JP5667377B2 - 耐熱劣化性が改良された電線被覆用熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、更に詳しくは熱可塑性ポリエステル樹脂にポリカルボジイミド化合物を配合してなり、押出性、耐熱劣化性および耐摩耗性に優れる電線被覆用熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
従来、電線被覆材料としては、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)からなる材料が使用されてきた。電線被覆材料としてPVC樹脂は優れた絶縁性を有し、かつ安価であるという面で優れている。しかし、PVC樹脂からなる電線被覆材料を廃棄後焼却すると、塩素を含んだガスが発生する等の廃棄物処理に伴う環境汚染の問題が生じる。また、近年の自動車や電車などの輸送分野においては、省エネルギーを図るための車体の軽量化及び配線の省スペース化に伴って電線被覆の軽量・薄肉化が求められている。そこで、環境に優れる電線被覆材料としてオレフィン系材料が提案されている。(特許文献1参照)オレフィン系材料は、環境汚染の問題がなく、高い実用性を有し、かつ安価であるという特徴を持つが、電線被覆の軽量・薄肉化において機械的強度や耐摩耗性で満足するものが得られていない。
一方、オレフィン以外の材料としては、エンジニアリングプラスチックスポリマーであるポリエステル樹脂、その中でも熱可塑性ポリエステル樹脂が使用されるようになってきている。熱可塑性ポリエステル樹脂は、耐熱性・耐摩耗性・電気特性・耐薬品性・成形性に優れ、吸収性が小さく寸法安定性に優れることから、自動車、電気・電子、絶縁材、OA分野等幅広い分野で使用されている。例えば、上記の特徴を有していることから、耐摩耗性を維持しながら、電線被覆の軽量・薄肉化を達成できる見通しがあることが開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、近年、電線の絶縁材料に対して、更なる耐熱性・機械的特性の向上が望まれるようになっており、改善が求められている。そこで、高耐熱性を向上させたものとして、エポキシ基含有の添加剤を熱可塑性ポリエステル樹脂に添加したものが提案されているが(参考文献3参照)、十分な耐熱劣化特性を得られていないのが現状である。また、更に耐熱性を向上させたものとして、カルボジイミド化合物を熱可塑性ポリエステル樹脂に添加したものが提案されている。(特許文献4参照)しかし、カルボジイミド化合物の軟化温度が低い、すなわちポリカルボジイミドの分子量が低い場合カルボジイミド基周辺の立体障害が小さいため耐熱劣化性が悪くなるという問題がある。さらに組成物の製造時に軟化温度が低いポリカルボジイミドが原料投入入口に付着し、産業上有用な生産性を得ることができないという問題もある。
特開2009−249390号公報 特開2002−343141号公報 特開平9−263685号公報 特開2007−211123号公報
そこで本発明の目的は、押出性、耐熱劣化性および耐摩耗性を兼ね備えた電線被覆用熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を提供することにある。
本発明らは、熱劣化性の向上を目的として検討を重ねた結果、ポリカルボジイミド、特に軟化温度が高いポリカルボジイミドが、このポリエステルの耐熱劣化性の向上と生産性に有効であることを見出し、本発明に至ったものである。
本発明によれば、(1)(A)末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下であり、かつ固有粘度が0.70〜1.40dl/gである熱可塑性ポリエステル樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)軟化温度が50℃以上であるポリカルボジイミド化合物(B成分)を0.1〜5重量部含有する電線被覆用熱可塑性ポリエステル樹脂組成物が提供される。
本発明の好適な態様の一つは、(2)A成分100重量部に対し、(C)フェノール系酸化防止剤(C成分)および/または(D)リン系酸化防止剤(D成分)0.005〜5重量部を含有する上記構成(1)の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の一つは、(3)A成分がポリブチレンナフタレート樹脂(A−1成分)およびポリブチレンテレフタレート樹脂(A−2成分)からなる群より選ばれる1種類以上の熱可塑性ポリエステル樹脂であることを特徴とする上記構成(1)または(2)の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の一つは、(4)A成分がポリブチレンナフタレート樹脂(A−1成分)を50wt%以上含有することを特徴とする上記構成(3)の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
本発明の好適な態様の一つは、(5)電線被覆の厚みが0.01mm〜0.5mmの範囲にあることを特徴とする上記構成(1)〜(4)のいずれかの熱可塑性ポリエステル樹脂組成物である。
以下、更に本発明の詳細について説明する。
(A成分:熱可塑性ポリエステル樹脂)
