JP5668712B2 - 耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。 - Google Patents

耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。 Download PDF

Info

Publication number
JP5668712B2
JP5668712B2 JP2012048282A JP2012048282A JP5668712B2 JP 5668712 B2 JP5668712 B2 JP 5668712B2 JP 2012048282 A JP2012048282 A JP 2012048282A JP 2012048282 A JP2012048282 A JP 2012048282A JP 5668712 B2 JP5668712 B2 JP 5668712B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
axis
less
impact resistance
pure titanium
present
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012048282A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2013181246A (ja
Inventor
森 健一
健一 森
藤井 秀樹
秀樹 藤井
哲 川上
哲 川上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2012048282A priority Critical patent/JP5668712B2/ja
Publication of JP2013181246A publication Critical patent/JP2013181246A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5668712B2 publication Critical patent/JP5668712B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)

Description

本発明は、耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法に関する。
軽量で耐食性に優れた純チタンは多様な用途で使用されているが、そのなかでもJIS3種や4種のように酸素や鉄の固溶元素を一定量以上含有し、1種や2種と比較して強度の高い工業用純チタン板は、構造用部材の一部として使用される場面が多い。
このような高強度純チタン板は、JIS1種や2種の比較的低強度の純チタン板と同様に、熱間圧延および/あるいは冷間圧延によって製造される。しかし、高強度であるがゆえに延性に乏しく、特に冷間加工する場合に破断したり、使用中に衝撃荷重を受けて破断したりする懸念がある。
特に、酸素を一定量以上含有する高強度純チタンでは、双晶の発生が抑制されることで塑性変形による衝撃吸収能が減少するため、耐衝撃性は不可避的に低い。従って、改善の余地は乏しいと考えられていたが、これまでに、集合組織を制御したり冷間加工を加えたりすることで、耐衝撃性を改善する技術が開示されている。
例えば、特許文献1においては、O、N、Cの合計が0.04〜0.27質量%、Feが0.1質量%以下、残部がTiおよび不可避的な不純物よりなり、且つ冷間加工により硬化させることにより硬度が一定の範囲となることを特徴とする耐衝撃用冷間加工硬化チタン成品が開示されている。しかし、当該技術は、衝撃物がチタン板面にぶつかって貫通することを想定した耐衝撃性、即ち耐弾性を規定したものあり、本発明のような板面方向に進展するき裂に対する耐衝撃性に言及したものではない。
以後、本明細書で用いる耐衝撃性とは、シャルピー試験等で評価の対象とされる、板面方向に進展するき裂に対する耐衝撃性を意味する。そしてこのような、板面方向に進展するき裂に対する耐衝撃性が優れることで、例えば、前記のように冷間加工する場合に発生する破断を避けることができる。即ち、冷間加工時の歩留まりを上げ、コストを下げることができる。また歩留のほかに、チタン板を冷間圧延する際にコイルの破断を抑制できるため、延性回復のための中間焼鈍が必要となる限界圧下率を大きくして生産能率を上げることができる。
