JP5674005B2 - 白色蛍光体薄膜及びその製造方法並びに発光装置 - Google Patents

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本発明は、化学的安定性に優れ、演色性に優れた白色蛍光特性を有するペロブスカイト型酸化物の白色蛍光体薄膜及びその製造方法、並びに、該白色蛍光体薄膜を用いた発光装置に関する。
従来、主として利用されている照明器具は、白熱電球と蛍光灯である。蛍光灯は、水銀に低い蒸気圧で放電させることで効率良く254nmおよび185nmの紫外線を放出させることができる。該紫外線はガラス管内に塗布した蛍光体により白色光に変換される。蛍光灯は白熱電球に比べ発熱が極めて少なく同じ明るさを得るために必要な電力は数%である。しかし、近年になって欧州ではRoHS指令により、電気電子機器関連装置・デバイスにおいて、鉛や水銀等の有害物質の使用を将来的に禁止する規制が発せられている。これによって、これまで利用してきた蛍光灯の使用が限定されることが予想され、新たな照明装置の開発が急務とされている。今後の照明としての候補は、白色LED、有機・無機EL等が挙げられるが、現時点で、何が先行するのかは決定されておらず、化学的安定性に優れた白色蛍光体の開発が求められている。
近年、薄膜でディスプレイ作製の基礎となる赤色、緑色、青色の3原色の開発が進められている。ペロブスカイト型構造の酸化物薄膜からなる蛍光体については次のような研究開発が進められてきた(特許文献1、2。非特許文献1〜3参照)。非特許文献1には、スズ系ペロブスカイト構造関連酸化物薄膜で、赤色、青色、緑色、白色の蛍光特性が紫外線励起で得られることが示されている。また、非特許文献3には、ジルコニア系ぺロブスカイト型酸化物薄膜で適切な希土類元素を添加することによって、赤色、青色、緑色蛍光が紫外線励起で出現することが示されている。また、本発明者等は、(CaSr)TiOぺロブスカイト型酸化物薄膜でPrを添加することによって赤色蛍光が紫外線励起で出現することを示した(非特許文献2参照)。
本発明者等による特許文献1には、アルミニウム元素をPr置換SrTiOペロブスカイト型酸化物に添加した多結晶ターゲット材料を用い、パルスレーザー堆積法によって成膜した酸化物蛍光体エピタキシャル薄膜で優れた赤色の蛍光特性が得られることが示されている。具体的には、パルスレーザー堆積法によって、600℃以上800℃以下の温度でエピタキシャル成長により基板上に酸化物蛍光体エピタキシャル薄膜を形成することが示されている。
また、本発明者等による特許文献2には、スズ系ペロブスカイト構造関連酸化物薄膜で、赤色、青色、緑色、白色の蛍光特性が紫外線励起で得られることが示されている。具体的には、パルスレーザー堆積法によって、600℃以上800℃以下の温度でエピタキシャル成長により基板上に酸化物蛍光体エピタキシャル薄膜を形成することが示されている。
また白色蛍光体について先行技術を調査すると、特許文献3に白色蛍光体が示されている。特許文献3には、aMO・bM ・cM(但し、MはBa、Sr、Ca、Mg及びZnからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、MはAl、Sc、Ga、Y、In、La、Gd及びLuからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、MはSi、Ti、Ge、Zr、Sn及びHfからなる群から選ばれる1種以上の元素であり、aは8以上10以下、bは0.8以上1.2以下、cは5以上7以下の範囲の値である)で表される化合物に、付活剤として希土類元素、Mn及びBiからなる群より選ばれる1種以上の元素が含有されてなる蛍光体が記載されている。しかしながら、特許文献3の酸化物は、ペロブスカイト構造ではない。
特開2009−155376号公報 特開2008−19317号公報 特開2007−77307号公報
Appl.Phys.Express.1,(2008)150031−150033 Applied Physics Letters.89(2006)2619151−3 Mater.Sci.Eng.B,161(2009)100−103
従来、有機EL、無機EL等多数の蛍光体が得られているが、酸化によって結晶性が低下し、蛍光特性の経年劣化が著しいという問題があった。また、酸化物多結晶体では、近年、良好な蛍光体が得られ、薄膜でディスプレイ作製の基礎となる赤色、緑色、青色の3原色の開発が遂行されているが、白色蛍光体薄膜については、その演色性が十分ではないという問題があった。また、照明、液晶モニター用バックライト応用の際には、薄膜によるEL開発が必要不可欠であり、酸化物白色蛍光体エピタキシャル薄膜の開発が望まれている。
