JP5684427B1 - 既設配管のライニング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
光硬化ライニング法で使用されるライニング材は、一般的に、ガラス繊維の編込み物に光硬化性の樹脂(例えば、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等)を含浸させたものが使用される。
光重合開始剤は、光を吸収して活性化し、開裂反応、水素引き抜き、電子移動などの反応を起こす。この反応によりラジカル分子、水素イオンなど反応を開始する物質(活性開始物質)が生成する。
生成した活性開始物質が、樹脂の分子鎖を攻撃して、3次元的な重合や架橋反応を起こす。この反応により一定以上の大きさの分子になると、光照射した部分が液体状態から固体状態に変化し、硬化するものである。
また、枝管の如く、配管の直径が小さい場合には、150W程度の紫外線LEDを複数列直列に接続してライニング材の光硬化を行っていた。
これらの光照射装置には放射方向に車輪が設けられており、ライニング材の内部の中心軸にランプ本体が保持されて移動できるようになっている(紫外線LEDの連結体も同様に車輪が設けられる)。
従って、紫外線ランプを使用する場合の光反応開始材と、紫外線LEDを使用する場合のライニング樹脂の光反応開始材とは異なったものであった。
この場合、電力消費が極めて大きいと共に、その移動速度、即ち硬化速度が遅い欠点がある。さらには、発熱量が大きいためライニング材が焼けるおそれがあり、温度管理が難しい欠点がある。
しかしながら、気温が10℃以下になる冬季や、地下水等の冷水が配管内に流入する状態にある場合には、紫外線LEDの発熱温度が80〜140℃であっても、ライニング材に吸収された熱が即座に奪われ、ライニング材表面の温度は90℃程度となる。この場合、硬化反応の最適温度には届かず、紫外線LEDのみで光硬化することが極めて難しい場合があった。
具体的に何度まで赤外線ランプでライニング材を昇温すれば、次の工程のLEDの光照射による硬化が良好となるのか、当業者には到底理解することができないものであった。
先端側に位置した紫外線LED (3)の集合体(3a)の後続に、その紫外線LEDに比べて、発熱性の高い補助加熱体(4)を連結し、前記紫外線LED(3)の集合体(3a)および前記補助加熱体(4)を同時に点灯して、それらを前記ライニング材(2)内で移動し、
先ず、先端側に位置した前記紫外線LED(3)の集合体(3a)により、前記ライニング材(2)に紫外線を照射して前記ライニング材の少なくとも表面を90℃以上に維持し、
次いで、その状態で、後端側の前記補助加熱体(4)により前記ライニング材(2)を加熱し、前記ライニング材(2)の少なくとも表面を110℃以上に昇温して、ライニング材を硬化させることとした既設配管のライニング方法である。
前記補助加熱体(4)が、紫外線ランプ、赤外線ランプ、可視光ランプ、可視光LED、赤外線LEDのいずれか一つまたは、それらの一以上の組み合わせからなる既設配管のライニング方法である。
次いで、その状態で、発熱性の高い補助加熱体をライニング材内で移動して、ライニング材の少なくとも表面を110℃以上に昇温し、ライニング材を硬化させるものである。
即ち、本方法は、特に補助加熱体として紫外線ランプを使用した場合、紫外線ランプ専用の光硬化材料であっても、紫外線LED専用の光硬化材料であっても、いずれの材料も迅速に硬化して配管のライニングができる。
さらに、寒冷な時期或いは、既設配管に冷水が進入している場合にも、補助加熱体で同時に再加熱するので温度効率がよく、確実にライニング材を硬化させることができる。
図1は、本発明の既設配管のライニング方法の説明図である。
この例は、本管としての既設の配管1が一対のマンホール10、10間に配置され、その配管1の内部を補修のため、ライニングするものである。そこで、配管1内にライニング材2を導入し、その内部に加圧空気を導入してライニング材2を配管1の内壁に密着させる。このライニング材2は、管状で未硬化の光硬化性の樹脂材を含有する。
この光硬化性の樹脂材は、紫外線を含む光を照射することで初期反応(活性開始物質の生成反応)を起こす。ただし、この反応が最もよく進行する温度は120℃〜140℃であり(樹脂材の重合反応の最適温度)、これ以下の温度では、未反応部分が多くなり、ライニング材は十分な硬度が得られない。
このとき、配管1の内直径に応じて、紫外線LED3の集合体3aの数および、補助加熱体4としての紫外線ランプ4aの連結数を選択する。また、集合体3aに含まれる紫外線LED3の数も適宜決定する。
