JP5673280B2 - 三次元成形用加飾シート及び該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

三次元成形用加飾シート及び該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、三次元成形用加飾シート及び該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法に関する。さらに詳しくは、意匠性に優れるメタリック調を有し、かつ耐擦傷性に優れた加飾樹脂成形品を与える三次元成形用加飾シート及び該加飾シートを用いた加飾樹脂成形品の製造方法に関するものである。
金属調の意匠を有するプラスチック製品は、クロムめっきの外観を有する自動車のグリルのような物品の代替品として用いられ、金属と比較し、形状の自由度、強い耐食性、軽量、安価等の優位性から、主に自動車業界で広く使われている。このような樹脂成形品の表面、特に三次曲面や立体性を有する成形品に金属光沢を持たせる方法として、成形後にメッキあるいは塗装が行われてきたが、これらの方法は、廃水や溶媒蒸気などの環境対策が必要であり、また、高コストなどの問題もあった。
そこで、近年金属光沢シートを併用し、インサート成形によって表面に金属光沢を有する成形物を作る試みが行われてきた(例えば、特許文献1及び2参照)。
しかしながら、このような金属光沢を有する樹脂成形品は、軽微な傷によっても、艶低下や白化が目立つという問題を有していた。
一方、成形品の表面に加飾シートを積層することで加飾した加飾樹脂成形品が、車両内装部品などの各種用途で使用されている。このような加飾樹脂成形品の成形方法としては、加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形しておき、該成形シートを射出成形型に挿入し、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化するインサート成形法と射出成形の際に金型内に挿入された加飾シートを、キャビティ内に射出注入された溶融樹脂と一体化させ、樹脂成形品表面に加飾を施す射出成形同時加飾法(例えば、特許文献3参照)とがある。
上記の加飾樹脂成形品は表面の耐傷付き性を向上させる目的で表面保護層が設けられる。しかしながら、上述の加飾樹脂成形品の成形方法において、インサート成形法では加飾シートを真空成形型により予め三次元(立体)形状に成形する過程、射出成形同時加飾法では加飾シートが予備成形時にあるいは溶融樹脂の射出時に、キャビティの内周面に沿うように延伸されて密着する過程で、加飾シートが真空圧空作用により、あるいは溶融樹脂の圧力、剪断応力による引っ張りなどによって、金型形状に沿うために最低必要な量以上に伸ばされるため、成形品の曲面部の表面保護層にクラックが入るという問題があった。
上記問題点に対して、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高めることにより、加飾樹脂成形品の表面の耐摩耗性や耐傷付き性を向上させる試みがなされたが、依然として成形の際に成形品曲面部にクラックが生じるという問題があった。
また、表面保護層として紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂を用い、加飾シートの段階では半硬化状態とし、加飾成形された後に完全硬化させる方法が試みられたが(特許文献4参照)、未硬化樹脂成分を含む表面保護層は傷つきやすく、取り扱いが困難であり、未硬化樹脂成分が金型に付着することによる金型汚染の問題があった。この問題点を解決するために半硬化状態の表面保護層上に保護フィルムを設ける方法があるが、製造が煩雑になるとともに、コストアップの要因ともなる。
そこで、耐傷付き性と三次元成形性とを両立し得る表面保護層が要望されている。
ところで、ポリカーボネート(メタ)アクリレート含有樹脂組成物は知られており(例えば、特許文献5及び6参照)、インサート成形用加飾シートの表面透明シートの背面の内側着色シートに黄変型ポリカーボネート系ウレタンアクリレートオリゴマーを少量含有する樹脂組成物を用いた例はあるが(特許文献7参照)、加飾シートの表面保護層にポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いた例はなかった。
他方、アクリルシリコーン樹脂は、アクリルポリマー鎖をシロキサン結合によって強固に架橋した構造を有し、耐候性、耐熱性、耐薬品性、耐水性に優れた特性を持ち、外装用塗料に広く使用されている。しかし、樹脂成形品の表面の耐傷付き性を向上させる目的で表面保護層として用いる場合、形成される皮膜が硬く脆くなりクラックが発生することがある。このクラックを防止するため、アクリルシリコーン樹脂を表面保護層として用いる場合は、真空成形後のインサート成形用シート、あるいは射出成形後の樹脂成形品に紫外線硬化等の硬化処理を行っていた(例えば、特許文献8参照)。
しかしながら、三次元加工後の成形品に硬化処理するのは煩雑であり経済性に劣り、均一な硬化処理もしにくい。
そこで、アクリルシリコーン樹脂の優れた耐薬品性を維持しつつ、三次元成形性と耐傷付き性とを両立し得る表面保護層が要望されている。
特開2009−220318号公報 特許第4542667号公報 特公昭50−19132号公報 特開平6−134859号公報 特開平3−181517号公報 特開2000−351843号公報 特開2003−145573号公報 特開平6−100799号公報
本発明は、このような状況下になされたものであり、意匠性に優れるメタリック調を有し、かつ耐擦傷性に優れた加飾樹脂成形品を与える三次元成形用加飾シート及び該加飾シートを用いて、前記性状を有する加飾樹脂成形品を製造する方法提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を得た。
ベースフィルム上に、少なくとも金属薄膜層、透明フィルム層及び表面保護層を、この順で有し、かつ前記表面保護層を、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層としたシートが、三次元成形用加飾シートとして、その目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)ベースフィルム上に、少なくとも、金属薄膜層、透明フィルム層及び表面保護層をこの順で有する加飾シートであって、前記表面保護層が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、前記アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有しているものであることを特徴とする加飾シート、