このように、化学的安定性に優れた白色蛍光体薄膜が求められているが、従来の結晶構造が単純なペロブスカイト型の無機酸化物薄膜においては、白色蛍光特性が実現できなかった。非特許文献1や特許文献2では、スズ系ペロブスカイト構造関連酸化物薄膜で、白色蛍光特性が示されているが、複数の鋭い発光スペクトルの相関によって白色を実現していたため演色性に乏しいという問題があった。
本発明は、これらの問題を解決しようとするものであり、ぺロブスカイト型酸化物を用いて、紫外線励起により演色性の優れた白色蛍光特性を有する蛍光体エピタキシャル薄膜を提供することを目的とする。また、白色蛍光特性を向上させる製造方法を提供することを目的とする。また、ペロブスカイト型酸化物白色蛍光体エピタキシャル薄膜を用いた発光装置を提供することを目的とする。
本発明は、ぺロブスカイト型酸化物として知られているCaTiOに原子番号83番のビスマスBiを少量導入することによって、540nm近傍に中心を持つ波長領域でブロードな演色性に優れた白色蛍光特性を備えた蛍光体薄膜を実現する。本発明は、前記目的を達成するために、以下の特徴を有する。
本発明は、ペロブスカイト型酸化物の白色蛍光体薄膜の製造方法であって、CaTiOに、Bi元素を0.1原子%以上0.4原子%以下添加したペロブスカイト型酸化物をターゲット材料として、基板上に、エピタキシャル成長により薄膜を形成することを特徴とする。Biの添加量は、CaTiOに対するモル%ともいえる。CaTiOは、CaとTiの比は1:1で、Biの添加量は、CaまたはTiを100%としたときの原子%(以下、「at.%」ともいう。)である。本発明の白色蛍光体薄膜の製造方法においては、薄膜を形成後、大気中で、900℃以上1100℃以下の熱処理を行うことが好ましい。また、600℃以上1000℃以下の温度で薄膜を形成することが好ましい。また、200mTorr以上1000mTorr以下の酸素圧雰囲気で薄膜を形成することが好ましい。また、パルスレーザー堆積法を用いることが好ましい。
本発明は、ペロブスカイト型酸化物の白色蛍光体薄膜であって、CaTiOに、Bi元素を0.1原子%以上0.4原子%以下添加したエピタキシャル薄膜であることを特徴とする。該エピタキシャル薄膜は、前記製造方法により作成することができる。本発明のペロブスカイト型酸化物蛍光体薄膜は、450から700nmの波長全域で白色蛍光特性の発光スペクトルを有する。本発明のペロブスカイト型酸化物の白色蛍光体薄膜において、エピタキシャル薄膜に用いる基板は、SrTiO、LaAlO、LaGaO、MgO、LaSrGaOのうちのいずれかの基板であることが好ましい。
本発明は、発光装置であって、本発明の、CaTiOにBi元素を0.1原子%以上0.4原子%以下添加したエピタキシャル薄膜を蛍光体薄膜として用いることを特徴とする。
本発明によれば、ぺロブスカイト型酸化物のCaTiO薄膜にBi元素を添加することにより、演色性の優れた白色蛍光体薄膜を得ることができる。ペロブスカイト型酸化物薄膜を用いることにより、化学的安定性に優れた白色蛍光体薄膜が得られる。特にBi元素の添加量が0.1原子%以上0.4原子%以下であると、450から700nmの波長全域でブロードな発光スペクトルを得ることができ発光強度が大である。基板として、SrTiO、LaAlO、LaGaO、MgO、LaSrGaOのうちのいずれかの基板を用いることにより、蛍光特性の優れたエピタキシャル薄膜を成膜することができる。
本発明では、CaTiOに、Bi元素を0.1原子%以上0.4原子%以下添加したペロブスカイト型酸化物をターゲット材料として用いて、基板上にエピタキシャル成長させることができたので、白色に近い蛍光特性を示すBi添加CaTiO薄膜を得ることができる。薄膜を形成後、大気中で、900℃以上1100℃以下の熱処理を行うことにより、優れた蛍光特性が得られる。パルスレーザー堆積法により、ターゲット材料をその化学量論組成で成膜させることができる。また、600℃以上1000℃以下の温度で薄膜を形成することにより、クラスター成長が支配的となり、ターゲット材料をその化学量論組成で成膜することができる。また、200mTorr以上1000mTorr以下の酸素圧雰囲気で薄膜を形成することにより、450から700nmの波長全域でブロードな発光スペクトルを得ることができる。
本発明のCaTiO:Bi(0.2at.%)の(a)拡散反射スペクトルと(b)励起・発光スペクトル 本発明におけるBiを0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.6at.%添加したCaTiO:Biの拡散反射スペクトル(上段)と励起発光スペクトル(下段) 本発明におけるBiの濃度に対する発光強度 実施例2における酸素圧700mTorr600℃で成長した時のX線回折パターン 実施例2における、酸素圧を10mTorr、100mTorr、700mTorrの3種の条件で成膜をしたときの蛍光特性
