JP5690556B2 - 個人認証装置 - Google Patents

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Description

本発明は生体を用いた個人認証装置に関し、特に、生体を透過した光を撮像して得られる血管パターンを利用して認証する技術に関する。
近年、個人情報に対するセキュリティが重要視されている。セキュリティを守る個人認証技術として、バイオメトリクス認証が注目されている。バイオメトリクス認証は、人間の生体情報を用いて認証する技術であり、利便性及び機密性に優れている。
従来のバイオメトリクス認証技術として、指紋、虹彩、音声、顔、手の甲の静脈又は指静脈を用いる認証が知られている。このうち、静脈を用いるバイオメトリクス認証では、生体の内部情報を用いるため、耐偽造性に優れている。
以下、血管パターンを用いた生体認証について、特に指静脈認証装置について記載する。指静脈認証装置は、指に赤外光を照射する。赤外光は、指内部で散乱した後、外部へ透過する。そして、指静脈認証装置は、指の掌側に透過した赤外光を撮像する。このとき、血液中のヘモグロビンは、周囲の組織に比べて赤外光をより多く吸収する。そのため指の掌側に透過した光は、静脈部分を通り抜けたために減衰された弱い光と、静脈のない部分から抜け出た減衰していない強い光とのコントラスト差を持っている。よって、指静脈認証装置が撮像した画像には、指の掌側の皮下に分布する血管(指静脈)が暗い影のパターン(指静脈パターン)として可視化される。指静脈認証装置は、この指静脈パターンの特徴を予め登録しておき、認証時に提示された利用者の指静脈パターンと予め登録した特徴との相関を求めることによって、個人認証を行う。
上記のような透過光を撮影する方式の静脈認証装置は、コントラストの高い鮮明な静脈パターンを撮影できるため、認証精度が高い、登録未対応率(FTER:Failure To Enroll Rate)が低いなどの利点がある。
この種の指静脈認証の従来例として、例えば特許文献1に記載の認証装置が知られている。これは指の左右から赤外光を照射することにより指静脈画像を撮影する。また、特許文献2では、撮影した画像から指のしわ情報を除外し、認証精度を向上させる手段が開示されている。
特開2004−265269号公報 特開2009−172064号公報
指や掌を用いる静脈認証は登録未対応率の低い認証として知られているが、稀に、脈認証に適さない指等が存在することが分かっている。認証に適さない指とは、静脈パターンを鮮明に撮影することのできない指のことである。
前述の通り血管パターン認証では、認証に指を用いた場合、指の掌側の皮膚を透過してきた光を撮影する。このとき掌側の皮膚が厚くなっていると、皮膚を透過する過程で光が散乱するため、静脈などの血管パターンのコントラストが弱くなる。そのため鮮明な血管パターンを撮影できない。また、血管パターンを撮影する際に、掌側表面の指紋のパターンが写りこんでしまう場合がある。これは、指紋の隆起部分と谷部分とで光の透過率が異なるためである。指紋のしわが深くなるほど透過する光の量の差が大きくなるため指紋パターンの写りこみが増える。
一般に、乾燥した指や肌荒れのある指は皮膚が硬く、厚くなっている。そのため鮮明なパターンを撮影できない。また、乾燥した指や肌荒れのある指は、指紋の凹凸が深くなっていることも多い。そのため、静脈撮影時に指紋も写りこんでしまう。よってこのような指で認証を行うと精度が低下する。
しかしながら、従来の認証装置には利用者の指が静脈認証に適した指であるかどうかを評価する機能が備わっていなかった。そのため、認証に適さない指のデータが登録された場合でも利用者や管理者は気付くことができない。よって、登録処理を中断する、別の指で登録手続きをやり直す、などの対策をとることが不可能であった。
本発明では高精度な認証装置の実現のために、指の静脈認証への適性を評価することができる個人認証装置、個人認証システム、個人認証を実行する演算装置を提供することを目的とする。
本発明で開示する代表的な発明は以下の通りである。
光源と、生体を透過した光を撮像する撮像部と、撮像部で撮像される血管パターンに基づき認証を実行する処理部とを有し、
処理部が、撮像画像に基づく体表面情報と血管パターンにおける血管情報とから、認証適性評価を行うことを特徴とする。
本発明によれば、体表面の情報と、血管情報とに基づいて、利用者の個人認証への適性を評価でき、適性評価結果を踏まえた使い勝手の良い認証装置、システムを提供できる。
また、登録候補である生体部位の中から最も認証に適した部位を選択することも可能となり、これにより高精度な認証を可能とする。
本発明の第一の実施例の指静脈認証システムの構成概略図である。 第一の実施例に係わる、データ取得装置形状を示す図である。 第一の実施例に係わる、プログラムで実施される登録処理を説明するための図である。 第一の実施例に係わる、プログラムで実施される認証処理を説明するための図である。 第一の実施例に係わる、プログラムで実施される光量調整処理を説明するための図である。 データ取得装置で撮影した静脈画像の例を示す図である。 登録からの時間経過とともに変化する一致率の例を示す図である。 データ取得装置で撮影した静脈画像の例を示す図である。 第一の実施例に係わる、プログラムで実施される指の認証適性評価処理を説明するための図である。 第一の実施例に係わる、プログラムで実施されるしわレベル算出処理を説明するための図である。 第一の実施例に係わる、プログラムで実施される血管レベル算出処理を説明するための図である。 第一の実施例に係わる、しわレベルと血管レベルの算出方法を示す図である。 第一の実施例に係わる、しわレベルの算出手順を示す図である。 第一の実施例に係わる、血管レベルの算出手順を示す図である。 第一の実施例に係わる、指の認証適性レベルの算出方法を示す図である。 データ取得装置で撮影した静脈画像の例を示す図である。 データ取得装置で撮影した静脈画像の例を示す図である。 第三の実施例に係わる、プログラムで実施される登録処理を説明するための図である。 登録日当日の一致率と指の認証適性レベルとの散布図の一例を示す図である。 データ取得装置で撮影した静脈画像の例を示す図である。 第五の実施例に係わる、プログラムで実施される認証処理を説明するための図である。 登録からの時間経過とともに変化する一致率の例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(a)は、第一の実施例の認証システムの構成図である。本認証システムは、血管画像抽出装置であり生体の静脈等の血管パターンを含む画像を取得するデータ取得装置2と、画像入力部18、認証処理部10、記憶装置14、表示部17、情報入力部19、音声出力部6及び電源部15を含む。
