JP6645381B2 - 耐衝撃性に優れたチタン板及びその製造方法 - Google Patents

耐衝撃性に優れたチタン板及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、耐衝撃性に優れたチタン板及びその製造方法に関する。
自動車のドア、可動式防護壁、楯、ヘルメットなど、重要箇所や人体を防護する用途に適用される素材には、機動性や運動性能を高めるために軽量化が求められている。例えば、チタン板は、比較的軽量で優れた耐衝撃性を有することから、このような用途の素材として好適に用いられている。外部からの衝撃に対して、そのエネルギーの吸収能、つまり耐衝撃性を高めることにより、使用されるチタン板の厚さを減じることができ、より軽量化を図ることが可能になっている。なお、本明細書における耐衝撃性とは、チタン板に対して高速の飛翔体が衝突した場合に、当該飛翔体を貫通させない特性をいう。高速の飛翔体の衝突とは、例えば、音速以上の速度で金属の塊等がチタン板に衝突する場合を例示できる。
耐衝撃性に優れたチタン板には、衝突した飛翔体を貫通させないほどの高い硬度が求められ、また、衝突時の飛翔体による衝撃エネルギーを吸収するために適度な変形能を有することが求められる。高い硬度と高い変形能とは互いに相反する特性であるため、従来、これらの特性の両立を図るための発明がなされている。
特許文献1には、O、N、Cの合計が0.04〜0.27質量%であり、Feが0.1質量%以下であり、残部がTi及び不可避な不純物よりなり、且つ加工により硬化させることにより断面部のビッカース硬さが所定の不等式を満たすようにした耐衝撃特性に優れたチタンが記載されている。
また、特許文献2には、ビッカース硬さが125〜220で、かつ板面上の六方晶(0002)面正極点図にて指数αが0.4〜1.0である耐衝撃特性に優れたチタン板が記載されている。ここで、指数αは、板面方向から測定した六方晶(0002)面の正極点図において、強度を15等分して作成した下から4番目の強度等高線にて、最終圧延方向軸(RD軸)との2ヶ所の交点間距離(A)とその直角方向軸(TD軸)との2ヶ所の交点間距離(B)の小さい方を大きい方で除した値(A/B或いはB/A)とされている。
更に、特許文献3には、質量%で、Si:0.2%以上0.5%未満、Fe:0.10%以上0.40%未満、O:0.01%以上0.10%未満を含み、残部がチタン及び不可避不純物からなり、α相の(0002)面方位の分布を圧延方向〜板垂直方向の断面で示した場合に、その分布の最大値が、板垂直方向から圧延方向に10°以上20°未満の範囲に傾斜している冷延性および冷間での取り扱い性に優れた耐熱チタン合金冷間圧延用素材が記載されている。
特許文献1に記載されたチタンは、ビッカース硬度が150Hv以上を示しており、高い硬度を有しているものの、耐衝撃性のもう一つのファクターである変形能については何ら検討されていない。
特許文献2に記載されたチタンは、ビッカース硬度が120Hv以上を示しており、高い硬度を有しているものの、特許文献1と同様に、耐衝撃性のもう一つのファクターである変形能については何ら検討されていない。
特許文献3に記載されたチタン合金は、主に冷延時にき裂が板幅方向に進展して板の破断を招きやすくなるという課題に対して、α相の(0002)面方位の分布を所定の方向に傾斜させることで課題解決を図ったものであり、高速の飛翔体に対する耐衝撃性とは異なる特性を目指したチタン合金である。従って、特許文献3においては、チタン合金の硬度を高くすることについては何ら検討されておらず、適度な変形能を持たせることについても検討されていない。また、特許文献3のチタン合金にはSiが含まれており、シリサイドが形成される場合がある。シリサイドのような介在物の存在は、高速の飛翔体による衝撃に対して変形能を低下させる要因になり、高速の飛翔体に対する耐衝撃性を阻害することになる。
特開2001−262257号公報 特開2003−147462号公報 特開2013−177651号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、特に高速で衝突する飛翔体に対する耐衝撃性に優れたチタン板及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、チタン板面への高速の衝撃に対して、耐衝撃性に優れたチタン板およびその製造方法について鋭意研究を重ねた。その結果、高速の衝撃に対して、チタン板面の変形抵抗に相当するビッカース硬さや、高速の衝撃に追随しながら変形し且つ割れが生じないような結晶粒径及び化学成分を、それぞれ好適な範囲に制御することで、従来技術にない高い耐衝撃性が得られることを見出した。また、チタンα相の結晶方位分布(集合組織)を制御にすることで、更に優れた高い耐衝撃性が得られることを見出した。本発明の要旨は以下の通りである。
