JP5665980B2 - 埋設治具を利用した杭の施工方法および杭施工用埋設治具 - Google Patents
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Description
本発明は、埋設治具を利用した杭の施工方法および杭施工用埋設治具に関する。さらに詳述すると、本発明は、埋設治具の構造および杭の施工方法の改良に関する。
螺旋状羽根を有する杭(例えば鋼管杭)の施工方法として、杭打機によって鋼管杭の下端付近を振れ止めしながら、杭回転装置(オーガー)で当該鋼管杭を回転させて地盤に埋設するというものがある。また、このような施工方法においては、杭回転装置で杭頭部を直接回転させる他、これらの間にヤットコ等と呼ばれる埋設治具(鋼管製の仮杭)を介し、杭回転装置の動力を杭に伝達して埋設することも行われている(例えば特許文献1参照)。
ところで、杭を施工するに際し、杭頭部付近に軟弱地盤が存在すると、地震時に作用する水平力に対して杭の変位量が大きくなり、上部構造に悪影響を与えるおそれがある。そこで、特に杭頭部付近における水平耐力を向上させてこのような影響を軽減させるために杭頭部の周辺を拡大掘削する方法として、拡大径の掘削孔を先に築造してから杭を埋設する方法(特許文献2参照)や、杭を埋設した後に、杭頭部周辺を掘削して地盤改良を行う方法(特許文献3参照)などが提案されている。さらに、杭周辺部を改良するための掘削孔を無排土で行う方法であって、拡大掘削は行われずに全長にわたり同径で掘削するもの(特許文献4参照)も提案されている。
上述のような杭の施工方法においては、工程の数をより少なくすることができれば、コストや品質管理の面において有利である。しかしながら、上述のごとく埋設治具を利用して杭を施工する場合、工程数を少なくするにも限度がある。また、地盤に埋設された杭の水平抵抗については現状よりもさらに向上させることができれば望ましい。
そこで、本発明は、従来技術における課題を踏まえつつ、工程数を少なくするとともに杭の水平耐力を向上させることを可能とする、埋設治具を利用した杭の施工方法および杭施工用埋設治具を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するべく本発明者は種々の検討を行った。杭の水平耐力を向上させるため、上述のように拡大径の掘削孔をあらかじめ築造する、あるいは杭頭部周辺を掘削して地盤改良を行うといった工法が採られているが、いずれの工法も、掘削工程、杭を建て込み埋設する工程、地盤改良工程といった各種工程を経ているのが現状である。
また、杭の水平耐力を向上させるため、上述のごとく杭頭部の周辺を拡大掘削し、さらに杭周辺部に地盤改良材を充填する等して地盤を改良することが行われている。この場合、杭の水平耐力を均等に発揮させることが望ましいが、実際には、改良材が固化するまでの間、拡大掘削孔の中で杭が動いてしまい、杭の中心と改良材の中心とがずれてしまう可能性があった。このように杭の中心がずれることは、当該杭の水平耐力が均等でなくなることから、水平耐力向上の観点からしても望ましくない。
これら現状の技術について検討を重ねた本発明者は、かかる課題の解決に結び付く新たな知見を得るに至った。本発明はかかる知見に基づくものであり、地盤を拡大掘削するとともに地盤改良材を貯留可能なホッパーとして機能する外枠体と、杭の杭芯を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態を保持するガイドと、を備える埋設治具を用い、杭を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持し、該埋設治具を回転させて杭を地中に埋設するとともに外枠体によって杭の周辺を拡大掘削し、外枠体に貯留されている地盤改良材を、埋設治具を地中から引き上げながら拡大掘削した部分に打設することによって当該杭の周辺を地盤改良する、というものである。
かかる施工方法においては、上述のごとき埋設治具を利用して杭を地中に埋設すれば、当該埋設工程と同時に、外枠体によって杭の周辺に拡大掘削孔を築造することができる。また、当該埋設治具を引き上げる際には、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設して地盤改良をすることができる。例えば従来方法であれば、先に拡大掘削孔を築造しておき、次に杭を埋設し、その後、杭周辺部を地盤改良するといったように各種工程を順次経ているが、本発明にかかる施工方法によれば、杭を埋設する工程において地盤改良をも行うことができる。
