JP5678664B2 - ヒトβ−ヘキソサミニダーゼBの基質特異性を変換した新規高機能酵素 - Google Patents

ヒトβ−ヘキソサミニダーゼBの基質特異性を変換した新規高機能酵素 Download PDF

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Description

本発明は、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有する組換えタンパク質に関する。
テイ−サックス病及びザンドホッフ病は、いずれも、β-ヘキソサミニダーゼA(Hex A)の活性低下により、神経系細胞にGM2ガングリオシドが蓄積して脳神経症状を来たす疾患である。Hex Aは、α-サブユニットとβ-サブユニットから構成されるヘテロ二量体であり、GM2ガングリオシドを分解する酵素活性を持つ。テイ−サックス病は、α-サブユニット欠損に基づくHex A欠損症であり、ザンドホッフ病は、β-サブユニット欠損に基づくHex A欠損症である。
従来、テイ−サックス病及びザンドホッフ病に対して実際に臨床に使用可能な根本的治療法は確立されていない。一方、これらの疾患に類似した、ファブリー病(α-ガラクトシダーゼ欠損症)、ポンペ病(酸性α-グルコシダーゼ欠損症)、ゴーシェ病(グルコセレブロシダーゼ欠損症)、ムコ多糖症I型(α-L-イズロニダーゼ欠損症)、ムコ多糖症II型(イズルスルファターゼ欠損症)、ムコ多糖症VI型(アリルスルファターゼB欠損症)等の治療に関しては、チャイニーズハムスター卵巣由来の培養細胞(CHO細胞)や培養ヒト線維芽細胞で生産した組換え酵素(欠損酵素)を血管内投与する、酵素補充療法が開発されて臨床段階でも使用され、治療効果を上げている。
しかしながら、これらの酵素補充療法では、もともと当該酵素を体内に持たない患者に対して酵素を繰り返し投与することから、当該酵素に対する抗体が産生され、アレルギー反応を主とする有害副反応が高頻度に見られ、臨床において大きな問題となっていた。また、これらの組換え酵素は、野生型酵素の性質を有し、安定性が低く、細胞内取り込みが必ずしも良いとは限らないことから、治療に際しては1〜2週に1回の割合で頻回に投与する必要があり、神経系細胞等には取り込まれ難く臨床効果が乏しいという欠陥がある。
野生型のヒトβ-ヘキソサミニダーゼA(Hex A;α-サブユニットとβ-サブユニットとのヘテロ二量体からなりGM2ガングリオシドを分解する活性を持つことが知られている)及びヒトβ-ヘキソサミニダーゼB(Hex B;β-サブユニットのホモ二量体からなりGM2ガングリオシドを分解する活性を持たないことが知られている)の産生に関しては、ベイビーハムスター腎臓由来の培養細胞(BHK細胞)で生産する方法が知られている(特許文献1参照)。本発明者らも、CHO細胞株や特殊酵母株に対して、α-サブユニット及びβ-サブユニットをコードする遺伝子(各々HEXA cDNA及びHEXB cDNA)が挿入された発現ベクターを導入し、野生型の組換えHex Aを恒常発現する細胞株を樹立している(特許文献2参照)。この方法で生産した野生型組換えHex Aを、ザンドホッフ病モデルマウスに投与したところ、脳神経系に蓄積していたGM2ガングリオシドの減量や神経症状の改善が見られ、ザンドホッフ病やテイ−サックス病に対する酵素補充療法の有効性が認められていた。
国際公開第03/092612号パンフレット 特開2002-369692号公報
しかしながら、ファブリー病等の他の疾患の患者や当該疾患のモデル動物に、欠損酵素を含む治療薬の投与を繰り返すと、多くの場合において治療薬中の酵素が体内で異物として認識され、抗体が産生されてしまい、その結果、アレルギー反応やアナフィラキシー反応等の有害副反応が高頻度に出現する。このことは、遺伝子治療的な方法で酵素を補充する場合においても同様である。よって、野生型組換えHex Aをそのままテイ−サックス病やザンドホッフ病患者に投与する場合には、上述した場合と同様に、有害副反応が生じる恐れがある。また、野生型組換えHex Aは、血中(血漿中)安定性が低く、障害臓器の細胞(神経系細胞)への取り込み効率が低い。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、テイ−サックス病やザンドホッフ病の酵素補充療法に用い得る酵素として、アレルギー反応やアナフィラキシー反応等の有害副作用が少なく、血中(血漿中)安定性が高く、しかも障害臓器の細胞に取り込まれやすい、酵素タンパク質及び当該タンパク質をコードする遺伝子等を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、β-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット及びβ-サブユニットの立体構造情報に基づいて、β-サブユニットのアミノ酸配列の一部を他の特定のアミノ酸残基に変換することにより、α-サブユニットの基質認識機能を持つ改変β-サブユニットを作製した。そして、本発明者は、この改変β-サブユニットを構成成分として、ホモ二量体である改変β-ヘキソサミニダーゼB(改変Hex B)を作製したところ、GM2ガングリオシドを分解する活性を有することを見出した。この新規酵素(改変Hex B)は、α-サブユニットを含まないため、テイ−サックス病患者に投与しても有害な免疫反応を起こす可能性が少なく、また本来的にHex Bは、Hex Aに比べて安定性が高く、糖鎖の数も多いことから、細胞内への取り込みに関与する糖鎖末端のマンノース6-リン酸残基の含有率も高いと考えられる。従って、上記改変Hex Bを用いれば、Hex A欠損症であるテイ−サックス病やザンドホッフ病に対して優れた新規高機能酵素治療薬を創出できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットの活性部位の構造を変化させて、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を獲得したタンパク質。
上記(1)のタンパク質は、例えば、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニットの基質特異性を有するものが挙げられる。
(2)野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットのアミノ酸配列において第312番目〜第315番目、第452番目及び第453番目のアミノ酸のうち少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列、又は当該置換されたアミノ酸配列のうち第312番目〜第315番目、第452番目及び第453番目のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有する、タンパク質。
上記(2)のタンパク質は、例えば、第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンに置換されたタンパク質や、第452番目のアミノ酸がアスパラギンに置換されたタンパク質や、第453番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたタンパク質が挙げられ、また、第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンに置換され、かつ第452番目のアミノ酸がアスパラギンに置換され、かつ第453番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたタンパク質が挙げられる。
(3)以下の(a)又は(b)のタンパク質。
(a) 下記(i)〜(iv)のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質。
(i) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(ii) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において第452番目のアミノ酸がアスパラギン酸以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(iii) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において第453番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(iv) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において、第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸に置換され、かつ第452番目のアミノ酸がアスパラギン酸以外のアミノ酸に置換され、かつ第453番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(b) 上記(i)〜(iv)のいずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質
上記(3)のタンパク質は、例えば、前記アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンであるタンパク質や、前記アスパラギン酸以外のアミノ酸がアスパラギンであるタンパク質や、前記ロイシン以外のアミノ酸がアルギニンであるタンパク質が挙げられ、また、前記アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンであり、かつ前記アスパラギン酸以外のアミノ酸がアスパラギンであり、かつ前記ロイシン以外のアミノ酸がアルギニンであるタンパク質が挙げられる。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかのタンパク質のホモ二量体からなる、タンパク質。
