以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る自動原稿給紙装置3を備えた画像形成装置1の外観を示す斜視図、図2は、自動原稿給紙装置3の外観を示す斜視図、図3は、画像形成装置1の内部構造を示す断面図である。ここでは、画像形成装置1として胴内排紙型の複写機を例示しているが、画像形成装置は、プリンター、ファクシミリ装置、或いは、これらの機能を備える複合機であってもよい。
画像形成装置1は、略直方体形状の筐体構造を有し胴内空間を備えた装置本体2、装置本体2の上面に配置された自動原稿給紙装置3、及び装置本体2の下側に組み付けられた増設給紙ユニット4を含む。
装置本体2は、シートに対して画像形成処理を行う。装置本体2は、略直方体形状の下部筐体21と、下部筐体21の上方に配設される略直方体形状の上部筐体22と、下部筐体21と上部筐体22とを連結する連結筐体23とを含む。下部筐体21には画像形成のための各種機器が収容され、上部筐体22には原稿画像を光学的に読み取るための各種機器が収容されている。下部筐体21、上部筐体22及び連結筐体23で囲まれる胴内空間が、画像形成後のシートを収容可能な胴内排紙部24とされている。連結筐体23は、装置本体2の右側面の側に配置され、胴内排紙部24へシートを排出するための排出口961(図3)が設けられている。
胴内排紙部24として利用される前記胴内空間は、装置本体2の前面及び左側面において外部に開放されている。ユーザは、これらの開放部分から手を差し入れ、胴内排紙部24から画像形成後のシートを取り出すことが可能である。前記胴内空間の底面241は、下部筐体21の上面で区画され、排出口961から排出されたシートが積載される。
上部筐体22の前面には、操作パネルユニット25が突出して設けられている。操作パネルユニット25は、テンキー、スタートキーなどを含む操作キー251及びLCDタッチパネル252などを備え、ユーザからの各種の操作指示の入力を受け付ける。ユーザは、操作パネルユニット25を通じて、印刷されるシートの枚数等を入力したり、印刷濃度等を入力したりすることができる。
下部筐体21には、画像形成処理が施される記録シートを収容する給紙カセット211が装着されている。増設給紙ユニット4もまた、画像形成処理が施される記録シートを収容する給紙カセット41、42を含む。これら給紙カセット211、41、42は、自動給紙用に設けられたカセットであり、大量の記録シートをサイズ別に収容することができる。また、給紙カセット211、41、42は、下部筐体21又は増設給紙ユニット4の前面から手前方向に引出可能である。なお、図3では、下部筐体21の給紙カセット211のみを描いている。
装置本体2の右側面には、ユーザに手差し給紙を行わせるためのマルチトレイユニットMが装着されている。マルチトレイユニットMは、手差しの記録シートが載置される給紙トレイ43と、前記記録シートを下部筐体21内の画像形成部へ搬入する給紙ユニット44とを含む。給紙トレイ43は、その下端部において下部筐体21に対して開閉自在に取り付けられており、不使用時は閉状態とされる。ユーザは、手差し給紙を行う場合、給紙トレイ43を開き、その上に記録シートを載置する。
自動原稿給紙装置3は、装置本体2の上面に、その後側において回動自在に取り付けられている。なお、図3では、この自動原稿給紙装置3の記載を省いている。自動原稿給紙装置3は、装置本体2における所定の原稿読取位置(第1コンタクトガラス222が組み付けられた位置)に向けて、複写される原稿シートを自動給紙する。一方、ユーザが手置きで原稿シートを所定の原稿読取位置(第2コンタクトガラス223の配置位置)に載置する場合は、自動原稿給紙装置3は上方に開けられる。
図2を参照して、自動原稿給紙装置3は、本体ハウジング30、原稿給紙トレイ31、原稿搬送部32、原稿排紙トレイ33を備える。本体ハウジング30は、自動原稿給紙装置3に備えられている各種の機構を収容する筐体であって、原稿搬送部32を収容する左側部分に、上方に隆起した前壁部301及び後壁部302を有すると共に、右側部分に、ほぼフラットな低層部分を備えている。
原稿給紙トレイ31(トレイ)は、画像読取位置へ給送される原稿シートが載置されるトレイであって、本体ハウジング30の給送口30Hから延出するように、本体ハウジング30に付設されている。原稿給紙トレイ31には、載置された原稿シートの幅合わせを行うための一対のカーソル311が備えられている。
原稿搬送部32は、原稿給紙トレイ31上の原稿シートを、画像読取位置を経由して原稿排紙トレイ33まで搬送する搬送路及び搬送機構を備える。原稿搬送部32は、本体ハウジング30の前壁部301及び後壁部302の間の開口に嵌め込まれる上部カバーユニット32Uを含む。これら詳細については、図4他に基づいて後記で詳述する。
原稿排紙トレイ33は、原稿画像が光学的に読み取られた後の原稿シートが排出されるトレイである。本体ハウジング30の右側における前記低層部分の上面が、原稿排紙トレイ33とされている。
続いて、図3に基づいて、装置本体2の内部構造を説明する。下部筐体21の内部には、上方から順に、トナーコンテナ99Y、99M、99C、99Bk、中間転写ユニット92、画像形成部93、露光ユニット94、及び上述の給紙カセット211が収容されている。
