しかし、上記特許文献1のように、電気接続箱をクロスメンバ上に支持したのでは、車両の前面衝突時に、電気接続箱に車両前側から大きな衝撃力が作用して電気接続箱が破損する可能性が高くなる。
一方、上記特許文献2のように、電気接続箱をインバータの後側に搭載する場合、インバータは、通常、車両前側からの衝撃力に対して破損しないような外装部材で保護されているが、このインバータ(外装部材)が衝撃力により後方へ移動してきた場合に、電気接続箱が、インバータ(外装部材)とダッシュパネルとの間に挟まれて破損する可能性がある。
ここで、電気接続箱が、車両前側からの衝撃力に対して破損しないように、電気接続箱の強度を、インバータと同様の強度に高めるようにすることが考えられるが、このようにするとコストアップを招いてしまう。
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電気接続箱を、エンジンルーム(車両駆動用のモータが配設される場合には、モータルームと呼ばれる場合もある)内に配設する場合に、電気接続箱の強度を高めなくても、車両の前面衝突時に電気接続箱の破損を防止しようとすることにある。
上記の目的を達成するために、本発明では、車両前部のエンジンルーム内に配設される車両用電気接続箱の搭載構造を対象として、上記電気接続箱は、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットにおける該外装部材の車幅方向一側の側面に取り付けられており、上記電気接続箱の車両前側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置し、上記電気接続箱の車両後側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両後側端よりも車両前側に位置し、上記電装ユニットの外装部材は、上記車両のダッシュパネルに対して車両前側に間隔をあけて配設され、上記ダッシュパネルには、ブレーキマスターシリンダが前方に突出するように配設され、上記ブレーキマスターシリンダは、上記電気接続箱の車両後側に位置しており、上記電気接続箱の車両後側端と上記ブレーキマスターシリンダの車両前側端との間隔が、上記電装ユニットの外装部材の車両後側端と上記ダッシュパネルとの間隔よりも広い、構成とした。
上記の構成により、電気接続箱の車両前側端が、電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置しているので、車両の前面衝突時に、電気接続箱には、車両前側から衝撃力は作用しない。すなわち、車両の前面衝突時に、電装ユニットの外装部材に、車両前側から衝撃力が作用したとしても、内部に高電圧系の電装部品が設けられる、電装ユニット(例えばインバータユニットや車載充電器ユニット)の外装部材は、通常、車両前側からの力(特に衝撃力)に対する強度及び剛性が、電気接続箱よりも高くなるように形成されているため、車両前側から衝撃力が作用したとしても破損し難く、たとえその外装部材が破損したとしても、その破損部分が、電気接続箱の車両前側端に相当する位置まで達しないように、電気接続箱の車両前側端の位置を適切に設定しておけば、電気接続箱が破損することはない。また、電装ユニットの外装部材が、車両前側から衝撃力により後退したとしても、電気接続箱が電装ユニットの外装部材に取り付けられているので、電気接続箱がその外装部材と共に後退する。したがって、車両の前面衝突時に、電気接続箱には、車両前側から衝撃力は作用せず、電気接続箱の破損を防止することができる。
また、上記電気接続箱の車両後側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両後側端よりも車両前側に位置しているので、電装ユニットの外装部材が、車両前側から衝撃力により後退して、ダッシュパネル等のような、外装部材の後方に配設された部材に当接したとしても、電気接続箱がその部材に当接するようなことはない。よって、電装ユニットの外装部材が後退したとしても、電気接続箱が破損するのを防止することができる。
ここで、上記電装ユニットの外装部材は、上記車両のダッシュパネルに対して車両前側に間隔をあけて配設され、上記ダッシュパネルには、ブレーキマスターシリンダが前方に突出するように配設され、上記ブレーキマスターシリンダは、上記電気接続箱の車両後側に位置しているので、車両の前面衝突時に、電装ユニットの外装部材がダッシュパネルに当接したときに、電気接続箱はダッシュパネルに当接しないが、ブレーキマスターシリンダに当接する可能性がある。しかし、電気接続箱の車両後側端とブレーキマスターシリンダの車両前側端との間隔が、電装ユニットの外装部材の車両後側端とダッシュパネルとの間隔よりも広いので、電装ユニットの外装部材がダッシュパネルに当接したときに、電気接続箱がブレーキマスターシリンダに当接するようなことはない。
