JP5695505B2 - ガスバリア性フィルム及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性に優れたガスバリア性樹脂層を形成することができるガスバリア性樹脂層形成用組成物、並びにこれを用いてなるガスバリア性フィルム及びその製造方法に関する。
ガスバリア性フィルムは、内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気などの影響を防止するために、食品や医薬品の包装袋に用いられている。また、ガスバリア性フィルムは、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス )表示パネルなどに使用される素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを防止するために、製品構成体の一部として或いはそれら素子のパッケージ材料としても用いられている。
このようなガスバリア性フィルムとして、ポリビニルアルコールフィルムやエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムも用いられているが、これらは水蒸気バリア性が不充分であり、高湿度条件下においては酸素バリア性が低下するといった問題点を有している。
そこで、プラスチックシート上に、酸化ケイ素や酸化アルミニウムなどの金属酸化物の蒸着層と、シランカップリング剤及び合成樹脂若しくは合成樹脂のモノマーを含む組成物を硬化させてなるガスバリア性樹脂層とが積層一体化されたガスバリア性フィルムが提案されている(例えば、特許文献1〜3)。
特許第3403882号公報 特許第3974219号公報 特開2010−677号公報
しかしながら、特許文献1〜3で開示されるガスバリア性フィルムでは、ガスバリア性樹脂層を用いて多層化することによりガスバリア性の向上を図っているのみであり、またガスバリア性樹脂層に用いられるシランカップリング剤はガスバリア性樹脂層とこれと隣接する他の層との接着性の向上を図ったにすぎない。このため、特許文献1〜3のガスバリア性フィルムでは依然として酸素や水蒸気などのガスバリア性が不充分であるといった問題点を有している。
したがって、本発明は、酸素や水蒸気などに対するガスバリア性に優れたガスバリア性樹脂層を含むガスバリアフィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のガスバリア性フィルムは、合成樹脂フィルム上に、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水を含むガスバリア性樹脂層形成用組成物を硬化させてなるガスバリア性樹脂層、及び無機化合物膜がこの順で積層一体化されてなることを特徴とする。
さらに、本発明のガスバリア性フィルムの製造方法は、
合成樹脂フィルム上に、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水を含むガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布し、上記ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)が有するアルコキシ基と、上記ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基とを加水分解及び脱水縮合させることにより脱水縮合物を含む硬化物を得た後、上記硬化物に活性エネルギー線を照射することによって上記脱水縮合物と、上記多官能(メタ)アクリレート(C)とをラジカル重合させることによりガスバリア性樹脂層を形成する工程と、
上記ガスバリア性樹脂層上に、無機化合物膜を積層一体化させる工程と、
を有することを特徴とする。
本発明のガスバリア性樹脂層形成用組成物を硬化させることにより形成されるガスバリア性樹脂層では、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)及びラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)の脱水縮合物が単に形成されているだけでなく、この脱水縮合物と多官能(メタ)アクリレート(C)とがラジカル重合することによって、脱水縮合物間を多官能(メタ)アクリレート(C)が架橋するようにして形成された緻密な網目構造を有しているラジカル重合体が形成される。このようなガスバリア性樹脂層では、ラジカル重合体によって緻密な網目構造が形成されていることによって、酸素や水蒸気などのガスの透過を高く防止することができ且つ優れた強度を有する。したがって、上記ガスバリア性樹脂層をガスバリア性フィルムに用いることにより、ガスバリア性フィルムのガスバリア性及び強度を向上させることが可能となる。
本発明の一実施形態であるガスバリア性フィルムの模式断面図を示す。
[ガスバリア性樹脂層形成用組成物]
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水を含む。
(アルコキシシラン(A))
ガスバリア性樹脂層形成用組成物に用いられるアルコキシシラン(A)はラジカル重合性基を有するものである。
本発明において、ラジカル重合性基は、ラジカルによって付加重合することが可能な基を意味する。このようなラジカル重合性基としては、不飽和二重結合を有している基が挙げられ、具体的には、アリル基、イソプロペニル基、マレオイル基、スチリル基、ビニルベンジル基、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリロキシアルキル基及びビニル基などが挙げられる。なお、(メタ)アクリロキシとは、アクリロキシ又はメタクリロキシを意味する。
アルコキシシラン(A)が有するラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロキシアルキル基、及びビニル基が好ましく挙げられる。(メタ)アクリロキシアルキル基、又はビニル基を有するアルコキシシラン(A)は、ラジカル重合反応性に優れ高度に重合することができることから、緻密な網目構造を形成してガスバリア性に優れるガスバリア性樹脂層を形成することができる。アルコキシシラン(A)は、1分子中に1個のラジカル重合性基を有していることが好ましい。また、アルコキシシラン(A)は、1分子中にアルコキシ基を2〜3個有していることが好ましい。
ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)としては、下記式(1)で示されるアルコキシシランが好ましく挙げられる。
Figure 0005695505

(式中、R1は炭素数4〜9の(メタ)アクリロキシアルキル基又はビニル基を表し、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜4のアルキル基を表し、且つnは0又は1である。)
上記式(1)のR1において、炭素数4〜9の(メタ)アクリロキシアルキル基としては、(メタ)アクリロキシメチル基、2−(メタ)アクリロキシエチル基、及び3−(メタ)アクリロキシプロピル基などが好ましく挙げられる。
上記式(1)のR2は炭素数1〜8のアルキル基であり、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。また、上記アルキル基はアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基で置換されている炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基などが好ましく挙げられる。R2がアルコキシ基で置換されている炭素数1〜8のアルキル基である場合、上記式(1)で示されるアルコキシシラン(A)は、アルコキシ基で置換されたアルコキシ基を有する。
また、上記式(1)のR3は、炭素数1〜4のアルキル基であり、このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などが挙げられる。
式(1)で示されるアルコキシシランとして具体的には、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシランが挙げられる。これらのアルコキシシラン(A)は単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。なかでも、ラジカル重合反応性に優れることから、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく挙げられる。