画像形成部93は、フルカラーのトナー像を形成するために、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の各トナー像を形成する4つの画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkを備える。各画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体ドラム11と、この感光体ドラム11の周囲に配置された、帯電器12、現像装置13、一次転写ローラー14及びクリーニング装置15とを含む。
感光体ドラム11は、その軸回りに回転し、その周面に静電潜像及びトナー像が形成される。感光体ドラム11としては、アモルファスシリコン(a−Si)系材料を用いた感光体ドラムを用いることができる。帯電器12は、感光体ドラム11の表面を均一に帯電する。帯電後の感光体ドラム11の周面は、露光ユニット94によって露光され、静電潜像が形成される。
現像装置13は、感光体ドラム11上に形成された静電潜像を現像するために、感光体ドラム11の周面にトナーを供給する。現像装置13は、2成分現像剤用のものであり、攪拌ローラー16、17、磁気ローラー18、及び現像ローラー19を含む。攪拌ローラー16、17は、2成分現像剤を攪拌しながら循環搬送することで、トナーを帯電させる。磁気ローラー18の周面には2成分現像剤層が担持され、現像ローラー19の周面には、磁気ローラー18と現像ローラー19との間の電位差によってトナーが受け渡されることにより形成されたトナー層が担持される。現像ローラー19上のトナーは、感光体ドラム11の周面に供給され、前記静電潜像が現像される。
一次転写ローラー14は、中間転写ユニット92に備えられている中間転写ベルト921を挟んで感光体ドラム11とニップ部を形成し、感光体ドラム11上のトナー像を中間転写ベルト921上に一次転写する。クリーニング装置15は、トナー像転写後の感光体ドラム11の周面を清掃する。
イエロー用トナーコンテナ99Y、マゼンタ用トナーコンテナ99M、シアン用トナーコンテナ99C、及びブラック用トナーコンテナ99Bkは、それぞれ各色のトナーを貯留するものであり、YMCBk各色に対応する画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkの現像装置13に、図略の供給経路を通して各色のトナーを供給する。
露光ユニット94は、光源やポリゴンミラー、反射ミラー、偏向ミラーなどの各種の光学系機器を有し、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkの各々に設けられた感光体ドラム11の周面に、原稿画像の画像データに基づく光を照射して、静電潜像を形成する。
中間転写ユニット92は、中間転写ベルト921、駆動ローラー922及び従動ローラー923を備える。中間転写ベルト921上には、複数の感光体ドラム11からトナー像が重ね塗りされる(一次転写)。重ね塗りされたトナー像は、給紙カセット211から供給される記録シートに、二次転写部98において二次転写される。中間転写ベルト921を周回駆動させる駆動ローラー922及び従動ローラー923は、下部筐体21によって回転自在に支持される。
給紙カセット211(41、42)は、複数の記録シートが積層されてなるシート束を収納する。給紙カセット211の右端側の上部には、繰り出しローラー212が配置されている。繰り出しローラー212の駆動により、給紙カセット211内のシート束の最上層の記録シートが1枚ずつ繰り出され、搬入搬送路26へ搬入される。一方、給紙トレイ43に載置された手差しの記録シートは、給紙ユニット44の搬送ローラー45の駆動によって、搬入搬送路26へ搬入される。
搬入搬送路26の下流側には、二次転写部98、後述する定着ユニット97及び排紙ユニット96を経由して排出口961まで延びる搬送路28が設けられている。搬送路28の上流部分は、下部筐体21に形成された内壁と、反転搬送ユニット29の内側面を形成する内壁との間に形成されている。なお、反転搬送ユニット29の外側面は、両面印刷の際にシートを反転搬送する反転搬送路291の片面を構成している。搬送路28の、二次転写部98よりも上流側にはレジストローラー対27が配置されている。シートは、レジストローラー対27にて一旦停止され、スキュー矯正が行われた後、画像転写のための所定のタイミングで、二次転写部98に送り出される。
連結筐体23の内部には、定着ユニット97と排紙ユニット96とが収納されている。定着ユニット97は、定着ローラーと加圧ローラーとを含み、二次転写部98においてトナー像が二次転写された記録シートを加熱及び加圧することで、定着処理を施す。定着処理されたカラー画像付の記録シートは、定着ユニット97の下流に配置されている排紙ユニット96により、排出口961から胴内排紙部24に向けて排出される。
上部筐体22の上面には、第1コンタクトガラス222と第2コンタクトガラス223とが嵌め込まれている。第1コンタクトガラス222は、自動原稿給紙装置3から自動給送される原稿シートの読取用に設けられている。第2コンタクトガラス223は、手置きされる原稿シートの読取用に設けられている。
上部筐体22の内部には、原稿シートの原稿情報を光学的に読み取るための走査機構224と撮像素子225とが収容されている。走査機構224は、光源、移動キャリッジ、反射ミラー等を含み、原稿からの反射光を撮像素子225に導く。撮像素子225は、前記反射光をアナログ電気信号に光電変換する。前記アナログ電気信号は、A/D変換回路(図略)でデジタル電気信号に変換された後、露光ユニット94に入力される。
<シート搬送装置の全体構造>