また、純チタンやチタン合金と集合組織との耐衝撃性については、種々検討されている。以下に、図1を用いて、純チタンの集合組織と耐衝撃性について説明する。なお、図1は、チタンα相の六方晶構造(hcp)の(0001)結晶面の法線方向であるc軸方位の表し方を示したものである。また、図1において、板面法線方向をND、圧延方向(板長手方向)をRD、これらの方向に垂直な方向、即ち板幅方向をTDとする。
純チタン板の代表的な圧延集合組織には、c軸がND方向に集積したB−texture、c軸がTD方向に集積したT−texture、c軸がNDからTD方向に約35°傾いた方位に集積したSplitTD−textureがある。従来、上記の集合組織の中で、耐衝撃性にはB−textureが最も有利と考えられていた。それは、板面に平行な方向への塑性変形が容易であるため、衝撃吸収エネルギーが最も高くなるためと考えられる。しかしながら、このように耐衝撃性の向上に有効なB−textureを得るためには、圧延方向を途中で90°変更するクロス圧延を行う必要があり、長尺品の製造には適用出来ず、またコスト高にもなる。一方、T−textureやSplitTD−textureは、き裂が進展する方向によって衝撃値が大きく変化する性質を有するため、耐衝撃性の向上のためには推奨されない。
特許文献2には、ビッカース硬さが125〜220で、且つ板面上の六方晶(0002)結晶面正極点図にて指数αが0.4〜1.0であることを特徴とする耐衝撃性に優れたチタン板が開示されている。指数αは、板面方向から測定した六方晶(0002)結晶面の正極点図において、強度を15等分して作成した下から4番目の強度等高線がRD軸およびTD軸と交差する点の比である。αが計算上の最大値1.0を示すのは、c軸がRD方向とTD方向に等しく分布している場合であり、すなわち典型的なB−textureの場合である。αが計算上の最小値0を示すのは、c軸のTD方向あるいはRD方向のどちらかへの傾斜が全くない場合であり、通常の工業的な圧延では生じにくい集合組織である。αが0.4〜1.0の範囲とは、c軸方位が、RDおよびTD方向に概ね等しく分布するB−textureに近い状態を示すと解釈できる。また、請求項3〜5には、互いに直交する方向に圧延することが示されており、従来から知られているB−textureを形成する方法が示されていると言って良い。しかし、当該技術は、特許文献1と同様に、物体がチタン板面にぶつかることを想定しており、物体が貫通するか否かを耐衝撃性として規定したものあり、本発明のような板面方向に進展するき裂に対する耐衝撃性に言及したものではない。
以上のように、純チタン板における板面方向のき裂進展に対する耐衝撃性を高める技術は開示されていなかった。
特許第4065644号公報 特開2003−147462号公報
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、耐衝撃性の乏しい室温引張強さが600MPa以上の高強度工業用純チタン板の使用環境に制限なくその利用を容易にしたり、利用方法を拡大したりするために、熱延条件や焼鈍条件を規定し、圧延集合組織の結晶方位を適正に制御することによって、従来よりも耐衝撃性に優れた高強度工業用純チタン板を低コストで提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記目的を達成するために、板の圧延集合組織が板面方向のき裂進展に対する耐衝撃性に与える影響を鋭意調査した。
ここで、耐衝撃性の評価には、板厚を貫通するノッチを有し、板面に平行な方向にき裂が進展する2mmVノッチ衝撃試験片を用いて室温でシャルピー衝撃試験を行った場合の衝撃値を用いる。
また、室温引張強さが600MPa以上の工業用純チタンを対象として調査した。これは、室温引張強さが600MPa未満の場合には延性が充分にあり、衝撃特性の改善を必要としていないためである。
また、本発明者らは、酸素や鉄などの固溶元素が多く、強度が高い純チタンの場合には衝撃値が低下することは明らかであるため、耐衝撃特性について本発明における純チタン板と従来の純チタン板とを比較する際に、同じ酸素当量を有する純チタン板を採用して衝撃値を求めた。本発明では、下記(1)式で示す酸素当量Oeqに対する衝撃値が従来よりも高い純チタン板を得ることを狙いとして調査を行った。
酸素当量Oeq=[O]+0.1[Fe]+2.77[N]・・・(1)
[O]:Oの含有量(質量%)
[Fe]:Feの含有量(質量%)
[N]:Nの含有量(質量%)
なお、本発明における酸素当量Oeqは、後述する本発明の成分範囲、O:0.20%以上0.40%未満、Fe:0.10%以上0.40%未満、N:0.010%未満であれば、0.21〜0.46の範囲となる。