(アルコキシシラン(B))
ガスバリア性樹脂層に用いられるアルコキシシラン(B)は、ラジカル重合性基を有しないものである。アルコキシシラン(B)は、1分子中にアルコキシ基を2〜4個有していることが好ましく、4個有しているのがより好ましい。
このようなアルコキシシラン(B)としては、下記一般式(2)で示されるアルコキシシランが好ましく用いられる。
Figure 0005695505

(式中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜8のアルキル基を表し、mは0〜2の整数である。)
上記式(2)のR及びRは、炭素数1〜8のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。R及びRとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基が挙げられる。mは0であることが好ましい。
上記一般式(2)で示されるアルコキシシラン(B)は、加水分解速度が早く、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の加水分解及び脱水縮合反応をより確実に行うことができ、得られるガスバリア性樹脂層のガスバリア性を向上させることができる。
なかでもアルコキシシラン(B)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、及びテトラブトキシシランが好ましく挙げられ、テトラエトキシシランがより好ましく挙げられる。これらのアルコキシシラン(B)は一種単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物におけるアルコキシシラン(B)の含有量としては、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、5〜150重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましく、10〜40重量部が特に好ましい。ガスバリア性樹脂層形成用組成物におけるアルコキシシラン(B)の含有量が少な過ぎると、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)を加水分解及び脱水縮合させることにより得られる脱水縮合物を十分に高分子量化することができず、十分なガスバリア性を有するガスバリア性樹脂層を形成できない虞れがある。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物におけるアルコキシシラン(B)の含有量が多過ぎると、得られるガスバリア性樹脂層が白色となって透明性が低下する虞れがある。
(多官能(メタ)アクリレート(C))
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、上述したアルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の他に、多官能(メタ)アクリレート(C)をさらに含んでいる。多官能(メタ)アクリレート(C)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを意味する。また、多官能(メタ)アクリレート(C)はケイ素原子を含んでいない。後述するように、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の脱水縮合物を含む硬化物に活性エネルギー線が照射されることによって、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の脱水縮合物と多官能(メタ)アクリレート(C)とが、上記脱水縮合物が有するラジカル重合性基及び多官能(メタ)アクリレート(C)が有する(メタ)アクリロイル基において、ラジカル重合する。このように多官能(メタ)アクリレート(C)を用いることによって、ガスバリア性や強度に優れるガスバリア性樹脂層を短時間で形成することができる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
多官能(メタ)アクリレート(C)としては、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なかでも、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレート(C)は、単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物における多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量は、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、10〜150重量部が好ましく、10〜100重量部がより好ましく、30〜80重量部が特に好ましい。ガスバリア性樹脂層形成用組成物における多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が少な過ぎると、多官能(メタ)アクリレート(C)を用いることによって得られる効果が十分ではない虞れがある。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物における多官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が多すぎると、得られるガスバリア性樹脂層の水蒸気透過性が高くなる虞れがある。
(単官能(メタ)アクリレート(D))
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、上述したアルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の他に、単官能(メタ)アクリレート(D)をさらに含んでいることが好ましい。単官能(メタ)アクリレート(D)は、(メタ)アクリル酸に由来するエチレン性不飽和二重結合を1分子中に1個のみ有する(メタ)アクリレートを意味する。すなわち、単官能(メタ)アクリレート(D)は、CH2=CHCOO−又はCH2=C(CH3)COO−で示される構造単位を1分子中に1個のみ有する。また、単官能(メタ)アクリレート(D)はケイ素原子を含んでいない。単官能(メタ)アクリレート(D)を用いることによって、得られるガスバリア性樹脂層のガスバリア性を向上できると共に、上記ガスバリア性樹脂層にその強度を低下させずに適度な柔軟性を付与することができる。
単官能(メタ)アクリレート(D)としては、炭素数1〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく挙げられる。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量は、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましく、10〜30重量部が特に好ましい。ガスバリア性樹脂層形成用組成物における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量が少な過ぎると、単官能(メタ)アクリレート(D)を用いることによって得られる効果が十分ではない虞れがある。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物における単官能(メタ)アクリレート(D)の含有量が多すぎると、得られるガスバリア性樹脂層の強度が低下する虞れがある。
(酸触媒)
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、アルコキシシラン(A)が有するアルコキシ基とアルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基との加水分解反応及び脱水縮合反応を促進させるために、酸触媒を含む。
酸触媒としては、塩酸、硫酸、及び硝酸などの無機酸、並びにギ酸、及び酢酸などの有機酸が挙げられる。なかでも、上記アルコキシ基の加水分解反応及び脱水縮合反応をより促進させることができることから、塩酸を用いることが好ましい。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物中における酸触媒の含有量は、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、0.0001〜1.0重量部が好ましく、0.001〜0.05重量部がより好ましい。酸触媒の含有量が少な過ぎると、上記アルコキシ基の加水分解反応及び脱水縮合反応を十分に進行させるのに過度の時間が必要となり、ガスバリア性フィルムの製造効率が低下する虞れがある。また、酸触媒の含有量が多過ぎると、上記アルコキシ基の加水分解反応及び脱水縮合反応に要する時間がかえって長くなる恐れがある。
