JP5680997B2 - フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物およびそれを用いたカバーレイフィルム - Google Patents

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Description

本発明は、ハロゲンフリーでありながら、難燃性を有し、鉛フリーはんだに対応可能な、リフローはんだ耐熱性をもつフレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と言う。)用接着剤組成物およびそれを用いたカバーレイフィルムに関する。
携帯電話等、小型の電子機器に使用されるFPCでは、廃棄した際の燃焼によるダイオキシン問題から、使用材料のハロゲンフリー化が進んでいる。しかしながら、近年の電池の安全性等の問題から、高い難燃性も同時求められている。
更に、近年のFPC実装では、環境負荷を低減するため、鉛フリーはんだを用いるようになり、これに伴いはんだの溶融工程でリフロー炉の設定温度を高くしなければならず、従来の接着フィルムではこの温度に対応できず、フクレ、ハガレ等が発生しやすく、耐熱性の向上が求められている。
このようなものとしては、例えば、はんだ耐熱性、接着力等を向上させた、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物として、エポキシ樹脂等と反応しうる官能基を有するエラストマー、マイクロカプセル型硬化剤、無機充填剤、シリコーンオリゴマーを含む、接着剤組成物が開示されている(特許文献1参照。)。
また、ハロゲンフリーで難燃性を持たせるための手段として、燐酸エステルが一般的に用いられるが、燐酸エステルは液体か、もしくは軟化点の低い固形であることから、カバーレイフィルムとした際に、燐酸エステルがブリードするという問題点を有している。また、燐酸が発生してFPCの回路の銅を腐食し、電気特性を低下させるおそれがある。
また、耐熱性を向上させる手法としては、樹脂の高Tg(ガラス転移温度)化等が提案されているが、はく離接着強さが低下してしまい、フィルムが硬く作業性が劣る等の問題があり、上記特性を充分に満足させるためには、樹脂の改良だけでは不充分となってきている。
さらに、耐熱性を向上させるための他の手法として、無機充填剤を併用する方法がある。しかし、通常、無機充填剤を樹脂ワニスに配合すると、分散性や、無機充填剤が沈降する問題がある。また、沈降が著しい場合には、無機充填剤が容器の底に溜まり、凝集等により固まってしまい、撹拌だけでは充分な分散が困難となる。
充填剤の分散性を向上させる手法としては、カップリング剤等の表面処理剤により、予め表面処理した充填剤を用いる方法がある(特許文献2〜4参照)。しかしながら、市販されている表面処理充填剤の種類が非常に限られているため、各種樹脂配合系に適した表面処理充填剤を選択するのは困難であった。
一方、更なる機能性向上を目的として、樹脂材料への充填剤の配合量は、増加する傾向にある。充填剤の配合量の増加に伴い、上記の沈降はますます顕著となり、これまで以上に優れた分散性やチキソトロピー性が必要となる。これら特性を満足させることは、従来行われているカップリング剤による処理方法では困難となってきている。
特開2010−74050号公報 特開昭63−230729号公報 特公昭62−40368号公報 特開昭61−272243号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ハロゲンフリー難燃性を有し、鉛フリーはんだに対応可能な高い耐熱性を有するFPC用接着剤組成物及びカバーレイフィルムを提供することである。
これら問題を、解決する為に鋭意研究を重ねた結果、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物において、懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)、熱硬化性成分(B)、ピロガロール(C)、ホスフィン酸金属塩(D)、無機充填剤(E)及びシリコンオリゴマー(F)を成分として用いることで、ハロゲンフリーで難燃性を有し、鉛フリーはんだに対応できるリフローはんだ耐熱性をもつことを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、[1]懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)、熱硬化性成分(B)、ピロガロール(C)、ホスフィン酸金属塩(D)、無機充填剤(E)及びシリコンオリゴマー(F)を含むフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[2]ホスフィン酸金属塩(D)が、ホスフィン酸アルミニウム塩、ホスフィン酸カルシウム塩、ホスフィン酸亜鉛塩のうちいずれか1種類もしくは、2種類以上である、前記[1]に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物に関する。
また、本発明は、[3]前記[1]又は[2]のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を、基材フィルム表面に、塗布乾燥してなる、カバーレイフィルムに関する。
