JP5675771B2 - 精神神経疾患の治療をモニタリングするためのバイオマーカー - Google Patents

精神神経疾患の治療をモニタリングするためのバイオマーカー Download PDF

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Description

関連出願の相互参照
本出願は、2009年4月1日付け米国特許仮出願第61/165,662号からの優先権の恩典を主張するものである。
技術分野
本明細書は、精神神経疾患を有する被験者における治療の有効性をモニタリングするための材料および方法に関する。
背景
精神神経疾患には、大うつ病、統合失調症、躁病、心的外傷後ストレス障害、トゥレット障害、パーキンソン病、および強迫性障害が含まれる。これらの障害は身体を衰弱させることが多く、また、診断を下し、効果的に治療することが困難である。ほとんどの臨床上の障害は単一の生物学的変化が原因で発生することはなく、複数の要因の相互作用の結果として発生する。同じ臨床症状(例えば、大うつ病)を患う異なる個人は、一人一人に特有な変化に応じて、異なる範囲または程度の症状を呈することがある。
概要
本明細書は、一部には、治療に対する被験者の応答をモニタリングするために使用できる精神神経疾患の薬力学的バイオマーカーを同定する方法の開発に基づくものである。
一つの態様において、本明細書は、精神神経疾患のバイオマーカーを同定する方法であって、以下の工程(a)〜(e)を含む方法を特徴とする:(a)精神神経疾患を有する被験者の第1の診断疾患スコアを算出する工程であって、第1の診断疾患スコアが、被験者に経頭蓋磁気刺激を与える前に算出される、工程;(b)経頭蓋磁気刺激を与える前に前記被験者から得られた第1の生物学的サンプル中の1つ以上の分析物のレベルの数値を提供する工程;(c)経頭蓋磁気刺激を与えた後に前記被験者の第2の診断疾患スコアを算出する工程;(d)経頭蓋磁気刺激を与えた後に前記被験者から得られた第2の生物学的サンプル中の前記1つ以上の分析物のレベルの数値を提供する工程;および(e)1つ以上の分析物を精神神経疾患のバイオマーカーとして同定する工程であって、前記1つ以上の分析物が、それらが第1および第2の生物学的サンプル間で差次的に発現される場合に、バイオマーカーとして同定され、前記1つ以上の分析物の差次的発現が前記被験者の診断スコアの正または負の変化に相関する、工程。
精神神経疾患は大うつ病性障害(MDD)であり得る。診断スコアは臨床的評価によって決定することができる。分析物は、その分析物の発現レベルが第1の診断スコアに対する第2の診断スコアの正または負の変化と相関している場合に、精神神経疾患のバイオマーカーとして同定することができる。経頭蓋磁気刺激を与えることは反復経頭蓋磁気刺激を含んでもよい。経頭蓋磁気刺激を与えることは被験者の前頭前野皮質を刺激することを含んでもよい。第1および第2の生物学的サンプルは血液、血清、脳脊髄液、血漿、およびリンパ球からなる群より選択することができる。第2の生物学的サンプルは、被験者に経頭蓋磁気刺激を与えてから数時間後、数日後、数週間後、または数ヶ月後に被験者から採取することができる。工程(c)、(d)および(e)は、被験者に経頭蓋磁気刺激を与えた後、時間間隔をおいて繰り返すことができる。被験者はまた、分子イメージング技術および/またはハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)スコアなどの臨床評価ツールを用いて、モニタリングすることも可能である。被験者は1つ以上の追加の型の治療的介入(例えば、認知行動療法、薬物療法、本質的に行動的な治療的介入、集団療法、対人関係療法、精神力動的療法、弛緩または瞑想療法、および従来の心理療法からなる群より選択される1つ以上の追加の型の治療的介入)を受けてもよい。前記方法はさらに、被験者由来の第1および第2の生物学的サンプルを提供する工程、および/または被験者に経頭蓋磁気刺激を与える工程を含むことができる。前記方法をコンピュータにより実行される方法(computer-implemented method)とすることも可能である。いくつかの態様において、前記方法はさらに、(f)バイオマーカーハイパーマッピング技術を用いて、第1および第2の生物学的サンプル間で差次的に発現される分析物の特定のグループを同定する工程であって、分析物のグループの差次的発現が被験者のハイパースペースパターンの正または負の変化に相関する工程、を含むことができる。
別の態様において、本明細書は、精神神経疾患のバイオマーカーを同定する方法であって、以下の工程(a)〜(f)を含む方法を特徴とする:(a)被験者由来の第1の生物学的サンプルを提供する工程;(b)前記被験者の第1の診断疾患スコアを決定する工程;(c)前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与える工程;(d)経頭蓋磁気刺激後に得られた被験者由来の第2の生物学的サンプルを提供し、第1の生物学的サンプルと第2の生物学的サンプル中の1つ以上の分析物の発現を測定する工程;(e)経頭蓋磁気刺激後に被験者の第2の診断疾患スコアを決定する工程;および(f)1つ以上の分析物を精神神経疾患のバイオマーカーとして同定する工程であって、前記1つ以上の分析物が、それらが第1および第2の生物学的サンプル間で差次的に発現される場合に、バイオマーカーとして同定され、前記1つ以上の分析物の差次的発現が前記被験者の診断スコアの正または負の変化に相関する、工程。
精神神経疾患はMDDであり得る。診断スコアは臨床的評価によって決定することができる。経頭蓋磁気刺激を与えることは反復経頭蓋磁気刺激を含んでもよい。経頭蓋磁気刺激を与えることは被験者の前頭前野皮質を刺激することを含んでもよい。第1および第2の生物学的サンプルは血液、血清、脳脊髄液、血漿、およびリンパ球からなる群より選択することができる。第2の生物学的サンプルは、被験者に経頭蓋磁気刺激を与えてから数時間後、数日後、数週間後、または数ヶ月後に被験者から採取することができる。工程(c)、(d)および(e)は、被験者に経頭蓋磁気刺激を与えた後、時間間隔をおいて繰り返すことができる。前記方法はさらに、分子イメージング技術を用いて被験者をモニタリングする工程を含んでもよい。前記方法はさらに、1つ以上の追加の型の治療的介入を被験者に施す工程を含んでもよい。1つ以上の追加の型の治療的介入は、認知行動療法、薬物療法、本質的に行動的な治療的介入、集団療法、対人関係療法、精神力動的療法、弛緩または瞑想療法、および従来の心理療法からなる群より選択することができる。前記方法はコンピュータにより実行される方法とすることが可能である。
本明細書はまた、精神神経疾患を有する哺乳動物における治療応答を評価する方法であって、以下の工程(a)〜(c)を含む方法を特徴とする:(a)哺乳動物の第1の診断疾患スコアを決定する工程であって、第1の診断疾患スコアが、治療を施す前に哺乳動物から得られた第1の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルの数値を用いて算出される、工程;(b)前記哺乳動物の第2の診断疾患スコアを決定する工程であって、第2の診断疾患スコアが、治療を施した後に哺乳動物から得られた第2の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルの数値を用いて算出される、工程;および(c)第1の診断疾患スコアと第2の診断疾患スコアとの比較に基づいて、哺乳動物の治療を維持するか、調整するか、または中止する工程。哺乳動物はヒトであり得る。治療は経頭蓋磁気刺激であり得る。第1の診断疾患スコアは、第1の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、少なくとも2つの代謝マーカー、および少なくとも2つの神経栄養マーカーのレベルの数値を用いて算出することができる。第2の診断疾患スコアは、第2の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、少なくとも2つの代謝マーカー、および少なくとも2つの神経栄養マーカーのレベルの数値を用いて算出することができる。前記方法はハイパーマップの使用を含むことができ、ハイパーマップは、第1および第2の診断疾患スコアを比較するために、炎症マーカーのレベルのスコア、少なくとも2つのHPA系マーカーのレベルのスコア、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルのスコアを用いることを含む。
特に他で定義しない限り、本明細書中で用いるすべての技術および科学用語は、本開示が関係する技術分野の当業者が通常理解している意味と同じ意味を有する。本発明の実施または試験に際しては、本明細書に記載するものと同様または同等の方法および材料を用いることができるが、好適な方法および材料が以下に記載される。本明細書中に挙げたすべての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、それらの全内容が参照により本明細書に援用される。さらに、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定することを意図したものではない。
[本発明1001]
以下の工程を含む、精神神経疾患のバイオマーカーを同定する方法:
(a)精神神経疾患を有する被験者の第1の診断疾患スコアを算出する工程であって、第1の診断疾患スコアが、被験者に経頭蓋磁気刺激を与える前に算出される、工程;
(b)経頭蓋磁気刺激を与える前に前記被験者から得られた第1の生物学的サンプル中の1つ以上の分析物のレベルの数値を提供する工程;