上記車両用電気接続箱の搭載構造において、上記電気接続箱の車両後側の面において一部が他の部分よりも車両前側に位置しており、上記電気接続箱の車両後側の面の上記一部に、電力ケーブルが接続されるコネクタが設けられている、ことが好ましい。
このことにより、電気接続箱が電装ユニットの外装部材と共に後退したとしても、コネクタ及び該コネクタに接続される電力ケーブルが破損するのを防止することができる。また、その電力ケーブルの配索が容易になる。
上記車両用電気接続箱の搭載構造において、上記電気接続箱は、内部と外部とを連通する開口が設けられた箱本体と、該箱本体の開口を開閉する蓋部材とを有し、上記箱本体は、上記開口が車幅方向外側を向くように、上記電装ユニットにおける外装部材の車幅方向外側の側面に取り付けられている、ことが好ましい。
こうすることで、蓋部材を開けることで、電気接続箱内(箱本体内)の電気部品のメンテナンスを行うことができる。このとき、箱本体の開口が車幅方向外側の側面に位置するので、開口へのアクセスが容易であり、上記電気部品のメンテナンスを容易に行うことができる。
上記車両用電気接続箱の搭載構造において、上記電装ユニットは、上記外装部材の内部に上記電装部品としてのインバータが設けられたインバータユニットである、ことが好ましい。
すなわち、インバータユニットのインバータは、車両駆動用モータを駆動するための高電圧バッテリと接続されて、インバータには該高電圧バッテリの電圧がかかり、また、インバータは高価であることから、インバータユニットの外装部材は、車両の前面衝突時に出来る限り破損しないように構成されている。そして、このようなインバータユニットにおける外装部材の車幅方向一側の側面に電気接続箱が取り付けられて、その電気接続箱の車両前側端が、上記外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置しているので、車両の前面衝突時に、電気接続箱の破損を防止することができる。
また、本発明の別の車両用電気接続箱の搭載構造として、車両前部のエンジンルーム内に配設される車両用電気接続箱の搭載構造であって、上記電気接続箱は、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットにおける該外装部材の車幅方向一側の側面に取り付けられており、上記電気接続箱の車両前側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置し、上記電気接続箱の車両後側の面において一部が他の部分よりも車両前側に位置しており、上記電気接続箱の車両後側の面の上記一部に、電力ケーブルが接続されるコネクタが設けられているものとする。
この構成により、車両の前面衝突時に、電気接続箱には、車両前側から衝撃力は作用せず、電気接続箱の破損を防止することができるとともに、電気接続箱が電装ユニットの外装部材と共に後退したとしても、コネクタ及び該コネクタに接続される電力ケーブルが破損するのを防止することができる。また、その電力ケーブルの配索が容易になる。
また、本発明のさらに別の車両用電気接続箱の搭載構造として、車両前部のエンジンルーム内に配設される車両用電気接続箱の搭載構造であって、上記電気接続箱は、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットにおける該外装部材の車幅方向一側の側面に取り付けられており、上記電気接続箱の車両前側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置し、上記電気接続箱は、内部と外部とを連通する開口が設けられた箱本体と、該箱本体の開口を開閉する蓋部材とを有し、上記箱本体は、上記開口が車幅方向外側を向くように、上記電装ユニットにおける外装部材の車幅方向外側の側面に取り付けられているものとする。
この構成により、車両の前面衝突時に、電気接続箱には、車両前側から衝撃力は作用せず、電気接続箱の破損を防止することができるとともに、蓋部材を開けることで、電気接続箱内(箱本体内)の電気部品のメンテナンスを行うことができる。このとき、箱本体の開口が車幅方向外側の側面に位置するので、開口へのアクセスが容易であり、上記電気部品のメンテナンスを容易に行うことができる。
