設けられている。この下地絶縁膜30の膜厚は、例えば380nm以上420nm以下になっている。下地絶縁膜30は、走査線61からTFT40を層間絶縁する機能を有する。また、この下地絶縁膜30は、素子基板10の全面に形成されている。
第3層には、蓄積容量50が設けられている。蓄積容量50は、TFT40の高濃度ドレイン領域及び画素電極12に接続された画素電位側容量電極としての下部容量電極51と、固定電位側容量電極としての上部容量電極53とが、容量絶縁膜52を介して対向配置されることにより形成されている。この蓄積容量50によれば、画素電極12における電位保持特性を顕著に高めることが可能となる。
下部容量電極51は、例えば導電性のポリシリコン膜からなり画素電位側容量電極として機能する。この下部容量電極51の膜厚は、例えば95nm以上105nm以下になっている。また、この下部容量電極51は、画素電位側容量電極としての機能のほか、画素電極12とTFT40の高濃度ドレイン領域とを中継接続する機能をもつ。
上部容量電極53は、例えばチタンナイトライド(TiN)からなる層(例えば膜厚47nm以上53nm以下)、アルミニウム(Al)からなる層(例えば膜厚142nm以上158nm以下)及びチタンナイトライド(TiN)からなる層(例えば膜厚97nm以上103nm以下)の三層構造からなる。この上部容量電極53は、蓄積容量50の固定電位側容量電極として機能する。そして、上部容量電極53は下部容量電極51と同形状となり、下部容量電極51と同様に島状の電極を構成している。上部容量電極53を固定電位とするために、固定電位とされた容量線64と電気的接続が図られている。また、上部容量電極53は、TFT40に上側から入射しようとする光を遮る機能を有している。
容量絶縁膜52は、例えばHTO( High Temprature Oxide)膜からなる。この容量絶縁膜52の膜厚は、例えば3nm以上5nm以下となっている。なお、容量絶縁膜52は、蓄積容量50を増大させる観点から、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて薄いほどよい。また、容量絶縁膜52は、二層構造や三層構造、あるいはそれ以上の積層構造を有するように構成してもよい。
TFT40ないしゲート電極41及び中継電極の上、かつ、蓄積容量50の下には、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)からなる第1層間絶縁膜31が形成されている。この第1層間絶縁膜31の膜厚は、例えば280nm以上320nm以下になっている。
この第1層間絶縁膜31には、TFT40の高濃度ソース領域と後述するデータ線62とを電気的に接続するコンタクトホール31aが、後記第2層間絶縁膜32を貫通して開孔されている。また、第1層間絶縁膜31には、TFT40の高濃度ドレイン領域と蓄積容量50を構成する下部容量電極51とを電気的に接続するコンタクトホール31bが開孔されている。
第4層には、データ線62が設けられている。このデータ線62は、例えば下層より順に、チタン(Ti)からなる層(例えば膜厚19nm以上21nm以下)、チタンナイトライド(TiN)からなる層(例えば膜厚47nm以上53nm以下) 、アルミニウム(Al)からなる層(例えば膜厚332nm以上368以下)及びチタンナイトライド(TiN)からなる層(例えば膜厚142nm以上158nm以下)の四層構造を有する膜として形成されている。
また、この第4層には、データ線62と同一膜として、容量線用中継層(図示略)、第1中継電極63及び二連コンタクト部66が形成されている。これらは、平面的に見ると、データ線62と連続した平面形状を有するように形成されているのではなく、各者間はパターニング上分断されるように形成されている。これら容量線用中継層、第1中継電極63及び二連コンタクト部66は、データ線62と同一膜として形成されていることから、下層より順に、Tiからなる層、TiNからなる層、Alからなる層及びTiNからなる層の四層構造を有している。二連コンタクト部66は、表示領域70の外側に設けられており、図示略の配線で引き回された後、素子基板10の表層に引き出されて走査線駆動回路130に接続されている。
蓄積容量50の上、かつ、データ線62の下には、例えばNSG、PSG,BSG、BPSG等のシリケートガラス膜、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、あるいは好ましくはTEOS ガスを用いたプラズマCVD法によって形成された膜(以下、P-TEOSという)からなる第2層間絶縁膜32が形成されている。この第2層間絶縁膜32の膜厚は、例えば380nm以上420nm以下となっている。この第2層間絶縁膜32には、TFT40の高濃度ソース領域とデータ線62とを電気的に接続する、前記のコンタクトホール31aが開孔されているとともに、前記容量線用中継層と蓄積容量50の上部容量電極53とを電気的に接続するコンタクトホール(図示略)が開孔されている。
第5層には、容量線64が形成されている。この容量線64は、例えば下層より順に、アルミニウム(Al)からなる層(例えば膜厚315nm以上385nm以下)及びチタンナイトライド(TiN)からなる層(例えば膜厚135nm以上165nm以下)の二層構造を有する膜として形成されている。この容量線64は第3層間絶縁膜33上に形成されている。第3層間絶縁膜33の表面は、CMP( Chemical Mechanical Polishing)処理等の平坦化処理が施されることによって平坦化されている。
また、第5層には、このような容量線64と同一膜として、第2中継電極65が形成されている。この第2中継電極65は、後述のコンタクトホール33aを介して、第1中継電極63及び画素電極12間の電気的接続を中継する機能を有する。なお、これら容量線64及び第2中継電極65間は、平面形状的に連続して形成されているのではなく、両者間はパターニング上分断されるように形成されている。第2中継電極65は、容量線64と同様に、下層にAlからなる層、上層にTiNからなる層の二層構造を有している。このように容量線64及び第2中継電極65は、光反射性能に比較的優れたアルミニウムを含み、且つ、光吸収性能に比較的優れたチタンナイトライドを含むことから、遮光層として機能し得る。すなわち、TFT40の半導体層44に対する入射光の進行を、その上側で遮ることが可能である。
データ線62の上、かつ、容量線64等の下には、例えばP-TEOSからなる第3層間絶縁膜33が形成されている。この第3層間絶縁膜33の膜厚は、例えば570nm以上630nm以下となっている。この第3層間絶縁膜33には、前記の容量線64と容量線用中継層とを電気的に接続するためのコンタクトホール(図示略)、及び、第2中継電極65と第1中継電極63とを電気的に接続するためのコンタクトホール33aがそれぞれ開孔されている。
最後に、第6層には、上述したように画素電極12がマトリクス状に形成されている。この画素電極12は、例えばアルミニウム(Al)からなり、その膜厚は例えば180nm以上220nm以下になっている。
また、上述の画素電極12と同一膜として、周辺領域には、例えばP-TEOSからなる平坦化膜36が形成されている。この平坦化膜36の膜厚は、例えば180nm以上220nm以下となっている。
また、画素電極12及び平坦化膜36の上には、増反射膜37が形成されている。この増反射膜37は、例えば下層より順に、P-TEOSからなる層(例えば膜厚67nm以上83nm以下)及びプラズマシリコンナイトライド(P-SiN)からなる層(例えば膜厚58nm以上72nm以下)の二層構造を有する膜として形成されている。
また、増反射膜37の上には、例えばP-TEOSからなる第1配向下地膜38Aが形成されている。この第1配向下地膜38Aの膜厚は、例えば90nm以上110nm以下となっている。
また、第1配向下地膜38Aの上には、第1配向膜13が形成されている。この第1配向膜13の膜厚は、例えば40nm以上80nm以下となっている。また、第1配向膜13における素子基板10の厚み方向を基準とする第1プレチルト角は、例えば1.2°となっている。具体的には、この第1配向膜13は、例えば、シリコン酸化物等の無機材料を素子基板10に対して斜め方向に蒸着(斜方蒸着)又はスパッタすることにより形成されている。無機材料を素子基板10に対して斜め方向に蒸着又はスパッタすると、蒸着粒子又はスパッタ粒子は、素子基板10に対して斜め方向に堆積し、柱状の結晶体となる。そして、斜めに成長した多数の柱状結晶体によって第1配向膜13が形成されている。液晶分子は、柱状結晶体の成長方向に沿って配向する。液晶分子の配向方向は、蒸着粒子又はスパッタ粒子の素子基板10に対する入射角度によって制御される。第1配向膜13は、液晶分子を素子基板10に対して垂直な方向(すなわち素子基板10の厚み方向)から所定のプレチルト角だけ傾いた方向に配向させる。素子基板10に対して液晶分子が垂直な方向に配向しているときのプレチルト角を0度と定義すると、第1配向膜13における第1プレチルト角は例えば1.2°である。
また、素子部以外の周辺領域(例えば実装端子部及び上下導通端子部)における第1配向下地膜38Aの上には、例えばITO膜からなる電極パッド39が形成されている。この電極パッド39の膜厚は、例えば135nm以上165nm以下となっている。電極パッド39の一部は、第4層間絶縁膜34、第5層間絶縁膜35、平坦化膜36、増反射膜37及び第1配向下地膜38Aに貫設されたコンタクトホール内に埋設されて容量線64と電気的に接続されている。
