以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例の熱音響装置10は、基板100と、音波発生ユニットを含み、音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、第一電極106と、第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、相互に間隔をあけて電気的に絶縁して設置され、それぞれ音波発生素子110と電気的に接続される。基板100は、対向する第一表面101及び第二表面103を含む。第一表面101は、複数の凹部102及び複数の突起104を有し、複数の凹部102及び複数の突起104は、交互に現れる。絶縁層120は、基板100の第一表面101上に設置され、複数の凹部102及び複数の突起104の表面に付着する。即ち、絶縁層120が、基板100の第一表面101の全体の面を覆って設置される。音波発生素子110は、基板100の第一表面101上に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。音波発生素子110は、第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112は、凹部102の位置と対応する一部である。従って、第一区域112の音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二区域114音波発生素子は、突起104の位置と対応する一部である。第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。
基板100は、平面構造であり、その形状に制限はない。例えば、円形、方形、矩形及び他の形状である。基板100の表面面積は、25mm2〜100mm2である。具体的には、基板100の面積は、36mm2、64mm2或いは80mm2である。第一基板102の厚さは0.2mm〜0.8mmである。基板100が音波発生素子110を支持する表面を有することを保証しさえすれば、基板100は他の構造でも良い。例えば、塊状構造、曲面構造、弧面構造などである。基板100の材料は、単結晶シリコン或いは多結晶シリコンである。基板100は熱伝導性に優れるため、音波発生素子110が作動中に生成する熱は、外界に伝播されて、音波発生素子110の使用寿命を延ばすことができる。本実施例において、基板100は、正方形の平面構造であり、一辺の長さは、8mmであり、厚さは0.6mmである。また、基板100の材料は、単結晶シリコンである。
基板100の第一表面101において、複数の凹部102は、均一に分布され、特定の規則で分布され、アレイ形式で分布され、或いはランダムに分布される。好ましくは、複数の凹部102は、第一表面101に均一に分布され、且つ相互に突起104によって間隔をあけて設置される。即ち、隣接する二つの凹部102の間には、突起104が形成される。つまり、隣接する二つの凹部102の間の基板100の表面は、突起104の表面である。複数の凹部102は、貫通溝、止まり溝、止まり穴のいずれか一種或いは多種である。凹部102は、基板100の第一表面101から基板100の内部に延伸する方向に、一つの底面と該底面に連接する二つの側面を含む。音波発生素子110の第一区域112は、凹部102の位置と対応する。従って、第一区域112の音波発生素子110は凹部102上に懸架され、凹部102の底面及び側面には接触しない。
凹部102の深度は、必要に応じて及び基板100の厚さによって選択できる。好ましくは、凹部102の深度は、100μm〜200μmである。この際、基板100は、音波発生素子110を保護すると同時に、基板100と音波発生素子110との距離を保証する。前記距離により、音波発生器108が作動して発生させる熱が、第一基板102に完全に吸収されることができる。これにより、発生する熱が周辺の媒体へ伝播されないために音量が低くなることを防止し、かつ音波発生器が各音響周波数に優れた音響効果を有することを保証する。凹部102が溝である場合、凹部102が第一表面101に延伸する長さは、基板100の一辺の長さより短い。凹部102が延伸する方向における横断面の形状は、V字型、長方形、台形、多辺形、円形或いは他の不規則な形状である。凹部102の最大の広さ(ここで、前記最大の広さとは、横断面の幅の最大値である)は、0.2mm〜1mmである。この最大の広さは、音波発生素子110が作動中に破裂することを防止する。または、音波発生素子110の駆動電圧を下げる。駆動電圧は12Vより小さいが、好ましくは、5V以下である。
凹部102の横断面が逆台形である場合、溝の幅は、溝の深さが深くなるにつれて狭くなる。逆台形の底面と側面との成す角度はαである。該角度αの大小は、基板100の材料に関係する。具体的には、角度αの大小は、基板100の単結晶シリコンの結晶面の角度と同じである。好ましくは、複数の凹部102は複数の溝であり、該複数の溝は、相互に平行であり、且つ間隔をあけて均一に分布する。隣接する二つの溝の間の距離は、d1であり、該d1は、20μm〜200μmである。前記d1は、基板100の表面に、スクリーン印刷方法によって、第一電極106及び第二電極116を形成する際の、エッチングの精確性を保証して音響効果を高める。本実施例において、基板100の第一表面101には、相互に平行であり、且つ間隔をあけて均一に分布する逆台形の複数の溝が設置されている。逆台形の溝の第一表面101における最大幅は0.6mmであり、深度は150μmであり、隣接する二つの溝間の距離であるd1は100μmであり、逆台形の角度αは54.7°である。
絶縁層120は単層構造或いは多層構造である。絶縁層120が単層構造である場合、絶縁層120は、突起104の表面のみに設置され、或いは基板100の第一表面101の全てに付着する。ここで、第一表面101の全てに付着するとは、絶縁層120が凹部102の底面及び側面を被覆し、突起104の表面を被覆することを意味する。即ち、絶縁層120の起伏の傾向は、凹部102と突起104の起伏の傾向と同じである。従って、どのような場合でも、絶縁層120によって、基板100と音波発生素子110とは絶縁される。基板100が絶縁材料からなる場合、絶縁層120を設置する必要がない。本実施例において、絶縁層120は、連続した単層構造であり、基板100の第一表面101の全てを被覆する。絶縁層120の材料は、シリカ、窒化ケイ素或いはその組み合わせであり、または他の絶縁材料である。絶縁層120によって、基板100と音波発生素子110とを絶縁しても良い。絶縁層120の厚さは、10nm〜2μmであり、具体的には、50nm、90nm或いは1μmである。本実施例において、絶縁層120の厚さは1.2μmである。
音波発生素子110は、基板100の第一表面101に設置される。具体的には、音波発生素子110は、絶縁層120の表面に設置される。即ち、第一区域112の音波発生素子110は、凹部102に懸架されて設置され、第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面における絶縁層120の表面に設置される。音波発生素子110は、基板100に強固に固定するために、突起104の表面における絶縁層120の表面に接着層或いは接着点を設置する。
音波発生素子110は、単位面積当たりの熱容量が非常に低い。音波発生素子110の材料は制限されず、例えば、カーボンナノチューブのみからなる純カーボンナノチューブ構造体、カーボンナノチューブ複合構造体或いは他の非カーボンナノチューブの熱音波発生材料である。本実施例において、音波発生素子110はカーボンナノチューブのみからなり、単位面積当たりの熱容量は2×10−4J/cm2・Kより小さい。具体的には、音波発生素子110は導電構造であり、比表面積は非常に高く、その厚さは薄い。これにより、音波発生素子110は入力されたエネルギーを熱エネルギーに変換することができる。即ち、音波発生素子110は、入力された信号によって、速く昇温し、熱を周辺の媒体へ伝播させ、この伝播された熱によって生じた熱膨張及び圧力波によって、音波を発生させる。
音波発生素子110は、好ましくは自立構造である。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、音波発生素子110がそれ自体の特定の形状を保持することを意味する。従って、音波発生素子110は、その一部分が懸架して設置され、周辺の媒体と十分に接触し、熱を伝播する。音波発生素子110はフィルム構造、複数の線状構造が平行に形成する層状構造、或いはフィルム構造及び線状構造の組み合わせである。
音波発生素子110は、層状のカーボンナノチューブ構造体である。好ましくは、該層状のカーボンナノチューブ構造体の厚さは0.5nm〜1mmである。カーボンナノチューブ構造体の厚さが薄い場合、例えば10nm以下である場合、カーボンナノチューブ構造体の透明度は優れる。カーボンナノチューブ構造体は自立構造であり、カーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブは分子間力で相互に引き合い、カーボンナノチューブ構造体は特定の形状を有する。即ち、カーボンナノチューブ構造体の一部は基板100に支持され、他の部分は懸架される。カーボンナノチューブ構造体における複数のカーボンナノチューブは同じ方向に延伸し、該延伸する方向と溝が延伸する方向とは角度を成す。該角度は0°〜90°である(0°は含まず)。
カーボンナノチューブ構造体は、少なくともカーボンナノチューブフィルム、複数の平行に設置されるカーボンナノチューブワイヤ、或いは少なくとも一つのカーボンナノチューブフィルムとカーボンナノチューブワイヤの組み合わせである。カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイを直接引き出して得られる。カーボンナノチューブフィルムの厚さは0.5nm〜100μmであり、カーボンナノチューブフィルムの単位面積当たりの熱容量は1×10−6J/cm2・Kより小さい。カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブの一種または多種である。単層カーボンナノチューブの直径は0.5nm〜50nmであり、二層カーボンナノチューブの直径は1nm〜50nmであり、多層カーボンナノチューブの直径は1.5nm〜50nmである。