(水)
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、水を含む。水を含むことによって、アルコキシシラン(A)が有するアルコキシ基とアルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基との加水分解反応及び脱水縮合反応を進めることが可能となる。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物における水の含有量は、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、0.5〜40重量部が好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜5重量部が特に好ましい。ガスバリア性樹脂層形成用組成物における水の含有量が少な過ぎると、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基の加水分解反応及び脱水縮合反応を十分に進行させるのに過度の時間が必要となり、ガスバリア性フィルムの製造効率が低下する虞れがある。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物における水の含有量が多過ぎると、過剰に存在する水がアルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の脱水縮合物及び多官能(メタ)アクリレート(C)のラジカル重合を阻害する虞れがある。
(有機溶媒)
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、有機溶媒を含んでいることが好ましい。有機溶媒を用いることにより、ガスバリア性樹脂層形成用組成物に含まれている各成分を均一に混合することができる。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、及びアミルアルコールなどのアルコール系有機溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、及びシクロヘキサノンなどのケトン系有機溶媒;テトラヒドロフラン、及び1,4−ジオキサンなどの環状エーテル系有機溶媒;ヘキサンなどの脂肪族炭化水素系有機溶媒;トルエンなどの芳香族炭化水素系有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
有機溶媒としては、ガスバリア性樹脂層形成用組成物に含まれている各成分の分散性に優れていることから、アルコール系有機溶媒を用いることが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、又はイソブチルアルコールを用いるのがより好ましい。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物中における有機溶媒の含有量は、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部がより好ましく、5〜10重量部が特に好ましい。上記含有量で有機溶媒を含むことにより、ガスバリア性樹脂層形成用組成物に含まれている各成分を均一に混合することができる。
(無機粒子)
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理されてなり、平均一次粒子径が1〜50nmであり且つアスペクト比が2.0〜10.0である平板状(鱗片状)の無機粒子を含んでいることが好ましい。平板状の無機粒子は、その表面がラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で被覆されていることにより、ガスバリア性樹脂層形成用組成物中での凝集が高く抑制され、均一に微分散することができる。そして、このような平板状の無機粒子を含むガスバリア性樹脂層形成用組成物を用いることにより、平板状の無機粒子がガスバリア性樹脂層形成用組成物中で均一に微分散されることによって、ガスバリア性、耐引掻性、及び耐磨耗性が向上されたガスバリア性樹脂層を形成することが可能となる。
平板状の無機粒子の平均一次粒子径は、1〜100nmが好ましく、20〜80nmがより好ましく、30〜65nmが特に好ましい。平板状の無機粒子の平均一次粒子径が小さ過ぎると、ガスバリア性樹脂層形成用組成物中で平板状の無機粒子を微分散させるのが困難となる虞れがある。また、平板状の無機粒子の平均一次粒子径が大き過ぎると、得られるガスバリア性樹脂層の表面平滑性が損なわれることによってガスバリア性が低下する虞れがある。
平板状の無機粒子のアスペクト比は、2.0〜10.0が好ましく、2.0〜5.0がより好ましい。平板状の無機粒子のアスペクト比が2.0未満であると、得られるガスバリア性樹脂層のガスバリア性、耐引掻性、及び耐磨耗性を十分に向上できない虞れがある。また、平板状の無機粒子のアスペクト比が10.0を超えると、ガスバリア性樹脂層の透明性が低下する虞れがある。
平板状の無機粒子としては、アルミナ又はアルミナ水和物が好ましく挙げられる。アルミナ(Al23)としては、α−アルミナ、β−アルミナ、及びγ−アルミナなどが挙げられる。これらの無機粒子は、単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。
なかでも、平板状の無機粒子としては、アルミナ水和物が好ましく、ベーマイトがより好ましい。アルミナ水和物によれば、ガスバリア性により優れたガスバリア性樹脂層を形成することができる。
なお、平板状の無機粒子の一次粒子径とは平板状の無機粒子を包囲し得る最小径の真円の直径を意味する。また、平板状の無機粒子の厚みとは、平板状の無機粒子の厚み方向の最大長さを意味する。そして、平板状の無機粒子のアスペクト比は、平板状の無機粒子の平均厚みに対する平板状の無機粒子の平均一次粒子径の比(平均一次粒子径/平均厚み)を意味する。
平板状の無機粒子の平均一次粒子径及び厚みの測定は次の通りにして行うことができる。平板状の無機粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、100個の平板状の無機粒子の一次粒子径及び厚みを測定して、得られた値をそれぞれ相加平均することにより平板状の無機粒子の平均一次粒子径及び平均厚みを算出することができる。そして、平板状の無機粒子の平均一次粒子径を平板状の無機粒子の平均厚みで除することにより、平板状の無機粒子のアスペクト比を算出することができる。
上述した平均一次粒子径及びアスペクト比を有する平板状のベーマイトは、市販品を用いることができる。例えば、アルミナ水和物の市販品としては、Sasol社製の「Disperal(登録商標)」及び「Dispal(登録商標)」などが挙げられる。また、アルミナの市販品としては、サンゴバン社製 CAMシリーズなどが挙げられる。
平板状の無機粒子は、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理されることにより、ガスバリア性樹脂層形成用組成物中での分散性が向上されている。
アルコキシシラン(E)が有するラジカル重合性基としては、(メタ)アクリロキシアルキル基、及びビニル基が好ましく挙げられる。(メタ)アクリロキシアルキル基、又はビニル基を有するアルコキシシラン(E)は、ラジカル重合反応性に優れ高度に重合することができることから、緻密な網目構造を形成してガスバリア性に優れるガスバリア性樹脂層を形成することができる。アルコキシシラン(E)は、1分子中に1個のラジカル重合性基を有していることが好ましい。また、アルコキシシラン(E)は、1分子中にアルコキシ基を2〜3個有していることが好ましい。
ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)としては、下記式(3)で示されるアルコキシシランが好ましく挙げられる。
Figure 0005695505

(式中、R6は炭素数4〜9の(メタ)アクリロキシアルキル基又はビニル基を表し、R7はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、R8は炭素数1〜4のアルキル基を表し、且つpは0又は1である。)