本発明におけるA成分は熱可塑性ポリエステル樹脂である。熱可塑性ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂およびポリトリメチレンナフタレート樹脂等が挙げられ、その中でも、ポリブチレンナフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく使用され、さらに、ポリブチレンナフタレート樹脂の含有量が50wt%以上であることが好ましく、60wt%以上がより好ましい。
本発明のA成分である熱可塑性ポリエステル樹脂は、35℃、ベンジルアルコール中で測定した末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下であり、好ましくは18eq/ton以下であり、より好ましくは16eq/ton以下である。末端カルボキシル基濃度が20eq/tonより大きい場合、ポリカルボジイミド化合物を併用しても目標とする耐熱老化性が得られない。
本発明のA成分である熱可塑性ポリエステル樹脂は、35℃、オルトクロロフェノール中で測定した固有粘度が0.70〜1.40dl/gであり、好ましくは0.80〜1.40dl/gであり、0.90〜1.40dl/gがより好ましい。この範囲の固有粘度であれば、耐熱老化性と耐磨耗性の良好な熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を得ることができ、優れた押出時の加工性を得ることができる。
(A−1成分:ポリブチレンナフタレート樹脂)
本発明のA−1成分であるポリブチレンナフタレート樹脂(以下「PBN」と略称することがある)は、ナフタレンジカルボン酸および/またはナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体を主とするジカルボン酸成分と、1,4−ブタンジオールを主成分とするグリコール成分を用いて製造することができる。
ナフタレンジカルボン酸成分としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸を主成分とするが、特性を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸を併用することができる。他のカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。他のカルボン酸の使用量は全酸成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。ナフタレンジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,7−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを主成分とするが、特性を損なわない範囲であれば、他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体を併用することができる。他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4′−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4′−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、シュウ酸等の脂肪族ジカルボン酸の低級ジアルキルエステル等が挙げられ、これらの1種若しくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。他のジカルボン酸のエステル形成性誘導体の使用量は、全ジカルボン酸のエステル形成性誘導体成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
また、少量のトリメリット酸のような三官能性以上のカルボン酸成分を用いてもよく、無水トリメリット酸のような酸無水物を少量用いてもよい。また、乳酸、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル等を少量用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。
グリコール成分としては1,4−ブタンジオールを主成分とするが、特性を損なわない範囲で他のグリコール成分を併用することができる。他のグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリ(オキシ)エチレングリコール、ポリ(オキシ)テトラメチレングリコール、ポリ(オキシ)メチレングリコール等のアルキレングリコールの1種若しくは2種以上を用いてもよく、目的によって任意に選ぶことができる。さらに少量のグリセリンのような多価アルコール成分を用いてもよい。また少量のエポキシ化合物を用いてもよい。他のグリコール成分の使用量は、全グリコール成分に対して好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下である。