図3を参照すると、カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブが形成する自立構造であり、複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。多数のカーボンナノチューブの延伸する方向はカーボンナノチューブフィルムの表面と基本的に平行である。また、複数のカーボンナノチューブは分子間力で接続されている。具体的には、多数のカーボンナノチューブにおける各カーボンナノチューブは、延伸する方向における隣接するカーボンナノチューブと、分子間力で端と端とが接続されている。カーボンナノチューブフィルムには、少数のランダムなカーボンナノチューブ含まれているが、これは、多数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されていることに影響しない。
カーボンナノチューブフィルムは自立構造である。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、カーボンナノチューブフィルムを独立して利用することができる形態のことである。すなわち、カーボンナノチューブフィルムを対向する両側から支持して、カーボンナノチューブフィルムの構造を変化させずに、カーボンナノチューブフィルムを懸架させることができることを意味する。
具体的には、カーボンナノチューブフィルムにおける多数のカーボンナノチューブは、絶対的に直線状ではなく少し湾曲している。または、延伸する方向に完全に配列せず、少しずれている場合もある。従って、同じ方向に沿って配列されている多数のカーボンナノチューブの中において、隣同士のカーボンナノチューブが部分接触する可能性がある。カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブが基板100の第一表面101にほぼ平行である。カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブフィルムを含み、該複数のカーボンナノチューブフィルムは、同一面上で基板100の第一表面101に設置される。さらに、カーボンナノチューブ構造体は、相互に重なった多層のカーボンナノチューブフィルムを含み、隣接する二層のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、交差する角度βを有し、該角度βは0°〜90°である。
本実施例において、音波発生素子110は、単層のカーボンナノチューブフィルムであり、該単層のカーボンナノチューブフィルムの厚さは50nmである。カーボンナノチューブフィルムは強い接着性を有するため、突起104における絶縁層120の表面に直接付着できる。カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列されている。該複数のカーボンナノチューブの延伸する方向は、凹部102の延伸する方向と角度を成す。好ましくは、複数のカーボンナノチューブの延伸する方向は凹部102の延伸する方向と垂直になる。更に、カーボンナノチューブフィルムを突起104における絶縁層120の表面に付着させた後、有機溶剤によって、基板100に付着したカーボンナノチューブフィルムを処理する。具体的には、試験管を利用して、有機溶剤をカーボンナノチューブフィルムが浸漬するまで滴らせる。該有機溶剤は揮発性の有機溶剤であり、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、塩化エチレン或いはクロロホルムである。本実施例において、有機溶剤はエタノールである。微視的には、揮発性の有機溶剤が揮発する際、表面張力の作用によって、カーボンナノチューブフィルムにおける一部の隣接するカーボンナノチューブは収縮して束になり、カーボンナノチューブフィルムと基板100との接触面積を増大させ、突起104における絶縁層120の表面に緊密に付着できる。その他、一部の隣接するカーボンナノチューブが収縮して束になるため、カーボンナノチューブフィルムの機械強度及び強靭さを増強させ、カーボンナノチューブフィルムの表面面積は減少し、接着性は少なくなる。巨視的には、カーボンナノチューブフィルムは均一なフィルム構造になる。
第一電極106及び第二電極116は、それぞれ音波発生素子110と電気的に接続される。これにより、周波数電気信号を音波発生素子110に入力することができる。具体的には、第一電極106及び第二電極116は、絶縁層120の基板100と反対側の表面に、間隔をあけて設置されても良い。または、音波発生素子110の基板100と反対側の表面に、間隔をあけて設置されても良い。第一電極106及び第二電極116は導電材料からなり、形状及び構造に制限はない。具体的には、第一電極106及び第二電極116は、細長いストリップ状、棒状或いは他の形状でも良い。その材料は、金属、導電性接着剤、導電ペースト、金属性のカーボンナノチューブ、ITOなどの導電性材料のいずれか一種である。
本実施例において、音波発生素子110に対向する両辺縁における突起104における絶縁層120の表面に、第一電極106及び第二電極116がそれぞれ設置され、且つ凹部102の延伸する方向と平行にされる。音波発生素子110の第一区域112及び第二区域114は、第一電極106と第二電極116との間に位置している。第一電極106及び第二電極116は金属糸からなる。また、音波発生素子110の基板100と反対側の表面に、第一電極106及び第二電極116がそれぞれ設置されても良い。この際、音波発生素子110は、基板100の表面に緊密に固定される。
カーボンナノチューブはその軸方向に優れた導電性を有するため、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている場合、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、好ましくは、第一電極106から第二電極116までの方向に沿って延伸する。また、第一電極106及び第二電極116との間の距離は好ましくは基本的に同じである。これにより、第一電極106及び第二電極116との間におけるカーボンナノチューブの抵抗値は、基本的に同じである。好ましくは、第一電極106及び第二電極116の長さはカーボンナノチューブ構造体の幅より大きい。この際、カーボンナノチューブ構造体を十分に利用することができる。本実施例において、音波発生素子110におけるカーボンナノチューブは、第一電極106及び第二電極116の長手方向に垂直な方向に配列する。第一電極106と第二電極116とは平行に設置される。第一電極106及び第二電極116によって、周波数電気信号をカーボンナノチューブ構造体に入力する。
音波発生素子110が音波を発生する原理は、電気‐熱‐音の変換であり、音波発生素子110が音波を発生する際、熱が生じる。熱音響装置10が作動する際、第一電極106及び第二電極116により、外部回路と電気的に接続され、外部信号を転送して、音波を発生させることができる。熱音響装置10は、カーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体の単位面積当たりの熱容量及び散熱の表面が小さいので、信号を入力した後、カーボンナノチューブ構造体は速く昇温し、温度が周期的に変化して、温度波の拡散により、周辺の空気が熱膨張されて音が生じる。更に、熱音響装置10は散熱装置(図示せず)を含み、該散熱装置は、基板100の音波発生素子110と反対側の表面に設置される。
熱音響装置10には以下の優れる点がある。第一に、シリコン基板の凹部の広さは0.2mm〜1mmである。これにより、カーボンナノチューブ構造体を良好に保護でき、熱音響効果に影響を与えない。第二に、基板100はシリコンからなるので、熱音響装置10を容易に加工でき、現有の技術を利用することができる。従って、生産し易く、且つ、微小な部品を製造でき、産業化でき、小さいサイズ(例えば、1cmより小さい)の熱音響装置を生産できる。第三に、基板100は優れた熱伝導性を有するので、熱音響装置10も優れた熱伝導性を有し、散熱装置を設置する必要がない。第四に、熱音響装置10を製造する際、従来の半導体の製造工程を利用でき、他の部品(例えば、ICチップ)と集積し易く、空間を減少させる。従って、小さいサイズの電気部品に適する。
図4を参照すると、実施例1に係る熱音響装置10の製造方法は、基板100を提供し、該基板100は、互いに間隔をあけて設けられた複数の凹部102を形成し、パターニングされた表面を形成するステップ(S11)と、基板100の、パターニングされた表面に絶縁層120を形成するステップ(S12)と、絶縁層120の表面に間隔をあけて、第一電極106及び第二電極116を形成するステップ(S13)と、音波発生素子110を設置し、音波発生素子110を、第一電極106及び第二電極116に電気的に接続させるステップ(S14)と、含む。
ステップ(S11)において、基板100は、第一表面101と第二表面103を有し、基板100の第一表面101に複数の凹部102を形成し、隣接する凹部102間に、突起104を形成する。ドライエッチング法或いはウェットエッチング法によって、基板100の第一表面101に複数の凹部102を形成する。本実施例において、ウェットエッチング法によって、基板100の第一表面101に複数の凹部102を形成する。
具体的には、基板100をエッチングする工程は、基板100の第一表面101にマスク層(図示せず)を設置するステップ(S111)と、マスク層が設置された基板100をエッチングして、複数の凹部102を形成するステップ(S112)と、マスク層を取り除くステップ(S113)と、含む。
