JP5667891B2 - 形状計測方法 - Google Patents

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Description

本発明は、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測する方法に関するものである。
従来、物体や人体等の計測対象物体の形状を非接触かつ3次元的に計測する方法として、位相シフト法を用いた方法がある。位相シフト法は、位相を変化させながら格子画像や干渉縞画像を1台の撮影装置で順次撮影し、これら位相を変化させた複数枚の格子画像や干渉縞画像に基づいて格子の位相分布を求めるものである。
これまでに、位相シフト法を用いた様々な方法が提案されてきた。例えば、特許文献1は、カメラを用いた形状計測装置において、カメラまたはプロジェクタのレンズ収差の影響を受けない高精度な形状計測を行うことを目的としており、格子が描かれた基準平板の画像からカメラまたはプロジェクタのレンズ中心座標を算出するのではなく、基準面に固定された2次元格子から、カメラの画素毎の視線が通る光路と、プロジェクタから投影される光の光路とをそれぞれ全て求めて、それら光路の交点として空間座標を算出する形状計測方法および装置について記載されている。
特許第2913021号公報
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、位相シフトを行うために格子基板を移動機構上に設けて格子基板を機械的に移動させるが、この移動機構は、例えばピエゾステージ等の非常に高価なものである。
また、格子の位相シフトを高速に行うことは困難であり、例えば高速で移動する物体の形状を計測することができない点に課題を残していた。
そこで、本発明の目的は、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測する方法を提供することにある。
発明者は、上記課題を解決する方途について鋭意検討した結果、5つの光源を等間隔かつ一列に並べ、該5つの光源を順次点灯させることにより、計測対象物体上に投影される格子の位相を高速にシフトできることを見出した。また、この5つの光源を用いて格子を位相シフトさせる場合には、その位相シフト量は、従来の位相シフト法のように2πを整数で割った値とはならずに上記5つの光源を通る直線からの距離に依存し、従来の位相シフト法において使用された空間座標と位相との関係式を用いることができないことが新たに分かった。そこで、発明者は鋭意検討した結果、空間座標と位相および位相シフト量との関係の定式化に成功し、本発明を完成させるに到った。
即ち、本発明の形状計測方法は、4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子が描かれた格子面を含む、前記格子投影用光源に平行に配置された格子プレートとを備える形状計測装置を用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら前記計測対象物体を撮影するステップと、前記撮影された画像に対して位相解析処理を施して、前記計測対象物体の形状を求めるステップとを含み、前記4つ以上の光源は前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、前記格子投影用光源を含み前記格子プレートに平行な光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、前記1次元格子の位相シフト量または位相に依存し、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、更に、前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向の前記4つ以上の光源間の間隔と、前記1次元格子の周期と、前記光源面と前記格子面との間の距離とに依存し、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離zは、以下の式(A)で与えられることを特徴とするものである。

ただし、l:前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向の前記4つ以上の光源間の間隔、d:前記光源面と前記格子面との間の距離、Ψ:前記位相シフト量、p:前記1次元格子の周期である。