[1] O、N、Cの合計量が0.140〜0.260質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなり、
α相の平均結晶粒径が150μm以上、かつ前記α相の平均結晶粒径が板厚の10%以下であり、
ビッカース硬さ(HV)が130〜190であることを特徴とする耐衝撃性に優れたチタン板。
[2] 電子線後方散乱回折法(EBSD法)にて測定した結晶方位分布にて板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度が5.00以下であることを特徴とする[1]に記載の耐衝撃性に優れたチタン板。
[3] 板厚が2.0〜6.0mmであることを特徴とする[1]または[2]に記載の耐衝撃性に優れたチタン板。
[4] O、N、Cの合計量が0.140〜0.260質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなるチタンに対して熱間圧延を施し、
次いで、650℃〜850℃で24時間以上保持、700℃〜850℃で8時間以上保持、または740℃〜850℃で4時間以上保持、のいずれかの条件で熱処理を施すことを特徴とする[1]または[3]に記載のチタン板の製造方法。
[5] O、N、Cの合計量が0.140〜0.260質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなるチタンに対して熱間圧延を施し、
次いで、β変態点を超える温度まで加熱してから0.5℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、650℃〜850℃で24時間以上保持、700℃〜850℃で8時間以上保持、または740℃〜850℃で4時間以上保持、のいずれかの条件で熱処理を施すことを特徴とする[2]または[3]に記載のチタン板の製造方法。
[6] 前記熱間圧延と前記熱処理との間に、冷間圧延を行うことを特徴とする[4]または[5]に記載のチタン板の製造方法。
本発明によれば、耐衝撃性に優れたチタン板及びその製造方法を提供できる。
チタン板のL断面のミクロ組織の例を示す写真であって、(a)は、α相の平均結晶粒径が20〜60μm程度の従来材の写真であり、(b)及び(c)はα相の平均結晶粒径が150μm以上の本発明材の写真である。 電子線後方散乱回折法(EBSD法)により得られたチタン板のα相hcp(0001)面の極点図を示す図である。
高速で衝突する飛翔体に対してチタン板の耐衝撃性を向上させるために本発明者らが鋭意検討したところ、チタン板面の変形抵抗に相当するビッカース硬さや、平均結晶粒径及び化学成分を、それぞれ好適な範囲に制御することで、耐衝撃性を向上できることを見出した。また、チタンα相の結晶方位分布(集合組織)を制御にすることで、耐衝撃性を更に向上できることを見出した。
チタン板のビッカース硬さが低すぎると、衝撃に対する変形抵抗が小さくなり、変形部位が局在化して飛翔体がチタン板を貫通してしまう。置換型元素であるAl,V,Fe,Moをチタンに添加することでビッカース硬さを高めることができるが、変形に寄与する双晶変形が著しく抑制されてしまうために、高速の飛翔体が衝突した際の変形に追随できず、塑性変形がほとんど起きずに、チタン板が破損したり、割れが生じたりする。一方、侵入型元素であるO,C,Nによりビッカース硬さを高めることができるが、上記の置換型元素同様に双晶変形が抑制されてしまう。
一方、α相の平均結晶粒径を150μm以上とし、且つ平均結晶粒径を板厚の10%以下にすることで、侵入型元素であるO,C,Nの添加によってビッカース硬さをある範囲まで高めても、高速の衝撃に対して双晶変形を抑制することなく、且つ結晶粒径粗大化による変形の局在化(皺など)が耐衝撃性に影響を及ぼさない程度に留めることができることを見出した。