また、本発明者らは、純チタン板の集合組織に着目して鋭意検討を重ね、ND方向に対するc軸の傾きを制御するとともに、このc軸のND方向に対する傾きを所定の範囲内となるようすることにより耐衝撃性が向上することを見出した。
ここで、従来では、上述したように、c軸がND方向に集積したB−textureを得るためには、圧延方向を途中で90°変更するクロス圧延、つまり多方向にわたる圧延を行わなければならなった。しかし、本発明者らが合金組成、圧延条件と集合組織の関係を調査研究したところ、一方向に圧延した板においても、c軸方位がRD方向やTD方向に限定されず、ND方向からわずかに傾斜した集合組織を形成させることができることを見出した。
さらに、一般には、熱間圧延材を焼鈍して延性を回復させることが、高い破壊靭性(衝撃値)を得るために有利であると考えられる。しかし、発明者らの試験の過程で明らかになったように、結晶粒が微細で、かつ、その方位が一定の範囲に分散した状態であれば、衝撃値(衝撃吸収エネルギー)は増加する。これは、異方性の強い六方晶では破面を形成しやすい方位が限られており、破壊進展の過程で、破面の方位が細かく分散されていることにより多量のエネルギーが消費されるためと推定される。従って、焼鈍を施すことで再結晶によって特定の結晶方位が支配的になることは、高い衝撃値を確保することができる本推定メカニズムに対して、かえって不利となる。
またさらに、最終圧延を冷間で行うと、歪みの蓄積などにより延性および衝撃値が低下することは明らかであるため、熱間圧延を行うことが必要である。
以上のように、圧延集合組織および焼鈍条件を適正に調整することで、耐衝撃性に優れた純チタン板を製造可能なことを見出すにいたった。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)質量%で、O:0.20%以上0.40%未満、Fe:0.10%以上0.40%未満、N:0.010%未満を含有し、残部チタン及び不可避的不純物からなり、
集合組織において、六方晶構造を有するα相の(000)面の法線方向であるc軸の分布をX線にて測定した場合に、前記c軸が、板面に垂直な方位に対して10°以上30°以下に傾斜した範囲に50%以上存在することを特徴とする耐衝撃性に優れた高強度純チタン板。
(2)上記(1)に記載の化学成分を有する純チタン板において、加熱温度を840℃以上920℃未満として一方向に圧下率95%以上の熱間圧延を行った後、焼鈍を行わないか、あるいは650℃以下で3分以下の焼鈍を行うことを特徴とする耐衝撃性に優れた高強度純チタン板の製造方法。
本発明によれば、従来の純チタン板を上回る耐衝撃性を有した純チタン板を提供することができる。また、本発明に係る純チタン板は、元素添加による組織制御を行うことなく優れた耐衝撃性を付与させることができるため安価であることから、広範な利用が可能であり、その効果を幅広く得ることが可能になることから、産業上の効果は計り知れない。
純チタン板の結晶配向を説明する図である。 c軸の集積度を示す(0002)極点図の例である。 c軸の方位角(傾き)θとX線相対強度分布の関係図である。 酸素当量Oeqと、衝撃値の関係の図である。
以下、本発明の高強度純チタン板について詳しく説明する。
本発明の高強度純チタン板は、質量%で、O:0.20%以上0.40%未満、Fe:0.10%以上0.40%未満、N:0.010%未満を含有し、残部チタン及び不可避的不純物からなり、集合組織において、六方晶構造を有するα相の(000)面の法線方向であるc軸の分布をX線にて測定した場合に、前記c軸が板面に垂直な方位に対して10°以上30°以下に傾斜した範囲に50%以上存在することを特徴とする。
以下、本発明の高強度純チタン板の組成を限定した理由について説明する。なお、%の表記は特に断りがない場合は質量%を意味する。
(O:0.20%以上0.40%未満)
酸素は、α相を固溶強化する元素であり、強度調整のため添加量を調整される。室温強度600MPa以上を得るためには0.20%以上の添加が必要であることから0.20%以上とした。一方、0.40%以上の添加では、著しく高強度、低延性となり実用性に乏しいため、0.40%未満とした。強度−延性のバランスを考慮すると、好ましくは0.22%以上0.37%未満である。
(Fe:0.10%以上0.40%未満)
鉄は、β相を固溶強化する元素であり、強度調整のため0.10%以上とした。好ましくは0.12%以上である。一方、0.40%以上の添加では、著しく高強度、低延性となり実用性に乏しいため、0.4%未満とした。好ましくは0.35%未満である。
(N:0.010%未満)