(2)上記(1)に記載の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて熱盤によって該保護層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程を含むことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法、及び
(3)上記(1)に記載の三次元成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法、
を提供するものである。
本発明によれば、意匠性に優れるメタリック調を有し、かつ耐擦傷性に優れた加飾樹脂成形品を与える加飾シート及び該加飾シートを用いて、前記性状を有する加飾樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
本発明の三次元成形用加飾シートの一態様の断面を示す模式図である。 本発明の三次元成形用加飾シートを用いて得た加飾樹脂成形品の一態様の断面を示す模式図である。
まず、本発明の三次元成形用加飾シートについて説明する。
[三次元成形用加飾シート]
本発明の三次元成形用加飾シート(以下、単に「加飾シート」と称することがある。)は、少なくともベースフィルム上に、金属薄膜層、透明フィルム層及び表面保護層をこの順で有し、かつ前記表面保護層が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であることを特徴とする。
(ベースフィルム)
本発明の加飾シートにおいて、基材として用いるベースフィルムは、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(以下、「ABS樹脂」という)、アクリル樹脂、ポリプロピレン,ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂などが使用されるが、これらの中でポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂及びABS樹脂が好適である。
また、当該ベースフィルムは、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムとして使用することができる。
当該ベースフィルムの厚みは、用途に応じて選定されるが、通常、200〜800μm程度である。当該ベースフィルムの厚みが200μm以上であると、真空成形後の後述する透明フィルム層の収縮力により形状が歪むのを抑制することができ、一方800μm以下であると、加飾シートが厚くなって操作性が低下するのを抑制することができる。当該ベースフィルムの厚みは、250〜600μmであることがより好ましく、300〜500μmであることがさらに好ましい。
当該ベースフィルムはその上に設けられる層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、ベースフィルムの種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
また当該ベースフィルムはプライマー層を形成するなどの処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。
(金属薄膜層)
本発明の加飾シートにおける金属薄膜層は、通常、後述する透明フィルムのベースフィルム側の面に設けられる層であり、本発明の加飾シートにおいては、金属表面と同様な高輝性を与え意匠性を付与するものである。
なお、当該金属薄膜層は、必要に応じ、ベースフィルム上に直接設けることもできる。
本発明で使用できる金属としては、本発明の効果を奏する範囲で特に制限はなく、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、スズ、真鍮、インジウム、クロム、亜鉛などが挙げられ、これらの金属は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
これらの金属のうち、伸展性に富むとの観点から、スズ及びインジウムが好ましい。なお、伸展性が良好な材料は、シートにおいては、3次元成形した際に伸ばされてもクラックが発生しないという利点を有する。
本発明の金属薄膜層の形成方法としては、種々の方法があるが、上記金属を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの蒸着法を用いることが、あらゆる素材に処理可能であり、装飾性に優れた被膜を施せる点から好ましい。
本発明では、特に真空蒸着法は低コスト、被蒸着体へのダメージが少ないという点で好ましい。
また、上記蒸着法以外に、前記の金属を含むペーストを塗工する方法を用いることもできる。なお、金属薄膜層を形成するに際し、接着性を得るために、透明フィルムと金属薄膜層の間にプライマー層を設けることができ、特に金属を含むペーストを塗工する方法を用いる場合には有効である。プライマー層を構成する材料としては、特に限定されず、種々の樹脂を用いることができるが、後に詳述する接着層5を構成するのと同様の樹脂が好適に用いられる。なお、当該プライマー層は、製造過程でプライマー層を形成した後にロール状に巻き取られる場合があり、その場合にはブロッキングを防止するために、シリカなど公知のブロッキング剤を含有させることができる。
また、当該金属薄膜層の厚さとしては、伸展性の点から、蒸着法にて形成する場合は光学濃度O.D値が0.5〜3程度が好ましく、0.8〜1.5程度がより好ましい。一方、ペーストを塗工する場合は、0.1〜30μm程度が好ましく、0.5〜20μmが好ましい。
(透明フィルム層)
本発明の加飾シートにおいては、前述した金属薄膜層と表面保護層との間に、当該加飾シートの耐傷付き性や耐薬品性などを向上させる目的で、透明フィルム層を介在させる。
この透明フィルム層としては、前記効果の観点から、ポリエステル系樹脂からなるフィルム層であることが好ましく、具体的にはポリエチレンテレフタレートフィルム層を挙げることができる。