また、本発明の形状計測方法は、4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子が描かれた格子面を含む、前記格子投影用光源に平行に配置された格子プレートとを備える形状計測装置を用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら前記計測対象物体を撮影するステップと、前記撮影された画像に対して位相解析処理を施して、前記計測対象物体の形状を求めるステップとを含み、前記4つ以上の光源は前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、前記格子投影用光源を含み前記格子プレートに平行な光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、前記1次元格子の位相シフト量または位相に依存し、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、更に、前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向の前記4つ以上の光源間の間隔と、前記1次元格子の周期と、前記光源面と前記格子面との間の距離とに依存し、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離zは、以下の式(B)で与えられることを特徴とするものである

ただし、d:前記光源面と前記格子面との間の距離、Φ:前記1次元格子の位相、p:前記1次元格子の周期、x:前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置を通り前記光源面に垂直かつ前記光源面の法線に平行な面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離、e:前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置を通り前記光源面に垂直な面から前記1次元格子を構成する直線間の中央位置までの最短距離である。
また、本発明の形状計測方法は、4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子を有する格子面を含む、前記格子投影用光源に平行に配置された格子プレートと、撮影手段であって、該撮影手段のレンズの中心が前記格子投影用光源を含み前記格子プレートに平行な光源面上に配置された撮影手段とを備える形状計測装置と、前記格子面に平行に配置された、基準面を含む基準平板とを用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記基準面に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、前記撮影手段により前記基準面を撮影するステップと、前記計測対象物体を前記格子プレートと前記基準平板との間に配置し、前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、前記撮影手段により前記計測対象物体を撮影するステップと、撮影された前記基準面の画像および前記計測対象物体の画像に対して位相解析処理を施して、前記計測対象物体の形状を求めるステップとを含み、前記4つ以上の光源は前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、投影された前記1次元格子の、前記計測対象物体上の所定の位置での位相と、前記レンズ中心と前記計測対象物体上の所定の位置とを通る直線と前記基準面との交点における位相とに依存し、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、更に、前記光源面と前記格子面との間の距離と、前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置から前記レンズの中心までの距離と、前記光源面と前記基準面との間の距離と、前記1次元格子の周期とに依存し、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離zは、以下の式(C)で与えられることを特徴とするものである。

ただし、d:前記光源面と前記格子面との間の距離、v:前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置から前記レンズの中心までの距離、z R :前記光源面と前記基準面との間の距離、p:前記1次元格子の周期、Φ S :投影された前記1次元格子の前記計測対象物体上の所定の位置での位相、Φ R :投影された前記1次元格子の、前記レンズ中心と前記計測対象物体上の所定の位置とを通る直線と前記基準面との交点における位相である。
また、本発明の形状計測方法において、前記位相解析処理は、全空間テーブル化手法に基づいて位相と空間座標とを関連づけるテーブルを予め画素毎に作成しておき、該テーブルを参照して、各画素の位相から空間座標を求めることにより行うことを特徴とするものである。
本発明によれば、4つ以上の光源を順次点灯させることにより位相シフトを高速に行うことができるため、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測することができる。
