JP5682075B2 - 動物由来dna検出用プライマー配列 - Google Patents

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本発明は、動物由来DNA検出用プライマー配列、ならびに該プライマー配列を効率よく設計して取得するための方法に関する。
現在、牛海綿状脳症 (BSE) の牛に由来する肉骨粉が飼料に添加され、その飼料を与えられた牛がBSEに罹患し、問題となっている。そして、BSEと類似する病気が種々の家畜にも存在する可能性が指摘されている。そこで、BSEの発生以来、先端技術を用いた鋭敏な動物由来のDNAの検出技術の開発が必要となっており、特に行政上の緊急対応事項となっている。さらに、昨今、肉の種類などの偽装も問題となっており、食肉加工品の表示などの真偽を容易確認するための手段も求められている。
動物由来のDNAの検出については、従来、免疫学的手法、ならびに核遺伝子を用いる遺伝子検出手法が用いられてきた。免疫学的手法としては、例えば、ELISA法、イムノブロット法が挙げられる。核遺伝子を用いる遺伝子検出手法としては、例えば、PCR法が挙げられる。しかし、検出対象試料は、加熱処理されているものが多いため、タンパク質の変性や核酸の断片化が生じている可能性が高いこと、および牛用飼料には植物由来成分が多いため、動物由来成分についての微量分析が必要であることなど、現在行われている動物由来DNA検出方法には、多くの問題点がある。このように加熱処理後の試料についても実施可能な、感度が高くかつ有効な検出方法の開発が急務である。
これまでに、動物ミトコンドリアゲノムに存在するATP合成酵素サブユニット8遺伝子(atp8遺伝子)に由来する動物特異的DNA配列をプライマー対として用いる動物種の検出方法が開発されている(特許文献1および2)。これらは、atp8遺伝子の相同配列が植物(イネ)ミトコンドリアゲノムに存在しないことを利用し、植物系の飼料中より微量の動物遺伝子を効率的に検出することができる。また、他のグループも、肉種判別や肉骨粉の検出に使用できるプライマーを開発している(非特許文献1および2)。
これらのプライマーは、増幅すべきDNAの位置、プライマーの長さや塩基などについての膨大な数の組み合わせについて個々に特異性や検出感度を確認するという、試行錯誤の末に開発されたものである。したがって、特定の範囲の動物種を検出対象とした特異的かつ高感度な新規なプライマーを得ることは容易なことではない。
特開2003−164287号公報 特開2005−323587号公報
Lahiff, S.ら、Mol. Cell Probes,15巻,27-35頁,2001年 Tartaglia, M.ら、J. Food Prot.,61巻,513-518頁,1998年 Rice, P.ら、Trends in Genetics,16巻,276-277頁,2000年 Imaizumiら、Int. J. Legal Med.,121巻,184-191頁,2007年 Dalmasso, A.ら、Mol. Cell Probes,18巻,81-87頁,2004年 Marco T.ら,J. Anim. Sci.,76巻,2207-2208頁,1998年 Jane M.ら,Environ. Sci. Technol.,41巻,3277-3283頁,2007年 Shinoda, N.ら、J. Food Prot.,71巻,2257-2262頁,2008年
本発明は、動物由来DNAを検出可能なプライマーを効率よく設計して取得するための方法を提供すること、ならびにこのような方法によって得られた特異的かつ高感度検出可能なプライマーを提供することを目的とする。
本発明は、特定の動物種または群由来のDNA検出用プライマー配列を取得するための方法を提供し、該方法は、
(a)DNA配列の検索対象領域を決定する工程;
(b)該領域について該特定の動物種または群のDNA配列のリストを取得し、該特定の動物種または群のDNA配列をマルチプルアラインメントする工程;
(c)該マルチプルアラインメントしたDNA配列から、コンセンサス配列を得る工程;
(d)該領域について該特定の動物種または群とは異なる動植物種または群のDNA配列のリストを取得し、該異なる動植物種または群のDNA配列と該コンセンサス配列とをマルチプルアラインメントする工程;
(e)該工程(d)でマルチプルアラインメントしたDNA配列における任意の塩基長の範囲内で縦列間の塩基を比較して、該範囲のコンセンサス配列をスコアリングする工程であって、該スコアリングが、該コンセンサス配列と異なる塩基について、該範囲の5’または3’末端からの距離、ギャップの有無、および塩基の種類に応じて設定された重みを加算して行われる、工程;
(f)該工程(e)でスコアリングされたコンセンサス配列から、スコアが高いコンセンサス配列を選択する工程;
(g)該工程(f)で選択されたコンセンサス配列の塩基を修正する工程であって、該修正が、該範囲のコンセンサス配列のTm値が任意の温度になるように塩基長を調節し、そして該調節されたコンセンサス配列でホモダイマーを形成しないように塩基を置換することである、工程;
(h)該修正されたコンセンサス配列について、該領域における該コンセンサス配列間の距離が適切な塩基長になるように、対とすべきコンセンサス配列を選択する工程;および
(i)該選択されたコンセンサス配列の対について、特異性および検出感度を確認する工程;
を含む。
1つの実施態様では、上記5’または3’末端からの距離に応じて設定された上記重みは、5’または3’末端側ほど重い。
他の実施態様では、上記ギャップの有無に応じて設定された上記重みは、ギャップ差の絶対値が大きいほど重い。
さらなる実施態様では、上記塩基の種類に応じて設定された上記重みは、該コンセンサス配列中の塩基とミスアニーリングを生じにくい塩基であるほど重い。
ある実施態様では、上記検索対象領域は、ミトコンドリアDNAである。
特定の実施態様では、上記特定の動物種または群は、反芻動物、ブタ、クジラ・イルカ類、シカ、ヒツジまたはヤギである。
ある実施態様では、上記工程(b)から(d)は、配列解析プログラムEMBOSS(The European Molecular Biology Open Software Suite)を用いて行われる。
ある実施態様では、上記工程(b)から(g)は、一連のプログラムとして自動的に行われ得る。
本発明はまた、配列表の配列番号1の配列と配列表の配列番号2の配列との組み合わせ;配列表の配列番号3の配列と配列表の配列番号4の配列との組み合わせ;配列表の配列番号5の配列と配列表の配列番号6の配列との組み合わせ;または配列表の配列番号7の配列と配列表の配列番号8の配列との組み合わせである、反芻動物特異的DNA検出用プライマー対を提供する。
本発明はまた、配列表の配列番号9の配列と配列表の配列番号10の配列との組み合わせ;配列表の配列番号11の配列と配列表の配列番号12の配列との組み合わせ;配列表の配列番号13の配列と配列表の配列番号14の配列との組み合わせ;または配列表の配列番号15の配列と配列表の配列番号16の配列との組み合わせである、ブタ特異的DNA検出用プライマー対を提供する。
本発明はまた、配列表の配列番号52の配列と配列表の配列番号53の配列との組み合わせ;または配列表の配列番号52の配列と配列表の配列番号54の配列との組み合わせである、クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマー対を提供する。
本発明はまた、配列表の配列番号55の配列と配列表の配列番号56の配列との組み合わせである、シカ特異的DNA検出用プライマー対を提供する。
本発明はまた、配列表の配列番号57の配列と配列表の配列番号58の配列との組み合わせである、ヒツジ特異的DNA検出用プライマー対を提供する。
本発明はまた、配列表の配列番号59の配列と配列表の配列番号60の配列との組み合わせである、ヤギ特異的DNA検出用プライマー対を提供する。
本発明はさらに、試料中の特定の動物種または群由来の成分を検出する方法を提供し、上記のいずれかのプライマー対を用い、試料中のDNAを鋳型として、DNA断片をPCR法により増幅する工程、および該増幅されたDNA断片を検出する工程を含み、特定の動物種または群が、反芻動物、ブタ、クジラ・イルカ類、シカ、ヒツジまたはヤギである。