上記式(3)のR6において、炭素数4〜9の(メタ)アクリロキシアルキル基としては、(メタ)アクリロキシメチル基、2−(メタ)アクリロキシエチル基、及び3−(メタ)アクリロキシプロピル基などが好ましく挙げられる。
上記式(3)のR7は炭素数1〜8のアルキル基であり、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などが挙げられる。また、上記アルキル基はアルコキシ基で置換されていてもよい。アルコキシ基で置換されている炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基などが好ましく挙げられる。R7がアルコキシ基で置換されている炭素数1〜8のアルキル基である場合、上記式(3)で示されるアルコキシシランは、アルコキシ基で置換されたアルコキシ基を有する。
また、上記式(3)のR8は、炭素数1〜4のアルキル基であり、このようなアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などが挙げられる。
式(3)で示されるラジカル重合性基を有するアルコキシシランとして具体的には、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシランが挙げられる。これらのアルコキシシランは単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。なかでも、ラジカル重合反応性に優れることから、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく挙げられる。
ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状の無機粒子におけるアルコキシシラン(E)の含有量は、平板状の無機粒子の分散性を考慮すると、平板状の無機粒子と、これを表面処理しているラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)との全量に対して、0.001〜10重量%が好ましく、0.5〜10重量%が好ましい。
平板状の無機粒子の表面処理方法としては、水又はアルコール系有機溶媒中にラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)を分散又は溶解させたアルコキシシラン溶液を平板状の無機粒子に噴霧することにより、アルコキシシラン溶液が表面に塗布された平板状の無機粒子を得た後、これを乾燥させる方法、水又はアルコール系有機溶媒中にラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)を分散又は溶解させたアルコキシシラン溶液を、水又はアルコール系有機溶媒中に平板状の無機粒子を分散させた分散液中に滴下して混合液を得、上記混合液を30分〜5時間撹拌した後にろ過することにより、上記混合液が表面に塗布された平板状の無機粒子を得た後、これを乾燥させる方法などが用いられる。
アルコキシシラン溶液が表面に塗布された平板状の無機粒子、又は混合液が表面に塗布された平板状の無機粒子の乾燥は、アルコキシシラン溶液が表面に塗布された平板状の無機粒子、又は混合液が表面に塗布された平板状の無機粒子を、60〜120℃の温度で12時間〜3日間加熱することにより行うことが好ましい。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物中におけるラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状の無機粒子の含有量は、アルコキシシラン(A)100重量部に対して、0.01〜100重量部が好ましく、10〜50重量部がより好ましく、10〜45重量部が特に好ましい。このような量でラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状の無機粒子を用いることにより、得られるガスバリア性樹脂層のガスバリア性を向上させることができる。
なお、ガスバリア性樹脂層形成用組成物中におけるラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状の無機粒子の上述した含有量とは、平板状の無機粒子の含有量と、これを表面処理しているラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)の含有量との合計量を意味する。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物に含まれているラジカル重合性基を有するアルコキシシランのうち、平板状の無機粒子の表面に一体化しているアルコキシシランがアルコキシシラン(E)であり、平板状の無機粒子の表面に一体化していないアルコキシシランがアルコキシシラン(A)である。
[ガスバリア性フィルム]
本発明のガスバリア性フィルムは、上述した上述したガスバリア性樹脂層形成用組成物を硬化させてなるガスバリア性樹脂層を含んでいることを特徴とする。このようなガスバリア性樹脂層は、図1に示すように、合成樹脂フィルム10と、上記合成フィルム10の一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層20と、上記ガスバリア性樹脂層20の一面に積層一体化されてなる無機化合物膜30とを有しているのが好ましい。そして、上記ガスバリア性樹脂層20が、上述したガスバリア性樹脂層形成用組成物を硬化させてなるものである。
(合成樹脂フィルム)
本発明のガスバリア性フィルムに用いられる合成樹脂フィルムの材料は、ガスバリア性フィルムが用いられる用途に応じて決定すればよいが、透明な熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。透明な熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンなどのポリエーテル系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6などのポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物などのビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリイミド;ポリエーテルイミド;ポリエーテルスルフォン;ポリスルフォン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルケトンケトンなどが使用できる。これらの熱可塑性樹脂は、単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上を併用することもできる。
合成樹脂フィルムには、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤などの公知の添加剤が含有されていてもよい。また、合成樹脂フィルムの表面に、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理などの表面改質処理を施してガスバリア性樹脂層との密着性を向上させてもよい。合成樹脂フィルムの厚みは、3〜300μmが好ましく、12〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。
(ガスバリア性樹脂層)
ガスバリア性樹脂層の厚みは、0.1〜100μmが好ましく、1〜100μmがより好ましく、1〜80μmが特に好ましい。厚みが0.1μm未満であるガスバリア性樹脂層では十分なガスバリア性を有していない虞れがある。また、厚みが100μmを超えるガスバリア性樹脂層では、剛性が高くなり過ぎてガスバリア性フィルムの取扱性を低下させる虞れがある。
(無機化合物膜)
無機化合物膜は、金属酸化物又は金属窒化物を含有している。具体的には、金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、及び酸化チタンが挙げられる。また、金属窒化物としては、窒化ケイ素、及び窒化チタンなどが挙げられる。なかでも、優れたガスバリア性を有する無機化合物膜を形成できることから、金属酸化物が好ましく、酸化ケイ素、酸化アルミニウムがより好ましく、酸化ケイ素が特に好ましい。
酸化ケイ素を含む無機化合物膜は、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ナトリウム、チタン、ジルコニウム、イットリウムなどの他の金属原子や、炭素、ホウ素、窒素、フッ素などの非金属原子を含んでいてもよい。