本発明による形状計測方法の原理を説明する図である。 本発明による別の形状計測方法の原理を説明する図である。 光ステッピング法における位相シフト量と輝度との関係を示す図である。 位相シフト量の余弦と高さとの関係を示す図である。 位相の正接と高さとの関係を示す図である。 計測対象物体上での位相と基準面上での位相との差と、高さとの関係を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明による計測対象物体の形状を計測する方法は、4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子が描かれた格子面を含む、格子投影用光源に平行に配置された格子プレートとを備える形状計測装置を用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、4つ以上の光源を順次点灯させて計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら計測対象物体を撮影するステップと、撮影された画像に対して位相解析処理を施して、計測対象物体の形状を求めるステップとを含む。ここで、4つ以上の光源は1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、格子投影用光源を含み格子プレートに平行な光源面からの距離は、1次元格子の位相シフト量に依存することを特徴とするものである。
以下、格子投影用光源を構成する光源の数が5つの場合を例に、本発明による形状計測方法の原理について説明するが、5つの光源の場合に限定されないことに注意する。
[形状計測原理]
(基準面を用いない場合)
図1は、本発明による形状計測方法に用いる形状計測装置を示す図である。この形状計測装置1は、等間隔かつ一列に並べられた5つの光源L−2、L−1、L、LおよびLからなる格子投影用光源11と、1次元格子が描かれた格子面12aを有する格子プレート12と、撮影手段13とを備える。
ここで、格子投影用光源11の5つの光源L−2、L−1、L、LおよびLにおける両端の光源間の中央位置(すなわち、Lの位置)を原点Oとし、5つの光源を通る方向にX軸を、該X軸に直交する方向に、互いに直交するY軸およびZ軸をとる(以下、LED面からZ軸方向の位置を「高さ」と称する)。計測対象物体21は、Z軸方向に配置される。
なお、原点Oの位置は、光源の数が5以外の場合にも上記と同様の方法、すなわち、4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置として規定される。
本発明においては、格子投影用光源11を構成する光源の数は、4以上であればよい。また、光源として線状の発光ダイオード(LED)を用いており、各LEDの線方向がY軸に対して平行となるように配置されている。この光源は、必ずしも線状のLEDである必要はなく、点光源でも良い。また、LEDチップの出力は小さいため、複数の点光源をY軸方向に並べて線状の光源にし、出力を増やすようにすることもできる。5つの光源間の間隔はlである。以下、5つの光源L−2、L−1、L、LおよびLを含み、z=0の面を「LED面」と呼ぶ。
格子プレート12の格子面12aに描かれた1次元格子は、等間隔かつY軸方向に平行に並んだ直線からなる。格子投影用光源11から照射された光が格子プレート12を通過することにより、格子面12a上に描かれた1次元格子が計測対象物体21上に投影されるように構成されている。1次元格子を構成する直線の間隔はpであり、LED面と格子面12aとの間隔はdである。また、1次元格子を構成する直線間の中央位置のうち、Z軸からの距離が最短なものを原点Eとし、また、格子面12aとZ軸との交点をCとする。
撮影手段13は、1次元格子が投影された計測対象物体21(および後述する基準面)を撮影する。撮影手段13としては、CCDカメラやCMOSカメラ等を使用することができる。
なお、光源と格子プレートとの間や、格子プレートと計測対象物体との間に、レンズ等の像の拡大や縮小を行う手段を配置することもできる。
以下の説明において、5つの光源L−2、L−1、L、LおよびLの明るさ分布は、観測範囲内において、Z=一定のXおよびY軸方向に対して均一で等しいと仮定する。なお、均一でない場合は、その分布を係数として、考慮すればよいが、ここでは取り扱いを簡単にするため、均一と仮定する。
今、光源Lのみを順次点灯し、1次元格子が計測対称物体21上に投影することを考える。このとき、Z=dにある1次元格子の透過率分布は余弦波状になっており、光源Lにより照射された1次元格子の影の輝度分布は、以下の式で表される。
(1)
ここで、Φは位相、aは振幅、bは背景輝度、xは格子面12aでのx座標、eは格子面12aの原点E(Φ=0)と点Cとの間の距離である。
まず、5つの光源のうち、中央のLの点灯により1次元格子が投影された計測対象物体21上の位置S(x,y,z)における輝度Iは、近似的に次式で表される。
(2)
ここで、任意の点の輝度は、光源からの距離の自乗に反比例することを考慮している。また、図1に示すように、計測対象物体21上の1点Sには、図1における格子面12a上の1次元格子のG点の影が投影されている。
このとき、幾何学的関係より、
(3)
の関係がある。
次に、光源をLからLに切り換えると、G点の影は、Z=zの(x,y)面では、A点に投影される。このとき、点Sには1次元格子のF点の影が投影されている。
光源Lによる位置S(x,y,z)における輝度Iは,次のようにして求められる。