ステップ(S111)において、マスク層はパターニングされた構造であり、該パターニングされた構造は複数の貫通穴を有し、この貫通穴と対応する基板100は露出される。また、この貫通穴の形状は、形成しようとする凹部102の形状によって選択する。例えば、円形、方形、矩形などのいずれか一種である。マスク層の材料は、基板100の材料によって選択できる。本実施例において、マスク層の材料はシリカであり、貫通穴の形状は矩形であり、矩形の幅は0.2mm〜1mmであり、隣接する貫通穴間の距離は20μm〜200μmであり、矩形の長さは基板100の辺長の長さと同じである。隣接する貫通穴間の距離は20μm〜200μmであるので、スクリーン印刷方法によって、隣接する貫通穴間に電極を形成するのに有利であり、且つ精確性を保証することができる。
ステップ(S112)において、エッチング溶液はアルカリ性の溶液である。本実施例において、エッチング溶液は濃度30%の水酸化カリウム溶液であり、温度は80℃である。マスク層における貫通穴は同じ方向に沿って延伸するので、複数の凹部102も同じ方向に沿って延伸する。基板100の材料は単結晶シリコンであるので、ウェットエッチング法によってエッチングする過程において、形成する凹部102の形状は、単結晶シリコンの結晶面及び結晶格子方向に関係している。具体的には、エッチング溶液は単結晶シリコンの結晶格子方向に沿って、基板100をエッチングし、凹部102の横断面は逆台形になる。即ち、凹部102の側面は基板100の表面と垂直にならず、角度αを成す。角度αの大小は、基板100の単結晶シリコンの結晶面の角度と同じである。本実施例において、角度αは54.7°である。
ステップ(S113)において、溶液によって、マスク層を腐蝕させて除去する。該溶液はマスク層のみを溶解するため、基板100に影響しない。これにより、凹部102の形状を保持する。本実施例において、マスク層はシリカからなり、フッ化水素酸によって、マスク層を腐蝕させて除去する。
ステップ(S12)において、物理気相成長法(PVD)或いは化学気相成長法(CVD)によって、絶縁層120を形成する。凹部102の形状及び分布に影響しないことを保証しさえすれば、絶縁層120の厚さは必要に応じて選択可能である。絶縁層120は非連続の層状構造或いは連続した層状構造である。絶縁層120が非連続の層状構造である場合、絶縁層120は、絶縁層120が突起104の表面のみに堆積される。絶縁層120が連続した層状構造である場合、基板100の第一表面101の全てを被覆する。この時、絶縁層120は、凹部102の底面と側面及び突起104の表面に堆積される。本実施例において、絶縁層120は連続した層状構造であり、基板100の第一表面101の全てを被覆する。絶縁層120を堆積する過程において、絶縁層120の起伏の傾向は、凹部102と突起104の起伏の傾向と同じであることを保持する。
ステップ(S13)において、基板100の対向する両辺における突起104の表面に、第一電極106及び第二電極116をそれぞれ設置する。具体的には、突起104の表面に、第一電極106及び第二電極116をそれぞれ付着する。第一電極106及び第二電極116の延伸方向は突起104の延伸方向と平行である。スクリーン印刷法によって、第一電極106及び第二電極116を形成する。本実施例において、スクリーン印刷法によって、突起104の表面に第一電極106及び第二電極116を形成する。
ステップ(S14)において、絶縁層120が設置された基板100に、音波発生素子110を設置し、また、音波発生素子110は、第一電極106及び第二電極116と電気的に接続される。音波発生素子110は第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112の音波発生素子110は、凹部102の位置に懸架して設置され、第二区域114の音波発生素子110は突起104の表面に設置される。音波発生素子110は、第一電極106及び第二電極116の表面に付着し、且つ第一電極106及び第二電極116と電気的に接続される。音波発生素子110はカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体は少なくとも一つカーボンナノチューブフィルム、カーボンナノチューブワイヤ、或いはその組み合わせを含む。
本実施例において、絶縁層120が設置された基板100に、音波発生素子110を設置する方法は、カーボンナノチューブフィルムを提供するステップ(S141)と、絶縁層120が設置された基板100に、カーボンナノチューブフィルムを設置するステップ(S142)と、含む。
ステップ(S141)において、カーボンナノチューブフィルムはカーボンナノチューブアレイを直接に引き出して得る。カーボンナノチューブフィルムの比表面積は非常に大きいので、強い付着力を有する。従って、カーボンナノチューブフィルムは絶縁層120に直接に付着できる。
ステップ(S142)において、凹部102の位置と対応するカーボンナノチューブフィルムが懸架して設置され、突起104と対応するカーボンナノチューブフィルムが突起104の表面における絶縁層120に付着して設置され、第一電極106及び第二電極116の位置と対応するカーボンナノチューブフィルムが、第一電極106及び第二電極116の表面に直接付着する。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの延伸方向は、凹部102の延伸方向と一定の角度を成す。本実施例において、該角度は90°である。これにより、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、第一電極106から第二電極116までの方向に沿って延伸する。
更に、音波発生素子110を設置した後、音波発生素子110の第二区域114に固定素子(図示せず)を設置する。該固定素子は音波発生素子110を更に固定できる。スクリーン印刷法或いはコーティング法によって、固定素子を形成する。本実施例において、固定素子は金属糸からなり、この固定素子によって、音波発生素子110が基板100の表面に緊密に固定される。
更に、第一電極106及び第二電極116を、音波発生素子110の表面に設置しても良い。即ち、まず、音波発生素子110を絶縁層120の表面に設置する。次に、音波発生素子110の第二区域114に、第一電極106及び第二電極116を間隔をあけて設置する。音波発生素子110の完全性を破壊しなければ、第一電極106及び第二電極116の製造方法に制限はない。スクリーン印刷法によって、第一電極106及び第二電極116を音波発生素子110の表面に形成できる。第一電極106及び第二電極116の延伸方向は、凹部102の延伸方向と平行であり、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、第一電極106から第二電極116までの方向に沿って延伸する。第一電極106及び第二電極116は、音波発生素子110を基板100の表面に緊密に固定する。
(実施例2)
図5を参照すると、本発明の実施例2は熱音響装置20を提供する。本実施例の熱音響装置20は、基板100と音波発生ユニットを含み、音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、第一電極106と、第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、互いに間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。本実施例2の熱音響装置20の構造と、実施例1の熱音響装置10の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、熱音響装置20において、音波発生素子110が、複数のカーボンナノチューブワイヤからなる点である。
複数のカーボンナノチューブワイヤは、間隔をあけて平行して、層状のカーボンナノチューブ構造体を形成する。カーボンナノチューブワイヤの延伸方向は凹部102の延伸方向と一定の角度を成す。カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの延伸方向と平行である。凹部102の位置において、層状のカーボンナノチューブ構造体は、間隔をあけて平行する複数のカーボンナノチューブワイヤを含み、且つ該複数のカーボンナノチューブワイヤは、凹部102と対応する位置に懸架して設置される。好ましくは、カーボンナノチューブワイヤの延伸方向は、凹部102の延伸方向と垂直である。隣接するカーボンナノチューブワイヤの距離は1μm〜200μmである。好ましくは、50μm〜150μmである。本実施例において、隣接するカーボンナノチューブワイヤの距離は120μmであり、カーボンナノチューブワイヤの直径は1μmである。
カーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤであることができる。非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤもねじれ状カーボンナノチューブワイヤも自立構造である。図6を参照すると、カーボンナノチューブワイヤが、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤである場合、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。複数のカーボンナノチューブは、カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本の非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。有機溶剤によって、カーボンナノチューブフィルムを処理して、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを得る。具体的には、有機溶剤によって、カーボンナノチューブフィルムの全ての表面を浸す。揮発性の有機溶剤が揮発する際、表面張力の作用によって、カーボンナノチューブフィルムにおける相互に平行する複数のカーボンナノチューブは、分子間力で緊密に結合して、カーボンナノチューブフィルムを収縮して非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを得る。該有機溶剤はエタノール、メタノール、アセトン、塩化エチレン或いはクロロホルムである。有機溶剤によって処理しないカーボンナノチューブフィルムと比較して、有機溶剤によって処理された非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの比表面積は減少し、且つ接着性も小さい。また、カーボンナノチューブワイヤの機械強度及び強靭さを増強させ、外力によってカーボンナノチューブワイヤが破壊される可能性を低くする。作動中において、凹部102位置に懸架するカーボンナノチューブワイヤは変形しないため、優れた熱音響効果を保持できる。