(5)上記(1)〜(3)のいずれかのタンパク質をコードする遺伝子。
(6)以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子。
(a) 下記(i)〜(iv)のいずれかの塩基配列を含むDNA
(i) 配列番号3に示される塩基配列において、第934番目〜第936番目の塩基、第937番目〜第939番目の塩基、第940番目〜第942番目の塩基及び第943番目〜第945番目の塩基が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、グルタミン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、アスパラギン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基及びリシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(ii) 配列番号3に示される塩基配列において第1354番目〜第1356番目の塩基がアスパラギン酸以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(iii) 配列番号3に示される塩基配列において第1357番目〜第1359番目の塩基がロイシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(iv) 配列番号3に示される塩基配列において、第934番目〜第936番目の塩基、第937番目〜第939番目の塩基、第940番目〜第942番目の塩基及び第943番目〜第945番目の塩基が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、グルタミン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、アスパラギン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基及びリシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され、かつ第1354番目〜第1356番目の塩基がアスパラギン酸以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され、かつ第1357番目〜第1359番目の塩基がロイシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(b) 上記(i)〜(iv)のいずれかの塩基配列を含むDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一であり、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質をコードするDNA
上記(6)の遺伝子は、例えば、前記アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンである遺伝子や、前記アスパラギン酸以外のアミノ酸がアスパラギンである遺伝子や、前記ロイシン以外のアミノ酸がアルギニンである遺伝子が挙げられ、また、前記アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンであり、かつ前記アスパラギン酸以外のアミノ酸がアスパラギンであり、かつ前記ロイシン以外のアミノ酸がアルギニンである遺伝子が挙げられる。
(7)上記(5)又は(6)の遺伝子を含む組換えベクター。
(8)上記(7)の組換えベクターを含む形質転換体。
(9)野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットの活性部位の構造を変化させることにより、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を付与することを特徴とする、酵素の基質特異性変換方法。
上記(9)の方法において、前記活性部位の構造の変化は、例えば、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットのアミノ酸配列(具体的には、配列番号4に示されるアミノ酸配列)における第312番目〜第315番目のアミノ酸を、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンに置換し、かつ第452番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、かつ第453番目のアミノ酸をアルギニンに置換することにより行うことができる。
(10)野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットの活性部位の構造を、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニットの基質が結合できるように変化させることを特徴とする、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質の製造方法。
(11)上記(8)の形質転換体を培養する工程と、得られる培養物から野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質を採取する工程とを含む、当該タンパク質の製造方法。
(12)上記(1)〜(4)のいずれかのタンパク質を含むことを特徴とする、テイ−サックス病治療用医薬組成物。
(13)上記(5)又は(6)の遺伝子を含むことを特徴とする、テイ−サックス病治療用医薬組成物。
(14)上記(12)の医薬組成物及び/又は上記(13)の医薬組成物をテイ−サックス病患者に投与することを特徴とする、テイ−サックス病の治療方法。
(15)上記(1)〜(4)のいずれかのタンパク質を含むことを特徴とする、ザンドホッフ病治療用医薬組成物。
(16)上記(5)又は(6)の遺伝子を含むことを特徴とする、ザンドホッフ病治療用医薬組成物。
(17)上記(15)の医薬組成物及び/又は上記(16)の医薬組成物をテイ−サックス病患者に投与することを特徴とする、テイ−サックス病の治療方法。
本発明によれば、テイ−サックス病やザンドホッフ病の酵素補充療法に用い得る酵素として、アレルギー反応やアナフィラキシー反応等の有害副作用が少なく、血中(血漿中)安定性が高く、しかも障害臓器の細胞に取り込まれやすい、酵素タンパク質及び当該タンパク質をコードする遺伝子等を提供することができる。
本発明のタンパク質及び当該タンパク質をコードする遺伝子は、Hex A欠損症であるテイ‐サックス病やザンドホッフ病に対する優れた新規高機能酵素治療薬の創出に利用できる点で極めて有用なものである。
ヒトβ-ヘキソサミニダーゼA(α-サブユニットとβ-サブユニットとのヘテロ二量体)の三次元構造を示す模式図である。 ヒトβ-ヘキソサミニダーゼAのα-サブユニットの機能領域を示す模式図である。左側の図は、α-サブユニット中の活性ポケット及びGM2活性化タンパク質結合部位を示し、右側の図は、α-サブユニット中の二量体形成面を示す。 β-サブユニットにGM2ガングリオシドの分解活性を持たせるために必要な、β-サブユニットにおけるアミノ酸置換の態様を示す模式図である。 細胞株の樹立の手順(左)及び構築した発現ベクターの概略(右)を示す図である。 CHO細胞抽出液及び培養上清におけるHex活性を示す図である。 細胞抽出液及び培養上清における改変Hex B等の発現を示す図である。 改変Hex B等の投与によるGM2ガングリオシドの分解効果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2009-008039号明細書(2009年1月16日出願)の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。

1.本発明の概要
今回の発明では、ヒトβ-ヘキソサミニダーゼA(Hex A;図1参照)及びヒトβ-ヘキソサミニダーゼB(Hex B)のX線結晶構造情報に基づき、α-サブユニットとβ-サブユニットの立体構造を比較し、GM2ガングリオシドを分解するための基質認識やGM2活性化因子との相互作用に必要なアミノ酸残基を予測した。そして、in silicoで、いくつかのアミノ酸残基を置換することで、α-サブユニットとしての機能を持つ改変β-サブユニットを設計した。
この設計に基づいてCHO細胞で産生された改変Hex Bは、野生型Hex Bが本来持たないGM2ガングリオシド分解能を獲得したものであった。この改変Hex Bは、その分子構造のほとんどが(特に外殻が)β-サブユニットのそれに等しいため、β-サブユニットは持っているが、α-サブユニットを持たないテイ−サックス病患者に投与しても、アレルギー反応を生じ難いものと考えられる。テイ−サックス病は、特にユダヤ人では極めて発症頻度が高い遺伝病であるため(約3,000〜5,000人に1人)、副作用が少ない治療薬が開発されれば、その臨床効果は極めて大きい。また、Hex Aに比べてHexBは安定性が高いため、改変Hex Bも野生型Hex Aに比べて安定であることが予測され、効果の持続性が期待できる。さらに、HexBは、Hex Aに比べて糖鎖の数が多いという利点がある。HexAやHex Bは、神経系などの細胞に対しては細胞膜上のマンノース6-リン酸受容体を介して取り込まれることが知られている。そのため、酵素タンパク質の糖鎖末端のマンノース6-リン酸残基の数が多い程、細胞内への取り込み効率が高い。改変HexBの糖鎖数が野生型Hex Aよりも多いことは、神経系細胞への取り込み効率が高いことが予想され、臨床効果も高くなると考えられる。この点で、テイ−サックス病の治療薬のみならず、ザンドホッフ病の治療薬としても、改変HexBの優位性があると言える。