そして、画素電極12及び平坦化膜36の下には、例えば下層より順に、P-TEOSからなる第4層間絶縁膜34(例えば膜厚350nm以上850nm)及びBSGやNSG等のシリケートガラスからなる第5層間絶縁膜35(例えば膜厚55nm以上95nm以下)が形成されている。これら第4層間絶縁膜34及び第5層間絶縁膜35には、画素電極12及び前記の第2中継電極65間を電気的に接続するためのコンタクトホール34aが開孔されている。
画素電極12とTFT40との間は、このコンタクトホール34a及び第2中継電極65並びに前述したコンタクトホール33a、第1中継電極63、コンタクトホール32a、下部容量電極51及びコンタクトホール31bを介して、電気的に接続されることとなる。なお、第5層間絶縁膜35の表面は、前述のようにCMP処理等の平坦化処理が施されることによって平坦化されている。これにより、その下方に存在する各種配線や素子等による段差に起因する液晶層の配向不良を低減する。
他方、対向基板20の側においては、対向電極22と第2配向膜23との間に、例えばP-TEOSからなる第2配向下地膜38Bが形成されている。この第2配向下地膜38Bの膜厚は、例えば90nm以上110nm以下となっている。また、第2配向膜23における対向基板20の厚み方向を基準とする第2プレチルト角は、例えば7.2°となっている。具体的には、この第2配向膜13は、例えば、シリコン酸化物等の無機材料を対向基板20に対して斜め方向に蒸着(斜方蒸着)又はスパッタすることにより形成されている。無機材料を対向基板20に対して斜め方向に蒸着又はスパッタすると、蒸着粒子又はスパッタ粒子は、対向基板20に対して斜め方向に堆積し、柱状の結晶体となる。そして、斜めに成長した多数の柱状結晶体によって第2配向膜23が形成されている。液晶分子は、柱状結晶体の成長方向に沿って配向する。液晶分子の配向方向は、蒸着粒子又はスパッタ粒子の対向基板20に対する入射角度によって制御される。第2配向膜23は、液晶分子を対向基板20に対して垂直な方向(すなわち対向基板20の厚み方向)から所定のプレチルト角だけ傾いた方向に配向させる。対向基板20に対して液晶分子が垂直な方向に配向しているときのプレチルト角を0度と定義すると、第2配向膜23における第2プレチルト角は例えば7.2°である。
本実施形態では、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角(1.2°)が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角(7.2°)よりも小さく設定されている。なお、素子基板10側の第1配向膜13の成膜時の蒸着レートを、対向基板20側の第2配向膜23の成膜時の蒸着レートに比べて大きくすることによって、第1プレチルト角を第2プレチルト角よりも小さくすることができる。
ところで、従来の液晶装置では、フリッカーや、表示画像の焼き付き等の表示不具合を抑制するために、例えば、各画素電極に印加される駆動電圧の極性を、走査線やデータ線ごと、または、画像信号におけるフレームごとに反転させる反転駆動(交流駆動)が採用されていた。
これは、反転駆動によって液晶層へ直流電圧成分が印加されることや、基板間における電荷の偏りを抑制し、フリッカー等の解消しようとするものである。しかしながら、単純に反転駆動を行ったとしても、液晶層への直流電圧成分の印加や、電荷の偏りが発生しており、依然として表示不具合が発生していた。この表示不具合の発生源としては、下記の2つの現象が知られていた。
第1の現象は、前述したとおり、フィールドスルー現象(プッシュダウン、突き抜けとも呼ばれる)による電圧降下である。これは、電圧低下分に相当する直流電圧を補償することにより補正できる。
これに対して第2の現象は、素子基板と対向基板の電気的な特性差により生じる電荷の偏りである。これを補償するためには、電荷の偏りを打ち消すだけの余分な直流電圧の印加が必要となる。
ここで、図6を用いて、第1の現象及び第2の現象について説明する。図6(a)は、ゲート電圧及び駆動電圧波形を示すチャートである。図6(b)は、液晶層の実効電圧波形を示すチャートである。図6(c)は、図6(b)からある程度の駆動時間経過後の液晶層の実効電圧波形を示すチャートである。なお、図6(a)〜図6(c)において、横軸は時間経過を示し、縦軸は電位を示している。
図6(a)に示すように、駆動電圧波形VDの電位は、ゲート電圧VGの立ち上がりと同期して、高電位EH(例えば12V)と低電位EL(例えば2V)とが交互に切り替わるようになっている。
図6(b)に示すように、ゲート電圧VGが立ち上がるとスイッチング素子がオンになり、画素電極12が充電される。液晶層の実効電圧波形VL1の電位は、概ね低電位ELから高電位EHまで上昇する。
ところで、スイッチング素子が薄膜トランジスターにより構成されている場合に、スイッチング素子がオフになると、突き抜け電圧が生じることがある。すなわち、スイッチング素子のゲート電極41とチャネル領域等との容量に蓄積された電荷が画素電極12に流れることによって、電圧降下V1(突き抜け電圧)が生じる。また、スイッチング素子がオフの状態でチャネル領域をリーク電流が流れることによる、電圧降下V2が生じることもある。これにより、次にゲート電圧が立ち上がるときに、実効電圧波形VL1の電位は、電圧降下V1,V2の分だけ高電位EHよりも低くなっている。
次にゲート電圧VGが立ち上がると、駆動電圧波形VDが低電位になり、画素電極12が放電される。すると、液晶層の実効電圧波形VL1の電位は、低電位ELまで降下する。そして、スイッチング素子がオフになると、突き抜け電圧による電圧降下V3が生じ、またリーク電流による電圧上昇が生じる。
対向電極22の電位は、対向電極電位Vcom1に保持されている。対向電極電位Vcom1は、実効電圧波形VL1の対向電極電位Vcom1に対する高電位側と低電位側とのバランスを取るように、予め設定されている。対向電極電位Vcom1は、電圧降下V1〜V3、電圧上昇V4を加味して設定され、一般に、高電位EHと低電位ELとの中間電位EM(例えば7V)と異なる値になる。例えば、実効電圧波形VL1と対向電極電位Vcom1との差分の時間積分値の絶対値が、駆動電圧波形VDが高電位EHである期間と低電位ELである期間とで略等しくなるように最適化された値が、対向電極電位Vcom1として設定される。
図6(c)に示すように、ある程度の期間だけ液晶層を駆動した後の実効電圧波形VL2は、駆動開始直後の実効電圧波形VL1からシフトすることが多い。なお、実効電圧波形VL2は、電位の正負方向のいずれにシフトする場合もあるが、図6(c)には負方向にシフトしている状態を図示している。シフトした実効電圧波形VL2に対して、正負のバランスを取るように最適化された対向電極電位Vcom2を考える。シフト後の対向電極電位Vcom2は、シフト前の対向電極電位Vcom1から負方向にずれることになる。
ここで、従来の技術では、実効電圧波形VL2が電位の正負方向のいずれにシフトするかは不確定であった。つまり、シフト後の対向電極電位Vcom2は、シフト前の対向電極電位Vcom1から正負方向のいずれにずれることになるかは不確定であった。
しかし、本発明者は、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角に比べて小さく設定されること(第1プレチルト角が第2プレチルト角よりも垂直配向に近く設定されること)により、正負のバランスを取るように最適化された実効電圧波形VL2が電位の負方向にシフトすること(Vcomシフトが負方向にシフトすること)を見出した。この点については、本発明者が行った実験結果からも確認されている。
図7は、本発明者が行った実験により得られた、経過時間とVcomシフトの関係を示す図である。なお、図7において、横軸は経過時間、縦軸はVcomシフトを示している。ここで、Vcomシフトは、シフト前の対向電極電位Vcom1とシフト後の対向電極電位Vcom2との差分、つまりVcom2−Vcom1の値とする。また、図7において、「▲」は素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角(1.2°)が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角(7.2°)に比べて小さく設定された状態を示している。また、「○」は第1プレチルト角及び第2プレチルト角のいずれもが1.2°の状態、つまり、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角及び対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角が同じに設定された状態を示している。また、図7においては、振幅が5Vである矩形波を印加したときのVcomシフトを測定している。