図7を参照すると、カーボンナノチューブフィルムの長手方向に沿う対向する両端に相反する力を印加することにより、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。好ましくは、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。さらに、各カーボンナノチューブセグメントには、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。カーボンナノチューブセグメントの長さ、厚さ、均一性及び形状は制限されない。一本のねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは制限されず、その直径は、0.5nm〜100μmである。更に、有機溶剤によって、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを処理する。有機溶剤によって処理されたねじれ状カーボンナノチューブワイヤは比表面積が減少し、接着性が小さい。また、カーボンナノチューブワイヤの機械強度及び強靭さを増強させ、カーボンナノチューブワイヤの製造方法は、特許文献1及び特許文献2に掲載されている。
実施例2に係る熱音響装置20の製造方法は、基板100を提供し、該基板100は間隔をあけて設けられた複数の凹部102を形成し、パターニングされた表面を形成するステップ(S21)と、基板100の、パターニングされた表面に絶縁層120を形成するステップ(S22)と、絶縁層120の表面に間隔をあけて、第一電極106及び第二電極116を形成するステップ(S23)と、カーボンナノチューブフィルムを設置し、カーボンナノチューブフィルムを第一電極106及び第二電極116と電気的に接続するステップ(S24)と、カーボンナノチューブフィルムを処理し、間隔をあけて平行する複数のカーボンナノチューブワイヤを形成するステップ(S25)と、含む。
本実施例2の熱音響装置20の製造方法と、実施例1の熱音響装置10の製造方法とは基本的にほぼ同じであるが、異なる点は、本実施例2の熱音響装置20の製造方法が、カーボンナノチューブフィルムを処理し、間隔をあけて平行する複数のカーボンナノチューブワイヤを形成するステップを含む点である。
ステップ(S25)は、更に、レーザーによってカーボンナノチューブフィルムを切断し、間隔をあけて複数のカーボンナノチューブストリップを形成するステップ(S251)と、有機溶剤によって、カーボンナノチューブストリップを収縮して、カーボンナノチューブワイヤを形成するステップ(S252)と、含む。
ステップ(S251)において、レーザー装置にパルスレーザーを発射させて、カーボンナノチューブフィルムを切断する。レーザーの仕事率は1w〜100wである。該レーザーの指向性は優れているので、カーボンナノチューブフィルムの表面に光スポットを形成できる。カーボンナノチューブフィルムの表面において、レーザーの仕事率密度は0.053×1012w/m2である。本実施例において、レーザー装置は二酸化炭素レーザーであり、該二酸化炭素レーザーの定格仕事率は12wである。レーザー装置は連続してレーザーを発射するレーザー装置でも良い。形成された光スポットは、基本的に円形であり、その直径は1μm〜5mmである。該光スポットはレーザーを集光して形成される。または、レーザーによってカーボンナノチューブフィルムの表面を直接に照射して形成する。好ましくは、集光して形成する光スポットの直径は小さい。例えば、5μmである。カーボンナノチューブフィルムの表面に、前記光スポットは細い切り痕を形成するので、焼かれるカーボンナノチューブの量を減少させることができる。
基板100と垂直な方向で、レーザーによってカーボンナノチューブフィルムを切断する。ここで、カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向をx方向と定義する。切断する方向は、このx方向と平行である。レーザーを平行に移動させて、カーボンナノチューブフィルムを照射して、連続したカーボンナノチューブフィルを幅が同じ複数のカーボンナノチューブストリップに切断する。発生させたい音波の要求(例えば、高周波、低周波)に応じて、該カーボンナノチューブストリップの幅は選択可能である。各カーボンナノチューブストリップは相互に平行な複数のカーボンナノチューブを含む。
ステップ(S252)において、試験管を利用して、有機溶剤をカーボンナノチューブストリップが浸漬するまで滴らせる。または、カーボンナノチューブストリップと基板100を共に、有機溶剤が入った容器に入れて浸す。該有機溶剤は揮発性の有機溶剤であり、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、塩化エチレン或いはクロロホルムである。本実施例において、有機溶剤はエタノールである。有機溶剤が揮発する際、表面張力の作用によって、カーボンナノチューブストリップは収縮して、カーボンナノチューブワイヤになる。カーボンナノチューブワイヤは端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。カーボンナノチューブワイヤの両端は、第一電極106と第二電極116とに接続される。本実施例において、収縮したカーボンナノチューブワイヤの直径は0.5μm〜3μmである。
図8を参照すると、有機溶剤によって、カーボンナノチューブストリップを処理した後、間隔をあけて複数のカーボンナノチューブワイヤを形成する。カーボンナノチューブワイヤの両端は、第一電極106と第二電極116とに接続される。これにより、音波発生素子110の駆動電圧を減少させ、音波発生素子110の安定性を増加させる。(図8において、暗い色の部分は基板であり、白い部分は電極である。)カーボンナノチューブストリップを処理することは選択的なステップである。有機溶剤によって、カーボンナノチューブストリップを処理する過程において、突起104の位置において、カーボンナノチューブは絶縁層120の表面に強固に固定されるので、基本的に収縮しない。従って、カーボンナノチューブは、第一電極106及び第二電極116に良好に電気的に接続される。カーボンナノチューブストリップがカーボンナノチューブワイヤを収縮することを保証するため、カーボンナノチューブストリップの幅は10μm〜50μmである。カーボンナノチューブストリップの幅が、前記幅より大きい場合、カーボンナノチューブストリップを収縮する過程において、裂け目を形成する可能性があり、熱音響効果に影響する。或いは、カーボンナノチューブストリップの幅が、前記幅より小さい場合、カーボンナノチューブストリップを収縮する過程において、破裂する可能性がある。或いは、形成するカーボンナノチューブワイヤは細いため、音波発生素子110の使用寿命に影響を与える。本実施例において、カーボンナノチューブストリップの幅は30μmであり、収縮したカーボンナノチューブワイヤの直径は1μmであり、隣接するカーボンナノチューブワイヤの距離は120μmである。カーボンナノチューブストリップの幅に制限はなく、カーボンナノチューブワイヤが正常に音を発生させさえすれば、必要に応じてカーボンナノチューブストリップの幅を選択できる。
(実施例3)
図9を参照すると、本発明の実施例3は熱音響装置30を提供する。本実施例の熱音響装置30は、基板100と音波発生単位ユニットを含み、この音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、第一電極106と、第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。基板100は、対向する第一表面101及び第二表面103を含む。第一表面101は複数の凹部102及び複数の突起104を有する。絶縁層120は、基板100の第一表面101に設置され、複数の凹部102及び複数の突起104の表面に付着する。音波発生素子110は、基板100の第一表面101に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。音波発生素子110は第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112は凹部102の位置と対応する。従って、第一区域112の音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二区域114の音波発生素子110は突起104の表面に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。
本実施例3の熱音響装置30の構造と、実施例2の熱音響装置20の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、熱音響装置30における絶縁層120は多層構造を含む点である。また、絶縁層120は突起104の表面のみに設置されても良い。または、絶縁層120は第一表面101のみに設置されても良い。または、一層の絶縁層120は突起104の表面のみに設置され、他の数層の絶縁層120は第一表面101に設置されても良い。本実施例において、絶縁層120は、第一絶縁層122と、第二絶縁層124と、第三絶縁層126と、を含む。第一絶縁層122及び第二絶縁層124は非連続の構造であり、突起104の表面のみに順次に堆積される。第三絶縁層126は連続した層状構造であり、第二絶縁層124及び凹部102の底面と側面に付着する。第一絶縁層122の材料はシリカであり、第二絶縁層124の材料は窒化ケイ素であり、第三絶縁層126材料はシリカである。