(c)経頭蓋磁気刺激を与えた後に前記被験者の第2の診断疾患スコアを算出する工程;
(d)経頭蓋磁気刺激を与えた後に前記被験者から得られた第2の生物学的サンプル中の前記1つ以上の分析物のレベルの数値を提供する工程;および
(e)1つ以上の分析物を精神神経疾患のバイオマーカーとして同定する工程であって、前記1つ以上の分析物が、それらが第1および第2の生物学的サンプル間で差次的に発現される場合に、バイオマーカーとして同定され、前記1つ以上の分析物の差次的発現が前記被験者の診断スコアの正または負の変化に相関する、工程。
[本発明1002]
精神神経疾患が大うつ病性障害(MDD)である、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記診断スコアが臨床的評価により決定される、本発明1001の方法。
[本発明1004]
経頭蓋磁気刺激を与えることが反復経頭蓋磁気刺激を含む、本発明1001の方法。
[本発明1005]
経頭蓋磁気刺激を与えることが前記被験者の前頭前野皮質を刺激することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
第1および第2の生物学的サンプルが血液、血清、脳脊髄液、血漿およびリンパ球からなる群より選択される、本発明1001の方法。
[本発明1007]
第2の生物学的サンプルが、前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与えてから数時間後、数日後、数週間後、または数ヶ月後に前記被験者から採取される、本発明1001の方法。
[本発明1008]
工程(c)、(d)および(e)が、前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与えた後、時間間隔をおいて繰り返される、本発明1001の方法。
[本発明1009]
前記被験者が分子イメージング技術を用いてモニタリングされる、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記被験者が1つ以上の追加の型の治療的介入を受ける、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記1つ以上の追加の型の治療的介入が、認知行動療法、薬物療法、本質的に行動的な治療的介入、集団療法、対人関係療法、精神力動的療法、弛緩または瞑想療法、および従来の心理療法からなる群より選択される、本発明1010の方法。
[本発明1012]
前記被験者由来の第1および第2の生物学的サンプルを提供する工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与える工程をさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
コンピュータにより実行される方法である、本発明1001の方法。
[本発明1015]
以下の工程をさらに含む、本発明1001の方法:
(f)バイオマーカーハイパーマッピング技術を用いて、第1および第2の生物学的サンプル間で差次的に発現される分析物の特定のグループを同定する工程であって、分析物のグループの差次的発現が前記被験者のハイパースペースパターンの正または負の変化に相関する、工程。
[本発明1016]
以下の工程を含む、精神神経疾患のバイオマーカーを同定する方法:
(a)被験者由来の第1の生物学的サンプルを提供する工程;
(b)前記被験者の第1の診断疾患スコアを決定する工程;
(c)前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与える工程;
(d)経頭蓋磁気刺激後に得られた前記被験者由来の第2の生物学的サンプルを提供し、かつ第1の生物学的サンプルと第2の生物学的サンプル中の1つ以上の分析物の発現を測定する工程;
(e)経頭蓋磁気刺激後に前記被験者の第2の診断疾患スコアを決定する工程;および
(f)1つ以上の分析物を精神神経疾患のバイオマーカーとして同定する工程であって、前記1つ以上の分析物が、それらが第1および第2の生物学的サンプル間で差次的に発現される場合に、バイオマーカーとして同定され、前記1つ以上の分析物の差次的発現が前記被験者の診断スコアの正または負の変化に相関する、工程。
[本発明1017]
精神神経疾患がMDDである、本発明1016の方法。
[本発明1018]
前記診断スコアが臨床的評価により決定される、本発明1016の方法。
[本発明1019]
経頭蓋磁気刺激を与えることが反復経頭蓋磁気刺激を含む、本発明1016の方法。
[本発明1020]
経頭蓋磁気刺激を与えることが前記被験者の前頭前野皮質を刺激することを含む、本発明1016の方法。
[本発明1021]
第1および第2の生物学的サンプルが血液、血清、脳脊髄液、血漿およびリンパ球からなる群より選択される、本発明1016の方法。
[本発明1022]
第2の生物学的サンプルが、前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与えてから数時間後、数日後、数週間後、または数ヶ月後に前記被験者から採取される、本発明1016の方法。
[本発明1023]
工程(d)、(e)および(f)が、前記被験者に経頭蓋磁気刺激を与えた後、時間間隔をおいて繰り返される、本発明1016の方法。
[本発明1024]
分子イメージング技術を用いて前記被験者をモニタリングする工程をさらに含む、本発明1016の方法。
[本発明1025]
前記被験者に1つ以上の追加の型の治療的介入を施す工程をさらに含む、本発明1016の方法。
[本発明1026]
前記1つ以上の追加の型の治療的介入が、認知行動療法、薬物療法、本質的に行動的な治療的介入、集団療法、対人関係療法、精神力動的療法、弛緩または瞑想療法、および従来の心理療法からなる群より選択される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
コンピュータにより実行される方法である、本発明1016の方法。
[本発明1028]
以下の工程を含む、精神神経疾患を有する哺乳動物における治療応答を評価する方法:
(a)哺乳動物の第1の診断疾患スコアを決定する工程であって、第1の診断疾患スコアが、治療を施す前に哺乳動物から得られた第1の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルの数値を用いて算出される、工程;
(b)前記哺乳動物の第2の診断疾患スコアを決定する工程であって、第2の診断疾患スコアが、治療を施した後に哺乳動物から得られた第2の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルの数値を用いて算出される、工程;および
(c)第1の診断疾患スコアと第2の診断疾患スコアとの比較に基づいて、前記哺乳動物の治療を維持するか、調整するか、または中止する工程。
[本発明1029]
前記哺乳動物がヒトである、本発明1028の方法。
[本発明1030]
前記治療が経頭蓋磁気刺激である、本発明1028の方法。
[本発明1031]
第1の診断疾患スコアが、第1の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、少なくとも2つの代謝マーカー、および少なくとも2つの神経栄養マーカーのレベルの数値を用いて算出される、本発明1028の方法。
[本発明1032]
第2の診断疾患スコアが、第2の生物学的サンプル中に存在する少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、少なくとも2つの代謝マーカー、および少なくとも2つの神経栄養マーカーのレベルの数値を用いて算出される、本発明1028の方法。
[本発明1033]
第1および第2の診断疾患スコアを比較するために、前記炎症マーカーのレベルのスコア、前記少なくとも2つのHPA系マーカーのレベルのスコア、および前記少なくとも2つの代謝マーカーのレベルのスコアの使用を含む、ハイパーマップを使用する工程を含む、本発明1028の方法。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。
特定の患者集団と、疾患関連コンテンツの追加があるまたはないバイオマーカーライブラリとを用いて、疾患関連バイオマーカーを同定するために利用できる工程を示すフロー図である。 精神神経疾患の治療に対して正または負の反応を示す薬力学的バイオマーカーを同定するために利用できる工程を示すフロー図である。 50人のMDD患者(黒丸)と20人の健常者(白丸)の研究においてMDDScoreを導き出すために用いたデータセットのバイオマーカーハイパーマップ(BHYPERMAP(商標))である。 精神神経疾患の治療に対して肯定的または否定的な応答を示す患者のマップ位置の変化のバイオマーカーハイパーマップである。治療(Rx)にはLEXAPRO(商標)を用いた。ベースラインにあるMDD患者は黒丸で示される。黒三角は2〜3週間の治療後の患者を表し、白四角は8週間の治療後の患者を表す。白丸は治療を受けていない健常者を表す。 質量分析に基づく差次的タンパク質測定を用いて薬力学的バイオマーカーのセットを構築するために利用できる工程を示すフロー図である。 本明細書で説明されるバイオマーカー解析を利用するコンピュータベースの診断システムの一例を示す。 図6に示したコンピュータベースの診断システムで用いることができるコンピュータシステムの一例を示す。
詳細な説明