ある実施態様では、上記試料は、生肉、生魚、肉加工食品、魚加工食品、肉加工品含有食品、魚加工品含有食品、血液、体毛、体液、乳、乳加工品、肉骨粉、骨粉、魚粉、フィッシュソリュブル、だし粕、ならびにこれらを含有する飼料、肥料、ペットフード、および飼料添加物からなる群より選択される。
本発明の方法によれば、任意の範囲の動物種または群(グループ)に由来するDNAを検出するためのプライマーを、より効率的に設計して取得することができる。本発明の方法によって、非常に高感度の反芻動物、ブタ、クジラ・イルカ類、シカ、ヒツジまたはヤギ特異的DNA検出用プライマー対が提供される。例えば、本発明の方法により取得された反芻動物、ブタ、クジラ・イルカ類、シカ、ヒツジまたはヤギ特異的DNA検出用プライマー対は、飼料中の微量の反芻動物、ブタ、クジラ・イルカ類、シカ、ヒツジまたはヤギ由来の肉骨粉を高感度で検出できる。
反芻動物特異的DNA検出用プライマー対(ペア1:5D2(配列番号1)と3D5(配列番号2)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 反芻動物特異的DNA検出用プライマー対(ペア2:5K4(配列番号3)と3K4(配列番号4)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 反芻動物特異的DNA検出用プライマー対(ペア1:5D2(配列番号1)と3D5(配列番号2)との組み合わせ)を用いて、各種反芻動物由来のDNAの濃度を変えてPCRを行った後の電気泳動写真である。 反芻動物特異的DNA検出用プライマー対(ペア1:5D2(配列番号1)と3D5(配列番号2)との組み合わせ)を用いて、種々の飼料についてDNA検出を行った結果を示す電気泳動写真である。 反芻動物特異的DNA検出用プライマー対(ペア1:5D2(配列番号1)と3D5(配列番号2)との組み合わせ)を用いて、種々の濃度のウシ肉骨粉を含む配合飼料についてPCRを行った後の電気泳動写真である。 ブタ特異的DNA検出用プライマー対(ペアI:PigATP6-5.3(配列番号9)とPigATP6-3.9(配列番号10)との組み合わせ;およびペアIV:PIG 5J(配列番号15)とPIG 3J(配列番号16)との組み合わせ)を用いて、各品種のブタ由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 ブタ特異的DNA検出用プライマー対(ペアI:PigATP6-5.3(配列番号9)とPigATP6-3.9(配列番号10)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 ブタ特異的DNA検出用プライマー対(ペアI:PigATP6-5.3(配列番号9)とPigATP6-3.9(配列番号10)との組み合わせ)を用いて、ブタ由来のDNAの濃度を変えてPCRを行った後の電気泳動写真である。 ブタ特異的DNA検出用プライマー対(ペアI:PigATP6-5.3(配列番号9)とPigATP6-3.9(配列番号10)との組み合わせ)を用いて、種々の濃度のブタ肉骨粉を含む配合飼料についてPCRを行った後の電気泳動写真である。 クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマー対(ペアI:whale51(配列番号52)とwhale31(配列番号53)との組み合わせ;およびペアII:whale51(配列番号52)とwhale32(配列番号54)との組み合わせ)を用いて、各品種のクジラ・イルカ類由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマー対(ペアI:whale51(配列番号52)とwhale31(配列番号53)との組み合わせ;およびペアII:whale51(配列番号52)とwhale32(配列番号54)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 シカ特異的DNA検出用プライマー対(deer54(配列番号55)とdeer33(配列番号56)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 ヒツジ特異的DNA検出用プライマー対(sheep53(配列番号57)とsheep33(配列番号58)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。 ヤギ特異的DNA検出用プライマー対(goat55(配列番号59)とgoat35(配列番号60)との組み合わせ)を用いて、各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った後の電気泳動写真である。
試料中の特定の動物種または群由来の成分を検出するために、それぞれの動物種または群に特異的なDNA配列を検出する方法が行われる。このような方法としては、サザンブロット法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法などが挙げられるが、微量のDNA試料でも検出が可能な点、および精度を向上させる点で、PCR法が好ましく用いられている。PCRでは、目的の動物種に特異的なDNA配列を含む一対のプライマーを用いて行い、増幅されたDNA断片を検出する。本発明の方法は、このPCRに用いるためのプライマーを効率よく設計して取得するための方法である。
本発明の特定の動物種または群由来のDNA検出用プライマー配列を取得するための方法は、以下の工程:
(a)DNA配列の検索対象領域を決定する工程;
(b)該領域について該特定の動物種または群のDNA配列のリストを取得し、該特定の動物種または群のDNA配列をマルチプルアラインメントする工程;
(c)該マルチプルアラインメントしたDNA配列から、コンセンサス配列を得る工程;
(d)該領域について該特定の動物種または群とは異なる動植物種または群のDNA配列のリストを取得し、該異なる動植物種または群のDNA配列と該コンセンサス配列とをマルチプルアラインメントする工程;
(e)該工程(d)でマルチプルアラインメントしたDNA配列における任意の塩基長の範囲内で縦列間の塩基を比較して、該範囲のコンセンサス配列をスコアリングする工程であって、該スコアリングが、該コンセンサス配列と異なる塩基について、該範囲の5’または3’末端からの距離、ギャップの有無、および塩基の種類に応じて設定された重みを加算して行われる、工程;
(f)該工程(e)でスコアリングされたコンセンサス配列から、スコアが高いコンセンサス配列を選択する工程;
(g)該工程(f)で選択されたコンセンサス配列の塩基を修正する工程であって、該修正が、該範囲のコンセンサス配列のTm値が任意の温度になるように塩基長を調節し、そして該調節されたコンセンサス配列でホモダイマーを形成しないように塩基を置換することである、工程;
(h)該選択されたコンセンサス配列について、該領域における該コンセンサス配列間の距離が適切な塩基長になるように、対とすべきコンセンサス配列を選択する工程;および
(i)該選択されたコンセンサス配列の対について、特異性および検出感度を確認する工程;
を含む。
本発明において、検出の対象となる動物種または群は特に限定されない。哺乳類、鳥類、魚類などの広範なグループ;反芻動物、げっ歯類、クジラ・イルカ類などの一定の範囲のクラスまたはグループ;ウシ、ヤギ、ヒツジ、シカ、ブタ、ウマ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト、クジラなどの特定の範囲の属、種、またはグループ;あるいは、黒毛和牛種、乳牛、アカウシ、中ヨークシャー(ブタ)、バークシャー(ブタ)、ミニブタなどの種または品種であってもよい。検出の目的に応じて、対象動物の範囲は適宜設定され得る。
本発明の方法は、種々の遺伝子解析ツールを用いて行われ得る。各工程において、適切な解析プログラムをそれぞれ選択して用いることができる。例えば、本発明においては、工程(b)〜(d)を配列解析プログラムEMBOSS(The European Molecular Biology Open Software Suite)のコマンドを用いて行うことができる。あるいは、工程(b)から(g)までの一連の操作を自動的に連続して行い得る配列解析プログラムを独自に組んでもよい。