絶縁層120が複数の絶縁材料からなる多層構造である場合、各層の絶縁材料は同じでも良く或いは同じでなくても良い。各層の厚さは10nm〜1μmである。該各層の厚さは、必要に応じた素子によって選択できる。本実施例において、三層構造である。第一絶縁層122の材料はシリカであり、厚さは100nmである。第二絶縁層124の材料は窒化ケイ素であり、厚さは90nmである。第三絶縁層126材料はシリカであり、厚さは1μmである。絶縁層120によって、音波発生素子110は、基板100と良好に絶縁して設置され、シリコン基板100を製造する過程において、シリコン基板100が酸化される現象を減少させる。または、シリコン基板100が酸化される現象を防止する。
図10を参照すると、実施例3に係る熱音響装置30の製造方法は、基板100を提供し、該基板100の一つの表面に、第一絶縁層122及び第二絶縁層124を順次に堆積するステップ(S31)と、第一絶縁層122及び第二絶縁層124をエッチングして、基板100の部分を露出するステップ(S32)と、露出する基板100をエッチングして、複数の凹部102及び複数の突起104を有するパターニングされた表面を形成するステップ(S33)と、複数の凹部102及び複数の突起104の表面に第三絶縁層126を形成するステップ(S34)と、基板100の対向する両端の突起104の表面に、第一電極106及び第二電極116をそれぞれ設置するステップ(S35)と、音波発生素子110を設置し、第一電極106及び第二電極116と電気的に接続するステップ(S36)と、含む。
本実施例3の熱音響装置30の製造方法と、実施例2の熱音響装置20の製造方法とは基本的に同じであるが、異なる点は、基板100の表面に多層構造の絶縁層120を形成する点である。
ステップ(S31)において、化学気相堆積法によって、基板100の一つの表面に、第一絶縁層122及び第二絶縁層124を順次に堆積する。第一絶縁層122は、第二絶縁層124を堆積するバッファ層である。これにより、第二絶縁層124の質量を高め、欠陥を減少し、熱音響装置30の熱音響効果を高めることができる。
ステップ(S32)において、マスクエッチング法によって、第一絶縁層122及び第二絶縁層124をエッチングする。マスク器具は複数の貫通穴を有する。本実施例において、貫通穴の形状は矩形である。第一絶縁層122及び第二絶縁層124をエッチングする過程において、同じ方向に沿って延伸する矩形の溝を形成する。該溝の横断面は矩形であり、基板100の表面の部分は露出する。
ステップ(S33)において、基板100をエッチングする過程において、基板100の材料は単結晶シリコンであり、単結晶シリコンは結晶格子構造を有するため、形成する凹部102の横断面は逆台形である。基板100をエッチングする過程において、第一絶縁層122及び第二絶縁層124は基本的に影響を受けない。第一絶縁層122及び第二絶縁層124は突起104の表面に設置する。
ステップ(S34)において、第三絶縁層126は連続した層状構造であり、第二絶縁層124及び凹部102の底面と側面に付着する。多層の絶縁層を設置することによって、音波発生素子110は基板100と絶縁することを保証でき、短絡の現象を減少し、シリコン基板が酸化される現象を減少し、熱音響効果を高め、産業化に有利である。
(実施例4)
図11、図12、図13を参照すると、本発明の実施例4は熱音響装置40を提供する。本実施例の熱音響装置40は、基板100と音波発生ユニットを含み、音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、複数の第一電極106と、複数の第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。
本実施例4の熱音響装置40の構造と、実施例2の熱音響装置20の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、音波発生ユニットが複数の第一電極106と複数の第二電極116を含み、複数の第一電極106と複数の第二電極116とは間隔をあけて設置され、任意の隣接する第一電極106と第二電極116との間に、少なくとも一つの凹部102を有し、複数の第一電極106と複数の第二電極116とが、突起104の表面における絶縁層120の表面に設置される点である。複数の第一電極106及び複数の第二電極116の高さに制限はないが、好ましくは、該高さは1μm〜200μmである。
更に、複数の第一電極106と複数の第二電極116とは交互に設置され、隣接する第一電極106と第二電極116とは間隔をあけて設置される。具体的には、複数の第一電極106は、第一連続部1061によって電気的に連続されて第一櫛歯電極を形成する。複数の第二電極116は、第二連続部1161によって、電気的に連続されて第二櫛歯電極を形成する。第一櫛歯電極と第二櫛歯電極とが対向して設置されることによって、第一櫛歯電極の歯部と第二櫛歯電極の歯部とは間隔をあけて互いに平行に、且つ交互に設置される。第一連続部1061と第二連続部1161とは、基板100の第一表面101の対向する両辺縁にそれぞれ設置され、且つ第一連続部1061及び第二連続部1161を電気的に接続するために用いられ、その設置される位置は、音波発生素子110の音の発生に影響しない。
図14、図15を参照すると、凹部102の異なる深さにおける熱音響装置20の音の発生効果を示す。好ましくは、凹部102の深さは100μm〜200μmであり、この際、人が聞こえる音響周波数に達し、熱音響装置20は熱の波長に優れ、小さいサイズでも熱音響効果に優れている。更に、音波発生素子110を保護する際、基板100と音波発生素子110との間に十分な距離がとられる。該距離は、生成された熱が基板100に完全に吸収されて、周辺の媒体へ伝播されないために音量が低くなることを防止する。また、音波発生素子110が各音響周波数に優れた音響効果を有することを保証する。同時に、前記凹部102の深さも音波発生素子110の音響効果を保証するため、凹部102の深さが深過ぎるために音波発生素子110の音響効果を影響することを防止する。
(実施例5)
図16を参照すると、本発明の実施例5は熱音響装置50を提供する。本実施例の熱音響装置50は、基板100と音波発生ユニットを含み、音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、複数の第一電極106と、複数の第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。基板100は、対向する第一表面101及び第二表面103を含む。第一表面101は、複数の凹部102及び複数の突起104を有する。絶縁層120は、基板100の第一表面101に設置され、複数の凹部102及び複数の突起104の表面に付着する。音波発生素子110は、基板100の第一表面101に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁に設置され、且つ第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112は凹部102の位置と対応する。従って、第一区域112の音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。
本実施例5の熱音響装置50の構造と、実施例4の熱音響装置40の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、基板100の対向する二つの表面が、それぞれ複数の凹部102及び複数の突起104を有し、また、該二つの表面には、それぞれ音波発生素子110が設置される点である。具体的には、基板100の第一表面101の凹部102と、基板100の第二表面103の凹部102とは対応して設置される。即ち、基板100の表面と垂直な方向において、基板100の第一表面101の凹部102と基板100の第二表面103の凹部102とは対応する。或いは、基板100の表面と垂直な方向において、基板100の第一表面101の凹部102と基板100の第二表面103の突起104とは対応する。或いは、基板100の第一表面101の凹部102と基板100の第二表面103の凹部102とは交差して設置される。即ち、基板100の第一表面101の凹部102の延伸方向と、基板100の第二表面103の凹部102の延伸方向とは角度を成す。
基板100の二つの表面における二つの音波発生素子110は、同時に作動でき、音の発生効率及び音量を高める。該二つの音波発生素子110は単独に作動でき、それぞれは外部IC電路によって制御され、異なる駆動信号を入力し、発生した異なる音を合わせて出力する。一つの表面における音波発生素子110が損傷した場合、もう一つの表面における音波発生素子110が安定的に作動できるため、熱音響装置50の使用寿命を延ばすことができる。
実施例5に係る熱音響装置50の製造方法は、基板100を提供し、該基板100は、対向する第一表面101及び第二表面103を有するステップ(S51)と、基板100の第一表面101をパターニングし、間隔をあけて相互に平行な凹部を形成するステップ(S52)と、基板100の第二表面103をパターニングし、間隔をあけて相互に平行な凹部を形成するステップ(S53)と、基板100のパターニングされた二つの表面に絶縁層120を形成するステップ(S54)と、基板100の第一表面101に、隣接する凹部間の絶縁層120の表面に、間隔をあけて第一電極106及び第二電極116を形成するステップ(S55)と、基板100の第二表面103に、隣接する凹部間の絶縁層120の表面に、間隔をあけて第一電極106及び第二電極116を形成するステップ(S56)と、パターニングされた第一表面101に層状のカーボンナノチューブ構造体を設置し、該層状のカーボンナノチューブ構造体を、第一電極106及び第二電極116に電気的に接続するステップ(S57)と、パターニングされた第二表面103に層状のカーボンナノチューブ構造体を設置し、該層状のカーボンナノチューブ構造体を、第一電極106及び第二電極116に電気的に接続するステップ(S58)と、含む。