かかるグリコール成分の使用量は、前記ジカルボン酸若しくはジカルボン酸のエステル形成性誘導体に対して1.1モル倍以上1.4モル倍以下であることが好ましい。グリコール成分の使用量が1.1モル倍に満たない場合にはエステル化あるいはエステル交換反応が十分に進行せず好ましくない。また、1.4モル倍以上を超える場合にも、理由は定かではないが反応速度が遅くなり、過剰のグリコール成分からテトラヒドロフラン等の副生物の発生量が大となり好ましくない。
PBNの製造においては、重合触媒としてチタン化合物が使用される。重合触媒として用いられるチタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的にはテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−sec−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラ−n−ヘキシルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネートなどが挙げられ、これらの混合チタネートとして用いても良い。これらのチタン化合物のうち、特にテトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートが好ましく、最も好ましいのはテトラ−n−ブチルチタネートである。チタン化合物の添加量は生成PBN中のチタン原子含有量として、10ppm以上60ppm以下であることが好ましく、より好ましくは15ppm以上30ppm以下である。生成PBN中のチタン原子含有量が60ppmを超える場合は、本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の色調および熱安定性が低下するために好ましくない。一方チタン原子含有量が10ppm以下の場合には、良好な重合活性を得ることができず、充分な高い固有粘度のPBNを得ることができず好ましくない。本発明のPBNは、ナフタレンジカルボン酸および/またはそのエステル形成性誘導体を主とするジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールを主とするグリコール成分とをチタン化合物の存在下にてエステル化あるいはエステル交換反応工程と、それに続く重縮合反応工程とを経由して製造されることが好ましいが、エステル化あるいはエステル交換反応終了の際の温度が180℃以上220℃以下の範囲にある事が好ましく、180℃以上210℃以下であることがより好ましい。当該エステル化反応又はエステル交換反応終了の際の温度が220℃を超える場合には反応速度は大きくなるが、テトラヒドロフラン等の副生物が多くなり好ましくない。また、180℃未満では反応が進行しなくなる。エステル化あるいはエステル交換反応により得られた反応生成物(ビスグリコールエーテルおよび/またはその低重合体)は当該反応生成物をPBNの融点以上270℃以下の温度において0.4kPa(3Torr)以下の減圧下で重縮合させることが好ましい。重縮合反応温度が270℃を超える場合にはむしろ反応速度が低下して、着色も大となるので好ましくない。
(A−2成分:ポリブチレンテレフタレート樹脂)
本発明のA−2成分であるポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」と略称することがある)は、テレフタル酸あるいはその誘導体と、1,4−ブタンジオールあるいはその誘導体とから重縮合反応により得られる樹脂であるが、本発明の目的を損なわない範囲で、他のジカルボン酸、グリコールを共重合することが可能である。
共重合可能なジカルボン酸としては、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2,5−ジクロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、4,4−スチルベンジカルボン酸、4,4−ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4−ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸および脂環族ジカルボン酸を挙げることができる。これら共重合可能なジカルボン酸は単独でも、2種類以上混合しても用いることができる。
共重合可能なグリコールとしては、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、トランス−またはシス−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジオール、p−キシレンジオール、ビスフェノールAなどを挙げることができる。更に少量であれば、分子量400〜6,000の長鎖ジオール、すなわちポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。これら共重合可能なグリコールは単独でも、2種類以上を混合しても用いることができる。
また本発明のPBTは少量の分岐剤を導入することにより分岐させることができる。分岐剤の種類に制限はないがトリメシン酸、トリメリチン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