図7に示すように、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角及び対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角が同じに設定された状態「○」におけるVcomシフト量は、経過時間が長くなるにつれて増加している。このVcomシフト量と経過時間との関係は比例関係になっている。また、このVcomシフト量は、経過時間が7200sのときに+0.02V程度になっている。一方、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角(1.2°)が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角(7.2°)に比べて小さく設定された状態「▲」におけるVcomシフト量は、経過時間が長くなるにつれて減少している。このVcomシフト量と経過時間との関係は比例関係になっている。また、このVcomシフト量は、経過時間が7200sのときに−0.03V程度になっている。素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角(1.2°)が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角(7.2°)に比べて小さく設定された状態「▲」におけるVcomシフト方向は、経過時間の全域において、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角及び対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角が同じに設定された状態「○」に比べて負方向にシフトしている。これにより、第1プレチルト角と第2プレチルト角との差分が6°のとき、Vcomシフトが−0.05Vとなることが確認される。また、Vcomシフト量と経過時間とが比例関係になっていることから、第1プレチルト角と第2プレチルト角との差分が1度ずれるにつき、Vcomシフトが0.01Vだけシフトすることが考えられる。
Vcomシフトがある程度以上に大きくなると、低電位側の期間と高電位側の期間とで液晶層の変調作用の差が大きくなる。すると、表示された画像において、低電位側の期間に変調された光の光量と、高電位側の期間に変調された光の光量との違いが視認されて、画像のちらつき(フリッカー)を生じてしまう。
本発明者は、実験データからの知見に基づき熟慮した結果、第1の現象に対する補正と、第2の現象に対する補正とを切り分けて補正するのが効果的であることに想到した。つまり、第1の現象の補正方法としては駆動電圧に係らず一定の補正電圧を掛けるとともに、第2の現象に対する補正方法としては、その特性差による直流電圧成分の方向及び大きさに応じて、正極性が保持される期間長の割合を負極性が保持される期間長の割合に比べて短くする方法である。
一方、フリッカーの経時変化が最小となるような極性時間比率を探索すること(以下、単に探索という)には膨大な時間を要していた。例えば、探索の際の調整には、1回の計測点当たり10分〜60分程度の通電時間を要していた。
しかし、本発明者が、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角に比べて小さく設定されることによりVcomシフトが負方向にシフトすることを見出したことによって、探索に要する時間を短くすることが可能となった。
図8は、本発明者が行った探索により得られた、時間比率(Duty)とVcomシフトの関係を示す図である。なお、図8において、横軸はDuty(正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間との時間比率)、縦軸はVcomシフト(Vcom2−Vcom1)を示している。ここで、横軸と縦軸の交点をDuty50:50とし、横軸の右側を正極性電圧の印加時間が長くなる方向とする。また、縦軸の上側をVcomシフトが正となる方向とする。また、図8において、符号P1は一回目(最初)の計測点、符号P2は二回目の計測点、符号P3は三回目の計測点、符号P4は四回目の計測点、符号P5は五回目(最後)の計測点を示している。また、図8においては、計5回の計測によって探索を行っているが、この回数に限定されることなく、適宜必要に応じて計測数を変更してもよい。
図8に示すように、第1回目の計測点P1をDutyが50%以下となる領域に配置する。この点については、上述した実験結果により、対向基板20側の対向電極22と第2配向膜23との間に上述した誘電体膜を配置するとVcomシフト方向が負方向にずれることから明確となる。つまり、右下がりの線になること及び第5回目の計測点P5が時間比率50%よりも小さくなることから、少なくともDutyが50%よりも大きい領域を除いた範囲内(Dutyが50%以下となる領域内)で計測すればよい。このため、第1回目の計測点P1をDutyが50%よりも大きい領域に配置することが不要となり、測定頻度を少なくすることができる。
次に、第2回目の計測点P2を、横軸を挟んで第1回目の計測点P1よりもDutyの小さい側に配置する。このように、第1回目の測定結果に基いてパラメータ(Duty)を変化させる正負方向を決定することができる。つまり、第2回目の計測点P2を第1回目の計測点P1よりもDutyの大きい側に配置することが不要となり、測定頻度を少なくすることができる。また、第1回目の計測点P1と第2回目の計測点P2とがプロットされることにより、右下がりの線の傾きを近似的に算出することができる。
次に、第3回目の計測点P3を、近似的に算出された傾きに沿って第1回目の計測点P1と横軸との間に配置する。また、第4回目の計測点P4を、近似的に算出された傾きに沿って第2回目の計測点P2と横軸との間に配置する。このように、Vcomシフトが概ね0になる(Vcom2−Vcom1)の値を推定しつつ、探索範囲を狭めていく。第3回目の計測点P3と第4回目の計測点P4とがプロットされることにより、フリッカーの許容限に対応するVcomシフトを近似的に算出することができる。
そして、第5回目の計測点P5を横軸上に配置する。具体的には、第5回目の計測点P5は、計測点P1〜P4を近似的に結ぶ直線及び横軸の交点となる。以上により、フリッカーの経時変化が最小となるような極性時間比率を算出することができる。したがって、この調整方法によれば、測定頻度を減らすことによって探索に要する時間を短くすることができる。
(液晶装置の駆動方法)
以下説明する液晶装置の駆動方法は、本発明者が想到内容を具体的に実現するために熟慮及び創意工夫の上創出したものである。
図9は、指定値Qが「−1」のときの走査信号系のタイミングチャートである。また、本実施形態では、複数の走査線61を第1走査線群と第2走査線群に分けて、1つのフレームにおいて、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線61と、第2走査線群におけるいずれか1本の走査線61とを交互に選択するとともに、1つのフレームにおいて各走査線61を2回ずつ選択する。いわゆる倍速領域走査反転駆動を用いている。
まず、走査線61の駆動方法について説明する。図9は、走査線駆動回路130により出力される走査信号G1〜G480を、スタートパルスとクロック信号との関係において示すタイミングチャートである。ここで、フレームとは、1枚の画像を液晶パネル100Aに表示させるのに要する期間をいう。また、1フレームの期間(所定の期間)のうち、第1スタートパルスDyaが出力されてから第2スタートパルスDybが出力されるまでの期間を第1フィールド(第1の期間)とし、第2スタートパルスDybが出力されてから次の第1スタートパルスDyaが出力されるまでの期間を第2フィールド(第2の期間)としている。また、1つの走査線61は、1フレームの期間において、フィールドごとに1回ずつ、つまり、2回選択されている。
本実施形態における垂直同期信号Vsは、上述したように周波数120Hzであるので、1フレームの期間についても8.33ミリ秒で固定である。制御回路152(図1参照)は、デューティー比が50%のクロック信号を、1フレームの期間に亘って走査線61数に等しい480周期分出力する。なお、クロック信号の1周期分の期間をHと表記している。
また、制御回路152は、クロック信号の1周期分のパルス幅を有するスタートパルスを、それぞれクロック信号がHレベルの立ち上がり時において、それぞれ次のように出力する。すなわち、制御回路152は、第1スタートパルスDyaを1フレームの期間の最初(第1フィールドの最初)に出力する。一方、制御回路152は、指定値Qが負の値であるため、第2スタートパルスDybを、第1スタートパルスDyaを出力してからクロック信号の240周期分を出力したタイミングTmよりも「Q×H」だけ早く出力する。
よって、図9に示すように、指定値Qが「−1」であった場合、第2スタートパルスDybは、タイミングTmよりもクロック信号の1周期分だけ先行したタイミングTm(−1)で出力される。
ここで、スタートパルスは交互に出力される一方、第1スタートパルスDyaの出力タイミングは、指定値Qにかかわらず変更されない。このため、1フレーム(8.33ミリ秒)毎に出力される第1スタートパルスDyaを特定すると、必然的に第2フィールドの開始を規定する第2スタートパルスDybも特定することができる。
走査線駆動回路130は、このようなスタートパルス及びクロック信号から、次のような操作信号を出力する。すなわち、走査線駆動回路130は、第1スタートパルスDyaが供給されると、クロック信号がLレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする。一方、走査線駆動回路130は、第2スタートパルスDybが供給されると、クロック信号がHレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする。