窒素は、酸素と同様にα相を固溶強化する元素である。積極的に添加しない場合にも不可避的に混入するものであるが、工業的に通常のレベルである0.010%未満とした。
また、本発明の高強度純チタン板において、下記式(1)によって求められる酸素当量Oeqが0.21〜0.46の範囲となるよう、上記3元素の含有比率を設定することが好ましい。
酸素当量Oeq=[O]+0.1[Fe]+2.77[N]・・・(1)
[O]:Oの含有量(質量%)
[Fe]:Feの含有量(質量%)
[N]:Nの含有量(質量%)
本発明では、OやFeなど、強度の上昇に寄与する元素を調整し、600MPa以上の強度を確保すべく、Oeqを0.21以上とすることが好ましい。一方、Oeqが大きすぎると、強度が高くなりすぎて延性が劣化するおそれがあるため、その上限を0.46とすることが好ましい。
次に、本発明の高強度純チタン板の集合組織、特に、α相のc軸方位について限定した理由を示す。
まず、チタンα相のc軸方位の表し方を図1に示す。上述したように、α相のc軸とは、六方晶構造の底面である(0001)面の法線方向に相当する。また、図1において、板面法線方向をND軸(ND方向)、圧延方向(板長手方向)をRD軸(RD方向)、これらの方向に垂直な方向、即ち板幅方向をTD軸(TD方向)とした場合、ND軸とc軸のなす角度をθ、また、c軸を板面に投影して得られる線とTD軸とのなす角度、つまりc軸とND方向を含む面がND方向とTD方向を含む面となす角度をφとする。本発明において、c軸の傾きは、これら角度θ、及び角度φを用いて表す。
本発明では、六方晶を構成する面のうち破壊進展の過程で破面となる方位を、一定の範囲内に細かく分散させた状態とすることが非常に重要である。つまり、破面を形成しやすい方位が限られた六方晶のc軸を、板面法線方向に対して所定の角度傾斜した領域内に存在させることにより、き裂の進展方向が分散され、耐衝撃性を向上させることができる。
本発明者らは、このc軸を、板面法線方向に対して10°以上30°以下に傾斜した範囲内に50%以上存在させることにより上記効果を達成できることを見出した。換言すると、ND軸とc軸のなす角度(c軸の傾き)θが10°以上30°以下であるc軸を50%以上確保することにより、衝撃値向上の効果を得ることができる。
以下に、c軸の傾きをその分布について限定した理由について詳細に説明する。
ND方向に対するα相のc軸の傾きθが10°より小さい場合、つまりc軸の板面法線方向への配向傾向が強い場合、熱間圧延による板厚の減少が困難になり、塑性変形による衝撃吸収エネルギーが低下する。また、六方晶の柱面に沿ったき裂進展を生じやすく、底面によるき裂進展方位の分散が生じにくくなるため、衝撃値が低下する。
一方、ND方向に対するα相のc軸の傾きθが30°より大きい場合、つまりc軸の板面方向への配向傾向が強い場合、板面内方位による異方性が増加し、特定の方向のき裂進展に対する抵抗は大きくなるが、異なる方向のき裂進展に対する抵抗は小さくなり、板の衝撃値は低下する。このような現象は、結晶粒毎に板面内に不規則に分散する方位を形成すれば衝撃値の低下は抑制できると推定されるが、展伸材の製造過程では特定の方位が発達する傾向があるため工業的に製造することは困難である。
以上のことから、α相のc軸の傾きθが10〜30°の範囲であれば、き裂の進展は、柱面あるいは底面に沿って不規則的に生じるため、き裂進展方向が分散され、結果的に耐衝撃性が向上すると推定される。
また、本発明では、上述したような傾きを有するc軸の存在率を50%以上とする必要がある。ここで、このc軸の存在率とその数値限定理由について以下に述べる指数を用いて説明する。なお上述したように、c軸の傾きは、c軸がND方向となす角度θ、c軸とND方向を含む面がND方向とTD方向を含む面となす角度φを用いて表す。
まず、c軸の集積度は、θが0°〜90°、φが−180°〜180°(全周)の範囲で各々5°間隔で数値化された(0002)X線反射相対強度(以下、X線相対強度という)で表される。本実施形態におけるc軸すなわちα相底面(0001)面の集積度を表す(0002)極点図の例を図2に示すが、本実施形態におけるc軸がND方向に配向していることが分かる。さらに、c軸がND方向に対して一定の角度傾斜して存在していることも分かる。
ここで、上記X線相対強度のφ全周(−180°〜180°)に渡る平均値を、上記θに対してプロットした例が図3である。さらに、X線相対強度の平均値(φ=−180〜180°)のθ=0°〜90°の積分値を100%としたときに、θ=10°〜30°の範囲に入る比率(%)を指数とする。