ここで、EMBOSSとは、分子生物学のユーザ・コミュニティー(例えば、EMBnet)のために開発された、全く新しいオープン・ソースな解析用ソフトウェア・パッケージである(非特許文献3)。このソフトウェア・パッケージの使用により、様々なフォーマットで書かれたデータの自動的な処理、ウェブからの透過的な配列データ検索などが可能である。EMBOSSには、150以上のプログラム(アプリケーション)が含まれている。例えば、配列アラインメント;配列パターンによる、高速なデータベース検索;ドメイン解析を含む、タンパク質のモチーフ同定;EST解析;CpGアイランドの同定などの、核酸配列のパターン解析;単純で種特異的なリピートの同定;小さなゲノムにおけるコドン使用頻度解析;大規模な配列セットにおける、迅速な配列パターン同定などが挙げられる。また、EMBOSSパッケージには拡張ライブラリーが含まれていること、様々な配列解析用パッケージやツールがシームレスに統合されているため、目的とする解析などを効率よく行うことが可能である。
以下、本発明の方法を工程の順に詳細に説明する。
工程(a):
まず、工程(a)において、DNA配列の検索対象領域を決定する。検索対象領域としては、目的の特定の動物種または群のDNA配列のどの領域を選択してもよい。以下の工程(b)および(d)において、種々の動物のDNA配列のリストを取得することを考慮すると、多くの動物種または群についてDNA配列が明らかになっているDNA領域が好ましい。本発明においては、核ゲノムDNAよりもコピー数が多くかつ環状で変性に強い点で、ミトコンドリアDNAが好適に用いられる。ミトコンドリアDNA上には、酸化的リン酸化(電子伝達系)に必要な酵素類の生合成に必須である、ATP合成酵素、シトクロムcオキシダーゼなどがコードされている。検索対象とするDNA配列の領域として、このミトコンドリアDNA全体(すなわち、全領域)を選択してもよく、あるいは一部のみを選択してもよい。
工程(b):
次いで、上記工程(a)で選択したDNA配列の領域について、目的の特定の動物種または群のDNA配列のリストを取得して、得られた特定の動物種または群のDNA配列をマルチプルアラインメントする。
DNA配列は、当業者が利用可能な種々のデータベースから入手可能である。データベースとしては、例えば、GenBank(NCBI)、DDBJ、EMBLなどが挙げられる。データベースからできるだけ多くのDNA配列を取得し、DNA配列リストとする。DNA配列をデータベースのID番号として取得した場合は、EMBOSSに設定されているコマンドにより、容易にDNA配列リストを取得することができる。
次いで、このDNA配列リストを、マルチプルアラインメントする。ここで、マルチプルアラインメントとは、複数の配列を相同性に基づいて整列させることをいう。マルチプルアライメントを行うためのプログラムとしては、Clustal(ClustalW、ClustalX)などがある。これらのプログラムも、EMBOSSに含まれている。
工程(c):
次いで、工程(c)では、マルチプルアラインメントしたDNA配列から、コンセンサス配列を得る。コンセンサス配列は、各DNA配列間の相同性に基づいて、例えば、EMBOSS中のコマンド(例えば、CONS)を用いて作成できる。
必要に応じて、プライマー設計の判断をより正確に行う目的で、コンセンサス配列を2種類作成する。1本は厳密なコンセンサス配列とし、そしてもう1本は緩いコンセンサス配列とする。この場合、以下で詳述する不一致度の指定には、厳密なコンセンサス配列を使用するが、実際のプライマーは、緩いコンセンサス配列に基づいて取得する。2種類のコンセンサス配列の取得について、以下の例示に従って説明する。
反芻動物についてのコンセンサス配列を作成する場合を例に挙げる。例えば、ウシ、ヒツジ、およびヤギのDNA配列を、それぞれ、
Figure 0005682075
と仮定する。この場合、縦列で比較すると、
Figure 0005682075
となる。なお、緩いコンセンサス配列は、縦列中で最も多い塩基で置き換えられる。一方、厳密なコンセンサス配列においては、縦列中で1つでも異なる塩基があれば、Nと表示する。
不一致度は、上記厳密なコンセンサス配列の任意の、例えば、17塩基長の範囲において、上記Nの許容数に応じて指定される。例えば、3段階の不一致度を定義する場合、不一致度が高い方から順に、
不一致度1が「5’末端から1番目〜5番目の塩基中にNが0であり、かつ5’末端から6番目〜17番目の塩基中にNが6個以内である場合」とし、
不一致度2が「5’末端から1番目〜7番目の塩基中にNが0であり、かつ5’末端から8番目〜17番目の塩基中にNが3個以内である場合」とし、
不一致度3が「5’末端から1番目〜9番目の塩基中にNが0であり、かつ5’末端から10番目〜17番目の塩基中にNが6個以内である場合」と定義される。この場合は、5’末端から18番目〜25番目の塩基中のNの数はいくつであっても許容される。通常は、不一致度2を指定する。
工程(d):
次に、上記工程(a)で選択したDNA配列の領域について、特定の動物種または群とは異なる動植物種または群のDNA配列のリストを取得し、該異なる動植物種または群のDNA配列と該コンセンサス配列とをマルチプルアラインメントする。
特定の動物種または群とは異なる動植物種または群は、特に限定されない。多種多様な範囲の動植物についてのDNA配列リストを取得することが好ましく、特定の動物種または群に比較的に近い動物種または群を含むことが好ましい。DNA配列リストの取得、ならびにマルチプルアラインメントの手法は、上記工程(b)と同様である。例えば、EMBOSS中のコマンドを用いて行うことができる。
工程(e):
工程(e)では、上記工程(d)でマルチプルアラインメントしたDNA配列における任意の塩基長の範囲内で縦列間の塩基を比較する。任意の塩基長は、プライマーとして適切な塩基長であり得る。通常、15〜30塩基長、好ましくは17〜25塩基長である。上記のコンセンサス配列をスコアリングする。上記コンセンサス配列の種々の位置の任意の塩基長の範囲において、このコンセンサス配列の塩基と、マルチプルアラインメントしたDNA配列の塩基とを縦列間で比較する。比較した場合、各塩基について、塩基の一致または不一致、ギャップなどの差異が見出される。
次に、見出された差異をコンセンサス配列に対してスコアリングする。スコアリングは、コンセンサス配列と異なる塩基について、この範囲の5’または3’末端からの距離、ギャップの有無、および塩基の種類に応じて設定された重みを加算して行われる。本発明において「重み」とは、目的外のDNA(すなわち、検出目的の特定の動物種または群とは異なる動物種または群のDNA)とアニーリングしにくいものほど重いと設定される。例えば、プライマーの末端側の塩基が異なる場合、ギャップが末端側に存在する場合などは、アニーリングしにくくなる(言い換えれば、ミスアニーリングを生じにくくなる)。そのため、末端からの位置に応じて、適宜重みをスコアとして設定する。特に、末端の5塩基の影響が大きいため、末端5塩基についてのみスコアリングの対象とすることが好ましい。
塩基が異なる場合のスコアについては、例えば、末端からX番目の重みスコアを、末端からX+1番目とX+2番目の合計スコアと設定する。末端5塩基をスコアリングの対象とする場合、末端から5番目の塩基が異なる場合をスコア1とすると、末端から4番目は、5番目と6番目との合計なのでスコア2となる。末端から3番目の場合は、4番目と5番目との合計なので3、2番目の場合は5、そして1番目(末端)は8となる。
ギャップがある場合のスコアについては、例えば、末端5塩基についてのみスコアリングの対象とする場合、ギャップの差の絶対値(すなわち、ギャップの差)が1、2、3、4、および5に対して、スコアをそれぞれ3、5、7、9、および11と設定する。
コンセンサス配列中の塩基とミスアニーリングを生じにくい塩基GまたはCについては、その塩基のスコアを1.5倍にする。
以下に、具体例を挙げて説明する。ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカなどの反芻動物のコンセンサス配列と、ブタおよびウマのDNA配列とを、以下のようなある一定の範囲(囲み内)について比較する。
Figure 0005682075
まず、反芻動物コンセンサス配列とブタ配列とを縦列で比較する。例えば、3’末端側についてスコアリングすると、3’末端から1番目は異なっておりかつ塩基がCであるので、スコアは8×1.5=12である。3’末端から4番目も異なっておりかつ塩基がCであるのでスコアは2×1.5=3である。したがって、スコア12と3との合計で、ブタの配列に対してはスコア15である。
