JP5687825B2 - 歪み抑制治具及び鋼製壁部の補修方法 - Google Patents
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Description
ここで、発電設備などに使用されている熱交換器の水管は、経時的に、燃焼ガスやガス中のダストによる摩耗や腐食等により、水管表面で減肉が発生する。このため、水管表面を保護するために、金属やセラミックなどの材料を溶融して吹き付ける溶射法などが採用される。
ここで、肉盛溶接は、その原理上、施工時に多量の熱が対象に入熱するため、対象とする構造物に熱歪みを生じる。従って、対象がボイラ構造物のように寸法精度が要求される場合、熱歪みを抑える肉盛溶接方法が求められている。
また、特許文献2に記載の技術もある。この従来技術は、溶接と同時に裏側から加熱してやることで、熱歪みを抑制する溶接法である。
本発明は、冷却媒体が通過する配管が壁部の一部を構成する鋼製壁部を対象として肉盛り溶接する際における、当該鋼製壁部の歪み発生を簡易に抑制可能な技術を提供するものである。
上記鋼製壁部における他方の壁面に対向し且つ上記冷却配管の配列方向に延びる補強部材本体と、その補強部材本体から上記鋼製壁部に延びて延在方向先端部を上記鋼製壁部の他方の壁面に仮固定される複数のリブ部材と、から構成することを特徴とするものである。
次に、請求項3に記載した発明は、請求項1又は請求項2に記載した構成に対し、上記鋼製壁部は、筒形状の壁を形成すると共に、その内壁面が上記一方の壁面を形成し、
上記補強部材本体は、筒形状の鋼製壁部の外周を巡るように配置された無端環形状の部材であり、
上記各リブ部材は、上記筒形状の鋼製壁部の径方向に延在させることを特徴とするものである。
ここで、上記補強部材本体の環形状は、筒形状の鋼製壁部の軸方向からみて、当該鋼製壁部の無端環形状と同形若しくは同形に近い形状となっていることが好ましい。
上記請求項1〜3のいずれか1項に記載した歪み抑制治具で鋼製壁部を拘束した状態で、肉盛り溶接を施すことを特徴とするものである。
これに対し、本発明によれば、その歪みが発生し易い上記配列方向に沿って配置した補強部材本体に対して、複数のリブ部材を介して仮固定する。これによって、肉盛り溶接する際における当該鋼製壁部の熱歪み発生を、簡易な構成で抑制することが可能となる。
また、請求項3に係る発明によれば、環状の補強部材本体と放射状に配置したリブ部材とによって、筒状の鋼製壁部の周方向に沿った歪みを簡易に抑制することが可能となる。
図1は、転炉排ガス冷却設備を備えた転炉ボイラ設備の一例を示す図である。
転炉1の吹錬時には、転炉1から排出される高温の排ガスは、スカート2、下側のフードボイラ、上部ボイラ5を経由して集塵機6に送られる。上記下側のフードボイラは、下部フードボイラ3及び上部フードボイラ4からなる。スカート2及び各ボイラ3,4,5は、それぞれ筒形状をした、水冷式の冷却構造(熱交換構造)を持った鉄鋼構造物である。
本実施形態の下部フードボイラ3は、図2及び部分的に示す斜視図である図3に示すように、上部に円環状の給水ヘッダ10、及び排水ヘッダ11を備える。その給水ヘッダ10と排水ヘッダ11の間を複数の水冷管14によって連通する。すなわち、上記給水ヘッダ10から複数の水冷管14が分岐する。その各水冷管14は、下方に延び、下側で2つに分岐し、分岐した2つの水冷管14は、上方に延びて上記排水ヘッダ11に連通する。
上記複数の下降管12は、下部フードボイラ3の中心軸Cを中心とした第1の仮想円に沿って並ぶように配置される。
その下降管12よりも内径側に上記上昇管13が配置される。複数の上昇管13は、下部フードボイラ3の中心軸Cを中心とした上記第1の仮想円よりも小さい半径の第2の仮想円に沿って配置される。
そして、給水ヘッダ10、下降管12、上昇管13、及び排水ヘッダ11と流れる冷却媒体としての水によって、上記下部フードボイラ3内を通過する排ガスとの間で熱交換が行われる。
本実施形態の歪み抑制治具19は、模式図である図5に示すように、全体で円環状をなす補強部材本体20と、その補強部材本体20とフィン15外径面とを連結する複数のリブ部材21とで構成される。
上記補強部材本体20は、平面視で円弧形状に沿って延びる複数のH形鋼からなる。その複数のH形鋼を連結することで、無端環状の形状となる。H形鋼は、例えばウェブ部が水平となるように配置する。
上記構成の歪み抑制治具19を、上記下部フードボイラ3の外周に配置する。
すなわち、補強部材本体20を構成する複数のH形鋼を、上記下部フードボイラ3の中心軸Cを中心とした第3の仮想円に沿って配置し、各H形鋼を連結することで、図5に示すように、上記第3の仮想円上に無端環状に構成する。各H形鋼の連結は、例えば、各H形鋼の端部間に板材をあてがって、ボルト締結若しくは溶接によって連結する。
