JP5698187B2 - ガスセンサ - Google Patents

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Description

本発明は、被測定ガスに含まれる特定ガス成分の濃度を測定する際に、基準ガスとして大気を外部から導入するガスセンサに関する。
従来、ジルコニアなどのセラミックスから形成された固体電解質体を用いて、内燃機関から排出される排気ガスに含まれる酸素などの特定ガス成分を検出する検出素子を備えたガスセンサが知られている。その中で、酸素を検出する酸素センサの検出素子は、排気ガスに晒される検出電極と、基準となる大気などのガスに晒される基準電極とが一対となり、両電極の間に固体電解質体を挟む構成となっている。酸素センサの検出素子は、固体電解質体に隔てられた排気ガスと基準ガス(大気)との2つの雰囲気の間における酸素分圧の差に応じて、両電極間に生ずる起電力によって排気ガス中の酸素の検出を行っている。
検出素子の検出信号は、リード線によって酸素センサの外部回路に引き出されている。さらに、酸素センサには、素子やリード線等の保護を行うために、素子やリード線等の周囲を覆う金属製の外筒が設けられている。リード線は外筒の後端から外部に引き出されており、さらに外筒の後端側には、外筒を塞ぐ栓部材が組み付けられている。この栓部材には、リード線を挿通させる挿通孔の他に、大気を基準電極に導く貫通孔も設けられている。この貫通孔には、大気の流通を許容しつつ、水滴などの水分の浸入を防止する通気フィルタが配置されている(例えば、特許文献1参照。)。
上述の通気フィルタとしては撥水性を有する樹脂膜から形成されることが多く、この樹脂膜は草木の接触や飛石等の衝突といった外部からの衝撃によって破れてしまうおそれがあった。つまり、通気フィルタが外部に露出していると、外部からの衝撃により破れて、酸素センサ内に水分の浸入を許してしまうおそれがあった。このような通気フィルタの破損を防止するために、通気フィルタを保護する部材で、栓部材ごと通気フィルタを覆う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
特開2000−249678号公報 特開2008−292459号公報
特許文献2に記載された技術では、栓部材に通気フィルタが取り付けられた後に、栓部材ごと通気フィルタを保護部材で覆う構成が取られているため、ガスセンサの製造段階で通気フィルタが破損する可能性があるという問題があった。
つまり、栓部材に通気フィルタが取り付けられてから保護部材で覆われるまでの間は、通気フィルタが外部に露出しているため、通気フィルタが破損する可能性があった。さらに、栓部材を保護部材で覆う際に、保護部材が通気フィルタと接触して、通気フィルタが破損する可能性もあった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、通気フィルタの破損をより容易に防ぐことができるガスセンサを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明のガスセンサは、軸線方向に延びると共に、先端側に被検出ガスを検出する検出部が配置された検出素子と、前記検出素子の径方向周囲を取り囲みつつ、前記検出部を自身の先端から突出させた状態で前記検出素子を保持する主体金具と、自身の先端部が前記主体金具の後端部に固定される筒状の外筒と、該外筒の後端側内部に配置されると共に、前記軸線方向延びて前記外筒の内部および外部との間の大気の流通を可能とする大気連通孔が形成された栓部材と、が設けられたガスセンサであって、前記大気連通孔の内部に配置されるとともに、少なくとも先端部の外周面が大気連通孔の内周面に接触する筒状のフィルタ部であり、通気性と防水性とを有し、前記大気連通孔を閉塞するフィルタを備えるフィルタ部と、前記フィルタ部よりも後端側に配置され、前記大気連通孔よりも径が小さな開口が設けられた蓋部と、該蓋部に接続すると共に、自身の先端部が前記大気連通孔内に配置される筒状の筒状部と、を有する保護部と、を更に備え、前記筒状部の前記先端部には、径方向外側に突出すると共に、前記大気連通孔の内周面と係り止めされる突出部が設けられ、前記フィルタと前記保護部の前記蓋部とが、前記蓋部の開口によって外部と連通して大気が流入する後端側空間が形成するように離間していることを特徴とする。