一方、反芻動物コンセンサス配列とウマ配列との比較においては、3’末端からギャップも含めて2番目と5番目とが異なりかつ塩基がともにCであるので、スコアの合計は9となる。ウマ配列には1塩基のギャップが存在するため、さらにスコア3を加算する。したがって、スコア9と3との合計で、ウマ配列との比較においては、このコンセンサス配列のスコアは12である。
ブタ配列との比較ではスコア15であるが、ウマ配列との比較ではスコア12であるため、比較した中で最も低いスコア12が、この範囲の反芻動物コンセンサス配列のスコアとなる。
このように、各配列と比較して得られた種々のスコアのうち、最も低いスコアが、該一定の範囲のコンセンサス配列のスコアになる。したがって、1つでも同一の配列が存在すれば、スコアは0となる。
なお、スコア0の場合であっても、数種のDNA配列のみが原因で、それらを除く配列との比較において高いスコアを有する場合がある。そのようなコンセンサス配列に基づくプライマーは、プライマー対の一方に高いスコアのプライマーを用いる場合に限って、その対のプライマーとして使用することができる。そのため、原因となるDNA配列以外の配列の比較に基づくスコアについても、条件付きで用いられる可能性があるため、注釈付きで記録することが好ましい。このようなスコアリングは、任意の適切なプログラムを組むことによって行われ得る。また、注釈付きの記録は、自動的に記録されるように設定され得る。
工程(f):
上記工程(e)でスコアリングされたコンセンサス配列から、スコアが高いコンセンサス配列を選択する。例えば、末端5塩基について、上記のようなスコアを設定した場合、スコア1以上、好ましくはスコア5以上、より好ましくはスコア10以上の配列が選択される。5’または3’側のいずれか一方のみのスコアが高い場合は、フォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれかの候補となり得、両方とも高いスコアを有する場合は、フォワードプライマーまたはリバースプライマーの両方の候補となり得る。また、上記のように、条件付きで用いられ得る配列も、同様に選択され得る。このような選択も、任意の適切なプログラムを組むことによって行われ得る。
工程(g):
次に、上記工程(f)で選択されたコンセンサス配列の塩基を修正する。修正は、この範囲のコンセンサス配列のTm値が任意の温度になるように塩基長を調節し、そしてこの調節されたコンセンサス配列でホモダイマーを形成しないように塩基を置換する。
選択されたコンセンサス配列のTm値(プライマーの融解温度)は、一般的に、最近接塩基対法によって計算される。Tm値は、任意の値に設定できるが、PCRにおいて通常用いられるアニーリング温度付近に設定されることが好ましい。例えば、約55℃に設定される。Tm値は、長い配列ほど上がり、そしてGCリッチな配列でも上がる。したがって、スコアリングの対象とは反対側の末端側の配列において、塩基を追加または削除して、Tm値を設定値に近づくように修正する。
さらに、塩基長が調節されたコンセンサス配列は、配列によってはホモダイマーを形成する場合がある。そこで、上記のスコアリングの対象になっていない位置の塩基を変更することにより、ホモダイマーを形成しないように修正する。上記の例の場合は、ホモダイマーとして対合する領域の5’末端側の領域の塩基を変更する。このようなコンセンサス配列の修正は、任意の適切なプログラムを組むことによって行われ得る。
工程(h):
工程(h)では、修正されたコンセンサス配列について、該領域における該コンセンサス配列間の距離が適切な塩基長になるように、対とすべきコンセンサス配列を選択する。例えば、取得したプライマーを用いて検出する試料が、加熱処理後の肉由来製品である場合、DNAは切断されて比較的短い。そのため、プライマーによって増幅されるDNAの塩基長は、好ましくは約50〜500bp、より好ましくは約60〜300bp、さらに好ましくは約70〜200bpであり得る。したがって、候補として選択されたコンセンサス配列間の距離も、好ましくは約50〜500bp、より好ましくは約60〜300bp、さらに好ましくは約70〜200bp、特に好ましくは約75〜170bpであり得る。この場合、フォワードプライマーまたはリバースプライマーのいずれか一方のプライマーの特異性が高ければよいので、対として選択される配列は、必ずしも上記工程(f)で選択されたコンセンサス配列である必要はない。
工程(i):
工程(i)では、上記工程(h)で選択されたコンセンサス配列の対について、特異性および検出感度を確認する。このコンセンサス配列は、プライマー候補である。
特異性の確認は、実際に抽出したDNAに対してPCRを行って確認することが好ましい。あるいは、プログラムによって、予備的に特異性を確認することが好ましい。このような特異性を確認するためのプログラムとしては、BLAST、FASTAなどが挙げられる。BLASTおよびFASTAとは、いずれもバイオインフォマティクスでDNAの塩基配列あるいはタンパク質のアミノ酸配列のシーケンスアラインメントを行うためのアルゴリズム、またそのアルゴリズムを実装したプログラムをいう。
予備的に特異性を確認したプライマー候補は、当業者が通常用いる方法によって(例えば、市販のDNA抽出キットを用いて)目的の動物および他の動植物から抽出した種々のDNAに対して、プライマー対としての特異性が確認される。プライマー候補のDNA配列は、通常用いられる方法によって合成される。一般的には、DNA自動合成機を用いて支持体上でヌクレオチドを伸長し、次いで、脱保護および支持体からの切断を行う。次いで、通常用いられる方法(例えば、カラムクロマトグラフィー)によって精製して、目的のプライマーを得ることができる。
上記種々のDNAについて、上記の選択したプライマー候補の組み合わせを用いてPCRを行い、プライマーに挟まれた領域のDNA断片を増幅する。PCRは、通常行われる条件で実施され、各プライマー対についてそれぞれ適切な条件を設定する。例えば、まず95℃で9分熱変性した後、変性:92℃、30秒〜1分;アニーリング:40〜65℃、30秒〜2分;伸長:72℃、30秒〜2分の反応を、30〜50サイクル、好ましくは35〜45サイクル繰り返し、最後に72℃、5分反応させてPCRを終了する。DNAポリメラーゼとしては、例えば、AmpliTaq GOLDポリメラーゼなどが用いられる。プライマー対によって増幅されたPCR産物(DNA断片)のサイズは、選択されたプライマー対間の塩基数に応じて変動する。このPCR産物は、次いで、上記DNA断片を分離できる条件下で、例えば、DNA断片のサイズに応じてアガロースゲル電気泳動、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などを行う。
電気泳動したゲル上のDNA断片は、当業者が通常用いるエチジウムブロマイド染色、蛍光検出、サザンハイブリダイゼーションなどの検出手段によって検出され、DNA配列決定により確認し得る。
特異性が高いことが確認されたプライマー候補の組み合わせは、次いで、検出感度についての検討が行われる。検出感度は、目的の動物種(グループ)から抽出した種々の濃度のDNAについて、上記のようにPCRを行うことにより確認できる。こうして得られたプライマー対のDNAの検出限界は、好ましくはPCRチューブあたり10pg、より好ましくは1pg、さらに好ましくは0.1pgであり得る。
上記の方法に従って、GenBankから取得したミトコンドリアDNA配列リストについて、上記の工程を行うことにより、例えば、反芻動物由来DNA検出用プライマー対、ならびにブタ特異的DNA検出用プライマー対が得られ得る。
具体例としては、本発明の反芻動物特異的DNA検出用プライマー対は、配列表の配列番号1の配列と配列表の配列番号2の配列との組み合わせ;配列表の配列番号3の配列と配列表の配列番号4の配列との組み合わせ;配列表の配列番号5の配列と配列表の配列番号6の配列との組み合わせ;または配列表の配列番号7の配列と配列表の配列番号8の配列との組み合わせである。これらのプライマー対は、ウシ、シカ、ヒツジ、およびヤギ由来のDNAについては検出可能であるが、反芻動物以外の哺乳動物(ヒト、クジラ、ブタ、ウサギなど)、家禽類、および魚介類由来のDNAについては検出しない。また、反芻動物由来の原料を含まない飼料についても、DNAを検出しない。