さらに、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍を経て製造されたチタン板のα相(hcp)は、hcp結晶構造からくる変形方向の制約から、必ず発達した集合組織が形成される。集合組織は、hcpのc軸の集積方向によって分類される。具体的には、工業用純チタン板に代表される、圧延幅方向にc軸が約35°傾いた方向に集積したSplit−TD−Texture、クロス圧延によって形成され、板面方向にc軸が集積したB−Texture,圧延されたβ相から変態したα相によって形成される圧延幅方向に集積したT−Texture、などがあげられる。特許文献2においては、チタン板面への衝撃に対して変形が局在化させないために、板面内で異方性がないB−Textureが好ましいとされていたが、高速の衝撃に対しては、集合組織が発達していないランダムな方が、変形が局在化し難くなり、特に高速の飛翔体に対する耐衝撃性では優位になることを見出した。これは、高速の衝撃は強力なせん断力が板厚の内部でも作用するとともにチタン板の温度上昇もあり、一定方向の集合組織を成していると特定の方向で変形双晶が起き難くなるため、変形が追随できなくなり、変形の局在化を招いてしまった結果だと考えられる。
以下、本実施形態の耐衝撃性に優れたチタン板について説明する。
本実施形態の優れたチタン板は、O、N、Cの合計量が0.140〜0.260質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなり、α相の平均結晶粒径が150μm以上、かつ前記α相の平均結晶粒径が板厚の10%以下であり、ビッカース硬さ(HV)が130〜190であることを特徴とする。
また、電子線後方散乱回折法(EBSD法)にて測定した結晶方位分布にて板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度が5.00以下であってもよい。
[化学成分]
ビッカース硬さ(HV)を130〜190の範囲に調整する上で、チタン板に含まれるO(酸素),N(窒素),C(炭素)の合計量が0.140質量%未満では、平均結晶粒径を150μm以上に粗大化させた際に、十分な硬さが得られない。また、O,N,Cの合計量が0.260質量%を超えると、平均結晶粒径を粗大化したとしても、延性及び靭性が低下するために割れが生じ易くなる場合がある。従って、O,N,Cの合計量は0.140〜0.260質量%の範囲が好ましく、0.140〜0.0240%の範囲がより好ましく、0.140〜0.0190%の範囲が更に好ましい。
また、平均結晶粒径の粗大化を抑制しないためには、Feを0.020〜0.080質量%含有することが好ましい。更に、Fe、Cr、Niを合計で0.020〜0.080質量%含有してもよい。
上記元素以外の残部はTi及び不純物である。
また、置換型元素であるAl、V、Fe、Moをチタン板に添加することでビッカース硬さを高めることができるが、変形に寄与する双晶変形が著しく抑制されてしまうために、高速の変形に追随できず、塑性変形をほとんどせずに、破損したり、割れが生じたりする。一方、Feは上述のように所定量を添加することで平均結晶粒径の粗大化が抑制されない。よって本実施形態のチタン板には、Fe以外の置換型元素(Al、V、Mo)は添加しない方がよい。
また、耐衝撃性を損なわない限り、耐食性を高めるためにPd、Ruなどの白金族金属元素の1種または2種以上を0.25質量%以下の範囲で含んでもよい。耐食性の効果を発揮させるためには、0.01質量%以上添加するとよい。白金族元素が0.25質量%以下であれば、耐衝撃性が低下することがない。
[ビッカース硬さと平均結晶粒径]
ビッカース硬さ(HV)は、130〜190であることが好ましい。ビッカース硬さ(HV)が130未満と低すぎると、衝撃に対する変形抵抗が小さくなり、高速の飛翔体が衝突した際の変形部位が局在化し、エネルギー吸収が十分になされずに飛翔体がチタン板を貫通してしまう。また、ビッカース硬さ(HV)が190を超えると、チタン板の延性が低下して、衝撃を受けた際に衝撃を受けた面の反対側の裏面に割れが生じやすくなり、その割れを起点にして衝突した飛翔体が貫通する場合がある。よって、ビッカース硬さ(HV)は130〜190の範囲が好ましい。
また、上述のように、侵入型元素であるO(酸素),C(炭素),N(窒素)を添加することによりビッカース硬さを高めることができるが、その一方で、上記の置換型元素と同様に双晶変形を抑制してしまう。そこで、本実施形態のチタン板では、α相の平均結晶粒径を150μm以上とし、更には平均結晶粒径を板厚の10%以下にすることで、侵入型元素であるO,C,Nを添加してビッカース硬さ(HV)を130〜190に高め、かつ、高速の衝撃に対して双晶変形を抑制することを防止でき、更には、平均結晶粒径の粗大化による変形の局在化(皺など)を耐衝撃性に影響が及ぼさない程度に留めることができる。
平均結晶粒径が150μm未満では、ビッカース硬さ(HV)を130〜190まで高めると、双晶変形が著しく抑制されてしまう。また、平均結晶粒径が板厚の10%を超えると、衝撃に対して変形時に大きな皺が発生し、その皺を起点に変形が局在化してしまう場合がある。