また、この施工方法においては、杭を、埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持しながら地盤を拡大掘削するので、埋設した杭を中心として拡大掘削孔を築造することができる。しかも、この施工方法においては、埋設治具を引き上げながら、外枠体に貯留されている地盤改良材を当該拡大掘削孔に対して打設するから、地盤の土砂と混じり合わないように地盤改良材を充填することができる。このため、従来の施工方法におけるよりも地盤改良材による効果を発揮させやすい。加えて、この施工方法によれば、杭の先端を地中に埋設させた状態とすることが可能であるから、地盤改良材が固化するまでの間、拡大掘削孔の中で杭が動くおそれが少ない。このため、杭の中心と地盤改良材の中心とを位置合わせした状態を維持し、当該杭の周辺に地盤改良材を均等な状態で固化させることができる。これらにより、本願発明にかかる施工方法によれば、杭に作用することのある曲げモーメントを軽減させて水平耐力を向上させることができる。要すれば、本発明にかかる施工方法は、杭の施工(埋設)と同時に特に杭頭部付近における水平耐力(地震に対する強度)を向上させることが可能だという点で特徴的である。
かかる施工方法においては、埋設治具の地中への推進時および地中からの引き上げ時に当該地中での抵抗を受けて地盤改良材の流出孔を開閉する開閉蓋が設けられた埋設治具を利用することが好ましい。これによれば、埋設治具を地中から引き上げる時に開閉蓋を自動的に動作させて流出孔を開けた状態とし、かかる動作に連動させて地盤改良材を打設することができる。
また、かかる施工方法において、引き上げ時における開閉蓋に対する地中での抵抗を増大させる抵抗増大部が当該開閉蓋に設けられた埋設治具を用いることがさらに好ましい。
さらに、かかる施工方法において、抵抗増大部は回転時に地中への推進力を生じさせる羽根であり、杭の埋設時、当該埋設治具を回転させることが好ましい。
また、かかる施工方法において、杭を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持する際、当該杭の杭頭部を、外枠体の上縁の高さに略等しくなる位置で保持することも好ましい。
また、かかる施工方法において、埋設治具が回転力を伝達する杭の上部に別の杭が接続されてガイドに保持されていることも好ましい。このようにして回転力を下の杭に伝達した場合、上杭との接続部に回転力(トルク)が作用しないため、例えば杭と杭とを接続するための機械式継手構造を簡略化することができ、コスト軽減に寄与する。
さらに、かかる施工方法においては、ガイドとして、外枠体の中心に配置した管状部材を用いることが好ましい。また、ガイドとして、少なくとも一部が外枠体の内部に位置しており、杭を外枠体の内部まで挿入させるものを用いることも好ましい。
また、本発明は、地盤を拡大掘削する外枠体と、杭の杭芯を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態を保持するガイドと、を備える埋設治具を用い、杭を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持し、該埋設治具を利用して杭を地中に埋設するとともに外枠体により杭の周辺を拡大掘削し、埋設治具を介さずに、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設することによって当該杭の周辺を地盤改良する、というものである。
かかる施工方法においては、上述のごとき埋設治具を利用して杭を地中に埋設することにより、当該埋設工程と同時に、外枠体によって杭の周辺に拡大掘削孔を築造することができる。例えば従来方法であれば、先に拡大掘削孔を築造しておき、次に杭を埋設し、その後、杭周辺部を地盤改良するといったように各種工程を順次経る必要があるが、本発明にかかる施工方法によれば、杭の埋設と拡大掘削孔の築造という異なる工程をひとまとめが行うことが可能となる。
また、この施工方法においては、杭を、埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持しながら地盤を拡大掘削するので、埋設した杭を中心として拡大掘削孔を築造することができる。このため、杭の中心と地盤改良材の中心とをより一致させた状態で地盤改良を行うことが可能となる。したがって、本発明にかかる施工方法によれば、杭に作用することのある曲げモーメントを軽減させて水平耐力を従来よりも向上させることが可能となる。
上述のごとき杭の施工方法においては、埋設治具が回転力を伝達する杭の上部に別の杭が接続されてガイドに保持されていることが好ましい。このようにして回転力を下の杭に伝達した場合、上杭との接続部に回転力(トルク)が作用しないため、例えば杭と杭とを接続するための機械式継手構造を簡略化することができ、コスト軽減に寄与する。