さらに別の具体例としては、本発明のブタ特異的DNA検出用プライマー対は、配列表の配列番号9の配列と配列表の配列番号10の配列との組み合わせ;配列表の配列番号11の配列と配列表の配列番号12の配列との組み合わせ;配列表の配列番号13の配列と配列表の配列番号14の配列との組み合わせ;または配列表の配列番号15の配列と配列表の配列番号16の配列との組み合わせである。これらのプライマー対はいずれも、ブタ由来のDNAは、品種にかかわらず検出可能であり、ブタ由来の肉骨粉を試料とした場合は検出可能である。一方、ブタ以外の哺乳動物(ヒト、クジラ、ウシ、ウサギなど)、家禽類、および魚介類由来のDNAについては検出しない。また、ブタ由来の原料を含まない飼料についても、DNAを検出しない。
別の具体例としては、本発明のクジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマー対は、配列表の配列番号52の配列と配列表の配列番号53の配列との組み合わせ;または配列表の配列番号52の配列と配列表の配列番号54の配列との組み合わせである。これらのプライマー対は、クジラおよびイルカ類由来のDNAについては検出可能であるが、クジラおよびイルカ類以外の哺乳動物(ヒト、ウシ、ブタ、ウサギなど)、家禽類、および魚介類由来のDNAについては検出しない。また、クジラおよびイルカ類由来の原料を含まない飼料についても、DNAを検出しない。
さらに別の具体例としては、本発明のシカ特異的DNA検出用プライマー対は、配列表の配列番号55の配列と配列表の配列番号56の配列との組み合わせである。このプライマー対はいずれも、シカ由来のDNAは、品種にかかわらず検出可能であり、シカ由来の肉骨粉を試料とした場合は検出可能である。一方、シカ以外の哺乳動物(ヒト、クジラ、ウシ、ウサギなど)、家禽類、および魚介類由来のDNAについては検出しない。また、シカ由来の原料を含まない飼料についても、DNAを検出しない。
別の具体例としては、本発明のヒツジ特異的DNA検出用プライマー対は、配列表の配列番号57の配列と配列表の配列番号58の配列との組み合わせである。このプライマー対はいずれも、ヒツジ由来のDNAは、品種にかかわらず検出可能であり、ヒツジ由来の肉骨粉を試料とした場合は検出可能である。一方、ヒツジ以外の哺乳動物(ヒト、クジラ、ウシ、シカ、ヤギ、ウサギなど)、家禽類、および魚介類由来のDNAについては検出しない。また、ヒツジ由来の原料を含まない飼料についても、DNAを検出しない。
さらに別の具体例としては、本発明のヤギ特異的DNA検出用プライマー対は、配列表の配列番号59の配列と配列表の配列番号60の配列との組み合わせである。このプライマー対はいずれも、ヤギ由来のDNAは、品種にかかわらず検出可能であり、ヤギ由来の肉骨粉を試料とした場合は検出可能である。一方、ヤギ以外の哺乳動物(ヒト、クジラ、ウシ、シカ、ヒツジ、ウサギなど)、家禽類、および魚介類由来のDNAについては検出しない。また、ヤギ由来の原料を含まない飼料についても、DNAを検出しない。
このようにして得られたプライマー対は、種々の試料中の目的の動物種または群由来のDNAの存在を検出し得る。すなわち、上記方法により得られたプライマー対を用いて、試料中のDNAを鋳型として、DNA断片をPCR法により増幅し、そして該増幅されたDNA断片を検出する。
検出の対象とされる試料としては、生肉、生魚、肉加工食品、魚加工食品、肉加工品含有食品、魚加工品含有食品、血液、体毛、体液、乳、乳加工品、肉骨粉、骨粉、魚粉、フィッシュソリュブル、だし粕、これらを含有する飼料、肥料、ペットフード、および飼料添加物などが挙げられる。試料からのDNAの抽出は、用いられるプライマー対に応じて当業者が通常用いる方法によって行われる。例えば、ミトコンドリアDNAから設計されたプライマー対を用いる場合は、ミトコンドリアDNAを抽出する。試料からのミトコンドリアDNAの抽出は、例えば、以下のように行う。約50mg〜500mgの試料(例えば、生肉の場合50mg、乾燥粉体試料の場合100〜500mg)を、約10倍量の緩衝液に懸濁し、ビーズ破砕法で破砕した後、市販の組織細胞ミトコンドリアDNA抽出キット(例えば、和光純薬工業株式会社製)を用いて抽出する。このようなキットは、組織細胞中の核ゲノムDNAの混入が少なく、より高純度のミトコンドリアDNAを回収するものであり、遠心分離、沈殿採取などによるDNAの抽出、濃縮操作などを行う。このようにして、試料中に存在する大量の核ゲノムDNAの混入程度が低いミトコンドリアDNAをより効率的に抽出できる。DNAの抽出法は、ここで記述した方法に限定されず、その他の方法も利用し得ることは、当業者に明らかである。
プライマーの使用量は、特に制限されないが、一般的に、約0.4μMで使用することが好ましい。
このようにして、試料中に目的の動物種由来のDNAが存在していれば、増幅されたDNA断片がゲル上で検出され得る。検出限界は、用いるプライマー対の種類および組み合わせ、試料の量、PCR条件、検出方法などの種々のファクターによって異なり得る。適切な条件を選択すれば、微量の試料においても、高感度でDNAの存在を検出することができる。例えば、適切な条件を選択すれば、試料がウシ由来の肉骨粉を含む配合飼料である場合、反芻動物特異的DNA検出用プライマー対を用いて、少なくとも0.01質量%の牛肉骨粉の混入でさえも検出することが可能である。
(実施例1:反芻動物特異的DNA検出用プライマーの取得)
(実施例1−1:反芻動物特異的DNA検出用プライマーの設計)
検索対象とするDNA配列の領域をミトコンドリアDNAとした。GenBankから、反芻動物のミトコンドリアDNA配列について20種類のID番号のリストを取得した(V00654、AY526085、AY676859、AY676871、AB074964、AF492351、AY676857、AY126697、DQ985076、EF035447、AB245427、AB245426、AB211429、AB218689、AB210267、AY702618、AF533441、AY225986、AF527537、およびAF010406)。EMBOSSをインストールしたコンピュータにおいて、この20種のID番号のリストを入力してDNA配列を取得し、マルチプルアラインメントして、反芻動物についてのコンセンサス配列を作成した。ここでは、厳密と緩いものとの2種のコンセンサス配列を作成した。
不一致度を3段階に設定し、「5’末端から1番目〜7番目の塩基中にNが0であり、かつ5’末端から8番目〜17番目の塩基中にNが3個以内である場合」とした不一致度2を指定して、これに該当しないものについては、以下のスコアリングを行わなかった。
次いで、反芻動物以外のミトコンドリアDNA配列について、GenBankから14種類のID番号のリストを取得した(AF034253(ブタ)、X79547(ウマ)、AF347015(ヒト)、J01415(ヒト)、AB032554(イワシ)、AB201258(クジラ)、U20753(ネコ)、U96639(イヌ)、AY172335(マウス)、AP002932(サンマ)、X14848(ラット)、AP003322(ニワトリ)、EF126369(サケ)、およびAB185022(マグロ))。この14種のID番号を入力してDNA配列を取得し、先に作成したコンセンサス配列とマルチプルアラインメントした。
次に、マルチプルアラインメントしたDNA配列において縦列間の塩基を比較した。末端5塩基をスコアリングの対象とし、スコアリングの重みを次のように設定した。末端から5番目の塩基が異なる場合をスコア1とし、4番目をスコア2とし、3番目をスコア3とし、2番目をスコア5とし、そして1番目(末端)をスコア8とした。ギャップについては、ギャップの差の絶対値が1、2、3、4、および5に対して、スコアをそれぞれ3、5、7、9、および11と設定した。アニーリングの安定性により、GまたはCの塩基についてはスコアを1.5倍にした。このような設定でスコアリングして、各コンセンサス配列のスコアを決定した。なお、スコア0のコンセンサス配列のうち、数種のDNA配列のみが原因となるものについては、原因となるDNA配列以外の配列の比較に基づくスコアを、括弧内に注釈付きで記録した。
次に、コンセンサス配列の塩基について、Tm値を55℃に設定して塩基長を調節し、そしてホモダイマーの形成を自動修正した。