本実施形態に係る純チタン板では、上記指数が50%である必要がある。例えば、図3に示した太実線Aは本発明例であり、c軸がθ=20°付近に集積しており、上記指数は55%を示す。このように、c軸をθ=20°近傍に配向させ、θ=10〜30°の範囲内に50%させることにより、き裂進展方向を分散させる効果を十分に発揮させることができる。一方、図3中の細実線Bに示すように、従来のB−textureでは、θ=0°で最も高い集積を示すため、指数は45%と小さくなる。さらに、図3中の点線Cに示すように、従来のSplitTD−textureの場合には、θ=35°付近に集積するため、指数は47%と小さくなる。つまり、従来の純チタン板では、き裂進展方向の分散効果を有した、ND方向に対する傾斜が10〜30°であるc軸の存在率が不十分であるため、特定の面に沿ったき裂が生じやすくなるおそれがある。
従って、本発明による衝撃値向上の効果を得るためには、本指数が50%以上が必要である。なお、き裂の進展方向をより分散させるには、好ましくは52%以上であり、より好ましくは、54%以上である。
次に、本発明の高強度純チタン板の製造方法について説明する。
本発明では、T−textureの発達を抑制するとともに、c軸の傾きθを制御することにより耐衝撃性を向上させた高強度純チタン板を製造するために、熱間圧延時の加熱温度および焼鈍条件を規定している。
具体的に、本発明の高強度純チタン板の製造方法は、上述したような化学組成を有するスラブを、加熱温度を840℃以上920℃未満として一方向に圧下率95%以上の熱間圧延を行った後、焼鈍を行わないか、あるいは650℃以下で3分以下の焼鈍を行うことを特徴とする。
熱間圧延時の加熱温度を840℃以上920℃未満と規定している。これは、そのc軸がTD方向に強く配向したT−textureの発達を抑制するためであり、熱延加熱温度を該温度範囲内として圧延することにより、上述したような傾きθであるc軸を有するα相を形成させることができる。一方、加熱温度が920℃以上の場合にはβ相の比率が増加しT−textureが発達して、本発明の結晶方位の範囲を外れてしまい、板の衝撃値が低下するおそれがある。T−textureの発達をより抑制するためには、好ましくは910℃未満である。また、加熱温度が840℃以下の場合には、c軸の傾きが本発明の結晶方位の傾きの範囲を外れた0°あるいは35°付近に比較的強く分布するため、規定した範囲のc軸の存在確率が低下する。加熱温度は、好ましくは850℃以上である。
また、本発明では、上記温度範囲に加熱後、一方向に圧下率95%以上の熱間圧延を施すことが必要である。このように圧下率を規定することにより、T−textureの発達を抑制するとともに、上述したような傾きを有するc軸の存在率を50%以上とすることができる。
しかし、圧下率が95%未満であると、c軸の集積がゆるやかになり、上述したような傾きを有するc軸の存在確率が50%未満となる。
また、本発明では、熱延仕上げ温度を600〜700℃としている。600℃以下は圧延時の反力が過大になり、一般の熱間圧延機での製造が困難になるためである。一方、700℃以上では、再結晶が容易に生じるため、c軸の分布が規定の範囲を外れるためである。
また、本発明では、上記条件のもとで熱間圧延を行った後、焼鈍を行わないか、あるいは650℃以下で3分以下の焼鈍を行うこととする。
本発明者らの知見によれば、結晶粒が微細で、かつ、その方位が上記のような一定の範囲に分散した状態であれば、衝撃値は増加する。つまり、結晶方位を分散させ、破壊進展の過程において破面の方位を細かく分散させることにより多量のエネルギーが消費され、結果、耐衝撃性を向上させることができる。しかしながら、熱間圧延後に焼鈍を行うことで、上記熱間圧延工程によって結晶方位を分散させた状態が解消され、さらには再結晶によって特定の結晶方位が支配的となってしまうおそれがある。結晶方位が支配的となれば、特定の方位に沿ったき裂進展が生じやすくなり、き裂進展方位の分散が生じにくくなるため衝撃値が低下してしまう。
したがって、本発明では熱間圧延後の焼鈍を行わないか、あるいは、650℃以下、3分以下と規定している。焼鈍を行う場合は、650℃より高温あるいは3分よりも長時間の焼鈍を行うと再結晶を生じ、結晶粒の粗大化や特定の結晶方位の増加を招き、衝撃値が低下するため、650℃以下、3分以下と低温・低時間とすることが重要である。
上記の条件で熱間圧延および焼鈍を行った場合、板断面の結晶粒はその短軸が20μm以下である結晶粒が板の断面積の大部分、例えば80%以上を占める。き裂は結晶粒単位に進展方向が変化するため、結晶粒径が小さい方が、上記のき裂進展方向の分散の効果が大きいと考えられる。一般的には、Ti−6Al−4Vに代表される高強度α+β型チタン合金のような脆性的な材料においては、ラメラ組織とすることによってき裂進展方向が偏向することの効果が大きいため、粒径あるいはラメラーコロニーサイズが大きい方が耐衝撃性が高いとされている。しかし、α相が主体の純チタンにおいては延性が充分にあるため、高強度α+β型チタン合金とは機構が異なっていると推定される。