第1スタートパルスDyaは、1フレームの期間(第1フィールド)の最初に供給されるので、当該第1スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線61の選択は指定値Qによって変化しない。また、当該第1スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線61の選択は、クロック信号がLレベルである期間に実行されるので、第1フィールド及び第2フィールドに亘って1行目の走査線61を開始点として画面下方向に向かって2、3、4、…、480行目の順番でクロック信号の半周期の期間をおいて実行されることになる。
一方、第2スタートパルスDybは、第2フィールドの最初に供給されるので、当該スタートパルスを契機とする走査線61の選択は、指定値Qによって全体的に前後することになる、すなわち、当該第2スタートパルスDybの供給を契機とする走査線61の選択は、クロック信号がHレベルである期間に実行されるので、あるフレームの第2フィールドから次のフレームの第1フィールドに亘って1行目の走査線61を開始点として画面下方向に向かって2、3、4、…、480行目の順番で、第1スタートパルスDyaの供給を契機とする選択の合間において実行されることになる。つまり、あるフレームの第2フィールドにおける1〜240行目の選択は、例えば指定値Qが「−1」であれば、タイミングTmよりもクロック信号の1周期分だけ全体的に先行した関係となる。
図10は、データ信号Vid系の第1フィールドにおけるタイミングチャートである。図11は、データ信号Vid系の第2フィールドにおけるタイミングチャートである。続いて、データ線62の駆動方法について図10及び図11を中心に説明する。
データ線駆動回路140のサンプリング信号出力回路142は、制御回路152による制御信号に従って、いずれかの走査線61が選択されて当該走査線61に供給される操作信号がHレベルとなる期間に亘って、順次排他的にHレベルとなるサンプリング信号S1、S2、S3、…、S640を、データ線62の各々に出力する。なお、制御信号とは、実際にはスタートパルスやクロック信号であるが、説明を省略している。
走査信号がHレベルとなる期間は、実際にはクロック信号の半分周期の期間よりも若干狭められている。この場合、図10に示すように、第1フィールドにおいては走査信号G(i+240)がHレベルとなった後に走査信号GiがHレベルとなる。
また、図11に示すように、第2フィールドにおいては走査信号GiがHレベルとなった後に走査信号G(i+240)がHレベルとなる。
また、表示データ処理回路156(図1参照)は、選択された走査線61における画素1行分の表示データVideoを、サンプリング信号出力回路142によるサンプリング信号S1〜S640の出力に合わせて次のような極性のデータ信号Vidに変換する。すなわち、表示データ処理回路156は、クロック信号がLレベルのときに選択された画素行における画素のデータ信号Vidを正極性(+)に変換し、クロック信号がHレベルのときに選択された画素行における画素のデータ信号Vidを負極性(−)に変換する。換言すれば、表示データ処理回路156は、第1スタートパルスDyaの供給を契機として選択された画素行における画素のデータ信号Vidを正極性(+)に変換し、第2スタートパルスDybの供給を契機として選択された画素行における画素のデータ信号Vidを負極性(−)に変換する。
ここで、正極性(+)及び負極性(−)とは、基準電圧Vcから高位側を正極性(+)とし、低位側を負極性(−)としている。また、ここでは基準電位を0Vに設定しているが、これに限定するものではない。
また、対向電極電位Vcomが基準電圧Vcよりも負極性(−)側にシフトして設定されている。具体的には、対向電極電位Vcomは、例えば、約−0.1Vから−0.2Vの範囲内の電圧値に設定されている。これは、前述した第1の現象(フィールドスルー)による電圧変動分が約−0.1Vから−0.2Vであるため、これを補正電圧として、対向電極電位Vcomの設定値を基準電圧Vcからシフトさせているからである。すなわち、第1の現象による影響を低減できるように対向電極電位Vcomをシフトさせている。
また、第1の現象における補正電圧は、個別の液晶パネル100Aごとに計測して求めることが好ましい。具体的には、同じ階調に相当する正・負極性の駆動電圧を交互に印加したときに、フリッカーが十分小さくなる対向電極電位Vcomを求め、その値と、基準電圧Vcとの差から補正電圧を求める。また、このときの駆動電圧は、フリッカーを視認しやすい中間階調に相当する電圧が好ましい。
このようにして補正電圧は求められ、制御回路152(図1参照)または電圧生成回路160に設定される。そして、電圧生成回路160は、補正電圧分だけシフトした対向電極電位Vcomを生成し、液晶パネル100Aの対向電極22に供給する。
続いて、駆動方法の全般について説明する。
まず、図1において、制御回路152は、外部装置から供給される表示データVideoを、フレームメモリ157に記憶させる。その後、液晶パネル100Aにおいてある画素行の走査線61が選択されるとき、当該画素行の表示データVideoを記憶速度の倍の速度で読み出させる。そして、DAコンバーター158によりアナログのデータ信号Vidに変換する。これとともに、表示データVideoの読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640が順次Hレベルとなるように、制御信号を介してサンプリング信号出力回路142を制御する。
図9に示すように、指定値Qが例えば「−1」である場合、第2スタートパルスDybがタイミングTmよりもクロック信号の1周期分だけ時間的に前方のタイミングで出力される。このため、指定値Qが「−1」であれば、第1フィールドの期間はクロック信号の239周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号の241周期分となる。
また、第1フィールドにおいて走査線61が242、1、243、2、244、3、…、480、239行目という順番で選択される。このため、制御回路152は、はじめに242行目の走査線61が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する。一方、制御回路152は、表示データ処理回路156に対し、フレームメモリ157に記憶された242行目に相当する表示データVideoを倍速で読み出させる。そして、DAコンバーター158により負極性のデータ信号Vidを生成させるとともに、データ信号Vidの読み出しに合わせて、図10に示すように、サンプリング信号S1〜S640が順番に排他的にHレベルとなるようにサンプリング信号出力回路142を制御する。サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルになると、TFT40が順番にオンして画像信号線に供給されたデータ信号Vidが1〜640列目のデータ線62にサンプリングされる。
一方、走査線61が選択されると、走査信号G242がHレベルとなるので、242行目に位置する画素のTFT40がすべてオンする。このため、データ線62にサンプリングされたデータ信号Vidの負極性電圧がそのまま画素電極12に印加される。これにより、242行目であって1、2、3、4、…、639、640列の画素における液晶容量120には、表示データVideoで指定された階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、保持される。以下、第1フィールドにおいては、同様な電圧書込の動作が、1、243、2、244、3、…、480、239行目という順番で実行される。これにより、1〜239行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれ、240〜480行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
一方、第2フィールドにおいては、走査線61が1、240、2、241、3、242、…、241、480行目という順番で選択されるとともに、同一行における書込極性が反転される。このため、1〜239行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれ、240〜480行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
図12は、指定値Qが「−1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに亘る時間経過とともに示した図である。なお、最上段への走査線61への書き込み、つまり正極性保持期間の開始時刻は、正確には、第1スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号の半周期先行したタイミングとなるが、図12では、簡略化して第1スタートパルスDyaに合わせている。
図12に示すように、第1フィールドにおいて242、243、244、…、480行目の画素では負極性の書き込みがなされ、1、2、3、…、241行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。一方、第2フィールドにおいて1、2、3、…、241行目の画素では負極性の書き込みがなされ、242、243、244、…、480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。つまり、各フィールドにおいて、正極性を書き込む走査線61と、負極性を書き込む走査線61とが2本選択されているとも捉えることができる。