また、結晶組織中に結晶粒径900μmを超える結晶粒が存在すると、耐衝撃性が低下するおそれがあるので、結晶組織中に結晶粒径900μmを超える結晶粒が存在しないことが望ましい。
図1に、チタン板のL断面のミクロ組織の例を示す。図1(a)は、α相の平均結晶粒径が20〜60μm程度の従来材である。この従来材に対して、本実施形態のチタン板は、図1(b)または図1(c)に示すように、150μm以上の大きな平均結晶粒を有するものとなる。図1(b)に示すα相の平均結晶粒径は198μmであり、図1(c)に示すα相の平均粒径は321μmである。
本実施形態のチタン板は、化学成分、ビッカース硬さ及びα相の平均結晶粒径を所定の範囲にすることで優れた耐衝撃性を発揮できるが、更に、以下に説明するように集合組織を制御することで、耐衝撃性をより高めることができる。
[α相(hcp)の結晶方位分布]
高速の飛翔体の衝突による衝撃に対しては、集合組織が発達していないランダムな方が、変形が局在化し難くい。その指標として、電子線後方散乱回折法(EBSD法)にて測定した結晶方位分布にて板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度を用いる。本実施ではこのピーク強度を5.00以下にすることで、変形の局在化が抑制されて、耐衝撃性を高めることができる。ピーク強度は、より好ましくは、さらにランダムな値である3.00以下である。c軸が、工業用純チタン板に代表される圧延幅方向に約35°傾いた方向に集積したSplit−TD−Texture、クロス圧延によって形成される板面方向に集積したB−Texture,圧延されたβ相から変態したα相によって形成される圧延幅方向に集積したT−Textureなどでは、上記のピーク強度が7〜10以上と高いため、耐衝撃性をより高めることができなくなる。
図2に、チタン板の電子線後方散乱回折法(EBSD法)により得られた極点図とそのピーク強度を示す。図2に示す極点図は、電子線後方散乱回折法(EBSD法)にて測定した結晶方位分布にて、板面方向(ND)から見たα相hcp(0001)面の極点図である。図2の(a)及び図2(b)は、熱間圧延などの圧延後にβ変態点未満の温度で通常の焼鈍を施した従来例であり、(0001)面のピーク強度は5.00を超えて7.00以上になっている。一方、図2(c)〜図(e)は、(0001)面のピーク強度が5.00以下の本発明例であり、図2(a)や図2(b)と比較して極点図からも際立って集積度が高い特定の方向がみられず、α相の結晶方位がランダムなことがわかる。なお、図2(c)〜図2(e)に示したチタン板は、β変態点を超える温度から空冷以上の冷却速度で冷却し、600〜850℃で1時間以上保持したチタン板である。
[板厚]
本実施形態のチタン板は、衝撃を板面で受けた際に、変形によって衝撃エネルギーを吸収することから、容易に変形できる板厚として2.0〜6.0mmが好適である。
[製造方法]
次に、本実施形態のチタン板の製造方法について説明する。
上記の化学成分からなるチタンを熱間圧延し、必要に応じて冷間圧延し、その後、β変態点未満の温度で焼鈍することにより、ビッカース硬さ(HV)が130〜190であり、α相の平均結晶粒径が150μm以上であるチタン板を製造できる。
焼鈍は、α相の平均結晶粒径が150μm以上に粗大化するまで行う。焼鈍条件は、α相の平均結晶粒径が150μm以上に粗大化する条件であれば特に制限はないが、例えば、650℃〜850℃で24時間以上保持、700℃〜850℃で8時間以上保持、または740℃〜850℃で4時間以上保持、のいずれかの条件で行うとよい。
上記のいずれかの条件における焼鈍温度が低いと、α相の平均結晶粒径が150μm未満になるので好ましくない。また、焼鈍温度が850℃を超えると、α相の平均結晶粒径が過剰に粗大化して板厚の1/10超になるか、あるいは焼鈍中にβ相が析出して部分的に粒成長が抑制されてしまい、所定の結晶粒径まで粒成長しない場合があるので好ましくない。また、上記のいずれかの条件における焼鈍時間が不足すると、α相の平均結晶粒径が150μm未満になるので好ましくない。また、焼鈍時間が長すぎるとα相の平均結晶粒径が板厚の1/10超になる場合があるので、平均結晶粒径が板厚の1/10以下になる時間に調整するとよい。
また、上記の化学成分からなるチタンを熱間圧延し、必要に応じて冷間圧延し、次いで、β変態点を超える温度に加熱(β域熱処理)してから所定の冷却速度で冷却し、その後、β変態点未満の温度で焼鈍することにより、ビッカース硬さ(HV)が130〜190であり、α相の平均結晶粒径が150μm以上であり、電子線後方散乱回折法(EBSD法)にて測定した結晶方位分布にて板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度が5.00以下であるチタン板を製造できる。