得られた配列の中から、スコアが12以上のコンセンサス配列(フォワードプライマーの候補として5種、およびリバースプライマーの候補として6種)を以下の表1に例示する。なお、表1において、リバースプライマーについて、上段にコンセンサス配列および下段の括弧内にプライマーとしての配列を示す。
Figure 0005682075
(実施例1−2:反芻動物特異的DNA検出用プライマーの特異性の確認)
上記実施例1−1で得られたコンセンサス配列(スコア8以上)について、BLASTによって特異性の確認を行った。このうち特異性の良好なプライマーとしての配列を、DNA自動合成機を用いて合成した。ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ヒト、ウマ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス、クジラ、トリ、サケ、カレイ、アジ、タラ、サバ、サンマ、ニジマス、カツオ、イワシ、マグロ、カニ、アサリ、エビ、およびイカの各肉試料から、ミトコンドリアDNAを以下のように調製した。各肉試料を10倍量の緩衝液(10mM Tris−HCl,pH7.5、20mM EDTA,pH7.5)に懸濁し、ビーズ破砕法で破砕した後、市販の組織細胞ミトコンドリアDNA抽出キットであるmtDNAエキストラクターCTキット(和光純薬工業製)を用いてDNAを抽出した。
それぞれのDNA試料を鋳型とし、種々のプライマー対についてPCRを行った。PCRの条件は以下の通りである:反応緩衝液(10mM Tris−HCl,pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl、0.001%(W/V)ゼラチン);95℃で9分熱変性した後、変性:92℃、30秒;アニーリング:55℃、30秒;伸長:72℃、30秒の反応を45サイクル繰り返し、最後に72℃、5分反応させた。反応終了後、アガロースゲル電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色してPCR産物(DNA断片)を検出した。その結果、以下の表2に示すフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを用いた場合に、非常に高い特異性および検出感度を得ることができた。
Figure 0005682075
表2には、これらのプライマー対によって増幅される部位について、GenBankのAY526085のウシミトコンドリアDNA配列を参照に記載した。ペア1(5D2と3D5との組み合わせ)によって増幅される部分は、非特許文献4および5に記載されている増幅領域の近傍であるかまたは一部重複する領域であるが、増幅断片およびプライマー配列ともに異なっている。このように、本発明の方法に従って設計することにより、増幅のターゲットとすべき領域を予め特定していなかったにもかかわらず、同様の目的で増幅されることが公知であった領域の近辺で、より高感度なプライマー対を新たに取得することができた。なお、その他のプライマー対によって増幅される部分は、これまでに種特異的に増幅される領域としての報告はない。
次に、これらのプライマー対を用いた場合の各種動物由来のDNAを鋳型とするPCRを行った。代表的な電気泳動写真を図1(ペア1:5D2と3D5との組み合わせ)および図2(ペア2:5K4と3K4との組み合わせ)に示し、これらの結果を表3にまとめる。図1および2ならびに表3からわかるように、これらのプライマー対は、反芻動物のみを検出可能であることがわかった。
Figure 0005682075
(実施例1−3:反芻動物特異的DNA検出用プライマー対の検出感度の確認)
ウシ、シカ、およびヒツジのミトコンドリアDNAについて、予め抽出DNAの濃度を測定した。次いで、PCRチューブあたり1.0ng、0.1ng、0.01ng、0.001ng(1.0pg)、0.0001ng(0.1pg)、および0.00001ng(0.01pg)のDNAを加えて、ペア1のプライマー対(5D2と3D5との組み合わせ)を用いてPCRを行った。電気泳動写真を図3に示す。その結果、0.1pgのDNAを含む場合でも、電気泳動のバンドはシグナル強度が強く、非常に高感度で検出可能であった。
(実施例2:各種飼料中の反芻動物特異的DNAの検出)
種々の魚粉、チキンミール、フェザーミール、ポークチキンミール、および家畜用配合飼料について、反芻動物特異的DNAの検出を検討した。100mgとり、上記実施例1−2と同様に10倍量の緩衝液に懸濁し、ビーズ破砕法で破砕した後、市販の組織細胞ミトコンドリアDNA抽出キット(和光純薬工業製)を用いてミトコンドリアDNAを抽出した。このDNAを鋳型として、反芻動物特異的DNA検出用プライマー対(ペア1:5D2と3D5との組み合わせ)を用いて、実施例1−2と同じ条件でPCRを行った。結果を図4に示す。反芻動物由来成分を含まない飼料(レーン1〜12および14〜18)では201bpのバンドは検出されなかったが、ウシ由来成分を含むレーン13の配合飼料については、201bpバンドを検出できた。また、配合飼料にウシ肉骨粉を添加して、種々の濃度のウシ肉骨粉を含む試料を調製した。上記実施例1−2と同様の手順でこれらの試料からミトコンドリアDNAを抽出し、ペア1のプライマー対(5D2と3D5との組み合わせ)を用いて検出感度を確認した。その結果、0.01%(w/w)添加まで検出可能であることがわかった(図5)。
(実施例3:ブタ特異的DNA検出用プライマーの取得)
(実施例3−1:ブタ特異的DNA検出用プライマーの設計)
検索対象とするDNA配列の領域をミトコンドリアDNAとし、上記実施例1−1と同様の手順で、ブタ特異的DNA検出用プライマーを設計した。GenBankから、ブタのミトコンドリアDNA配列について40種類のID番号のリストを取得した。また、ブタ以外の動物種のミトコンドリアDNAについても33種類のID番号のリストを取得した。ID番号のリストを以下の表4に示す。
Figure 0005682075
これらのID番号のリストをもとに、上記実施例1−1と同様にブタ特異的DNA検出用プライマーを設計した。得られた配列の中から、スコアが15以上のコンセンサス配列(フォワードプライマーの候補として12種、およびリバースプライマーの候補として5種)を以下の表5に例示する。なお、表5において、リバースプライマーについて、上段にコンセンサス配列および下段の括弧内にプライマーとしての配列を示す。
Figure 0005682075
(実施例3−2:ブタ特異的DNA検出用プライマーの特異性の確認)
上記実施例3−1で得られたコンセンサス配列(スコア8以上)について、BLASTによって特異性の確認を行った。このうち特異性の良好なプライマーとしての配列を、DNA自動合成機を用いて合成した。6種類のブタの肉試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製した。これらの抽出DNAおよび市販のブタミトコンドリアDNA(テキサスジェノミクスジャパン製)を鋳型として、上記実施例1−2と同様にPCRを行った。その結果、以下の表6に示すフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを用いた場合に、非常に高い特異性および検出感度を得ることができた(図6を参照)。
Figure 0005682075
表6には、これらのプライマー対によって増幅される部位について、GenBankのAF034253のブタミトコンドリアDNA配列を参照に記載した。ペアI(PigATP6-5.3とPigATP6-3.9との組み合わせ)によって増幅される部分、ならびにペアIII(PIG 5HとPIG 3Hとの組み合わせ)によって増幅される部分は、非特許文献1および6に記載されている増幅領域の近傍であるかまたは一部重複する領域であるが、増幅断片およびプライマー配列ともに異なっている。また、ペアIV(PIG 5JとPIG 3Jとの組み合わせ)によって増幅される部分は、非特許文献7に記載されている増幅領域の近傍であるが、増幅断片およびプライマー配列ともに全く異なっている。なお、ペアII(PIG 5GとPIG 3Gとの組み合わせ)によって増幅される部分は、これまでに種特異的に増幅される領域としての報告はない。
次に、これらのプライマー対を用いて、種々のブタの品種由来のDNAを鋳型とするPCRを行った。代表的な電気泳動写真を図6に示す。いずれのプライマー対においても、品種にかかわらずブタDNAを検出できた。