また、かかる施工方法において、埋設治具を地中から引き上げる途中または引き上げた後、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設することもできる。例えば所定の範囲に複数の杭を一機の杭打機で順次施工するような場合においては、一の杭の埋設・拡大掘削孔の築造の工程と、拡大掘削孔に地盤改良材を打設して固化させる工程とを別個独立に実施することができれば、異なる場所で各工程を並行して進めることが可能となる。この点、本発明にかかる施工方法によれば、一の杭の埋設・拡大掘削孔の築造の工程を終えた後、いったん埋設治具を引き上げてから当該拡大掘削した部分に地盤改良材を打設する工程と、他の杭の埋設・拡大掘削孔の築造の工程とを並行して進めることができるから、施工速度を向上させて全体に要する施工時間を短縮することが可能である。なお、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設するのは埋設治具を地中から引き上げる途中または引き上げた後のいずれでもよく、要は、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設するためのスペースがあれば足りる。
さらに、本発明は、杭施工用の埋設治具であって、地盤を拡大掘削する外枠体と、施工対象とする杭の杭芯を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態を保持するガイドと、杭の一部に係合する杭係合部と、を備える、というものである。
上述のごとき構造の杭施工用埋設治具を利用して杭を地中に埋設すれば、当該埋設工程と同時に、外枠体によって杭の周辺に地盤改良用空間としての拡大掘削孔を築造することができる。また、当該埋設治具を引き上げる際(あるいは引き上げた後)、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設して地盤改良をすることができる。例えば従来方法であれば、先に拡大掘削孔を築造しておき、次に杭を埋設し、その後、杭周辺部を地盤改良するといったように各種工程を順次経ているが、本発明にかかる杭施工用埋設治具を利用すれば、杭を埋設する工程において地盤改良をも行う(杭を埋設すると同時に地中における該杭の周囲に地盤改良用の空間を形成する)ことができる。
また、この杭施工用埋設治具によれば、杭を、埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持しながら地盤を拡大掘削することが可能となるので、埋設した杭を中心として拡大掘削孔を築造することができる。しかも、この杭施工用埋設治具を用いた場合、杭の先端が地中に埋設された状態となるため、拡大掘削孔に打設された地盤改良材が固化するまでの間、当該拡大掘削孔の中で杭が動くおそれが少ない。このため、杭の中心と地盤改良材の中心とを位置合わせした状態を維持し、当該杭の周辺に地盤改良材を均等な状態で固化させることができる。これらにより、本願発明にかかる施工用埋設治具によれば、杭に作用することのある曲げモーメントを軽減させて水平耐力を向上させることができる。要すれば、本発明にかかる杭施工用埋設治具は、杭の施工時、特に杭頭部付近における水平耐力(地震に対する強度)を向上させることが可能だという点で特徴的である。
本発明にかかる杭施工用埋設治具は、外枠体が、地盤改良材を貯留可能なホッパーであり、該ホッパーには地盤改良材の流出孔が設けられているものであることが好ましい。このような杭施工用埋設治具を利用した場合、当該杭施工用埋設治具を引き上げながら、外枠体に貯留されている地盤改良材を当該拡大掘削孔に対して打設することができるから、地盤の土砂と混じり合わないように地盤改良材を充填することが可能となる。このため、地盤改良材と土砂とが混じり合う可能性のあった従来技術よりも地盤改良材による効果を発揮させやすい。
このような杭施工用埋設治具は、当該埋設治具の地中への推進時、および地中からの引き上げ時に当該地中での抵抗を受けて流出孔を開閉する開閉蓋が設けられていることが好ましい。これによれば、当該杭施工用埋設治具を地中から引き上げる時に開閉蓋を自動的に動作させて流出孔を開けた状態とし、かかる動作に連動させて地盤改良材を打設することができる。
また、杭施工用埋設治具の流出孔は、ホッパーの底部に設けられていることが好ましい。
さらに、当該埋設治具の地中からの引き上げ時における開閉蓋に対する地中での抵抗を増大させる突起物が当該開閉蓋に設けられていることが好ましい。
この場合、突起物は、回転時に地中への推進力を生じさせる羽根であることがさらに好ましい。
また、ホッパーとしての外枠体は、その上縁が、施工対象である杭の杭頭と略等しい高さに位置するように形成されていることが好ましい。
また、ガイドは、杭の外径よりも内径が大きい内部鋼管であり、該内部鋼管の軸が外枠体の回転中心と略一致するように一体化されたものであることも好ましい。
さらには、外枠体の少なくとも一部がテーパ状であることも好ましい。
本発明によれば、工程数を少なくするとともに杭の水平耐力を向上させることが可能となる。