以下、本発明の概要を、(i)〜(v)の手順を追って、より具体的に説明する。
(i) ヒトHex A(α-サブユニットとβ-サブユニットのヘテロ二量体)とHex B(β-サブユニットのホモ二量体)のX線結晶構造情報に基づいて、α-サブユニット分子のうち、GM2ガングリオシドを基質として認識するための活性ポケット内のアミノ酸残基及びGM2活性化因子(当該酵素とその基質であるGM2ガングリオシドとの邂逅に働く)との結合に関係するアミノ酸残基を予測した。この予測を基に、β-サブユニット分子のうち、これらの特定アミノ酸残基に相当する部分(第452番目のアミノ酸残基、第453番目のアミノ酸残基、第312番目〜第315番目のアミノ酸残基)を、それぞれ順に、「D452N」、「L453R」、「RQNK(312-315)GSEP」の態様でアミノ酸置換した。なお、「D452N」の表記は、β-サブユニットの第452番目のアミノ酸残基を、アスパラギン酸からアスパラギンに置換する態様であり、「L453R」の表記は、β-サブユニットの第453番目のアミノ酸残基を、ロイシンからアルギニンに置換する態様であり、「RQNK(312-315)GSEP」の表記は、β-サブユニットの第312番目〜第315番目の4つの連続するアミノ酸残基を、それぞれ順に、アルギニンからグリシンに置換し、グルタミンからセリンに置換し、アスパラギンからグルタミン酸に置換し、リシンからプロリンに置換する態様を示す。
(ii) β-サブユニットをコードするcDNA(HEXB cDNA)の発現ベクターを構築し、これに上記のアミノ酸置換が含まれるように、公知の遺伝子組換え技術を用いて変異を導入し、改変HEXB cDNAを作製した。
(iii) この改変HEXB cDNAを、チャイニーズハムスター卵巣由来の培養細胞(CHO細胞)株に導入し、改変Hex Bを発現させ、その発現株を単離した。
(iv) この細胞株の細胞抽出液及び分泌液中の改変Hex Bは、4-MUGS分解活性(通常用いられる、人工基質を用いた酵素活性測定方法で測定した場合のHex A活性を表す)を有した。また、この改変Hex Bをイムノブロット法で確認したところ、α-サブユニットに対する抗体に反応するタンパク質を含まないことが確認された。なお、上記「4-MUGS」は、4-メチルウムベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン-6-硫酸(4-methylumbelliferyl-6-sulfo-N-acetyl-β-D-glucosaminide)を意味し、Hex A活性測定の際に人工基質として用いられるものである。
(v) この改変Hex Bを患者由来の培養線維芽細胞の培養液中に投与した後、免疫染色法で解析したところ、改変Hex Bが細胞内に取り込まれ、細胞内に蓄積していたGM2ガングリオシドの分解が認められた。
なお、本明細書においては、単に「α-サブユニット」や「β-サブユニット」と表記した場合は、特に言及した場合を除き、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼ(Hex AやHex B)を構成する野生型α-サブユニット及び野生型β-サブユニットのことを意味する。

2.タンパク質
本発明のタンパク質は、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットの変異体タンパク質、及び当該変異体タンパク質の二量体からなる改変型(変異型)酵素(具体的には、ヒトβ-ヘキソサミニダーゼB(改変Hex B))である。
詳しくは、本発明のタンパク質は、β-サブユニットの活性部位(特に基質結合部位)の構造を変化させ、かつ、GM2活性化因子との会合(結合)に必要なループ構造(α-サブユニットには存在する)を導入することにより、α-サブユニット由来の活性を獲得したタンパク質、及びその二量体タンパク質であり、好ましくは、当該α-サブユニットの基質特異性を有するタンパク質、及びその二量体タンパク質である。
ここで、「α-サブユニット由来の活性を獲得した」とは、β-サブユニットの基質結合部位において、β-サブユニットの基質との結合反応性よりもα-サブユニットの基質との結合反応性が相対的に高くなったことを意味する。従って、上述した構造変化としては、β-サブユニットの基質との結合を完全に不可能にする構造変化には限定されず、本来α-サブユニットの基質との結合反応性よりもβ-サブユニットの基質との結合反応性が相対的に有意に高かったものを、逆にα-サブユニットの基質との結合反応性が有意に高くなるようにする構造変化も含む。また「α-サブユニットの基質特異性を有する」とは、活性部位の構造(特に、基質の結合反応性に重要な役割を果たすアミノ酸残基の位置及び種類)や、GM2活性化因子との会合(結合)に必要なループ構造の存在が、α-サブユニットと同様であることを意味する。
本発明のタンパク質(ホモ二量体も含む)としては、例えば、β-サブユニットのアミノ酸配列における第312番目〜第315番目、第452番目及び第453番目のアミノ酸のうちの少なくとも1つのアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列(より好ましくは、第312番目〜第315番目、第452番目及び第453番目のアミノ酸がいずれも他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列)、又は前記置換されたアミノ酸配列のうち第312番目〜第315番目、第452番目及び第453番目のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質が好ましく挙げられる。また、当該欠失、置換若しくは付加は、β-サブユニットのシグナルペプチドを除く部分においてなされることが好ましい。当該シグナルペプチドは、β-サブユニットのアミノ酸配列における第1番目〜第54番目のアミノ酸からなる部分である。
なお、β-サブユニットのアミノ酸配列(配列番号4)及び当該配列をコードする塩基配列(配列番号3)の情報は、例えば、GenBankには「Accession number:NM 000512」及び「Accession number:NM 000521」として公表されており、Swiss-Prot(http://tw.expasy.org/uniprot/ から取得可能)には「Entry name:HEXB-HUMAN;Accession number:P07686」として登録されている。また、α-サブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)及び当該配列をコードする塩基配列(配列番号1)の情報も同様に、例えば、GenBankには「Accession number:NM 000511」及び「Accession number:NM 000520」として公表されており、Swiss-Prot(http://tw.expasy.org/uniprot/ から取得可能)には「Entry name:HEXA-HUMAN;Accession number:P06865」として登録されている。ただし、配列番号1に示されるα-サブユニットのアミノ酸配列をコードする塩基配列(cDNA)は、GenBank(Accession number:NM 000520)に公表されている計2437 bpの塩基配列中の第208番目〜1797番目の塩基からなる塩基配列である。同様に、配列番号3に示されるβ-サブユニットのアミノ酸配列をコードする塩基配列(cDNA)は、GenBank(Accession number:NM 000521)に公表されている合計1919 bpの塩基配列中の第118番目〜1788番目の塩基からなる塩基配列である。
ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列」としては、例えば、1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列であることが好ましい。
上述した他のアミノ酸としては、第312番目〜第315番目のアミノ酸残基に関しては、それぞれ順に、アルギニン(Arg:R)以外のアミノ酸、グルタミン(Gln:Q)以外のアミノ酸、アスパラギン(Asn:N)以外のアミノ酸、及びリシン(Lys:K)以外のアミノ酸であれば特に限定はされないが、例えば、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンが好ましく挙げられる。同様に、第452番目のアミノ酸残基に関しては、アスパラギン酸(Asp:D)以外であれば特に限定はされないが、例えば、アスパラギン(Asn:N)が好ましく挙げられる。同様に、第453番目のアミノ酸残基に関しては、ロイシン(Leu:L)以外であれば特に限定はされないが、例えば、アルギニン(Arg:R)が好ましく挙げられる。中でも、上述した他のアミノ酸は、第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンであり、かつ第452番目のアミノ酸がアスパラギンであり、かつ第453番目のアミノ酸がアルギニンであることが特に好ましい。なお、上記置換後のアミノ酸は、他の置換されていないアミノ酸からなる構造に実質的に影響を及ぼさないものであることが好ましい。
基質結合部位に存在する第452番目及び第453番目のアミノ酸を、それぞれ上記のように置換することにより、酸性基質の認識を可能にする効果が得られる。また、第312番目〜第315番目のアミノ酸、それぞれ上記のように置換することにより、GM2活性化因子との会合(結合)に必要なループ構造が導入できるという効果が得られる。GM2活性化因子は、酵素タンパク質と基質(GM2ガングリオシド)との邂逅に働くものであり、α-サブユニット由来の活性を発揮するために重要な因子である。