本発明のガスセンサによれば、フィルタ部よりも更に後端側に配置され、大気連通孔よりも径が小さい開口が設けられた蓋部と、蓋部に接続するとともに、自身の先端部が大気連通孔の内部に配置される筒状部を有する保護部を配置することにより、保護部によってフィルタが外部に露出することがなく、フィルタの破損が抑制される。さらに、栓部材に、フィルタ部および保護部を配置する場合、大気連通孔の先端側の開口から保護部を後端側に向けて挿入し、その後、同じく先端側の開口からフィルタ部を挿入することにより、フィルタ部の後端側に保護部が配置される。そのため、特許文献2のように、フィルタ部を大気連通孔内に配置した後に、保護部を栓部材ごと覆うように配置する場合と比較して、フィルタ部を保護部で傷つけるおそれがない。さらに、配置されたフィルタ部が露出している期間が殆どないため、言い換えると、フィルタ部を配置すると同時に保護部に覆われるため、ガスセンサの製造過程でフィルタ部が破損する可能性が低くなる。
また、筒状部の先端部には、径方向外側に突出すると共に、大気連通孔の内周面と係り止めされる突出部を備えている。これにより、保護部の突出部が大気連通孔の内周面と係り止めされるため、大気連通孔の内部に配置された保護部が、大気連通孔から抜け落ちるおそれがない。
フィルタ部のフィルタと保護部の蓋部との間には、保護部の蓋部に設けられた開口を介して大気が流入する後端側空間が設けられているため、フィルタと蓋部が直接に接触しない。言い換えると、フィルタと蓋部が直接に接触することで、大気導入孔よりも径が小さい開口を有する蓋部によってフィルタ部における通気量が減少するおそれがない。
上記発明において前記栓部材の後端向き面には、前記大気連通孔を起点に径方向外側に向かって延びると共に、前記栓部材の先端側に向かって凹む溝部が形成され、前記保護部の前記蓋部は、前記溝部の底面よりも後端側に突出していることが好ましい。
このように保護部の蓋部を、溝部の底面よりも後端側に突出させることにより、大気連通孔における後端側の開口に蓋部を底とする凹部が形成されることが防止され、当該凹部に外部からの異物が堆積することを防止できる。そのため、蓋部の開口が上述の異物などで塞がれることを防止でき、フィルタにおける通気が阻害されにくくなる。
上記発明において前記フィルタ部は、前記先端部の外周面が前記大気連通孔の内周面に接触するとともに、後端部の外周面が前記大気連通孔に対して前記保護部の前記筒状部を介して離間するとともに、前記フィルタ部の後端が前記溝部の底面よりも後端側に突出し、前記フィルタは、前記フィルタ部の後端に設けられており、前記筒状部には、前記軸線方向において、前記フィルタと開口領域とが重なる側面孔が設けられていることが好ましい。
このようにフィルタをフィルタ部の後端に設け、このフィルタ部の後端を溝部の底面よりも後端側に突出させるとともに、フィルタ部の後端部と重なった保護部の筒状部に、フィルタと開口領域が重なる側面孔を設けることにより、後端側空間に水が溜まりにくくなる。つまり、フィルタを溝部の底面よりも後端側に突出させることにより、後端側空間も底面よりも後端側に突出して配置される。さらに、蓋部の開口から後端側空間に侵入した水は、側面孔を介して後端側空間から溝部に流出する。側面孔は開口領域がフィルタと重なっているため、フィルタの後端向き面の上に侵入した水が残ることもない。そのため、後端側空間に侵入した水によってフィルタにおける通気が阻害されにくくなる。
上記発明において前記筒状部には、前記外筒の内部および外部との間の大気の流通を可能とする側面孔が設けられていると共に、前記フィルタ部は、前記先端部の外周面が前記大気導入孔の内周面に接触するとともに、後端部の外周面が前記大気連通孔に対して前記保護部の前記筒状部を介して離間しており、さらに前記筒状部と、前記フィルタ部の前記後端部とが離間し、前記側面孔によって外部と連通するとともに、前記後端側空間とも連通する側方空間が形成されていることが好ましい。
このように筒状部およびフィルタ部の後端部の間に後端側空間と連通する側方空間を形成し、筒状部に形成された側面孔を介して側方空間へ大気の流通を可能とすることにより、フィルタにおける通気をより容易にすることができる。
つまり、後端側空間と連通する側方空間が設けられることにより、フィルタと接する空間が広くなり、さらに、当該空間は蓋部の開口の他に側面孔を介して大気が流通可能とされているため、フィルタにおける通気が安定しやすくなる。また、後端側空間に侵入した水は、後端側空間から側方空間に移動しやすいため、フィルタにおける通気が水によって阻害されにくい。