10…鋼管杭(杭)、20…埋設治具(杭施工用埋設治具)、21…ホッパー(外枠体)、21a…流出孔、22…内部鋼管(ガイド)、22b…杭係合部、24…可動蓋(開閉蓋)、24c…螺旋状羽根(抵抗増大部)、30…地盤改良材、G…地盤
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
図1等に本発明にかかる埋設治具を利用した杭の施工方法の実施形態を示す。埋設治具20は、鋼管杭10を地盤Gに埋設するための鋼材治具であるガイドと、地盤Gを拡大掘削するとともに地盤改良材30を打設することが可能な鋼材治具である外枠体とを一体化した構造となっている。以下では、杭施工に利用される一般的な杭打機1の構成をまず簡単に説明し(図1参照)、その後、本発明の第1〜第4の実施形態を順次説明する。
杭打機1は、リーダー2、オーガー3、振れ止め装置4などを有し、杭(例えば鋼管杭10)を立設させながら回転させ、地盤Gに埋設させる機械である(図1参照)。なお、図1において、鋼管杭10の基端(上端)に取り付けられる場合のあるキャップを想像線で示している。
オーガー(杭回転装置)3は、杭打時において鉛直方向に立設するリーダー2に沿って移動可能に設けられており、当該リーダー2の長手方向に沿って昇降する(図1参照)。オーガー3には、鋼管杭10が直接または埋設治具20を介して連結され、該オーガー3が回転駆動することによって当該鋼管杭10も回転する。本実施形態では、先端に掘削用の螺旋状羽根12が設けられた鋼管杭10を用いており、このように鋼管杭10を回転させることにより、螺旋状羽根12が生じさせる地中への推進力を利用して当該鋼管杭10を未掘削の地盤Gに食い込ませながら掘進させる。地盤Gに対して鋼管杭10が掘進する際、オーガー3もリーダー2に沿って降下する。
振れ止め装置4は、杭打される鋼管杭10をガイドして当該鋼管杭10の横振れ(水平方向への振れ)を抑える装置で、例えばリーダー2の下部に設けられている(図1参照)。また、振れ止め装置4は、鋼管杭10の軸線回りに鋼管杭10を取り囲んで案内するガイド部(図示省略)を備えている。例えば本実施形態の場合、ガイド部は、垂直に立設しているリーダー2に対して水平方向に揺動するように設けられた一対の開閉ガイド(図示省略)を有している。
続いて、埋設治具20の構成および当該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法の例を以下に説明する。
<第1の実施形態>
本実施形態の埋設治具20は、外枠体21、ガイド22、杭係合部22bなどを備えた杭埋設用の鋼管製仮杭であり、鋼管杭10を埋設すると同時に地中における該鋼管杭10の周辺に地盤改良用の空間を形成する。
本実施形態の埋設治具20は、外枠体21、ガイド22、杭係合部22bなどを備えた杭埋設用の鋼管製仮杭であり、鋼管杭10を埋設すると同時に地中における該鋼管杭10の周辺に地盤改良用の空間を形成する。
埋設治具20の外枠体21は、地盤Gを拡大掘削するとともに、地盤改良材30を貯留可能なホッパーとして機能する(以下、ホッパーともいう)。例えば本実施形態では、このホッパー21を、円筒部と、該円筒部分の下部に設けられたテーパ部とで形成している(図2等参照)。下部がテーパ状であるホッパー21は、地盤Gをより掘削しやすいという点で好ましい。
ガイド22は、埋設対象とする鋼管杭10の杭芯を当該埋設治具20の回転中心に略一致させた状態を保持する部材である。例えば本実施形態では、施工対象とする鋼管杭10の外径よりも大きな内径の鋼管(以下、内部鋼管22ともいう)をガイドとして用いている。
この内部鋼管22とホッパー21とは、当該内部鋼管22の軸がホッパー21の回転中心と略一致するように連結部材23によって一体化されている。連結部材23の具体的な構成は特に限定されるものではないが、例えば本実施形態では、平面視十字状のスポーク状のアームからなる連結部材23を上下段のそれぞれに計2個用い、当該ホッパー21の円筒部における上部付近および下部付近の2箇所においてホッパー21の内壁と内部鋼管22とを連結している(図2参照)。このようなスポーク状の連結部材23は、十分な開口を確保しうるため、ホッパー21内に地盤改良材30を充填する作業、あるいは地盤改良材30がどの程度充填されたか確認する作業の妨げとならない。また、2箇所において同じ構成のスポーク23を利用しうる構成とすればコスト面でも有利となる。
また、内部鋼管22は、少なくともその一部がホッパー21の内部に位置しているものであればよい。例えば、図2等ではホッパー21の軸方向上端から下端まで内部鋼管22が貫いた構造の埋設治具20を例示しているが、この内部鋼管22が途中で途切れた複数の管によって構成されていてもよい。要は、ガイドとして機能する内部鋼管22は、埋設対象である鋼管杭10をその少なくとも一部が外枠体21の内部まで挿入されるように案内し、当該鋼管杭10の杭芯を埋設治具20の回転中心に略一致させた状態を保持するものであれば足りる。この観点からすれば、鋼管杭10は、ホッパー21の全長(軸方向上端から下端までの長さ)のうちの少なくとも1/4、好ましくは1/2(半分)まで該ホッパー21に挿入されて保持された状態となっていれば、当該鋼管杭10の杭芯が埋設治具20の回転中心に略一致させた状態が保持可能となりまたは保持しやすくなる点で好ましい。