このように、指定値Qが「−1」である場合、第2スタートパルスDybの出力タイミングが早くなる。このため、第2スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持時間は、第1スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持時間よりも長くなる。つまり、指定値Qが負の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、第2スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持時間は、第1スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持時間よりも長くなる。このため、液晶容量120に印加される負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を上回ることになる。
すなわち、正極性電圧が印加される第1フィールドは負極性電圧が印加される第2フィールドに比べて短くなる。したがって、1フレームのうち正極性電圧の印加時間が負極性電圧の印加時間よりも短く設定されるので、Vcomシフトに対応する補正を効果的に行うことができる。
(時間比率の決め方)
Vcomシフトは、電流の極性差により電荷が蓄積されることで電位差が誘起されるため発生すると考えられる。蓄積電荷量と電流(電圧、抵抗)の関係式は、正極性電圧の印加時間比率を(1+X)、負極性電圧の印加時間比率を(1−X)、印加時間をTとすると、以下の式1、式2となる。ここで、正の蓄積電荷量をq+、負の蓄積電荷量をq−、電流をi、電圧をv、抵抗をRとする。
この考えによると、単位時間当たりの蓄積電荷量を制御することでVcomシフトを防ぐことができる。通電時の矩形波振幅とそのときのVcomシフトから最適な時間配分比率を見積もることができる。q+=q−となるためには、正極性電圧の印加時間比率を(1+X)、負極性電圧の印加時間比率を(1−X)とすると、以下の式3、式4となる。ここで、矩形波振幅をE、VcomシフトをδVとする。なお、Vcomシフトは、シフト前の対向電極電位Vcom1とシフト後の対向電極電位Vcom2との差分、つまりVcom2−Vcom1の値とする。
例えば、画素電極12に印加する矩形波振幅が±5V、Vcomシフトが−0.05Vのとき、X=−0.005となる。このため、正極性電圧の印加時間:負極性電圧の印加時間=49.5:50.5にすればVcomのシフトは起きない。
本発明者の実験結果により、フレームレートが120fpsの場合、フリッカー許容限に対応するVcomシフトが±0.15Vであることが経験的に分かっている。このため、実際にはX=−0.020〜0.010にすればよい。したがって、第1プレチルト角が第2プレチルト角に比べて6°小さく設定されたときに、第1フィールドの長さと第2フィールドの長さとの比を49.0/51.0以上52.0/48.0以下の範囲に設定すればよい。つまり、正極性電圧の印加時間:負極性電圧の印加時間=48.0:52.0〜52.0:48.0になるようにすればよい。ただし、第1フィールドの長さが第2フィールドの長さに比べて短く設定されることが前提となるため、第1フィールドの長さと第2フィールドの長さとの比は、50.0/50.0よりも大きく52.0/48.0以下の範囲に設定されることとなる。フレームレートが120fpsのときには、1フレーム期間は8.3ミリ秒なので、正極性電圧の印加時間:負極性電圧の印加時間=8.42ミリ秒:8.25ミリ秒〜8.92ミリ秒:7.75ミリ秒にする。
本実施形態に係る液晶装置100によれば、対向電極電位Vcomがスイッチング素子の寄生容量に起因するフリッカーを低減するように予めシフトして設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。また、所定の期間のうち第1の期間の長さが第2の期間の長さよりも短く設定されているため、第2の現象についての補正も盛り込まれている。この補正は、本発明者が、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角に比べて小さく設定されること(第1プレチルト角が第2プレチルト角よりも垂直配向に近く設定されること)により、実効電圧波形が電位の負方向にシフトすることを見出したことによる。この点については、本発明者が行った実験結果からも確認されている。つまり、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角が対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角に比べて小さく設定されることにより、第1プレチルト角及び第2プレチルト角が同じ場合に比べて、Vcomが負方向にシフトすること(シフト後の対向電極電位Vcom2がシフト前の対向電極電位Vcom1から負方向にずれること)が明確になった。このように、Vcomシフトのずれる方向が予め確定しているので、従来の技術のようにいずれにずれるか不確定であった場合に比べて、Vcomシフトについての補正を的確に行うことができる。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な液晶装置100を提供することができる。
また、この構成によれば、画素電極12及び対向電極22が同じ材料(例えばITO)からなる場合に比べて、Vcomが負方向にシフトすることが明確になり、素子基板10と対向基板20の特性の非対称性が顕著となる。この点については、本発明者が行った実験結果からも確認されている。このため、画素電極12及び対向電極22が例えばITOからなる場合に比べて、液晶層を挟持する素子基板10と対向基板20との特性差に起因した直流電圧成分が顕著に発生することとなる。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能となる。
本実施形態に係る液晶装置100の駆動方法によれば、対向電極電位Vcomがスイッチング素子の寄生容量に起因するフリッカーを低減するように予めシフトして設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。また、所定の期間のうち第1の期間の長さが第2の期間の長さよりも短く設定するため、第2の現象についての補正も盛り込まれることとなる。この補正は、本発明者が、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角が、対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角に比べて小さく設定されることにより、実効電圧波形が電位の負方向にシフトすることを見出したことによる。この点については、本発明者が行った実験結果からも確認されている。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能となる。
また、この液晶装置100の駆動方法によれば、フリッカー許容限に対応する最適な時間配分比率となっているので第2の現象に対する補正を効果的に行うことができる。これに対して、第1の期間の長さと第2の期間の長さとの比が50.0/50.0よりも小さいと第1の期間の長さが長すぎてしまい効果的な補正とはならない場合がある。また、第1の期間の長さと第2の期間の長さとの比が52.0/48.0よりも大きいと第1の期間の長さが短すぎてしまい効果的な補正とはならない場合がある。
なお、本実施形態では、素子基板10側の第1配向膜13における第1プレチルト角が対向基板20側の第2配向膜23における第2プレチルト角に比べて小さく設定された場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。以下、本実施形態とは異なる形態の配向膜を備える液晶パネルについて図13を用いて説明する。
(第2実施形態)
図13は、第2実施形態に係る液晶パネル100Bの概略構成を示す断面図である。なお、図13は図5に対応する液晶パネル100Bの概略構成を示す断面図である。本実施形態における液晶パネル100Bは、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角が対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角に比べて大きく設定されている(第2プレチルト角が第1プレチルト角よりも垂直配向に近く設定されること)点で第1実施形態における液晶パネル100Aと異なる。図13において、図5と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
図13に示すように、液晶パネル100Bは、素子基板10Aと、これに対向配置された対向基板20Aと、これらの間に挟持された液晶層とを備えて構成されている。素子基板10Aは、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体11、及びその内側(液晶層側)に形成されたTFT40や画素電極12、さらにこれを覆う第1配向下地膜38A及び第1配向膜13Aなどを備えている。一方の対向基板20Aは、ガラスや石英等の透光性材料からなる基板本体21、及びその内側(液晶層側)に形成された遮光膜24、この遮光膜24を覆う対向電極22、さらにこれを覆う第2配向下地膜38B及び第2配向膜23Aなどを備えている。