本発明のガスセンサによれば、フィルタ部の破損をより容易に防ぐことができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態に係るガスセンサの全体構成を説明する断面視図である。 図1のガスセンサにおけるシール部材の周辺構成を説明する部分拡大図である。 シール部材における後端向き面の構成を説明する斜視図である。 シール加締部によって加締められる前のシール部材の形状を説明する部分拡大図である。 フィルタ部およびカバーの構成を説明する分解図である。 本発明の第2の実施形態に係るガスセンサのフィルタ部およびカバーの周辺構成を説明する部分拡大図である。 本発明の第3の実施形態に係るガスセンサのシール部材の周辺構成を説明する部分拡大図である。 図7のシール部材の構成を説明する斜視図である。
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態に係るガスセンサ1ついて図1から図5を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係るガスセンサ1の全体構成を説明する断面視図である。
本実施形態では、本発明のガスセンサを、例えば乗用車等の車両に搭載された内燃機関の排気流路に締結され、排気流路の内部にガスセンサの先端部分が突出されたセンサであり、排気ガス中の酸素濃度を計測する酸素センサに適用して説明する。なお、以下の説明では、軸線Oに沿う方向のうち、主体金具60に対してプロテクタ80の取り付けられる側を先端側とし、この逆側を後端側として説明する。
本実施形態のガスセンサ1は、後述するガス検出素子10を加熱するためのヒータ20を備えたセンサであり、ヒータ20の熱によってガス検出素子10を加熱して活性化し、排気ガス中の酸素濃度を計測するものである。
ガスセンサ1には、図1に示すように、ガス検出素子(検出素子)10と、ヒータ20と、セパレータ30と、シール部材(栓部材)40と、複数の端子金具50と、リード線55と、それらの周囲を覆う主体金具60、プロテクタ80、及び外筒90等が、主に備えられている。
ガス検出素子10は、軸線O方向に延びる円筒状に形成され、先端側の端部(図1の下側の端部)が閉塞された固体電解質からなる素子本体11を有している。素子本体11の中央部の外周には、径方向外向きに突出する鍔部14が周方向にわたって設けられている。さらに、素子本体11の外側面、内側面にそれぞれ図示しない検知電極、基準電極が設けられている。
素子本体11を構成する固体電解質としては、例えば、Y23又はCaOを固溶させたZrO2が代表的なものである。この固体電解質以外にも、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体である固体電解質を使用しても良い。また、アルカリ土類金属または希土類金属の酸化物とZrO2との固溶体に、さらにHfO2が含有された固体電解質を使用しても良い。
ヒータ20は、図1に示すように、ガス検出素子10の内部に配置されて素子本体11の加熱を行う長尺の加熱手段であり、その先端側内部には、発熱体が埋設されており、ヒータ20の先端部は、電力が供給されることにより熱を発生する発熱領域となっている。
主体金具60は、図1に示すように、ステンレス合金(例えば、JIS規格のSUS430)から形成された部材であり、概ね円筒状に形成された部材である。主体金具60には、ガス検出素子10の鍔部14を支持する段部61が、内周面から径方向内側に向かって、周方向にわたって突出して設けられている。
主体金具60の先端側の外周面には、ガスセンサ1を内燃機関の排気流路(図示せず。)に取付けるネジ部62と、ネジ部62を排気流路にネジ込むための取付工具を係合させる六角部63と、が周方向にわたって設けられている。ネジ部62と六角部63との間には、環状のガスケット64が配置されている。ガスケット64は、ガスセンサ1と排気流路との間の隙間からのガス抜けを防止するものである。
主体金具60におけるネジ部62よりも先端側には、後述するプロテクタ80が係合される先端係合部65が形成されている。先端係合部65は、ネジ部62よりも外周面の径が小さく形成された部分である。また、主体金具60における六角部63よりも後端側には、六角部63から後端側に向かって順に、外筒90と係合される後端係合部66と、ガス検出素子10を加締め固定する加締固定部67と、が形成されている。
主体金具60の内部には、段部61から後端側に向かって順に、金属製の先端側パッキン71、アルミナからなる筒状の支持部材72、金属製の後端側パッキン73、滑石の粉末からなる充填部材74、アルミナ製のスリーブ75、および、環状のリング76が配置されている。支持部材72の内周面には段部が形成されており、当該段部により素子本体11の鍔部14が支持されている。なお、支持部材72と鍔部14との間に後端側パッキン73が挟まれて配置されている。