データ取得装置2は、一つの筐体であり、光源3、撮像装置4、指置き台26を備える。光源3は、例えば、赤外線発行ダイオード(Light Emitting Diode:LED)であり、指置き台26上に提示された指1に赤外光を照射する。撮像装置4は、提示された指1を撮像する。
画像入力部18は、撮像装置4で撮像された画像を、処理部として機能する認証処理部10へ入力する。尚、画像入力部18において、撮像装置4で撮像された画像から血管パターン像を抽出する処理を行い、抽出した血管パターン画像を認証処理部10に入力する構成としても良い。
また、この画像入力装置18とデータ取得装置2とを一体として、血管画像抽出装置として構成しても良いし、画像入力装置18は認証処理部10と一体として構成されていても良いことは言うまでもない。
認証処理部10は、中央処理部(Central Processing Unit:CPU)11、メモリ12、種々のインタフェース(Interface:IF)13を含む。CPU11は、メモリ12に記憶されているプログラム100を実行することによって各種処理を行う。メモリ12は、画像入力部18から入力された画像を記憶する。また、メモリ12は、CPU11が実行するプログラム100を一時的に記憶する。インタフェース13は、認証処理部10の外部の装置と接続されている。具体的には、インタフェース13は、データ取得装置2、記憶装置14、表示部17、情報入力部19、音声出力部6、画像入力部18等と接続する。
記憶装置14は、利用者の登録データ220とプログラム100を記憶する。図1(b)の登録データ120は、利用者を照合するための情報であり、例えば、血管パターンの画像等である。この血管パターンの画像は、指の掌側の皮下に分布する血管を暗い影のパターンとして撮像した画像である。
表示部17は、例えば、液晶ディスプレイ等であり、認証処理部10から受信した情報を表示する。情報入力部19は、例えば、キーボード、タッチパネル等であり、利用者から入力された情報を認証処理部10に送信する。音声出力部6はスピーカ等であり、認証処理部10から受信した情報を、音声で発信する。電源部15は、乾電池や外部電源であり、データ取得装置2や認証処理部10を駆動するための電力を供給する。
以下では生体部位に指を用い、血管パターンに静脈パターンを用いた例を主に説明するが、これに限らず、掌の血管パターンを用いても良いし、その他生体部位を用いても良いことは言うまでもない。
本認証システムでは、利用者がデータ取得装置2に指1を提示すると、光源3から指1に対して赤外光が照射される。光は指1の内部で散乱し、指1を透過した光が撮像部4に入射する。入射した光は撮像部4により電気信号に変換され、画像として認証処理部10に取り込まれる。取り込まれた画像はメモリ12に記憶される。また、記憶装置14に保存されている登録データ220とプログラム100が記憶装置14よりメモリ12に格納される(図1(b))。CPU11はメモリ12に格納されたプログラム100に従って、入力画像から認証データ240を作成し、登録データ220との照合を行う。照合処理では比較する2つのデータ間の相関を算出し、その値に応じて登録されているデータと一致するかを判定する。この判定結果を利用して個人を認証する。認証結果は表示部17に表示を行う、または音声出力部6から音声で知らせる。
図2は第一の実施例における、データ取得装置2の外観を示す図である。図2(a)は装置2の上面図、図2(b)は装置2に指を提示したときの上面図、図2(c)は図2(b)のA−A断面図、図2(d)は図2(b)のB−B断面図である。
装置2の筺体上面部には、利用者が認証対象の指を撮像領域に導くための提示領域を構成する指置き台26が設けられている。指置き台26には開口部20が設けられている。このとき、指置き台26に対して生体部位を接触させると位置決めも容易にできることになるが、必ずしも接触している必要は無く、撮像領域内に指を提示出来ていればよい。
開口部20には、開口部20を覆うように赤外透過フィルタ24を設置しても良い。赤外透過フィルタ24を設けることで、赤外光以外の不要な光が装置内に進入するのを防ぐことが出来る。また、ほこりやごみなどの異物が装置内に入るのを防ぐことが出来る。フィルタ24は指置き台26よりも数ミリ程度低い位置に設置し、指1とフィルタが接触しないようにすると良い。これにより、指の押し付けによって血管パターンが消えたり、変形したりするのを防ぐことができる。またフィルタ24に汚れが付着するのを防ぐことができる。開口部20の直下には、撮像部4が設置されている。
指1が提示されると、一または複数の光源素子から成る光源3が指1に赤外光を照射する。その光は指内部に到達するとあらゆる方向に散乱する。指内部で散乱した光の一部は開口部20の上方付近に到達し、さらにその一部は指の内部から指の外部に向け進行する。この光は開口部20、フィルタ24を通り抜け、撮像部4によって撮影される。この光は指1の内部から指1の掌側の表面を透過しているため、静脈部分を通り抜けたために減衰された弱い光と、静脈のない部分から抜け出た減衰していない強い光とのコントラスト差を持っている。従って、この光を撮像すると、その映像には開口部20の真上に位置する部分領域の指静脈パターン画像が映し出される。これにより指1の部分領域における指静脈パターンが獲得される。
開口部20の上方に位置する指1の部分領域、すなわち被撮像部分の指静脈パターンを鮮明に撮影するためには、以下の光学的な条件を満たす必要がある。まず、指外部から被撮像部分の皮膚表面に照射された光の反射光が撮影されないようにすること、指静脈の存在する深さまで到達していない散乱光が撮影されないようにすることである。この条件が満たされない場合、指静脈パターンの情報を持たない光が指静脈部分とそれ以外の生体組織とのコントラストを低下させる。さらに、指表面のしわなどの不要な映像が鮮明に映り込んでしまうため指静脈パターンが見えにくくなる。そこで、本実施例では開口部20の大きさは指1の幅、長さより小さくし、利用者が指1を提示した際に、開口部20が指1で完全に覆われるようにする。これにより指を透過しない光が、直接装置内に進入するのを防ぐことができる。
装置2には指1の位置決めのための突起21を設けても良い。突起21を設けることで、利用者は指先を突起21に合わせて指を提示する(図2(d))。突起21により、指1が規定位置よりずれた位置に置かれてしまうことを防ぐことができる。
開口部20の位置は指の提示される領域内であるが、利用者が突起21に合わせて指を置いたときに、指の第一関節周辺を撮影できる位置とすることが望ましい。これは、指の関節部分はそれ以外の部分より皮膚が薄く静脈が撮影しやすいためである。