続いて、図4〜図7に基づき、自動原稿給紙装置3の内部構造について詳述する。図4は、自動原稿給紙装置3の要部である原稿搬送部32の断面図である。原稿搬送部32は、原稿シートPの搬送経路となる第1〜第3搬送路341〜343と、これら第1〜第3搬送路341〜343の適所に配置された第1搬送ローラー対351および第2搬送ローラー対352と、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートを原稿搬送部32内へ送り込む原稿給送ユニット5(シート搬送装置)と、を備える。図5は、原稿給送ユニット5を下方から見た斜視図であり、図6は、原稿給送ユニット5の要部を拡大して下方から見た斜視図、また、図7は、これら要部を構成するピックアップローラー51と原稿給紙ローラー52との構造を示した斜視図である。
第1、第2及び第3搬送路341、342、343は、上述の給送口30Hから、原稿画像の光学的な原稿読取位置Xを経由して、原稿シートPを原稿排紙トレイ33に排紙する排紙口30Eまで延びる、U字型に湾曲したシート搬送路を構成している。
第1搬送路341は、原稿給紙トレイ31に連なって給送口30Hから左方に、略円弧形状を有しながら、第1搬送ローラー対351まで、やや先下がりに延びる搬送路である。第1搬送路341は、原稿給送ユニット5から送り出された原稿シートPが最初に通過する搬送路である。この第1搬送路341の上側搬送面は、上部カバーユニット32Uのガイド部材355(図5参照)により画定されている。
第2搬送路342は、第1搬送路341の下流端から、原稿読取位置Xを形成する接面ガイド36との対向位置まで延びる、円弧状の搬送路である。なお、接面ガイド36は、第1コンタクトガラス222(図3)に対向配置され、該第1コンタクトガラス222との間で原稿読取位置Xを形成する。第3搬送路343は、接面ガイド36との対向位置から右方に、排紙口30Eまでやや先上がりに延びる搬送路である。
第1、第2搬送ローラー対351、352は、それぞれ、原稿シートを搬送する回転駆動力を発生する駆動ローラー351A(搬送ローラー)、352Aと、これに当接されて従動回転する従動ローラー351B、352Bとの組み合わせからなる。
第1搬送ローラー対351は、第1搬送路341と第2搬送路342との間に配置され、原稿給送ユニット5から送り出された原稿シートを原稿読取位置Xに向けて給送する。第2搬送ローラー対352は、第3搬送路343の終端に配設され、原稿読取位置Xにおいて読み取り動作が終了された原稿シートPを排紙口30Eから原稿排紙トレイ33に向けて給送する。
<原稿給送ユニットの構造>
図4および図5を参照して、原稿給送ユニット5は、第1搬送路341の入口側に配置されている。また、原稿給送ユニット5は、上部カバーユニット32Uの下面に組み付けられている(図5)。
原稿給送ユニット5は、各構成部品を支持するホルダ50と、ピックアップローラー51(第1ローラー)と、ピックアップローラー51を回転可能に支持する第2駆動シャフト59と、該ピックアップローラー51に対してシート搬送方向の下流側に所定間隔をおいて配置される原稿給紙ローラー52(第2ローラー)と、原稿給紙ローラー52を回転可能に支持する第1駆動シャフト582と、を有する。また、原稿給送ユニット5は、ピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52に回転駆動を伝達する駆動伝達機構600と、原稿シートの給紙方向先端を規制するストッパ片584と、ホルダ50を揺動させる不図示の揺動機構とを有する。自動原稿給紙装置3はさらに、原稿給送ユニット5に回転駆動力を与えるモーター7(駆動手段)と、このモーター7の回転動作を制御する制御部8とを備える。
ホルダ50は、原稿給送ユニット5の各構成部品を支持する。該ホルダ50は、後記の第1駆動シャフト582によって、揺動可能に支持されている。ホルダ50は、シート搬送方向に互いに平行に配設された前板501、後板502、中板503を有する。また、ホルダ50は、後記の揺動機構によって、第1駆動シャフト582を中心に回動する。
ピックアップローラー51は、回転軸である第2駆動シャフト59上に回転可能に支持されている(図6参照)。ピックアップローラー51は、シートPに当接する回転面51Aを有する。ピックアップローラー51は、第2駆動シャフト59回りに回転する回転力が与えられ、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートPを、第1搬送路341に向けて送り出す。図4に示すように、本体ハウジング30の原稿給紙トレイ31の下流端には、ピックアップローラー51と対向する位置に、対向パッド313が配置されている。ピックアップローラー51が給紙位置にあるとき、ピックアップローラー51と対向パッド313との間にニップ部A1が形成される。この際、載置されるシート束の先端は、該ニップ部A1よりも、原稿シートの搬送方向下流側の位置に配置されている。ホルダ50の回動によって、ピックアップローラー51は、回転面51Aが原稿給紙トレイ31上の原稿シートの上面に接触する給紙位置と、原稿シートの上面から上方に離間した退避位置との間で位置が変更される。
第2駆動シャフト59は、ピックアップローラー51の回転軸であり、ホルダ50の前板501及び後板502によって支持されている。第2駆動シャフト59は、また、後記の第1入力ギア55と第1伝達ギア53とを回転可能に支持する。