ステップ(S57)及びステップ(S58)において、凹部の位置と対応するカーボンナノチューブ構造体は懸架される。熱音響装置50の製造方法におけるステップは、必要に応じて、前後の順序を調整できる。
(実施例6)
図17を参照すると、本発明の実施例6は熱音響装置60を提供する。本実施例の熱音響装置60は、基板100と音波発生ユニットを含み、音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、複数の第一電極106と、複数の第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。基板100は、対向する第一表面101及び第二表面103を含む。第一表面101は、複数の凹部102及び複数の突起104を有する。絶縁層120は、基板100の第一表面101に設置され、複数の凹部102及び複数の突起104の表面に付着する。音波発生素子110は、基板100の第一表面101に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。音波発生素子110は、第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112は凹部102の位置と対応する。従って、第一区域112の音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。第二表面103は、少なくとも一つの溝105を有し、該溝105には集積回路チップ140が嵌められる。
本実施例6の熱音響装置60の構造と、実施例1の熱音響装置10の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、基板100の第二表面103は集積回路チップ140を有する点である。
基板100の第二表面103は溝105を有し、集積回路チップ140を該溝105に嵌める。基板100はシリコンからなるので、集積回路チップ140は基板100に直接に形成できる。即ち、集積回路チップ140における電路及びマイクロ電子デバイスは、基板100の第二表面103に集積できる。基板100は電子配線及びマイクロ電子デバイスの担体であり、集積回路チップ140と基板100とは一体構造である。
更に、集積回路チップ140は、第三電極142と第四電極144を含み、第三電極142は、第一電極106と電気的に接続され、第四電極144は第二電極116と電気的に接続される。これにより、音波発生素子110に信号を入力する。本実施例において、第三電極142及び第四電極144の表面は絶縁層を有するため、基板100と絶縁される。基板100の面積が非常に大きい場合、集積回路チップ140は、基板100の第一表面101に設置しても良い。この際、基板100の内部に接続線を設置する必要はない。具体的には、集積回路チップ140は、音波発生素子110の正常作動に影響しないので、基板100の第一表面101の側面に設置しても良い。また、集積回路チップ140は、音声処理モジュールと電流処理モジュールを含む。作動中において、集積回路チップ140は、入力された音声信号と電流信号を処理した後、音波発生素子110を駆動する。音声処理モジュールによって、音声信号の仕事率を増大させ、また、増大した音声信号を音波発生素子110に入力する。電流処理モジュールによって、電源から入力された電流を処理し、音波発生素子110に安定した入力電流を提供し、音波発生素子110の正常作動を保証する。
基板100はシリコンからなり、集積回路チップ140は、基板100に直接に形成できるので、集積回路チップ140を単独で設置する空間を減少させ、熱音響装置60の体積を減少させることができるため、熱音響装置の小型化及び集積化に有利である。また、基板100は優れた散熱性を有するので、集積回路チップ140及び音波発生素子110が発生する熱を外部に伝導して、熱音響効果を高めることができる。
実施例6に係る熱音響装置60の製造方法は、基板100を提供し、該基板100は、対向する第一表面101及び第二表面103を有するステップ(S61)と、第一表面101に複数の凹部102を形成し、隣接する凹部102の間に突起104を形成するステップ(S62)と、第一表面101に絶縁層120を形成するステップ(S63)と、間隔をあけて突起104の表面に、第一電極106及び第二電極116を形成するステップ(S64)と、音波発生素子110を設置し、該音波発生素子110を電極106及び第二電極116と電気的に接続するステップ(S65)と、第二表面103に集積回路チップ140を設置し、該集積回路チップ140を、音波発生素子110と電気的に接続するステップ(S66)と、含む。
本実施例6の熱音響装置60の製造方法と、実施例1の熱音響装置10の製造方法とは基本的に同じであるが、異なる点は、熱音響装置60の製造方法が、第二表面103に集積回路チップ140を設置し、該集積回路チップ140を、音波発生素子110と電気的に接続するステップを含む点である。
ステップ(S66)において、集積回路チップ140を、基板100の第二表面103に嵌める。具体的には、基板100の第二表面103に溝105を形成し、集積回路チップ140はこの溝105に直接に設置する。
基板100はシリコンからなり、集積回路チップ140は基板100の第二表面103に直接形成できる。従来のマイクロ電子技術(例えば、エピタキシー技術、拡散技術、酸化技術、イオン注入技術、エッチング技術)によって、集積回路チップ140を形成できる。従って、集積回路チップ140を容易に基板100に直接集積できるため、コストが低くなり、熱音響装置60の集積化に有利である。本実施例において、集積回路チップ140は、第三電極142及び第四電極144によって、音波発生素子110と電気的に接続される。
(実施例7)
図18を参照すると、本発明の実施例7は熱音響装置70を提供する。本実施例の熱音響装置70は、基板100と音波発生ユニットを含み、音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、複数の第一電極106と、複数の第二電極116と、を含む。第一電極106と第二電極116とは、間隔をあけて設置され、音波発生素子110と電気的に接続される。基板100は対向する第一表面101及び第二表面103を含む。第一表面101は、複数の凹部102及び複数の突起104を有する。絶縁層120は、基板100の第一表面101に設置され、複数の凹部102及び複数の突起104の表面に付着する。音波発生素子110は、基板100の第一表面101に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。音波発生素子110は第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112は凹部102の位置と対応する。従って、第一区域112の音波発生素子110は懸架され、凹部102の底面と間隔をあけて設置される。第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面に設置され、絶縁層120によって、基板100と絶縁して設置される。
本実施例7の熱音響装置70の構造と、実施例4の熱音響装置40の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、音波発生ユニットにおける複数の第一電極106及び複数の第二電極116が、音波発生素子110の基板100と反対側の表面に設置される点である。
以下、熱音響装置アレイについて説明する。
(実施例8)
図2、図5、図19及び図20を参照すると、熱音響装置アレイ1000を提供する。熱音響装置アレイ1000は、基板100’と複数の音波発生ユニットを含む。各音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、第一電極106と、第二電極116と、を含む。基板100’は対向する第一表面101’と第二表面103’を有する。複数の音波発生ユニットは、基板100’の第一表面101’に設置される。本実施例の音波発生ユニットの構造は、熱音響装置10における音波発生ユニットと同じである。隣接する第一電極106及び第二電極116の間に、少なくとも一つの凹部を有する。
基板100’は平面構造であり、その形状に制限はなく、円形、方形、矩形及び他の形状でも良い。基板100’の面積は、25mm2〜200cm2である。具体的には、基板100’の面積は40mm2、100mm2、45cm2或いは100cm2である。基板100が音波発生素子110を支持する表面を有することを保証しさえすれば、基板100’は他の構造でも良い、例えば、塊状構造、曲面構造、弧面構造などである。基板100’の材料は、ガラス、セラミック、石英、ダイヤモンド、プラスチック、樹脂或いは木質材料である。好ましくは、基板100’の材料は、単結晶シリコン或いは多結晶シリコンである。基板100’は熱伝導性能に優れるため、音波発生素子110が作動中に生成する熱は、外界に伝播され、音波発生素子110の使用寿命を延ばすことができる。本実施例において、基板100’は、円形の平面構造であり、直径は10センチメートであり、一辺の厚さは600μmであり、材料は単結晶シリコンである。