以上説明したように、本発明の車両用電気接続箱の搭載構造によると、電気接続箱が、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットにおける該外装部材の車幅方向一側の側面に取り付けられ、上記電気接続箱の車両前側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置していることにより、電気接続箱の強度を高めなくても、簡単な構成で、車両の前面衝突時に電気接続箱の破損を防止することができる。また、上記電気接続箱の車両後側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両後側端よりも車両前側に位置し、上記電気接続箱の車両後側端とブレーキマスターシリンダの車両前側端との間隔が、上記電装ユニットの外装部材の車両後側端とダッシュパネルとの間隔よりも広いので、車両の前面衝突時に、電装ユニットの外装部材が後退してダッシュパネルに当接したとしても、電気接続箱がブレーキマスターシリンダに当接するようなことはなく、電気接続箱が破損するのを防止することができる。
また、本発明の別の車両用電気接続箱の搭載構造によると、電気接続箱が、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットにおける該外装部材の車幅方向一側の側面に取り付けられ、上記電気接続箱の車両前側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置していることに加えて、上記電気接続箱の車両後側の面において一部が他の部分よりも車両前側に位置しており、上記電気接続箱の車両後側の面の上記一部に、電力ケーブルが接続されるコネクタが設けられていることにより、車両の前面衝突時に、電気接続箱の破損を防止することができるとともに、電気接続箱が電装ユニットの外装部材と共に後退したとしても、コネクタ及び該コネクタに接続される電力ケーブルが破損するのを防止することができる。
また、本発明のさらに別の車両用電気接続箱の搭載構造によると、電気接続箱が、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットにおける該外装部材の車幅方向一側の側面に取り付けられ、上記電気接続箱の車両前側端が、上記電装ユニットの外装部材の車両前側端よりも車両後側に位置していることに加えて、上記電気接続箱は、内部と外部とを連通する開口が設けられた箱本体と、該箱本体の開口を開閉する蓋部材とを有し、上記箱本体は、上記開口が車幅方向外側を向くように、上記電装ユニットにおける外装部材の車幅方向外側の側面に取り付けられていることにより、車両の前面衝突時に、電気接続箱の破損を防止することができるとともに、電気部品のメンテナンスを容易に行うことができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る車両用電気接続箱搭載構造が適用された電動車両(本実施形態では、電気自動車であり、以下、単に車両という)の前部のエンジンルーム(モータルームと呼ばれる場合もある)内におけるパワーユニット71の構成を示し、図1は、車両左前側かつ上側から見た図であり、図2は、車両後側かつ上側から見た図である。これら図1及び図2では、後述のインバータユニット31や車両用電気接続箱30(以下、電気接続箱30という)、ブレーキマスタシリンダ51等の記載は省略している。上記車両についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。また、図1、図3及び図5〜図7において、車両前側を矢印Frで示す。
上記エンジンルーム内の車幅方向両端部には、左右一対のフロントサイドフレーム8が前後方向に延びるように配設されている。これら左右のフロントサイドフレーム8間に、上記車両を駆動するパワーユニット71が配設されている。上記各フロントサイドフレーム8におけるパワーユニット71よりも後側部分には、サスペンションタワー5が取付固定されている。
上記各フロントサイドフレーム8の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部とされている。このキック部に対応する前後位置には、上記エンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル6が設けられている。このダッシュパネル6の上下方向中央部には、車幅方向に延びるレインフォースメント6aが設けられており、このレインフォースメント6aの両端部が左右のフロントサイドフレーム8にそれぞれ連結されている。