本明細書は、一部には、バイオマーカー発現を評価する(例えば、測定する)ことによって、うつ病の障害状態を診断しかつ治療をモニタリングするための方法の同定に基づくものである。本明細書中に記載するように、本明細書は、経頭蓋磁気刺激(TMS)を与えた後に被験者における正または負の変化と関連した薬力学的バイオマーカーを同定して検証するための方法および材料を提供する。治療の有効性に関連した生理的変化を評価する上で、抗うつ薬とは対照的に、TMSを使用することの利点は、TMS治療そのものが短期間の治療であり、治療の性質が生化学的というよりは物理的である点である。本明細書で提供する方法および材料は、精神神経疾患の患者を診断し、治療の選択肢を決定し、さらに治療の有効性の定量的測定を提供するために、使用することができる。
経頭蓋磁気刺激
本明細書は、TMS前とTMS後に被験者の診断スコアを決定するための方法を提供する。TMSは大うつ病、統合失調症、躁病、心的外傷後ストレス障害、トゥレット障害、パーキンソン病、および強迫性障害といった精神神経疾患の治療に用いられる非侵襲的な技法である。TMSは、神経組織などの二次導電性材料への電流の流れを可能にする過渡磁場を発生させるために、導電性コイルを介して電気エネルギーを放電させる必要がある。頭皮と頭蓋骨はおおむね非電導性であるため、過渡磁場はこれらの組織を突き抜けて、脳の特定の皮質領域を標的化する。前頭皮質の刺激は、健常者およびMDD患者の行動と気分に短期的および長期的変化を誘起することが実証されている。検討のために、Paus and Barrett, J. Psychiatry Neurosci. 29:268-79 (2004)を参照されたい。
TMSを与えるいくつかの方法が利用可能である。代表的なプロトコルはWorld Wide Web上のneuronetics.comで見いだすことができる。TMSは二相性または単相性のいずれかの磁気パルスを用いて実施することができる。二相パルスは正弦波であり、一般に単相パルス(ゼロからの急上昇の後にゆっくりとした減衰が続き、ゼロに戻る)より短い持続時間のパルスである。さらに、TMSは円形または8の字形の導電性コイルを用いて実施することができる。円形コイルは一般により強力であるが、8の字形のコイルではより焦点を絞った磁場と、活性化のより良好な空間分解能が生じる。抗うつ効果は、多くの場合、ある範囲(例えば、1〜25Hz)の周波数で顕著である。導電性コイルの向きと強度の両方が、刺激される組織のタイプと刺激の強さを決定する。いくつかの場合には、TMSは反復TMS (rTMS)であってよく、その場合には一連の磁気パルスが被験者に加えられる。さまざまな周波数と強度を用いる反復TMSが、刺激によって直接標的化される皮質領域の興奮性を増加または減少させることができる。例えば、左前頭前野皮質は臨床的うつ病の被験者ではあまり活動的でないが、この前頭前野皮質はTMSにとって容易にアクセス可能である。TMSまたはrTMSの対照またはプラセボとして偽刺激を用いてもよい。NeuroStar TMS Therapyシステム(World Wide Web上のneuronetics.com)は、FDAによって承認されたTMS Therapy(登録商標)装置の一例であり、この装置をうつ病の治療およびバイオマーカー研究に利用することができる。
診断スコア
本明細書は、被験者の診断スコアを決定するための方法および材料を提供する。本明細書で説明する方法の代表的な被験者はヒトであるが、被験者には、ヒト疾患のモデルとして用いられる動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、および非ヒト霊長類)も含めることができる。本明細書で提供する方法は、新しい治療レジメンを開始する前または既存の治療レジメンを継続する前に、ベースラインスコアを構築するために使用することができる。治療後に決定された診断スコアは、ベースラインに対する正または負の変化を観察するために、ベースラインスコアと比較される。ベースラインスコアと治療後の診断スコアは任意の好適な評価方法によって決定することができる。例えば、MDDでは、被験者の症状と快適性(well-being)の臨床的評価が行われる。「ゴールドスタンダード」の診断方法は、構造化臨床面接である。いくつかの場合には、被験者の診断スコアは、抑うつ気分、うつ病の自律神経症状と認知症状、および併存する不安症状を評価する、臨床的に実施されるハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)の17項目の尺度を用いて決定される。HAMDを用いて、評価時点での抑うつ症状の重症度を定量化することができる。Michael Taylor & Max Fink, Melancholia: The Diagnosis, Pathophysiology, and Treatment of Depressive Illness, 91-92, Cambridge University Press (2006)を参照されたい。いくつかの研究はTMS後にHAMDスコアが改善されることを実証している。他の臨床的評価方法を採用することもできる。場合によっては、ベックうつ病項目尺度などの自己評価尺度を用いてもよい。精神神経疾患の多くの評価尺度は観察者に基づくものである。例えば、モンゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度を用いて、被験者のうつ病診断スコアを決定することができる。被験者の全体的な社会的、職業的および心理的機能に基づいた診断スコアを決定するために、機能の全体的評定尺度を用いてもよい。
いくつかの場合には、数学的アルゴリズムを用いて診断スコアを決定することができる。例えば、個々の疾患状態または治療への応答を判定するためのアルゴリズムは、どのような臨床症状の場合にも決定され得る。治療への応答を診断または評価するためのアルゴリズムは、例えば、治療前および/または治療後の特定の臨床症状と関連した測定基準(例えば、複数の分析物の血清レベル)を用いて決定される。本明細書中で用いる「分析物」とは、分析手法(イムノアッセイや質量分析などであるが、これらに限定されない)で客観的に測定および定量できる物質または化学成分のことである。本明細書で説明するアルゴリズムは、例えば、医療機器、臨床評価スコア、または生物学的サンプルの生物学的もしくは生理学的分析を用いて定量化できる、複数のパラメータを含む数学的関数であり得る。それぞれの数学的関数は、所定の臨床症状に関係があると決定されたパラメータのレベルの、重みを調整した式であり得る。アルゴリズムは一般に式1の形式で表される:
診断スコア = f (xl, x2, x3, x4, x5, . . . xn) (1)
診断スコアは診断または予後の結果となる値であり、「f」は任意の数学関数であり、「n」は任意の整数(例えば、1から10,000までの整数)であり、そしてxl, x2, x3, x4, x5 . . . xnは「n」個のパラメータであって、例えば、医療機器により測定された測定値、臨床評価スコア、および/または生物学的サンプル(例えば、血液、血清、血漿、尿、または脳脊髄液などのヒト生物学的サンプル)の検査結果である。
アルゴリズムのパラメータは個々に重み付けをすることができる。そのようなアルゴリズムの例は式2で表される:
診断スコア = al*xl + a2*x2 - a3*x3 + a4*x4 - a5*x5 (2)
ここで、xl、x2、x3、x4およびx5は医療機器により測定された測定値、臨床評価スコア、および/または生物学的サンプルの検査結果であり、そしてal、a2、a3、a4およびa5はそれぞれxl、x2、x3、x4およびx5のための重みを調整した係数である。
診断スコアは、医学的症状もしくは疾患または治療効果を定量的に特定するために使用することができる。例えば、コンピュータにアルゴリズムを入力し、その後それを用いてうつ病などの疾患の診断スコアを決定することができる。そのような態様では、うつ病の程度が式1に基づき次の一般式を用いて定義される:
うつ病診断スコア = f (xl, x2, x3, x4, x5 . . . xn)
うつ病診断スコアは個人のうつ病の状態または重症度を測定するために使用できる量的数字であり、「f」は任意の数学関数であり、「n」は任意の整数(例えば、1から10,000までの整数)であり、そしてxl, x2, x3, x4, x5 . . . xnは、例えば、医療機器により測定された測定値、臨床評価スコア、および/または生物学的サンプル(例えば、ヒトの生物学的サンプル)の検査結果である「n」個のパラメータである。
より一般的な形態では、複数の診断スコアSmが、式3に示すように、バイオマーカーの測定値の特定のグループに複数の式を適用することによって作成される:
診断スコアSm = Fm (xl, . . . xn) (3)
複数のスコアは、例えば、うつ病性障害および/または関連障害の特定のタイプおよびサブタイプを識別するのに有用である。いくつかの場合には、うつ病性障害は大うつ病性障害(MDD)である。複数のスコアはまた、患者の治療の進行状況または選択された治療の有効性を示すパラメータであり得る。うつ病性障害のサブタイプの診断スコアは、抗うつ薬や他の医薬の選択または最適化に役立つ可能性がある。
バイオマーカーの発現レベルの変化は、式4の形式で表すことができる:
Cmi = Mib - Mia (4)
ここで、MibおよびMiaはそれぞれ治療前および治療後のバイオマーカーの発現レベルである。被験者の診断スコアの変化は、式5の形式で表すことができる:
H = HAMDb - HAMDa (5)