リング76は、スリーブ75と加締固定部67との間に配置されるものであり、加締固定部67が、径方向内側かつ先端側に変形されることにより加わる先端方向への力を、充填部材74、後端側パッキン73、支持部材72、先端側パッキン71に伝えるものである。この押し付ける力により、充填部材74は軸線O方向に圧縮充填され、かつ、主体金具60の内周面およびガス検出素子10の外周面との隙間を気密に埋める。
プロテクタ80は、ガスセンサ1が排気流路に取り付けられた際に、流路内に突出するガス検出素子10を、流路内を流れるガス中に含まれる水滴や異物等の衝突から保護するものである。プロテクタ80は、ステンレス鋼(例えば、JIS規格のSUS310S)から形成された部材であり、ガス検出素子10の先端を覆う保護部材である。プロテクタ80は、軸線方向に延びる筒状の部材であって、先端が閉塞された形状に形成されている。プロテクタ80の後端縁は、主体金具60の先端係合部65に溶接によって固定されている。
プロテクタ80には、有底筒状に形成され開放された側の周縁部が先端係合部65に嵌め合わされる外側プロテクタ81と、外側プロテクタ81の内部に固定された有底筒状に形成された内側プロテクタ82と、が設けられている。言い換えると、プロテクタ80は、外側プロテクタ81および内側プロテクタ82からなる2重構造を有している。
外側プロテクタ81および内側プロテクタ82の円筒面には、内部にガスを導入する導入口83が設けられている。さらに、外側プロテクタ81および内側プロテクタ82の底面には、内部に入り込んだ水滴や、ガスを排出する外側排出口84、内側排出口85がそれぞれ設けられている。
外筒90は、主体金具60とは異なるステンレス鋼(例えば、JIS規格のSUS304L)から形成された部材であり、外筒90の内部に主体金具60の後端係合部66が差し込まれて、主体金具60に固定されるものである。外筒90の内部には、主体金具60の後端から突出したガス検出素子10の後端や、セパレータ30や、シール部材40が配置されている。
複数の端子金具50には、第1センサ端子金具51、第2センサ端子金具52、第1ヒータ端子金具および第2ヒータ端子金具(図示せず)が含まれる。複数の端子金具50は、ニッケル合金(例えばインコネル750。英インコネル社製、登録商標)から形成された金具である。
第1センサ端子金具51は、ガス検出素子10の内側電極(図示せず)と電気的に接触し、第2センサ端子金具52と共に、ガス検出素子10の検出信号を外部に出力するものである。また、第1センサ端子金具51は、ヒータ20を把持するとともに、ヒータ20の発熱領域を、ガス検出素子10の内面に押し付けるものである。その一方で、第2センサ端子金具52は、素子本体11の外側電極(図示せず)と電気的に接続されるものである。また、第1ヒータ端子金具および第2ヒータ端子金具は、ヒータ20に電気的に接続している。
複数の端子金具50には、それぞれ、リード線55の芯線が加締め接続されて電気的に接続されている。図1では、4本のリード線55のうち3本のリード線55が図示されている。
セパレータ30は、図1に示すように、ガス検出素子10とシール部材40との間に配置される部材であり、電気絶縁性を有する材料、例えばアルミナから形成された円筒形状の部材である。セパレータ30には、複数の端子金具50などを収納する収容部31が設けられている。収容部31は、セパレータ30を軸線O方向に貫通して形成された貫通孔であり、セパレータ30よりも先端側の空間と、後端側の空間との間で大気の流通を可能とするものである。
さらに、セパレータ30の外周面には、径方向外側に突出するフランジ部32が設けられている。セパレータ30におけるフランジ部32よりも先端側の外周面には、略円筒状に形成された保持金具33が、内部にセパレータ30が挿入されるように配置されている。この保持金具33は、後述する外筒90を加締めることで、セパレータ30と外筒90とで挟持される。
シール部材40は、例えばフッ素ゴムなどの弾性材料からなる栓部材であり、ガスセンサ1の後端に配置される部材である。シール部材40は、図1および図2に示すように、軸線O方向を高さ方向とする略円柱状に形成された、外筒90の後端を塞ぐ部材である。