本発明によれば、懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)、熱硬化性成分(B)、ピロガロール(C)、ホスフィン酸金属塩(D)、無機充填剤(E)及びシリコンオリゴマー(F)を成分として含有したフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物とすることにより、難燃で鉛フリーはんだに対応可能なリフローはんだ耐熱性をもつフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物およびそれを用いたカバーレイフィルムを提供することができる。
そして、有機りん系難燃剤であるホスフィン酸金属塩によって、ハロゲンフリー難燃性を有し、還元剤であるピロガロールを併用することで、鉛フリーはんだに対応可能な高い耐熱性を有する、FPC用接着剤組成物及びカバーレイフィルムを提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物に用いるアクリルエラストマー(A)とは、通常、アクリルゴム、あるいは、アクリル酸アルキルエステル(メタアクリル酸エステルも含む、以下同様)を成分としている。また、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸アミド、アクリル酸イソデシル、アクリル酸オクタデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸アリル、アクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸エチレングリコールメチルエーテル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸アミド、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸N−ビニルピロリドン、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。さらにアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2ヒドロキシルプロピル、アリルアルコール等の水酸基を有する単量体、グリシジルアクリレート等のエピクロルヒドリン変成物のエポキシ基を有する単量体、カルボキシル基を有するビニル単量体、アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。これらの中から、通常、1種類または2種類以上を選択して使用できる。カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸等があげられるが、これらに限定されるものではない。
用いられるアクリルエラストマー(A)としては、懸濁重合で合成されたものである。懸濁重合で合成することにより、塩析工程を必要とせず、マイグレー ション低下の原因となる乳化剤の影響を受けにくくなる。アクリルエラストマー(A)において、懸濁重合により合成されたものとしては、アクリル酸メチル、 アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられる。
本発明で使用される熱硬化性成分(B)としては、反応性、耐熱性の点から、エポキシ樹脂、又は、フェノール樹脂が好ましく、さらにその両方の混合物がより好ましい。なお、エポキシ樹脂、フェノール樹脂において、重量平均分子量、軟化点等は、特に制限されるものではない。
本発明で使用される熱硬化性成分(B)の含有量としては、懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)100質量部に対し、10〜200質量部が好ましく、50〜150質量部がより好ましく、70〜120質量部が特に好ましい。10質量部以上であることにより、耐熱性等の効果が得られ、また、200質量部以下であることにより、接着性等の効果が得られる。なお、200質量部を超えると、接着性が低下するおそれがある。
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物及びこれらのアルキル置換体、水素添加物等が例示される。エポキシ樹脂は、1種類のものを単独で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。
エポキシ樹脂は、加水分解塩素の含有量が500ppm以下のものが好ましい。加水分解塩素の含有量が500ppmを超えると、耐電食性が劣化する等、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物の電気特性を低下させるおそれがある。
フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒドを酸またはアルカリを触媒として加え反応させたもので、フェノール類としては、フェノール、メタクレゾール、パラクレゾール、オルソクレゾール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール等が使用され、アルデヒド類として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、パラアセトアルデヒド、ブチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、特に制限されるものではない。一般には、ホルムアルデヒドまたはパラホルムアルデヒドが使用される。この他に、植物油変性フェノール樹脂を用いることもできる。植物油変性フェノール樹脂は、フェノール類と植物油とを酸触媒の存在下に反応させ、ついで、アルデヒド類をアルカリ触媒の存在下に反応させることにより得られる。酸触媒としてはパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。アルカリ触媒としては,アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のアミン系触媒が挙げられる。
本発明で使用されるホスフィン酸金属塩(D)としては、例えば、Li、Na、K、Cs、Be、Ca、Mg、Sr、Ba、Al、Sb、Cd、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZn等の金属塩が挙げられ、これらのうち1種類もしくは、2種類以上使用する。また、本発明で使用されるホスフィン酸金属塩(D)としては、下記一般式(I)で表されるものが挙げられる。
Figure 0005680997
例えば、前記式(I)中、R、Rは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数12以下のアリール基であり、Mは、金属塩であり、カルシウム、アルミニウム又は亜鉛が好ましく、M=アルミニウムのときm=3であり、それ以外はm=2である。
よって、本発明で使用されるホスフィン酸金属塩(D)としては、ホスフィン酸アルミニウム塩、ホスフィン酸カルシウム塩、ホスフィン酸亜鉛塩が好ましく、1種類もしくは、2種類以上使用するのがより好ましい。
また、ホスフィン酸アルミニウム塩の具体例としては、クラリアントジャパン株式会社製商品名:OP−930、OP−935及びOP−940等を挙げることができる。
本発明で使用されるホスフィン酸金属塩(D)の含有量としては、懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)と熱硬化性成分(B)の合計100質量部に対し、0.1〜100質量部が好ましく、1〜70質量部がより好ましく、1〜50質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であることにより、無機難燃剤又は無機充填剤と併用することで、FPC構成での難燃性が得られる。また、100質量部を超えると、耐熱性の低下や電気特性低下が発生するおそれがある。
上記式(I)で表される化合物を接着剤組成物中に均一に包含させることで、熱的、化学的に安定な状態となる。また、前記化合物は、約300〜400℃の温度で気化してホスフィン酸化物イオンと、金属イオンとに分解されやすいことから、燃焼時において、カバーレイフィルム等の表面にホスフィン酸化物イオンが移行していく。そして、カバーレイフィルムの表面には、燃焼時の樹脂分解等に伴ない、スス成分(主に炭素成分)が生成・堆積し、金属イオンを取り込んで強化された、熱・酸素の遮断効果の高いチャー(熱分解残渣)が形成される。また、そのチャーの表面層には、リン化合物が析出し、リン化合物による難燃効果の高い拡散層(難燃層)が形成されるので、高い難燃性が得られる。そして、難燃剤成分は接着剤組成物中に安定して存在するため、難燃剤成分のブリードアウトが生じにくく少量であっても、難燃性を長期間付与できる。
本発明で使用されるピロガロール(C)は、純度90質量%以上のものが好ましい。ピロガロールは、還元剤として機能し、耐熱性向上に効果がある。ピロガロールの作用により、フレキシブルプリント配線板の銅配線の酸化を防止し、あるいは、他の成分の影響や製造工程により酸化した銅配線をその還元効果により金属銅に戻すことによって、耐熱性を維持し、さらに接着性も向上する。
本発明で使用されるピロガロール(C)の含有量としては、懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)と熱硬化性成分(B)の合計100質量部に対し、0.1〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましく、2〜10質量部が特に好ましい。0.1質量部以上であることにより、耐熱性向上等の効果が得られる。また、30質量部を超えると、はく離強さの低下が起こり、好ましくない。

本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物は、無機充填剤(E)、シリコンオリゴマー(F)を含む。また、必要に応じ、硬化剤、硬化促進剤、有機溶媒等を配合してもよい。