本発明のタンパク質(ホモ二量体を含む)はまた、以下の(a)又は(b)のタンパク質であることが好ましい。
(a) 下記(i)〜(iv)のいずれかのアミノ酸配列を含むタンパク質。
(i) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(ii) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において第452番目のアミノ酸がアスパラギン酸以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(iii) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において第453番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(iv) 配列番号4に示されるアミノ酸配列において、第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸に置換され、かつ第452番目のアミノ酸がアスパラギン酸以外のアミノ酸に置換され、かつ第453番目のアミノ酸がロイシン以外のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列
(b) 上記(i)〜(iv)のいずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸を除く1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質
上記(a)のタンパク質としては、上記(i)及び(iv)の記載中の「アルギニン以外のアミノ酸、グルタミン以外のアミノ酸、アスパラギン以外のアミノ酸及びリシン以外のアミノ酸」が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンであるタンパク質が好ましく挙げられる。同様に、上記(a)のタンパク質としては、上記(ii)及び(iv)の記載中の「アスパラギン酸以外のアミノ酸」がアスパラギンであるタンパク質や、上記(iii)及び(iv)の記載中の「ロイシン以外のアミノ酸」がアルギニンであるタンパク質も好ましく挙げられる。
上記(a)のタンパク質としては、上記(i)〜(iv)のアミノ酸配列を含むタンパク質のうち、上記(iv)のアミノ酸配列を含むタンパク質がより好ましく、配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質がさらに好ましく、配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質が特に好ましい。
上記(b)のタンパク質は、上記(a)のタンパク質に含まれる上記(i)〜(iv)のいずれかのアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸を除く、1個又は数個(例えば1個〜10個程度、好ましくは1個〜5個程度)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列を含み、かつα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質であればよく、限定はされない。当該欠失、置換若しくは付加は、β-サブユニットのシグナルペプチドを除く部分においてなされることが好ましい。当該シグナルペプチドは、配列番号4に示されるアミノ酸配列における第1番目〜第54番目のアミノ酸からなる部分である。
本発明においては、α-サブユニット由来の活性は、例えば、CHO細胞やヒト線維芽細胞等の哺乳類由来の細胞に目的タンパク質を発現させて採取し、4-MUGS分解活性を測定することにより確認できる。具体的には、当該タンパク質(酵素溶液)と、4-メチルウムベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン-6-硫酸(4-methylumbelliferyl-6-sulfo-N-acetyl-β-D-glucosaminide)(人工基質)とを混合して、pH4.5の条件下で反応させた場合に、当該酵素溶液の単位量が単位時間当たりに遊離させ得る4-メチルウムベリフェロン(4-methylumbelliferone)の量を検出することにより測定することができる。4-メチルウムベリフェロンの検出は、公知の各種検出方法を採用できるが、例えば、蛍光光度計等を用いて検出する方法が好ましい。また、目的タンパク質の発現は、公知の各種発現ベクター等に組込んで細胞に導入し発現させればよい。

3.組換え遺伝子
上述した本発明のタンパク質をコードする遺伝子としては、限定はされないが、以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子が好ましく挙げられる。なお、以下の(a)及び(b)のDNAは、いずれも本発明のタンパク質の構造遺伝子であることが好ましいが、これらDNAを含む遺伝子としては、これらDNAのみからなるものであってもよいし、これらDNAを一部に含み、その他に遺伝子発現に必要な公知の塩基配列(転写プロモーター、SD配列、Kozak配列、ターミネーター等)をも含むものであってもよく、限定はされない。
(a) 下記(i)〜(iv)のいずれかの塩基配列を含むDNA
(i) 配列番号3に示される塩基配列において、第934番目〜第936番目の塩基、第937番目〜第939番目の塩基、第940番目〜第942番目の塩基及び第943番目〜第945番目の塩基が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、グルタミン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、アスパラギン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基及びリシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(ii) 配列番号3に示される塩基配列において第1354番目〜第1356番目の塩基がアスパラギン酸以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(iii) 配列番号3に示される塩基配列において第1357番目〜第1359番目の塩基がロイシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(iv) 配列番号3に示される塩基配列において、第934番目〜第936番目の塩基、第937番目〜第939番目の塩基、第940番目〜第942番目の塩基及び第943番目〜第945番目の塩基が、それぞれ順に、アルギニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、グルタミン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、アスパラギン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基及びリシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され、かつ第1354番目〜第1356番目の塩基がアスパラギン酸以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換され、かつ第1357番目〜第1359番目の塩基がロイシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基に置換された塩基配列
(b) 上記(i)〜(iv)のいずれかの塩基配列を含むDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一であり、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質をコードするDNA
本発明において「コドン」とは、転写後のRNA配列上の3塩基連鎖(トリプレット)に限らず、DNA配列上の3塩基連鎖をも意味する。よって、DNA配列上のコドンの表記は、ウラシル(U)の代わりにチミン(T)を用いて行う。
配列番号3に示される塩基配列は、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニット(556アミノ酸)をコードする1671個の塩基からなる塩基配列である。
また、上記(a)のDNAとしては、上記(i)及び(iv)の記載中の「アルギニン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、グルタミン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基、アスパラギン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基及びリシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基」が、それぞれ順に、グリシンのコドンを示す塩基、セリンのコドンを示す塩基、グルタミン酸のコドンを示す塩基及びプロリンのコドンを示す塩基である場合のDNAが好ましく挙げられる。同様に、上記(a)のDNAとしては、上記(ii)及び(iv)の記載中の「アスパラギン酸以外のアミノ酸のコドンを示す塩基」がアスパラギンのコドンを示す塩基である場合のDNAや、上記(iii)及び(iv)の記載中の「ロイシン以外のアミノ酸のコドンを示す塩基」がアルギニンのコドンを示す塩基である場合のDNAも好ましく挙げられる。