隣接する音波発生ユニットは相互に独立して設置される。ここで、相互に独立して設置されるとは、隣接する音波発生ユニットにおける音波発生素子110が相互に絶縁されていて、音波発生素子110に異なる信号を入力することによって、独立して作動することである。具体的には、熱音響装置アレイ1000において、切線108によって、隣接する音波発生ユニットは相互に独立して設置される。切線108は、基板100’の第一表面101’に設置される。基板100’の面積或いは音波発生ユニットの数量によって、複数の切線108の位置を選択することができる。本実施例において、複数の切線108は、基板100’の第一表面101’に設置され、該複数の切線108は、相互に平行であり或いは相互に垂直である。複数の切線108は、貫通溝、貫通穴、止まり溝、止まり穴の一種或いは多種である。本実施例において、複数の切線108は止まり溝である。複数の切線108が貫通溝である場合、隣接する切線108は交差しない。これにより、複数の音波発生ユニットは同じ基板を用いることになる。
複数の音波発生ユニットは、基板100’の第一表面101’に設置され、熱音響装置アレイ1000を形成する。複数の音波発生ユニットの数量は制限されず、必要に応じて選択できる。本実施例において、複数の音波発生ユニットの数量は8である。本実施例の音波発生ユニットの構造は、熱音響装置40における音波発生ユニットと同じである。
熱音響装置アレイ1000には以下の優れた点がある。第一に、基板の表面は複数の凹部と複数の突起を有し、カーボンナノチューブフィルムを支持し、カーボンナノチューブフィルムは熱音響効果を高め破壊され難い。第二に、熱音響装置アレイ1000を更に加工し、切線108によって、複数の音波発生ユニットは分離され、一回で複数の熱音響装置を形成することができるため、産業化に有利である。
実施例7に係る熱音響装置アレイ1000の製造方法は、基板100’を提供し、該基板100’は第一表面101’を有し、第一表面101’に複数のユニット格子を定義するステップ(S71)と、各ユニット格子に、間隔をあけて平行する複数の凹部102を形成し、パターニングされた表面を形成するステップ(S72)と、各ユニット格子のパターニングされた表面に絶縁層120を形成するステップ(S73)と、各ユニット格子上の絶縁層120の表面に、間隔をあけて第一電極106及び第二電極116を形成するステップ(S74)と、第一表面101’に音波発生素子110を設置し、第一電極106及び第二電極116と電気的に接続し、該音波発生素子110は各ユニット格子を被覆するステップ(S75)と、ユニット格子によって、音波発生素子110を切断して分離し、ユニット格子における隣接する音波発生素子110を絶縁するステップ(S76)と、を含む。
ステップ(S71)では、基板100’の第一表面101’において、複数のユニット格子は相互に独立する。ユニット格子を定義する方法は制限されない。本実施例において、基板100’の第一表面101’に、複数の切線108を形成することによって、複数のユニット格子を形成する。切線108を形成する方法は制限されず、例えば、機械的方法、化学的方法などである。本実施例において、ウェットエッチング法によって、基板100’に、複数の切線108を形成する。
具体的には、切線108を形成する方法は、基板100’の第一表面101’にマスク層(図示せず)を設置するステップ(S711)と、基板100’をエッチングして、複数の切線108を形成するステップ(S712)と、マスク層を除去するステップ(S713)と、含む。
ステップ(S711)において、マスク層はパターニングされた構造であり、該パターニングされた構造は複数の貫通穴を有する。貫通穴と対応する基板100’は露出される。切線108に応じて、貫通穴の形状は選択できる。マスク層の材料は基板100’の材料によって選択できる。本実施例において、マスク層の材料はシリカであり、貫通穴の形状は矩形であり、矩形の広さは0.2mm〜1mmである。矩形の長さは基板100’の形状と辺長によって選択できる。本実施例において、矩形の広さは0.15mmであり、隣接する貫通穴の間の距離は20μm〜200μmであるので、貫通穴の長さは8mmである。
ステップ(S712)において、エッチング溶液はアルカリ性の溶液である。本実施例において、エッチング溶液は濃度30%の水酸化カリウム溶液であり、温度は80℃である。基板100’の材料は単結晶シリコンであるので、ウェットエッチング法によってエッチングする過程において、形成する切線108の形状は単結晶シリコンの結晶面及び結晶格子方向に関係している。具体的には、エッチング溶液は単結晶シリコンの結晶格子方向に沿って、基板100’をエッチングし、形成する切線108の横断面は逆台形になる。即ち、形成する切線108の側面は基板100’の表面と垂直でなく、角度αを成す。角度αの大小は基板100’の単結晶シリコンの結晶面の角度と同じである。本実施例において、角度αは54.7°である。
ステップ(S713)において、溶液によって、マスク層を腐蝕させて除去する。該溶液はマスク層のみを溶解するため、基板100’に影響しない。これにより、切線108の形状を保持することができる。本実施例において、マスク層はシリカからなり、フッ化水素酸によって、マスク層を腐蝕させて除去する。
ステップ(S72)において、基板100’は第一表面101’と第二表面103’を有し、複数の凹部102を基板100’の第一表面101’に形成し、隣接する凹部102の間に、突起104を形成する。ドライエッチング法或いはウェットエッチング法によって、基板100’の第一表面101’に複数の凹部102を形成する。本実施例において、ウェットエッチング法によって、基板100’の第一表面101’に複数の凹部102を形成する。
具体的には、各ユニット格子に、間隔をあけて複数の凹部102を形成し、基板100’の第一表面101’に、マスク層(図示せず)を設置するステップ(S721)と、基板100’におけるユニット格子をエッチングして、間隔をあけて複数の凹部102を形成するステップ(S722)と、マスク層を除去するステップ(S723)と、含む。
ステップ(S721)及びステップ(S723)は、ステップ(S711)及びステップ(S713)と基本的に同じであるが、異なる点は、各ユニット格子における凹部102の位置及び数量によって、マスク層における貫通穴の位置及び数量を確定する点である。本実施例において、マスク層における貫通穴は矩形であり、且つ同じ方向に沿って延伸するので、複数の凹部102も同じ方向に沿って延伸する。また、隣接する各ユニット格子における凹部102は通じていないので、各ユニット格子は相互に独立する。凹部102の深度は100μm〜200μmであり、凹部102の最大の広さは0.2mm〜1mm。隣接する二つの凹部102の距離は20μm〜200μmである。
更に、ステップ(S71)及びステップ(S72)は、一つのステップで完成できる。即ち、一つのマスク層によって、基板100’の第一表面101’に、複数の切線108及び複数の凹部102を一回で形成する。切線108及び凹部102の作用は異なる。切線108の作用は、基板100’の第一表面101’に複数のユニット格子を定義し、複数の音波発生ユニットを、切線108によって、相互に独立させることである。凹部102の作用は凹部102によって、音波発生素子110と基板100の間に特定の距離を形成し、熱音響効果を高めることである。
ステップ(S73)において、各ユニット格子に、間隔をあけて複数の凹部102を形成した後、物理気相成長法或いは化学気相成長法によって、絶縁層120を形成する。凹部102の形状及び分布に影響しないことを保証しさえすれば、絶縁層120の厚さは必要に応じて選択できる。絶縁層120は非連続の層状構造或いは連続した層状構造である。絶縁層120が非連続の層状構造である場合、絶縁層120は、絶縁層120が突起104の表面のみに堆積される。絶縁層120が連続した層状構造である場合、基板100の第一表面101の全てを被覆する。絶縁層120は凹部102の底面と側面及び突起104の表面に堆積される。本実施例において、絶縁層120は連続した単層構造であり、基板100’の第一表面101’の全てを被覆する。絶縁層120を堆積する過程において、絶縁層120の起伏の傾向は凹部102と突起104の起伏の傾向と同じであることを保持する。ステップ(S73)は基板の材料によって、省略することができる。
ステップ(S74)において、各ユニット格子の対向する両辺の突起104の表面における絶縁層120に、第一電極106及び第二電極116をそれぞれ間隔をあけて設置する。具体的には、突起104の表面における絶縁層120に、第一電極106及び第二電極116をそれぞれ付着する。第一電極106及び第二電極116の延伸方向は突起104の延伸方向と平行である。第一電極106と第二電極116の間に、少なくとも一つの凹部102を有する。スクリーン印刷法によって、第一電極106及び第二電極116を形成する。本実施例において、スクリーン印刷法によって、突起104の表面に第一電極106及び第二電極116を形成する。
ステップ(S75)において、各ユニット格子の音波発生素子110は、第一電極106及び第二電極116と電気的に接続される。音波発生素子110は第一区域112と第二区域114を含む。第一区域112の音波発生素子110は、凹部102の位置に懸架して設置し、第二区域114の音波発生素子110は、突起104の表面における絶縁層120に設置する。音波発生素子110は、第一電極106及び第二電極116の表面に付着し、且つ第一電極106及び第二電極116と電気的に接続される。音波発生素子110はカーボンナノチューブ構造体を含み、カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブは同じ方向に沿って配列され、基板の表面とほぼ平行する。カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの延伸方向は凹部102と角度を成す。該角度は0°〜90°である(0°は含まず)。
本実施例において、音波発生素子110はカーボンナノチューブフィルムである。絶縁層120が設置された基板100’に、音波発生素子110を設置する方法は、カーボンナノチューブフィルムを提供するステップ(S751)と、絶縁層120の基板100’と反対側の表面に、カーボンナノチューブフィルムを設置し、各ユニット格子を被覆するステップ(S752)と、含む。