上記パワーユニット71は、モータを含むモータユニット78と、該モータユニット78のモータの駆動力を前輪へ伝達するための動力伝達機構(減速機構及び差動機構)を含むトランスアクスル73とが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなるものである。パワーユニット71の全体としての軸心は、車幅方向に延びている。本実施形態では、トランスアクスル73がモータユニット78の左側に位置する。
本実施形態では、上記モータユニット78は、モータ本体ユニット72と軸受ユニット74とモータ巻線切替ユニット77とがトランスアクスル73側からこの順に並ぶように一体に結合されたものである。
上記モータ本体ユニット72は、軸心が車幅方向に延びる略円筒状のモータハウジング72aを有し、このモータハウジング72a内に上記モータが配設されている。このモータは、図示は省略するが、ロータとステータとを有している。このロータは、モータ軸(つまり駆動軸)の周囲に、永久磁石を保持するロータコアが固定されてなり、モータ軸はモータハウジング72aと同軸上に位置して、車幅方向に延びている。一方、上記ステータは、モータハウジング72aの内面に上記ロータコアの周囲を覆うように配設されていて、コイルが巻かれている。
上記モータは3相交流モータであり、U相、V相及びW相の3つのコイルが中性点に共通接続されている。そして、各相のコイルは、複数の巻線が直列に接続されてなり、各相のコイルにおいて電流を流す巻線の数を変えることが可能に構成されている。すなわち、上記モータは、巻線切替を行うことが可能なものであり、車両の走行状態に応じて、電流を流す最適な巻線の数が決定される。この巻線切替は、上記モータ巻線切替ユニット77によってなされる。
モータ本体ユニット72の右側(トランスアクスル73とは反対側)の端部に、上記軸受ユニット74が一体に結合されている。この軸受ユニット74は、モータハウジング72aに結合された略円筒状の軸受ハウジング74aと、この軸受ハウジング74a内に配設され、上記モータ軸の右側端部を回転自在に支持する軸受とを有している。一方、上記モータ軸の左側端部は、モータハウジング72aの左側端部に設けられた軸受に回転自在に支持されている。このモータ軸は、トランスアクスル73(減速機構)の入力軸に連結される。この入力軸は、トランスアクスル73における後述のアクスルハウジング73aの減速機構収容部73b内において車幅方向に延びている。
トランスアクスル73は、アクスルハウジング73aを有し、このアクスルハウジング73aの右側端部と上記モータハウジング72aの左側端部とが複数のボルト75により結合されて結合部76とされている。
アクスルハウジング73aは、減速機構を収容する減速機構収容部73bと、該減速機構からモータの駆動力が伝達される差動機構を収容する差動機構収容部73cとを有する。差動機構収容部73cは、減速機構収容部73bの後側に位置している。そして、差動機構収容部73cの左右両側側面から、トランスアクスル73(差動機構)の出力軸(パワーユニット71の出力軸でもある)として、2本のジョイントシャフト81が左右両側へそれぞれ延びている(図2参照)。すなわち、ジョイントシャフト81は、パワーユニット71の後側において車幅方向に延びている。左側のジョイントシャフト81は、その中間部に配設された等速ジョイント82によって内側部81aと外側部81bとに2分割され、外側部81bが等速ジョイント84を介して、左側前輪に連結された左側のドライブシャフト83に連結されている。また、同様に、右側のジョイントシャフト81も、その中間部に配設された等速ジョイント82によって内側部81aと外側部81bとに2分割され、外側部81bが等速ジョイント84を介して、右側前輪に連結された右側のドライブシャフト83に連結されている。右側のジョイントシャフト81の内側部81aは、軸受ハウジング74aの後側下部に設けられたシャフト支持部74bに回転自在に支持されている。
上記軸受ユニット74の右側(モータ本体ユニット72とは反対側)の端部に、上記モータ巻線切替ユニット77が一体に結合されている。このモータ巻線切替ユニット77は、軸受ハウジング74aに結合された略円筒状の巻線切替ケース77aと、この巻線切替ケース77a内に配設され、上記モータの巻線切替を行うための回路とを有している。巻線切替ケース77aの右側端面には、該巻線切替ケース77aの右側開口を覆う閉塞部材77bが固定されている。
パワーユニット71の左右両端部は、左側及び右側マウント装置88,89を介して、左右のフロントサイドフレーム8にそれぞれマウント支持(弾性支持)されている。左側マウント装置88は、トランスアクスル73のアクスルハウジング73a上部に固定されたパワーユニット側ブラケット90と、左側のフロントサイドフレーム8に固定された車体側ブラケット91と、これら両ブラケット90,91間に配設された、ゴムブッシュを含むマウント本体(図示せず)とを有している。