本発明の実施の形態について、以下説明する。本発明者等は、まず、バルク状のペロブスカイト型酸化物において、白色蛍光特性の可能性について次の調査を行った。最適化された合成条件でペロブスカイト型新規蛍光体の探索を行った。母体にはCaTiO、SrTiO、BaTiOを用いて、これに発光中心として期待できる元素を添加した。調査した母体と発光中心として期待できる元素の組み合わせを表1に示す。
Figure 0005674005
表1の組み合わせのCaTiOにBiを添加した試料から発光が観測された。その他の組み合わせからは、発光が観測できなかった。
本発明者等は、ぺロブスカイト型酸化物であるCaTiOに原子番号83番のビスマスBiを少量導入することによって、540nm近傍に中心を持つ波長領域でブロードな演色性に優れた白色蛍光特性が得られることについて、既に出願している(特願2010−178264)。該出願は、主に粉末及びバルク体の構造での白色蛍光特性を検討したものである。以下、CaTiOにBiを少量添加したぺロブスカイト型酸化物の白色蛍光特性について説明する。
CaTiOにBiを添加した試料の製造について説明する。CaTiO:Biは、CaCO(99.99%)、TiO(99.99%)、B(99.9%)、Bi(99.9%)を用いて、以下の手順で合成した。CaCO粉末とTiO粉末は吸湿を防ぐため、120℃のオーブンで常時乾燥させた。まず、CaCOとBを乾式混合し、850℃で12h焼成することで、フラックスとなるCaBを合成した(粉末X線回折で不純物がないことを確かめた)。次に、Biを硝酸で溶解し、過剰な硝酸を蒸発させて硝酸ビスマスとした後、これをエタノールに溶解してBi(NOのエタノール溶液を作製した。CaTiO:Biが1g合成されるように、CaCO、TiO、CaBを0.975:1:0.025のモル比で秤量し、これにBi(NOエタノール溶液をCaTiOに対してBiが、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6モル%になるように加え、さらにエタノールを数ml加えて、メノウ乳鉢中でエタノールが蒸発するまで湿式混合した。この混合粉末を白金ボートに入れ、200℃/hで1100℃まで昇温し、その温度で6h焼成した後、室温まで炉冷することによって、CaTiO:Bi粉末試料を合成した。得られた粉末は少し凝集しているが、これを軽く粉砕し、測定試料とした。
CaTiO:Biの詳細な発光特性について以下調べた。まず、紫外線(330nm)をCaTiO:Biに照射した時、白色の発光を示すことが分かった。図1(a)と図1(b)に、CaTiO:Bi(0.2at.%)の拡散反射と励起・発光スペクトルをそれぞれ示す。発光スペクトルに白色に見える要因の450から700nmにブロードな発光が観測された。励起スペクトルからは335nmにピークA’、365nmに肩B’が観測された。反射スペクトルからは335nm以下にCaTiOのバンド間遷移による吸収と、365nm付近にBi3+のs−p遷移による吸収が観測された。
次に、発光強度のBi濃度依存性について説明する。Biの添加量を、0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.6at.%とした試料を合成し、Biの最適な組成比を調べた。またBiを添加することによりCaTiOの格子定数が変化するか粉末X線回折実験により得た回折ピーク位置を比較し調べた。表2に、Biを0at.%添加して合成した試料と0.6at.%添加して合成した試料の格子定数を示す。なお、括弧内の数値は最後の桁の数値の誤差を示す。
Figure 0005674005
表2において、0at.%添加して合成した試料と0.6at.%添加して合成した試料の格子定数は、誤差内で一致したことから、0.6at.%の添加では格子定数の変化は観測されないことが分かる。
図2に、Biの添加量を0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.6at.%とした試料(CaTiO:Bi)の拡散反射スペクトル(上段)と励起発光スペクトル(下段)を示す。Biを0.2at.%添加した試料の発光強度が最大であることから、CaTiOに対するBiの最適な添加量は0.2at.%である。
図3に、Biの濃度に対する発光強度を示す。発光強度は0at.%から0.2at.%まで増大しそれ以降減少していることがわかる。