すなわち、光源をLからLに切り替えたことにより、計測対象物体21に投影される1次元格子の位相(アンラッピングされた位相)は、以下の式(4)で与えられる量だけシフトする。
(4)
この位相シフト量Ψは、以下のようにして求められる。すなわち、図1におけるΔLGと△SAGとが相似であるため、
(5)
となる。また、△SALと△FGLとが相似であるため、
(6)
となる。式(5)および(6)から、
(7)
となる。また、式(4)および(7)から、
(8)
となる。こうして、光源をLからLに切り替えたときに、計測対象物体21に投影された1次元格子の位相シフト量Ψの値が求められた。この位相シフト量Ψは、zに依存することが分かる。
同様に、光源Lから光源Lに切り替えることにより、式(2)に比べて位相がnΨだけシフトするため、位置S(x,y,z)における輝度Iは、次式となる。
(9)
この式(9)において、
(10)
(11)
(12)
(8)
と置き直すと、
(13)
となる。
こうして、光源Lを点灯したときの、位置S(x,y,z)における輝度Iを求めることができた。
なお、計測対象物体21の反射率rを考慮する場合は、aおよびbに反射率rを掛ければよいが、ここでは説明を簡単化するために省略する。
(位相シフト量Ψと高さzとの関係)
次に、高さzを求めるために、高さzと位相シフト量Ψまたは位相Φとの関係を求める。位相シフト量Ψが求められると、式(8)から、
(14)
が得られ、高さzを求めることができる。この場合、等位相線は等高線となっている。
(位相Φと高さzとの関係)
また、式(12)から、
(15)
となり、位相Φが求められると、高さzが求められる。この場合、等位相線はxの関数となっており、等高線とはならない。
このように、位相シフト量Ψまたは位相Φを求めることができれば、式(14)または式(15)から、撮影手段13の位置に関係なしに高さzを求めることができる。この位相シフト量Ψおよび位相Φを求める方法については後述する。
また、xおよびy座標については、様々な方法、例えばフーリエ変換格子法により、X軸方向およびY軸方向の位相をそれぞれ求め、更に位相接続を行うことにより、各点におけるx座標およびy座標をそれぞれ得ることができる(例えば、特許第3281918号公報参照)。
なお、図1において、格子投影用光源11以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、格子投影用光源11をZ=0の面内において原点Oを中心にしてX軸に対して傾けて配置することができる。つまり、格子投影用光源11は、X軸に対して平行である必要はない。この場合、上記の説明における5つの光源間の間隔lとしては、X軸方向(すなわち、1次元格子を構成する直線に垂直な方向)の光源間の間隔(すなわち、5つの光源間の間隔のX軸方向の成分)を用いる。光源間の間隔を物理的に狭めることは困難であるが、上記のように格子投影用光源11をX軸に対して傾けることにより、X軸方向の光源間の間隔を容易に狭めることができるようになる。
また、図1において、格子投影用光源11以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、Z=0の面内において、格子投影用光源11を構成する光源L―2,L―1,L,L,Lの各々を、Y軸方向の任意の位置に配置することもできる。つまり、格子投影用光源11を構成する光源L―2,L―1,L,L,Lは、X軸方向に等間隔に並んでいればよい。
こうして、計測対象物体21上の点Sの座標x、yおよびzを求めることができ、計測対象物体21の形状を求めることができる。
(基準面を用いる場合)
次いで、本発明による別の形状計測方法について説明する。この形状計測方法は、4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子を有する格子面を含む、格子投影用光源に平行に配置された格子プレートと、撮影手段であって、該撮影手段のレンズの中心が格子投影用光源を含み格子プレートに平行な光源面上に配置された撮影手段とを備える形状計測装置と、格子面に平行に配置された、基準面を含む基準平板とを用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、4つ以上の光源を順次点灯させて基準面に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、撮影手段により基準面を撮影するステップと、計測対象物体を格子プレートと基準平板との間に配置し、4つ以上の光源を順次点灯させて計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、撮影手段により計測対象物体を撮影するステップと、撮影された基準面の画像および計測対象物体の画像に対して位相解析処理を施して、計測対象物体の形状を求めるステップとを含む。ここで、4つ以上の光源は1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、光源面からの距離は、投影された1次元格子の、所定の位置での位相と、レンズ中心と所定の位置とを通る直線と基準面との交点における位相とに依存することを特徴とするものである。