また、右側マウント装置89は、パワーユニット側ブラケット93と、車体側ブラケット94と、これら両ブラケット93,94間(詳しくは、後述の第1及び第3ブラケット95,98間)に配設された、ゴムブッシュを含むマウント本体(図示せず)とを有している。上記パワーユニット側ブラケット93は、上記マウント本体に連結された第1ブラケット95と、第1ブラケット95と締結部材97(ボルト及びナット)を介して結合されかつ上記閉塞部材77bの上部と軸受ハウジング74aの上部において上側に突出した突出部74cの右側側面とに固定された第2ブラケット96とからなる。また、上記車体側ブラケット94は、上記マウント本体に連結された第3ブラケット98と、第3ブラケット98と締結部材100(ボルト及びナット)を介して結合されかつ右側のフロントサイドフレーム8に固定された第4ブラケット99とからなる。
図2に示すように、アクスルハウジング73aの差動機構収容部73cの右側下部には、トルクロッド101が後側に延びるように設けられている。このトルクロッド101の前端部は、ゴムブッシュ102を介して、車幅方向に延びる軸回りに回動可能にパワーユニット71の車幅方向中央部(アクスルハウジング73aの差動機構収容部73cの右側下部)に連結され、トルクロッド101の後端部は、ゴムブッシュ103を介して、車幅方向に延びる軸回りに回動可能に不図示のサスペンションクロスメンバの車幅方向中央部に連結されている。パワーユニット71の車幅方向両端部における上記弾性支持により、パワーユニット71全体が車幅方向に延びる軸回りに回動(揺動)することになるが、上記トルクロッド101は、パワーユニット71全体が上記軸回りに回動し過ぎるのを規制する。尚、上記サスペンションクロスメンバは、車幅方向に延びかつ左右の前輪サスペンションアーム17を支持するものであって、その左右両側端部は、左右のフロントサイドフレーム8にそれぞれ結合されている。
図3及び図4に示すように、上記エンジンルーム内における上記パワーユニット71の上側には、インバータユニット31、車載充電器ユニット32及び補機バッテリ33がこの順に車幅方向に並ぶように配設されている。また、上記エンジンルーム(ダッシュパネル6)よりも後側、つまり車室フロアの下側には、モータ本体ユニット72のモータを駆動するための高電圧(家庭用電源よりも高圧の例えば300V程度)の主バッテリ21が配設されている。この主バッテリ21は、複数のバッテリモジュールが、該バッテリモジュールを支持する支持部材と共にユニット化されたものである。尚、図3及び図4では、ダッシュパネル6(レインフォースメント6aを除く)や車室フロア、ブレーキマスタシリンダ51等の記載を省略している。
上記インバータユニット31は、略矩形箱状のインバータケース31aと、該インバータケース31a内に収容されたインバータ31bとを有していて、パワーユニット71のモータユニット78の上側に位置している。上記インバータ31bは、主バッテリ21からの直流電力を交流電力に変換して上記モータに電力を供給する。このインバータ31bは、主バッテリ21と接続されて、インバータ31bには主バッテリ21の高電圧がかかり、このことで、インバータ31bは高電圧系の電装部品に相当し、インバータケース31aは、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材に相当し、インバータユニット31は、その外装部材を有する電装ユニットに相当する。
図9に示すように、本実施形態では、主バッテリ21とインバータユニット31(インバータ31b)とは、電気接続箱30を介して接続されている。この電気接続箱30には、ヒューズやリレー等の電機部品が配設されている。主バッテリ21と電気接続箱30(上記電機部品)とは、2本の第1の電力ケーブル34(図3及び図4参照)を介して接続され、電気接続箱30(上記電機部品)とインバータユニット31(インバータ31b)とは、2本の第2の電力ケーブル35(図9にのみ示す)を介して接続されている。
また、電気接続箱30は、上記車載充電器ユニット32と第3の電力ケーブル36を介して接続されているとともに、上記車両の車室内の空調を行うエアコンの電動コンプレッサ57と第4の電力ケーブル37(図9にのみ示す)を介して接続されている。この電動コンプレッサ57は、主バッテリ21で駆動される高電圧系のものであって、モータユニット78の前側に位置して、軸受ユニット74の軸受ハウジング74aの前側部分に支持されている(図1参照)。