当該透明フィルム層の厚みは、10〜80μmの範囲であることが好ましい。この厚みが10μm以上であると、良好な印刷適性を付与することができ、80μm以下であると、真空成形後の収縮力が強くなりすぎることがなく、ベースフィルムの引張り弾性率を高くしても、形状の歪を抑制することができる。当該透明フィルム層の厚みは20〜75μmであることがより好ましく、25〜70μmであることがさらに好ましい。
本発明の加飾シートにおいては、透明フィルム層よりベースフィルムの25℃における引張り弾性率が1000MPa以上大きいことが好ましい。この引張り弾性率の差が1000MPa以上であれば、透明フィルムに比べ、ベースフィルムに高い剛性を付与できるため、真空成形後、透明フィルム層の収縮による形状の歪を抑制することができる。以上の観点から、ベースフィルムの25℃における引張り弾性率は透明フィルム層の引張り弾性率より1300MPa以上大きいことがさらに好ましい。
一方、当該引張り弾性率の差の上限は、通常2000MPa程度である。引張り弾性率の差が上限を超える場合、ベースフィルム自体の引張り弾性率が高くなるため、連続生産する際に巻き取り状態のベースフィルムからの巻き出しの張力が調整しづらくなり、ベースフィルムの弛みの除去が困難になる場合がある。
また、本発明の加飾シートにおいては、透明フィルム層とベースフィルムの41〜50℃の温度域における線膨張率の差の絶対値が、4/10000以下であることが好ましい。この差の絶対値が4/10000以下であれば、透明フィルムとベースフィルムを貼り合わせた後、または、真空成形後の加飾シートの冷却時における透明フィルムとベースフィルムの収縮挙動の差による形状の歪を抑制することができる。前記差の絶対値は1/10000以下であることがより好ましく、前記差の絶対値がゼロであることが理想的である。
この透明フィルム層は、その表面に設けられる層との密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、いわゆる易接着処理を施してもよい。
(表面保護層)
本発明の加飾シートにおける表面保護層は、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層である。
前記の電離放射線硬化性樹脂組成物は、さらに多官能(メタ)アクリレートを含むことができる。
ここで、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電離放射線硬化性樹脂を含有する組成物をいう。また、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。電離放射線硬化性樹脂とは、上記電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。
<ポリカーボネート(メタ)アクリレート>
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂として、ポリカーボネート(メタ)アクリレート又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレート、あるいはその両方が用いられる。まず、ポリカーボネート(メタ)アクリレートについて説明する。
本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば良い。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。
上記のポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2〜50個の、より好ましくは3〜50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。
原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式HO−R1−OHで表される。ここで、R1は、炭素数2〜20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいても良い。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1〜5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であっても良い。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合しても良い。
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いても良い。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、50:50〜99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2〜2当量であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3〜50、より好ましくは3〜20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であっても良い。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64−1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3−181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、2000を超えることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100000以下が好ましく、50000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2000を超え50000以下であり、特に好ましくは、5000〜20000である。
<多官能(メタ)アクリレート>
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ただし、硬化性を高める必要のある場合は3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