ここで、HAMDbおよびHAMDaはそれぞれ治療前および治療後の診断スコアである。あらかじめ確立されたプロセスを用いて、最小カットオフ値(Eh=有効性カットオフ値)より大きいHAMDaスコアを有する被験者のみを選択することができる。統計的有意性がp<0.05と定義される統計的評価に基づいて、0.05未満のp値を有するバイオマーカーが、治療応答性MDDと関連するバイオマーカーとして選択される。
バイオマーカーハイパーマッピングの使用
本明細書はまた、TMS前とTMS後の患者を評価するためにバイオマーカーハイパーマッピングを使用する方法をも提供する。このアプローチは、単一マーカーの単独でのまたはグループでの分析に対する、複数の分析物のハイパーマップ(multianalyte hypermap)の構築を独自に含むものである。バイオマーカーハイパーマッピングは、患者の個々のグループを識別するために、ヒトバイオマーカーコレクションからの複数のマーカーおよび相互に関連するアルゴリズムを利用する。さまざまな生理学的パラメータを反映するバイオマーカーのクラスター(例えば、ホルモン対炎症マーカー)を用いて、患者のバイオマーカー応答を多次元ハイパースペースにマッピングすることができる。本明細書で説明するように、4つのクラスのバイオマーカーが治療への応答の変化をマッピングする過程で用いられる:
炎症バイオマーカー
HPA系バイオマーカー
代謝バイオマーカー
神経栄養バイオマーカー。
4つのクラスのバイオマーカーについて4つのベクトルが作成される;一緒になって、これらのベクトルはハイパースペースに点を形成する。コンピュータプログラムを用いて、データを解析し、ベクトルをプロットし、ハイパーマップを入力することができる。可視化を容易にするため、生理学的に定義されたバイオマーカーの4つのクラスのうち3つのクラスから構築されたベクトルを用いて、三次元ハイパーマップを作成することができる。これは、患者が最初に試験されるときに患者ごとに最初に行うことができ、患者の分類に役立てられる。図3はその概念を示したものである。50人のMDD患者と20人の健常者(年齢をマッチさせた)についてのハイパースペースベクトルを作成するために、異なる係数が使用された。臨床サンプルからの多重バイオマーカーデータを用いて、ハイパースペースマップ(この場合の軸はHPA系マーカー、炎症マーカーおよび代謝マーカーである)上に個々の患者(黒丸)と健常者(白丸)を表示させた。患者の数値を提供するMDDスコアと相違して、ハイパーマップは様々なクラスのマーカーの発現に関連した情報を開示する。例として、小さい四角に囲まれた患者は代謝および炎症マーカーの高い値を有し、一方大きい長方形に囲まれた患者はこれら2つのマーカーグループに加えてHPA系マーカーの高い値を有する。臨床的に関連する情報(例えば、疾患の重症度)がさらにより多くの患者に関して収集されるので、この技術は患者管理に対するさらに強力な助けとなる可能性がある。
さらに、ハイパーマップは、患者の応答に関するデータを追加することによって、好ましい治療レジメンおよび治療効果の評価についての問いに答えることができる。例として、バイオマーカーの変化と選択的セロトニン再取込み阻害薬(SSRI)への臨床応答を含む大量の患者データが組み込まれたハイパーマップを用いて、TMS対LEXAPRO(商標)[セロトニン・ノルエピネフリン再取込み阻害薬(SNRI)]に対する改善された応答に関連するハイパースペースの領域(パターン)が同定され得る。
図4は、LEXAPRO(商標)で治療した一連の患者についての治療に対する肯定的または否定的応答を示すバイオマーカーハイパーマップの具体例を示す。ベースラインにあるMDD患者は黒丸で示される。黒三角は2〜3週間の治療後の患者を表し、白四角は8週間の治療後の患者を表す。白丸は治療を受けていない健常者を表す。
精神神経疾患と関連したバイオマーカーの同定および治療
本明細書は、治療応答性バイオマーカーを同定するための方法を提供する。本明細書中で用いる「バイオマーカー」とは、正常な生物学的過程もしくは発病過程の指標として、または治療的介入への薬理学的応答の指標として、客観的に測定し評価することができる特性である。バイオマーカーのパネルとそれらの関連アルゴリズムは、1つ以上の分析物(例えば、タンパク質、核酸、代謝物)、物理的測定値、またはそれらの組合せを包含し得る。
本明細書中で用いる「薬力学的」バイオマーカーとは、疾患の経過、重症度、状態、兆候もしくは消散に対する治療または治療的介入の影響を定量的に評価する(例えば、測定する)ために使用できるバイオマーカーのことである。ある態様では、薬力学的バイオマーカーは、分析物の発現レベルと、1つ以上の治療前ベースラインスコアに対する被験者の診断スコア(例えば、うつ病のHAMDスコア)の正または負の変化との相関または特定の関係に基づいて、同定することができる。いくつかの場合には、分析物の発現レベルがTMSまたは偽刺激の前後に被験者から採取したサンプルにおいて測定される。TMS前のサンプルの分析物発現レベルがTMS後のサンプルの分析物レベルと比較される。TMS前の診断スコアに対するTMS後の診断スコアの改善によって確認されるように、発現の変化が正または負の臨床転帰に対応する場合は、その分析物をMDDおよび他の精神神経疾患の薬力学的バイオマーカーとして同定することができる。
本明細書に提供された方法および材料によって同定される薬力学的バイオマーカーは、精神神経疾患と関連することが知られていた生体分子または未知の因子であり得る。バイオマーカーライブラリを用いて潜在的な精神神経バイオマーカーを同定するための手順が図1に示される。出発点として、ライブラリには、炎症、細胞接着、免疫反応または組織リモデリングを一般に示す分析物を含めることができる。いくつかの態様(例えば、初期のライブラリ開発段階)では、ライブラリが1ダース以上のマーカー、100のマーカー、または数百のマーカーを含んでいてもよい。例えば、バイオマーカーライブラリには数百(例えば、約200、約250、約300、約350、約400、約450、または約500)のタンパク質分析物が含まれ得る。新たなマーカー(例えば、特定の病状に特異的なマーカー)および/またはより一般化されたマーカー(例えば、成長因子)を追加してもよい。バイオマーカーライブラリは、開発研究(例えば、同位体コードアフィニティタグ(ICAT)、精密質量時間タグ(accurate mass and time tag)または他の質量分析法などのディファレンシャルディスプレイ技術を使用)から得られた疾患関連タンパク質の同定によって洗練させることができる。このようにして、ライブラリを特定の疾患状態に対してますます特異的にすることが可能である。
さまざまな精神神経疾患を有する被験者において、多くの生体分子がアップレギュレートされているか、またはダウンレギュレートされている。多数の転写因子、成長因子、ホルモンその他の生物学的分子が精神神経疾患と関連している。MDDおよび他の精神神経疾患のバイオマーカーを特定するために用いられるパラメータは、例えば、炎症バイオマーカー、HPA系因子、代謝バイオマーカー、および神経栄養因子(ニューロトロフィン、グリア細胞株由来神経栄養因子ファミリーリガンド(GFL)、および神経新生サイトカインを含む)からなる機能性グループから選択することができる。精神神経疾患のバイオマーカーは例えば炎症反応に関与する因子であり得る。多種多様なタンパク質が炎症に関与しており、そのうちのいずれかは、そのタンパク質の正常な発現と機能を損なうか破壊する遺伝的変異を受けやすい。炎症はまた、高い全身レベルの急性期タンパク質を誘導する。これらのタンパク質には、C反応性タンパク質、血清アミロイドA、血清アミロイドP、バソプレシン、およびグルココルチコイドが含まれ、これらはさまざまな全身作用を引き起こす。炎症はまた、炎症誘発性サイトカインおよびケモカインの放出を伴う。いくつかの研究は、炎症反応系の機能の異常が免疫系のフィードバック調節を乱し、それによって精神神経障害や免疫障害の発症をもたらすことを実証している。実際、慢性的な炎症反応を特徴とするいくつかの疾患(例えば、関節リウマチ)は、うつ病を伴うことが報告されている。さらに、最近の証拠は炎症性サイトカインのレベル上昇をうつ病と悪液質の両方に結びつけており、また、いくつかの実験はサイトカインの導入がヒトとげっ歯類の双方にうつ病と悪液質の症状を引き起こすことを示して、分子レベルで共通の病因が存在する可能性を示唆している。例えば、炎症誘発性サイトカインを(例えば、癌またはC型肝炎の治療において)投与すると、動物に「疾病行動」を誘発することがあり、これはヒトにおけるうつ病の行動上の症状によく似ている行動変化のパターンである。腫瘍壊死因子αなどの特定のサイトカイン分子を標的とする治療薬は現在、うつ病と悪液質の両方を薬理学的に同時に治療するそれらの能力について評価されつつある。要約すると、「Inflammatory Response System (IRS) model of depression」(Maes, Adv. Exp. Med. Biol. 461:25-46 (1999))には、神経調節物質として作用する炎症誘発性サイトカインは、うつ病性障害の行動的、神経内分泌的および神経化学的特徴を仲介する重要な因子である、と提唱されている。
いくつかの場合には、精神神経疾患バイオマーカーは神経栄養因子であり得る。ほとんどの神経栄養因子は次の3つのファミリーのうちの1つに属する:(1)ニューロトロフィン、(2)グリア細胞株由来神経栄養因子ファミリーリガンド(GFL)、および(3)神経新生サイトカイン。各ファミリーはそれぞれ独自のシグナル伝達ファミリーをもつが、誘発される細胞応答はしばしば重複する。脳由来神経栄養因子(BDNF)とその受容体TrkBなどの神経栄養因子は、発生中のニューロンの成長と生存および成熟ニューロンの維持に関与しているタンパク質である。神経栄養因子はCNSおよびPNSにおいてニューロンの初期成長と発達を促進するだけでなく、損傷したニューロンの再成長をインビトロおよびインビボで促進することができる。神経栄養因子は、発生中の軸索の成長を導くために、標的組織によって放出されることが多い。いくつかの研究は、神経栄養因子合成の欠陥が海馬と前頭前野皮質におけるアポトーシスの増加(うつ病で表される認知機能障害に関連づけられる)の原因であり得ることを示唆している。