ここで、上記の各アミノ酸のコドンを示す塩基(左端の塩基を5’側の塩基とする)については、グリシンのコドンを示す塩基は「ggt」、「ggc」、「gga」又は「ggg」(好ましくは「ggg」)であり、セリンのコドンを示す塩基は「tct」、「tcc」、「tca」、「tcg」、「agt」又は「agc」(好ましくは「tct」)であり、グルタミン酸のコドンを示す塩基は「gag」又は「gaa」(好ましくは「gag」)であり、プロリンのコドンを示す塩基は「cct」、「ccc」、「cca」又は「ccg」(好ましくは「ccc」)であり、アスパラギン(但し、上記アスパラギン酸以外のアミノ酸としてのもの)のコドンを示す塩基は「aat」又は「aac」(好ましくは「aac」)であり、アルギニンのコドンを示す塩基は「cgt」、「cgc」、「cga」、「cgg」、「aga」又は「agg」(好ましくは「cgt」)である。
上記(a)のDNAとしては、上記(i)〜(iv)の塩基配列を含むDNAのうち、上記(iv)の塩基配列を含むDNAがより好ましく、配列番号5に示される塩基配列を含むDNAがさらに好ましく、配列番号5に示される塩基配列からなるDNAが特に好ましい。
以上のような変異置換型のDNAは、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997) 等に記載の部位特異的変位誘発法に準じて調製することができる。具体的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キットを用いて調製することができ、当該キットとしては、例えば、QuickChangeTMSite-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTMSite-Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan-K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等が好ましく挙げられる。
また、所望のアミノ酸のコドンを示す塩基となるようにミスセンス変異が導入されるように設計したPCRプライマーを用い、β-サブユニットをコードする塩基配列を含むDNA等をテンプレートとして、適当な条件下でPCRを行うことにより調製することもできる。PCRに用いるDNAポリメラーゼは、限定はされないが、正確性の高いDNAポリメラーゼであることが好ましく、例えば、Pwo DNA(ポリメラーゼロシュ・ダイアグノスティックス)、Pfu DNAポリメラーゼ(プロメガ)、プラチナPfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡)、KOD-plus-ポリメラーゼ(東洋紡)等が好ましい。PCRの反応条件は、用いるDNAポリメラーゼの最適温度、合成するDNAの長さや種類等により適宜設定すればよいが、例えば、サイクル条件であれば「90〜98℃で5〜30秒(熱変性・解離)→50〜65℃で5〜30秒(アニーリング)→65〜80℃で30〜1200秒(合成・伸長)」を1サイクルとして合計20〜200サイクル行う条件が好ましい。
上記(b)のDNAは、上記(i)〜(iv)のいずれかの塩基配列を含むDNA(すなわち上記(a)のDNA)若しくはそれと相補的な塩基配列からなるDNA、又はこれらを断片化したものをプローブとして用い、コロニーハイブリダイゼーション、プラークハイブリダイゼーション、及びサザンブロット等の公知のハイブリダイゼーション法を実施し、cDNAライブラリーやゲノムライブラリーから得ることができる。ライブラリーは、公知の方法で作製されたものを利用してもよいし、市販のcDNAライブラリーやゲノムライブラリーを利用してもよく、限定はされない。
ハイブリダイゼーション法の詳細な手順については、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)等を適宜参照することができる。
ハイブリダイゼーション法を実施における「ストリンジェントな条件」とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄時の条件であって、バッファーの塩濃度が15〜330mM、温度が25〜65℃、好ましくは塩濃度が15〜150mM、温度が45〜55℃の条件を意味する。具体的には、例えば80mMで50℃等の条件を挙げることができる。さらに、このような塩濃度や温度等の条件に加えて、プローブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の諸条件も考慮し、上記(b)のDNAを得るための条件を適宜設定することができる。
ハイブリダイズするDNAとしては、上記(a)のDNAの塩基配列に対して少なくとも40%以上の相同性を有する塩基配列であることが好ましく、より好ましくは60%、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上である。
また、上記(b)のDNAは、前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一である。ここで、「前記置換部位の塩基に対応する塩基」の「対応する塩基」とは、上記(b)のDNAが上記(a)のDNAに対する相補鎖とハイブリダイズした場合に、このハイブリッドにおいて、前記置換部位の塩基に対する相補塩基(トリプレット)と、位置的に対向する関係にある塩基(トリプレット)を意味する。例えば、上記(b)のDNAの塩基配列が、上記(a)のDNAと比較して欠失及び付加の変異が無い場合(つまり両DNAの長さ(塩基数)が同じ)であれば、上記(b)のDNAの塩基配列における、第934番目〜第936番目の塩基、第937番目〜第939番目の塩基、第940番目〜第942番目の塩基、及び第943番目〜第945番目の塩基、並びに、第1354番目〜第1356番目の塩基、及び第1357番目〜第1359番目の塩基が、上記「対応する塩基」となる。
さらに、上記(b)のDNAは、β-サブユニットのシグナルペプチドをコードする塩基配列領域が、上記(a)のDNAと同一であるものが好ましい。当該シグナルペプチドをコードする塩基配列領域は、配列番号3に示される塩基配列における第1番目〜第162番目の塩基からなる領域である。
上記(b)のDNAとしては、例えば、上記(a)のDNAと比較して、塩基配列については完全に同一ではないが、翻訳された後のアミノ酸配列については完全に同一となるような塩基配列からなるDNA(すなわち上記(a)のDNAにサイレント変異が施されたDNA)が、特に好ましい。
本発明のタンパク質をコードする遺伝子としては、翻訳後の個々のアミノ酸に対応するコドンは、特に限定はされないので、転写後、ヒト等の哺乳類において一般的に用いられているコドン(好ましくは使用頻度の高いコドン)を示すDNAを含むものであってもよいし、また、大腸菌や酵母等の微生物や、植物等において一般的に用いられているコドン(好ましくは使用頻度の高いコドン)を示すDNAを含むものであってもよい。

4.組換えベクター及び形質転換体
本発明のタンパク質を発現させるためには、まず、上述した本発明の遺伝子を発現ベクターに組込んで組換えベクターを構築することが必要である。この際、発現ベクターに組込む遺伝子には、必要に応じて、予め、上流に転写プロモーター、SD配列(宿主が原核細胞の場合)及びKozak配列(宿主が真核細胞の場合)を連結しておいてもよいし、下流にターミネーターを連結しておいてもよく、その他、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー等を連結しておくこともできる。なお、上記転写プロモーター等の遺伝子発現に必要な各要素は、初めから当該遺伝子に含まれていてもよいし、もともと発現ベクターに含まれている場合はそれを利用してもよく、各要素の使用態様は特に限定されない。
発現ベクターに当該遺伝子を組込む方法としては、例えば、制限酵素を用いる方法や、トポイソメラーゼを用いる方法など、公知の遺伝子組換え技術を利用した各種方法が採用できる。また、発現ベクターとしては、例えば、プラスミドDNA、バクテリオファージDNA、レトロトランスポゾンDNA、レトロウイルスベクター、人工染色体DNAなど、本発明のタンパク質をコードする遺伝子を保持し得るものであれば、限定はされず、使用する宿主細胞に適したベクターを適宜選択して使用することができる。
次いで、構築した上記組換えベクターを宿主に導入して形質転換体を得、これを培養することにより、本発明のタンパク質を発現させることができる。なお、本発明で言う「形質転換体」とは宿主に外来遺伝子が導入されたものを意味し、例えば、宿主にプラスミドDNA等を導入すること(形質転換)で外来遺伝子が導入されたもの、並びに、宿主に各種ウイルス及びファージを感染させること(形質導入)で外来遺伝子が導入されたものが含まれる。
宿主としては、上記組換えベクターが導入された後、本発明のタンパク質を発現し得るものであれば、限定はされず、適宜選択することができるが、例えば、ヒトやマウス等の各種動物細胞、各種植物細胞、細菌、酵母、植物細胞等の公知の宿主が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合は、例えば、ヒト繊維芽細胞、CHO細胞、ベイビーハムスター腎臓由来の培養細胞(BHK細胞)サル細胞COS-7、Vero、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用いられる。また、Sf9細胞、Sf21細胞等の昆虫細胞を用いることもできる。
細菌を宿主とする場合、例えば、大腸菌、枯草菌等が用いられる。
酵母を宿主とする場合は、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が用いられる。
植物細胞を宿主とする場合は、例えば、タバコBY-2細胞等が用いられる。