上記インバータ31bは、主バッテリ21から第1及び第2の電力ケーブル34,35を介して直流電力を入力して、その直流電力を交流電力に変換した後、その交流電力を、3本の第5の電力ケーブル42(図3及び図4参照)及び上記モータユニット78内に配設された不図示の配線を介して、モータ本体ユニット72のモータへ供給する。尚、第5の電力ケーブル42は、軸受ハウジング74aの後面におけるケーブル接続部74dからモータ本体ユニット72のモータハウジング72a内及びモータ巻線切替ユニット77の巻線切替ケース77a内に入り込む。
上記車載充電器ユニット32は、インバータユニット31と同様の略矩形箱状の充電器ケース32aと、該充電器ケース32a内に収容された充電器32bとを有していて、トランスアクスル73の左側端部(左側マウント装置88のパワーユニット側ブラケット90が固定された部分)を除く部分の上側に位置している。上記充電器32bは、上記車両の外部の電源(本実施形態では、100V又は200Vの家庭用電源)から電力を入力して主バッテリ21を充電する。この充電器32bも高電圧系の電装部品に相当し、車載充電器ユニット32は、内部に高電圧系の電装部品が設けられた外装部材を有する電装ユニットに相当する。車載充電器ユニット32(充電器32b)も、インバータユニット31と同様に、電気接続箱30を介して、主バッテリ21と接続されている。
車載充電器ユニット32は、第1の接続コード38(図9にのみ示す)を介して、上記車両の左側又は右側の側面を構成する部材(例えばフェンダ)に設けられた充電レセプタクル40(図9にのみ示す)と接続されている。この充電レセプタクル40は、一端部が家庭用電源に接続されるコードの他端部(充電プラグ)が接続されるものである。そして、上記充電器32bは、家庭用電源からの電力を、その電圧が主バッテリ21の充電に適した電圧になるように昇圧した状態で、第3の電力ケーブル36及び第1の電力ケーブル34を介して主バッテリ21に供給する。
また、車載充電器ユニット32の充電器ケース32a内には、上記充電器32bに加えて、主バッテリ21の電圧を降圧して上記補機バッテリ33に供給するためのDC/DCコンバータ32c(図9にのみ示す)が配設されている。このDC/DCコンバータ32cは、第2の接続コード39(図9にのみ示す)を介して上記補機バッテリ33と接続されている。この補機バッテリ33は、主バッテリ21及び家庭用電源よりも低電圧(例えば12V)のものである。そして、DC/DCコンバータ32cは、主バッテリ21が充電されていないときに、主バッテリ21から、第1及び第3の電力ケーブル34,36を介して入力した電力を、その電圧が補機バッテリ33の充電に適した電圧になるように降圧した状態で、第2の接続コード39を介して、補機バッテリ33に供給する。
上記補機バッテリ33は、上記車両の補機(上記電動コンプレッサ57を除く)に電力を供給するものある。この補機としては、例えば電動パワーステアリング用モータ、ワイパーモータ、パワーウインドモータといった各種のアクチュエータ等である。この補機バッテリ33は、トランスアクスル73の左側端部(左側マウント装置88のパワーユニット側ブラケット90が固定された部分)の上側に位置していて、不図示のブラケットを介して左側のフロントサイドフレーム8に取付固定されている。
図5及び図6に示すように、上記エンジンルーム内における上記インバータユニット31ないし車載充電器ユニット32の前側及び後側には、車幅方向に延びる前側及び後側ステー45,46がそれぞれ配設されている。前側ステー46の両端部は、左右のフロントサイドフレーム8(車体部材)にそれぞれ取付固定され、後側ステー46の両端部は、左右のサスペンションタワー5(車体部材)にそれぞれ取付固定されている。尚、後側ステー46の右側端部近傍は、右側のフロントサイドフレーム8にも取付固定されている。
インバータユニット31は、インバータケース31aの前後両端部において前側及び後側ステー45,46の取付部45a,46aにそれぞれ取り付けられて支持されている。また、車載充電器ユニット32は、充電器ケース32aの前後両端部において前側及び後側ステー45,46の取付部45b,46bにそれぞれ取り付けられて支持されている。前側ステー45における車載充電器ユニット32及びインバータユニット31の取付部分は、左右のフロントサイドフレーム8から延びる左右の補強ステー47によってそれぞれ補強支持されている。