指置き台26の指先側、根元側にはそれぞれタッチセンサ23を設けても良い。これによって利用者の指が提示されたことを検知することができる。
装置2には静脈撮影用の照明である赤外光源3が設置されている。赤外光源3は一または複数のLEDなどの光源素子で構成される。
光源の設置位置は、指1の提示される領域(指の長軸方向)に対して左右側方である。また、設置する高さや角度については、好ましくは指の高さの半分よりも低い位置とする。さらにこのとき、光源の設置角度αは0度<α<90度の範囲とし、斜め上に向けて光を照射する。以上のように、光源の設置位置を低くすることで装置を薄型にすることができる。また、指の左右側に斜め上に傾けて設置することで、指の高い位置に光を照射できるため、鮮明な静脈画像が撮影できる。尚、光源の設置位置は、指1の指幅より外側に設置することが望ましい。これにより、指1の上半面、すなわち指の甲側に光を照射できる。もし、光源を指幅より内側に設置してしまうと、指1の指の下反面、すなわち指の掌側に光が照射されるため、撮像画像の鮮明度が低下する。
また、光源の配置形態は左右側方に限らず、複数・単数いずれでも良く、生体の提示領域に対して上方(筺体設置面と対向する位置)に配置しても良いし、設置される生体の提示領域よりも下方に配置しても良い。またさらに、設置される生体の提示領域よりもユーザ側から見て奥側に配置させても良い。
以下では図3を用いて、CPU11が実行するプログラム100で実施される登録処理手順の一実施例について説明する。登録処理では、はじめに、装置に指が撮像領域内に提示された(載せられた)か否かを判定する指提示検知処理(S101)を実施し、指が提示された場合には適切な光量を光源から照射するための光量調整処理(S103)を実施する。光量の調整完了後、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)を行う。次に、登録対象の指の認証への適性を評価(S120)する。
言い換えるなら、CPU11は特徴抽出手段、特徴照合手段のみならず、光量制御手段や、指の認証への適性を評価する手段としても機能する処理部である。指の認証適性を評価した後、認証装置は、評価結果を利用者に提示する(S122)。利用者は提示された評価結果を見て、そのまま登録処理を続行するか、中断するかを選択する。利用者が登録処理続行を選択した場合、認証システムは、特徴データ作成処理(S109)で作成した特徴データを記憶装置14に保存し、登録処理が完了する。利用者が登録処理中断を選択した場合は、特徴データを破棄し、登録処理を終了する。
上記フローについては、認証処理部10で実行しても良いし、S101〜S108の処理については画像入力部18で実行する等、画像入力部と処理分担をしても良い。
以下では、上記フローの詳細について記す。
はじめに、指提示検知処理(S101)について説明する。指提示検知処理は装置2の撮像領域内に指が提示されたか否かを判定する処理である。判定の方法には、指置き台26に設置されたタッチセンサ23や光センサを用いる方法や、画像処理による方法、タッチセンサと画像処理を組み合わせる方法などを用いることができる。
ここでは画像処理による方法の一例について述べる。画像処理による方法は指検知用センサが不要で部品点数を減らしコスト削減ができる利点がある。まず、指静脈パターン撮影の照明として用いられる前述の光源3を一定周期で点滅させる。装置2に何も置かれていない場合、光源3が点灯しても消灯しても、光を散乱する物体が無いため、光源3から発せられた光は撮像部4に映り込むことはない。従って、光源3が点灯している状態と消灯している状態における撮像部4の画像の比較を行った場合、その輝度値には大きな変化はない。
一方、指1が装置上に提示された場合、光源3から照射された光は指1により散乱し撮像部4に映り込む。従って、光源3が点灯している状態と消灯している状態との画像の輝度値に大きな変化が生じる。そこで、点灯時と消灯時に撮影した画像の変化量を、画像入力部18を介して認証処理部10に送り、CPU11で計算し、保持することで、指の提示を検知することが可能である。
指の提示が検知されると、光源3から照明用の光量が出力される。提示される指の太さや皮膚の厚みなどによって、静脈撮影に必要な光量は異なる。そこで、最も鮮明な画像が得られるように光源3の光量を調整する(S103)。指静脈の撮影では、撮像画像の平均輝度値が輝度諧調の中心付近の値になっている場合に、鮮明な静脈の画像を得ることができる。例えば、画像の平均輝度が低すぎるときは、血管とそれ以外のコントラストが悪いため、鮮明ではない。逆に平均輝度が高すぎるときは、飽和している部分が発生し血管パターンを抽出できない。つまり、光量調整S103では、輝度諧調の中央値を目標輝度値とし、撮像画像の平均輝度値が目標値に近づくように光量を調整する。この光量調整手法として、本実施例では、画像の平均輝度値を常に監視し、その値に応じて光量をフィードバック制御しながら目標輝度値に近づける手法を用いる。
図5に光量調整処理(S103)のフローチャートを示す。指の提示検知直後に、あらかじめ設定しておいた初期光量値L0で光源3を点灯させる(S1031)。初期光量L0は、標準的な指を置いたときに目標輝度値の画像が撮影可能になる光量値を予め測定し、その値を設定しておく。次に、撮像部4で画像を撮影する(S1032)。この画像の平均輝度値V0を算出する(S1033)。算出した平均輝度値V0が、目標輝度値であるか判別する(S1034)。目標輝度値に達していない場合は、次の光量値を再設定し、光源3を点灯する(S1035)。次の光量値の算出は、光量値と撮像画像の平均輝度値とが比例関係にあるという特徴を利用して行なう。光量値再設定後、画像撮影(S1032)、平均輝度値算出(S1033)、平均輝度値の判定(S1034)を再度実施する。このフローを繰り返し、目標の輝度値に近づけていく。S1034の平均輝度値の判定で目標輝度値に達した場合は、光量調整を完了する。
次に、血管パターンの抽出処理を実施する(S108)。血管パターンの抽出処理(S108)とは、カメラ4で撮影した画像から、認証に不要な情報(ノイズやしわなど)を除外し、血管パターン部分のみを検出する処理である。血管パターンの抽出方法として、線分を強調するエッジ強調フィルタやマッチドフィルタを用いる方法、線成分を追跡することで線パターンを抽出する方法、画像の断面プロファイルにおける輝度値の局所的な窪み位置を抽出する方法などを用いることができる。
その後、抽出した結果から特徴データを作成する(S109)。特徴データとして、特徴抽出処理結果の画像そのものを特徴量とする方法、分岐点や端点を検出する方法などを用いることができる。画像そのものを特徴量とする場合は、データサイズを小さくするために、特徴抽出後の画像に縮小処理を適用してもよい。