形質転換体を得る方法は、限定はされず、宿主と発現ベクターとの種類の組み合わせを考慮し、適宜選択することができるが、例えば、電気穿孔法、リポフェクション法、ヒートショック法、PEG法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、並びに、DNAウイルスやRNAウイルス等の各種ウイルスを感染させる方法などが好ましく挙げられる。
得られる形質転換体においては、組換えベクターに含まれる遺伝子のコドン型は、実際に用いた宿主のコドン型と一致していてもよいし、異なっていてもよく、限定はされない。

5.タンパク質の製法
本発明のタンパク質は、
野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットの活性部位(特に基質結合部位)の構造を、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニットの基質が結合できるように変化させ、かつGM2ガングリオシド活性化因子と結合し得る構造(ループ構造;α-サブユニットに存在する構造)を導入することにより製造することができる。このような構造変化は、例えば、遺伝子組換え技術等により、前述したようにβ-サブユニットを構成するアミノ酸配列中の特定のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することにより行うことができる。
本発明のタンパク質の製造は、具体的には、前述した形質転換体を培養する工程と、得られる培養物からα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質を採取する工程とを含む方法により実施することができる。ここで、「培養物」とは、培養上清、培養細胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。上記形質転換体の培養は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。目的のタンパク質は、上記培養物中に蓄積される。
上記培養に用いる培地としては、宿主が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、公知の各種天然培地及び合成培地のいずれを用いてもよい。
培養中は、形質転換体に含まれる組換えベクターの脱落及び目的タンパク質をコードする遺伝子の脱落を防ぐために、選択圧をかけた状態で培養してもよい。すなわち、選択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合には、相当する薬剤を培地に添加することができ、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子である場合には、相当する栄養因子を培地から除くことができる。例えば、G418耐性遺伝子を含むベクターで形質導入したヒト線維芽細胞を培養する場合、培養中、必要に応じてG418(G418硫酸塩)を添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した形質転換体等を培養する場合は、必要に応じて、好適なインデューサー(例えば、IPTG等)を培地に添加してもよい。
形質転換体の培養条件は、目的タンパク質の生産性及び宿主の生育が妨げられない条件であれば特に限定はされず、通常、10℃〜40℃、好ましくは20℃〜37℃で5〜100時間行う。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行うことができる。培養方法としては、固体培養、静置培養、振盪培養、通気攪拌培養などが挙げられる。
培養後、目的タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することにより目的タンパク質を採取することができる。菌体又は細胞の破砕方法としては、フレンチプレス又はホモジナイザーによる高圧処理、超音波処理、ガラスビーズ等による磨砕処理、リゾチーム、セルラーゼ又はペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍結融解処理、低張液処理、ファージによる溶菌誘導処理等を利用することができる。破砕後、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことができる。残渣を除去する方法としては、例えば、遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応じて、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除去効率を上げることもできる。残渣を除去した後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画分であり、粗精製したタンパク質溶液とすることができる。
また、目的のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合は、菌体や細胞そのものを遠心分離、膜分離等で回収して、未破砕のまま使用することも可能である。
一方、目的のタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離やろ過等により菌体又は細胞を除去する。その後、必要に応じて硫安沈澱による抽出等により、培養物中から目的タンパク質を採取し、さらに必要に応じて透析、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー等)を用いて単離精製することもできる。
形質転換体等を培養して得られたタンパク質の生産収率は、例えば、培養液あたり、菌体湿重量又は乾燥重量あたり、粗酵素液タンパク質あたりなどの単位で、SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)等により確認することができる。
また、目的タンパク質の製造は、上述したような形質転換体を用いたタンパク質合成系のほか、生細胞を全く使用しない無細胞タンパク質合成系を用いて行うこともできる。
無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液を用いて試験管等の人工容器内で目的タンパク質を合成する系である。また、使用し得る無細胞タンパク質合成系としては、DNAを鋳型としてRNAを合成する無細胞転写系も含まれる。
この場合、使用する細胞抽出液の由来は、前述の宿主細胞であることが好ましい。細胞抽出液としては、例えば真核細胞由来又は原核細胞由来の抽出液、より具体的には、CHO細胞、ウサギ網状赤血球、マウスL-細胞、HeLa細胞、小麦胚芽、出芽酵母、大腸菌などの抽出液を使用することができる。なお、これらの細胞抽出液は、濃縮又は希釈して用いてもよいし、そのままでもよく、限定はされない。
細胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリエチレングリコール(PEG)沈殿等によって得ることができる。
このような無細胞タンパク質合成は、市販のキットを用いて行うこともできる。例えば、試薬キットPROTEIOSTM(東洋紡)、TNTTM System(プロメガ)、合成装置のPG-MateTM(東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス)等が挙げられる。
無細胞タンパク質合成によって産生された目的のタンパク質は、前述したようにクロマトグラフィー等の手段を適宜選択して、精製することができる。

6.医薬組成物
(i) 補充用酵素薬等としての医薬組成物
本発明のタンパク質は、前述したように、テイ−サックス病及びザンドホッフ病の治療に関して種々の優れた効果を発揮し得るものであり、テイ−サックス病治療剤及びザンドホッフ病治療剤の有効成分として用いることができる。すなわち、本発明は、前述した本発明のタンパク質を含有するテイ−サックス病治療用医薬組成物(テイ−サックス病治療薬)及びザンドホッフ病治療用医薬組成物(ザンドホッフ病治療薬)を提供するものである。これらの医薬組成物としては、具体的には、酵素補充療法に用い得る補充用酵素薬が好ましい。なお、これらの医薬組成物に用いる本発明のタンパク質としては、ホモ二量体であるもの(すなわち改変Hex B)が特に好ましい。
当該医薬組成物において有効成分となる、本発明のタンパク質は、必要に応じて各種塩や水和物等の状態で用いられてもよいし、また、治療剤としての保存安定性(特に活性維持)を考慮し適当な化学的修飾がなされた状態で用いられてもよく、限定はされない。
当該医薬組成物は、本発明のタンパク質等以外にも他の成分を含むことができる。他の成分としては、当該医薬組成物の用法(使用形態)に応じて必要とされる製薬上の各種成分(薬学的に許容し得る各種担体等)が挙げられる。他の成分は、本発明のタンパク質等により発揮される効果が損なわれない範囲で適宜含有することができる。
当該医薬組成物が補充用酵素薬に用いられる場合は、本発明のタンパク質の配合割合や、他の成分の種類及び配合割合は、公知の補充用酵素薬の調製法に準じて適宜設定することができる。
当該医薬組成物の投与については、その用法は限定はされないが、補充用酵素薬である場合は、通常、点滴静注などの非経口用法が採用される。非経口用法等の各種用法に用い得る製剤は、薬剤製造上一般に用いられる賦形剤、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤、等張化剤等を適宜選択して使用し、常法により調製することができる。
当該医薬組成物の形態は、限定はされないが、補充用酵素薬である場合は、通常、静脈内注射剤(点滴を含む)が採用され、例えば、単位投与量アンプル又は多投与量容器の状態等で提供され得る。