素子基板10Aの側には、画素電極12が設けられており、その上側には、第1配向膜13Aが設けられている。画素電極12は、例えばアルミニウム(Al)等の導電性膜からなっている。画素電極12の厚さは、例えば180nm以上220nm以下になっている。また、第1配向膜13Aの膜厚は、例えば40nm以上80nm以下となっている。また、第1配向膜13Aにおける素子基板10Aの厚み方向を基準とする第1プレチルト角は、例えば7.2°となっている。
他方、対向基板20Aの側には、その全面に渡って対向電極22Aが設けられており、その上側には、第2配向膜23Aが設けられている。この対向電極22Aは、例えばITO膜等の透明導電性膜からなっている。対向電極22Aの厚さは、例えば120nm以上160nm以下になっている。また、第2配向膜23Aの膜厚は、例えば40nm以上80nm以下となっている。また、第2配向膜23Aにおける対向基板20Aの厚み方向を基準とする第2プレチルト角は、例えば1.2°となっている。
本実施形態では、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角(7.2°)が、対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角(1.2°)よりも大きく設定されている。なお、素子基板10A側の第1配向膜13Aの成膜時の蒸着レートを、対向基板20A側の第2配向膜23Aの成膜時の蒸着レートに比べて小さくすることによって、第1プレチルト角を第2プレチルト角よりも大きくすることができる。
図14は、第2実施形態に係るゲート電圧及び駆動電圧波形を示すチャートを示す図である。なお、図14(a)は、図6(a)に対応する、ゲート電圧及び駆動電圧波形を示すチャートである。図14(b)は、図6(b)に対応する、液晶層の実効電圧波形を示すチャートである。図14(c)は、図6(c)に対応する、図14(b)からある程度の駆動時間経過後の液晶層の実効電圧波形を示すチャートである。本実施形態における液晶層の実効電圧波形は、ある程度の駆動時間経過後に、電位の負方向にシフトする点で第1実施形態における液晶層の実効電圧波形と異なる。図14において、図6と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、図14(a)〜図14(c)において、横軸は時間経過を示し、縦軸は電位を示している。
図14(a)に示すように、駆動電圧波形VDの電位は、ゲート電圧VGの立ち上がりと同期して、高電位EH(例えば12V)と低電位EL(例えば2V)とが交互に切り替わるようになっている。
図14(b)に示すように、ゲート電圧VGが立ち上がるとスイッチング素子がオンになり、画素電極12が充電される。液晶層の実効電圧波形VL1の電位は、概ね低電位ELから高電位EHまで上昇する。
図14(c)に示すように、ある程度の期間だけ液晶層を駆動した後の実効電圧波形VL2は、駆動開始直後の実効電圧波形VL1からシフトすることが多い。なお、実効電圧波形VL2は、電位の正負方向のいずれにシフトする場合もあるが、図14(c)には正方向にシフトしている状態を図示している。シフトした実効電圧波形VL2に対して、正負のバランスを取るように最適化された対向電極電位Vcom2を考える。シフト後の対向電極電位Vcom2は、シフト前の対向電極電位Vcom1から正方向にずれることになる。
ここで、従来の技術では、実効電圧波形VL2が電位の正負方向のいずれにシフトするかは不確定であった。つまり、シフト後の対向電極電位Vcom2は、シフト前の対向電極電位Vcom1から正負方向のいずれにずれることになるかは不確定であった。
しかし、本発明者は、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角が対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角に比べて大きく設定されること(第2プレチルト角が第1プレチルト角よりも垂直配向に近く設定されること)により、正負のバランスを取るように最適化された実効電圧波形VL2が電位の正方向にシフトすること(Vcomシフトが正方向にシフトすること)を見出した。この点については、本発明者が行った実験結果からも推定されている(図7参照)。
Vcomシフトがある程度以上に大きくなると、低電位側の期間と高電位側の期間とで液晶層の変調作用の差が大きくなる。すると、表示された画像において、低電位側の期間に変調された光の光量と、高電位側の期間に変調された光の光量との違いが視認されて、画像のちらつき(フリッカー)を生じてしまう。
本発明者は、実験データからの知見に基づき熟慮した結果、第1の現象に対する補正と、第2の現象に対する補正とを切り分けて補正するのが効果的であることに想到した。つまり、第1の現象の補正方法としては駆動電圧に係らず一定の補正電圧を掛けるとともに、第2の現象に対する補正方法としては、その特性差による直流電圧成分の方向及び大きさに応じて、正極性が保持される期間長の割合を負極性が保持される期間長の割合に比べて長くする方法である。
一方、フリッカーの経時変化が最小となるような極性時間比率を探索すること(以下、単に探索という)には膨大な時間を要していた。例えば、探索の際の調整には、1回の計測点当たり10分〜60分程度の通電時間を要していた。
しかし、本発明者が、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角が対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角に比べて大きく設定されることにより、実効電圧波形VL2が電位の正方向にシフトすることを見出したことによって、探索に要する時間を短くすることが可能となった。
図15は、本発明者が行った探索により得られた、時間比率(Duty)とVcomシフトの関係を示す図である。なお、図15において、横軸はDuty(正極性電圧の印加時間と負極性電圧の印加時間との時間比率)、縦軸はVcomシフト(Vcom2−Vcom1)を示している。ここで、横軸と縦軸の交点をDuty50:50とし、横軸の右側を正極性電圧の印加時間が長くなる方向とする。また、縦軸の上側をVcomシフトが正となる方向とする。また、図15において、符号P1は一回目(最初)の計測点、符号P2は二回目の計測点、符号P3は三回目の計測点、符号P4は四回目の計測点、符号P5は五回目(最後)の計測点を示している。また、図15においては、計5回の計測によって探索を行っているが、この回数に限定されることなく、適宜必要に応じて計測数を変更してもよい。
図15に示すように、第1回目の計測点P1をDutyが50%以上となる領域に配置する。この点については、上述した実験結果により、素子基板10側の画素電極12と第1配向膜13との間に上述した誘電体膜を配置するとVcomシフト方向が正方向にずれることから明確となる。つまり、右下がりの線になること及び第5回目の計測点P5がDuty50%よりも大きくなることから、少なくともDutyが50%よりも小さい領域を除いた範囲内(Dutyが50%以上となる領域内)で計測すればよい。このため、第1回目の計測点P1をDutyが50%よりも小さい領域に配置することが不要となり、測定頻度を少なくすることができる。
次に、第2回目の計測点P2を、横軸を挟んで第1回目の計測点P1よりもDutyが大きい領域に配置する。このように、第1回目の測定結果に基いてパラメータ(Duty)を変化させる正負方向を決定することができる。つまり、第2回目の計測点P2を第1回目の計測点P1よりもDutyの小さい側に配置することが不要となり、測定頻度を少なくすることができる。また、第1回目の計測点P1と第2回目の計測点P2とがプロットされることにより、右下がりの線の傾きを近似的に算出することができる。
次に、第3回目の計測点P3を、近似的に算出された傾きに沿って第1回目の計測点P1と横軸との間に配置する。また、第4回目の計測点P4を、近似的に算出された傾きに沿って第2回目の計測点P2と横軸との間に配置する。このように、Vcomシフトが概ね0になる(Vcom2−Vcom1)の値を推定しつつ、探索範囲を狭めていく。第3回目の計測点P3と第4回目の計測点P4とがプロットされることにより、フリッカーの許容限に対応するVcomシフトを近似的に算出することができる。
そして、第5回目の計測点P5を横軸上に配置する。具体的には、第5回目の計測点P5は、計測点P1〜P4を近似的に結ぶ直線及び横軸の交点となる。以上により、フリッカーの経時変化が最小となるような極性時間比率を算出することができる。したがって、この調整方法によれば、測定頻度を減らすことによって探索に要する時間を短くすることができる。
(液晶装置の駆動方法)
以下説明する液晶装置の駆動方法は、本発明者が想到内容を具体的に実現するために熟慮及び創意工夫の上創出したものである。
図16は、指定値Qが「+1」のときの走査信号系のタイミングチャートである。また、本実施形態では、複数の走査線61を第1走査線群と第2走査線群に分けて、1つのフレームにおいて、第1走査線群におけるいずれか1本の走査線61と、第2走査線群におけるいずれか1本の走査線61とを交互に選択するとともに、1つのフレームにおいて各走査線61を2回ずつ選択する。いわゆる倍速領域走査反転駆動を用いている。なお、本実施形態において、操作子170(図1参照)は、例えばユーザー等により操作され、その操作に応じた指定値Qを例えば「0」から「+10」までの範囲で出力するものとなっている。