図3、図4及び図6〜図8に示すように、上記電気接続箱30は、上記インバータユニット31におけるインバータケース31aの車幅方向外側の側面(右側側面)に、複数のブラケット61(図7参照)を介して取り付けられている。そして、電気接続箱30の前側端が、インバータケース31aの前側端よりも後側に位置し、電気接続箱30の後側端が、インバータケース31aの後側端よりも前側に位置している。つまり、電気接続箱30は、インバータケース31aの車幅方向外側の側面において前後方向中間部に位置している。
上記電気接続箱30は、内部と外部とを連通する開口30cが設けられた鉄製の箱本体30aと、該箱本体30aの開口30cを開閉する鉄製の蓋部材30bとを有している。箱本体30aは、上記開口30cが車幅方向外側を向くように、インバータケース31aの車幅方向外側の側面に取り付けられている。すなわち、開口30cは、箱本体30aの車幅方向外側の側面に位置している。蓋部材30bは、複数のネジ62により箱本体30aに取付固定されている。この蓋部材30bの着脱時には、工具によりネジ62を回す必要があるが、箱本体30aの車幅方向外側には、右側のフロントサイドフレーム8や右側のサスペンションタワー5等の車体部材との間に空間が確保されているので、ネジ62を容易に回すことができる。また、蓋部材30bを外したときに箱本体30aの開口30cが車幅方向外側を向いているので、開口30cへのアクセスが容易であり、電気接続箱30内(箱本体30a内)の電気部品のメンテナンスを容易に行うことができる。
尚、電気接続箱30をインバータケース31aの車幅方向内側の側面(左側側面)に取り付け、開口30cが箱本体30aの車幅方向内側の側面に位置するようにしてもよい。但し、開口30cへのアクセスの容易性や電気部品のメンテナンスの容易性を考慮すると、本実施形態のように、電気接続箱30をインバータケース31aの車幅方向外側の側面に取り付けて、開口30cが箱本体30aの車幅方向外側の側面に位置するようにすることが好ましい。
上記インバータケース31aの上面部は鉄製であり、残りの部分はアルミニウム製であり、これにより、インバータユニット31の軽量化を図っている。インバータケース31aは、前側からの力(特に車両の前面衝突時に生じる衝撃力)に対する強度及び剛性が、電気接続箱30よりも高くなるように形成されている。上記のように、電気接続箱30の前側端が、インバータケース31aの前側端よりも後側に位置するので、車両の前面衝突時にインバータケース31aに前側から衝撃力が作用する。本実施形態では、インバータケース31aに前側から所定値よりも小さい衝撃力が作用した場合には、インバータケース31aが破損しないようになされている。一方、インバータケース31aに前側から所定値以上の衝撃力が作用した場合には、インバータケース31aが破損する前に、上記前側及び後側ステー45,46が後側へ変形するようになっており、この変形により、インバータケース31aが後退する。このことにより、インバータケース31aが破損することはない。したがって、車両の前面衝突時に、電気接続箱30には前側から衝撃力が作用せず、電気接続箱30が破損することはない。ここで、インバータケース31aが破損する場合であっても、その破損部分が、電気接続箱30の前側端に相当する位置まで達しないように、電気接続箱30の前側端の位置を適切に設定しておけば、電気接続箱30が破損することはない。
尚、車載充電器ユニット32の充電器ケース32aも、インバータケース31aと同様の構成であり、このことから、電気接続箱30を、充電器ケース32aの車幅方向一側の側面(車幅方向外側の側面(左側側面)が好ましい)に取り付け、電気接続箱30の前側端が、充電器ケース32aの前側端よりも後側に位置するようにしてもよい。
上記電気接続箱30の後面において一部が他の部分よりも前側に位置している。すなわち、電気接続箱30の後面の下部が、前側に凹んで、上部よりも前側に位置している。この下部がコネクタ部30dとされている。このコネクタ部30dに、第1〜第4の電力ケーブル34〜37が接続される樹脂製のコネクタ63が設けられている。本実施形態では、2本の第1の電力ケーブル34は別々に上側2つのコネクタ63にそれぞれ接続され、第2〜第4の電力ケーブル35〜37(それぞれ2本ずつ合計6本ある)は、1本の電力ケーブル43(図7参照)としてまとめられて最下部のコネクタ63に接続される。この電力ケーブル43は、途中で、第2〜第4の電力ケーブル35〜37に分岐する。尚、第1〜第4の電力ケーブル34〜37のコネクタ部への接続形態は、本実施形態のものには限られない。また、コネクタ部30dは、電気接続箱30の後面の上部にあってもよく、電気接続箱30の上面や下面にあってもよい。