ステップ(S751)において、カーボンナノチューブフィルムはカーボンナノチューブアレイを直接引き出して得る。カーボンナノチューブフィルムの比表面積は非常に大きいので、強い付着力を有する。従って、カーボンナノチューブフィルムは基板100’と反対側の表面に直接に付着できる。
ステップ(S752)において、凹部102の位置と対応するカーボンナノチューブフィルムは懸架して設置し、突起104と対応するカーボンナノチューブフィルムは突起104の表面における絶縁層120に付着して設置し、第一電極106及び第二電極116の位置と対応するカーボンナノチューブフィルムは、第一電極106及び第二電極116の表面に直接付着する。カーボンナノチューブフィルムは単層カーボンナノチューブフィルムである。カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの延伸方向は、凹部102の延伸方向と一定の角度を成す。該角度は0°〜90°である(0°は含まず)。
ステップ(S76)において、各ユニット格子における隣接する音波発生素子110を絶縁することを保証しさえすれば、複数のユニット格子によって、音波発生素子110を切断して分離する方法は制限されない。本実施例において、レーザーによって、切線108に沿って、カーボンナノチューブフィルムを切断する。
レーザーが切線108に沿って、カーボンナノチューブフィルムを切断した後、更に、各ユニット格子におけるカーボンナノチューブフィルムを処理するステップを含む。該ステップは、実施例2に係る熱音響装置20の製造方法におけるステップ(S25)と同じである。
更に、ステップ(S76)において、カーボンナノチューブフィルムを切断するステップと、各ユニット格子におけるカーボンナノチューブフィルムを切断するステップとは同時に進行できる。即ち、複数のユニット格子によって、レーザーが切線108に沿って、カーボンナノチューブフィルムを切断するステップと、各ユニット格子におけるカーボンナノチューブフィルムを切断するステップとは同時に進行できる。
更に、音波発生素子110を設置した後、音波発生素子110の第二区域114に固定素子(図示せず)を設置する。該固定素子は、音波発生素子110を更に固定できる。スクリーン印刷法或いはコーティング法によって、固定素子を形成する。本実施例において、固定素子は金属糸からなり、この固定素子によって、音波発生素子110は基板100’の表面に緊密に固定される。
本発明が提供する熱音響装置アレイ1000の製造方法には、以下の優れた点がある。基板100の第一表面101’に複数のユニット格子を定義し、複数のユニット格子に、複数の第一電極106及び第二電極116を一度に形成して、音波発生素子110が一度に設置された後、前記複数のユニット格子によって、音波発生素子110を切断して分離する。これにより、一つの基板に複数の音波発生ユニットを一度に形成することができる。また、各音波発生ユニットは相互に音を発生させる。熱音響装置アレイ1000の製造方法は、熱音響装置の産業化に有利である。
(実施例9)
図11、図12、図13及び図21を参照すると、熱音響装置アレイ2000を提供する。熱音響装置アレイ2000は、基板100’と複数の音波発生ユニットを含み、一つの音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、複数の第一電極106と、複数の第二電極116と、を含む。基板100’は対向する第一表面101’と第二表面103’を有する。複数の音波発生ユニットは基板100’の第一表面101’に設置される。本実施例の音波発生ユニットの構造は、熱音響装置40における音波発生ユニットと同じである。
本実施例9の熱音響装置アレイ2000の構造と、実施例8の熱音響装置アレイ1000の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、音波発生ユニットが複数の第一電極106と複数の第二電極116を含み、複数の第一電極106と複数の第二電極116とは間隔をあけて設置され、任意の隣接する第一電極106と第二電極116の間に、少なくとも一つの凹部102を有し、複数の第一電極106と複数の第二電極116とが突起104の表面における絶縁層120の表面に交互に設置される点である。
更に、複数の第一電極106と複数の第二電極116とは交互に設置され、隣接する第一電極106と第二電極116とは間隔をあけて設置されている。具体的には、複数の第一電極106は、第一連続部1061によって電気的に連続され、第一櫛歯電極を形成する。複数の第二電極116は、第二連続部1161によって、電気的に続続され、第二櫛歯電極を形成する。第一櫛歯電極と第二櫛歯電極とは対向して設置されることによって、第一櫛歯電極の歯部と第二櫛歯電極の歯部とは間隔をあけて平行に、且つ交互に設置される。第一連続部1061と第二連続部1161とは、基板100’の第一表面101’の各ユニット格子の対向する両辺縁にそれぞれ設置され、第一連続部1061及び第二連続部1161は電気的接続のために用いられ、その設置される位置は音波発生素子110の音の発生に影響しない。
櫛歯電極の形式によって、複数の第一電極106及び複数の第二電極116によって、音波発生素子110は複数の区域を形成する。ここで一つの区域とは、一つの第一電極106と、該一つの第一電極106と隣接する第二電極116とが形成する区域である。音波発生素子110の複数の区域は並列接続する。これにより、音波発生素子110の駆動電圧は低くなる。
実施例9に係る熱音響装置アレイ2000の製造方法は、実施例8の熱音響装置アレイ1000の製造方法とは基本的に同じであるが、異なる点は、実施例8のステップ(S74)における第一電極106及び第二電極116が、複数の第一電極106及び複数の第二電極116となる点である。即ち、各ユニット格子の絶縁層120の表面に、間隔をあけて複数の第一電極106及び複数の第二電極116を形成する。
(実施例10)
図22を参照すると、熱音響装置アレイ3000を提供する。熱音響装置アレイ3000は、基板100’と複数の音波発生ユニットを含み、一つの音波発生ユニットは、音波発生素子110と、絶縁層120と、複数の第一電極106と、複数の第二電極116と、を含む。基板100’は、対向する第一表面101’と第二表面103’を有する。複数の音波発生ユニットは、基板100’の第一表面101’に設置される。基板100’の第一表面101’には、凹部102に替わって、複数の凹穴107が設けられる。該複数の凹穴107は、基板100’の第一表面101’に、間隔をあけて、均一に分布する。本実施例の音波発生ユニットの構造は、熱音響装置40における音波発生ユニットと同じである。音波発生素子は、基板100’の第一表面101’に設置され、凹穴107と対応する部分は懸架して設置される。
本実施例10の熱音響装置アレイ3000の構造と、実施例9の熱音響装置アレイ2000の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、基板100’の第一表面101’に、複数の凹穴107を有する点である。該複数の凹穴107は、基板100’の第一表面101’に、アレイ形式或いは交差の形式によって、間隔をあけて、均一に分布する。凹穴107の開口形状は円形或いは楕円である。第一表面101’に凹穴107の広さは0.2mm〜1mmである。本実施例において、凹穴107の開口形状は円形であり、凹穴107の直径は0.6mmであり、凹穴107の深さは100μm〜200μmである。隣接する凹穴107の距離はd1であり、d1は20μm〜200μmである。該d1は、基板100’の表面に、スクリーン印刷法によって、第一電極106及び第二電極116を形成させ、エッチングの精確性を保証して音響効果を高める。且つ、凹穴107を精確にエッチングすることを保証する。
実施例10に係る熱音響装置アレイ3000の製造方法は、実施例8の熱音響装置アレイ1000の製造方法と基本的に同じであるが、異なる点は、基板100’におけるユニット格子をエッチングし、間隔をあけて複数の凹部102を形成するステップ(S722)を、基板100’におけるユニット格子をエッチングし、間隔をあけて、均一に分布する複数の凹穴107を形成するステップに変更する点である。各ユニット格子に凹穴107を形成する際、マスク層の貫通穴の形状は円形であり、マスク層の貫通穴の直径及び分布は、凹穴107の直径及び分布に関係し、必要に応じて選択できる。その中で、熱音響装置アレイ3000の製造方法における第一電極106及び第二電極116は、熱音響装置アレイ2000の製造方法における複数の第一電極106及び複数の第二電極116である。
(実施例11)
熱音響装置アレイ4000(図示せず)を提供する。熱音響装置アレイ4000は基板100’と複数の音波発生ユニットを含み、一つの音波発生ユニットの構造は、実施例7における音波発生ユニットの構造と同じである。
本実施例11の熱音響装置アレイ4000の構造と、実施例8の熱音響装置アレイ2000の構造とは基本的に同じであるが、異なる点は、音波発生ユニットにおける複数の第一電極106及び複数の第二電極116が、音波発生素子110の基板100と反対側の表面に設置される点である。
実施例11に係る熱音響装置アレイ4000の製造方法は、実施例8の熱音響装置アレイ1000の製造方法と基本的に同じであるが、異なる点は、ステップ(S75)を行なった後、ステップ(S74)を行う点である。即ち、各ユニット格子の絶縁層120の表面に、音波発生素子110を設置した後、音波発生素子110の第二区域114に、間隔をあけて第一電極106及び第二電極116を形成する。第一電極106及び第二電極116は音波発生素子110の100と離れる表面に設置する。音波発生素子110の完全性を保証しさえすれば、第一電極106及び第二電極116の製造方法は制限されない。本実施例において、スクリーン印刷法によって、音波発生素子110の第二区域114に、間隔をあけて第一電極106及び第二電極116を形成する。その中で、熱音響装置アレイ4000における複数の第一電極106及び複数の第二電極116の製造方法は、熱音響装置アレイ2000の製造方法の複数の第一電極106及び複数の第二電極116の製造方法と同じである。