また得られたPBTの末端基構造は、末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下の範囲であれば特に限定されるものではなく、末端基における水酸基とカルボキシル基の割合がほぼ同量の場合の他、一方の割合が多い場合であってもよい。またかかる末端基に対して反応性を有する化合物を反応させる等により、それらの末端基が封止されているものであってもよい。
本発明のPBTの製造方法については、常法に従い、チタン、ゲルマニウム、アンチモン等を含有する重縮合触媒の存在下に、加熱しながらジカルボン酸成分と前記ジオール成分とを重合させ、副生する水または低級アルコールを系外に排出することにより行われる。例えば、ゲルマニウム系重合触媒としては、ゲルマニウムの酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、アルコラート、フェノラート等が例示でき、更に具体的には、酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、テトラメトキシゲルマニウム等が例示できる。
また本発明では、従来公知の重縮合の前段階であるエステル交換反応において使用される、マンガン、亜鉛、カルシウム、マグネシウム等の化合物を併せて使用でき、およびエステル交換反応終了後にリン酸または亜リン酸の化合物等により、かかる触媒を失活させて重縮合することも可能である。
(B成分:ポリカルボジイミド化合物)
本発明においてB成分として使用されるポリカルボジイミド化合物は、多価イソシアナート化合物を用いた(共)重合体である。上記多価イソシアネートの具体例としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ピリジンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。その中でもシクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートが好ましく使用される。
上記B成分のポリカルボジイミド化合物としては、日清紡績(株)製のカルボジライトHMV−8CAやカルボジライトLA−1、ラインケミー製のスタバックゾールP等が挙げられる。
ポリカルボジイミド化合物の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜4重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部である。含有量が0.1重量部未満の場合、耐熱老化性や耐摩耗性の向上効果が十分ではなく、5重量を超えると、溶融粘度の増加によって押出時の加工性が顕著に悪化し、十分な引張伸びが得られない。
ポリカルボジイミド化合物の軟化温度は50℃以上であり、好ましくは60℃以上であり、より好ましくは70℃以上である。軟化温度が50℃未満では、押出する際の原料供給のホッパー下で融着し、シュートアップを起こし押出が困難となる。軟化温度が120℃より高いポリカルボジイミド化合物は製造上困難であるため、産業上の有用性が無い。このため、ポリカルボジイミド化合物の軟化温度の上限は実質上120℃である。
(C成分:ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
本発明のC成分は、ヒンダードフェノール系酸価防止剤である。かかるヒンダードフェノール系酸化防止剤の配合の主たる目的は、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の成形加工時の熱安定性、耐熱劣化性を向上させることである。かかるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらの中でもオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(代表的市販品としてCIBA SPECILATY CHEMICALS社製:Irganox1076(商品名))が好ましい。前記のヒンダードフェノール系酸化防止剤はいずれも入手容易であり、これらは単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
(D成分:リン系酸化防止剤)
本発明のD成分は、リン系酸化防止剤である。かかるリン系酸化防止剤の配合の主たる目的は、樹脂組成物の成形加工時の熱安定性を向上させ、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物の耐熱老化性を向上することにある。かかるリン系酸化防止剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス{2,4−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェニル}ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、および2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、およびジイソプロピルホスフェートなどが例示され、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、およびビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、およびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は前記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