以上の粉末・バルク体の例によれば、CaTiOにBiを添加することにより、白色蛍光体としての特性を有することがわかる。一般にBiを用いた蛍光体の発光はs−p遷移とされているため、本発明の発光は、Biのs−p遷移によるものと考えられる。図1に示した励起・発光スペクトルにおけるピークA’の波長はCaTiOのバンドギャップに相当することから、母体のバンド間遷移により生成した電子正孔対のエネルギーがBiに移動して発光しているものと考えられる。Biの添加濃度を増やしていくと反射スペクトルにおける365nm付近の吸収が大きくなったことから、この吸収はBi3+のs−p遷移によるものと考えられる。したがって、励起・発光スペクトルにおいて365nm付近に観測されたピークB’はBi3+のs−p遷移によるものと考えられる。
以上のことから、CaTiOに対するBiの添加量は、0.1〜0.4at.%が好ましい。さらに、0.1〜0.3at.%であれば、発光強度が大であるので(図2、3)より好ましいことが分かる。
(実施例1)
先に説明したCaTiOにBiを添加したペロブスカイト型酸化物に関して、本実施例では、薄膜形状のものを得た。図を参照して以下説明する。本実施例では、パルスレーザー堆積法を用いて薄膜を作製した。
パルスレーザー堆積法は短時間(典型的成膜時間は30分)で500nm程度の薄膜を形成することができることから、工学的応用が期待されている成膜方法である。また、酸素気流中で成膜することができるため、酸化物薄膜成長時には酸素欠損等による電気的特性、蛍光特性の劣化を極めて少なくすることができる。パルスレーザー堆積法では、1Torr以下の低圧酸素中で、酸化物からなるターゲット材料にArF(波長193nm)のエキシマレーザーを照射し、ターゲット材料をプラズマ化させプルームを形成し、そのターゲット材料に対抗した面に過熱した基板を配置し、薄膜を堆積させる。1000℃以下の温度ではクラスター成長が支配的であり、ターゲット材料をその化学量論組成で成膜させることができることを特徴とする。 本実施例では、多結晶ターゲット材料として、CaTiOにBiを添加したペロブスカイト型酸化物を用い、パルスレーザーを該ターゲット材料に照射し、ターゲット材料と同じ組成の薄膜を基板上にエピタキシャル成長させた。基板とターゲット間距離は32mmとした。レーザー照射周波数は8Hzであり、成膜時間は30分で、膜厚300nmであった。レーザーエネルギーは約120mJである。
基板は、基板面が(001)となるよう研磨したSrTiO単結晶基板を用いた。SrTiOの結晶構造は正方晶であり、格子定数は3.905nmである。本実施例のCaTiOにBiを添加したペロブスカイト型酸化物の近傍の格子定数を持ち、その格子整合性が良いため、結晶性の優れた酸化物エピタキシャル薄膜を成長させることができた。
基板として、SrTiO基板の他に、格子整合性のよい、LaAlO、LaGaO、MgO、LaSrGaOを用いることができる。
(実施例2)
本実施例においては、Biを添加したCaTiOからなる白色蛍光体薄膜を製造する製造条件について以下検討する。最も良い蛍光特性が得られた、Biの添加量を0.2原子%とした場合について調べた。
パルスレーザー堆積法において、基板温度は600℃で,成膜時の酸素圧は10mTorr,100mTorr,700mTorrの3種の条件で成膜を行った。基板は、SrTiO(001)単結晶研磨基板を用いた。結晶構造を調べるためX線回折を測定した。その結果、全ての酸素圧で(001)薄膜が成長していることが確認された。図4に、典型的例として600℃、酸素圧700mTorr成長時のX線回折パターンを示す。図中、STOsubはSrTiO基板を意味し、BiCTOは、Bi添加CaTiOを意味する。(00l)で指数付けされるピーク以外の出現が確認されず、不純物ピークは確認されていない。図4中の枠内に拡大表示したように、(002)のピークは基板のピークと薄膜のピークに明確に分離していることが分かり、基板STOよりも薄膜BiCTOの方が、格子定数が小さいため高角側にピークが出現している。この結果、SrTiO(002)/CaTiO:Bi(002)の格子ミスマッチは2.5%程度であるが、エピタキシャル成長が達成されていることが分かる。
薄膜成長直後試料の蛍光特性を調べたところ、明確な蛍光特性は得られなかった。しかし、それらに対し大気中1000℃で熱処理を行ったところ、700mTorrで成長した試料において紫外線波長330nmで励起したところ540nm付近にブロードなピークが観測された。図5に、基板温度600℃で酸素圧を10mTorr、100mTorr、700mTorrの3種の条件で成膜を行い、1000℃で大気中熱処理を行った後の蛍光特性を示す。これはBi3+のs−p遷移に起因するものと考えられる。図5から、酸素圧10mTorrや100mTorrではブロードな蛍光特性は得られないものの、700mTorrでは顕著なブロードな特性が得られることが分かる。