次に、登録対象の指の認証適性評価(S120)を行う。認証適性評価処理(S120)は、装置2に提示されている指1がどの程度指静脈認証に適しているかを評価する処理である。
認証適性の評価手法としては、光量調整処理(S103)の処理過程や光量調整処理完了時にカメラ4で撮影した画像を利用する方法や、特徴データ作成処理(S109)で作成した特徴データを利用する方法などがある。カメラ4で撮影した画像を利用する場合は,撮像画像中のしわ,ノイズ,汚れ,血管パターン等に着目し指の適性を評価する。特徴データを利用して認証適性を評価する場合は,特徴データ内に残ったしわ,ノイズ,汚れ等と,抽出した血管パターンに着目し、適性を評価する。特徴データ処理(S109)ではしわ等の除去を行っているが,全てのしわ等を完全に除外することは難しい。また,処理時間短縮のためにしわ除去処理を簡略化したり省略したりする場合もある。そのため特徴データ中にもしわ等が含まれる場合がある。このような理由で特徴データ内に残っているしわ等と血管パターンとを検出して指の適性を評価する。
認証適性評価処理(S120)でCPU11が算出する結果は、認証適性の有り/無しの2段階の結果でも良いし、認証への適性度合によって複数段階にレベル分けしどのレベルに属するかという結果でも良い。
指の認証適性評価(S120)が完了すると認証システムは評価結果を利用者に提示する(S122)。評価結果の提示処理(S122)では、CPU11で評価した結果がIF13を介して表示部17または音声出力部6に伝達され、表示部17や音声出力部6から利用者に向けて結果が提示される。
利用者や認証システムの管理者は、提示された結果をもとに、登録処理を続行するか否かを情報入力部19を介して選択する(S124)。例えば、認証に適していないとの判定が提示された場合は、利用者の判断により登録処理を終了することができる。登録処理の終了後は、再度登録処理を開始し別の指で登録処理をやり直すことも可能である。登録処理を中断するか否かの判断結果は、情報入力部19を用いて利用者から認証システムに伝達できる。
利用者が登録処理を中断することを選択した場合、認証システムは特徴データを破棄し、登録処理は終了する。処理S124で、利用者が登録処理を続行することを選択した場合、登録データの保存処理(S126)へ進む。
登録データの保存処理(S126)では、特徴データ作成処理(S109)で生成した特徴データを記憶装置14に保存する。なお、保存する前に特徴データに対し暗号化処理を施しても良い。
上述のように、指の認証適性を評価し結果を提示することで利用者が登録指の特性を知ることが可能になる。登録処理対象の指が認証に不向きな指であると判定された場合、管理者または利用者は登録処理を中断し、別の指で再度登録し直すことが可能である。これにより、認証に適さない指の登録を防ぐことができ、高精度な認証システムを実現できる。または、登録候補の全ての指を順番に装置に提示し全ての指の適性評価結果を確認した後に、静脈認証に最も適していると判断された1本を登録しても良い。これにより、より認証に適した指を登録することができ、高精度な認証を実現できる。
利用者が登録候補の複数の指の中からより良い指を選択するようにするためには、指の認証適性評価処理(S120)で算出される結果が多段階にレベル分けされた結果であることが望ましい。
このように、品質を分けて登録に適した指を複数提示できることで、利用者にとって使いやすい指を選択させることが可能となる。
以下では図4を用いて、プログラム100で実施される認証処理手順の一実施例について説明する。
認証処理では、指提示検知処理(S101)、光量調整処理(S103)、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)を行う。その後、事前に登録されている特徴データとの照合処理(S112)を実施し、登録されているか否かを判定する。
上記の認証処理の処理手順のうち、指提示検知処理(S101)、光量調整処理(S103)、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)の4つの処理は、登録処理と同様の手法を用いる。以下では照合処理(S112)について述べる。
照合処理(S112)では、認証処理中の特徴データ生成処理(S109)で生成した特徴データと、登録時に作成、保存した特徴データとを比較照合する。画像そのものを特徴データとしている場合では、画像同士を重ね合わせ、画素値同士の比較を実施して一致率を計算する。分岐点や端点を特徴データとしている場合はそれらの位置、個数、分岐線の角度、相対的な距離などの情報を比較することで一致率を算出する。ここで得られた一致率を用いて、同一指であるか別指であるかを判定する。判定するための認証閾値33は事前に統計的に算出しておくことが可能である。認証閾値33よりも高い一致率となった場合は登録者と判定し、低い場合は登録されていない指が提示されたとみなし認証を拒否する。
登録者であると判定された場合は、認証後の処理として例えばロックの解除等を行う(S114)。
以降では、指の認証適性評価処理(S120)について説明する。認証適性評価処理(S120)は、装置2に提示されている指1がどの程度指静脈認証に適しているかを評価する処理である。本実施例では「登録日から長期間経過後に認証した場合でも本人拒否が発生しにくい指」のことを認証に適した指と呼ぶ。
ここでは、認証に適した指の特徴について説明する。静脈データ取得装置2で撮影される画像には時間経過や外部環境などによって大きく変動する情報と変動しにくい情報とが含まれる。
例えば、撮像画像中の指紋やしわ、切り傷の跡、指表面に着いた汚れ等の体表面情報、カメラのノイズなどは、時間経過や外部環境の変化によって変化する情報である。
しわは、しわ自体の形状が時間経過により変化する。さらに、指の置き方や光の当たり方によって不鮮明になったりはっきりと写ったりする場合がある。
一方、血管パターンに基づく血管情報は指の内部の情報であるため時間が経過しても変動しにくい。特に幅が太い血管や濃く写る血管は時間経過による変動が小さく、外部環境の影響も受けにくい。
変動が大きい情報(しわや指紋)を多く含む指で登録・認証を行うと、登録時と認証時の特徴の一致率が低くなるため本人拒否が発生する。逆に、変動しにくい情報を多く含む指で認証した場合は、登録時と認証時の特徴の一致率が高くなるため本人拒否は発生しない。言い換えると、認証に適した指とは変動の大きい特徴よりも変動しにくい特徴を多く含んでいる指のことである。
図6と図8に、認証に適した指と適さない指の具体例を示す。