いくつかの場合には、精神神経バイオマーカーはHPA系の因子であり得る。HPA系は大脳辺縁-視床下部-下垂体-副腎系(LHPA系)としても知られ、視床下部(脳の中空の漏斗状部分)と下垂体(視床下部の下にある豆状構造)と副腎(腎上体)(腎臓の上の小さな円錐形器官)の間の直接的影響とフィードバック相互作用の複雑な系である。これらの器官同士の相互作用が神経内分泌系(身体のストレス反応を制御し、かつ消化、免疫系、気分、およびエネルギーの貯蔵と消費を調節する)の主要部であるHPA系を構成している。HPA系は、一部の精神疾患と精神神経疾患だけでなく、アルコール依存症や脳卒中でも調節異常をきたしている。HPA系バイオマーカーの例としては、ACTHとコルチゾールが挙げられる。コルチゾールはコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)の分泌を阻害して、ACTH分泌のフィードバック阻害をもたらす。この通常のフィードバックループは、ヒトが慢性的なストレスにさらされると破壊されて、うつ病の根本原因になる可能性がある。
いくつかの場合には、代謝因子は精神神経疾患の有用なバイオマーカーであり得る。代謝バイオマーカーは健康および疾病状態での代謝過程を理解する上で手掛かりとなるバイオマーカーのセットである。ヒトの疾患は、複数の生化学的経路に影響を及ぼして、複雑な下流効果として現れる。例えば、うつ病や他の精神神経疾患は糖尿病などの代謝障害と関連していることが多い。その結果、種々の代謝物と、代謝過程を調節しているタンパク質およびホルモンは、MDDなどのうつ病性障害を診断したり、疾患の重症度を分類したり、うつ病性障害の治療に対する被験者の応答をモニタリングするために使用することができる。
表1は、炎症バイオマーカーの例示的なリストを提供する。
Figure 0005675771
表2は、HPA系バイオマーカーの例示的なリストを提供する。
Figure 0005675771
表3は、代謝バイオマーカーの例示的なリストを提供する。
Figure 0005675771
表4は、神経栄養バイオマーカーの例示的なリストを提供する。
Figure 0005675771
バイオマーカーの適格性確認
本明細書はまた、疾病関連バイオマーカーと薬力学的バイオマーカーの両方の適格性を確認するための材料および方法を提供する。現在、規制当局が使用するためのバイオマーカーの受け入れと適格性確認のための定まった枠組みは存在しない。そうした枠組みは、薬物と治療レジメンの開発におけるバイオマーカーの画期的で効率的な研究とその後の応用を促進するために必要とされる。さらに、現在のところ、食品医薬品局に十分に受け入れられる、証拠となるプロセスは存在しない。それにもかかわらず、複数の研究室(おそらく、バイオマーカーコンソーシアムモデル)からの累積データが、バイオマーカーの研究の効率的な実行およびひいては特定の適用のためのバイオマーカーの規制当局による受け入れを推進することは明らかである。本明細書で説明するように、MDDなどの精神神経疾患を含む複雑な疾患の評価においては、よく特徴づけられた患者と対照健常者の研究がバイオマーカー適格性確認プロセスの一環として実施されている。バイオマーカーの適格性確認は、バイオマーカーを生物学と結びつけ、さらに臨床的エンドポイントと結びつける、段階的な、「目的に適合する(fit-for-purpose)」、証拠となるプロセスである。バイオマーカーパネルを用いた臨床経験が発展すれば、バイオマーカーの適格性確認およびひいてはバイオマーカーの規制当局による受け入れに関連した情報もまた、薬力学的・有効性マーカーのためだけでなく、特定の疾患への応用のために発展する。
従来の累積臨床研究(例えば、生物学的サンプルのアッセイ、臨床測定、画像解析)を適格性確認プロセスにおいて用いることができる。いくつかの場合には、バイオマーカーの発現がTMSまたはプラセボ(すなわち、磁気パルスなし)で処置した患者のコホート(統計的検出力があるコホート)において測定される。患者のコホートの年齢と性別は、一般集団中でのMDD患者の分布に適合するように調整される。この種の研究はTMS治療におけるプラセボ効果の可能性と性質を明らかにすることができる。MDDの場合では、抗うつ薬、電気痙攣療法(ECT)、または認知行動療法(CBT)で治療されている患者において観察された正の変化に対してTMS陽性反応を有するバイオマーカー間で比較を行うことができる。
分析物の測定およびアルゴリズムの計算
いくつかの方法を用いて、治療に特異的な分析物の発現を定量化することが可能である。例えば、測定値を得るには、被験者の症状を評価するための1つ以上の医療機器もしくは臨床評価スコアを用いるか、または特定の分析物のレベルを測定するための生物学的サンプルの検査を用いることができる。本明細書中で用いる「生物学的サンプル」は、細胞または細胞物質を含むサンプルであり、そこから核酸、ポリペプチドまたは他の分析物を得ることができる。実施される分析のタイプに応じて、生物学的サンプルは血清、血漿、または標準方法により分離された血液細胞であり得る。血清と血漿は代表的な生物学的サンプルであるが、他の生物学的サンプルを使用してもよい。例えば、特定のモノアミン類は尿中で測定され、そして、グループとしてのうつ病患者は対照健常者より多量のカテコールアミン(CA)と代謝物を尿中に排出することがわかっている。他の好適な生物学的サンプルの例としては、限定するものではないが、脳脊髄液、胸膜液、気管支洗浄液、痰、腹水、膀胱洗浄液、分泌物(例えば、乳房分泌物)、口腔洗浄液、スワブ(例えば、口腔スワブ)、単離細胞、組織サンプル、タッチプレップ(touch prep)、および微細針吸引物が挙げられる。いくつかの場合には、生物学的サンプルをすぐに検査するのであれば、そのサンプルを室温に維持してもよいが、そうでなければ、アッセイ前にサンプルを冷蔵または冷凍(例えば、-80℃)で維持してもよい。いくつかの場合には、サンプルをTMSまたは偽刺激の後に一定の間隔で被験者から採取する。いくつかの場合には、サンプルをTMSまたは偽刺激の数分後、数時間後、数日後、または数週間後に採取してもよい。
バイオマーカーを定量化する方法として多重化法が特に有用である。多重化するために有用なプラットフォームの例は、FDAにより承認されているフローベースのLuminexアッセイシステム(xMAP; luminexcorp.comでオンライン)であり、このシステムは単一のサンプルで最大100までの固有のアッセイの多重化が可能である。この多重化技術は、フローサイトメトリーを用いて、抗体/ペプチド/オリゴヌクレオチドまたは受容体のタグを付けて標識したミクロスフェアを検出する。このシステムはアーキテクチャがオープンであるため、Luminexは特定の疾患パネルをホストするように容易に適応させることができる。
分析物の定量化に有用な別の方法はイムノアッセイであり、これは抗体とその抗原との特異的結合に基づいて(例えば、生体組織中または血清、血漿、脳脊髄液、もしくは尿などの体液中の)物質の濃度を測定する生化学的検査である。バイオマーカーの定量化のために選ばれる抗体はその抗原に対して高い親和性をもつ必要がある。多種多様の標識とアッセイ戦略が、感度、精度、信頼性および利便性を伴う血漿タンパク質の定量化の必要条件を満たすために開発されている。例えば、酵素免疫吸着測定法(ELISA)を用いて、生物学的サンプル中のバイオマーカーを定量化することができる。「固相サンドイッチELISA」では、未知量の特異的「捕捉」抗体をマルチウェルプレートの表面に付着させて、その捕捉抗体にサンプルを吸着させる。次に、第2の特異的な標識抗体を前記表面上に流して、それが抗原と結合できるようにする。第2の抗体は酵素に連結されており、最終工程で、その酵素によって変換されて検出可能なシグナル(例えば、蛍光シグナル)を発生する物質が添加される。蛍光ELISAの場合は、プレートリーダーを用いて、適切な波長の光をサンプル上に照射したときに発生するシグナルを測定することができる。アッセイエンドポイントの定量化では、マルチウェルプレートの個々のウェル中の着色液の吸光度を読み取る必要がある。着色液の正確な測定を可能にするために分光光度計を組み込んださまざまなプレートリーダーが利用可能である。BIOMEK(登録商標)1000 (Beckman Instruments社; Fullerton, CA)など、一部の自動システムは内蔵検出システムをも備えている。一般的には、未知のデータ点を、実験的に導かれた濃度曲線にフィットさせるために、コンピュータが用いられる。
いくつかの場合には、生物学的サンプル中の分析物の発現レベルは、質量分析装置(例えば、マルチアイソトープ画像化質量分析(MIMS)装置)、または他の任意の好適な技術(例えば、RNAの発現を測定する技術を含む)を用いて測定することができる。そうした方法には、例えば、二重標識蛍光プローブ(例えば、TAQMAN(商標), Applied Biosystems社, Foster City, CA)を用いるPCRおよび定量的リアルタイムPCR法が含まれる。場合によっては、遺伝子の発現パターンをゲノムスケールで研究するために、DNAマイクロアレイが用いられる。マイクロアレイでは、1回の実験で数千ものメッセンジャーRNAのレベルの変化を同時測定することが可能である。マイクロアレイを用いて、治療レジメンの前、間、および/または後にゲノムの大部分にわたる遺伝子の発現をアッセイすることができる。マイクロアレイとバイオインフォマティクスの組合せを用いると、特定の治療レジメンに相関するか、または治療に対する陽性または陰性反応に相関する生体分子を同定することが可能である。場合によっては、マイクロアレイをプロテオーム解析と組み合わせて用いることもできる。