前記リン系安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。前記リン系酸化防止剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。
C成分であるヒンダードフェノール系酸化防止剤および、D成分であるリン系酸化防止剤の含有量は、熱可塑性ポリエステル樹脂(A成分)100重量部に対して、0.005〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.008〜3重量部、更に好ましくは0.01〜1重量部である。含有量が0.005重量部未満では熱安定性や耐熱老化性の向上効果が無く、5重量部を超えると、かえって熱安定性や耐熱老化性を悪化させるため好ましくない。
(その他の添加剤)
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物には、発明の効果を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を配合し、必要に応じて可塑剤、無機充填材、難燃剤、加硫(架橋)剤、顔料、光安定剤、耐電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、分散剤、流動性改良剤、離型剤、造核剤、中和剤等を加えることができる。他の熱可塑性樹脂としては、例えばやエチレン、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン等を主成分とする共重合体が例示できる。これらの添加物や熱可塑性樹脂の量は、熱可塑性ポリエステル樹脂100重量部に対し、通常は0.01〜50重量部である。
(絶縁電線の製造方法)
次に、本発明に係る絶縁電線の製造方法の一実施形態を説明する。
この絶縁電線の製造方法には、公知の方法を用いることができ、例えば、通常の押出成形ラインを用い、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物を溶融混練し、導体に熱可塑性ポリエステル樹脂を主成分とする組成物を押し出して作製することができる。溶融混練には、例えばバッチ式混練機や二軸スクリュー押出機などが用いられる。押出成形ラインには、例えば二軸押出機が用いられるが、二軸以外のものを用いてもよい。この二軸押出機によって、溶融混練した樹脂組成物を二軸押出機のヘッド部の温度を290℃〜310℃の範囲内の所定温度に制御して押し出し、押出温度290℃〜310℃の樹脂組成物によって導体を被覆する。
前記導体としては、銅線を単線で用いても複数からなる撚り線や編み線として用いても良い。銅線は溶融メッキや電解による錫メッキが施されていても良い。また、絶縁電線は、導体の外周を樹脂組成物が被覆していればよく、他の形態としては、導体の外周を樹脂組成物で被覆し、更にその外周をシース層で被覆した構造のもの、或いは、導体を熱可塑性ポリエステル樹脂組成物で被覆したものを複数本撚り合わせ、それらの外周をシース層で被覆した構造のものなどがある。
また、上記樹脂組成物の押出温度は280℃〜310℃の範囲にするのが好ましい。310℃を超えると樹脂組成物が一部分解したり、熱可塑性樹脂の分子量が低下し、コブ状の異物や電線外径の異常を引き起こす可能性がある。また、280℃を下回ると、熱可塑性樹脂が完全に溶融せず、外観不良の原因につながるおそれや押出不能になる可能性がある。
また、導体を被覆している上記樹脂組成物からなる電線被覆の厚みは、電線の軽量・薄肉化を図るべく、0.01mm〜0.5mmの範囲にあるのが好ましく、0.02mm〜0.4mmの範囲がより好ましい。絶縁体の厚みが0.01mmを下回ると、耐摩耗性を維持するのが難しくなり、0.5mmを超えると電線の巻き取り径が大きくなりハンドリングが困難となるため好ましくない。また、導体の直径は0.1mm〜2mmの範囲にあるのが好ましい。なお、導体の断面形状は丸形状に限らず、板状の銅板よりスリット加工したり、丸線を圧延したりして得た平角状であってもかまわない。
上述した実施形態の電線被覆は、優れた耐摩耗性及び引張伸び特性を有する熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂組成物に用いているので、軽量化・薄肉化しても、機械的強度および耐熱性に優れた電線被覆が得られ、例えば自動車や電車などの車両用電線に好適である。
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂は、押出性、耐熱劣化性および耐摩耗性に優れるため、電線被覆用の樹脂として好適であり、その奏する効果は極めて大である。
耐摩耗性試験の方法を示す説明図である。
以下に、本発明を実施するための形態を説明するが、この実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。各記載中、「部」は質量部を、「%」は質量%を示す。また、諸物性の測定は以下の方法により実施した。
1.樹脂特性の測定