シール部材40は、セパレータ30の後端側の面に当接するように外筒90の後端側の開口に嵌め込まれ、外筒90におけるシール部材40の側面に対応する位置に形成されたシール加締部91によって、外筒90に固定されている。シール加締部91は、外筒90を径方向内側に向かって凹状に変形させた部分であり、外筒90を周方向にわたって一周する溝状に形成された部分である。
シール部材40の径方向の中央には、軸線O方向に貫通する大気連通孔41が形成されると共に、大気連通孔41よりも径方向外側に軸線O方向に貫通する4つのリード線挿通孔42が周方向に等間隔に形成されている。
図3は、シール部材40における後端向き面40aの構成を説明する、後端側の斜め後方から見た図であり、図3(a)はリード線挿通孔42およびカバー45を通る直線上から見た図であり、図3(b)は、溝部43およびカバー45を通る直線上から見た図である。
さらに、シール部材40の後端向き面40aには、図3(a)および図3(b)に示すように、大気連通孔41を起点にして、径方向外側に向かって延びる4つの溝部43が設けられている。4つの溝部43は、周方向に等間隔に形成されているとともに、リード線挿通孔42と交互に並ぶように形成されている。溝部43は、シール部材40の先端側(図2の下側)に向かって凹む形状に形成されている。シール部材40は、溝部43の底面431がシール加締部91よりも後端側に位置するように配置されている。
大気連通孔41は、図1および図2に示すように、シール部材40により閉塞された外筒90の内部に大気を導く貫通孔である。大気連通孔41の内部には、フィルタ441および留め金具442から構成されるフィルタ部44と、カバー(保護部)45と、が挿入されている。
大気連通孔41は、シール部材40がシール加締部91によって径方向内側に向かって変形した際に、フィルタ部44およびカバー45を保持するようになっている。シール部材40が変形する前は、図4に示すように、大気連通孔41には、先端側(図4の下側)に直径が大きな大径部411が形成され、後端側(図4の上側)に直径が小さくなる小径部412が形成されている。大気連通孔41における直径が変化する部分には、後述するカバー45の突出部455が係り止めされる傾斜面である係止段413が形成されている。
図5は、フィルタ部44およびカバー45の構成を説明する分解図であると共に、フィルタ部44が大気連通孔41に挿入される前のフィルタ441の形状を説明する図でもある。
フィルタ部44のフィルタ441は、図5に示すように、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂から形成されたマイクロメータ単位の網目構造を有する薄膜状のフィルタである。そのため、フィルタ441は、水滴等の透過を許さず、大気の通過は許容するものである。
留め金具442は、内部を大気が流通可能な筒状に形成された金属製の部材であり、フィルタ441をシール部材40に固定するものである。留め金具442の外周面は、大気連通孔41の内周との間にフィルタ441を挟み、フィルタ441をシール部材40に固定するものである。留め金具442の先端側(図5の下側)の端には、径方向外側に広がる鍔部443が設けられている。鍔部443は、シール部材40の先端向き面と当接することにより、シール部材40に対する留め金具442の配置位置を定めるものである。
そのため、鍔部443の外周端の直径は、大気連通孔41における大径部411の直径よりも大きく形成されている(図4参照)。また、留め金具442における軸線O方向の長さは、留め金具442がシール部材40に配置された際に、留め金具442の後端側の端部が溝部43の底面431よりも後端側に突出する長さであることが好ましいが、特に限定するものではなく、後端側に突出していなくてもよい。
カバー45は、大気連通孔41におけるフィルタ部44よりも後端側に配置され、フィルタ部44を保護する金属製の部材である。カバー45は、図5に示すように、筒状に形成された筒状部451と、筒状部451の後端側を閉塞する蓋部453と、筒状部451の先端側から径方向外側に広がる突出部455と、から主に構成されている。
筒状部451は、内部にフィルタ部44が配置されるものであり、軸線O方向に延びるスリット状の貫通孔である複数の側面孔452が、周方向に等間隔に設けられているものである。さらに、図2に示すように、筒状部451は、その内周面と、フィルタ部44の外周面(より具体的にはフィルタ441の外周面)と、の間に側方空間402が形成される直径に形成されている。