本発明で使用される無機充填剤(E)として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化ケイ素等の金属酸化物が挙げられる。本発明においては、無機充填剤(E)として、特に水酸化アルミニウムを使用することが好ましい。水酸化アルミニウムは、イオン性不純物が少なく、低コストであることから、FPCを含め、電子材料用途として汎用されていることからより好適である。これらは、単独あるいは必要に応じて2種以上併用して用いることができる。
無機充填剤の形状、平均粒径については特に制限はなく、通常、平均粒径:0.01〜50μm、好ましくは0.1〜15μmのものが好適に用いられる。これらの無機充填剤(E)の配合量は、接着剤組成物の樹脂成分の固形分の合計100質量部に対して10〜200質量部の範囲が好ましく、30〜150質量部がより好ましく、50〜100質量部が特に好ましい。200質量部を超えると、常態はく離接着強さが低下する傾向がある。また、10質量部未満では、耐熱性の低下や流れ出し量が多くなりすぎて、プレス作業性に劣る傾向がある。なお、平均粒径は、例えば、レーザー回析式粒度分布測定法により、求めることが可能である。
さらに、無機充填剤(E)は、分散性を向上する目的で、シリコンオリゴマー(F)で表面処理をして用いられることが好ましい。無機充填剤(E)の表面処理としては、接着剤組成物中において、無機充填剤(E)とシリコンオリゴマー(F)を混合して行っても良い。あるいは、予め、シリコンオリゴマー(F)で表面処理した無機充填剤(E)を使用してもよい。なお、接着剤組成物中において、無機充填剤(E)の表面処理を行う場合には、最初に、無機充填剤(E)を有機溶媒に分散させた後、それに、シリコーンオリゴマー(またはその溶液)を添加し、その後、他の成分を添加することが好ましい。
本発明で使用される硬化剤は、通常、樹脂の硬化剤および硬化触媒として作用する。これらは、従来公知の種々のものを使用することができ、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、無水ピロメリット酸、芳香族ポリアミン、三フッ化ホウ素トリエチルアミン錯体等の三フッ化ホウ素のアミン錯体、1−アルキル−2−フェニルイミダゾール、2−アルキル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−アルキルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の有機酸、ジシアンジアミド、トリフェニルフォスフィン、ジアザビシクロウンデセン、ヒドラジン、フェノールノボラックやクレゾールノボラック等の多官能性フェノール、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の公知のものが使用できる。なお、これら硬化剤(硬化触媒)は単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
本発明に用いられるシリコーンオリゴマー(F)は、予め3次元架橋していることが好ましく、従って、2官能性シロキサン単位(RSiO2/2)、3官能性シロキサン単位(RSiO3/2)および4官能性シロキサン単位(RSiO4/2)(式中、Rは有機基、例えば、メチル基、エチル基等の炭素数1又は2のアルキル基、フェニル基等の炭素数6〜12のアリール基、ビニル基等であり、シリコーンオリゴマー中のR基は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。)から選らばれる少なくとも一種類のシロキサン単位を含有し、シリコーンオリゴマーの重合度は、2〜70(GPC(ゲル浸透クロマトグラフ分析)による重量平均分子量からの換算)のものが好ましい。
例えば、2官能性シロキサン単位からなるもの、3官能性シロキサン単位からなるもの、4官能性シロキサン単位からなるもの、2官能性シロキサン単位と3官能性シロキサン単位からなるもの、3官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなるもの、2官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなるもの、及び2官能性シロキサン単位と3官能性シロキサン単位と4官能性シロキサン単位からなるものが挙げられる。また、シリコーンオリゴマーの重合度は、通常、2〜70であるが、好ましくは、重合度6〜70であり、より好ましくは10〜50である。重合度が2未満では、充分な3次元架橋構造が得られず、重合度が70を超えるシリコーンオリゴマーを用いると、表面処理の際に処理むらが起こり、耐熱性が低下することがある。
シリコーンオリゴマー(F)の配合量は、無機充填剤(E)100質量部に対して0.01〜50質量部が好ましい。0.01質量部未満では、界面接着性向上の効果が不充分となることがあり、50質量部を超えると、耐熱性等が低下する傾向がある。
本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物は、有機溶剤に溶解または分散してワニスとして使用できる。有機溶剤としては特に制限はなく、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤を用いてもよい。なお、本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物のワニスの樹脂固形分量は、通常、20〜50質量%である。