無機化合物膜は、単一層であっても、ガスバリア性を向上させるために複数層を積層一体化させたものであってもよい。無機化合物膜が複数層を積層一体化させてなるものである場合、各層を構成している材料は、同一であっても異なっていてもよい。
無機化合物膜の厚みが薄過ぎると、酸素や水蒸気に対して十分なガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを提供できない虞れがある。また、無機化合物膜の厚みが厚過ぎると無機化合物膜を形成する際にガスバリア性樹脂層などの隣接する層との間における収縮率の差に起因してクラックが生じ易くなり、ガスバリア性フィルムの酸素や水蒸気に対するバリア性が低下する虞れがある。したがって、無機化合物膜の厚みは、5nm〜10μmが好ましく、10nm〜5μmがより好ましい。
本発明のガスバリア性フィルムが用いられる用途としては、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装、食品や工業用品及び医薬品等の変質を防止するための包装などの用途が挙げられる。また、このような包装用用途の他にも、本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池モジュール、液晶表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどに使用される素子が、酸素や水蒸気に触れて性能劣化するのを防止するために、製品構成体の一部として或いはそれら素子のパッケージ材料として用いることができる。なかでも、本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池モジュールの裏面側保護シート又は受光面側保護シートとして用いられることが好ましい。裏面側保護シート及び受光面側保護シートは、太陽電池モジュールにおいて発電素子とエチレン−酢酸ビニル共重合体などの封止樹脂とを保護するために用いられる。
[ガスバリア性フィルムの製造方法]
本発明のガスバリア性フィルムは、下記工程、
合成樹脂フィルム上に、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水を含むガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布し、上記ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)が有するアルコキシ基と、上記ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基とを加水分解及び脱水縮合させることにより脱水縮合物を含む硬化物を得た後、上記硬化物に活性エネルギー線を照射することによって上記脱水縮合物と、上記多官能(メタ)アクリレート(C)とをラジカル重合させることによりガスバリア性樹脂層を形成する工程と、
上記ガスバリア性樹脂層に、無機化合物膜を積層一体化する工程と、
を有する方法により製造することができる。
アルコキシシラン(A)は、ラジカル重合性基の他に、アルコキシ基及び/又はアルコキシ基で置換されたアルコキシ基を有する。また、アルコキシシラン(B)もアルコキシ基を有する。したがって、ガスバリア性樹脂層の作製では、まず、アルコキシシラン(A)が有しているアルコキシ基及び/又はアルコキシ基で置換されたアルコキシ基と、アルコキシシラン(B)が有しているアルコキシ基とが、ガスバリア性樹脂層形成用組成物に含まれている水及び酸触媒によって加水分解してシラノール基をそれぞれ形成した後、上記加水分解により得られたアルコキシシラン(A)及び(B)の加水分解物が、これらがそれぞれ有しているシラノール基において脱水縮合して脱水縮合物を形成することにより、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物が硬化して硬化物が得られる。
なお、脱水縮合物には、アルコキシシラン(A)が有しているアルコキシ基同士が加水分解及び脱水縮合されてなる部分、及びアルコキシシラン(B)が有しているアルコキシ基同士が加水分解及び脱水縮合されてなる部分が含まれていてもよい。
上記の通りにして得られた脱水縮合物は、アルコキシシラン(A)に由来するラジカル重合性基を有している。したがって、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に活性エネルギー線を照射することによって、脱水縮合物と多官能(メタ)アクリレート(C)とが、脱水縮合物が有しているラジカル重合性基及び多官能(メタ)アクリレート(C)が有している(メタ)アクリロイル基のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合する。このラジカル重合により、脱水縮合物の主鎖間を多官能(メタ)アクリレート(C)が架橋するようにして形成された緻密な網目構造を有するラジカル重合体が得られ、これによりガスバリア性樹脂層に優れたガスバリア性及び強度を付与することができる。
このように本発明の方法では、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の加水分解及び脱水縮合反応を優先的に行うことにより、ガスバリア性樹脂層形成用組成物に含まれているアルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の加水分解及び脱水縮合反応を確実に行って高分子量化された脱水縮合物を得ることができる。そして、優先的に脱水縮合物の高分子量化を行うことによって、相互に隣接する脱水縮合物の主鎖同士を近接させた状態とすることができ、このように脱水縮合物の主鎖同士を近接させた状態で、この脱水縮合物及び多官能(メタ)アクリレート(C)のラジカル重合を行うことにより、脱水縮合物の主鎖間を多官能(メタ)アクリレート(C)が架橋するようにして形成された緻密な網目構造を有するラジカル重合体が得られる。
このように本発明の方法により形成されるガスバリア性樹脂層には、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の脱水縮合物が単に形成されているだけでなく、この脱水縮合物の主鎖間を多官能(メタ)アクリレート(C)が架橋するようにして、脱水縮合物と多官能(メタ)アクリレート(C)とがラジカル重合することにより緻密な網目構造が付与されており、このような緻密な網目構造を有するガスバリア性樹脂層は酸素や水蒸気などのガスの透過を高く防止することができ且つ優れた強度を有する。したがって、上記ガスバリア性樹脂層を用いることによってガスバリア性フィルムのガスバリア性及び強度を向上させることができる。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物は、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水、並びに必要に応じて単官能(メタ)アクリレート(D)及びアルコキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状の無機粒子を混合することにより調製できる。このガスバリア性樹脂層形成用組成物を合成樹脂フィルム上に塗布するには、ロールコーター法、スピンコーター法、ディッピング法、バーコーター法、フローティングナイフコーター法、ダイコーター法、グラビアコーター法、カーテンコーター法、ブレードコーター法、及びスプレー法など公知の方法を用いて行えばよい。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物には水及び酸触媒が含まれていることから、アルコキシシラン(A)が有しているアルコキシ基及び/又はアルコキシ基で置換されたアルコキシ基と、アルコキシシラン(B)が有しているアルコキシ基とが加水分解して加水分解物を形成した後、これらの加水分解物が脱水縮合して脱水縮合物を形成する。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物が、アルコキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状の無機粒子をさらに含んでいる場合には、アルコキシシラン(A)が有するアルコキシ基及び/又はアルコキシ基で置換されたアルコキシ基と、アルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基と、アルコキシシラン(E)が有するアルコキシ基及び/又はアルコキシ基で置換されたアルコキシ基とが加水分解して加水分解物を形成した後、これらの加水分解物が脱水縮合して脱水縮合物を形成する。このようにして得られた脱水縮合物は、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(E)に由来するラジカル重合性基を有している。