図6は、同一日に、同一装置で、同一被験者の異なる指を撮影した静脈画像を示す。図6(a)は血管パターンが鮮明である。対して図6(b)は血管パターンが不鮮明である。この2つの指の一致率を定期的に測定していった結果を図7に示す。測定に利用した認証システムでは認証閾値33を一致率74%の値に設定しているため一致率が74%よりも低くなると別指と判定される。図7より、指1と指2の両方の一致率が時間経過とともに変化していっていることがわかる。しかしながら、血管パターンが鮮明な指1の一致率は一貫して高い値を示しており、指1は安定して認証できることがわかる。それに対し、指2は、○で囲んだ地点の一致率が認証閾値33の74%を下回っており、認証ができなくなっている。これらのことより、血管パターンが鮮明な指は、時間経過や外部環境に影響されず安定して認証ができることがわかる。なお、指1の一致率の平均値は82%であり、指2の一致率の平均値は73%であった。
図8は長期運用の認証に適さない指の例である。図8(a)と図8(b)は同一指を撮影した画像である。2枚の画像は撮影した日が異なる。図8(b)は図8(a)の撮影日から約1ヶ月経過後に撮影したものである。図8(a)の画像にはしわや指紋のパターンがはっきりと写り込んでいる。しかし、図8(b)の画像にはしわがほとんど写り込んでいない。これは時間経過や外部環境が影響した結果である。図8(a)と図8(b)の画像の一致率は56%であった。実施例1の認証装置では認証閾値33を一致率74%に設定しているため、図8(a)の指と図8(b)の指とは異なる指と判定される。以上のことから、図8(a)のようにしわのみがはっきりと写る指は、図8(b)のように変化するため登録する指として好ましくない。
上記の図6〜図8の具体例からも、しわ等の変動しやすい特徴を含まず、血管パターンをより多く撮影できる指ほど認証に適していると言える。そこで、指の認証適性評価処理(S120)では登録時に撮影した画像中のしわと血管とを評価し認証へ適性度を算出する。
本実施例では「しわレベル」と「血管レベル」という2つの値を定義する。しわレベルは撮像画像中のしわ等の量と濃さを示す値である。画像中に多数のしわが濃く写っているほどしわレベルは高くなる。血管レベルは撮像画像中の血管の量と濃さを示す値である。多数の血管が濃く、鮮明に写っているほど血管レベルは高くなる。
しわレベルが高ければ高いほどその指は認証に適さない。また、血管レベルが高ければ高いほどその指は認証に適している。よって、指の認証適性評価処理(S120)で算出される値(認証適性レベル)は、しわレベルと血管レベルを用いて以下のように表わすことができる。
指の認証適性レベル=m×血管レベル−n×しわレベル ・・・・・ (数1)
式(1)で示すように、認証に悪影響のあるしわレベルと認証に良い影響のある血管レベルとを組み合わせて評価することで、指の認証への適性をより正確に評価することができる。
図9に指の認証適性評価処理(S120)の処理手順を示す。はじめに、しわレベルを算出し(S310)、続いて血管レベルを算出(S350)する。最後に、指の認証適性レベルの式(1)に基づいて認証適性の評価結果を算出する(S370)。
図10にしわレベル算出処理(S310)の処理手順を示す。しわレベル算出処理(S310)は、光量調整完了後に撮影した画像に対して実施する処理である。まず、しわの中心位置を検出し(S311)、次に、検出されたしわの濃さを算出(S313)する。最後に画像中の全てのしわの濃さの総和を求める(S315)。以下ではしわレベル算出処理の詳細について述べる。
はじめにしわの中心位置を検出する(S311)。図12(a)の画像を例に、しわ中心の検出方法を説明する。図12(a)は装置2で撮影した静脈画像の例である。また、図12(b)は図12(a)の画像中の直線x1−x2上の輝度値のグラフである。図12(a)の画像には、血管パターン以外に指のしわ等も写っている。図12(a)の画像上で、しわは細い黒い線として観測される。画像上の黒い細い線は図12(b)のグラフ上の幅の狭い窪みに対応する。従ってしわを検出するためには図12(b)の輝度のグラフ上から幅の狭い窪みを検出すればよい。図12(a)の画像からしわの中心位置を検出した結果は、図13(a)のようになる。
次に、しわの濃さを算出する(S313)。図12(a)の画像上で濃く写っているしわは、図12(b)のグラフ上の窪みの深さが深い。つまり、しわの濃さはしわの窪みの深さに比例する。そこで、しわの濃さの算出処理(S313)では、しわ検出処理(S311)で検出したしわの窪み深さを算出する。図13(b)は図12(b)の輝度のグラフ中の1つのしわの窪みを拡大表示したものである。本実施例では、図13(b)で示すように、しわの中心点と中心から±w画素離れた左右の点との輝度差を算出し、これをしわの深さと定めた。しわの濃さ算出処理では(S313)画像中の全てのしわについてそれぞれの濃さ、すなわち、窪みの深さを求める。
最後に、画像中の全てのしわの濃さの総和を算出し、算出された値をしわレベルとする(S315)。
図11に血管レベル算出処理(S350)の処理手順を示す。まず、血管の中心位置を検出し(S351)、次に、検出された血管の濃さを算出(S353)する。最後に画像中の全ての血管の濃さの総和を求める(S355)。以下では血管レベル算出処理の詳細について述べる。
はじめに血管の中心位置を検出する(S351)。図12(a)の画像上で、血管は太い黒い線として観測される。太い黒い線は、図12(b)のグラフ上の幅の広い窪みの位置と対応する。従って血管を検出するためには図12(b)の輝度のグラフ上から幅の広い窪みを検出すればよい。図12(a)の画像から血管の中心位置を検出した結果は、図14(a)のようになる。
次に、血管の濃さを算出する(S353)。血管の濃さの算出は、しわの濃さの算出(S313)と同様に、しわの中心点と、中心から一定距離離れた左右の点との輝度差を算出する方法を利用できる(図14(b))。
最後に、画像中の全ての血管の濃さの総和を算出し、算出された値を血管レベルとする。(S355)。
以下では認証適性レベル算出の式(1)のパラメータであるmとnの決定方法を説明する。指の認証適性レベルは「長期運用時の本人拒否の発生しにくさ」を推定することを目標としている。そこ でmとnの決定のために、事前にサンプルとして複数の指の登録画像と長期間の認証結果とを収集する。収集した認証結果を元に各指の本人拒否の発生しにくさを算出する。本人拒否の発生しにくさとは、認証の成功率や、認証時の一致率のことである。続いて、収集した登録画像から式(1)に従って各指の認証適性レベルを算出する。算出した認証適性レベルと本人拒否の発生しにくさとの相関が高くなるようにmとnの値を調整する。最も相関が高くなったときのmとnを式(1)の最終的なパラメータ値とする 。