図5から、酸素圧の条件は、200mTorr以上1000Torr以下が好ましく、400mTorr以上1000mTorr以下がより好ましい。さらに、酸素圧の条件について検討する。パルスレーザー堆積法は、基板−ターゲット間距離とターゲットの元素粒子の平均自由行程がマッチすることで、ターゲット材料組成と同一の材料を基板上に成膜することができる方法である。Bi元素の融点は271℃であり、融点温度の低い材料は、プラズマ中で飛散しやすい特長を持つ。100mTorr以下の低圧酸素中では粒子の平均自由行程が長くなるため、基板−ターゲット間距離以上にターゲット材料であるBi添加CaTiO中のBi元素のみが飛散し、基板上の薄膜にはBi元素が欠如する。この結果、蛍光特性は得られないと考えられる。酸素圧700mTorrの場合には平均自由行程と基板−ターゲット間距離がマッチするためターゲット材料の組成で基板上に膜が付着する。この結果、より好ましい真空度(酸素圧)は400mTorrから1000mTorrである。
以上の結果から、バルク材料と同様の蛍光特性を得るためには、酸素圧200mTorr以上の雰囲気で作製した後、1000℃で大気中熱処理が必要であることが分かった。また、大気中熱処理温度を、900℃、1100℃とした場合についても、同様の蛍光が得られたことから、熱処理温度は900℃以上1100℃が好適である。
成膜時の基板温度が、600℃の場合について述べたが、基板温度は、600℃以上1000℃以下の温度で薄膜を形成することができる。1000℃以下の温度ではクラスター成長が支配的であり、ターゲット材料をその化学量論組成で成膜させることができるからである。なお、500℃以下では非晶質となり蛍光特性は得られない。
紫外線波長330nmで励起した場合について述べたが、励起波長250nm以上、350nm以下の領域で励起した場合についても、同様の結果が得られる。
本実施例では、Biの添加量を0.2原子%とした場合について調べたが、同様の傾向が、Biの添加量0.1〜0.4原子%においても得られる。
実施例では、パルスレーザー堆積法で成膜する例を示したが、基板上にエピタキシャル膜を成長させる成膜法として、パルスレーザー堆積法の他に、スパッタリング法等の気相成長法を用いることができる。その際、薄膜化の温度、酸素圧、及び熱処理温度は、実施例で示した温度と同様の温度で製造することで、実施例と同様の蛍光特性を得ることができる。
上記実施の形態等で示した例は、発明を理解しやすくするために記載したものであり、この形態に限定されるものではない。
本発明のペロブスカイト型の無機酸化物蛍光体薄膜は、演色特性の優れた白色蛍光特性を実現するものであり、かつ化学的安定性に優れるので、照明・光源、ディスプレイ用等の薄膜エレクトロルミネッセンスデバイスに利用できる。

Claims (9)

  1. ペロブスカイト型酸化物の白色蛍光体薄膜の製造方法であって、
    CaTiOに、Bi元素を0.1原子%以上0.4原子%以下添加したペロブスカイト型酸化物をターゲット材料として、基板上に、エピタキシャル成長により薄膜を形成することを特徴とする白色蛍光体薄膜の製造方法。
  2. 前記薄膜を形成後、大気中で、900℃以上1100℃以下の熱処理を行うことを特徴とする請求項1記載の白色蛍光体薄膜の製造方法。
  3. 600℃以上1000℃以下の温度で前記薄膜を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の白色蛍光体薄膜の製造方法。
  4. 200mTorr以上1000mTorr以下の酸素圧雰囲気で前記薄膜を形成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の白色蛍光体薄膜の製造方法。
  5. パルスレーザー堆積法によって、前記薄膜を形成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の白色蛍光体薄膜の製造方法。
  6. ペロブスカイト型酸化物の白色蛍光体薄膜であって、
    CaTiOに、Bi元素を0.1原子%以上0.4原子%以下添加したエピタキシャル薄膜であることを特徴とする白色蛍光体薄膜。
  7. 450から700nmの波長全域で白色蛍光特性の発光スペクトルを有することを特徴とする請求項6記載の白色蛍光体薄膜。
  8. 前記エピタキシャル薄膜に用いる基板が、SrTiO、LaAlO、LaGaO、MgO、LaSrGaOのうちのいずれかの基板であることを特徴とする請求項6又は7記載の白色蛍光体薄膜。
  9. 請求項6乃至8のいずれか1項記載の白色蛍光体薄膜を有することを特徴とする発光装置。
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