原稿給紙ローラー52は、回転軸である第1駆動シャフト582上に回転可能に支持されている。原稿給紙ローラー52は、回転面52Aを有し、ピックアップローラー51から送り出された原稿シートを、さらに第1搬送路341下流に向けて1枚ずつ搬送する。図4に示すように、本体ハウジング30には、原稿給紙ローラー52に対向して、分離パッド350が下方に配置されている。分離パッド350の更に下方には、該分離パッド350を上方に押圧するバネ部材350aが配置されている。バネ部材350aの押圧力により、原稿給紙ローラー52と分離パッド350との間で、ニップ部B1が形成される。
第1駆動シャフト582は、原稿給紙ローラー52の回転軸であり、上部カバーユニット32Uに突設された一対の側壁321a、321bによって回転自在に支持されている。更に、第1駆動シャフト582は、ホルダ50の中板503と後板502とを貫通し、ホルダ50を回転可能に支持している。第1駆動シャフト582は、また、後記の第2入力ギア56と第2伝達ギア54とを回転可能に支持するとともに、駆動伝達機構600の一部を形成している。
ストッパ片584は、ピックアップローラー51が退避位置にあるとき、原稿給紙トレイ31の下流端に突出して、原稿シートの給紙方向先端を規制する。一方、ホルダ50が揺動してピックアップローラー51が給紙位置にあるとき、ストッパ片584はホルダ50の右端(図4)が下降するのに連動して、その下端が持ち上げられ、原稿シートの給紙方向先端の規制を解除する。
揺動機構は、ホルダ50と第1駆動シャフト582とを連結する不図示の捻りコイルバネを備える。捻りコイルバネは、そのコイル部が一定の保持力を持って第1駆動シャフト582と一体の不図示のボスに挿通されると共に、ホルダ50に対する正方向係合部及び逆方向係合部を備える。捻りコイルバネは、ホルダ50と第1駆動シャフト582とをバネクラッチの態様で連結する部材であって、ホルダ50の揺動が規制されない範囲では第1駆動シャフト582の回転力をホルダ50に伝達するが、ホルダ50の揺動が規制された状態では第1駆動シャフト582の回転力をホルダ50に伝達しない機能を果たす部材である。なお、この捻りコイルバネに代えて、トルクリミッタを用いることもできる。
第1駆動シャフト582に正方向の回転駆動力が与えられると、前記保持力によって捻りコイルバネは第1駆動シャフト582と一体回転し、前記正方向係合部がホルダ50に回転力を伝達する。結果として、ホルダ50は第1駆動シャフト582の軸心回りに時計方向に回動し(図4矢印D1)、ピックアップローラー51は、原稿給紙トレイ31に載置された原稿シートの上面に接触する給紙位置に移動する。ピックアップローラー51が原稿給紙トレイ31に当止された後は、捻りコイルバネの第1駆動シャフト582に対する巻き付け力が緩み、第1駆動シャフト582が捻りコイルバネに対して空転するようになる。これにより、給紙位置に移動された後に第1駆動シャフト582の回転力はホルダ50に伝達されない。
第1駆動シャフト582に逆方向の回転駆動力が与えられた場合も同様である。この場合、前記逆方向係合部がホルダ50と係合し、ホルダ50を第1駆動シャフト582の軸心回りに反時計方向に回動させる。これにより、ピックアップローラー51は、原稿シートの上面から上方に離間した退避位置に移動する。
駆動伝達機構600は、モーター7によってもたらされる回転駆動力を、ピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52に伝達する。また、駆動伝達機構600は、ホルダ50を揺動させる不図示の揺動機構に駆動力を伝達する。駆動伝達機構600は、第1伝達ギア53(駆動伝達部)、第1入力ギア55(駆動入力部)、第2伝達ギア54(駆動伝達部)、第2入力ギア56(駆動入力部)、アイドラギア57(中間伝達部材)、第1駆動シャフト582、本体入力ギア583を備える。
第1伝達ギア53は、ピックアップローラー51に隣接して、第2駆動シャフト59に回転可能に支持されている。第1伝達ギア53は、ピックアップローラー51に回転駆動力を伝達する。
第1入力ギア55は、ピックアップローラー51と反対側で第1伝達ギア53に隣接し、第2駆動シャフト59に回転可能に支持されている。第1入力ギア55は、第1伝達ギア53に、回転駆動力を伝達する。第1伝達ギア53、第1入力ギア55は、ピックアップローラー51とホルダ50の後板502との間に配設される。
第2伝達ギア54は、原稿給紙ローラー52に隣接して、第1駆動シャフト582に回転可能に支持されている。第2伝達ギア54は、原稿給紙ローラー52に回転駆動力を伝達する。
第2入力ギア56は、原稿給紙ローラー52と反対側で第2伝達ギア54に隣接し、第1駆動シャフト582に回転可能に支持されている。第2入力ギア56は、第2伝達ギア54に、回転駆動力を伝達する。第2伝達ギア54、第2入力ギア56は、原稿給紙ローラー52とホルダ50の後板502との間に配設される。
アイドラギア57は、ホルダ50の後板502の内側に突設された不図示の軸に自由回転可能に支持されている。アイドラギア57は、周面に平歯形状を有する。アイドラギア57は、第2入力ギア56と第1入力ギア55とに同時に噛み合い、第2入力ギア56から第1入力ギア55に回転駆動力を伝達する。
本体入力ギア583は、上部カバーユニット32Uに突設された側壁321bの外側で、第1駆動シャフト582に固定して配設されている。本体入力ギア583は、モーター7に連結されており、モーター7がもたらす回転駆動力をうけて、第1駆動シャフト582を回転させる。
ピックアップローラー51、原稿給紙ローラー52の回転駆動は、自動原稿給紙装置3に配設されたモーター7(駆動手段)から入力される。制御部8によって制御されたモーター7の回転駆動力は、本体入力ギア583と、第1駆動シャフト582とを介して、ホルダ50側に伝達される。