本発明のチタン板は、通常用いられるチタン板の製造方法によって製造することにより、本発明の優れた耐衝撃性を具備することができる。本発明チタン板の代表的な製造工程は次のとおりである。
まず、スポンジチタン、成分調整用添加材を原料として、消耗電極式真空アーク溶解法または電子ビーム溶解法またはプラズマアーク溶解法により、チタン鋳塊とする。この鋳塊から製造された80〜250mm厚のチタンスラブを加熱し熱間圧延を行い、3〜8mm厚の熱延板を得ることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す素材No.1〜6の成分のチタン鋳塊を真空アーク溶解法により製造し、鍛造して80mm厚のスラブとした。
Figure 0005668712
素材No.1〜6のスラブを、表2に示す加熱温度に加熱して熱間圧延を行い、4mm厚の熱延板とした。なお、このときの圧下率は表2に示すとおりとし、圧延方向は一方向とした。また熱延仕上温度は600〜700℃であった。
引き続き、この熱延板に対し、焼鈍無しあるいは600〜750℃、1〜5分の焼鈍を施した後、ショットブラスト、酸洗してスケールを除去した。各素材に対する焼鈍温度及び焼鈍温度を表2に示す。なお、表2中のこれら焼鈍条件における(−)は、焼鈍を行わなかった場合を意味する。
次に、耐衝撃特性の評価方法について説明する。
まず、得られた熱延板から2mmVノッチシャルピー衝撃試験片を採取した。なお、試験片長軸の向きをRD方向(圧延方向)に、ノッチ深さをTD方向(板幅方向)に採取したものを試験片L、試験片長軸の向きをTD方向に、ノッチ深さをRD方向に採取したものを試験片Tとした。そして、いずれの試験片も熱延板板厚を試験片厚として採取し、衝撃値を評価した。試験方法はJISに則り、23℃にて行った。試験片L、試験片Tを用いて評価した衝撃値を、それぞれ衝撃値L、衝撃値Tとして表2に記載した。なお、衝撃値Lと衝撃値Tではいずれの場合も衝撃値Lの方が小さいため、本実施例においては、衝撃値Lのほうで耐衝撃特性を評価した。また、表2中の衝撃値Tにける「>100」との表記は、測定した衝撃値が100J/cm超であったことを意味する。また衝撃値Lを前記(1)式で示す酸素当量Oeqに対してプロットした図を図4に示す。
次に、上記熱延板の板厚中央部より、研磨およびエッチングにより試料を作製し、X線回折による集合組織調査を行い、c軸がθ=10°〜30°の範囲に入る比率を求めた。
c軸の集積度は、上述したように、θ(0°〜90°)、φ(−180°〜180°)の範囲で各々5°間隔で数値化された(0002)X線反射相対強度で表される。そして、X線強度のφ全周(−180°〜180°)に渡る平均値をθに対してプロットし、さらに、X線相対強度平均値(φ=−180〜180°)のθ=0°〜90°の積分値を100%としたときに、θ=10°〜30°の範囲に入る比率(%)を指数とした。
さらに、上記熱延板より引張試験片を採取して引張強さを測定した。なお、試験方法はJISに則り、試験片は長軸の向きをRD方向(圧延方向)に採取した。
なお、本実施例では、引張強さが600MPa以上を合格として評価した。
以上の評価結果について、表2に示す。
Figure 0005668712
表2に示すNo.1、3、5、6、7、12、13が本発明例、No.2、4、8、9、10、11、14、15、16、17は指数が本発明範囲をはずれている比較例である。本発明範囲からはずれる数値にアンダーラインを付している。
No.1とNo.2は,素材No.1の板であり、No.1は指数が57%と本発明範囲を満たしており、No.2よりも高い衝撃値を示している。No.2は、No.1と同じ加熱温度であるが、焼鈍温度が本発明範囲を外れているために再結晶が生じてしまい、特定の結晶方位が支配的となり、結果、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。
同様に、No.3とNo.4は、素材No.2の板であり、No.3は指数が53%と本発明範囲を満たしており、No.4よりも高い衝撃値を示している。No.4は、No.3と同じ加熱温度であるが、焼鈍温度が本発明範囲を外れているために再結晶が生じてしまい、特定の結晶方位が支配的となり、結果、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。