以下、格子投影用光源を構成する光源の数が5つの場合を例に、本発明による別の形状計測方法の原理について説明するが、この場合についても5つの光源の場合に限定されないことに注意する。
図2は、図1に示した形状計測装置1に、LED面から距離zだけ離れた位置に格子面12a(すなわちLED面)と平行な基準面14aを有する基準平板14を更に備える形状計測装置2である。ここで、撮影手段13のレンズの中心Vは、X=vの位置に配置されている。すなわち、原点Oからレンズの中心VまでのX軸方向の距離はvである。計測対象物体21は、格子プレート12と基準平板14との間に配置される。
この形状計測装置2を用いて、まず、この基準面14aに1次元格子を投影し、その位相Φ分布を記録し、次いで、基準面14aの前に計測対象物体21を配置し、該計測対象物体21上の点Sにおける、投影された1次元格子の位相Φを求める。これにより、撮影手段13の各画素において、基準面14aと計測対象物体21上の点Sとの位相差(Φ−Φ)から、zまたは基準面14aからの高さh=z−zを求めることができる。以下に、その原理について説明する。
今、撮影手段13のある1画素Uが、計測対象物体21が格子プレート12と基準平板14との間に配置されていない場合には基準面14a上の点Rを、計測対象物体21が配置されている場合には該計測対象物体21上の点Sを見ているとする。計測対象物体21上に投影された1次元格子の、点Sでの位相をΦ、点Rでの位相をΦとする。点Rと原点Oを結ぶ直線の格子面12aとの交点をQとする。このとき、位相ΦとΦは、それぞれ点Gと点Qにおける1次元格子の位相と同じであり、それらの位相差から次式の関係が得られる。
(16)
また、△SPOと△GQOとが相似であるため、
(17)
となる。式(16)および(17)から、
(18)
となる。また、△SPRと△VORとが相似であるため、
(19)
となる。式(18)および(19)から、
(20)
となる。この式(20)から、高さzは、
(21)
となる。
こうして、式(21)から、カメラの画素の基準面14aにおける位相Φおよび計測対象物体21上の点Sの位相Φから、点Sのz座標を求めることができる。また、等位相差(Φ−Φ)線は等高線となる。
また、xおよびy座標については、基準面14a(すなわち、基準平板14)を用いない場合と同様に、例えばフーリエ変換格子法により、X軸方向およびY軸方向の位相をそれぞれ求め、更に位相接続を行うことにより、各点におけるx座標およびy座標をそれぞれ得ることができる。
なお、図1の場合と同様に、図2において、格子投影用光源11以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、格子投影用光源11をZ=0の面内において原点Oを中心にしてX軸に対して傾けて配置することができる。つまり、格子投影用光源11は、X軸に対して平行である必要はない。この場合、上記の説明における5つの光源間の間隔lとしては、X軸方向(すなわち、1次元格子を構成する直線に垂直な方向)の光源間の間隔(すなわち、5つの光源間の間隔のX軸方向の成分)を用いる。光源間の間隔を物理的に狭めることは困難であるが、上記のように格子投影用光源11をX軸に対して傾けることにより、X軸方向の光源間の間隔を容易に狭めることができるようになる。
また、図1において、格子投影用光源11以外の構成(X、YおよびZ軸も含む)の配置を全て固定した状態で、Z=0の面内において、格子投影用光源11を構成する光源L―2,L―1,L,L,Lの各々を、Y軸方向の任意の位置に配置することもできる。つまり、格子投影用光源11を構成する光源L―2,L―1,L,L,Lは、X軸方向に等間隔に並んでいればよい。
こうして、計測対象物体21上の点Sの座標x、yおよびzを求めることができ、計測対象物体21の形状を求めることができる。
(光ステッピング法による位相解析)
続いて、高さzを求めるために必要な、位相Φおよび位相シフト量Ψを求める方法について説明する。
上述のように、従来の位相シフト法が、図1または図2の格子を直接動かすことにより、位相2πを整数Nで割って、全ての位置にて位相を2π/Nずつシフトさせるのに対し、本発明の位相シフト法においては、5つのLEDを順次点灯および消灯させることにより、計測対象物体Oに投影される1次元格子の位相を、式(14)で示される位相シフト量Ψにて等間隔に5回シフトさせる(初期位置を含めて)位相シフトを行う。この位相シフト量Ψは、通常、2πを5等分したものでない。また、式(14)から明らかなように、zの値によって位相シフト量Ψは異なる。こうした本発明の位相シフト法を、「光ステッピング法」と呼ぶことにする。
図3は、余弦波状に輝度が変化する1次元格子の位相を、位相シフト量Ψにて等間隔に位相シフトさせたときの、標本点の輝度および位相のシフト量の関係を示す。光ステッピング法においては、Iにおける位相Φが求めるべき位相であり、光源Lを切り替えて順次点灯させる毎に、Ψずつ位相シフトする。このとき、輝度は上述の式(13)で表され、全てのnについて書くと、