(1)固有粘度(IV)測定
樹脂0.6gをオルトクロロフェノール50ml中に加熱溶解した後、室温に冷却し、得られた樹脂溶液の粘度を、オストワルド式粘度管を用いて35℃の温度条件で測定した。得られた溶液粘度のデータから当該樹脂の固有粘度(IV)を算出した。
(2)末端カルボキシル基濃度測定
樹脂0.4gをベンジルアルコール100mlに常温溶解し、得られた樹脂溶液を、自動滴定装置GT−100型(三菱化学製)を用いて0.1N−NaOHにて滴定した値であり、1×10gあたりの末端カルボキシル基の等量濃度である。
(3)軟化温度測定
示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/分で測定し、軟化温度を測定した。
(4)押出性
下記の条件で樹脂組成物を溶融混錬しペレット化を実施した。実施した際に押出の供給部付近に添加剤が溶着し、シュートアップしないものを○(押出性良好)とし、シュートアップして押出不可能なものを×(押出不良)とした。
(5)引張伸び性
下記電線の試料から銅線を抜き取り、チューブ状の試験片(外径1.9mm、内径1.3mm、長さ150mm)を作製して、この試料を用いて、ギアーローカー試験器において150℃雰囲気下に96時間処理後の試験片を状態調節し引張伸び試験を行なった。引張伸び試験は、JIS C 3005に従い、試験片を引張速度200mm/分にて実施した。引張伸び率が200%以上のものを○(合格)とし、それ以外のものを×(不合格)とした。なお、引張伸び率は下記式で算出する。
引張伸び率(%)=[(引張試験後の試料長)―(引張試験前の試験長)]/(引張試験前の試料長) ×100
(6)耐摩耗性
下記のように作製された絶縁電線(絶縁体の被覆厚み0.3mm、長さ約60cm)に対し、常温の雰囲気で摩耗試験機を用いて耐摩耗性試験を行なった。この耐摩耗性試験は、図1に示すように、電線1にその上方から摩耗試験機の90°シャープエッジ4を当て、90°シャープエッジ4より荷重2ポンド(907g)を加えて電線1に押しつけた。この荷重を加えた状態で、電線1をその長さ方向に往復運動を行なわせ、電線1の絶縁体3が摩耗し90°シャープエッジ4が導体2と接触して短絡するまでの往復動作の回数(サイクル)を測定した。なお、電線1の導体2と90°シャープエッジ4との間には、電源5及び短絡を検出するためのランプなどが接続されている。短絡するまでの往復動作の回数(サイクル)を示す。回数は150回以上であることが必要である。
2.PBNの製造
<製造例1:固相重合によるPBN(IV=1.1)の製造>
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルエステル315.0部、1.4−ブタンジオール200。0部、テトラーn−ブチルチタネート0.062部をエステル交換反応槽に入れ、エステル交換反応槽が210℃となるように昇温しながら150分間エステル交換反応を行なった。ついで得られた反応生成物を重縮合反応槽に移して重縮合反応を開始した。重縮合反応は常圧から0.13kPa(1Torr)以下まで40分かけて除々に重縮合反応層内を減圧し、同時に所定の反応温度260℃まで昇温し、以降は重縮合反応温度が260℃、圧力が0.13kPa(1Torr)の状態を維持して140分間重縮合反応を行なった。140分が経過した時点で重縮合反応を終了してPBNをストランド状に抜き出し、水冷しながらカッターを用いてチップ状に切断した。次に、得られたPBNを温度213℃、圧力0.13kPa(1Torr)以下の条件にて8時間固相重合を行なった。得られたPBN(PBN−1)について、固有粘度、末端カルボキシル基濃度の測定を行ない、その結果を表に示した。
<製造例2:固相重合によるPBN(IV=1.4)の製造>
製造例1と同様にエステル交換反応および重縮合反応を実施し、得られたPBNを213℃、圧力0.13kPa(1Torr)以下の条件にて12時間固相重合を行なった。得られたPBN(PBN−2)について、固有粘度、末端カルボキシル基濃度の測定を行ない、その結果を表に示した
<製造例3:固相重合によるPBN(IV=0.8)の製造>
製造例1と同様にエステル交換反応および重縮合反応を実施し、得られたPBNを213℃、圧力0.13kPa(1Torr)以下の条件にて4時間固相重合を行なった。得られたPBN(PBN−3)について、固有粘度、末端カルボキシル基濃度の測定を行ない、その結果を表に示した。
<製造例4:固相重合によるPBN(IV=1.5)の製造>
製造例1と同様にエステル交換反応および重縮合反応を実施し、得られたPBNを213℃、圧力0.13kPa(1Torr)以下の条件にて15時間固相重合を行なった。得られたPBN(PBN−4)について、固有粘度、末端カルボキシル基濃度の測定を行ない、その結果を表に示した。
<製造例5:溶融重合によるPBN(IV=0.5)の製造>
固相重合を実施しなかった以外は、製造例1と同様にエステル交換反応および重縮合反応を実施して、PBN(PBN−5)を得た。得られたPBNについて固有粘度、末端カルボキシル基濃度の測定を行なった、その結果を表に示した。
<製造例6:溶融重合によるPBN(IV=0.9)の製造>
重縮合反応の時間を140分から170分間に変更した以外は、製造例4と同様にエステル交換反応および重縮合反応を実施して、PBN(PBN-6)を得た。得られたPBNについて固有粘度、末端カルボジキシル基濃度の測定を行なった。結果を表に示した。
