JP5678799B2 - モータの回転子 - Google Patents
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Description
上記モータ回転子において、高速回転時に働く遠心力により回転子自身が外周方向に膨張変形し、その変形により短絡環に高い応力が働く。モータの起動停止を繰り返した場合、短絡環には高い応力が繰り返し負荷され、疲労寿命が低下する懸念がある。
その対策として、例えば特許文献1には、回転子の回転軸方向の両端面に回転子巻線を短絡するリング状に形成された短絡環と、インローによって接合し、回転軸に嵌合焼きばめ固着され回転による短絡環の変形を補強する補強リングが開示されている。
また、特許文献2には、ロータコアのロータスロット内に鋳込んだアルミ材を同ロータコアの両端面の外方に突出させてなるエンドリングが、その内側に固定配置するバランスプレートのリング体の周りに形成した鉤の手構造部を鋳込む構造となし、両者の結合部はラジアル方向に絡み合う2つ巴構造にしてエンドリングの遠心力による膨張を阻止したものが開示されている。
一方、短絡環と繋がっている導体バーも外周方向に変形しようとするが、鉄心コア部に拘束されている。つまり、導体バーは膨張変形する短絡環を拘束するために、短絡環は外見上外周方向と軸方向上部に持ち上がるような形になり、短絡環と導体バーとの繋ぎ目に応力集中が発生する。
そして、モータの起動停止を繰り返すと、上記遠心力に伴う応力が短絡環と導体バーの繋ぎ目に繰り返し加わる。さらに、モータの温度上昇による熱応力が繰り返し負荷されることになる。その結果、短絡環が金属疲労を起こしたり、導体バーと短絡環の繋ぎ目に大きな繰り返し応力が負荷されることが懸念される。
上記懸念事項に対して、従来より遠心力負荷や温度上昇による短絡環の膨張変形を抑制することを目的として、特許文献1のように短絡環を金属製のカバーで覆う等の対策が講じられてきた。このようなカバーは短絡環の外方向の変形の抑制には有効であるが、上記短絡環の内側ほど高い周方向応力の低減には効果が期待出来ない。また、短絡環とカバーとは比重や膨張係数の異なる異材であることが多いために、短絡環と、遠心力負荷時や温度上昇時に短絡環の変形を拘束しようとするカバーとの間に応力集中が働く可能性がある。
また、特許文献2のように、鉤の手構造部をエンドリングにより鋳込む構造になっているが、その部分に繰り返し応力が集中することになる。
図1はこの発明の実施の形態1によるモータの回転子を示す断面図である。
図1において、モータの回転子10は、円筒状の鉄心コア部3と、鉄心コア部3の内部であって周方向に一定間隔で配設された複数本の導体バー4及びこの導体バー4に繋がれて鉄心コア部3の両端面に配設される短絡環5と、その外径が短絡環5の内径より大きい補強リング6を備える。そして、補強リング6は短絡環5の内周面に焼き嵌めされている。また、補強リング6の内径及び鉄心コア部3の内径をシャフト2の外径より小さくして、鉄心コア部3と補強リング6の内周部にシャフト2が焼き嵌めされている。そして、補強リング6の軸方向両端側にはバランスリング7がシャフト2に焼き嵌めされている。補強リング6の軸方向長さは、短絡環5の軸方向長さより長く設定されているので、バランスリング7は短絡環5に接触しない。
電磁鋼板を複数枚積層した中空円筒状の鉄心コア部3に、導体バー4の断面形状と同じ形状のスロット3aを周方向に所定間隔で開けておく。そして、鉄心コア部3のスロット3aに、ダイカスト法または溶湯鍛造法によりアルミ溶湯を鋳包むことにより、鉄心コア部3の内部に軸方向に延びる複数個の導体バー4と、鉄心コア部3の両端面に導体バー4に繋がる短絡環5を形成する。その後、モータ回転子の外周面、鉄心コア部3の内周面、短絡環5の内周面を所定の寸法にあらかじめ仕上げ加工しておく。
そのため、モータ停止時の短絡環の変形量と、モータの起動時の遠心力負荷や温度上昇による短絡環の変形量との差を小さくすることができ、短絡環5にかかる負荷応力の応力振幅が小さくなる。つまり、図2に示すように、補強リング6を短絡環5に焼き嵌めした場合の応力振幅Aは、焼き嵌めしない場合の応力振幅Bより小さくなり、疲労寿命向上に貢献する。なお、図2において、σaは焼き嵌めにより短絡環に作用する応力、σbは遠心力又は熱により短絡環に作用する応力を表している。
この発明の実施の形態2は、実施の形態1で説明した図1と同様の構成のモータ回転子を使用する。ただし、補強リング6の材質は、短絡環5を構成するアルミと膨張係数が同等のジュラルミンやアルミより膨張係数の大きい亜鉛等を使用する。そして、補強リングの外径と短絡環5の内径は、嵌め合い程度の寸法とし、短絡環5の内周部に補強リング6を焼き嵌めせずに嵌合する。一方、補強リング6の内径をシャフト2の外径より所定寸法小さくし、補強リング6の内周部にシャフト2を焼き嵌め固着する。
図3はこの発明の実施の形態3によるモータの回転子を示す断面図である。
実施の形態3では、図3に示すように、バランスリング7aを短絡環5の外周部を囲むように軸方向に延長したカバー形状とする。そして、バランスリング7aの外周部と短絡環5とは接触させず、1mm以内程度のクリアランスを開ける。その他の構成は、実施の形態1又は実施の形態2と同様である。
7,7a バランスリング、10 モータの回転子。
Claims (4)
- 円筒状の鉄心コア部を有し、上記鉄心コア部の内部であって周方向に一定間隔で配設された導体バー及び上記鉄心コア部の両端面に配設される短絡環が鋳造で一体に成形されたモータの回転子であって、
その外径が上記短絡環の内径より大きく、その内径がシャフトの外径より小さい補強リングを備え、
上記補強リングは上記短絡環の内周部に焼き嵌めされると共に、上記鉄心コア部の内径を上記シャフトの外径より小さくして上記鉄心コア部と上記補強リングの内周部にシャフトが焼き嵌めされたモータの回転子。 - 円筒状の鉄心コア部を有し、上記鉄心コア部の内部であって周方向に一定間隔で配設された導体バー及び上記鉄心コア部の両端面に配設される短絡環が鋳造で一体に成形されたモータの回転子であって、
その外径が上記短絡環の内径より大きいか又は同等であって、その内径がシャフトの外径より小さく、上記短絡環を構成する材質と膨張係数が同等か又は大きい材質の補強リングを備え、
上記補強リングは上記短絡環の内周部に嵌め合わされると共に、上記補強リングの内周部に上記シャフトが焼き嵌めされたモータの回転子。 - 上記補強リングの軸方向長さを上記短絡環の軸方向長さよりも長くし、上記補強リングの端面にバランスリングを接触させる一方で上記短絡環には接触させないようにした請求項1又は請求項2に記載のモータの回転子。
- 上記バランスリングを上記短絡環の外周部を囲むように軸方向に延長したカバー形状とした請求項3に記載のモータの回転子。
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