(22)
(23)
(24)
(25)
(26)
となる。ここで、未知数はΦ、Ψ、aおよびbの4つであり、これらの式から位相Φのラッピングされた値φおよびΨのラッピングされた値ψは、それぞれ以下の式(27)および(28)のようになる。
(27)
(28)
これらの式(27)および(28)から、ラッピングされた位相φおよび位相シフト量ψを求めることができる。
なお、式(13)を解くのに、式(22)〜(26)の5つの式を用いたが、未知数の数が4つであるため、この5つの式のうちの4つを用いれば、4つの未知数を求めることができるのは言うまでもない。
[zとΨ、Φ、ΦおよびΦとの関係の具体的検証]
ここで、高さzとΨ、Φ、ΦおよびΦとの関係について、具体的に調べる。
上記した式(14)、式(15)および式(21)は、位相(および位相シフト量)と高さとの関係を表しており、ΨおよびΦ、または(Φ−Φ)が求められれば、これらのいずれかの式を用いて高さzを求めることができる。しかし、実際には、式(27)および式(28)で表されるtanΦ、cosΨ、tanΦおよびtanΦとして求まる。これらの位相(および位相シフト量)はラッピングされており、2mπ≦Φ≦2(m+1)πあるいはqπ≦Ψ≦(q+1)πなどに制限されて出力される。ここで、mおよびqは整数である。一般には、m=0およびq=0の場合に制限されている。そこで、tanΦ、cosΨ、tanΦおよびtanΦを用いて、これらと高さzとの関係を具体的に求める。
今、例として、格子投影用光源11が5つの光源からなる場合を考え、l=0.5mm、d=10mm、p=0.5mm、v=50mm、z=500mmおよびe=0mmの場合を考える。このとき、式(8)を用いて得られたzとcosΨの関係は図4のようになる。
一方、式(12)を用いて得られたzは、xの関数である。ここで、基準面14aとZ軸との交点Iと、該交点Iを見ている撮影手段13のある画素とを通る直線の式は、
(29)
となる。この式(29)を、式(12)に代入してxを消去すると、
(30)
が得られる。この式(30)で与えられるzとtanΦとの関係を図5に示す。
続いて、式(20)を用いて得られたzと0〜2πの範囲にラッピングされた(Φ−Φ)の関係を図6に示す。
5回の位相シフトを行う一度の実験により、図4および図5の位相が得られる。予め基準面14aの位相分布を求めておけば、図6の位相分布も同時に得られる。すなわち、一度の実験で得られたこれらの図のいずれを使っても高さzを得ることができる。ただし、高さと位相の関係は、高さと位相とが1対1の対応がつく範囲でしか求められない。すなわち、2mπ≦Φ≦2(m+1)πあるいはqπ≦Ψ≦(q+1)πの範囲だけが解析できる。
図4においては、cosΨはzの広い範囲にわたって単調増加あるいは単調減少となっている。そのため、ダイナミックレンジが広く、分解能は低いと言える。
一方、図5あるいは図6においては、tanΦあるいは(Φ−Φ)が単調増加もしくは単調減少するzの範囲は狭いため、ダイナミックレンジは狭く、分解能が高いと言える。
そこで、図4に示したzとcosΨとの関係において、分解能がやや悪い高さzを予め求めておき、図5または図6の関係において、予め求めたz付近の1対1の対応が成り立つ範囲においてzの値を高い分解能で求めると良い。これにより、広い範囲にわたって高さzを高精度に求めることができる。
ただし、図2において撮影装置13のレンズの中心Vが原点Oにある場合は、v=0、x=0となり、式(12)より、Φ=0となり、図5におけるzとtanΦとの関係においてzは不定となり、決まらない。このように、図5において、zとΦの関係は位置によって大きく異なり、精度も位置によって大きく異なることになる。したがって、図5に示したzとtanΦとの関係は使わず、図4に示したzとcosΨとの関係と図6に示したzと(Φ−Φ)との関係を組み合わせて使用することが好適である。
(全空間テーブル化手法の適用)
上記の本発明の形状計測方法に、全空間テーブル化手法を適用することにより、計測対象物体21の形状計測を更に高速に行うことができる(例えば、特開2008−281491参照)。すなわち、図2に示すように、格子面12aに平行に配置された2次元格子が描かれた(または投影された)基準面14aを有する基準平板14を用意し、該基準平板14をZ軸方向に所定の微少量だけ移動させながら基準面14aを撮影し、撮影された画像に対して位相解析処理を施すことにより、撮影手段13の各画素に対して、Ψ、Φおよび(Φ−Φ)とzとの関係をテーブルとして予め求めておく。こうして予め用意しておいた各画素に対するテーブルを参照することにより、各画素に対して得られた位相から高さzの値を求めることができる。
この全空間テーブル化手法においては、予め用意した画素毎のテーブルを参照するだけであり、三角測量などで用いる幾何学的計算をする必要がほとんどないため、計測対象物体21の形状を更に高速に求めることができる。