以上述べた多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂として前述したポリカーボネート(メタ)アクリレートを用いる場合には、表面保護層としては、該ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比がポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2〜70:30である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が98質量%を超えると)、耐傷付き性が低下する場合がある。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が70:30より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が70質量%未満となると)、三次元成形性が低下する場合がある。より好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5〜80:20である。
<単官能性(メタ)アクリレート>
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
<アクリルシリコーン(メタ)アクリレート>
次に、電離放射線硬化性樹脂として、用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートについて説明する。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであれば良い。
このアクリルシリコーン(メタ)アクリレートの例としては、例えば、特開2007−070544号公報に開示されるような側鎖にシロキサン結合を有するアクリル樹脂の構造が好ましく挙げられる。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、例えばラジカル重合開始剤の存在下、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより合成することができる。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これら(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で又は2種を組み合わせて用いられる。
シリコーンマクロモノマーは、例えば、n−ブチルリチウム又はリチウムシラノレートを重合開始剤として、ヘキサアルキルシクロトリシロキサンをリビングアニオン重合し、更にラジカル重合性不飽和基含有シランでキャッピングして合成される。シリコーンマクロモノマーとしては、下記式(1);
Figure 0005673280
で表される化合物が好適に用いられる。ここで、式(1)中、R1は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、メチル基又はn−ブチル基が好ましい。R2は、1価の有機基を示し、−CH=CH2、−C64−CH=CH2、−(CH23O(CO)CH=CH2又は−(CH23O(CO)C(CH3)=CH2が好ましい。R3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1〜6の炭化水素基を示し、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、nの数値は特に制限されず、例えばシリコーンマクロモノマーの数平均分子量は1000〜30000が好ましく、より好ましくは1000〜20000である。
上述の原料を用いて得られるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、例えば、下記式(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する。
Figure 0005673280
式(2)、(3)及び(4)中、R1、R3は式(1)におけるものと同義であり、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5は上記(メタ)アクリレートモノマー中のアルキル基又はグリシジル基あるいは上記(メタ)アクリレートモノマー中のアルキル基又はグリシジル基等の官能基を有していてもよいアルキル基を示し、R6は(メタ)アクリロイルオキシ基を有する有機基を示す。
上述のアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1種を単独で又は2種を組み合わせて用いられる。
上記のアクリルシリコーン(メタ)アクリレートの分子量は、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1000以上であることが好ましく、2000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150000以下が好ましく、100000以下がより好ましい。三次元成形性と耐薬品性と耐傷付き性とを両立させる観点から、2000〜100000であることが特に好ましい。
また、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの架橋点間平均分子量は、100〜2500であることが好ましい。架橋点間平均分子量が100以上であれば、三次元成形性の観点から好ましく、2500以下であれば、耐薬品性及び耐傷付き性の観点から好ましい。
本発明において、電離放射線硬化性樹脂として、前述したアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを用いる場合には、表面保護層としては、該アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと前述した多官能(メタ)アクリレートとの質量比が、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=95:5〜50:50である電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなることが好ましい。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5より大きくなると(即ち、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの量が95質量%を超えると)、耐傷付き性及び三次元成形性が低下する場合がある。一方、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より小さくなると(即ち、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの量が50質量%未満となると)、耐薬品性及び耐傷付き性が低下する場合がある。より好ましくは、アクリルシリコーン(メタ)アクリレートと多官能性(メタ)アクリレートとの質量比は90:10〜75:25である。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートと共に、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を低下させるなどの目的で、前述した単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的が損なわれない範囲で、適宜含有することができる。