このような加水分解及び脱水縮合反応をより確実に行うためには、合成樹脂フィルム上に塗布したガスバリア性樹脂層形成用組成物を、40〜150℃、好ましくは80〜150℃に加熱することが好ましい。加熱時間は、0.1〜10時間が好ましく、0.5〜3時間がより好ましい。
合成樹脂フィルム上に塗布されたガスバリア性樹脂層形成用組成物は、上述の通り、アルコキシシラン(A)及びアルコキシシラン(B)の加水分解及び脱水縮合によって、硬化して硬化物となる。この硬化物に活性エネルギー線を照射することによって上記硬化物に含まれている脱水縮合物と多官能(メタ)アクリレート(C)とのラジカル重合を行う。また、ガスバリア性樹脂層形成用組成物が単官能(メタ)アクリレート(D)を含む場合には、脱水縮合物と多官能(メタ)アクリレート(C)と単官能(メタ)アクリレート(D)とが、脱水縮合物のラジカル重合性基、多官能(メタ)アクリレート(C)の(メタ)アクリロイル基のエチレン性不飽和二重結合、及び単官能(メタ)アクリレート(D)のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合が行われる。
合成樹脂フィルム上に形成されたガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に照射する活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも脱水縮合物及び多官能(メタ)アクリレートのラジカル重合を行うのに十分なエネルギーを有することから、電子線が好ましく挙げられる。
ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に電子線を照射する場合、電子線の加速電圧は、100〜300kVが好ましく、150〜200kVがより好ましい。また、電子線の照射量は、50〜200kGyが好ましく、100〜175kGyがより好ましい。
次に、ガスバリア性樹脂層上に無機化合物膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD)や、化学的気相成長法(CVD)などが挙げられる。
無機化合物膜は、ガスバリア性樹脂層上に直接形成してもよい。また、無機化合物膜を合成樹脂フィルム及びガスバリア性樹脂層とは別に作製した後、この無機化合物膜をガスバリア性樹脂層上にラミネート用接着剤などを用いて貼着することによってガスバリア性樹脂層上に無機化合物膜を積層一体化してもよい。ラミネート用接着剤としては、公知の接着剤を用いることができ、例えば、2液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、及びポリエーテル系接着剤などを用いることができる。
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)100重量部、テトラエトキシシラン(B)33.6重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)72.5重量部、塩酸水溶液(塩酸0.99重量%含有)3.7重量部、イソプロピルアルコール8.1重量部、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイト(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E):含有量1.0重量%、平板状のベーマイト:Sasol社製 Disperal(登録商標)B−2、平均一次粒子径40nm、アスペクト比4.0)40.3重量部を混合することによりガスバリア性樹脂層形成用組成物を調製した。
次に、ガスバリア性樹脂層形成用組成物を、ポリエチレンテレナフタレートフィルム(厚み75μm)の一面にグラビアコーターにより塗布し、一面にガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布したポリエチレンテレナフタレートフィルムを、120℃のオーブン中に1時間放置することによって、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)のメトキシ基と、テトラエトキシシラン(B)のエトキシ基と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)のメトキシ基とを加水分解させて加水分解物を形成させた後、これらの加水分解物を脱水縮合させて脱水縮合物を形成させ、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物を得た。
次に、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に、電子線照射装置(ESI社製 製品名EC300/165/800)を用いて、加速電圧175kV、照射線量150kGyの条件で電子線を照射することによって、脱水縮合物及びトリプロピレングリコールジアクリレート(C)を、脱水縮合物の3−メタクリロキシプロピル基のエチレン性不飽和二重結合及びトリプロピレングリコールジアクリレート(C)のアクリロイル基のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合させて、脱水縮合物の主鎖間をトリプロピレングリコールジアクリレート(C)が架橋するようにして形成されたラジカル重合体を得、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層(厚み5μm)を得た。
そして、RFマグネトロンスパッタにより、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層の表面温度を60℃に維持した状態で、ケイ素酸化物からなるターゲットを用いて、ガスバリア性樹脂層の一面に酸化ケイ素からなる膜(厚み50nm)を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例2)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)100重量部、テトラエトキシシラン(B)12.0重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)34.5重量部、塩酸水溶液(塩酸0.99重量%含有)3.7重量部、イソプロピルアルコール5.8重量部、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイト(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E):含有量4.8重量%、平板状のベーマイト:Sasol社製 Disperal(登録商標)B−2、平均一次粒子径40nm、アスペクト比4.0)17.3重量部を混合することによりガスバリア性樹脂層形成用組成物を調製した以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得た。
(実施例3)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)100重量部、テトラエトキシシラン(B)16.7重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)48.3重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(D)29.6重量部、塩酸水溶液(塩酸0.99重量%含有)3.7重量部、イソプロピルアルコール8.1重量部、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイト(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E):含有量4.8重量%、平板状のベーマイト:Sasol社製 Disperal(登録商標)B−2、平均一次粒子径40nm、アスペクト比4.0)32.2重量部を混合することによりガスバリア性樹脂層形成用組成物を調製した。