第1駆動シャフト582の回転駆動力は、第2入力ギア56を回転させ、アイドラギア57を介して、第1入力ギア55に伝達される。第1入力ギア55に伝達された回転駆動力は、第1伝達ギア53を介して、ピックアップローラー51に伝達される。これにより、ピックアップローラー51が、回転駆動される。また、第2入力ギア56に伝達された回転駆動力は、第2伝達ギア54を介して、原稿給紙ローラー52に伝達され、原稿給紙ローラー52が回転駆動される。
<駆動伝達機構の詳細構造>
次に、ピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52とモーター7との間に介在される駆動伝達機構の詳細について説明する。図6は、搬送ユニット5の要部を示しており、図7は、該要部を構成するピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52周辺の拡大図である。図7に示すように、ピックアップローラー51(図7(a))と原稿給紙ローラー52(図7(b))とは、駆動伝達のための構造において、同様の部品から構成されている。ここでは、図7(a)のピックアップローラー51の構成を用いて、各部品の形状を詳述する。
第1入力ギア55は、第2駆動シャフト59に回転自在に支持され、アイドラギア57(図6)から回転駆動力が入力される。第1入力ギア55は、薄肉の円柱部55Aと、ギア部552と、入力凸部551(第1凸部)とを有する。
円柱部55Aは、第1入力ギア55の軸方向中央部に位置し、第1入力ギア55の中で最大径を有する。
ギア部552は、円柱部55Aの右側面に配設される。ギア部552は、周面に平歯形状を有し、アイドラギア57から回転駆動力が伝達される。モーター7の回転駆動力がアイドラギア57から伝達されると、第1入力ギア55は、図7(a)の矢印方向に回転駆動される。
入力凸部551は、円柱部55Aの左側面(第1側面)から、第1伝達ギア53側に突出して配設される。入力凸部551は、軸方向に延びる2本の端縁を備える。該端縁のうち、回転方向下流側の入力端縁551aが、第1伝達ギア53に当接する。
第1伝達ギア53は、第2駆動シャフト59に回転自在に支持され、第1入力ギア55から回転駆動力が入力される。第1伝達ギア53は、第2駆動シャフト59に軸支された状態で、軸方向にスライド移動が可能とされている。第1伝達ギア53のスライド移動が可能な範囲は、該軸方向において、第1入力ギア55に最近接した位置(第2の位置)から、第1入力ギア55から最も離間し、ピックアップローラー51に最近接した位置(第1の位置)までである。第1伝達ギア53は、薄肉の円柱部53Aと、伝達凸部532(第2凸部)と、伝達ギア部531とを有する。
円柱部53Aは、第1伝達ギア53の軸方向中央部に位置し、第1伝達ギア53の中で最大径を有する。
伝達凸部532は、円柱部53Aの右側面(第2側面)から、第1入力ギア55側に突出して配設される。伝達凸部532は、円弧状の突片からなり、突出縁532Tと、2つの側辺532E、532aと、傾斜部532bとを有する。
突出縁532Tは、伝達凸部532の中でもっとも第1入力ギア55側に突出する先端縁である。突出縁532Tは、第1入力ギア55の入力凸部551と回転軸方向にオーバーラップするように配設されている。
2つの側辺532E、532aは突出縁532Tに連接する側辺である。回転方向下流側の側辺532Eの基端は、円柱部53Aとの境界にまで至っている。一方、上流側の側辺532aの基端は、伝達凸部532の軸方向中間付近に配置されている。側辺532aは、第1伝達ギア53が第1の位置に配置されている状態で、入力凸部551の入力端縁551aと当接する。この結果、第1入力ギア55から第1伝達ギア53に回転駆動力が伝達され、第1伝達ギア53が、図7(a)の矢印方向に回転駆動される。
傾斜部532bは、円柱部53Aとの境界から、側辺532aの基端に至るまで配置され、第1伝達ギア53の回転方向に向かって徐々に第1入力ギア55側に近づく傾斜を有している。傾斜部532bは、第1伝達ギア53が、第2の位置から第1の位置にスライド移動する際、第1入力ギア55の入力端縁551aの先端部に当接される。入力凸部551の入力端縁551aは、傾斜部532bに当接しながら、該傾斜部532bを軸方向においてピックアップローラー51側に押圧する。第1入力ギア55の回転に伴って、入力凸部551の入力端縁551aは、傾斜部532bに当接した後、伝達凸部532の側辺532aに当接する。この間、第1伝達ギア53は、上記の押圧力をうけて、第2の位置から第1の位置までスライド移動する。
伝達ギア部531は、円柱部53Aの左側面から、ピックアップローラー51側に向かって配設されている。伝達ギア部531は、周方向に複数の傾斜したギア歯が配設された構造を有する。該ギア歯は、軸方向に延伸する突面531aと回転方向に所定の傾斜をもって該突面531aに連接する伝達ギア斜面531bとを有する。
ピックアップローラー51は、第1伝達ギア53に隣接して、第2駆動シャフト59に、回転自在に支持されている。ピックアップローラー51は、第1伝達ギア53側の側面に、出力ギア部511(駆動出力部)を有する。
出力ギア部511は、周方向に複数の傾斜したギア歯が配設された構造を有する。該ギア歯においても、伝達ギア部531のギア歯に対応して、軸方向に延伸する突面511aと回転方向に所定の傾斜をもって該突面511aに連接する出力ギア斜面511bとを有する。