側方空間402は側面孔452を介して大気が流通可能な空間である。そのため、側面孔452は、カバー45がシール部材40に配置された際に、側面孔452の上端が溝部43の底面431よりも後端側に位置するように形成されている。また、側面孔452は、その開口領域と、フィルタ441における後端向き面(言い換えると、留め金具442の後端の開口を覆う部分)と、が重なるように形成されている。
蓋部453は、筒状部451とともに内部に配置されたフィルタ441を保護し、その破損を防止するものである。蓋部453には、大気連通孔41よりも径が小さな貫通孔である複数の開口454が設けられているものである。蓋部453とフィルタ部44(より具体的にはフィルタ441の後端)とは離間し、開口454を介して大気が流通可能な後端側空間401が設けられている。また、後端側空間401は、側方空間402と連通している。
突出部455は、シール部材40の係止段413などと共に、カバー45をシール部材40に係り止めする際に用いられるものであり、シール部材40に対するカバー45の配置位置を定めるものでもある。突出部455は、筒状部451における先端側の端部から径方向外側に延びる鍔状に形成された部材であり、カバー45が大気連通孔41の内部に挿入された際に係止段413と当接するものである。このとき、カバー45の蓋部453は、溝部43の底面431よりも後端側に突出して配置されるようになっている。
また、突出部455は、シール加締部91によってシール部材40が径方向内側に向かって変形した際に、径方向内側に突出した大気連通孔41の大径部411と、係止段413との間に挟み込まれ、軸線O方向へ移動しないように保持される。
次に、上記の構成からなるガスセンサ1の組み立て方法について説明する。なお、本実施形態のガスセンサ1における特徴である、フィルタ部44およびカバー45の取付け以外については、従来のガスセンサの組み立て方法と同様であるため、その説明を省略する。
図4および図5に示すように、シール部材40の大気連通孔41には、まず、カバー45が取付けられる。カバー45は、蓋部453を先にして大気連通孔41の先端側から、突出部455が係止段413に当接するまで挿入される。
次に、大気連通孔41の先端側の開口を覆うようにフィルタ441が配置され、留め金具442がフィルタ441とともに大気連通孔41に内部に挿入される。留め金具442は鍔部443がシール部材40の先端向き面に当接するまで挿入される。この段階で、留め金具442の後端は、カバー45の内部に位置している。また、大気連通孔41における大径部411の内周面と、フィルタ441とは接触していない。
その後、ガスセンサ1の通常の組み立て工程が行われ、図1および図2に示すように、外筒90におけるシール部材40に対応する位置にシール加締部91が形成される。シール加締部91は、シール部材40を径方向内側に向かって押しこみ、大気連通孔41の大径部411をフィルタ部44(フィルタ441および留め金具442)に密着させる。これにより、大気連通孔41とフィルタ部44との間の気密が図られ、大気はフィルタ部44を流通するようになる。
上記の構成のガスセンサ1によれば、大気連通孔41の内部に配置されたフィルタ部44よりも更に後端側にカバー45を配置することにより、カバー45によってフィルタ441が外部に露出することがなく、フィルタ441の破損が抑制される。さらに、シール部材40に、大気連通孔41の先端側の開口からカバー45を後端側に向けて挿入し、その後、同じく先端側の開口からフィルタ部44を挿入することにより、フィルタ部44の後端側にカバー45が配置されるため、フィルタ部44を大気連通孔41内に配置した後に、カバー45をシール部材40ごと覆うように配置する場合と比較して、フィルタ部44をカバー45で傷つけるおそれがない。さらに、配置されたフィルタ部44が露出している期間が殆どないため、言い換えると、フィルタ部44を配置すると同時にカバー45に覆われるため、ガスセンサ1の製造過程でフィルタ部44が破損する可能性が低くなる。
また、カバー45の突出部455が大気連通孔41の内周面(係止段413)と係り止めされるため、大気連通孔41の内部に配置されたカバー45が、大気連通孔41から抜け落ちるおそれがない。
フィルタ部44のフィルタ441と、カバー45の蓋部453との間には、カバー45の蓋部453に設けられた開口454を介して大気が流入する後端側空間401が設けられているため、フィルタ441と蓋部453が直接に接触しない。言い換えると、フィルタ441と蓋部453とが直接に接触することで、大気連通孔41よりも小さい開口を有する蓋部453によってフィルタ部44における通気量が減少するおそれがない。