また、本発明による形状計測方法では、光源や格子面の配置等に、種々の拘束条件を設けたが、このような基準面14aを用いた位相解析により、5個のLEDの明るさ分布に多少のムラがある場合、点光源が完全な点ではなくて多少の面積がある場合、1次元格子やLEDの間隔が一定ではなく少々異なる場合、撮影手段13のレンズの位置がLED面から少々外れる場合、平行に配置された各構成が平行から多少ずれる場合、および1次元格子の輝度分布が余弦波から多少ずれる場合のように、計測された位相と高さzとの関係が単調に変化して1対1の対応関係がありさえすれば、これらの誤差を打ち消し、計測対象物体21の形状を精度良く求めることができる。
[形状計測方法]
以下、本発明による形状計測の手順について説明する。
(基準面を用いない場合)
まず、図1に示した形状計測装置1を用いて、4つ以上の光源を順次点灯させて、計測対象物体21に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら計測対象物体21を撮影する。
次いで、撮影された画像に対して光ステッピング法により位相解析処理を施して、計測対象物体21の形状を求める。
(基準面を用いる場合)
まず、図2に示した形状計測装置2を用いて、4つ以上の光源を順次点灯させて、基準面14aに投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、撮影手段13により基準面14aを撮影する。
次いで、計測対象物体21を格子プレート12と基準平板14との間に配置し、4つ以上の光源を順次点灯させて計測対象物体21に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、撮影手段13により計測対象物体21を撮影する。
つづいて、撮影された基準面14aの画像および計測対象物体21の画像に対して、光ステッピング法により位相解析処理を施して、計測対象物体21の形状を求める。
(全空間テーブル化手法を適用する場合)
上記2つの形状計測方法に対して、位相解析処理に全空間テーブル化手法を適用する場合には、位相と空間座標とを関連づけるテーブルを予め画素毎に作成しておき、該テーブルを参照して、各画素の位相から空間座標(即ち、計測対象物体21上の点Sの座標)を求めるようにする。
こうして、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測することができる。
本発明によれば、4つ以上の光源を順次切り替えることにより位相シフトを高速に行うことができ、計測対象物体の形状を高速かつ高精度に計測できるため、電子部品の検査、人体計測、医療、および小型生物の立体観察や立体計測等に有用である。
1,2 形状計測装置
11 格子投影用光源
12 格子プレート
12a 格子面
13 撮影手段
14 基準平板
14a 基準面
21 計測対象物体
―2,L―1,L,L,L 光源
U 撮影装置の画素
V 撮影装置のレンズの中心

Claims (4)

  1. 4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子が描かれた格子面を含む、前記格子投影用光源に平行に配置された格子プレートとを備える形状計測装置を用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、
    前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら前記計測対象物体を撮影するステップと、
    前記撮影された画像に対して位相解析処理を施して、前記計測対象物体の形状を求めるステップと、
    を含み、前記4つ以上の光源は前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、前記格子投影用光源を含み前記格子プレートに平行な光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、前記1次元格子の位相シフト量または位相に依存し、
    前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、更に、前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向の前記4つ以上の光源間の間隔と、前記1次元格子の周期と、前記光源面と前記格子面との間の距離とに依存し、
    前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離zは、以下の式(A)で与えられることを特徴とする形状計測方法。

    ただし、l:前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向の前記4つ以上の光源間の間隔、d:前記光源面と前記格子面との間の距離、Ψ:前記位相シフト量、p:前記1次元格子の周期である。
  2. 4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子が描かれた格子面を含む、前記格子投影用光源に平行に配置された格子プレートとを備える形状計測装置を用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、