第1伝達ギア53が、回転軸方向において第1の位置に位置する際に、第1伝達ギア53の伝達ギア部531と、ピックアップローラー51の出力ギア部511とが互いに噛み合うことで、第1伝達ギア53からピックアップローラー51に回転駆動が伝達される。この結果、ピックアップローラー51は、図7(a)の矢印方向に回転駆動される。
このように、第1入力ギア55と、第1伝達ギア53と、ピックアップローラー51とは、第2駆動シャフト59上に回転可能に支持されている。そして、第1入力ギアの入力凸部551と、第1伝達ギア53の伝達凸部532とが当接することで、1段目の駆動が伝達される(第1係合部)。更に、第1伝達ギア53の伝達ギア部531と、ピックアップローラー51の出力ギア部511とが噛み合うことで、2段目の駆動が伝達される(第2係合部)。
なお、前述のとおり、本実施形態では、ピックアップローラー51と原稿給紙ローラー52との回転駆動が伝達される構成は同様である。すなわち、ピックアップローラー51の回転駆動に関わる第1入力ギア55(ギア部552、入力凸部551)、第1伝達ギア53(伝達凸部532、伝達ギア部531)、ピックアップローラー51(出力ギア部511)は、それぞれ、原稿給紙ローラー52の回転駆動に関わる第2入力ギア56(ギア部562、入力凸部561)、第2伝達ギア54(伝達凸部542、伝達ギア部541)、原稿給紙ローラー52(出力ギア部521)に対応する。
<第1の状態と第2の状態の変化について>
続いて、図8〜図10に基づき、第1伝達ギア53および第2伝達ギア54のスライド移動について更に詳しく説明することで、ピックアップローラー51と原稿給紙ローラー52の回転時の駆動伝達について詳述する。図8〜図10は、いずれも原稿給送ユニット5を下方から見た図であり、給送される原稿シートPは、図中矢印V1またはV2の方向に搬送される。
(第1の状態での回転駆動)
前述のとおり、第1駆動シャフト582およびアイドラギア57(図6)の駆動によって、第1入力ギア55が回転されると、入力凸部551の入力端縁551aと伝達凸部532の側辺532aとが当接し(第1係合部が連結し)、第1伝達ギア53が回転する。この際、図8のように、第1伝達ギア53は、軸方向においてピックアップローラー51側の第1の位置に配置される。第1伝達ギア53が該第1の位置に位置することで、第1伝達ギア53の伝達ギア部531と、ピックアップローラー51の出力ギア部511とが噛み合い(第2係合部が連結し)、ピックアップローラー51が回転駆動される。以上の駆動伝達により、第1入力ギア55、第1伝達ギア53、ピックアップローラー51がいずれも、第1の速度V1をもってともに回転駆動される状態となる(第1の状態)。
ピックアップローラー51が、第1の速度V1をもって回転されることで、原稿給紙トレイ31上の原稿シートPが送り出される。また、ピックアップローラー51と同様に回転駆動される原稿給紙ローラー52によって、該原稿シートPは、更に下流側(第1搬送路341)に給送される。
(第1の状態から第2の状態への移行)
ここで、原稿給紙ローラー52から下流に給送された原稿シートPは、不図示の駆動手段によって回転駆動される駆動ローラー351Aによって、更に下流の第2搬送路342に向けて搬送される。この際、駆動ローラー351Aは、前述の第1の速度V1よりも大きな第2の速度V2をもって、原稿シートPを搬送するように制御される。ここで、原稿シートPの後端側が未だピックアップローラー51のニップ部A1および原稿給紙ローラー52のニップ部B1を給送されている場合、駆動ローラー351Aによって第2の速度V2で搬送される原稿シートPから伝達される摩擦力によって、ピックアップローラー51の回転面51Aおよび原稿給紙ローラー52の回転面52Aは、該第2の速度V2で従動回転されることとなる。
この際の駆動伝達の様子を図9に示す。ピックアップローラー51は、第1入力ギア55の回転速度(第1の速度V1)よりも大きな速度(第2の速度V2)で回転されるため、第1伝達ギア53を一時的に引き連れながら、第1入力ギア55よりも回転方向において先行する。したがって、第1伝達ギア53の伝達凸部532と第1入力ギア55の入力凸部551との間には周方向において所定の間隔が生じ、第1係合部の連結が切断される。すなわち、ピックアップローラー51は、第1入力ギア55から伝達される回転駆動力によって回転されるのではなく、原稿シートPから伝達される摩擦力によって従動回転する。ピックアップローラー51は、いわゆる空転状態となる(第2の状態)。
ここで、第2の速度V2で回転するピックアップローラー51と第1伝達ギア53との間の駆動伝達は、出力ギア斜面511bと伝達ギア斜面531bとの接触圧のみであるため(図7参照)、出力ギア斜面511bが伝達ギア斜面531bを回転方向に押圧することで、伝達ギア斜面531b(第1伝達ギア53)は、軸方向右側(第1入力ギア55側)に押し出されることとなる。このため、第1伝達ギア53は、図10に示すように、第1入力ギア55側の第2の位置に移動することとなり、第2係合部の連結が切断される。第2の位置に移動した第1伝達ギア53では、伝達凸部532が有する傾斜部532bが、回転する第1入力ギア55の入力凸部551の入力端縁551aと接触する。このため、第1伝達ギア53は、再び第1の位置に移動する力を受けるが、上記のとおり、ピックアップローラー51の出力ギア部511からも、第2の位置に向かう強い押圧力を受けるため、該第2の位置で均衡状態を維持する。なお、上記の第1係合部と第2係合部の切断は、各ギア面の接触状態によって、ほぼ同時に進行することがある。また、第1係合部と第2係合部のそれぞれの連結が切断されても、第1入力ギア55は第1の速度V1で回り続けている。