また、フィルタ411をフィルタ部44の後端に設け、このフィルタ部44の後端を溝部43の底面431よりも後端側に突出させるとともに、フィルタ部44の後端部と重なったカバー45の筒状部451に、フィルタ441における留め金具442の後端の開口を覆う部分と、開口領域とが重なる側面孔452を設けることにより、後端側空間401に水が溜まりにくくなる。
つまり、フィルタ441を溝部43の底面431よりも後端側に突出させることにより、後端側空間401も底面431よりも後端側に突出して配置される。さらに、蓋部453の開口454から後端側空間401に侵入した水は、側面孔452を介して後端側空間401から溝部43に流出する。側面孔452は開口領域がフィルタ441における留め金具442の後端の開口を覆う部分と重なっているため、フィルタ441の後端向き面の上に侵入した水が残ることもない。そのため、後端側空間401に侵入した水によってフィルタ441における通気が阻害されにくくなる。
さらに、筒状部451およびフィルタ部44の間に後端側空間401と連通する側方空間402を形成し、筒状部451に形成された側面孔452を介して側方空間402へ大気の流通を可能とすることにより、フィルタ441における通気をより容易にすることができる。
つまり、後端側空間401と連通する側方空間402が設けられることにより、フィルタ441と接する空間が広くなり、さらに、当該空間は蓋部453の開口454の他に側面孔452を介して大気が流通可能とされているため、フィルタ441における通気が安定しやすくなる。また、後端側空間401に侵入した水は、後端側空間401から側方空間402に移動しやすいため、フィルタ441における通気が水によって阻害されにくい。
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について図6を参照しながら説明する。
本実施形態のガスセンサの基本構成は、第1の実施形態と同様であるが、第1の実施形態とは、フィルタ部およびカバーの間に形成される空間の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図6を用いてフィルタ部およびカバーの周辺構成について説明し、第1の実施形態と共通する構成の説明を省略する。
本実施形態のガスセンサ1001におけるシール部材40の大気連通孔41には、図6に示すように、フィルタ441および留め金具442から構成されるフィルタ部44と、カバー(保護部)1045と、が挿入されている。
カバー1045の筒状部1451は、第1の実施形態の筒状部451と比較して、内部に配置されるフィルタ部44との間に間隔が形成されない点が異なっている。そのため、フィルタ部44およびカバー1045の間には、後端側空間401のみが形成される。その他の構成要素については、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態と同一の符号を付して、その説明を省略する。
上記の構成からなるガスセンサ1001の組み立て方法は、第1の実施形態における組み立て方法と同様であるため、その説明を省略する。
上記の構成によれば、開口454から後端側空間401に浸入した水分は、ほぼ全てが側面孔452から溝部43へ流出する。例えば、第1の実施形態のように側方空間402が形成されていると、側方空間402における、溝部43の底面431よりも先端側(図6の下側)の部分に水分が溜まるおそれがある。これに対して本実施形態では、フィルタ部44およびカバー1045の間の空間に水分が残るおそれが少なくなる。
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について図7および図8を参照しながら説明する。
本実施形態のガスセンサの基本構成は、第2の実施形態と同様であるが、第2の実施形態とは、シール部材の構成が異なっている。よって、本実施形態においては、図7および図8を用いてシール部材の構成について説明し、第1および第2の実施形態と共通する構成の説明を省略する。
本実施形態のガスセンサ2001におけるシール部材2040は、図7および図8に示すように、第1の実施形態のシール部材40と比較して、溝部43が設けられていない点が異なっている。
シール部材2040は、第1の実施形態のシール部材40と同様に、例えばフッ素ゴムなどの弾性材料からなる栓部材であり、軸線O方向を高さ方向とする略円柱状に形成された、外筒90の後端を塞ぐ部材である。シール部材2040の大気連通孔41には、大径部411と、小径部412と、小径部412よりも更に後端側(図7の上側)に形成された後端部2043と、が設けられている。