当該医薬組成物の投与量は、一般には、製剤中の有効成分の配合割合を考慮した上で、投与対象(患者)の年齢、体重、病気の種類、病状のほか、投与経路、投与回数、投与期間等を勘案し、適宜、広範囲に設定することができる。特に、本発明の治療剤が補充用酵素薬である場合、その投与回数は、2〜4週間に1回程度が好ましく、またその投与量(/1回)は、例えば、有効成分である本発明のタンパク質等(組換え酵素)を、患者の体重に対して0.1〜10mg/kg程度投与できる量であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5mg/kg程度、さらに好ましくは0.2〜1mg/kg程度である。
本発明においては、有効成分となる本発明のタンパク質(組換え酵素)は、血中安定性に優れ、障害臓器の細胞への取り込み効率も高いため、少量の使用であっても従来基準と同様又はそれ以上の優れた酵素補充効果を得ることができ、またアレルギー性副作用等の有害作用も極めて少ないので、患者への体力的、精神的及び経済的な負担を大いに低減することができる。
(ii) 遺伝子治療剤としての医薬組成物
本発明の遺伝子は、前述したように、テイ−サックス病及びザンドホッフ病の治療に関して種々の優れた効果を発揮し得る本発明のタンパク質をコードするものであり、テイ−サックス病治療用医薬組成物(テイ−サックス病治療薬(具体的には遺伝子治療薬))及びザンドホッフ病治療用医薬組成物(ザンドホッフ病治療薬(具体的には遺伝子治療薬))の有効成分として用いることができる。
当該医薬組成物(遺伝子治療剤)を用いる場合は、注射により直接投与する方法のほか、核酸が組込まれたベクターを投与する方法が挙げられる。上記ベクターとしては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクター等が挙げられる。これらのウイルスベクターを用いることにより効率よく投与することができる。なお、市販の遺伝子導入キット(例えば、製品名:アデノエクスプレス、クローンテック社製)を用いることもできる。
また、当該医薬組成物(遺伝子治療薬)を用いる場合、当該組成物をリポソーム等のリン脂質小胞体に導入し、この小胞体を投与することも可能である。本発明の遺伝子を保持させた小胞体をリポフェクション法により所定の細胞に導入する。そして、得られる細胞を例えば静脈内又は動脈内等に投与する。ファブリー病の障害臓器に局所投与することもできる。例えば、成人に当該医薬組成物を投与する場合は、患者の体重に対し、一日あたり0.1μg/kg〜1000mg/kg程度であることが好ましく、より好ましくは1μg/kg〜100mg/kg程度である。

7.治療方法
本発明は、上述した医薬組成物をテイ−サックス病患者やザンドホッフ病患者に投与することを特徴とする、テイ−サックス病の治療方法及びザンドホッフ病の治療方法を含むものである。また本発明は、テイ−サックス病又はザンドホッフ病を治療するための上記医薬組成物又は本発明のタンパク質及び/若しくは遺伝子の使用、並びに、テイ−サックス病又はザンドホッフ病の治療のための薬剤を製造するための上記医薬組成物又は本発明のタンパク質及び/若しくは遺伝子の使用も含む。
本発明の治療方法に使用する医薬組成物は、本発明のタンパク質を含む医薬組成物(前記「6.(i)」;補充用酵素薬)、又は本発明の遺伝子を含む医薬組成物(前記「6.(ii);遺伝子治療薬」)、あるいはこれら両医薬組成物の併用であってもよく、限定はされず、患者の病状や副作用の有無、あるいは投与効果などを考慮し、適宜選択することができる。
特に、上記併用の場合は、それぞれの医薬組成物の投与量の割合、投与回数及び投与期間などを、個々の患者に合わせて適宜設定することができる。なお、各医薬組成物等の好ましい投与方法及び投与量等については、前述の通りである。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ヒトβ-ヘキソサミニダーゼAのα-サブユニットの機能領域>
ヒトβ-ヘキソサミニダーゼBの基質特異性をβ-ヘキソサミニダーゼAのそれに変換し、GM2ガングリオシドを加水分解する機能を持つ新規酵素を設計するため、タンパク質立体構造モデルを用いた検討を行った。図1に示されるように、ヒトβ-ヘキソサミニダーゼAは、α-サブユニットとβ-サブユニットから構成される。GM2ガングリオシドを基質として認識する部位及びGM2ガングリオシドと酵素とを会合させるGM2活性化因子との結合部位は、α-サブユニットにあると考えられた。
そこで、Protein Data Bank (PDB)に登録されているヒトβ-ヘキソサミニダーゼAの立体構造データ(PDB ID: 2GJX)と生化学的解析情報に基づいて、活性ポケットを構成する15アミノ酸残基(R178, H204, D207, H262, D322, E323, W373, W392, Y421, N423, R424, W460, G461, E462, Y423)、GM2活性化因子との結合に関与する可変的ループを構成する4アミノ酸残基(G280, S281, E282, P283)、及びβ-サブユニットとの2量体形成に関与する39アミノ酸残基(R178, H179, Y180, P209, Y227, N228, T231, H232, N423, R424, I425, S426, Y427, G428, P429, E462, Y463, V464, D465, T467, N468, P471, R472, R504, L508, Q513, A514, Q515, P516, L517, N518, V519, G520, F521, C522, E523, E525, F526, E527)を特定した。その結果を図2に示した。なお、ここで用いたアミノ酸残基の表記は、α-サブユニットのアミノ酸配列(配列番号2)中のアミノ酸残基の種類と位置を示しており、例えば「R178」は、配列番号2で示されるアミノ酸配列の第178番目のアルギニン残基を示すものである。
<GM2ガングリオシドの分解に必要なβ-サブユニットのアミノ酸置換>
β-サブユニットにおいて、酸性基質の認識を可能にするアミノ酸置換(D452N,L453R)、及びGM2活性化因子との会合に必要なループ構造の導入に伴うアミノ酸置換(RQNK (312-315) GSEP)を行った。
実施例1で得られたα-サブユニット上の機能的領域を構成するアミノ酸残基に関して、それぞれに対応するβ-サブユニット上のアミノ酸残基を特定した。α-サブユニットとβ-サブユニットのアミノ酸配列及び立体構造の異同について比較した。基質GM2ガングリオシドを認識させるために、β-サブユニット中の第452番目のアミノ酸残基(D)をα-サブユニット中の当該アミノ酸残基に対応するアミノ酸残基(N)に置換し、かつβ-サブユニット中の第453番目のアミノ酸残基(L)をα-サブユニット中の当該アミノ酸残基に対応するアミノ酸残基(R)に置換した。また、GM2活性化因子と結合させるために、β-サブユニット中の第312番目〜第315番目のアミノ酸配列(RQNK)をα-サブユニット中の当該アミノ酸配列に対応するアミノ酸配列(GSEP)に置換した。その結果を図3に示した。なお、このようにアミノ酸置換した改変β-サブユニットのアミノ酸配列は、配列番号6に示されるアミノ酸配列である。
<細胞株の樹立>
図4に示される手順及び遺伝子組換え技術の常法に従い、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットのcDNAを、哺乳類発現ベクターpCXN2のマルチクローニングサイトに挿入し、組換え発現ベクターpCXN2/HEXBを構築した。
併せて、pCXN2/HEXBベクター中のβ-サブユニットのcDNAに塩基置換を行って改変β-サブユニットのcDNAとした、組換え発現ベクターpCXN2/mut-HEXBを構築した。塩基置換は、β-サブユニットのアミノ酸配列中の第452番目のアミノ酸D(アスパラギン酸)がN(アスパラギン)に、第453番目のアミノ酸L(ロイシン)がR(アルギニン)に、第312番目〜第315番目のアミノ酸配列RQNK(アルギニン-グルタミン-アスパラギン-リジン)がGSEP(グリシン-セリン-グルタミン酸-プロリン)に置換されるように各アミノ酸残基に対応するコドンの塩基を置換した。具体的には、上記アミノ酸Dに対応するコドン「gat」をNに対応する「aac」に置換し、上記アミノ酸Lに対応するコドン「ttg」をRに対応する「cgt」に置換し、上記アミノ酸配列RQNKに対応する4つのコドン「aga caa aac aag」をGSEPに対応する「ggg tct gag ccc」に置換した。なお、このように塩基置換した改変β-サブユニットをコードするcDNAの塩基配列は、配列番号5に示される塩基配列である。
次いで、pCXN2/HEXB及びpCXN2/mut-HEXBを、それぞれCHO細胞に導入し、ネオマイシン誘導体(G418硫酸塩)の存在下で各々の遺伝子を恒常発現する薬剤耐性細胞集団を選別した。さらに、限界希釈法を用いて各々の遺伝子を高発現するCHOクローン細胞株を樹立した。
<CHO細胞抽出液及び培養上清におけるHex活性>
実施例3で得られた薬剤耐性細胞集団(60mm dish)を10%牛胎児血清存在下で3日間培養後、細胞抽出液を調製した。また、同細胞集団を無血清培地中で3日間培養後、その培養上清を回収した。図5に、細胞抽出液及び培養上清中の、4-MUG分解酵素活性(図5中、黒塗り表示)及び4-MUGS分解酵素活性(図5中、黒斜線表示)の測定結果を示した。野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットcDNAを発現するCHO細胞集団では高い4-MUG分解活性の増大が観察されたが、4-MUGS分解活性の増大は認められなかった。一方、pCXN2/mut-HEXBを導入した細胞集団では、4-MUG分解活性の増大のみならず、有意な4-MUGS分解活性の増大が認められた。