No.5〜11は、素材No.3の板であり、No.5〜7が本発明範囲の指数を満たしており、No.8〜11よりも高い衝撃値を示している。No.8および9は、No.5および6と其々同じ加熱温度であるが、焼鈍温度が本発明範囲を外れているために再結晶が生じてしまい、特定の結晶方位が支配的となり、結果、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。また、No.10および11は、加熱温度が本発明範囲を外れているためにβ相の比率が増加してT−textureが発達してしまい、結果、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。
No.12〜17は、素材No.4の板であり、No.12、13が本発明範囲の指数を満たしており、No.14〜17よりも高い衝撃値を示している。No.14は焼鈍温度が、No.15〜17は加熱温度が本発明範囲を外れているために指数が低下し、結果、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。
No.18〜24は、素材No.4を用いて、焼鈍条件を変化させたものである。
No.18〜20は、本発明の焼鈍条件範囲を満たしており、No.21から24よりも高い衝撃値を有している。No.21は焼鈍時間が、No.22〜24は焼鈍温度が条件範囲から外れているために再結晶が生じてしまい、特定の結晶方位が支配的となり、結果、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。
また、No.25、26は、素材No.4を用いて、スラブ厚を変えることで熱間圧延時の圧下率を変化させたものである。No.25は、圧下率95%以上を満たしており、高い衝撃値を示している。一方、No.26は、圧下率が条件範囲から外れているために、c軸の集積が不十分であったため指数が低下し、耐衝撃特性が劣化したと考えられる。
No.27は素材成分のうち酸素が本発明範囲の下限を下回っており、充分高い衝撃値を有しているが、強度が577MPaと600MPa未満であった。
No.28は、素材成分のうち酸素が本発明範囲の上限を上回っており、高い強度を得ることはできたが、衝撃値が20J/cm以下と低くなってしまった。
なお、上記、表1に記載のNo.1〜No.2の熱延板を圧下率75%で、No.3〜No.23の熱延板を圧下率60%で、冷間圧延を行ったところ、本発明になる熱延板において、コイルの破断は発生しなかった。つまり、本発明を適用し、板面方向に進展するき裂に対する耐衝撃性を向上させることにより冷間加工する場合に発生する破断を避けることができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、O:0.20%以上0.40%未満、Fe:0.10%以上0.40%未満、N:0.010%未満を含有し、残部チタン及び不可避的不純物からなり、
    集合組織において、六方晶構造を有するα相の(0001)面の法線方向であるc軸の分布をX線にて測定した場合に、前記c軸が、板面に垂直な方位に対して10°以上30°以下に傾斜した範囲に50%以上存在することを特徴とする耐衝撃性に優れた高強度純チタン板。
  2. 請求項1に記載の化学成分を有する純チタン板において、加熱温度を840℃以上920℃未満として一方向に圧下率95%以上の熱間圧延を行った後、焼鈍を行わないか、あるいは650℃以下で3分以下の焼鈍を行うことを特徴とする耐衝撃性に優れた高強度純チタン板の製造方法。
JP2012048282A 2012-03-05 2012-03-05 耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。 Active JP5668712B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012048282A JP5668712B2 (ja) 2012-03-05 2012-03-05 耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012048282A JP5668712B2 (ja) 2012-03-05 2012-03-05 耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013181246A JP2013181246A (ja) 2013-09-12
JP5668712B2 true JP5668712B2 (ja) 2015-02-12