一例として、既設配管が下水本管である場合には、集合体3aに含まれる紫外線LED3の数を500個以上とすることができる。また、紫外線ランプ4aのワット数を一例として1000Wとすることができる。
(実験1)
図3では、厚さ3mmで、縦横10cmの方形のライニング材2の表面側にガラス板9を配置し、裏面側にステンレス板8を配置する(表2のA方法、C方法、D方法)。ガラス板9及びステンレス板8(厚さ1.0mm)は、ライニング材2と同一の形状とする。そのとき、温度計により、ライニング材2の表面側及び裏面側の温度を測定する。
ガラス板9の10cm上方には、紫外線LED3の集合体3aを配置する。紫外線LED3として、波長385nmのものを24個、その平面上に並列させる。
紫外線の照射後、ライニング材の硬度測定(バーコル硬度計にて硬化反応60分後のものを測定)と色の状態を目視により観測した。
表2に示す実験1は、室温20℃で行った。
なお、A方法、C方法、D方法の実験では、低温条件下の既設配管の代わりとして、ステンレス板8を用いている。B方法の断熱材11を用いた実験の趣旨は、裏面側からの吸熱がなければ、ライニング材の適温温度が得られるかを確認するためのものである。
A方法とD方法の実験では、補助加熱体の代わりとして、3分間140℃〜180℃の温風を吹き付けた。
A方法・B方法・C方法・D方法は、いずれもライニング材2に紫外線LED3を5分間照射した。
先ず、B方法において、紫外線LED3を5分間照射後のライニング材2の表面温度は、120℃〜130℃であった。このとき、ライニング材の裏面側温度は21℃であった。B方法ではライニング材の色が硬化した目安となる薄黄色が確認でき、そのライニング材の硬度は20〜40となり許容できる剛性を得ることができた。
B方法ではライニング材の裏面が断熱材であるため、放射熱が全てライニング材に吸収されたため、ライニング材が高温となり、硬化反応が効率よく進行したものと推測できる。
放射光がステンレス板に熱として吸収されたため、硬化反応が起こり難かったものと考えられる。
A方法は、C方法と同様にライニング材2を紫外線LED3で5分間照射して表面温度を100℃に加熱し、直後に、ドライヤーで140℃〜180℃のエアーを3分間吹き付けたものである。それによって、ライニング材2の表面温度は、100℃から120℃に上昇した。裏面側温度は21℃である。そして、そのときの硬度は20〜40であり、樹脂材は薄黄色に変色した。
このD方法がA方法と異なる点は、紫外線LEDの照射前にライニング材2を加熱した点である。このD方法の簡易的な実験を次の方法で行った。先ず、ライニング材2にガラス板9の上面側からドライヤ(吹き込み温度140℃〜180℃)を3分間吹き込んで加熱し、その直後、紫外線LEDの照射を5分間行ったものである。その結果、ライニング材2の表面温度は最終的に100℃となり、裏面側温度は20℃、その時のライニング材2の硬度は0であり、バーコル硬度計による計測が不能であった。その色は透明である。
ライニング材2の裏面側材料がステンレス板の場合、A方法の如く、紫外線LED照射の後に、ライニング材2を加熱した場合、その表面温度を十分高くし、ライニング材2を硬化することができる。
これは、初めに紫外線LEDを照射するにより、多くの活性開始物質の生成反応が起こり、次に、昇温することにより、それらと樹脂材の分子鎖とのラジカル重合反応を促進することができき、効率的に硬化反応を起こしていると考えられる。
しかしながら、D方法の如く、ライニング材2を初めに加熱した場合には、ライニング材2の表面温度は最終的に100℃を超えることはなく、それを光硬化させること(許容範囲の強度を得ること)ができないことが分かった。
A方法とは逆で、活性開始物質の生成反応をせずに昇温しているため、昇温している時点ではラジカル重合反応自体が起こらず、昇温を止めた時点から裏面材に熱を吸収され、反応場の温度が低くなり、その後に紫外線を照射して、活性開始物質の生成反応を起こしても、重合反応は起こり難いと考えられる。
次に、図1は内径150mmで、長さ5000mmの配管1内にライニング材2を挿入し、補助加熱体4として紫外線ランプ4aと、紫外線LED3の集合体3aとを直列に接続してライニング材2の硬化実験を行った。この時、紫外線LED3の集合体3aの数は4台(一台の集合体3aには、144個のLED)であり、紫外線ランプ4aは150W(一台)をつないで用いた。配管の温度は5℃の低温状態であった。