(第2の状態から第1の状態への復帰)
更に、原稿シートPが駆動ローラー351Aによって搬送され、原稿シートPの後端部が、ピックアップローラー51のニップ部A1を抜け出すと、原稿シートPと回転面51Aとの間に生じていた摩擦がなくなり、ピックアップローラー51の回転速度がV2から低下する。
ピックアップローラー51の回転速度が第1の速度V1以下まで低下すると、図7において、第1の速度V1で回転していた第1入力ギア55における入力凸部551の入力端縁551aが、第1伝達ギア53の傾斜部532bに接触するとともに、第1伝達ギア53をピックアップローラー51側の第1の位置に移動させる。更に、第1入力ギア55の入力凸部551の入力端縁551aと第1伝達ギア53の伝達凸部532の側辺532aとが接触し、第1入力ギア55から第1伝達ギア53に駆動が伝達されることで、第1係合部の連結が完了する。また、第1の位置に移動した第1伝達ギア53の伝達ギア部531からピックアップローラー51の出力ギア部511に駆動が伝達されることで、第2係合部の連結が完了し、前述の第1の状態に復帰する(図8)。原稿給紙ローラー52は、ピックアップローラー51よりも原稿シートPがニップ部B1から遅れて抜け出すことによって、同様に第1の状態に復帰する。
ここで、ピックアップローラー51が、空転する第2の状態を終え、再び第1および第2係合部が連結される第1の状態に復帰するまでには、所定の時間が必要となる。この間、ピックアップローラー51は、ニップ部A1で挟持する次の原稿シートPを送り出すことができない。このため、先行する原稿シートPと後続の原稿シートPとの間で所定のシート間隔(紙間)が形成される。すなわち、モーター7の回転駆動を停止制御することなく、第1伝達ギア53の軸方向の移動によって、搬送される原稿シート間に、紙間が形成されることが可能となる。
<紙間の形成>
そこで、図11、図12に基づき、本実施形態におけるピックアップローラー51と原稿給紙ローラー52とによって、搬送される原稿シート間に、紙間が形成される際の原稿シートPの動きについて説明する。図11、図12は、原稿搬送部32において原稿シートPがピックアップローラー51によって送り出され、第1搬送ローラー対351によって搬送されるまでの様子を模式的に表した図である。図中、Prはピックアップローラー51を表し、Frは原稿給紙ローラー52を表す。またRは駆動ローラー351Aを表している。
制御部8によってモーター7の駆動が制御され、第1係合部および第2係合部が連結し、第1の状態となるピックアップローラー51は第1の速度V1をもって、1枚目の原稿シートP1を送り出す(図11(a))。
同様に、第1の状態となった原稿給紙ローラー52によって、原稿シートP1は、搬送方向下流の駆動ローラー351Aに向かって第1の速度V1をもって更に搬送される(図11(b))。
駆動ローラー351Aまで搬送された原稿シートP1は、第2の速度V2をもって、更に下流の第2搬送路342に向かって搬送される。この際、原稿シートP1の後端側は、未だピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52によって搬送されている。したがって、第2の速度V2で搬送される原稿シートP1から、ピックアップローラー51の回転面51Aおよび原稿給紙ローラー52の回転面52Aに回転力が伝達される。この結果、ピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52は第2の速度V2で回転される。すなわち、両ローラーの空転が始まり、第2の状態が始まる(図11(c))。
原稿シートP1が、駆動ローラー351Aによって搬送されている間、ピックアップローラー51と原稿給紙ローラー52の空転、すなわち第2の状態は継続され(図11(d))、それぞれ第1伝達ギア53および第2伝達ギア54は、第2の位置に移動する(図10)。
やがて、原稿シートP1の後端部は、ピックアップローラー51のニップ部A1から抜け出す(図12(e))。これによって、ピックアップローラー51のみが、空転を終え、再び第1係合部および第2係合部の連結が開始される。この際、図10に示すように、第1入力ギアの入力凸部551と第1伝達ギア53の伝達凸部532とは、回転方向において所定の距離離れているため、第1係合部および第2係合部が連結するには、所定時間が必要となる。そして、この連結が開始されるまでの間、ピックアップローラー51は回転せず、静止している。
該所定時間をもって、ピックアップローラー51の第1係合部および第2係合部の連結が完了すると、ピックアップローラー51は第1の状態となり、ニップ部A1に挟持されている次の原稿シートP2を送り出し始める(図12(f))。この際、先行する原稿シートP1は、駆動ローラー351Aおよび原稿給紙ローラー52によって搬送され続けているため、原稿シートP1とP2との間には、所定のシート間隔Gが形成される。
更に、先行する原稿シートP1の後端部が原稿給紙ローラー52のニップ部B1を抜けると、原稿給紙ローラー52が空転を終え、第1係合部および第2係合部の連結が始まる(図12(g))。この際、次の原稿シートP2は、すでに第1の状態で回転が開始されたピックアップローラー51によって、原稿給紙ローラー52のニップ部B1手前まで搬送されている。
原稿給紙ローラー52の第1係合部および第2係合部の連結が完了すると、原稿給紙ローラー52は第1の状態となり、第1の速度V1をもって上流側から搬送されてくる原稿シートP2を搬送できる状態となる(図12(h))。ここで、本実施形態では、この原稿給紙ローラー52が再び第1の速度V1で回転駆動される直前に、原稿シートP2がニップ部B1に僅かに早く到達するよう設定されている。