Family

ID=49272118

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012048282A Active JP5668712B2 (ja) 2012-03-05 2012-03-05 耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5668712B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5973975B2 (ja) 2013-09-24 2016-08-23 株式会社神戸製鋼所 チタン板
JP6356084B2 (ja) 2015-03-25 2018-07-11 株式会社神戸製鋼所 冷間圧延用圧延板の製造方法及び純チタン板の製造方法
WO2023084746A1 (ja) * 2021-11-12 2023-05-19 日本製鉄株式会社 チタン板

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH07216522A (ja) * 1994-02-04 1995-08-15 Nippon Steel Corp 表面性状の優れたチタン板の製造方法
JP3303534B2 (ja) * 1994-07-19 2002-07-22 日本鋼管株式会社 工業用純チタンおよびその製造方法
JP4605514B2 (ja) * 2008-03-25 2011-01-05 住友金属工業株式会社 チタン板ならびにチタン板製造方法
JP5161059B2 (ja) * 2008-12-25 2013-03-13 株式会社神戸製鋼所 高強度で深絞り性に優れたチタン合金板およびチタン合金板の製造方法
JP5491882B2 (ja) * 2010-01-27 2014-05-14 株式会社神戸製鋼所 冷間圧延性に優れた高強度チタン板

Also Published As

Publication number Publication date
JP2013181246A (ja) 2013-09-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101905784B1 (ko) 냉간에서의 코일 취급성이 우수한 고강도 α+β형 티타늄 합금 열연판 및 그 제조 방법
US9624566B2 (en) Alpha and beta titanium alloy sheet excellent in cold rollability and cold handling property and process for producing the same
KR20100090302A (ko) 티탄판 및 티탄판 제조 방법
EP2615186A1 (en) Titanium material
WO2020075667A1 (ja) α+β型チタン合金線材及びα+β型チタン合金線材の製造方法
JP5005889B2 (ja) 高強度低ヤング率チタン合金とその製造方法
WO2014148211A1 (ja) チタン板
JP6187678B2 (ja) 高強度・高ヤング率を有するα+β型チタン合金冷延焼鈍板およびその製造方法
US10760152B2 (en) Titanium alloy having high strength, high young's modulus, excellent fatigue properties, and excellent impact toughness
JP2008127633A (ja) 曲げ性および張り出し性にすぐれたチタン合金板およびその製造方法
JP5201202B2 (ja) ゴルフクラブフェース用チタン合金
JP6844706B2 (ja) チタン板
JP5668712B2 (ja) 耐衝撃性に優れた硬質純チタン板及びその製造方法。
WO2013125038A1 (ja) ゴルフクラブフェース用チタン合金
JP6432328B2 (ja) 高強度チタン板およびその製造方法
WO2013125039A1 (ja) ゴルフクラブフェース用チタン合金
JP2019157250A (ja) チタン合金板およびゴルフクラブヘッド
JP5408525B2 (ja) チタン合金、チタン合金部材、及びチタン合金部材製造方法
JP5660061B2 (ja) 冷延性および冷間での取り扱い性に優れた耐熱チタン合金冷間圧延用素材及びその製造方法
JP5874707B2 (ja) 高強度、高ヤング率を有し疲労特性、衝撃靭性に優れるチタン合金
JP6645381B2 (ja) 耐衝撃性に優れたチタン板及びその製造方法
TWI450979B (zh) The golf club face is made of titanium alloy (2)
JP2005154850A (ja) 高強度β型チタン合金
TWI796118B (zh) 鈦合金板及鈦合金捲材暨鈦合金板之製造方法及鈦合金捲材之製造方法
JP5119488B2 (ja) ゴルフクラブフェース用チタン合金

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140212

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20141111

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141118

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141201

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 5668712

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350