まず、走査線61の駆動方法について説明する。図16は、走査線駆動回路130により出力される走査信号G1〜G480を、スタートパルスとクロック信号との関係において示すタイミングチャートである。ここで、フレームとは、1枚の画像を液晶パネル100Aに表示させるのに要する期間をいう。また、1フレームの期間(所定の期間)のうち、第1スタートパルスDyaが出力されてから第2スタートパルスDybが出力されるまでの期間を第1フィールド(第1の期間)とし、第2スタートパルスDybが出力されてから次の第1スタートパルスDyaが出力されるまでの期間を第2フィールド(第2の期間)としている。また、1つの走査線61は、1フレームの期間において、フィールドごとに1回ずつ、つまり、2回選択されている。
本実施形態における垂直同期信号Vsは、上述したように周波数120Hzであるので、1フレームの期間についても8.33ミリ秒で固定である。制御回路152(図1参照)は、デューティー比が50%のクロック信号を、1フレームの期間に亘って走査線61数に等しい480周期分出力する。なお、クロック信号の1周期分の期間をHと表記している。
また、制御回路152は、クロック信号の1周期分のパルス幅を有するスタートパルスを、それぞれクロック信号がHレベルの立ち上がり時において、それぞれ次のように出力する。すなわち、制御回路152は、第1スタートパルスDyaを1フレームの期間の最初(第1フィールドの最初)に出力する。一方、制御回路152は、指定値Qが負の値であるため、第2スタートパルスDybを、第1スタートパルスDyaを出力してからクロック信号の240周期分を出力したタイミングTmよりも「Q×H」だけ遅れて出力する。
よって、図16に示すように、指定値Qが「+1」であった場合、第2スタートパルスDybは、タイミングTmよりもクロック信号の1周期分だけ遅延したタイミングTm(+1)で出力される。
ここで、スタートパルスは交互に出力される一方、第1スタートパルスDyaの出力タイミングは、指定値Qにかかわらず変更されない。このため、1フレーム(8.33ミリ秒)毎に出力される第1スタートパルスDyaを特定すると、必然的に第2フィールドの開始を規定する第2スタートパルスDybも特定することができる。
走査線駆動回路130は、このようなスタートパルス及びクロック信号から、次のような操作信号を出力する。すなわち、走査線駆動回路130は、第1スタートパルスDyaが供給されると、クロック信号がLレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする。一方、走査線駆動回路130は、第2スタートパルスDybが供給されると、クロック信号がHレベルに変化するごとに走査信号G1〜G480を順次Hレベルとする。
第1スタートパルスDyaは、1フレームの期間(第1フィールド)の最初に供給されるので、当該第1スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線61の選択は指定値Qによって変化しない。また、当該第1スタートパルスDyaの供給を契機とする走査線61の選択は、クロック信号がLレベルである期間に実行されるので、第1フィールド及び第2フィールドに亘って1行目の走査線61を開始点として画面下方向に向かって2、3、4、…、480行目の順番でクロック信号の半周期の期間をおいて実行されることになる。
一方、第2スタートパルスDybは、第2フィールドの最初に供給されるので、当該スタートパルスを契機とする走査線61の選択は、指定値Qによって全体的に前後することになる、すなわち、当該第2スタートパルスDybの供給を契機とする走査線61の選択は、クロック信号がHレベルである期間に実行されるので、あるフレームの第2フィールドから次のフレームの第1フィールドに亘って1行目の走査線61を開始点として画面下方向に向かって2、3、4、…、480行目の順番で、第1スタートパルスDyaの供給を契機とする選択の合間において実行されることになる。つまり、あるフレームの第2フィールドにおける1〜240行目の選択は、例えば指定値Qが「+1」であれば、タイミングTmよりもクロック信号の1周期分だけ全体的に遅延した関係となる。
なお、データ線62の駆動方法については、第1実施形態と同様であるのでその詳細な説明を省略する(図10及び図11参照)。
続いて、駆動方法の全般について説明する。
まず、図1において、制御回路152は、外部装置から供給される表示データVideoを、フレームメモリ157に記憶させる。その後、液晶パネル100Aにおいてある画素行の走査線61が選択されるとき、当該画素行の表示データVideoを記憶速度の倍の速度で読み出させる。そして、DAコンバーター158によりアナログのデータ信号Vidに変換する。これとともに、表示データVideoの読み出しに合わせて、サンプリング信号S1〜S640が順次Hレベルとなるように、制御信号を介してサンプリング信号出力回路142を制御する。
図16に示すように、指定値Qが例えば「+1」である場合、第2スタートパルスDybがタイミングTmよりもクロック信号の1周期分だけ時間的に後方のタイミングで出力される。このため、指定値Qが「+1」であれば、第1フィールドの期間はクロック信号の241周期分となるのに対し、第2フィールドの期間はクロック信号の239周期分となる。
また、第1フィールドにおいて走査線61が240、1、241、2、242、3、…、480行目という順番で選択される。このため、制御回路152は、はじめに240行目の走査線61が選択されるように、走査線駆動回路130を制御する。一方、制御回路152は、表示データ処理回路156に対し、フレームメモリ157に記憶された240行目に相当する表示データVideoを倍速で読み出させる。そして、DAコンバーター158により負極性のデータ信号Vidを生成させるとともに、データ信号Vidの読み出しに合わせて、図10に示すように、サンプリング信号S1〜S640が順番に排他的にHレベルとなるようにサンプリング信号出力回路142を制御する。サンプリング信号S1〜S640が順番にHレベルになると、TFT40が順番にオンして画像信号線に供給されたデータ信号Vidが1〜640列目のデータ線62にサンプリングされる。
一方、走査線61が選択されると、走査信号G240がHレベルとなるので、240行目に位置する画素のTFT40がすべてオンする。このため、データ線62にサンプリングされたデータ信号Vidの負極性電圧がそのまま画素電極12に印加される。これにより、240行目であって1、2、3、4、…、639、640列の画素における液晶容量120には、表示データVideoで指定された階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、保持される。以下、第1フィールドにおいては、同様な電圧書込の動作が、1、241、2、242、3、…、480行目という順番で実行される。これにより、1〜241行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれ、242〜480行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
一方、第2フィールドにおいては、走査線61が1、242、2、243、3、244、…、239、480行目という順番で選択されるとともに、同一行における書込極性が反転される。このため、1〜241行目の画素に対しては階調に応じた負極性電圧が書き込まれ、242〜480行目の画素に対しては階調に応じた正極性電圧が書き込まれて、それぞれ保持される。
図17は、指定値Qが「+1」である場合において、各行の書込状態を連続するフレームに亘る時間経過とともに示した図である。なお、最上段への走査線61への書き込み、つまり正極性保持期間の開始時刻は、正確には、第1スタートパルスDyaが供給された後、クロック信号の半周期遅延したタイミングとなるが、図17では、簡略化して第1スタートパルスDyaに合わせている。
図17に示すように、第1フィールドにおいて240、241、242、…、480行目の画素では負極性の書き込みがなされ、1、2、3、…、239行目の画素では正極性の書き込みがなされて、次の書き込みまで保持される。一方、第2フィールドにおいて1、2、3、…、239行目の画素では負極性の書き込みがなされ、240、241、242、…、480行目の画素では正極性の書き込みがなされて、同様に次の書き込みまで保持される。つまり、各フィールドにおいて、正極性を書き込む走査線61と、負極性を書き込む走査線61とが2本選択されているとも捉えることができる。
このように、指定値Qが「+1」である場合、第2スタートパルスDybの出力タイミングが遅くなる。このため、第2スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持時間は、第1スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持時間よりも短くなる。つまり、指定値Qが正の値であれば、その絶対値が大きくなるにつれて、第2スタートパルスDybの供給を契機とする選択により書き込まれる負極性電圧の保持時間は、第1スタートパルスDyaの供給を契機とする選択により書き込まれる正極性電圧の保持時間よりも短くなる。このため、液晶容量120に印加される負極性の電圧実効値が正極性の電圧実効値を下回ることになる。