複数のタンパク質パラメータを同時に定量化するのに有用なプラットフォームには、例えば、米国特許仮出願第60/910,217号および第60/824,471号、米国実用特許出願第11/850,550号、ならびにPCT公開公報WO2007/067819に記載されるものが含まれ、これらの全内容を参照により本明細書に援用する。有用なプラットフォームの例は、Precision Human Biolaboratories社(現在はRidge Diagnostics社, Research Triangle Park, N.C)が開発したMIMS標識フリーのアッセイ技術を利用するものである。簡単に説明すると、薄膜の境界での局所干渉が光検出技術の基礎となり得る。生体分子相互作用の解析の場合は、SiO2の干渉層をもつガラスチップがセンサーとして用いられる。この層の表面に結合する分子は干渉膜の光学的厚さを増加させ、それを、例えば米国特許仮出願第60/910,217号および第60/824,471号に記載されるように、測定することができる。
新たなバイオマーカーの発見の可能性に関しては、タンパク質分離のために従来の二次元ゲル電気泳動を実施し、続いてタンパク質の同定および特性解析のために質量分析(例えば、MALDI-TOF、MALDI-ESI)およびバイオインフォマティクスを実施することができる。差次的タンパク質の定量化の他の方法を用いてもよい。例えば、タンパク質およびペプチドのアイデンティティーおよび相対量の両方を同時に決定するためにタンデム質量分析(MS/MS)が使用される。
図6は、本明細書に記載するバイオマーカー解析を利用するコンピュータベースの診断システムの一例を示す。このシステムにはバイオマーカーライブラリデータベース710が含まれ、このデータベース710は、例えば本明細書に記載する方法に従って作成されるバイオマーカーアルゴリズムに基づいて、バイオマーカーの組合せの様々なセットおよび各組合せの関連係数を記憶する。データベース710はこのシステム内のデジタル記憶装置に記憶される。患者データベース720がこのシステムに装備され、解析中の1人以上の患者の個々のバイオマーカーの測定値を記憶する。診断プロセッシングエンジン730(1つ以上のコンピュータプロセッサによって実行され得る)が装備され、バイオマーカーライブラリデータベース710内のバイオマーカーの組合せの1つ以上のセットを、データベース720に記憶された特定の患者の患者データに適用して、その患者を診断するために選ばれたバイオマーカーの組合せのセットの診断出力を生じさせる。2つ以上のそのようなセットを患者データに適用して、2つ以上の異なる診断出力結果を得ることが可能である。プロセッシングエンジン730の出力は、例えば、ディスプレイ装置、プリンタまたはデータベースなどであり得る出力装置740に保存することができる。
図6のシステムを実行するために、および、本明細書に記載される、コンピュータにより実行される方法のいずれかに関連して説明される操作のために、1つ以上のコンピュータシステムが使用される。図7は、そのようなコンピュータシステム800の例を示す。システム800には、ラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、パーソナルデジタルアシスタント、サーバ、ブレードサーバ、メインフレーム、その他の適切なコンピュータなど、さまざまな形態のデジタルコンピュータを含めることができる。さらに、システム800には、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、スマートフォン、その他の同様のコンピュータデバイスといった、モバイル機器を含めることもできる。さらに、このシステムはポータブルストレージメディア、例えばユニバーサル・シリアル・バス(USB)フラッシュドライブを含んでもよい。例えば、USBフラッシュドライブはオペレーティングシステムおよび他のアプリケーションを保存することができる。USBフラッシュドライブには、無線送信機または別のコンピュータデバイスのUSBポートに挿入できるUSBコネクタなどの入力/出力コンポーネントを含めることもできる。
図7の具体例では、システム800はプロセッサ810、メモリ820、記憶装置830、および入力/出力装置840を含む。コンポーネント810、820、830および840のそれぞれはシステムバス850を用いて相互に接続されている。プロセッサ810はシステム800内で実行するための命令を処理することが可能である。プロセッサは、いくつかあるアーキテクチャのうちの任意のものを用いて設計することができる。例えば、プロセッサ810は、CISC (複合命令セットコンピュータ)プロセッサ、RISC (縮小命令セットコンピュータ)プロセッサ、またはMISC (Minimal Instruction Set Computer:最小命令セットコンピュータ)プロセッサであり得る。
ある態様において、プロセッサ810はシングルスレッド型プロセッサである。他の態様では、プロセッサ810はマルチスレッド型プロセッサである。プロセッサ810はメモリ820または記憶装置830に記憶させた命令を処理することができ、入力/出力装置840のユーザインターフェースに対してグラフィック情報を表示することができる。
メモリ820はシステム800内の情報を記憶する。ある態様において、メモリ820はコンピュータ可読媒体である。他の態様では、メモリ820は揮発性メモリユニットである。さらに他の態様では、メモリ820は不揮発性メモリユニットである。
記憶装置830はシステム800に大容量記憶装置を提供することが可能である。ある態様において、記憶装置830はコンピュータ可読媒体である。さまざまな異なる態様では、記憶装置830はフロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイス、またはテープデバイスであってよい。
入力/出力装置840はシステム800に入力/出力操作を提供する。ある態様において、入力/出力装置840はキーボードおよび/またはポインティングデバイスを含む。いくつかの場合には、入力/出力装置840はグラフィカルユーザインターフェースを表示するためのディスプレイ装置を含む。
上記の機能は、デジタル電子回路に、またはコンピュータのハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せに実装することができる。機器は情報担体に実体的に具体化されたコンピュータプログラム製品に、例えばプログラマブルプロセッサによる実行のための機械可読記憶装置に実装することができる;また、方法の工程は、入力データで作動して出力を生じることによって、命令のプログラムを実行して上記の実装の機能を果たすプログラマブルプロセッサにより、実施することができる。上記の機能は、プログラマブルシステム(データと命令をデータ記憶システムから受信しかつデータと命令をデータ記憶システムに送信するように接続された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサ、少なくとも1つの入力装置、および少なくとも1つの出力装置を含む)で実行可能な1つ以上のコンピュータプログラムに有利に実装することができる。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを実行するために、または特定の結果をもたらすために、コンピュータ内で直接または間接的に使用される命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイル型またはインタープリタ型言語を含む、プログラミング言語の任意の形式で記述することができ、また、それは、例えばスタンドアロンプログラムとして、またはモジュール、コンポーネント、サブルーチン、もしくはコンピューティング環境での使用に適した他のユニットを含む任意の形態に配備されてもよい。
命令プログラムの実行に適したプロセッサには、例として、一般用途と特殊用途のマイクロプロセッサ、および任意の種類のコンピュータの唯一のプロセッサまたは複数のプロセッサのうちの1つが含まれる。一般的に、プロセッサは読取専用メモリもしくはランダムアクセスメモリまたはそれらの両方から命令とデータを受信する。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサと、命令およびデータを記憶するための1つ以上のメモリである。一般に、コンピュータはまた、データファイルを記憶するための1つ以上の大容量記憶装置を含むか、そうした装置と交信するように作動可能に接続される。この種の装置には、磁気ディスク、例えば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;光磁気ディスク;および光ディスクが含まれる。コンピュータプログラムの命令およびデータを実体的に具体化するのに適した記憶装置には、不揮発性メモリのあらゆる形態が含まれ、例として、半導体メモリ装置、例えばEPROM、EEPROM、およびフラッシュメモリ装置;磁気ディスク、例えば内蔵ハードディスクおよびリムーバブルディスク;光磁気ディスク;ならびにCD-ROMおよびDVD-ROMディスクが含まれる。プロセッサとメモリはASIC(特定用途向け集積回路)で補完したり、ASICに組み込んだりすることができる。