次いで、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、シカ、ウサギ、ラット、マウス、ヒト、クジラ、ブタ、ニワトリ、ウズラ、アイガモ、イワシ、アジ、マグロ、カツオ、サンマ、サケ、タラ、カレイ、ニジマス、カニ、エビ、イカ、アサリ、トウモロコシ、および配合飼料の各試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製し、種々のブタ特異的プライマー対を用いてPCRを行った。4種類のプライマー対のいずれも、ポジティブコントロールであるブタDNAのみが検出され、その他の試料については不検出であった。図7に、ペアI(PigATP6-5.3とPigATP6-3.9との組み合わせ)を用いた場合の電気泳動写真を例示する。
(実施例3−3:ブタ特異的DNA検出用プライマー対の検出感度の確認)
ブタミトコンドリアDNA(株式会社テキサスジェノミクスジャパン製:濃度10ng/μL)を用いて、PCRチューブあたり1.0ng、0.1ng、0.01ng、0.001ng、および0.0001ngのDNAを加え、上記と同様にPCRを行って、種々のプライマー対について検出感度を検討した。その結果、ペアI(PigATP6-5.3とPigATP6-3.9との組み合わせ)を用いた場合は、0.0001ngのDNAを含む場合でも、電気泳動のバンドはシグナル強度が強く、非常に高感度で検出可能であった(図8)。また、ペアIII(PIG 5HとPIG 3Hとの組み合わせ)の場合も、同様に0.0001ngのDNAを含む場合でも検出可能であった。さらに、ペアIV(PIG 5JとPIG 3Jとの組み合わせ)の場合は、0.1ngのDNAを含む場合まで検出可能であった。
(実施例4:飼料中のブタ特異的DNAの検出)
配合飼料中に、種々の量のブタ肉骨粉を添加して、種々の濃度のブタ肉骨粉を含む試料を調製した。上記実施例と同様の手順で、これらの試料からミトコンドリアDNAを抽出し、上記のプライマー対を用いて検出した。その結果、ペアI(PigATP6-5.3とPigATP6-3.9との組み合わせ)を用いた場合は、0.01%(w/w)のブタ肉骨粉を含む場合でさえも検出可能であった(図9)。また、ペアIII(PIG 5HとPIG 3Hとの組み合わせ)の場合は、0.1%(w/w)添加まで検出可能であり、そしてペアIV(PIG 5JとPIG 3Jとの組み合わせ)の場合は、1.0%(w/w)添加まで検出可能であった。
(実施例5:クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマーの取得)
(実施例5−1:クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマーの設計)
検索対象とするDNA配列の領域をミトコンドリアDNAとし、上記実施例1−1と同様の手順で、クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマーを設計した。GenBankから、クジラ・イルカ類のミトコンドリアDNA配列について9種類のID番号のリストを取得した。また、クジラ・イルカ類以外の動物種のミトコンドリアDNAについても18種類のID番号のリストを取得した。ID番号のリストを以下の表7に示す。
Figure 0005682075
これらのID番号のリストをもとに、上記実施例1−1と同様にクジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマーを設計した。得られた配列の中から、スコアが10以上のコンセンサス配列(フォワードプライマーの候補として13種、およびリバースプライマーの候補として8種)を以下の表8に例示する。なお、表8において、リバースプライマーについて、上段にコンセンサス配列および下段の括弧内にプライマーとしての配列を示す。
Figure 0005682075
(実施例5−2:クジラ・イルカ類特異的DNA検出用プライマーの特異性の確認)
上記実施例5−1で得られたコンセンサス配列について、BLASTによって特異性の確認を行った。このうち特異性の良好なプライマーとしての配列を、DNA自動合成機を用いて合成した。5種類のクジラ・イルカ類の肉試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製した。これらの抽出DNAを鋳型として、上記実施例1−2と同様にPCRを行った。その結果、以下の表9に示すフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを用いた場合に、非常に高い特異性および検出感度を得ることができた。
Figure 0005682075
表9には、これらのプライマー対によって増幅される部位について、GenBankのAJ554054のミンククジラ(Balaenoptera acutorostrata)のミトコンドリアDNA配列を参照に記載した。ペアI(whale51(配列番号52)とwhale31(配列番号53)との組み合わせ)によって増幅される部分、ならびにペアII(whale51(配列番号52)とwhale32(配列番号54)との組み合わせ)によって増幅される部分は、従来のいずれの文献に記載されているものとは、増幅断片およびプライマー配列ともに異なっている。
次に、これらのプライマー対を用いて、種々のクジラ・イルカ類の種由来のDNAを鋳型とするPCRを行った。代表的な電気泳動写真を図10に示す。いずれのプライマー対においても、種にかかわらずクジラ・イルカ類DNAを検出できた。
次いで、ウシ、シカ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、ラット、マウス、ニワトリ、アジ、タラ、サバ、サンマ、カツオ、イワシ、マグロ、毛ガニ、エビ、イカ、およびヒトの各試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製し、2種のクジラ・イルカ類特異的プライマー対を用いてPCRを行った。2種類のプライマー対のいずれも、ポジティブコントロールであるクジラDNAのみが検出され(レーンP)、その他の試料については不検出であった。図11に、ペアI(whale51(配列番号52)とwhale31(配列番号53)との組み合わせ)およびペアII(whale51(配列番号52)とwhale32(配列番号54)との組み合わせ)を用いた場合の電気泳動写真を例示する。
(実施例6:シカ特異的DNA検出用プライマーの取得)
(実施例6−1:シカ特異的DNA検出用プライマーの設計)
検索対象とするDNA配列の領域をミトコンドリアDNAとし、上記実施例1−1と同様の手順で、シカ特異的DNA検出用プライマーを設計した。GenBankから、シカのミトコンドリアDNA配列について10種類のID番号のリストを取得した。また、シカ以外の動物種のミトコンドリアDNAについても21種類のID番号のリストを取得した。ID番号のリストを以下の表10に示す。
Figure 0005682075
これらのID番号のリストをもとに、上記実施例1−1と同様にシカ特異的DNA検出用プライマーを設計した。得られた配列の中から、スコアが10以上のコンセンサス配列(フォワードプライマーの候補として8種、およびリバースプライマーの候補として3種)を以下の表11に例示する。なお、表11において、リバースプライマーについて、上段にコンセンサス配列および下段の括弧内にプライマーとしての配列を示す。
Figure 0005682075
(実施例6−2:シカ特異的DNA検出用プライマーの特異性の確認)
上記実施例6−1で得られたコンセンサス配列について、BLASTによって特異性の確認を行った。このうち特異性の良好なプライマーとしての配列を、DNA自動合成機を用いて合成した。2種類のシカの肉試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製した。これらの抽出DNAを鋳型として、上記実施例1−2と同様にPCRを行った。その結果、以下の表12に示すフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを用いた場合に、非常に高い特異性および検出感度を得ることができた。
Figure 0005682075