また、内部鋼管22として、外径が大きいものを適宜採用することも好ましい(図2参照)。こうした場合には、オーガー3により埋設治具20を介して鋼管杭10を回転させる際により大きなトルクが得られる。異なる径の複数の鋼管を組み合わせて内部鋼管22の外径を途中で変えるようにしてもよい(図2、図6参照)。
内部鋼管(ガイド)22の上端には、オーガー3と連結するための係合用突起22aが形成されている。係合用突起22aは例えば等間隔(180度おき)に配置された2つの同形状の突起からなり(図2参照)、オーガー3によって回転駆動される際の回り止めとして機能する。この係合用突起22aを含む内部鋼管22の上端部の形状を杭10の上端部の形状と同様とすれば、オーガー3に対し、杭10と内部鋼管22の両方を補助具などを介さず直接取り付けることができる。
また、内部鋼管(ガイド)22の下端には、杭10を連結させるための杭係合部22bが形成されている。本実施形態における杭係合部22bは、杭10の係合用突起11が嵌まり込む切り欠き22cと、当該切り欠き22cを外側から覆うとともに強度を補強する切り欠きカバー22dとで構成されている(図4参照)。このような杭係合部22dの切り欠き22cおよび該切り欠き22cに嵌まり込んだ状態の杭10の係合用突起11は、内部鋼管22に対する杭10の周方向への回り止めとして機能する。したがって、内部鋼管22と杭10とを係合させた状態で埋設治具20を回転させると杭10も同量回転する。なお、杭10の係合用突起11は所定位置で当該切り欠き22cの壁(度当たり)に当接して位置決めされ、当該所定位置よりも奥には入り込むことができない(図3、図4参照)。また、切り欠きカバー22は、後述する可動蓋24のストローク端を規定する度当たりとしても機能する。
また、ホッパー(外枠体)21の例えば底部には、当該ホッパー21内に貯留された地盤改良材30を外部に流出させるための流出孔21aが設けられている(図2、図3参照)。例えば本実施形態では、ホッパー下部のテーパ状円筒部分の底部を開口させ、内部鋼管22を中心とした環状の流出孔21aを形成している(図2、図3参照)。
さらに、埋設治具20は、この流出孔21aを開閉する可動蓋(開閉蓋)24を備えている。例えば本実施形態の埋設治具20は、当該埋設治具20の地中への推進時、および地中からの引き上げ時に当該地中での抵抗を受けて流出孔21aを開閉する可動蓋24を備えている(図2、図3参照)。
本実施形態の可動蓋24は、内部鋼管22の周囲を軸方向に沿ってスライド可能であって尚かつ内部鋼管22の周囲を回転可能なパイプ部24aに、流出孔21aを塞ぎうる大きさの例えば円形の平板部24bを一体化した構造となっている。この可動蓋24は、平板部24bが流出孔21aの縁に当接した位置(上側ストローク端)と、パイプ部24aの縁が杭係合部22bの切り欠きカバー(度当たり)22dに当接した位置(下側ストローク端)との間の所定間隔をストローク可能である。
可動蓋24には、埋設治具20の地中からの引き上げ時における当該可動蓋24に対する地中での抵抗を増大させる抵抗増大部が設けられていることが好ましい。本実施形態では、パイプ部24aの周囲に螺旋状羽根24cを形成し、鋼管杭10の埋設時にこの螺旋状羽根24cをアンカーのように地盤Gに食い込ませ、引き上げ時における抵抗を増大させて可動蓋24を強制的に開かせるようにしている(図2、図3参照)。また、このような螺旋状羽根24cは、鋼管杭10の埋設時に鉛直軸周りに回転した際、地盤Gに食い込んで地中への推進力を生じさせ、当該鋼管杭10の埋設をより容易にさせる。
また、埋設治具20には、ホッパー21に対する可動蓋24の相対回転を所定時に規制するための装置、例えば凹部と該凹部に嵌まり込む突起との組み合わせ等からなる相対回転規制装置が設けられていることが好ましい。例えば本実施形態では、ホッパー21の底部に鉛直下向きに突出する例えば2個の相対回転規制用の突起(以下、共回り用突起ともいう)21bを設けるとともに、可動蓋24の平板部24bには、これら共回り用突起21bが嵌まり込みうる共回り用切り欠き24dを設けている(図3等参照)。共回り用突起21bが回転規制用切り欠き24bに嵌まり込んでいる状態で内部配管22およびホッパー21を回転させると、これらと共に可動蓋24を共回りさせ、ホッパー21等に対する相対回転を規制することができる。なお、共回り用突起21bは、杭を地中に埋設する際には共回り用切り欠き24dに嵌まり込んだ状態となる一方、埋設治具20の引き上げ時には共回り用切り欠き24dから自動的に抜け出ることができ、可動蓋24が開いた状態となるための動作を妨げることはない。