ユーザとの相互作用を提供するため、上記の機能をコンピュータに実装することができ、そうしたコンピュータは、ユーザに情報を表示するためのCRT(陰極線管)またはLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどのディスプレイ装置、ならびにユーザがコンピュータへ入力することを可能にするキーボードおよびマウスやトラックボールなどのポインティングデバイスを装備している。
上記の機能はコンピュータシステムに実装することができ、そうしたシステムは、データサーバなどのバックエンドコンポーネントを含むか、アプリケーションサーバまたはインターネットサーバなどのミドルウェアコンポーネントを含むか、グラフィカルユーザインターフェースまたはインターネットブラウザをもつクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネントを含むか、それらの任意の組合せを含むものである。前記システムのコンポーネントは、通信ネットワークなどのデジタルデータ通信の任意の形式または媒体によって接続することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリア・ネットワーク(「LAN」)、広域ネットワーク(「WAN」)、ピアツーピア・ネットワーク(アドホックまたは静的メンバをもつ)、グリッドコンピューティング・インフラストラクチャ、およびインターネットが挙げられる。
コンピュータシステムにはクライアントとサーバを含めることができる。クライアントとサーバは一般に互いに遠く離れており、典型的には上記のようなネットワークを介して相互作用する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータで実行され、互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
バイオマーカー情報の利用方法
診断スコアと薬力学的バイオマーカーは、限定するものではないが、治療のモニタリングのために使用することができる。例えば、診断スコアおよび/またはバイオマーカーのレベルは、被験者の治療過程の構築または変更に使用するために臨床医に提供される。治療が選択されて、治療が開始されると、被験者は定期的にモニタリングされ、そのモニタリングは、2回以上の間隔をおいて生物学的サンプルを採取し、治療前および治療後の所定の時間間隔に対応する診断スコアを決定し、そして診断スコアを経時的に比較することによって行うことができる。これらのスコアに基づいて、また、診断スコアの増加、減少もしくは安定化または薬力学的バイオマーカーのレベルの変化に関連して観察された何らかの傾向に基づいて、臨床医、療法士または他の医療専門家は、治療をそのまま継続するか、治療を中断するか、または経時的に改善をみることを目標にして治療計画を調整するか、を選択することができる。例えば、精神神経疾患の特定の治療レジメンに対する陽性反応と相関する薬力学的バイオマーカーのレベルの増加は、治療への患者の肯定的な応答を示し得る。そのような薬力学的バイオマーカーのレベルの減少は、治療に対して肯定的に応答できなかったこと、および/または現在の治療計画を見直す必要があることを示し得る。バイオマーカーの発現レベルおよび診断スコアの静止状態は、精神神経疾患の症状の静止状態に対応し得る。バイオマーカーのパターンは、TMSに加えて、抗うつ薬を服用している患者や、他の型の治療(例えば、認知行動療法または電気痙攣療法)を受けている患者では異なることがあり、診断スコアが通常の患者の診断スコアに向かって変化していることは、効果的な治療の組合せを示している可能性がある。治療についての累積経験が増えるにつれて、特定の抗うつ薬などによる治療と組み合わせたTMSへの応答をモニタリングするために、特定のバイオマーカーのパネルを導き出すことが可能である。
患者の診断スコアが報告された後に、医療専門家は患者のケアに影響を与える1つ以上の行動をとることができる。例えば、医療専門家は患者の医療記録に診断スコアおよびバイオマーカーの発現レベルを記録する。いくつかの場合には、医療専門家は精神神経疾患の診断を記録するか、そうでなければ、患者の病状を反映するように医療記録を変更する。いくつかの場合には、医療専門家は患者の医療記録を検討して判断し、患者の症状の臨床的介入のための複数の治療戦略を評価することができる。
大うつ病性障害および他の気分障害の場合には、治療のモニタリングは、臨床医が治療用量および治療持続期間を調整するのに役立つ可能性がある。正常なホメオスタシスによく似ている個々のバイオマーカーレベルの変化のサブセットを示すことは、レジメンの有効性を評価する上で臨床医の助けとなり得る。医療専門家は、患者の診断スコアに関する情報を受け取った後で、うつ病や他の精神神経疾患の症状の治療を開始したり、変更したりすることができる。いくつかの場合には、診断スコアおよび/またはバイオマーカーレベルの先の記録が、新たに伝えられた診断スコアおよび/または疾病状態と比較される。そうした比較に基づいて、医療専門家は治療の変更を勧めてもよい。いくつかの場合には、医療専門家はMDD症状の新規な臨床的介入のための臨床試験に患者を登録することができる。いくつかの場合には、医療専門家は、患者の症状が臨床的介入を必要とするまで、治療開始の待機を選んでもよい。
医療専門家は、診断スコアおよび/またはバイオマーカーレベルを患者や患者の家族に伝えることができる。いくつかの場合には、医療専門家は、治療の選択肢、予後、および専門医(例えば、神経科医および/またはカウンセラー)への紹介を含めて、MDDに関する情報を患者および/またはその家族に提供することができる。場合によっては、医療専門家は、診断スコアおよび/または疾病状態を専門医に伝えるために、患者の医療記録のコピーを提供することもできる。
研究専門家は、MDDの調査研究を前進させるために、被験者の診断スコアおよび/またはバイオマーカーレベルに関する情報を利用することができる。例えば、研究者は、効果的な治療を特定するために、診断スコアのデータを、うつ症状または他の精神神経疾患の症状の治療用の薬物の有効性に関する情報と共にコンパイルすることができる。場合によっては、研究専門家は、被験者の診断スコアおよび/またはバイオマーカーレベルを入手して、調査研究または臨床試験への被験者の登録または参加の継続を判断することができる。いくつかの場合には、研究専門家は、被験者の診断スコアおよび/またはバイオマーカーレベルを医療専門家に伝えることができ、そして/または被験者の精神神経疾患の臨床評価および治療について医療専門家に問い合わせることができる。
情報を他者(例えば、専門家)に伝えるために、適切であれば任意の方法を使用することができ、また、情報は直接伝えることも間接的に伝えることも可能である。例えば、検査技師は診断スコアおよび/または個々の分析物のレベルをコンピュータベースの記録に入力することができる。いくつかの場合には、情報が医療記録または調査記録に物理的変更を加えることによって伝えられる。例えば、医療専門家は、医療記録を見る他の医療専門家に診断を伝えるために、医療記録に恒久的な表記を加えたりフラグを付けたりすることができる。あらゆるタイプの伝達手段(例えば、郵便、電子メール、電話、ファクシミリおよび対面やりとり)が使用可能である。安全な伝達手段(例えば、ファクシミリ、郵便、および対面やりとり)が特に有用である。情報はまた、その情報を(例えば、安全な方法で)専門家が電子的に利用可能にすることによって、専門家に伝えることも可能である。例えば、情報をコンピュータのデータベースに入れて、医療専門家がその情報にアクセスできるようにしてもよい。さらに、病院、診療所、または専門家の代理を務める調査施設に情報を伝えることが可能である。医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)は、患者の医療情報を保管する情報システムを侵入から保護することを要求している。したがって、オープンネットワーク(例えば、インターネットまたは電子メール)を介して転送される情報は暗号化されてもよい。クローズドシステムまたはクローズドネットワークが使用されている場合には、既存のアクセス制御で十分であり得る。
以下の実施例は、上記のさまざまな特徴に関するさらなる情報を提供するものである。
実施例1−MDDに関連した薬力学的バイオマーカーの同定
図2は、MDDの薬力学的バイオマーカーを同定するプロセスを示す。MDDと関連がある可能性のあるバイオマーカーのコレクションを、以前の研究結果に基づいて、文献調査から、生物学的経路のゲノムもしくはプロテオーム解析から、または分子イメージングの研究から選択する。MDD患者のコホートを、面接に基づく臨床的評価の「ゴールドスタンダード」法により識別する。血漿または血清サンプルを各患者から採取する。その後、患者を経頭蓋磁気刺激または偽刺激(プラセボ)に供する。治療後の血漿または血清サンプルを、ある期間にわたって(例えば、治療の数分後、数時間後、数日後、および/または数週間後に)各患者から採取する。各サンプルについて、選択したバイオマーカーの発現レベルを測定する。追加の構造化臨床面接の実施およびTMS後の診断スコアの割り当てによって決定された、治療への患者応答を記録する。TMSへの陽性の臨床応答(治療前ベースラインスコアに対して改善された治療後診断スコアとして定義される)を示す患者を識別する。その発現が陽性の臨床転帰と相関する分析物を、MDDの薬力学的バイオマーカーとして同定する。