本実施形態では、上記の態様を実現するために、原稿シートP1(P2)の先端位置がピックアップローラー51のニップ部A1よりも下流側にL2だけ突き出るように、予め、原稿シートP1(P2)が原稿給紙トレイ31上に載置されている(図4参照)。すなわち、静止状態から、ピックアップローラー51によって送り出される原稿シートP2の先端は、距離(L1−L2)だけ進むことで、ニップ部B1に到達する。ここで、原稿シートP1の後端部が、ニップ部A1を通過した図12(e)の状態を時刻0とし、ピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52において、第1係合部および第2係合部が連結するために必要な時間をTRとする。原稿給紙ローラー52が第2の状態から第1の状態に復帰し、回転が再開する時刻は、L1/V2+TRである。一方、原稿シートP2の先端がニップ部B1に到達する時刻は、TR+(L1−L2)/V1である。したがって、(L1/V2)>((L1−L2)/V1)を満たすように、各パラメータが設定されると、図12(e)から(g)において、先行する原稿シートP1の後端部が、ニップ部A1からニップ部B1まで移動する時間T1(L1/V2)よりも、図12(f)から(h)において、後続の原稿シートP2の先端部が、距離(L1−L2)を進む時間T2((L1−L2)/V1)の方が短くなる。この結果、原稿給紙ローラー52の回転が再開する前に、原稿シートP2の先端部がニップ部B1に到達することとなる。
このように、原稿給紙ローラー52が再び第1の速度V1で回転駆動される直前に、原稿シートP2がニップ部B1に到達することで、図12(h)に示すように、原稿シートP2の先端部には僅かな撓みが生じる。これによって、原稿シートP2が原稿給紙トレイ31上で傾いて載置されている場合などに生じる傾斜搬送(スキュー)が矯正されることが可能となる。
以上、本発明の実施形態に係るシート搬送装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば次のような変形実施形態を採用することができる。
(1)上記の実施形態では、シート搬送路において、原稿シートP2の先端に撓みを形成するために、予め、原稿シートP1(P2)は、先端部がピックアップローラー51のニップ部A1よりも下流側に突き出るように、原稿給紙トレイ31に載置されている。しかしながら、原稿シートPの先端に撓みを形成する手段は、これに限られるものではない。上記の実施形態では、ピックアップローラー51と原稿給紙ローラー52とは、駆動伝達の構造を同じくし、部品の共通化を図っているが、部分的に異なる形状の部品を採用することで、上記の撓みが形成される。
たとえば、図10の矢印Sに示す距離は、第1入力ギア55の入力凸部551と第1伝達ギア53の伝達凸部532との間の周方向の間隔を示している。この間隔Sは、第2の状態、すなわちピックアップローラー51または原稿給紙ローラー52が空転している際に形成される。そして、この間隔Sは、ピックアップローラー51または原稿給紙ローラー52が、第2の状態から第1の状態に復帰する際に要する時間に依存する。間隔Sが短い場合、第1入力ギア55の入力凸部551と第1伝達ギア53の伝達凸部532との係合に要する時間が短くなる。したがって、ピックアップローラー51側と原稿給紙ローラー52側との間で、該間隔Sに差を設けることで、それぞれの第2の状態から第1の状態に変化する際の時間が異なるようにすることが可能となる。
具体的には、ピックアップローラー51側の間隔Sが、原稿給紙ローラー52側よりも短く設定されていることで、ピックアップローラー51が、第2の状態から第1の状態に復帰するまでの時間が短くなる(図12(e)から図12(f))。この場合、原稿シートP2が送り出される時間が早くなり、その先端部が原稿給紙ローラー52のニップ部B1に突き当たり、撓みが形成されやすくなる。
このように、原稿シートPの先端部がピックアップローラー51のニップ部A1よりも下流側に突き出るように、原稿給紙トレイ31に載置される構成以外であっても、上記の撓みを形成することが可能である。すなわち、ピックアップローラー51において、第2の状態から第1の状態に変化する際に、第1伝達ギア53が第2の位置から第1の位置まで移動する時間を、原稿給紙ローラー52において、第2の状態から第1の状態に変化する際に、第2伝達ギア54が第2の位置から第1の位置まで移動する時間よりも短く設定することで、撓みを形成することが可能となる。
また、上記の実施形態で、搬送される原稿シートPの先端に撓みを形成することができるのは、ピックアップローラー51および原稿給紙ローラー52が、モーター7からの回転駆動が入力され回転する第1の状態と、駆動ローラー352Aによって搬送される原稿シートPの搬送によって前記第1の状態よりも大きな回転速度で回転された場合に、モーター7からの駆動伝達が切断され、空転する第2の状態との間で駆動状態が変化するためである。
(2)更に、上記の実施形態では、シート搬送装置として、原稿給送ユニット5を用いて説明したが、本発明にかかるシート搬送装置の適用は、これに限定されるものではない。たとえば、画像形成処理が施される記録シートを収容する給紙カセット211から記録シートが送り出されるシート供給搬送路などにも適用が可能である。このように、本発明に係るシート搬送装置は、複数のシートが連続的に搬送され、紙間が形成される種々の搬送路に適用が可能である。