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタールなどが挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などを用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、かつ、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
また本発明における表面保護層を構成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステルなどが挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどが挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基などの重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。また、本発明のポリマーの表面保護層としての性能(耐傷付き性と三次元成形性)を損なわない程度に共重合して使用することもできる。
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコールなどが、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などが用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどが用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラックなどの公知の着色用顔料などが用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物などが用いられる。
(三次元成形用加飾シートの構成)
次に、本発明の三次元成形用加飾シートの構成について、図1を用いて説明する。
図1は、本発明の三次元成形用加飾シートの一態様の断面を示す模式図であって、加飾シート10は、ベースフィルム1上に、金属薄膜層2、透明フィルム層3及び表面保護層4が順に設けられた構成を有する。また、ベースフィルム1と金属薄膜層2との間に、アクリル樹脂及び/又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含む接着層5を有することが好ましく、さらに透明フィルム層3と表面保護層4の間にプライマー層7を有することが好ましい。また、金属薄膜層2と透明フィルム層3との間にプライマー層6を設けてもよい。
当該構成におけるベースフィルム1、金属薄膜層2、透明フィルム層3及び表面保護層4については、前述で説明したとおりである。
(金属薄膜層とベースフィルムとの間に形成される接着層)
本発明の三次元成形用加飾シートにおける接着層5は、ベースフィルム1と金属薄膜層2との接着性を向上させるためのものであり、接着性を向上させ得る樹脂で構成されていれば特に制限はない。また、接着層としては、熱接着樹脂層であってもよいし、接着剤を用いた接着剤層であってもよく、これらを組み合わせてもよい。
なお、接着層5の厚さとしては、通常0.5〜20μm程度、好ましくは1〜5μmである。
接着層5を構成する樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられ、また、前記ビニル系樹脂であれば、該樹脂の平均酸価が1〜6mgKOH/gであるもの(低酸価ビニル系樹脂)が好適に挙げられる。該ビニル系樹脂に関しては、その平均酸価が1mgKOH/g以上であると、金属薄膜層とベースフィルム、射出成形樹脂などとの十分な接着性が得られるため好ましい。一方、6mgKOH/g以下であると、上述の金属薄膜層を透明化することがない。以上の観点から、該ビニル系樹脂の平均酸価は、2〜5mgKOH/gであることがより好ましい。
接着層5は、上記樹脂を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの樹脂のうち、特に上記低酸価ビニル系樹脂及びアクリル樹脂が、十分な接着性が得られるとともに、透明性も高く、取り扱いが容易であるため好ましい。
なお、接着層5には、隠蔽性などを付与するために着色剤を混合してもよい。また、着色剤としてベースフィルムと同系統の着色剤を用いることで、射出樹脂と加飾シートの境目をみえにくくし、意匠性を向上させることができる。
また、接着層5とベースフィルム1の間に別途着色層を設けてもよい。着色層としては絵柄層、ベタ印刷層、又は隠蔽性を有する着色層であってもよい。なお、着色層をベースフィルム層と同系色に着色することで加飾成形シートの断面でベースフィルム層と着色層との境目をみえにくくし、意匠性を向上させることができる。なお、着色層に用いるバインダーとしては、上記接着層5と同様のものが用いられる。
上記接着層5及び着色層に用い得る着色剤としては特に制限はなく、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
透明フィルム層3と表面保護層4との間に、必要に応じて設けられるプライマー層7としては、該層間の密着性を向上させ得るものであれば、特に限定されず、アクリル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが挙げられる。これらのうち、アクリル系ポリマーポリオールと、多価イソシアネート化合物とを反応させ、熱硬化させてなるプライマー層であることが好ましい。