本発明のカバーレイフィルムは、基材フィルム上に、前記のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を、直接コーティングして、有機溶剤を乾燥することで得られる。コーティング方法としては、特に制限されないが、コンマコーター、リバースロールコーター等が挙げられる。また、基材フィルムとしては、塗布可能であれば、特に限定しないが、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ポリアミドフィルム、液晶ポリマー等が挙げられる。
上記の用途に用いられるポリイミドフィルムとしては、例えば、Kapton(東レデュポン株式会社製商品名)やアピカルNPI(株式会社カネカ製商品名)が挙げられるが、イミド基を有するフィルム状のものであれば特に限定はされない。
本発明のカバーレイフィルムの作製方法としては、例えば、ポリイミドフィルム等の基材フィルム上に、本発明のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物のワニスを、乾燥後に厚み10〜50μmになるように、塗布し、80〜150℃で、1〜10分間乾燥し、有機溶媒を除去する。また、さらに必要に応じ、40〜60℃で、10〜48時間、接着剤の養生を行い接着剤のフロー性を安定化してもよい。
次に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
(1)シリコーンオリゴマー処理液の製造
撹拌装置、コンデンサー及び温度計を備えたガラスフラスコに、テトラメトキシシラン:40g及びメタノール:93gを配合した溶液を入れ、次いで、酢酸:0.47g及び蒸留水:18.9gを添加し、50℃で8時間撹拌し、シロキサン単位の重合度が20(GPCによる重量平均分子量から換算、以下同じ)のシリコーンオリゴマー(F)を合成した。得られたシリコーンオリゴマー(F)は、水酸基と反応する末端官能基としてメトキシ基及びシラノール基を有するものである。
得られたシリコーンオリゴマー(F)にメタノールを加えて、固形分10質量%のシリコーンオリゴマー(F)処理液を作製した。
(2)フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物の溶液の調整
無機充填剤(E)としてBF013(水酸化アルミニウム;日本軽金属株式会社製商品名)150質量部を、メチルエチルケトン382質量部に分散させた後、シリコーンオリゴマー(F)として作製したシリコーンオリゴマー(F)処理液(固形分10質量%)を15質量部加え、30分間室温(25℃)にて撹拌した後、その溶液に、アクリルエラストマー(A)としてWS023DR(アクリルゴム;帝国化学産業株式会社製商品名)50質量部、熱硬化性成分(B)としてEP1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ジャパンエポキシレジン株式会社製商品名)20質量部と、YDCN703(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;東都化成株式会社製商品名)10質量部と、CRG−951(ノボラック型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)30質量部を加え、さらにピロガロール(C)1質量部、ホスフィン酸金属塩(D)としてりん系難燃剤のEXIOLT OP935(ホスフィン酸アルミニウム塩、クラリアント社製商品名)を10質量部加えた。さらに上記混合液に、エポキシ樹脂硬化剤として2P4MZ(四国化成工業株式会社製商品名)1質量部を混合したものをフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)とした。なお、作製したフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)の樹脂固形分量は、40質量%であった。
(3)カバーレイフィルムの作製
基材フィルムである厚み25μmのポリイミドフィルムKapton100H(デュポン株式会社製商品名)に、前記のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物のワニスを、乾燥後に厚み25μmになるように、塗布し、120℃で、5分間乾燥し、有機溶媒(メチルエチルケトン)を除去して、カバーレイフィルムを作製した。
(実施例2)
EP1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)及びYDCN703(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)を、YDF170(ビスフェノールF型エポキシ樹脂;東都化成株式会社製商品名)20質量部に、2P4MZ(エポキシ樹脂硬化剤)を、ジシアンジアミド:1質量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)と、カバーレイフィルムを作製した。
(実施例3)