[実施例1−9、比較例1−8]
以下に実施例を説明する。
表1に示す配合で組成物を混合し、二軸押出機を用いて280℃〜290℃で溶融混錬し、得られた混錬物を米粒状の大きさまで粉砕しペレット化し、熱風乾燥機で140℃、6時間乾燥させた。次に上記工程で得られた樹脂組成物を、直径1.3mmの錫メッキ軟銅線の周囲に0.3mmの被覆厚みで押出成形した。押出成形には、直径がそれぞれ4.2mm、2.0mmのダイス、ニップルを使用し、押出速度は5m/min、押出温度はシリンダ部を270℃〜290℃とし、ヘッド部を280〜290℃とした。作成された熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂組成物および被覆電線について上記の方法で特性評価を実施した。その結果を表1および表2に示す。
なお、使用した各成分の詳細は以下の通りである。
(A成分:熱可塑性ポリエステル樹脂)
(A−1成分:ポリブチレンナフタレート樹脂)
PBN−1:ポリブチレンナフタレート樹脂(製造例1)
PBN−2:ポリブチレンナフタレート樹脂(製造例2)
PBN−3:ポリブチレンナフタレート樹脂(製造例3)
PBN−4:ポリブチレンナフタレート樹脂(製造例4)
PBN−5:ポリブチレンナフタレート樹脂(製造例5)
PBN−6:ポリブチレンナフタレート樹脂(製造例6)
(A−2成分:ポリブチレンテレフタレート樹脂)
PBT-1:ポリプラスチックス(株)社製 商品名:300FP(IV=0.69dl/g 末端カルボキシル基濃度20eq/ton)
PBT-2:ポリプラスチックス(株)社製 商品名:700FP(IV=1.14dl/g 末端カルボキシル基濃度7eq/ton)
(B成分:ポリカルボジイミド化合物)
B−1:日清紡(株)社製、商品名:HMV−8CA(軟化温度:71℃)
B−2:ラインケミー(株)社製、商品名:スタバックゾールP(軟化温度:65℃)
B−3:ラインケミー(株)社製、商品名:スタバックゾールI(軟化温度:40℃)
(C成分:ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
C−1:チバ・スペチャルティ・ケミカルズ(株)社製 IRGANOX1076
(D成分:リン系酸化防止剤)
D−1:旭電化工業(株)社製 アデカスタブPEP−24G
Figure 0005667377
Figure 0005667377
表1において、特定範囲の末端カルボキシル基濃度と固有粘度を有する熱可塑性ポリエステル樹脂に、特定範囲の軟化温度を有するポリカルボジイミド化合物を配合した実施例1〜9は、優れた押出性を示し、かつ高レベルの引張り伸び率と耐摩耗性を有し、産業上有用でありかつ優れた耐熱老化性と耐摩耗性を併せ持つ電線被覆用樹脂組成物であることがわかる。特に実施例5は高い耐摩耗性を有し、優れた特性を有する。表2において、比較例1は、固有粘度が本発明範囲外のPBNを使用したため、押出時にトルクオーバーとなり、電線被覆が得られなかった。比較例2は、末端カルボキシル基濃度が本発明範囲外の熱可塑性ポリエステル樹脂を使用したため、引張り伸び率が実施例1に比べて劣る。比較例3は末端カルボキシル基濃度と固有粘度が共に本発明範囲外であるため、比較例2より耐摩耗性が低い。比較例4は、ポリカルボジイミド化合物を配合していないため、引張り伸び率と耐摩耗性が実施例1より大きく劣る。比較例5は、本発明範囲より軟化温度が低いモノカルボジイミド化合物を用いているため、押出時にシュートアップを起こし、電線被覆が得られなかった。比較例6及び7は、本発明範囲を超えてポリカルボジイミド化合物を配合したため溶融粘度が高く、押出加工が困難であり、均質な電線被覆が得られず、十分な引張り伸びが得られなかった。比較例8は、本発明範囲より低い固有粘度の熱可塑性ポリエステル樹脂を用いたため、引張り伸びが実施例7及び8に比べて劣る。
1.絶縁電線
2.導体
3.絶縁体
4.90°シャープエッジ
5.電源

Claims (3)

  1. (A)ポリブチレンナフタレート樹脂(A−1成分)を50wt%以上含有し、末端カルボキシル基濃度が20eq/ton以下であり、かつ固有粘度が0.70〜1.40dl/gである熱可塑性ポリエステル樹脂(A成分)100重量部に対し、(B)軟化温度が50℃以上であるポリカルボジイミド化合物(B成分)を0.1〜5重量部含有し、かつポリエステルブロック共重合体およびポリオルガノシロキサンコアグラフト共重合体を含有しない電線被覆用熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  2. A成分100重量部に対し、(C)ヒンダードフェノール系酸化防止剤(C成分)および/または(D)リン系酸化防止剤(D成分)0.005〜5重量部を含有する請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
  3. 電線被覆の厚みが0.01mm〜0.5mmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物。
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