実験2、3は、図1に示す如く、紫外線LED3の集合体3aの後続に補助加熱体4を接続して行った。
実験2では、集合体3aの紫外線LED3のみを点灯し、それをライニング材2の上流側である左端から右端方向に矢印方向へ移動させた。このときの移動速度は、40cm/minである。この時、配管1の温度は5℃の低温状態にあった。
紫外線LED3の集合体3aのみの移動によるライニング材2の内表面温度は100℃であり、それによるライニング材の硬度は0で、透明色であり、十分な強度を得ることができなかった。
次いで、配管の温度が5℃の低温状態において、集合体3aの紫外線LED3を点灯すると共に、補助加熱体4の紫外線ランプ4aを点灯し、それらを配管1の左端から右端方向に移動速度40cm/minで移動した。
この場合、ライニング材2の表面温度は120℃〜130℃となり、ライニング材2が硬化(色は薄黄色)すると共に、その硬度は20〜40であり、十分な強度を得ることができた。
次に、実験4、実験5は、実験3との比較実験である。
特許文献1に記載のように、先ず紫外線ランプを点灯して、配管1の左端から右端方向に移動速度40cm/minで移動した。その直後に、紫外線LED3を点灯して、配管1の左端から右端方向に移動速度40cm/minで移動した。
結果は、実験2と同様であり、ライニング材2の内表面温度は100℃であり、それによるライニング材の硬度は0で、透明色であり、十分な強度を得ることができなかった。
次に、紫外線ランプ4aと、紫外線LED3の集合体3aの配置を実験3の配置と逆転させて実験を行った。即ち、移動方向の前端側に紫外線ランプ4aを位置し、紫外線ランプ4aの後続端に紫外線LED3の集合体3aを配置し、両者を同時に点灯して、配管1の左端から右端方向に移動速度40cm/minで移動した。
結果は、実験2と同様であり、ライニング材2の内表面温度は100℃であり、それによるライニング材の硬度は0で、透明色であり、十分な強度を得ることができなかった。
実験4、実験5は、紫外線ランプにより事前に加温をしている。このとき、紫外線ランプの紫外線照射では、活性開始物質の生成量が少なく、この状態で120℃に加温されも、反応効率が悪く硬化は不十分に終わると共に、加温により得たライニング材の熱はすぐに既設配管に奪われ、ライニング材の硬化反応に適した温度になり難い。その後又はその直後に紫外線LED3を点灯させているので、硬化反応が起こり難いものと推測できる。
本願発明の裏付け実験3のように、紫外線LED3の集合体3aによってライニング材を90℃まで加熱すると共に、十分なUV照射を行い、活性開始物質の生成反応を進行させ、その数をライニング材中に増加させておき、その後に、樹脂材のラジカル重合に最適な温度である120℃〜140℃まで再加熱をする(樹脂材の分子鎖と活性開始物質との初期反応を起こし易くする)と、効率よく硬化反応を促進させることができることがわかった。
この効果を得る為には、補助加熱体4を紫外線LED3の集合体3aの後続に連結させる必要があることがわかる。
2 ライニング材
3 紫外線LED
3a 集合体
4 補助加熱体
4a 紫外線ランプ
5 車輪
6 端部
7 案内ケーブル
8 ステンレス板
9 ガラス板
10 マンホール
11 断熱材
Claims (2)
- 既設配管(1)の内壁に、管状で未硬化の光硬化性ライニング材(2)を導入して、そのライニング材(2)の内側から光を照射し、ライニング材を硬化させる既設配管のライニング方法において、
先端側に位置した紫外線LED (3)の集合体(3a)の後続に、その紫外線LEDに比べて、発熱性の高い補助加熱体(4)を連結し、前記紫外線LED(3)の集合体(3a)および前記補助加熱体(4)を同時に点灯して、それらを前記ライニング材(2)内で移動し、
先ず、先端側に位置した前記紫外線LED(3)の集合体(3a)により、前記ライニング材(2)に紫外線を照射して前記ライニング材の少なくとも表面を90℃以上に維持し、
次いで、その状態で、後端側の前記補助加熱体(4)により前記ライニング材(2)を加熱し、前記ライニング材(2)の少なくとも表面を110℃以上に昇温して、ライニング材を硬化させることとした既設配管のライニング方法。 - 請求項1に記載の既設配管のライニング方法において、
前記補助加熱体(4)が、紫外線ランプ、赤外線ランプ、可視光ランプ、可視光LED、赤外線LEDのいずれか一つまたは、それらの一以上の組み合わせからなる既設配管のライニング方法。
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