ピーク強度を5.00以下にするために、β変態点を超える温度まで加熱(β域熱処理)することで、チタン板の金属組織を一旦β相単相に変態させて、圧延等の前工程で生じていたα相の集合組織を消失させる。その後、所定の冷却速度で冷却することで、組織中に再結晶核を導入させる。そして、焼鈍を行うことで導入した再結晶核を結晶粒成長させて、所定の結晶粒径まで成長させる。
チタン板をβ変態点を超える温度まで加熱することで、それ以前の集合組織を有するα相を残存させることなく、(0001)面からのピーク強度を十分に低下させることができる。冷却速度が遅いと、導入される再結晶核が少なくなり、極度に大きな結晶粒が混在してしまう。β変態点を超える温度に加熱して冷却する際の冷却速度は、空冷では0.5℃/s以上が好ましく、水冷では約50〜100℃/sの範囲が好ましい。冷却速度が0.5℃/s未満になると、α相の結晶が異常成長し、結晶粒径900μmを超える結晶粒が形成されて、耐衝撃性が低下する場合があるので好ましくない。また、α相の平均結晶粒径が板厚の10%を超えるおそれもあるので好ましくない。加熱炉の内部で冷却するいわゆる炉冷は、冷却速度が0.5℃/s未満になる場合があるので、加熱炉から取り出して空冷または水冷することが好ましい。
冷却後の焼鈍は、α相の平均結晶粒径が150μm以上に粗大化するまで行う。焼鈍条件は、α相の平均結晶粒径が150μm以上に粗大化する条件であれば特に制限はないが、例えば、650℃〜850℃で24時間以上保持、700℃〜850℃で8時間以上保持、または740℃〜850℃で4時間以上保持、のいずれかの条件で行うとよい。上記のいずれかの条件における焼鈍温度が低いと、α相の平均結晶粒径が150μm未満になるか、(0001)面からのピーク強度が高くなってしまうので好ましくない。また、焼鈍温度が850℃を超えると、α相の平均結晶粒径が過剰に粗大化して板厚の1/10超になるか、あるいは焼鈍中にβ相が析出して部分的に粒成長が抑制されてしまい、所定の結晶粒径まで粒成長しない場合があるので好ましくない。また、上記のいずれかの条件における焼鈍時間が不足すると、α相の平均結晶粒径が150μm未満になるので好ましくない。焼鈍時間が長すぎるとα相の平均結晶粒径が板厚の1/10超になる場合があるので、平均結晶粒径が板厚の1/10以下になる時間に調整するとよい。
また、上記の熱処理は、チタン板の酸化を防止するために真空雰囲気または不活性ガス雰囲気(アルゴンやヘリウム)での熱処理が適している。
なお、チタンスラブをβ変態点超の温度に加熱し、β変態点超の温度で熱間圧延を行い、その後、冷却して従来の条件で焼鈍しただけでは、(0001)面からのピーク強度を小さくすることができない。β変態点超の温度で熱間圧延を行った場合には、bccからなるチタンのβ相が熱間圧延されることになる。熱間圧延されたβ相は圧下率が高くなるほど強い圧延集合組織を形成するが、このβ相の圧延集合組織からβ変態点未満の温度まで空冷以上の冷却速度で冷却されると、hcpからなるα相に変態する。その後、従来の焼鈍条件にて結晶粒を成長させたとしても、いわゆるT−Textureと呼ばれる集合組織が形成される。このT−Textureはhcpのc軸が圧延幅方向(TD)に配向しており、EBSDで測定し解析した板面方向(ND)の(0001)面のピーク強度が7.00以上となり、5.00を超えてしまう。つまり、α相の結晶方位をランダム化することができず、より優れた耐衝撃性が得られなくなる。
表1に示す化学組成のチタンを真空アーク溶解(VAR:Vacuum Arc Remelting)法によりチタン製インゴットを作製し、これらを熱間鍛造した。その後、以下に示す製造条件P1〜10でチタン板を作製した。熱間圧延後の板厚は6mmとした。表2及び表3に製造条件の詳細を示す。また、一部のチタン板については熱間圧延と焼鈍との間で冷間圧延を施して板厚2.0〜6.0mmに調整した。このようにして、A1〜A46及びB1〜B53のチタン板を製造した。
[製造条件]