図1で説明した工程を用いてMDDの診断バイオマーカーを生じさせ、約20の分析物のパネルを構築した。これらの分析物には次のものが含まれていた:α2-マクログロブリン(A2M)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、C反応性タンパク質(CRP)、コルチゾール、上皮成長因子(EGF)、インターロイキン-1 (IL-1)、インターロイキン-6 (IL-6)、インターロイキン-10 (IL-10)、インターロイキン-18 (IL-18)、レプチン、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)、ミエロペルオキシダーゼ、ニューロトロフィン3 (NT-3)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1 (PAI-1)、プロラクチン(PRL)、ランテス(RANTES)、レジスチン、SlOOBタンパク質、可溶性腫瘍壊死因子α受容体タイプ2 (sTNF-αRII)、および腫瘍壊死因子α(TNF-α)。これらのバイオマーカーまたはそれらの任意の組合せは、MDDの診断、臨床試験のための患者の層別化、および/または患者のモニタリングに使用することができる。
実施例2−複数のバイオマーカーを解析するためのプロテオミクスの使用
図5に示すように、治療関連バイオマーカーはタンデム質量分析を用いて同定される。生物学的サンプルを治療の前後に採取する。サンプルを異なるタンデム質量タグ(TMT)で標識し、TMT-MS(商標)(Proteome Sciences社、英国)のために混合する。適切な酵素(例えば、トリプシン)を用いて断片化/消化を行った後、TMT標識断片を液体クロマトグラフィーMS/MSによる解析のために選択する。サンプル間のタンパク質発現の比率は、個々のレポーター基のシグナル強度を比較することによって、MS/MSにより示される。バイオインフォマティクス解析を用いて、差次的に発現されるタンパク質を同定する。次に、同定されたタンパク質を、治療後の一定期間にわたって(例えば、特異的抗体およびELISAを用いて)潜在的バイオマーカーとして検証して、薬力学的バイオマーカーのサブセットを構築する。被験者の分析物発現レベルの変化の統計的分析を実施して、分析物を治療効果と相関させる。統計的有意性がp<0.05と定義される統計的評価において、p値が0.05より大きいバイオマーカーを治療応答性MDDに関連するバイオマーカーとして選択する。
実施例3
50人のMDD患者と20人の健常者に由来する血清サンプルから臨床結果を得た。マーカー(下記参照)のそれぞれの血清レベルを定量的イムノアッセイで測定した。
バイナリロジスティック回帰の最適化を用いて、臨床データを、「ゴールドスタンダード」臨床的評価からの臨床結果に対する各グループ内の選択されたマーカーとフィットさせた。フィットの結果は、そのグループ内のマーカーのリストについての係数のセットである。例えば、炎症グループを代表する4種のマーカーとしてAlAT (I1)、A2M (I2)、アポリポタンパク質CIII (I3)、およびTNFα(I4)を選択した。臨床結果に対してバイナリロジック回帰を用いて、これらのマーカーの4つの係数および定数を算出した。炎症グループのためのベクトルは次のように構築された:
V炎症 = 1/(1 + exp - (CI0 + CI1*I1 + CI2*I2 + CI3*I3 + CI4*I4)) (1)
ここで、CIO = -7.34
CI1 = -0.929
CI2 = 1.10
CI3 = 5.13
CI4 = 6.48
V炎症は、測定した炎症マーカーを用いた、所定の患者がMDDを有していたかどうかの確率を表す。
同様に、他のグループのマーカーについてのベクトルをMDDについて求めた。代謝グループを代表する4種のマーカーを選択した:Ml=ASP、M2=プロラクチン、M3=レジスチン、およびM4=テストステロン。臨床データに対して上記と同じバイナリロジスティック回帰法を用いて、係数のセットとベクトルのサマリ(summary)が、患者の代謝応答について明らかになった:
V代謝 = 1/(1+ exp -(Cm0+Cml*Ml+Cm2*M2+Cm3*M3+Cm4*M4)) (2)
ここで、CmO = -1.10
Cml = 0.313
Cm2 = 2.66
Cm3 = 0.82
Cm4 = -1.87
V代謝は、測定した代謝マーカーを用いた、所定の患者がMDDを有していたかどうかの確率を表す。
HPAグループを代表する2種のマーカーを選択した:Hl=EGFおよびH2=G-CSF。この場合も、臨床データに対して上記と同じバイナリロジスティック回帰法を用いて、係数のセットとベクトルのサマリが患者のHPA応答について明らかになった:
Vhpa = 1/(1+ exp -(ChO+Chl*Hl+Ch2*H2)) (3)
ここで、ChO = -1.87
Chl = 7.33
Ch2 = 0.53
Vhpaは、測定したHPAマーカーを用いた、所定の患者がMDDを有していたかどうかの確率を表す。
これら3つのパラメータを使用して、MDDと診断された患者および健常者対照群のハイパーマップ図を作成し、それを図3に示した。
特定の外部要因、疾患または治療薬は、ハイパーマップ内のベクトルの構成要素である1つ以上のバイオマーカーの発現に影響を与えることがある。図4は、抗うつ薬LEXAPRO(商標)による治療を開始した一連のMDD患者の応答パターンを示すために開発されたハイパーマップである。図4は、LEXAPRO(商標)で治療した後の韓国のMDD患者のサブセットにおけるBHYPERMAP(商標)の変化を示す。ベースラインにあるMDD患者のデータは黒丸で表される。2〜3週間の治療後のデータ点は黒三角で表され、8週間の治療後のデータ点は白四角で表される。白丸は健常者のデータを表す。これは、抗うつ薬治療に応答した個々のパターンの変化を特定するためにこの技術を使用できることを実証している。
本明細書には多くの詳細事項が含まれるが、これらは、本発明の範囲または特許請求されるものの範囲への限定として解釈されるべきでなく、むしろ本発明の特定の態様に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。個別の態様として本明細書に記載されるいくつかの特徴は、単一の態様において組み合わせて実施することもできる。反対に、単一の態様として記載されるさまざまな特徴は、複数の態様で別々に、または任意の適切なサブコンビネーションで実施することもできる。さらに、特徴が特定の組合せで作動するとして上述されており、主にそのようなものとして特許請求されることもあるが、特許請求された組合せからの1つ以上の特徴はいくつかの場合にはその組合せから切り離すことができ、また、特許請求された組合せはサブコンビネーションまたはサブコンビネーションの変形へと導くことができる。
開示されているのはごく少数の態様にすぎない。上記の態様および他の態様の変更および改善は、本明細書に記載および説明したものに基づいて行うことができる。

Claims (5)

  1. 以下の工程を含む、精神神経疾患を有する哺乳動物における治療応答を検査する生体外方法:
    (a)哺乳動物の第1の診断疾患スコアを決定する工程であって、第1の診断疾患スコアが、治療を施す前に哺乳動物から得られた第1の生物学的サンプル中に存在する脳由来神経栄養因子(BDNF)、ならびに少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルの数値を用いて算出され、該少なくとも2つの炎症マーカーが、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)および可溶性腫瘍壊死因子α受容体タイプII(sTNFαRII)を含み、該少なくとも2つのHPA系マーカーが、コルチゾールおよび上皮成長因子(EGF)を含み、かつ該少なくとも2つの代謝マーカーが、プロラクチンおよびレジスチンを含む、工程;
    (b)哺乳動物の第2の治療後診断疾患スコアを決定する工程であって、第2の診断疾患スコアが、治療を施した後に哺乳動物から得られた第2の生物学的サンプル中に存在するBDNF、該少なくとも2つの炎症マーカー、少なくとも2つのHPA系マーカー、および少なくとも2つの代謝マーカーのレベルの数値を用いて算出される、工程;および
    (c)該第2の治療後スコアが該第1のスコアと異なるか否かを決定するために、該第1の診断疾患スコアと第2の診断疾患スコアと比較する工程。
  2. 前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載の方法。
  3. 前記治療が経頭蓋磁気刺激である、請求項1記載の方法。
  4. 前記第1および第2の診断疾患スコアを比較して前記治療に対する応答を確認するかまたは肯定的な治療応答を示す確率を予測するために、前記少なくとも2つの炎症マーカーのレベルのスコア、前記少なくとも2つのHPA系マーカーのレベルのスコア、および前記少なくとも2つの代謝マーカーのレベルのスコアの使用を含む、ハイパーマップを使用する工程を含む、請求項1記載の方法。
  5. 前記第1および第2の診断疾患スコアを比較して前記治療に対する応答を確認するかまたは肯定的な治療応答を示す確率を予測するために、前記BDNFのレベルのスコア、前記少なくとも2つの炎症マーカーのレベルのスコア、および前記少なくとも2つのHPA系マーカーのレベルのスコアの使用を含む、ハイパーマップを使用する工程を含む、請求項1記載の方法。
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