mとnを適切な値に調整すると、指の認証適性レベルとその指の本人拒否の発生しにくさとの相関を高くすることが可能になる。これにより、登録時の画像から指の認証適性レベルを算出するだけで、登録指の本人拒否の発生しにくさを推定することが可能になる。
以下では式(1)のパラメータmとnの決定手順の具体例を示す。この例ではmとnの値の決定のために約40本分の指の登録画像と長期間の認証結果(一致率)を収集した。まず、登録画像は図2のデータ取得装置2にて撮影した。その後、登録日当日から約50日間にわたりほぼ毎日認証を行い、そのときの照合処理の結果(一致率)を記録した。収集完了後、同一指の50日分の一致率の平均値を算出した。算出した一致率の平均値がその指の本人拒否の発生しにくさを示す値となる。その後、mとnの値の組み合わせを変えながら認証適性レベルを算出し、認証適性レベルと本人拒否の発生しにくさとの相関が高くなるようなmとnの値を探す。図15に一致率平均値と認証適性レベルとの散布図を示す。縦軸は50日分の一致率の平均値、横軸は指の認証適性レベルを示す。図15の例では式(1)のmとnの値をm=4、n=1とした。このとき一致率平均値と認証適性レベルとの相関係数はR=0.86となり、高い相関があることがわかった。よってmとnの値はm=4、n=1に決定する。
指の認証適性評価処理(S120)で出力する値は、式(1)で算出した値をそのまま利用しても良いし、式(1)で算出した値を元に、閾値処理にて数段階にレベル分けを行い、どのレベルに属するかを返しても良い。
本実施例では、指の認証への適性を評価するために、認証に悪影響のあるしわレベルと認証に良い影響のある血管レベルとを組み合わせて評価した。これにより、指の認証への適性をより正確に評価することができる。図16と図17に例を示す。図16(a)と図17(a)は異なる指の登録画像である。これらの登録画像からしわの位置を検出した結果が図16(b)と図17(b)である。また、血管の位置を検出した結果が図16(c)、図17(c)である。
図16(a)と図17(a)の2枚の登録画像のしわの写り具合は同程度である。そのため、もし、しわのみに着目して指の適性を評価してしまうと2つの指の適性はどちらも同程度と判定される。しかし、実際に長期間の認証の記録をとった結果、図17(a)の指の方が本人拒否の発生頻度が低く認証への適性が高いことがわかった。図17(a)の指の本人拒否発生頻度が少なかったのは登録画像中により多くの血管パターンを含んでいるからである。このように、登録画像中のしわのみに着目しても正確な適性評価ができない場合がある。
一方、認証に悪影響のある特徴(しわ等)と、認証に良い影響のある特徴(血管パターン)とを組み合わせて評価すると、図16、図17の例のように、しわの写り方が同等で血管パターンの写り方に違いがある指の優劣を区別することが可能になる。これにより複数の登録候補の中からより認証に適した指を選ぶことが可能になる。
上記の例では、血管レベルを算出するために画像中の血管の量と濃さを評価したが、その他にも、血管の太さや血管の長さ、血管パターンの複雑度などを評価しても良い。また、しわレベル算出についても、しわの量と濃さ以外に、しわの幅やしわの長さなどを評価してもよい。評価に用いる特徴量を増やし、それらを適切に組み合わせることで、より正確な認証適性評価を実現できる。
このように撮像画像に基づく体表面情報と血管情報とから、認証適性評価を行うことで、長期間使用が見込まれる場合においても、経時変化の影響の受けにくい、安定した認証を実行することが可能となる。
本実施例では認証システムを短期間運用したときに本人拒否が発生しない指のことを認証に適した指と呼ぶ。例えば、認証装置をロッカーに組み込んだ場合、利用者は登録から数時間以内に認証することが多い。実施例2の認証適性評価はこのような短期運用向けの認証適性評価である。
短期運用向けの認証適性評価では、実施例1で示した認証適性レベル算出の式(1)を利用することが可能である。式(1)を短期運用向けとして利用する場合はmとnのパラメータを短期運用向けに調整しなおす。具体的には、事前に複数の指について短期運用時の本人拒否の発生しにくさを調査し、本人拒否の発生しにくさと調査対象の指の認証適性レベルとの相関が高くなるように、mとnを調整する。
図19は、登録日当日の一致率と指の認証適性レベルとの散布図の一例である。図19の散布図には約40指分のデータが掲載されている。縦軸は登録日当日に認証したときの一致率である。横軸は上述の式(1)に基づいて算出した認証適性レベルである。式(1)のパラメータm、nは、登録日当日の一致率と認証適性レベルとの相関が最も高くなる値に決定した。具体的には、式(1)のmとnはm=10、n=1とした。
以上のように、指の認証適性レベル算出の式(1)はパラメータを変えるだけで、長期運用時用時と短期運用時の両方の適性評価に利用することが可能である。
なお、短期運用時は、mに対するnの比重を小さくすると良い。指のしわは、登録日から長期間経過すると形状や写り方が大きく変化するが、登録日からの経過時間が短い場合はほとんど変化しない。よって、登録日当日の認証では、しわが認証に与える悪影響は小さい。式(1)のパラメータ決定ではしわの影響度を示すパラメータnの比率を小さくすると、一致率と認証適性レベルとの相関が高くなる。
例えば、長期運用を想定する実施例1ではmとnの比率をm:n=4:1とした。一方、短期運用を想定する実施例2ではm:n=10:1とした。このように、短期運用時に切り替える際はしわの影響度を示すパラメータnの値を小さくする。
本実施例では短期間の装置使用を考慮した内容を示したが、本実施例及び実施例1の技術内容を併せ持つ装置として、適宜パラメータを設定可能とするか、もしくは短期使用モード及び長期使用モードの少なくとも2つのモードを持たせるように構成しても良い。
図18は指の認証適性処理(S120)を利用した登録処理フローの一実施例である。以下では図18を用いて利用者の複数本の登録候補の指の中から最も認証に適した指を選ぶ手順を説明する。