次に、ガスバリア性樹脂層形成用組成物を、ポリエチレンテレナフタレートフィルム(厚み75μm)の一面にグラビアコーターにより塗布し、一面にガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布したポリエチレンテレナフタレートフィルムを、120℃のオーブン中に1時間放置することによって、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)のメトキシ基とテトラエトキシシラン(B)のエトキシ基と、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)のメトキシ基とを加水分解させて加水分解物を形成させた後、これらの加水分解物を脱水縮合させて脱水縮合物を形成させ、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物を得た。
次に、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に、電子線照射装置(ESI社製 製品名EC300/165/800)を用いて、加速電圧175kV、照射線量150kGyの条件で電子線を照射することによって、脱水縮合物、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)及び2−エチルヘキシルアクリレート(D)を、脱水縮合物の3−メタクリロキシプロピル基のエチレン性不飽和二重結合、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)のアクリロイル基のエチレン性不飽和二重結合、及び2−エチルヘキシルアクリレート(D)のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合させて、脱水縮合物の主鎖間をトリプロピレングリコールジアクリレート(C)が架橋するようにして形成されたラジカル重合体を得、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層(厚み5μm)を得た。
そして、RFマグネトロンスパッタにより、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層の表面温度を60℃に維持した状態で、ケイ素酸化物からなるターゲットを用いて、ガスバリア性樹脂層の一面に酸化ケイ素からなる膜(厚み50nm)を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例4)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイトに代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のα−アルミナ(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E):含有量0.3重量%、平板状のα−アルミナ:サンゴバン社製 SCIMOS、平均一次粒子径60nm、アスペクト比2.0)0.03重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例5)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイトに代えて、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のγ−アルミナ(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E):含有量7.4重量%、平板状のγ−アルミナ:サンゴバン社製 CAM 9150、平均一次粒子径60nm、アスペクト比3.0)46.0重量部を用いた以外は、実施例2と同様にして、ガスバリア性フィルムを得た。
(実施例6)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)100重量部、テトラエトキシシラン(B)44.1重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)85.3重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(D)91.1重量部、塩酸水溶液(塩酸0.68重量%含有)5.4重量部、及びイソプロピルアルコール2.0重量部を混合することによりガスバリア性樹脂層形成用組成物を調製した。
次に、ガスバリア性樹脂層形成用組成物を、ポリエチレンテレナフタレートフィルム(厚み75μm)の一面にグラビアコーターにより塗布し、一面にガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布したポリエチレンテレナフタレートフィルムを、120℃のオーブン中に1時間放置することによって、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)のメトキシ基とテトラエトキシシラン(B)のエトキシ基とを加水分解させて加水分解物を形成させた後、これらの加水分解物を脱水縮合させて脱水縮合物を形成させ、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物を得た。
次に、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に、電子線照射装置(ESI社製 製品名EC300/165/800)を用いて、加速電圧175kV、照射線量150kGyの条件で電子線を照射することによって、脱水縮合物、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)及び2−エチルヘキシルアクリレート(D)を、脱水縮合物の3−メタクリロキシプロピル基のエチレン性不飽和二重結合、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)のアクリロイル基のエチレン性不飽和二重結合、及び2−エチルヘキシルアクリレート(D)のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合させて、脱水縮合物の主鎖間をトリプロピレングリコールジアクリレート(C)が架橋するようにして形成されたラジカル重合体を得、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層(厚み5μm)を得た。
そして、RFマグネトロンスパッタにより、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層の表面温度を60℃に維持した状態で、ケイ素酸化物からなるターゲットを用いて、ガスバリア性樹脂層の一面に酸化ケイ素からなる膜(厚み50nm)を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例1)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)100重量部、テトラエトキシシラン(B)100重量部、塩酸水溶液(塩酸0.99重量%含有)3.7重量部、イソプロピルアルコール40.0重量部、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイト(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E):含有量2.9重量%、平板状のベーマイト:Sasol社製 Disperal(登録商標)B−2、平均一次粒子径40nm、アスペクト比4.0)30.0重量部を混合することによりガスバリア性樹脂層形成用組成物を調製した。
次に、ガスバリア性樹脂層形成用組成物を、ポリエチレンテレナフタレートフィルム(厚み75μm)の一面にグラビアコーターにより塗布し、一面にガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布したポリエチレンテレナフタレートフィルムを、120℃のオーブン中に1時間放置することによって、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)のメトキシ基とテトラエトキシシラン(B)のエトキシ基とを加水分解させて加水分解物を形成させた後、これらの加水分解物を脱水縮合させて脱水縮合物を形成させ、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物を得た。