表12には、このプライマー対によって増幅される部位について、GenBankのDQ985076のタイワンジカ(ハナジカ)(Cervus nippon taiouanus)のミトコンドリアDNA配列を参照に記載した。deer54(配列番号55)とdeer33(配列番号56)との組み合わせによって増幅される部分は、従来のいずれの文献に記載されているものとは、増幅断片およびプライマー配列ともに異なっている。
次いで、種々の動植物由来試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製し、シカ特異的プライマー対を用いてPCRを行った。代表的な電気泳動写真を図12に示す。このプライマー対を用いると、ポジティブコントロールであるシカDNAとともに、品種にかかわらずシカDNAが検出され(レーン5および6)、その他の試料については不検出であった。
(実施例7:ヒツジ特異的DNA検出用プライマーの取得)
(実施例7−1:ヒツジ特異的DNA検出用プライマーの設計)
検索対象とするDNA配列の領域をミトコンドリアDNAとし、上記実施例1−1と同様の手順で、ヒツジ特異的DNA検出用プライマーを設計した。GenBankから、ヒツジのミトコンドリアDNA配列について2種類のID番号のリストを取得した。また、ヒツジ以外の動物種のミトコンドリアDNAについても29種類のID番号のリストを取得した。ID番号のリストを以下の表13に示す。
Figure 0005682075
これらのID番号のリストをもとに、上記実施例1−1と同様にヒツジ特異的DNA検出用プライマーを設計した。得られた配列の中から、スコアが10以上のコンセンサス配列(フォワードプライマーの候補として6種、およびリバースプライマーの候補として2種)を以下の表14に例示する。なお、表14において、リバースプライマーについて、上段にコンセンサス配列および下段の括弧内にプライマーとしての配列を示す。
Figure 0005682075
(実施例7−2:ヒツジ特異的DNA検出用プライマーの特異性の確認)
上記実施例7−1で得られたコンセンサス配列について、BLASTによって特異性の確認を行った。このうち特異性の良好なプライマーとしての配列を、DNA自動合成機を用いて合成した。1種類のヒツジの肉試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製した。この抽出DNAを鋳型として、上記実施例1−2と同様にPCRを行った。その結果、以下の表15に示すフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを用いた場合に、非常に高い特異性および検出感度を得ることができた。
Figure 0005682075
表15には、このプライマー対によって増幅される部位について、GenBankのAF010406のヒツジ(Ovis aries)のミトコンドリアDNA配列を参照に記載した。sheep53(配列番号57)とsheep33(配列番号58)との組み合わせによって増幅される部分は、従来のいずれの文献に記載されているものとは、増幅断片およびプライマー配列ともに異なっている。
次いで、種々の動植物由来試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製し、ヒツジ特異的プライマー対を用いてPCRを行った。代表的な電気泳動写真を図13に示す。このプライマー対を用いると、ヒツジのみが検出され(レーン7およびP)、その他の試料については不検出であった。
(実施例8:ヤギ特異的DNA検出用プライマーの取得)
(実施例8−1:ヤギ特異的DNA検出用プライマーの設計)
検索対象とするDNA配列の領域をミトコンドリアDNAとし、上記実施例1−1と同様の手順で、ヤギ特異的DNA検出用プライマーを設計した。GenBankから、ヤギのミトコンドリアDNA配列について1種類のID番号のリストを取得した。また、ヤギ以外の動物種のミトコンドリアDNAについても30種類のID番号のリストを取得した。ID番号のリストを以下の表16に示す。
Figure 0005682075
これらのID番号のリストをもとに、上記実施例1−1と同様にヤギ特異的DNA検出用プライマーを設計した。得られた配列の中から、スコアが15以上のコンセンサス配列(フォワードプライマーの候補として13種、およびリバースプライマーの候補として15種)を以下の表17に例示する。なお、表17において、リバースプライマーについて、上段にコンセンサス配列および下段の括弧内にプライマーとしての配列を示す。
Figure 0005682075
(実施例8−2:ヤギ特異的DNA検出用プライマーの特異性の確認)
上記実施例8−1で得られたコンセンサス配列について、BLASTによって特異性の確認を行った。このうち特異性の良好なプライマーとしての配列を、DNA自動合成機を用いて合成した。1種類のヤギの肉試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製した。この抽出DNAを鋳型として、上記実施例1−2と同様にPCRを行った。その結果、以下の表18に示すフォワードプライマーとリバースプライマーとの組み合わせを用いた場合に、非常に高い特異性および検出感度を得ることができた。
Figure 0005682075
表18には、このプライマー対によって増幅される部位について、GenBankのAF533441のヤギ(Capra hircus)のミトコンドリアDNA配列を参照に記載した。goat55(配列番号59)とgoat35(配列番号60)との組み合わせによって増幅される部分は、従来のいずれの文献に記載されているものとは、増幅断片およびプライマー配列ともに異なっている。
次いで、種々の動植物由来試料から、上記実施例1−2と同様の手順でミトコンドリアDNAを調製し、ヤギ特異的プライマー対を用いてPCRを行った。代表的な電気泳動写真を図14に示す。このプライマー対を用いると、ヤギのみが検出され(レーン8およびP)、その他の試料については不検出であった。
本発明によれば、任意の範囲の動物種または群(グループ)に由来するDNAを検出するためのプライマーを、より効率的に設計して取得することができる。例えば、反芻動物を検出対象として設計されたプライマーは、飼料中の微量の反芻動物由来の肉骨粉を高感度で検出できる。また、ブタ、シカ、ヒツジまたはヤギを検出対象として設計されたプライマーは、微量のこれらの動物由来肉骨粉を高感度で検出できる。そのため、BSE発生および不適原料の混入の防止のために有用である。さらに、クジラ・イルカ類を検出対象として設計されたプライマーは、微量のクジラ・イルカ類由来肉骨粉を高感度で検出できる。また、本発明のこれらのプライマーは、肉骨粉中の動物由来DNAの検査時に、陽性コントロールプライマーとして利用することにより、検査結果の信頼性を確保することができる。また、本発明のこれらのプライマーは、食肉加工品の表示などの真偽の確認にも用いることができる。

Claims (3)

  1. 配列表の配列番号9の配列からなるプライマーと配列表の配列番号10の配列からなるプライマーとの組み合わせ;配列表の配列番号11の配列からなるプライマーと配列表の配列番号12の配列からなるプライマーとの組み合わせ;配列表の配列番号13の配列からなるプライマーと配列表の配列番号14の配列からなるプライマーとの組み合わせ;または配列表の配列番号15の配列からなるプライマーと配列表の配列番号16の配列からなるプライマーとの組み合わせである、ブタ特異的DNA検出用プライマー対。
  2. 試料中の特定の動物種または群由来の成分を検出する方法であって、請求項1に記載のプライマー対を用い、試料中のDNAを鋳型として、DNA断片をPCR法により増幅する工程、および該増幅されたDNA断片を検出する工程を含み、特定の動物種または群が、ブタである、方法。
  3. 前記試料が、生肉、生魚、肉加工食品、魚加工食品、肉加工品含有食品、魚加工品含有食品、血液、体毛、体液、乳、乳加工品、肉骨粉、骨粉、魚粉、フィッシュソリュブル、だし粕、ならびにこれらを含有する飼料、肥料、ペットフード、および飼料添加物からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
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