上記のようにして歪み抑制治具19を、下部フードボイラ3の軸方向(高さ方向)に沿って2以上配置する。図7では、3つの歪み抑制治具19を、上下方向に且つ等間隔に配置した例を示している。
以上によって、歪み抑制治具19が、下部フードボイラ3の外周に取り付けられる。
この状態で、下部フードボイラ3の内壁面に対し、図7に示すような装置30を使用して、肉盛り溶接によって補修を行う。図7中、符号25は溶接トーチを示す。また、図4中、Bが肉盛り部分を示している。
また、下部フードボイラ3と同心状に補強部材本体20を配置すると共に複数のリブ部材21を放射状に配置しているので、発生する歪みは周方向全周に伝達することで、当該歪み抑制治具19によって、下部フードボイラ3の全体の形状も、上面視、円形形状に拘束することが出来る。
ここで、上記肉盛り溶接の施工は、例えば特開2008−93732号公報に記載されているような肉盛り溶接方法を採用すればよい。
そして、上記肉盛り溶接は、ニッケル基合金又はステンレス合金、例えばインコネルを、下部フードボイラ3の内壁面に対し肉盛り溶接で肉盛りする。肉盛りの厚さは例えば1.5mm以上とする。
ここで、肉盛り溶接する部分は、下部フードボイラ3の内壁面の全面でも良いし、上半分など内壁面の一部であっても良い。ただし、本実施形態の歪み抑制治具19は、肉盛りする面積が大きいほど有効に働く。
Y1 =(1/20)×X1−100 ・・・(1)
Y2 =(1/600)×X2−1 ・・・(2)
ここで、X1(mm)は肉盛対象物の直径(内径)、X2(mm)は肉盛対象物の高さとする。
なお、歪み抑制治具19は、高さ方向に出来るだけ、高さ方向に等間隔で取り付ける。
ここで、上記実施形態では、フードボイラの内壁面を肉盛り溶接する場合を例示した。冷却媒体が通過する冷却配管が複数本配列すると共に隣り合う冷却配管間を連結部材で連結して構成された鋼製壁部における一方の壁面を肉盛り溶接する場合であれば、他の鋼製壁部を対象としても良い。
また、肉盛り溶接は、補修に限定されず、補強のためであっても良い。
また、リブ部材21の内端部を仮固定する位置は、フィン15に替えて下降管12であっても良い。但し、フィン15に仮固定した方が水冷管14に不要な負荷が掛からず好ましい。
肉盛り材料として、0.1%以下C、20〜30%Cr、8〜10%Mo、5.0%以下Fe、1.0%以下Co、3.15〜4.15%Nb、0.4%以下Ti、0.4%以下Al、0.5%以下Mn、0.5%以下Si、残部Niの固体粒子群で形成される肉盛材料(米Inc社 インコネルAlloy625相当)を使用した。
なお、上記下部フードボイラ3を対象として、上記(1)式及び(2)式に基づき、H形鋼サイズを150×150mmに、歪み防止治具を高さ方向に三箇所に取り付けた。
このように、本実施形態の歪み抑制治具19を使用すると、対象物の直径に対し、最大0.3%以下の熱歪みに抑えることが出来ることを確認した。
このように、簡易に取り外し可能な歪み抑制治具19を取付けることで、溶接歪みを鋼構造物の直径0.3%以下に抑えることが可能となる。
10 給水ヘッダ
11 排水ヘッダ
12 下降管
13 上昇管
14 水冷管
15 フィン
19 歪み抑制治具
20 補強部材本体
21 リブ部材
21a 片開先
Claims (4)
- 冷却媒体が通過する冷却配管が複数本配列すると共に隣り合う冷却配管間を連結部材で連結して構成された筒形状の鋼製壁部における、一方の壁面の一部若しくは全面を肉盛り溶接する際に上記鋼製壁部の熱歪み発生を抑制するための歪み抑制治具であって、
上記鋼製壁部における他方の壁面に対向し且つ上記冷却配管の配列方向に延びる補強部材本体と、
上記補強部材本体から上記連結部材に延びて延在方向先端部が上記連結部材に仮固定される複数のリブ部材と、
を備えることを特徴とする歪み抑制治具。 - 上記各リブ部材の上記連結部材への仮固定は、上記各リブ部材の延在方向先端部に片開先を形成し、その片開先部分を上記連結部材に溶接にて固定してなることを特徴とする請求項1に記載した歪み抑制治具。
- 上記鋼製壁部は、筒形状の壁を形成すると共に、その内壁面が上記一方の壁面を形成し、
上記補強部材本体は、筒形状の鋼製壁部の外周を巡るように配置された無端環形状の部材であり、
上記各リブ部材は、上記筒形状の鋼製壁部の径方向に延在させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した歪み抑制治具。 - 冷却媒体が通過する冷却配管が複数本配列すると共に隣り合う冷却配管間を連結部材で連結して構成された鋼製壁部における一方の壁面の一部若しくは全面を肉盛り溶接して補修する鋼製壁部の補修方法において、
上記請求項1から請求項3のいずれか1項に記載した歪み抑制治具で鋼製壁部を拘束した状態で、肉盛り溶接を施すことを特徴とする鋼製壁部の補修方法。
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