前記多価イソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート;を用いることができ、あるいは、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等も用いることができる。
なお、該プライマー層の厚みは、通常0.5〜20μm程度、好ましくは1〜5μmである。
また、該プライマー層7には、着色剤を混合して、色彩を整えたり、意匠性を向上させることができ、さらには、デザイン的な観点での模様を形成することもできる。
なお、当該プライマー層7は、製造過程において、プライマー層7を形成した後、表面保護層を形成する前にロール状に一旦巻き取られる場合があり、その場合にはブロッキングを防止するために、シリカなど公知のブロッキング剤を含有させることができる。
<表面保護層4の形成>
表面保護層4の形成は、例えば前述の電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液を調製し、これをプライマー層7上に塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、プライマー層7の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、調製された塗工液を、プライマー層7の表面に、硬化後の厚さが1〜1000μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
本発明においては、このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、透明フィルム層3として電子線により劣化する素材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、透明フィルム層3への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による透明フィルム層3の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
次に、本発明の加飾シートの製造方法の好ましい態様について説明する。
まず、透明フィルム層3を構成する透明フィルムに金属薄膜層2を設ける。透明フィルム層については前述の通りである。なお、該透明フィルムは易接着処理がなされていてもよいが、金属薄膜層2を設ける表面は平坦性を確保する点から易接着処理がなされていないことが好ましく、一方、逆の面は表面保護層との接着性の点から易接着処理がなされていることが好ましい。
金属薄膜層2を構成する材料及び形成方法については前述の通りである。
次いで、金属薄膜層2上に必要に応じて、接着層5を設ける。接着層5については、前述の通りである。次に、透明フィルム層3の接着層5の反対側に、必要に応じてプライマー層7を設け、表面保護層形成用樹脂組成物を塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。塗工方法としては、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方法を用いることができる。その後、上述のように、該未硬化樹脂層を硬化して表面保護層4を形成する。次いで、上記接着層5を介して、ベースフィルム1と接着し、本発明の三次元成形用加飾シートを得る。
このようにして、本発明の三次元成形用加飾シートを効果的に製造することができる。
次に、本発明の加飾樹脂成形品について説明する。
[加飾樹脂成形品]
本発明の加飾樹脂成形品は、プラスチック基板上に、前述した本発明の三次元成形用加飾シートを、該加飾シートのベースフィルムが接した状態で有することを特徴とする。
本発明の加飾樹脂成形品について、図2に従って説明する。図2は、本発明の加飾樹脂成形品の一態様の断面を示す模式図であって、加飾樹脂成形品20は、プラスチック基板8上に、本発明の三次元成形用加飾シート10(ベースフィルム1上に、必要に応じて設けられる接着層5、金属薄膜層2、必要に応じて設けられるプライマー層6、透明フィルム層3、必要に応じて設けられるプライマー層7及び表面保護層4を順に有する。)を、そのベースフィルム1が接した状態で有することを示している。
次に、本発明の加飾樹脂成形品の製造方法について説明する。
[加飾樹脂成形品の製造方法]
本発明の加飾樹脂成形品の製造方法は、前述した本発明の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて熱盤によって該表面保護層側から三次元成形用加飾シートを加熱する工程、加熱された三次元成形用加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂を冷却したのち、金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程を含むことを特徴とする。
本発明の加飾樹脂成形品の製造方法は、以下の工程(1)〜(4)を含むものである。
(1)まず、三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて、熱盤によって該表面保護層側から三次元成形用加飾シートを加熱する工程、
(2)加熱された該三次元成形用加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)射出樹脂を金型内に射出する工程、及び
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程、
前記(1)及び(2)において、三次元成形用加飾シートを加熱する温度は、通常160〜190℃程度である。
上記工程(3)において、射出樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該三次元成形用加飾シートと射出樹脂とを一体化させる。射出樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、射出樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、三次元成形用加飾シートが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、加飾樹脂成形品となる。射出樹脂の加熱温度は、射出樹脂によるが、一般に180〜320℃程度である。
また、本発明の加飾樹脂成形品の製造方法の他の態様としては、前述した本発明の三次元成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有することを特徴とする。