P1:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒冷間圧延⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P2:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P3:熱間圧延(加熱温度:β変態点超)⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P4:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒β域熱処理(β変態点超の温度に加熱後、水冷(冷却速度50℃/s以上))⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P5:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒β域熱処理(β変態点超の温度に加熱後、空冷(冷却速度0.5℃/s以上))⇒焼鈍(焼鈍温度:がβ変態点未満)
P6:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒β域熱処理(β変態点超の温度に加熱後、炉冷(冷却速度0.5℃/s未満))⇒焼鈍(焼鈍温度:がβ変態点未満)
P7:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒冷間圧延⇒β域熱処理(β変態点超の温度に加熱後、水冷(冷却速度50℃/s以上))⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P8:熱間圧延(加熱温度:β変態点未満)⇒冷間圧延⇒β域熱処理2(β変態点超の温度に加熱後、空冷(冷却速度0.5℃/s以上))⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P9:熱間圧延(加熱温度:β変態点超)⇒β域熱処理(β変態点超の温度に加熱後、水冷(冷却速度50℃/s以上))⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
P10:熱間圧延(加熱温度:β変態点超)⇒β域熱処理(β変態点超の温度に加熱後、空冷(冷却速度0.5℃/s以上))⇒焼鈍(焼鈍温度:β変態点未満)
上記製造条件のうち、P1〜P3はβ域熱処理を含まない条件であり、チタン板A1〜A46の製造条件である。また、P4〜P10はβ域熱処理を含む条件であり、チタン板B1〜B53の製造条件である。
表1の化学組成記号M1〜M12では、β変態点が892〜932℃であることから、製造条件P4〜P10におけるβ域熱処理は、β変態点を超える980℃で30分保持した後、各々、水冷、空冷、炉冷で、室温まで冷却した。なお、熱間圧延と冷間圧延の他に、研磨や酸洗で、チタン板の厚さ(板厚)を調整した。
以下、チタン板A1〜A46及びB1〜B53の評価方法について述べる。
(1)ビッカース硬さ(HV)
埋め込み研磨したチタン板の板面にて、荷重5kgで5点を測定した平均値を求めた。表2、3におけるビッカース硬さの硬さ記号はHVである。
(2)α相の平均結晶粒径
熱間圧延方向をRD(L方向)とおき、チタン板のL断面にて、板厚の1/4、1/2、3/4の位置で、切断法で測定し、その平均値を求めた。
(3)α相(hcp)の板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度の決定方法
熱間圧延方向をRD(L方向)とおき、チタン板のL断面にて、電子線後方散乱回折法(EBSD法)で結晶方位を測定した。その測定データから、EBSDデータ解析ソフトTSL OIM Analysis ver.7.2を用いた調和関数を使用した解析から、板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度を求めた。なお、結晶粒が100個以上含まれるEBSDの測定データを用いた。
(4)耐衝撃性
衝撃物として質量9.8gの球状の鉛を使用して、種々速度でチタン板の表面にぶつけて、チタン板を衝撃物が貫通しない限界の速度を求めた。化学成分が、質量%でO:0.135%、N:0.003%、C:0.003%、Fe:0.051%(表1の化学組成記号M2)のチタン板を熱間圧延および冷間圧延を実施した後、真空中で650℃4時間の焼鈍を施した平均結晶粒径27μmの試料No.A3(表2参照)を基準として、試料No.A3の限界速度V0に対する種々チタン板における限界速度VTの比、VT/V0、を二乗した、(VT/V0)を、“衝撃物が貫通しない限界エネルギーの比率”とした。ここでエネルギーの比率と称しているのは、衝撃物が同一質量の場合には速度の二乗にて、衝撃物のエネルギーを相対的に比較できるからである。
[効果の基準]
チタン板A1〜A43は、上述の限界エネルギーの比率が1.10以上を合格とした。限界エネルギーの比率が1.10以上とは、基準となるNo.A3に対して10%以上も耐衝撃特性が上位にあることを意味している。