    前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら前記計測対象物体を撮影するステップと、
    前記撮影された画像に対して位相解析処理を施して、前記計測対象物体の形状を求めるステップと、
    を含み、前記4つ以上の光源は前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、前記格子投影用光源を含み前記格子プレートに平行な光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、前記1次元格子の位相シフト量または位相に依存し、
    前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、更に、前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向の前記4つ以上の光源間の間隔と、前記1次元格子の周期と、前記光源面と前記格子面との間の距離とに依存し、
    前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離zは、以下の式(B)で与えられることを特徴とする形状計測方法。

    ただし、d:前記光源面と前記格子面との間の距離、Φ:前記1次元格子の位相、p:前記1次元格子の周期、x:前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置を通り前記光源面に垂直かつ前記光源面の法線に平行な面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離、e:前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置を通り前記光源面に垂直な面から前記1次元格子を構成する直線間の中央位置までの最短距離である。
  3. 4つ以上の光源からなる格子投影用光源と、1次元格子を有する格子面を含む、前記格子投影用光源に平行に配置された格子プレートと、撮影手段であって、該撮影手段のレンズの中心が前記格子投影用光源を含み前記格子プレートに平行な光源面上に配置された撮影手段とを備える形状計測装置と、前記格子面に平行に配置された、基準面を含む基準平板とを用いて計測対象物体の形状を計測する方法であって、
    前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記基準面に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、前記撮影手段により前記基準面を撮影するステップと、
    前記計測対象物体を前記格子プレートと前記基準平板との間に配置し、前記4つ以上の光源を順次点灯させて前記計測対象物体に投影される1次元格子の位相をシフトさせながら、前記撮影手段により前記計測対象物体を撮影するステップと、
    撮影された前記基準面の画像および前記計測対象物体の画像に対して位相解析処理を施して、前記計測対象物体の形状を求めるステップと、
    を含み、前記4つ以上の光源は前記1次元格子を構成する直線に垂直な方向に等間隔に配置されており、前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、投影された前記1次元格子の、前記計測対象物体上の所定の位置での位相と、前記レンズ中心と前記計測対象物体上の所定の位置とを通る直線と前記基準面との交点における位相とに依存し、
    前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離は、更に、前記光源面と前記格子面との間の距離と、前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置から前記レンズの中心までの距離と、前記光源面と前記基準面との間の距離と、前記1次元格子の周期とに依存し、
    前記光源面から前記計測対象物体上の所定の位置までの距離zは、以下の式(C)で与えられることを特徴とする形状計測方法。

    ただし、d:前記光源面と前記格子面との間の距離、v:前記4つ以上の光源における両端の光源間の中央位置から前記レンズの中心までの距離、z R :前記光源面と前記基準面との間の距離、p:前記1次元格子の周期、Φ S :投影された前記1次元格子の前記計測対象物体上の所定の位置での位相、Φ R :投影された前記1次元格子の、前記レンズ中心と前記計測対象物体上の所定の位置とを通る直線と前記基準面との交点における位相である。
  4. 前記位相解析処理は、全空間テーブル化手法に基づいて位相と空間座標とを関連づけるテーブルを予め画素毎に作成しておき、該テーブルを参照して、各画素の位相から空間座標を求めることにより行う、請求項に記載の形状計測方法。
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