上述の方法との相違点は、上述の方法の予備成形に相当する真空成形工程を有し、真空成形型から一旦取り外して、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程を有する点であり、いわゆるインサート成形と称される方法である。三次元成形用加飾シートを加熱する温度及び射出樹脂の加熱温度は、上述と同様である。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例で得られた三次元成形用加飾シートの諸特性を下記要領に従って評価した。
<加飾シートの諸特性の評価>
(1)成形性
加飾シートを赤外線ヒーターで160℃に加熱し、軟化させる。次いで、真空成形用型を用いて真空成形を行い(最大延伸倍率100%)、型の内部形状に成形する。シートを冷却後、型より加飾シートを離型する。評価基準は以下のとおりである。
○:三次元形状部又は最大延伸部の一部に微細な塗膜割れ又は白化が認められたが実用上問題なし。
△:三次元形状部又は最大延伸部の一部に軽微な塗膜割れ又は白化が発生した。
×:型の形状に追従できずに表面保護層に塗膜割れや白化が見られた。
(2)耐傷付き性
#0000スチールウールを用いて荷重1.5kgf(14.7N)で5回往復後の試験片の外観を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:傷付きがなかった。
○:表面に微細な傷が認められたが、塗膜の割れや白化はなかった。
△:表面に軽微な傷があった。
×:表面に著しい傷があった。
(3)耐薬品性
各シート片10cm×10cmに虫除け剤を0.05g塗布し、時計皿で覆いをした状態で室温1時間放置後の外観を確認した。評価基準は以下のとおりである。
◎:外観変化なし。
○:表面に極軽微な白化、膨潤が認められたが、著しい白化、膨潤、溶解等は見られなかった。
△:表面に極軽微な白化、膨潤、溶解が認められた。
×:表面に著しい白化、膨潤、溶解があった。
<ベースフィルム及び透明フィルムの物性>
(1)引張り弾性率の測定方法
各実施例及び比較例で得られた加飾シートをJIS K6251に記載された「引張1号形ダンベル」状にカットしサンプルとした。(株)エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機を用い、チャック間距離80mm、試験速度50mm/minにて測定した。
(2)線膨張率の測定方法
各実施例及び比較例で得られた加飾シートを幅3mm×長さ15mmの短冊状にカットしサンプルとした。熱機械分析(TMA)装置を用い、チャック間10mm、試験速度10℃/minとし荷重3gの引張りモードで測定し、41〜50℃における平均線膨張率を求めた。
<電子線硬化性樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量>
東ソー(株)製高速GPC装置を用いた。用いたカラムは東ソー(株)製、商品名「TSKgel αM」であり、溶媒はN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を用い、カラム温度40℃、流速0.5cm3/minで測定を行なった。尚、本発明における重量平均分子量及び数平均分子量は標準ポリスチレン換算の値である。
<電子線硬化性樹脂の硬化後の架橋点間平均分子量>
上記で得た数平均分子量を官能基数で割った値を架橋点間平均分子量とした。
また、電子線硬化性樹脂EB1として、2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量:10000)と、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000)との質量比80:20の混合物を用い、EB2として、アクリルシリコーンアクリレート(重量平均分子量:20000、硬化後の架橋点間平均分子量:200)と、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:5000)との質量比70:30の混合物を用いた。
実施例1
透明フィルム層として、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と記載する。)フィルム(厚さ25μm)を準備した。該PETフィルムの易接着処理されていない面に、スズを蒸着し、金属薄膜層2を設けた。金属薄膜層2の厚さは、光学濃度OD値0.7〜1.4であった。
次いで、該金属薄膜層2の上にリバースコート法により、平均酸価5.6の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂を塗工してヒートシール層を設け、その上にアクリル樹脂と塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂(質量比2:8)からなる接着剤を塗工して、接着層5とした。
次に、PETフィルムの易接着処理面に、リバースコート法にて、2液硬化型ウレタン樹脂(主剤はポリエステル系、硬化剤はヘキサメチレンジイソシアネート)を塗工し、プライマー層7を得た。該プライマー層7上に第1表に示す種類の電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが10μmとなるようにグラビアリバースにて塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層4を形成した。
次いで、接着層5を介して、第1表に示す引張り弾性率及び線膨張率を有する厚み300μmのABS樹脂からなるベースフィルムに貼付し、本発明の三次元成形用加飾シートを得た。
各加飾シートの諸特性を第1表に示す。
実施例2〜4
実施例1において、第1表に示すように条件を代えたこと以外は、実施例1と同様にして本発明の三次元成形用加飾シートを得た。具体的には、実施例2においては、透明フィルム層の材料を変更し、実施例3及び4は、それぞれ実施例1及び2において、電子線硬化性樹脂組成物を変更したこと以外は、それぞれ実施例1及び2と同様にして本発明の三次元成形用加飾シートを得た。各加飾シートの諸特性を第1表に示す。
比較例1