続いて、鋼管杭10を埋設する際の施工手順の一例を以下に説明する(図5等参照)。
まず、地盤Gへの鋼管杭10の建て込みに際しては、杭打機1の振れ止め装置4の開閉ガイド(図示省略)を開いておき、リーダー2に沿ってオーガー3を降下させ、鋼管杭10の基端をオーガー3に連結する。その後、オーガー3を上昇させて鋼管杭10を吊り込み、杭芯に合わせて当該鋼管杭10をセットする(図1参照)。鋼管杭10の先端を杭芯にセットしたら、開閉ガイドを閉じて振れ止め状態とし、鋼管杭10を把持させる。
ここで、鋼管杭10が鉛直に建て込まれていることを確認した後、オーガー3で鋼管杭10に正回転(右回転)を与え、当該鋼管杭10の螺旋状羽根12によって生じる推進力で地盤Gに埋設させる(図5(A)、(B)参照)。第1の鋼管杭10(10A)を埋設したら、必要に応じ、第2以降の鋼管杭10(10B)を溶接あるいは機械式継手などによって継ぎ足す(図5(C)参照)。
次に、本発明にかかる埋設治具20を所定位置に設置する。ここでは、第2の鋼管杭10(10B)の上部から埋設治具20を降下させ、内部鋼管22の内側に鋼管杭10を通した状態とする(図5(D)参照)。なお、後述する実施例におけるように、埋設治具20の内部鋼管22の中に第2の鋼管杭10(10B)を挿入し、挿入したまま両鋼管杭を継ぎ足すようにしてもよい。次いで、鋼管杭10の係合用突起11を、内部鋼管22の杭係合部22bの切り欠き22c(図5においては切り欠きカバー22dの図示を省略)に係合させる(図5(E)参照)。このとき、鋼管杭10が埋設治具20の内部鋼管22を通過した状態となっていることから、鋼管杭10を埋設治具20の回転中心にほぼ一致させた状態で保持することができる。
続いて、オーガー3で埋設治具20を正回転(右回転)させ、鋼管杭10をさらに埋設する(図5(F)参照)。本実施形態の場合、オーガー3による駆動力は、埋設治具20の係合用突起22a → 内部鋼管22 → 杭係合部22b → 係合用突起11 → 第1の鋼管杭10A → 第2の鋼管杭10Bという経路で鋼管杭10に伝達され、また、埋設治具20の係合用突起22a → 内部鋼管22 → スポーク(連結部材)23 → ホッパー21 → 共回り用突起21b → 共回り用切り欠き24d → パイプ部24a → 可動蓋24という経路で可動蓋24に伝達される。埋設治具20を正回転(右回転)させて鋼管杭10を埋設する際、当該鋼管杭10(本実施形態の場合第2の鋼管杭10B)の周辺をホッパー21によって拡大掘削することができる。
ここで、本実施形態では、埋設治具20のホッパー21の内部に所定量の地盤改良材(セメントミルクなど)30を充填し(図5(G)参照)、その後、埋設治具20のみを地盤Gから引き上げる(図5(H)参照)。埋設治具20の引き上げ時、土砂および地盤改良材30による重量、ならびに螺旋状羽根24cに作用する抵抗により可動蓋24がスライドし、流出孔21aが自動的に開く。したがって、埋設治具20の引き上げ動作に連動して地盤改良材30がこの流出孔21aから流出し、拡大掘削孔内の底部から順に打設され、鋼管杭10の周辺が地盤改良される(図5(I)参照)。
以上説明したように、本実施形態における鋼管杭10の施工方法によれば、鋼管杭10の埋設工程、地盤改良用の拡大掘削工程、場合によってはさらに地盤改良材30の打設工程といった各種工程を同時にまたは立て続けに実施することができる。すなわち、この施工方法によれば、埋設治具20を利用して鋼管杭10を地盤Gに埋設する工程と、ホッパー21によって鋼管杭10の周辺に拡大掘削孔を築造する工程とを同時に進行させることができ、しかも、埋設治具20を引き上げる際には拡大掘削した部分に地盤改良材30を打設することができる。これによれば、鋼管杭10の埋設工程と、改良体の築造工程という異なる工程を一度に行うことが可能となるため、施工時に経る工程数が減少し、施工効率を向上させることが可能となる。また、工程数が減少することは、鋼管杭10の施工時におけるコスト面や品質管理面においても有利である。
また、本実施形態における施工方法によれば、拡大径の掘削孔をあらかじめ築造することなく鋼管杭10を地盤Gに埋設し、当該鋼管杭10の上部の周辺のみを拡大掘削することができる(図5等参照)。これによれば、拡大掘削孔の中で地盤改良材30が固化するまでの間、鋼管杭10の先端を地中に埋設させ、拡大掘削孔の中で鋼管杭10が動き難い状態を維持することができる。このため、当該鋼管杭10の周辺に地盤改良材30を均等な状態で固化させることができるから、余分な調整・管理工程を経ずとも、鋼管杭10の水平耐力を向上させやすいという利点がある。