まず、利用者は登録候補の指のうち、いずれか一本の指を静脈データ取得装置2に提示する。認証システムは、装置2に指が提示されたか否かを判定する指提示検知処理(S101)を実施する。指の提示を検知すると、光量調整処理(S103)、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)を行う。その後、提示されている指の適性を評価する(S120)。このとき認証システムは認証適性評価の結果(認証適性レベル)と特徴データとをメモリ12に保存する。その後、再び指の提示検知処理(S101)に戻る。利用者は二本目の指を提示する。認証システムは二本目の指に対して、指の提示検知(S101)、光量調整(S103)、血管パターン抽出(S108)、特徴データ作成(S109)、指の認証適性評価(S120)を順に実施する。その後、評価結果と特徴データとをメモリ12に保存する。登録候補の全ての指の評価が完了するまで、図18の処理101〜処理S120のフローを繰り返す。登録候補の全ての指の評価が完了すると登録指の選択処理(S130)に遷移する。登録指の選択処理(S130)では、メモリ12に保存した全ての登録候補の指の認証適性レベルを比較する。比較した結果、最も認証適性レベル高かった指を登録指に決定する。その後、登録指に選ばれた指の特徴データを保存する(S126)。最後に、利用者に対し、登録指に選ばれた指の情報を示す(S132)。具体的には、登録指が装置2に何番目に提示した指だったのかを提示する。付随して、登録指の認証適性評価の結果や登録指以外の指の認証適性評価の結果などを提示してもよい。
上記のフローに従うことで複数の登録候補の指の中から最良の指を選んで登録することが可能になる。これにより高精度な認証を実現できる。
図20(a)は静脈データ取得装置2で撮影した画像の一例である。図20(b)は画像の分割方法の一例である。図20(c)は図20(b)の分割方法に従って分割した画像である。
指の認証適性評価処理(S120)は図20(c)のような指の部分領域に対して実施することもできる。部分領域に認証適性評価を実施すると、認証精度の劣化を抑えながら登録データの容量を小さくすることができる。以下では、登録データ小容量化のための処理フローを説明する。
登録処理では図20(a)のように指の広範囲の静脈を撮影する。撮影後,画像を分割し、図20(c)のような複数個の部分画像を得る。部分画像に対して認証適性評価を行い,複数の部分画像の中から最も認証適性レベルが高い領域を一つ選ぶ。その後,選択した領域の画像から特徴データを生成する。生成した特徴データを記憶装置14に保存する。このとき、選択された領域の位置(座標)を併せて記憶装置14に保存する。図20(c)の例では部分画像412が最も認証適性レベルが高いと判断され,部分画像412から生成した特徴データと部分画像412の座標(Xa,Ya)を記憶装置14に保存する。本実施例ではこのように特徴データと位置(座標)を組み合わせたデータのことを登録データ220と呼ぶ(図20(f))。
認証処理では登録処理と同様に指全体の静脈を撮影する。撮影した認証画像の中から登録データと同じ座標の画像を切り出す(図20(d))。または,登録時と認証時との指の位置ずれを考慮し一定量のマージンを持たせた領域を切り出しても良い(図20(e))。これにより位置ずれに強い認証が可能になる。切り出した画像を元に認証用の特徴データを生成し,登録データと認証データと照合する。照合結果から同一指か別指かを判定し、認証処理を終了する。
上述のように撮像画像の一部の領域のみを使って登録データを生成することで登録データサイズを小さくすることができる。これにより登録可能な登録データ数を増やすことができる。登録データに利用する範囲を単純に狭めてしまうと認証精度が大きく劣化するが,本実施例では撮像画像中から認証適性レベルの高い領域を探し,その領域の画像を元に登録データを生成した。これにより登録データサイズの小容量化と高精度な認証とを両立させることが可能になる。
図20の例では4つの部分領域から最も認証適性レベルの高い1領域のみを選んで登録データを生成したが,認証適性レベルの高い順に複数の領域を選んで登録しても良い。認証処理では、登録データと対応する複数の部分領域の画像を元に複数個の認証データを生成し、対応する領域同士を照合する。
認証装置を長期間利用すると本人拒否が発生する場合がある。その原因の一つとして指の置き方の変化が挙げられる。登録直後や登録から数日以内に認証を行う場合,利用者は登録時の指の置き方を覚えているため登録時とほぼ同じ置き方を再現できる。しかし登録日から一定の期間が経過すると登録時の指の置き方を忘れてしまうため、登録時と同じ置き方を再現できない場合がある。また、多くの利用者は、登録直後や数日間は認証装置を慎重に扱う傾向があるため、位置決め用の突起21に合わせて正しい位置に指を提示できる。しかし、認証装置を使い続けるうちに指の置き方が徐々に乱雑になり、正しい置き方で指を提示しなくなる場合がある。照合処理(S112)では指の置き方の違いをある程度許容する手法を用いるが、置き方が大きく変化し位置ずれや押し付けの許容範囲を超えてしまうと同一指であっても別指と判定される 。
この問題を解決するために、認証時の指の置き方を評価し、評価結果を利用者に提示する。図21は本人拒否を予防するための認証処理フローの一実施例である。以下では認証処理フローの説明する
利用者が指を提示すると、指提示検知処理(S101)、光量調整処理(S103)、パターン抽出処理(S108)、特徴データ作成処理(S109)を実施する。その後、照合処理(S112)を行い登録時と認証時の画像の一致率を算出する。算出した一致率が認証閾値33よりも低い値だった場合は別指と判定する。別指と判定された場合はその結果を利用者に提示し認証処理を終了する。算出した一致率が認証閾値以上の値だった場合は同一指と判定する。同一指と判定した場合は、指の置き方評価(S140)を行う。指の置き方の評価(S140)では認証時の指の置き方が登録時と同じであるかを評価する。その後、利用者に結果を提示する(S142)。結果提示方法は、音声出力部6から音を出して提示する方法や、表示部17に結果を表示する方法などがある。その後、認証後の処理として例えばロックの解除等を行う(S114)。
指の置き方の評価(S140)方法としては、登録データ220と認証データ240の静脈パターンの位置を比較して指の位置ずれ量を算出し、位置ずれの大きさに応じて置き方を判定する方法を利用できる。また、別の手法として、照合処理(S112)で算出した一致率を利用する方法がある。登録時と認証時の指の置き方の変化が小さい場合は照合処理で算出された一致率も高い値になる。指の置き方が大きく変化していれば一致率は低くなる。よって一致率を利用すれば認証時の指の置き方を評価できる。一致率が置き方評価の閾値45よりも高い場合は登録時とほぼ同じ置き方ができていると判定し、一致率が閾値45よりも低ければ置き方が大きく変化したと判定する。なお、置き方評価の閾値45は認証閾値33よりも高い値に設定する。
図22は本実施例の置き方評価を採用した認証システムを長期間利用した時の認証結果(一致率)を測定したものである。縦軸は一致率、横軸は登録日からの日数を示す。この測定では1指分の2か月間の一致率を記録した。なお、測定に用いた認証システムの認証閾値33は一致率が70%のところに設定した。置き方評価の閾値45は一致率が75%に設定した。また測定に用いた認証システムは一致率が置き方評価の閾値45を下回ったときに被験者に対し音声で警告を出す。