次に、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に、電子線照射装置(ESI社製 製品名EC300/165/800)を用いて、加速電圧175kV、照射線量150kGyの条件で電子線を照射することによって、脱水縮合物をその3−メタクリロキシプロピル基のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合させて、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層(厚み5μm)を得た。
そして、RFマグネトロンスパッタにより、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層の表面温度を60℃に維持した状態で、ケイ素酸化物からなるターゲットを用いて、ガスバリア性樹脂層の一面に酸化ケイ素からなる膜(厚み50nm)を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(比較例2)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)100重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)20.0重量部、2−エチルヘキシルアクリレート(D)100重量部、塩酸水溶液(塩酸0.99重量%含有)3.7重量部、イソプロピルアルコール1.0重量部、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)で表面処理されてなる平板状のベーマイト(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(E)の含有量2.9重量%、平板状のベーマイト:Sasol社製 Disperal(登録商標)B−2、平均一次粒子径40nm、アスペクト比4.0)15.0重量部を混合することによりガスバリア性樹脂層形成用組成物を調製した。
次に、ガスバリア性樹脂層形成用組成物を、ポリエチレンテレナフタレートフィルム(厚み75μm)の一面にグラビアコーターにより塗布し、一面にガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布したポリエチレンテレナフタレートフィルムを、120℃のオーブン中に1時間放置することによって、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A)のメトキシ基を加水分解させて加水分解物を形成させた後、この加水分解物を脱水縮合させて脱水縮合物を形成させ、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物を得た。
次に、上記ガスバリア性樹脂層形成用組成物の硬化物に、電子線照射装置(ESI社製 製品名EC300/165/800)を用いて、加速電圧175kV、照射線量150kGyの条件で電子線を照射することによって、脱水縮合物、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)及び2−エチルヘキシルアクリレート(D)を、脱水縮合物の3−メタクリロキシプロピル基のエチレン性不飽和二重結合、トリプロピレングリコールジアクリレート(C)のアクリロイル基のエチレン性不飽和二重結合、及び2−エチルヘキシルアクリレート(D)のエチレン性不飽和二重結合においてラジカル重合させて、脱水縮合物の主鎖間をトリプロピレングリコールジアクリレート(C)が架橋するようにして形成されたラジカル重合体を得、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層(厚み5μm)を得た。
そして、RFマグネトロンスパッタにより、ポリエチレンテレナフタレートフィルムの一面に積層一体化されてなるガスバリア性樹脂層の表面温度を60℃に維持した状態で、ケイ素酸化物からなるターゲットを用いて、ガスバリア性樹脂層の一面に酸化ケイ素からなる膜(厚み50nm)を形成し、ガスバリア性フィルムを得た。
(評価)
上記で得られたガスバリア性フィルムの水蒸気透過率及び全光線透過率、並びにガスバリア性樹脂層の耐磨耗性をそれぞれ下記手順に従って測定した。結果を表1に示す。
(水蒸気透過率)
ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率(g/m2/24時間)を、JIS K7126(差圧法)に準拠した差圧式のガスクロマトグラフ法によって、ガス・蒸気透過率測定装置(GTRテック社製 装置名GTR−300XASC)を用いて、温度40℃、相対湿度90%の条件下で測定した。
(全光線透過率)
ガスバリア性フィルムの全光線透過率(%)を、JIS K7105に準拠し、ヘーズ測定器(日本電色工業(株)製 濁度計NDH2000)を用いて行った。
(耐磨耗性)
ガスバリア性樹脂層に酸化ケイ素膜を形成する前のガスバリア性樹脂層の耐磨耗性を下記手順に従って評価した。
ガスバリア性樹脂層の表面の光沢度[B0(%)]を、JIS K5600に準拠した光沢度計(日本電色工業(株)社製 VG7000)により測定した。次に、ガスバリア性樹脂層の表面に、#0000のスチールウールをこのスチールウールに250g/cm2の荷重を負荷しながら50往復させることにより、ガスバリア性樹脂層の表面を磨耗させた。その後、磨耗させたガスバリア性樹脂層の表面の光沢度[B1(%)]を上記と同様にして測定し、磨耗前後のガスバリア性樹脂層の表面の光沢度の変化率[(%)=B1/B0×100]を算出した。
表1において、◎、○、及び×はそれぞれ次の通りである。
◎:光沢度の変化率が50%未満であった。
○:光沢度の変化率が50%以上で且つ100%の範囲内であった。
×:光沢度の変化率が100%を超えた。
Figure 0005695505
10 合成樹脂フィルム
20 ガスバリア性樹脂層
30 無機化合物膜

Claims (6)

  1. 合成樹脂フィルム上に、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水を含むガスバリア性樹脂層形成用組成物を硬化させてなるガスバリア性樹脂層、及び無機化合物膜がこの順で積層一体化されてなることを特徴とするガスバリア性フィルム。
  2. ガスバリア性樹脂層形成用組成物が、有機溶媒を含むことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
  3. ガスバリア性樹脂層形成用組成物が、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理され且つ平均一次粒子径が1〜100nmであってアスペクト比が2.0〜10.0である平板状のアルミナ又はその水和物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のガスバリア性フィルム。
  4. 合成樹脂フィルム上に、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)、ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)、多官能(メタ)アクリレート(C)、酸触媒、及び水を含むガスバリア性樹脂層形成用組成物を塗布し、上記ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(A)が有するアルコキシ基と、上記ラジカル重合性基を有しないアルコキシシラン(B)が有するアルコキシ基とを加水分解及び脱水縮合させることにより脱水縮合物を含む硬化物を得た後、上記硬化物に活性エネルギー線を照射することによって上記脱水縮合物と、上記多官能(メタ)アクリレート(C)とをラジカル重合させることによりガスバリア性樹脂層を形成する工程と、
    上記ガスバリア性樹脂層上に、無機化合物膜を積層一体化させる工程と、
    を有することを特徴とするガスバリア性フィルムの製造方法。
  5. ガスバリア性樹脂層形成用組成物が、有機溶媒を含むことを特徴とする請求項4に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  6. ガスバリア性樹脂層形成用組成物が、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン(E)で表面処理され且つ平均一次粒子径が1〜50nmであってアスペクト比が2.0〜10.0である平板状の無機粒子を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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