さらに、この施工方法においては、埋設治具20を引き上げながら、ホッパー21に貯留されている地盤改良材30を、地盤Gの土砂と混じり合わないようにしながら当該拡大掘削孔に対して打設すること(別言すれば、従来のような「混合打設」ではなく、「置換打設」すること)が可能である。したがって、鋼管杭10と地盤改良材30との境界面が地盤Gに接触することなく、拡大掘削孔内にて地盤改良材30のみを固化させることができることから、所望の強度を達成ないしは獲得しやすいという利点がある。
さらに、この施工方法は、地盤G中に地下水脈が存在する場合にも杭施工を有利に実施することが可能なものである。この点に関して説明を加えると、例えば従来のごとく地盤Gに拡大掘削孔をあらかじめ築造すると、場合によっては地下水脈を突っ切り、地下水が掘削孔内に流れ込んで孔壁が崩壊するといったことが生じ得る。この点、本実施形態の施工方法によれば、拡大掘削孔に地盤改良材30を打設する直前まで当該掘削孔の孔壁をホッパー21で押さえているから(図5(G)等参照)、たとえ拡大掘削孔が地下水脈を突っ切っていても、地下水が流れ込むのを地盤改良材30の打設直前まで阻止することができる。したがって、この施工方法によれば杭施工時の品質を従来よりも向上させることができるという利点、従来の施工方法におけるよりも地盤改良材30による改良効果を発揮させ、鋼管杭10の水平耐力をさらに向上させやすいという利点もある。
また、この施工方法においては、拡大径の掘削孔をあらかじめ築造することなく、ホッパー(外枠体)21を回転させながら地中に推進させて拡大掘削孔を築造するといったことから、施工時に排土が行われないという点でも特徴的である。すなわち、鋼管杭10の施工時に発生する残土(建設副産物)をなくす(あるいは少なくする)ことで、残土処分費(産業廃棄物扱い)を削減することが可能になる。また、このように建設副産物の発生を抑制することは環境面でも望ましいことである。
また、鋼管杭10のガイドとしての内部鋼管22を備えた埋設治具20を利用して鋼管杭10を施工する本実施形態の施工方法によれば、以下のような利点もある。すなわち、内部鋼管22は、ホッパー21内に充填された地盤改良材30と鋼管杭10とを分離しており、当該地盤改良材30が流出孔21aから流出するまでは、地盤改良材30が鋼管杭10の表面に付着しない状態を維持する(図5(G)、(H)等参照)。また、例えば第2の鋼管杭10(10B)の上部から埋設治具20を所定位置に設置する際(図5(D)参照)、ガイドが例えば途中で途切れた不連続な構造の場合には、鋼管杭10の中心に埋設治具20の中心を位置合わせしながら埋設治具20を設置する必要が生じるが、本実施形態の場合には内部鋼管22の内周面に沿って鋼管杭10を案内しやすく、設置途中で何度も位置合わせするような手間がない。
さらに加えると、この施工方法においては、地盤改良材30の分量を把握しやすいという利点もある。すなわち、拡大掘削孔はホッパー21の外形どおりに築造されることから、この拡大掘削孔に打設すべき地盤改良材30の分量はホッパー21の容量に基づいて容易に算出することができ、したがって地盤改良材30をどの程度の量だけ準備すればいいのか把握しやすい。この点でも、鋼管杭10の施工時におけるコスト面や品質管理面で有利である。なお、鋼管杭10やホッパー21をどの程度の深さまで推進させるかは支持される構造物の設計等に応じて適宜変わりうるが、ホッパー21の容量を参考にすれば拡大掘削孔に打設すべき地盤改良材30の分量が常に把握しやすい。
なお、以下に、本実施形態の具体例を付記しておく。本実施例では、直径約165mmの鋼管杭10を10m(第1の鋼管杭10Aが5m、第2の鋼管杭10Bが5m)埋設するのと同時に直径約700mmの地盤改良体を深さ約5m築造した。すなわち、最初に第1の鋼管杭(下杭)10Aを通常通り埋設し(図5(B)参照)、その後、従来であればそのまま第2の鋼管杭(上杭)10Bを継ぎ足して埋設するところ、ここでは一体化された埋設治具20の内部鋼管22の中に第2の鋼管杭(上杭)10Bを挿入し、挿入したまま両杭(下杭と上杭)を継ぎ合わせた。その後、鋼管杭10をそのまま地盤Gに所定深度(この場合は10m)まで埋設した。この時点で、鋼管杭10は10mの深さまで埋設され、鋼管杭10が挿入された状態の埋設治具20は5m埋設された状態となった。また、この時点における埋設治具20のホッパー21の内部は、流出孔21aが可動蓋24で蓋がされていたため空洞であった。引き続き、このホッパー21内の空洞の中に地盤改良材30を投入して充填し、そのまま埋設治具20を無回転(ただし、回転させてもよい)で引き上げ回収した。埋設治具20を引き上げるとき、螺旋状羽根24cがアンカーとして機能することによって可動蓋24が相対的にスライドし、流出孔21aが開いて地盤改良材30が流出した。流出した改良材は、そのまま鋼管杭10の周辺における改良体となり当該鋼管杭10と一体化した。このとき、鋼管杭10は周辺の地盤Gに触れることはないので、鋼管杭10の表面に土が付着することはなかった。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、地盤Gから埋設治具20を引き上げながら拡大掘削孔に地盤改良材30を打設するようにしたが(図5(H)等参照)、この他、鋼管杭10などの基礎杭を用いない場合であれば改良体のみを築造することも可能である。こうした場合には、当該拡大掘削孔には全長にわたって柱状改良体が形成されることになる。