すなわち、正極性電圧が印加される第1フィールドは負極性電圧が印加される第2フィールドに比べて長くなる。したがって、1フレームのうち正極性電圧の印加時間が負極性電圧の印加時間よりも長く設定されるので、Vcomシフトに対応する補正を効果的に行うことができる。
本実施形態に係る液晶装置によれば、対向電極電位Vcomがスイッチング素子の寄生容量に起因するフリッカーを低減するように予めシフトして設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。また、所定の期間のうち第1の期間の長さが第2の期間の長さよりも長く設定されているため、第2の現象についての補正も盛り込まれている。この補正は、本発明者が、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角が対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角に比べて大きく設定されること(第2プレチルト角が第1プレチルト角よりも垂直配向に近く設定されること)により、実効電圧波形が電位の正方向にシフトすることを見出したことによる。この点については、本発明者が行った実験結果からも推定されている。つまり、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角が対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角に比べて大きく設定されることにより、第1プレチルト角及び第2プレチルト角が同じ場合に比べて、Vcomが正方向にシフトすること(シフト後の対向電極電位Vcom2がシフト前の対向電極電位Vcom1から正方向にずれること)が明確になった。このように、Vcomシフトのずれる方向が予め確定しているので、従来の技術のようにいずれにずれるか不確定であった場合に比べて、Vcomシフトについての補正を的確に行うことができる。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な液晶装置を提供することができる。
また、この構成によれば、画素電極12及び対向電極22が同じ材料(例えばITO)からなる場合に比べて、Vcomが正方向にシフトすることが明確になり、素子基板10Aと対向基板20Aの特性の非対称性が顕著となる。この点については、本発明者が行った実験結果からも推定されている。このため、画素電極12及び対向電極22が例えばITOからなる場合に比べて、液晶層を挟持する素子基板10Aと対向基板20Aとの特性差に起因した直流電圧成分が顕著に発生することとなる。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能となる。
本実施形態に係る液晶装置の駆動方法によれば、対向電極電位Vcomがスイッチング素子の寄生容量に起因するフリッカーを低減するように予めシフトして設定されているため、第1の現象についての補正が盛り込まれている。また、所定の期間のうち第1の期間の長さが第2の期間の長さよりも長く設定するため、第2の現象についての補正も盛り込まれることとなる。この補正は、本発明者が、素子基板10A側の第1配向膜13Aにおける第1プレチルト角が対向基板20A側の第2配向膜23Aにおける第2プレチルト角に比べて大きく設定されることにより、実効電圧波形が電位の正方向にシフトすることを見出したことによる。この点については、本発明者が行った実験結果からも推定されている。したがって、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能となる。
(電子機器)
図19は、上述した液晶パネル100A(100B)をライトバルブとして用いた、電子機器の一例であるプロジェクターの概略構成を示す模式図である。図19に示すようにプロジェクター1は、光源2、インテグレーター光学系3、色分離光学系4、3系統の画像形成系5、色合成素子6、および投射光学系7を有している。3系統の画像形成系5として、第1の画像形成系5a、第2の画像形成系5b、および第3の画像形成系5cが設けられている。プロジェクター1は、概略すると以下のように動作する。
光源2から出射された光源光は、インテグレーター光学系3に入射する。インテグレーター光学系3に入射した光源光は、照度が均一化されるとともに偏光状態が揃えられて出射される。インテグレーター光学系3から出射された光源光は、色分離光学系4により複数の色光に分離され、色光ごとに異なる系統の画像形成系5に入射する。3系統の画像形成系5の各々に入射した色光は、表示すべき画像の画像データに基づいて変調されて変調光となる。3系統の画像形成系5から出射された3色の変調光は、色合成素子6により合成されて多色光となり、投射光学系7に入射する。投射光学系7に入射した多色光は、スクリーン等の被投射面(図示略)に投射される。これにより、被投射面にフルカラーの画像が表示される。
次に、プロジェクター1の構成要素について詳しく説明する。
光源2は、光源ランプ2aおよび放物面リフレクター2bを有している。光源ランプ2aから放射された光は、放物面リフレクター2bによって一方向に反射されて略平行な光線束となり、光源光としてインテグレーター光学系3に入射する。光源ランプ2aは、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ等により構成される。また、放物面リフレクター2bの代わりに楕円リフレクター、球面リフレクター等によりリフレクターを構成してもよい。リフレクターの形状に応じて、リフレクターから出射された光を平行化する平行化レンズが用いられることがある。
インテグレーター光学系3は、第1のレンズアレイ、第2のレンズアレイ、入射側開口絞り、偏光変換素子、および重畳レンズを有している。インテグレーター光学系3の光軸は、光源2の光軸と略一致しており、上記のインテグレーター光学系3の構成要素の各々は、中心位置がインテグレーター光学系3の光軸上に並ぶように配置されている。
色分離光学系4は、波長選択面を有する第1〜第3のダイクロイックミラー、および第1、第2の反射ミラーを有している。第1のダイクロイックミラーは、赤色光を反射させるとともに、緑色光および青色光を透過させる特性を有している。第2のダイクロイックミラーは、赤色光を透過させるとともに、緑色光および青色光を反射させる特性を有している。第3のダイクロイックミラーは、緑色光を反射させるとともに、青色光を透過させる特性を有している。第1、第2のダイクロイックミラーは、各々の波長選択面を互いに略直交するように、かつ各々の波長選択面がインテグレーター光学系3の光軸と略45°の角度をなすように配置されている。
色分離光学系4に入射した光源光に含まれる赤色の光L10、緑色の光L20および青色の光L30は、以下のようにして分離され、分離された色光ごとに対応する画像形成系5に入射する。
光L10は、第2のダイクロイックミラーを透過するとともに第1のダイクロイックミラーで反射した後に、第1の反射ミラーで反射して、第1の画像形成系5aに入射する。
光L20は、第1のダイクロイックミラーを透過するとともに第2のダイクロイックミラーで反射した後に、第2の反射ミラーで反射し、次いで第3のダイクロイックミラーで反射して、第2の画像形成系5bに入射する。
光L30は、第1のダイクロイックミラーを透過するとともに第2のダイクロイックミラーで反射した後に、第2の反射ミラーで反射し、次いで第3のダイクロイックミラーを透過して、第3の画像形成系5cに入射する。
3系統の画像形成系5から出射された3色の変調光は、色合成素子6により合成されて多色光となり、投射光学系7に入射する。投射光学系7に入射した多色光は、スクリーン等の被投射面(図示略)に投射される。これにより、被投射面にフルカラーの画像が表示される。
この電子機器によれば、上述した液晶装置100を備えているので、フリッカー等の表示不具合の発生を抑制して表示品位の向上を図ることが可能な電子機器を提供することができる。
なお、電子機器としては、この他にも、例えば携帯電話、パーソナルコンピューター、ビデオカメラのモニター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。これらの電子機器に対しても、本発明に係る液晶装置100を適用させることができる。
また、上記実施形態においては、ある1行の走査線61に沿った画素に対して、階調に応じた電圧を、1列〜640列のデータ信号Vidを順番にサンプリングすることによって、当該行の画素を1列から640列まで順に書き込むという、いわゆる点順次の構成としたが、これに限らない。例えば、データ信号Vidを時間軸にn(nは2以上の整数)倍に伸長するとともに、n本の画像信号線に供給する、いわゆる相展開(シリアル−パラレル変換ともいう)駆動を併用した構成としてもよい(特開2000−112437号公報参照)。
または、すべてのデータ線62に対してデータ信号Vidを一括して供給する、いわゆる線順次の構成としてもよい。
これらの駆動方法であっても、上記実施形態と同様な作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、液晶モードとして、電圧無印加状態において黒色を表示するノーマリーブラックモード、または、電圧無印加状態において白色を表示するノーマリーホワイトモードのいずれか一方を適用した形態について説明したが、異なる他方の液晶モードにおいても適用することができる。