ベースフィルム1として、実施例で用いたのと同様のものを準備した。該ベースフィルム上に、実施例1で用いたのと同様の材料を用いて、接着層5を設け、該接着層の上に実施例1と同様にスズを蒸着し、金属薄膜層2を設けた。次いで、金属薄膜層2上に、実施例1と同様にして、プライマー層7を設け、該プライマー層7上に実施例1と同様の材料を用いて、同様の方法で、表面保護層4を形成し、加飾シートを得た。この加飾シートの諸特性を第1表に示す。
比較例2
実施例1において、表面保護層を形成しないこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、加飾シートを作製した。この加飾シートの諸特性を第1表に示す。
比較例3
実施例2において、厚み50μmの透明PETフィルムの代わりに、第1表に示す厚み、引張り弾性率及び線膨張率を有する透明アクリルフィルムを用い、かつ表面保護層を形成しないこと以外は、実施例2と同様な操作を行い、加飾シートを作製した。この加飾シートの諸特性を第1表に示す。
Figure 0005673280
EB1;2官能ポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量:10000)と6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:6000)との混合物(質量比80:20)
EB2;アクリルシリコーンアクリレート(重量平均分子量:20000、架橋点間分子量200)と6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(重量平均分子量:5000)との混合物(質量比70:30)
実施例5〜8
実施例1〜4で得た4種の加飾シートをそれぞれ用い、各加飾シートを、熱盤温度170℃で加熱して射出成形の金型内形状に沿うように成形して、表面保護層側を金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が2Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。一方、射出樹脂としてABS樹脂[日本エイアンドエル(株)製、商品名「クララスチックMTH−2」]を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。金型温度が30℃になった時点で、金型から加飾樹脂成形品を取り出し、図2に示す構成を有する4種の加飾樹脂成形品を得た。
本発明の三次元成形用加飾シートは、三次元成形用として用いられ、意匠性に優れるメタリック調を有し、かつ耐擦傷性に優れた加飾樹脂成形品を与えることができる。この加飾樹脂成形品は、例えば自動車のグリルのような物品の代替品として用いられる。
[符号の説明]
1 ベースフィルム
2 金属薄膜層
3 透明フィルム層
4 表面保護層
5 接着層
6 プライマー層
7 プライマー層
8 プラスチック基板
10 三次元成形用加飾シート
20 加飾樹脂成形品

Claims (12)

  1. ベースフィルム上に、少なくとも、金属薄膜層、透明フィルム層及び表面保護層をこの順で有する三次元成形用加飾シートであって、
    前記表面保護層が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び/又はアクリルシリコーン(メタ)アクリレートを含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層であり、
    前記アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有しているものであることを特徴とする三次元成形用加飾シート。
  2. 前記電離放射線硬化性樹脂組成物が、さらに多官能(メタ)アクリレートを含む請求項1に記載の三次元成形用加飾シート。
  3. 前記多官能(メタ)アクリレートが、3官能以上である請求項2に記載の三次元成形用加飾シート。
  4. 前記透明フィルム層が、ポリエステル系樹脂フィルム層である請求項1〜3のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  5. 前記金属薄膜層が、インジウム、スズ、クロム又はアルミニウム薄膜層である請求項1〜4のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  6. 前記透明フィルム層と前記表面保護層との間にプライマー層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  7. 前記金属薄膜層と前記ベースフィルムとの間に、アクリル樹脂及び/又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含む接着層を有する請求項1〜6のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  8. 前記ベースフィルムの25℃における引張り弾性率が、透明フィルム層の25℃における引張り弾性率より1000MPa以上大きい請求項1〜7のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  9. 前記透明フィルムと前記ベースフィルムの41〜50℃の温度域における線膨張率の差の絶対値が4/10000以下である請求項1〜8のいずれかに記載の三次元成形用加飾シート。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の三次元成形用加飾シートを使用してなる加飾樹脂成形品。
  11. 請求項1〜9のいずれかに記載の三次元成形用加飾シートの表面保護層側を金型内に向けて熱盤によって該保護層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿うように予備成形して金型内面に密着させて型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から加飾樹脂成形品を取り出す工程を含むことを特徴とする加飾樹脂成形品の製造方法。
  12. 請求項1〜9のいずれかに記載の三次元成形用加飾シートを真空成形型により予め立体形状に成形する真空成形工程、余分な部分をトリミングして成形シートを得る工程、該成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を閉じ、流動状態の樹脂を型内に射出して樹脂と成形シートを一体化する工程を有する加飾樹脂成形品の製造方法。
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