また、チタン板B1〜B53についても、限界エネルギーの比率が1.10以上を合格とした。なお、チタン板B1〜B53については、α相の結晶方位をピーク強度5.00以下までランダム化しているので、チタン板B1〜B53のうち本発明の条件を満足するものは、限界エネルギーの比率が1.20以上になることが期待される。
結果を表2及び表3に示す。
表2及び表3に示すように、本発明の範囲にあるチタン板は、限界エネルギーの比率が比較例に比べて高く、耐衝撃性に優れていることがわかる。また、表3に示す本発明例のチタン板は、板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度が5.00以下なので、限界エネルギーの比率が1.20以上となり、耐衝撃性がより向上している。
また、表2に示すように、チタン板A1、A2、A33、A34、A37、A38は、チタンの化学成分が発明範囲から外れたため、限界エネルギーの比率が低下した。
チタン板A3、A5〜A7、A13、A14、A16、A18、A19、A21、A23〜25、A31、A33、A35、A39、A41、A43、A45は、焼鈍条件が本発明の範囲から外れたため、平均結晶粒径が150μm未満になり、限界エネルギーの比率が低下した。
チタン板A12、A30は、平均結晶粒径に対して板厚が薄すぎたため、α相の平均結晶粒径が板厚の10%超となり、限界エネルギーの比率が低下した。
また、表3に示すように、チタン板B1〜B3、B40、B43は、チタンの化学成分が発明範囲から外れたため、限界エネルギーの比率が低下した。
チタン板B7、B8、B28は、焼鈍条件が本発明の範囲から外れたため、平均結晶粒径が150μm未満になり、限界エネルギーの比率が低下した。
チタン板B14、B34は、平均結晶粒径に対して板厚が薄すぎたため、α相の平均結晶粒径が板厚の10%超となり、限界エネルギーの比率が低下した。
チタン板B17、37は、β域熱処理後の冷却条件が炉冷であったので、平均結晶粒径が大きくなり、この粗大化した結晶粒径に対して板厚が薄すぎたため、α相の平均結晶粒径が板厚の10%超となり、限界エネルギーの比率が低下した。

Claims (6)

  1. O、N、Cの合計量が0.140〜0.260質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなり、
    α相の平均結晶粒径が150μm以上、かつ前記α相の平均結晶粒径が板厚の10%以下であり、
    ビッカース硬さ(HV)が130〜190であることを特徴とする耐衝撃性に優れたチタン板。
  2. 電子線後方散乱回折法(EBSD法)にて測定した結晶方位分布にて板面方向(ND)から見た(0001)面からのピーク強度が5.00以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐衝撃性に優れたチタン板。
  3. 板厚が2.0〜6.0mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の耐衝撃性に優れたチタン板。
  4. O、N、Cの合計量が0.140〜0.190質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなるチタンに対して熱間圧延を施し、
    次いで、650℃〜850℃で24時間以上保持、700℃〜850℃で8時間以上保持、または740℃〜850℃で4時間以上保持、のいずれかの条件で熱処理を施すことを特徴とする請求項1または請求項3に記載のチタン板の製造方法。
  5. O、N、Cの合計量が0.140〜0.190質量%であり、Feが0.020〜0.080質量%であり、残部がTi及び不純物よりなるチタンに対して熱間圧延を施し、
    次いで、β変態点を超える温度まで加熱してから0.5℃/秒以上の冷却速度で冷却した後、650℃〜850℃で24時間以上保持、700℃〜850℃で8時間以上保持、または740℃〜850℃で4時間以上保持、のいずれかの条件で熱処理を施すことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のチタン板の製造方法。
  6. 前記熱間圧延と前記熱処理との間に、冷間圧延を行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のチタン板の製造方法。
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