なお、「4-MUG」は、4-メチルウムベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン(4-methylumbelliferyl-N-acetyl-β-D-glucosaminide)を意味し、Hex B活性測定の際に人工基質として用いられるものである。一方、「4-MUGS」は、4-メチルウムベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミン-6-硫酸(4-methylumbelliferyl-6-sulfo-N-acetyl-β-D-glucosaminide)を意味し、Hex A活性測定の際に人工基質として用いられるものである。
<細胞抽出液及び培養上清における改変Hex Bの発現>
実施例4で得られた、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットcDNA及びその改変型cDNAを発現する各々のCHO細胞集団の抽出液中に存在するHexアイソザイムを、非変性条件下ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び抗ヒトHex Aポリクローナル抗体を用いた、イムノブロッティングにより解析した。その結果を図6に示した。野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットcDNAを発現するCHO細胞の抽出液及び培養上清では、Hex Bに対応するブロードなバンドのみが観察され、Hex Aは検出されなかった。また改変型cDNAを発現する細胞の場合も、Hex Bを移動度の異なるバンドは観察されたが、Hex Aとは異なる移動度を示す改変Hex Bが検出された。
<培養線維芽細胞への補充実験に用いた各Hexアイソザイム画分の粗精製>
10mM NaPiB (pH 6.0)で平衡化した陰イオン交換体(DEAE)カラムを用いて、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニット及び改変型cDNAを発現するCHO細胞抽出液から各Hexアイソザイムを分離した。NaClを用いたグラジエント溶出により、CHO由来のHex Aは200mM NaCl画分に、ヒトHex B及び改変Hex Bはflow- through画分にそれぞれ回収された。これらの粗精製画分を、10mM NaPiB (pH 6.0)でバッファー交換し、患者由来繊維芽細胞への補充実験に用いた。
<改変Hex B投与によるGM2ガングリオシドの分解効果>
ザンドホッフ病患者由来の培養線維芽細胞の培養液中に、野生型ヒトHex A(4-MUGS分解活性:500 nmol/h)、野生型ヒトHex B(4-MUG分解活性:900 nmol/h)及び改変Hex B(4-MUGS分解活性:2,000 nmol/h)を加えて3日間培養後に細胞を固定し、抗GM2ガングリオシド抗体を用いて免疫蛍光染色を行った。その結果を図7に示した。野生型Hex Aを投与した場合、GM2ガングリオシドの顕著な減少が観察されたのに対し、野生型Hex Bを投与した場合はGM2の分解はほとんど認められなかった。一方、改変型Hex Bを投与した場合は、野生型Hex Aの4倍量の4-MUGS分解活性を示し、顕著なGM2の分解が認められた。
<改変Hex Bの性質>
β-ヘキソサミニダーゼのアイソザイムであるβ-ヘキソサミニダーゼA(Hex A)と、β-ヘキソサミニダーゼB(Hex B)とを比較した場合、基質であるGM2ガングリオシドを加水分解する機能はHex Aのみが有し、HexBは持たず、また、熱に対する安定性は、両者を比較するとHex Bの方が著しく高いことが知られている。Hex A及びHex Bは、共に糖タンパク質で、コアとなるタンパク質部分に糖鎖が付いているが、その個数は、Hex Aでは6本、Hex Bでは8本であることが知られている。酵素の細胞内取り込みは、糖鎖末端に存在するマンノース6-リン酸の数によって規定されるため、糖鎖数が多い方が、取り込みに有利と考えられた。改変Hex Bは、基質認識部位とGM2活性化因子との結合部位をHex A様に変化させているため、GM2ガングリオシド分解能を有していた。また、分子のほとんどがHex B様であり、糖鎖結合部位は変化させていないため、安定性はHex Bと同様に、30%野生型マウス血漿中、37℃での安定性もHex Aに比べて高かった。さらに糖鎖数も多いため、細胞内取り込みに優れていると考えられた。
<結論>
以上の実施例より、改変Hex Bは、テイ−サックス病やザンドホッフ病の患者の体内に蓄積するGM2ガングリオシドを分解する機能を持ち、その投与により発生頻度の高いテイ−サックス病患者にアレルギー反応を起こす危険性が少なく、野生型Hex Aよりも安定性が高く、細胞内取り込みに優れるものであったため、これらの疾患の治療薬として有望であることが分かった。
配列番号5:組換えDNA
配列番号6:組換えタンパク質

Claims (14)

  1. 野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットのアミノ酸配列において第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンに置換されかつ第452番目のアミノ酸がアスパラギンに置換され、かつ第453番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列のうち第55番目〜第556番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列、又は当該置換されたアミノ酸配列のうち前記第312番目〜第315番目、第452番目及び第453番目のアミノ酸を除く1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有する、タンパク質。
  2. 以下の(a)又は(b)のタンパク質。
    (a)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、第312番目〜第315番目のアミノ酸が、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンに置換され、かつ第452番目のアミノ酸がアスパラギンに置換され、かつ第453番目のアミノ酸がアルギニンに置換されたアミノ酸配列のうち第55番目〜第556番目のアミノ酸からなるアミノ酸配列を含むタンパク質
    (b) 上記(a)のアミノ酸配列において前記置換部位のアミノ酸を除く1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質
  3. 請求項1又は2記載のタンパク質のホモ二量体からなる、タンパク質。
  4. 請求項1又は2記載のタンパク質をコードする遺伝子。
  5. 以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子。
    (a) 配列番号3に示される塩基配列において、第934番目〜第936番目の塩基、第937番目〜第939番目の塩基、第940番目〜第942番目の塩基及び第943番目〜第945番目の塩基が、それぞれ順に、グリシンのコドンを示す塩基、セリンのコドンを示す塩基、グルタミン酸のコドンを示す塩基及びプロリンのコドンを示す塩基に置換され、かつ第1354番目〜第1356番目の塩基がアスパラギンのコドンを示す塩基に置換され、かつ第1357番目〜第1359番目の塩基がアルギニンのコドンを示す塩基に置換された塩基配列のうち、第163番目〜第1668番目の塩基からなる塩基配列からなるDNA
    (b) 上記(a)の塩基配列を含むDNAに対して90%以上の同一性を有するDNAであって、前記置換部位の塩基に対応する塩基が当該置換部位の塩基と同一であり、かつ野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質をコードするDNA
  6. 請求項4又は5記載の遺伝子を含む組換えベクター。
  7. 請求項記載の組換えベクターを含む形質転換体。
  8. 野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットのアミノ酸配列における第312番目〜第315番目のアミノ酸を、それぞれ順に、グリシン、セリン、グルタミン酸及びプロリンに置換し、かつ第452番目のアミノ酸をアスパラギンに置換し、かつ第453番目のアミノ酸をアルギニンに置換することにより、野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を付与することを特徴とする、酵素の基質特異性変換方法。
  9. 前記野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのβ-サブユニットのアミノ酸配列が配列番号4に示されるアミノ酸配列である、請求項記載の方法。
  10. 請求項記載の形質転換体を培養する工程と、得られる培養物から野生型ヒトβ-ヘキソサミニダーゼのα-サブユニット由来の活性を有するタンパク質を採取する工程とを含む、当該タンパク質の製造方法。
  11. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする、テイ−サックス病治療用医薬組成物。
  12. 請求項4又は5記載の遺伝子を含むことを特徴とする、テイ−サックス病治療用医薬組成物。
  13. 請求項1〜のいずれか1項に記載のタンパク質を含むことを特徴とする、ザンドホッフ病治療用医薬組成物。
  14. 請求項4又は5記載の遺伝子を含むことを特徴とする、ザンドホッフ病治療用医薬組成物。
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