図22のグラフから○印で示す日は一致率が置き方評価閾値45を下回った日である。この日は利用者に対して警告が出ている。図22のグラフから警告が出た後は一致率がやや高まることが確認できた。これにより指の置き方を評価し利用者に知らせることが一致率低下を防止することに役立つことが確認できた。
以上のように、指の置き方を評価しその結果を提示することで利用者は指の置き方が登録時と変わってきていることに気付くことができる。利用者は指を丁寧に置くようにしたり、登録をやり直したりすることで本人拒否発生を未然に防ぐことが可能になる。
本発明の認証装置は、携帯電話端末やパーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、パーソナルコンピュータ(PC)などのモバイル機器や、金庫やロッカー、自動車、入退出管理装置等にも適用可能である。また、記述の実施例は一例であって、本発明が上述した実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
1…指、2…静脈データ取得装置、3…光源、4…撮像部、6…音声出力部、10…認証処理部、11…CPU、12…メモリ、13…インタフェース(IF)、14…記憶装置、15…電源部、17…表示部、18…画像入力部、19…情報入力部、20…開口部、21…位置決め用突起、22…遮光壁、23…タッチセンサ、24…赤外透過フィルタ、26…中央指置き台、31…光(光路)、32…隙間、42…光源3の照射軸、43…指置き台28の左端、100…プログラム、220…登録データ、240…認証データ、98、99…アクリル板、410…撮像画像、412…撮像画像、414…撮像画像、416…撮像画像、33…認証閾値、45…置き方評価の閾値
S101…指提示検知、S103…光量調整、S108…パターン抽出処理、S109…特徴データ作成処理、S112… 照合処理、S114…認証後の処理、S120…指の認証適性評価、S122…適性評価結果の提示、S126…登録データの保存、S130…登録指の選択、S132…登録指選択結果の提示、S140…指の置き方の評価、142…置き方評価結果の提示、S1031…初期光量点灯、S1032…画像撮影、S1033…平均輝度算出、S1035…次の光量値の算出

Claims (18)

  1. 生体に光を照射する光源と、
    生体を透過した光を撮像する撮像部と、
    前記撮像部によって撮像される血管パターンに基づき認証を実行する処理部と、
    を有する個人認証システムにおいて、
    前記処理部は、前記撮像部によって撮像された画像から取得した、
    生体のシワの量及びシワの濃さに基づく体表面情報と、前記血管パターンに基づく血管情報とから、認証適性評価を行うことを特徴とする個人認証システム。
  2. 請求項1に記載の個人認証システムにおいて、
    前記処理部は、前記画像から前記血管パターンを抽出し、
    当該抽出した血管パターンを用いて認証を実行することを特徴とする個人認証システム。
  3. 請求項1または2の何れかに記載の個人認証システムにおいて、
    前記処理部は、
    認証の適正度合いによって分類された複数のレベルのうち、前記認証適正評価が何れの前記レベルに該当するかを算出することを特徴とする個人認証システム。
  4. 請求項1から3迄の何れかに記載の個人認証システムにおいて、
    前記体表面情報および前記血管情報を記憶する記憶部を有することを特徴とする個人認証システム。
  5. 請求項1から4迄の何れかに記載の個人認証システムにおいて、
    前記認証適性評価の結果を提示する提示手段を備えることを特徴とする個人認証システム。
  6. 請求項5に記載の個人認証システムにおいて、
    前記提示手段は表示部もしくは音声提示部であることを特徴とする個人認証システム。
  7. 生体に光を照射する光源と、
    生体を透過した光を撮像する撮像部と、
    前記撮像部で撮像される血管パターンに基づき認証を実行する処理部と、
    を有する個人認証装置において、
    前記処理部は、前記撮像部によって撮像された画像から取得した、
    生体のシワの量及びシワの濃さに基づく体表面情報と、前記血管パターンに基づく血管情報とから、認証適性評価を行うことを特徴とする個人認証装置。
  8. 請求項7に記載の個人認証装置において、
    前記処理部は、前記画像から前記血管パターンを抽出し、
    当該血管パターンを用いて認証を実行することを特徴とする個人認証装置。
  9. 請求項またはに記載の個人認証装置において、
    前記処理部は、
    認証の適正度合いによって分類された複数のレベルのうち、前記認証適正評価が何れの前記レベルに該当するかを算出することを特徴とする個人認証装置。
  10. 請求項7から9迄の何れかに記載の個人認証装置において、
    前記体表面情報および前記血管情報を記憶する記憶部を有することを特徴とする個人認証装置。
  11. 請求項7から10迄の何れかに記載の個人認証装置において、
    前記認証適性評価の結果を提示する提示手段を備えることを特徴とする個人認証装置。
  12. 請求項11に記載の個人認証装置において、
    前記提示手段は表示部もしくは音声提示部であることを特徴とする個人認証装置。
  13. 生体を透過した光を撮像する撮像部によって撮像された画像から、血管パターンを含む画像を抽出する血管画像抽出装置に接続される演算装置において、
    前記画像から取得した、生体のシワの量及びシワの濃さに基づく体表面情報と、前記血管パターンに基づく血管情報とから、認証適性評価を行うことを特徴とする演算装置。
  14. 請求項13に記載の演算装置において、
    前記血管画像抽出装置によって抽出された前記血管パターンを用いて認証を実行することを特徴とする演算装置。
  15. 請求項13または14に記載の演算装置において、
    認証の適正度合いによって分類された複数のレベルのうち、前記認証適正評価が何れの前記レベルに該当するかを算出することを特徴とする演算装置。
  16. 請求項13から15迄の何れかに記載の演算装置において、
    前記体表面情報および前記血管情報を記憶する記憶部を有することを特徴とする演算装置。
  17. 請求項13から16迄の何れかに記載の演算装置において、
    前記認証適性評価の結果を提示する提示手段を備えることを特徴とする演算装置。
  18. 請求項17に記載の演算装置において、
    前記提示手段は表示部もしくは音声提示部であることを特徴とする演算装置。
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