後端部2043は、カバー45の筒状部451よりも直径が大きく形成された部分であり、シール部材2040における後端向き面に開口するものである。さらに後端部2043は、シール部材2040に配置されたカバー45の蓋部453が後端部2043の内部に収まるように、軸線O方向の高さが設定されている。
上記の構成からなるガスセンサ2001の組み立て方法は、第1の実施形態における組み立て方法と同様であるため、その説明を省略する。
上記の構成によれば、フィルタ部44およびカバー1045が、シール部材2040の内部、より詳しくは大気連通孔41の内部に配置されるため、フィルタ部44のフィルタ441が異物によって、さらに破損しにくくなる。つまり、第1および第2の実施形態と比較して、カバー1045もシール部材2040の内部に配置されるため、カバー1045が外部の物体と干渉してシール部材2040から脱落しにくくなる。その結果として、フィルタ部44が外部に露出し、フィルタ441が破損する可能性がさらに低くなる。
1,1001,2001…ガスセンサ、10…ガス検出素子(検出素子)、40,2040…シール部材(栓部材)、41…大気連通孔、43…溝部、431…底面、44…フィルタ部、441…フィルタ、45,1045…カバー(保護部)、451,1451…筒状部、452…側面孔、453…蓋部、454…開口、455…突出部、60…主体金具、90…外筒、401…後端側空間、402…側方空間

Claims (4)

  1. 軸線方向に延びると共に、先端側に被検出ガスを検出する検出部が配置された検出素子と、
    前記検出素子の径方向周囲を取り囲みつつ、前記検出部を自身の先端から突出させた状態で前記検出素子を保持する主体金具と、
    自身の先端部が前記主体金具の後端部に固定される筒状の外筒と、
    該外筒の後端側内部に配置されると共に、前記外筒の内部および外部との間の大気の流通を可能とする大気連通孔が形成された栓部材と、
    が設けられたガスセンサであって、
    前記大気連通孔の内部に配置されるとともに、少なくとも先端部の外周面が大気連通孔の内周面に接触する筒状のフィルタ部であり、通気性と防水性とを有し、前記大気連通孔を閉塞するフィルタを備えるフィルタ部と、
    前記フィルタ部よりも後端側に配置され、前記大気連通孔よりも径が小さな開口が設けられた蓋部と、該蓋部に接続すると共に、自身の先端部が前記大気連通孔内に配置される筒状の筒状部と、を有する保護部と、
    を更に備え、
    前記筒状部の前記先端部には、径方向外側に突出すると共に、前記大気連通孔の内周面と係り止めされる突出部が設けられ、
    前記フィルタと前記保護部の前記蓋部とが、前記蓋部の開口によって外部と連通して大気が流入する後端側空間を形成するように離間していることを特徴とするガスセンサ。
  2. 前記栓部材の後端向き面には、前記大気連通孔を起点に径方向外側に向かって延びると共に、前記栓部材の先端側に向かって凹む溝部が形成され、
    前記保護部の前記蓋部は、前記溝部の底面よりも後端側に突出していることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。
  3. 前記フィルタ部は、前記先端部の外周面が前記大気連通孔の内周面に接触するとともに、後端部の外周面が前記大気連通孔に対して前記保護部の前記筒状部を介して離間するとともに、前記フィルタ部の後端が前記溝部の前記底面よりも後端側に突出し、
    前記フィルタは、前記フィルタ部の後端に設けられており、
    前記筒状部には、前記軸線方向において、前記フィルタと開口領域とが重なる側面孔が設けられていることを特徴とする請求項2記載のガスセンサ。
  4. 前記筒状部には、前記外筒の内部および外部との間の大気の流通を可能とする側面孔が設けられていると共に、前記フィルタ部は、前記先端部の外周面が前記大気連通孔の内周面に接触するとともに、後端部の外周面が前記大気連通孔に対して前記保護部の前記筒状部を介して離間しており、
    さらに前記筒状部と、前記フィルタ部の前記後端部とが、前記側面孔によって外部と連通するとともに、前記後端側空間とも連通する側方空間が形成するように離間していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のガスセンサ。
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