EP1001(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)を30質量部に、YDCN703(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)を20質量部に、CRG951をBRP−2444(レゾール型フェノール樹脂;昭和高分子株式会社製商品名)10質量部に、OP935(ホスフィン酸金属塩(D))を20質量部に変更以外は、実施例1と同様に行い、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)と、カバーレイフィルムを作製した。
(比較例1)
OP935(ホスフィン酸金属塩(D))を添加しない以外は、実施例3と同様に行い、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)と、カバーレイフィルムを作製した。
(比較例2)
ピロガロール(C)を添加しない以外は、実施例3と同様に行い、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)と、カバーレイフィルムを作製した。
(比較例3)
無機充填剤(E)であるBF013(水酸化アルミニウム)と、シリコンオリゴマー(F)処理液を添加しない以外は、実施例3と同様に行い、フレキシブルプリント配線板用接着剤組成物溶液(ワニス)と、カバーレイフィルムを作製した。
実施例1〜3、比較例1〜3で作製したカバーレイフィルムの特性を、以下に示す方法により評価した。結果は表1に示した。
(評価方法)
(1)常態はく離接着強さ
ポリイミドフィルムKapton100H(デュポン株式会社製商品名)上の、作製したカバーレイフィルム表面に、片面銅箔のCCL(新日鐵化学株式会社製商品名;エスパネックスM;フレキシブルプリント基板用無接着剤銅張積層板)の銅箔面を100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せた。その後、プレス(温度170℃、圧力1MPa、60分間)を行ったものを試験片とした。
硬化した試験片をJIS K 6854−3に準拠し、カバーレイフィルムと、貼り合せたポリイミドフィルム間のT形はく離接着強さを測定した。はく離温度は、23℃、はく離速度は10mm/分で行った。
(2)リフローはんだ耐熱性
上記試験片は、JIS C 6481に準拠し、加湿条件(温度40℃、相対湿度80%)に12時間放置した後、リフローはんだ付け装置(日本パルス研究所製 RF430)を用いて、サンプル表面最高温度260℃となるように、試験片を加熱し、カバーレイフィルムと、貼り合せたCCL間のフクレの有無を目視で観測した。フクレ無しを「○」、フクレ有りを「×」とした。
(3)流れ出し性
ポリイミドフィルムKapton100H(デュポン株式会社製商品名)上の、作製したカバーレイフィルム表面に、厚さ25μmのポリイミドフィルムKapton100H(デュポン株式会社製商品名)を、100℃のラミネートロール(線圧5kg/cm、ラミネート速度1m/分)にて貼り合せ試験片とした。
前記試験片を80mm×80mmに切出し、プレス(160℃、3MPa、20分間)を行った。その後、四辺それぞれの最大はみ出し部分をノギスにて測定し、その平均を流れ出し量(mm)とした。流れ出し量の評価としては、0.5mm未満を「○」、0.5mm以上を「×」とした。
(4)難燃性
難燃性の評価は、難燃性の規格UL94VTMによる試験(薄手材料垂直燃焼試験)を行い、VTM−0に合格したものを「○」で表し、不合格のものを「×」で表した。なお、試験片は、常態はく離接着強さに使用したものと同様のものを使用した。
Figure 0005680997
表1に示したように、ホスフィン酸金属塩(D)を添加しない比較例1は、難燃性に劣り、ピロガロール(C)を添加しない比較例2は、耐熱性に劣り、無機充填剤(E)とシリコンオリゴマー(F)処理液を添加しない比較例3は、耐熱性に劣り、また流れ出し性も悪く、作業性に問題があることがわかる。それに対し、実施例1〜3のカバーレイフィルムは、いずれの特性においても優れていることがわかる。
有機りん系難燃剤であるホスフィン酸金属塩と、還元剤であるピロガロールを併用することで、鉛フリーはんだに対応可能な、高い耐熱性を有するFPC用接着剤組成物及びカバーレイフィルムを提供することができる。

Claims (3)

  1. 懸濁重合で合成されたアクリルエラストマー(A)、熱硬化性成分(B)、ピロガロール(C)、ホスフィン酸金属塩(D)、無機充填剤(E)及びシリコンオリゴマー(F)を含むフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
  2. ホスフィン酸金属塩(D)が、ホスフィン酸アルミニウム塩、ホスフィン酸カルシウム塩、ホスフィン酸亜鉛塩のうちいずれか1種類もしくは、2種類以上である、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物。
  3. 請求項1又は2のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板用接着剤組成物を、基材フィルム表面に、塗布乾燥してなる、カバーレイフィルム。
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