上記インバータユニット31及び車載充電器ユニット32は、上記ダッシュパネル6に対して前側に間隔をあけて配設されている。上記のように、インバータケース31a(充電器ケース32a)に前側から上記所定値以上の衝撃力が作用した場合には、インバータケース31a(充電器ケース32a)が後退する。このため、インバータケース31a(充電器ケース32a)は、ダッシュパネル6に当接する場合がある。
ここで、本実施形態では、図7及び図8に示すように、ダッシュパネル6には、車両の乗員によるブレーキペダル踏力を増幅する増幅装置52を介して、ブレーキマスターシリンダ51が配設されている。このブレーキマスターシリンダ51は、増幅装置52により増幅されたブレーキペダル踏力に応じてブレーキ圧力を生成するものであって、電気接続箱30の後側に位置している。すなわち、前側から見て、ブレーキマスターシリンダ51が電気接続箱30と重なっており(本実施形態では、ブレーキマスターシリンダ51の一部が電気接続箱30と重なっている)、このため、インバータケース31aの後退に伴って電気接続箱30が後退すると、その電気接続箱30がブレーキマスターシリンダ51に当接する可能性がある。しかし、本実施形態では、電気接続箱30の後側端とブレーキマスターシリンダ51の前側端との間隔が、インバータケース31aの後側端とダッシュパネル6との間隔よりも広く設定されており、このことから、インバータケース31aがダッシュパネル6に当接するまで後退したとしても、電気接続箱30がブレーキマスターシリンダ51に当接するようなことはない。また、コネクタ部30dが、電気接続箱30の後側端よりも更に前側に位置するので、コネクタ63及び該コネクタ63に接続される電力ケーブル34,43の破損を防止することができる。
尚、図7及び図8において、53は、ブレーキマスターシリンダ51の上部に、前後方向に延びた状態で接続され、ブレーキマスターシリンダ51によって各車輪のブレーキに供給される作動油が貯溜されたリザーバタンクである。このリザーバタンク53の前端は、前後方向において、電気接続箱30の後側端と略同じ位置にあるが、リザーバタンク53と電気接続箱30とは車幅方向に互いにずれているので、電気接続箱30の後退時に電気接続箱30がリザーバタンク53に当接することはない。
したがって、本実施形態では、電気接続箱30を、インバータユニット31におけるインバータケース31aの車幅方向外側の側面に取り付け、電気接続箱30の前側端が、インバータケース31aの前側端よりも車両後側に位置するようにしたので、車両の前面衝突時に、電気接続箱30に前側から衝撃力が作用しないようにして、電気接続箱30の破損を防止することができる。
また、電気接続箱30の後側端が、インバータケース31aの後側端よりも前側に位置するとともに、電気接続箱30の後側端とブレーキマスターシリンダ51の前側端との間隔が、インバータケース31aの後側端とダッシュパネル6との間隔よりも広く設定されているので、インバータケース31aがダッシュパネル6に当接するまで後退したとしても、電気接続箱30がブレーキマスターシリンダ51に当接するのを防止することができる。尚、電気接続箱30の後側に、ブレーキマスターシリンダ51がなくて、ダッシュパネル6しかない場合、電気接続箱30の後側端が、インバータケース31aの後側端よりも前側に位置することで、インバータケース31aがダッシュパネル6に当接するまで後退したとしても、電気接続箱30がダッシュパネル6に当接することはなく、ダッシュパネル6との当接による電気接続箱の破損を防止することができる。
よって、電気接続箱30をエンジンルーム内に配設するに際して、電気接続箱30の強度を高めなくても、簡単な構成で、車両の前面衝突時に電気接続箱30の破損を防止することができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、電気接続箱30の後側端が、インバータケース31aの後側端よりも前側に位置しているが、電気接続箱30の後側に、ブレーキマスターシリンダ51がなくて、ダッシュパネル6しかない場合、電気接続箱30の後側端が、インバータケース31aの後側端と同じか又は該後側端よりも後側に位置していてもよい。この場合、例えば、インバータケース31a及び電気接続箱30が後退しても、電気接続箱30がダッシュパネル6に当接しないように、ダッシュパネル6の電気接続箱30の当接予想位置に、後側に凹む凹部を形成しておけばよい。或いは、ダッシュパネル6に、インバータケース31aのみが当接する突起部を形成しておいてもよい。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。