また、上述した実施形態では可動蓋24のパイプ部24aの周囲に螺旋状羽根24cが形成されている埋設治具20を例示したが、この他の部位、例えばホッパー21の外周面に別の螺旋状羽根が形成されていてもよい。
また、上述した実施形態ではホッパー21の上縁と鋼管杭10との位置関係について詳述しなかったが、ホッパー21としての外枠体は、その上縁が、埋設対象である鋼管杭10の杭頭と略等しい高さに位置するように形成されていることが好ましい。こうした場合、例えば図5に示したように、鋼管杭10の上部周辺のみを地盤改良し、水平耐力の向上に有用な改良体を有効的に形成することができる。
また、上述した実施形態では施工対象となる杭の具体例として鋼管杭を示したがこれは好適な一例にすぎず、例えばコンクリート製杭など他の種類の杭に対しても本発明を適用することが可能である。
<第2の実施形態>
上述した実施形態とは異なる構造の可動蓋24を採用した埋設治具20および該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法を、本発明の第2の実施形態として以下に説明する(図6、図7参照)。なお、図6では、ホッパー21のみを半裁してその内部も示している。
上述した実施形態とは異なる構造の可動蓋24を採用した埋設治具20および該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法を、本発明の第2の実施形態として以下に説明する(図6、図7参照)。なお、図6では、ホッパー21のみを半裁してその内部も示している。
本実施形態の埋設治具20は、ホッパー(外枠体)21に蝶番式の可動蓋(開閉蓋)24が設けられているというものである。この場合、可動蓋24および該可動蓋24によって開閉される流出孔21aの個数や配置は特に限定されないが、例えば本実施形態では、ホッパー21のテーパ部の2箇所に流出孔21aを設け、これら流出孔21aのそれぞれに可動蓋24を設けている(図6等参照)。各可動蓋24は、流出孔21aの下縁近傍の支点24eに対して蝶番で開閉可能に接続された開き蓋であり、流出孔21aの内側のストッパ21fに度当たりして動きが規制される閉位置から外側へ開くことができる。例えば本実施形態では、ホッパー21の内部に充填された地盤改良材30によって受ける圧力によって自動的に開くようにしている(図7(C)等参照)。
上述の埋設治具20を用いた鋼管杭10を埋設する際の施工手順の一例を以下に説明する(図7参照)。ただし、鋼管杭10の地盤Gへの建て込み工程など、第1の実態形態と同様の工程については説明を省略する。
建て込み工程(ここでは説明を省略)を経たら、鋼管杭10を所定深度まで地盤Gに貫入させ、埋設する(図7(A))。その後、埋設治具20のホッパー21の内部に所定量の地盤改良材(セメントミルクなど)30を充填し(図7(B)参照)、その後、埋設治具20のみを地盤Gから引き上げる(図7(C)参照)。埋設治具20を引き上げると、地盤改良材30から圧力を受けている可動蓋21が自動的に開き、流出孔21aから地盤改良材30が流出して拡大掘削孔内に打設される(図7(C)、(D)参照)。埋設治具20を完全に引き上げると、所定量の地盤改良材30が打設され、施工が完了する(図7(E)参照)。
<第3の実施形態>
以下、他動式の可動蓋24を採用した埋設治具20および該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法を、本発明の第3の実施形態として説明する(図8、図9参照)。なお、図8では、ホッパー21のみを半裁してその内部も示している。
以下、他動式の可動蓋24を採用した埋設治具20および該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法を、本発明の第3の実施形態として説明する(図8、図9参照)。なお、図8では、ホッパー21のみを半裁してその内部も示している。
本実施形態の埋設治具20は、ホッパー(外枠体)21にスライド式の可動蓋(開閉蓋)24が設けられているというものである。この場合、可動蓋24および該可動蓋24によって開閉される流出孔21aの個数や配置は特に限定されないが、例えば本実施形態では、ホッパー21のテーパ部の2箇所に流出孔21aを設け、これら流出孔21aのそれぞれに可動蓋24を設けている(図8等参照)。各可動蓋24は、流出孔21aの周囲に形成されたガイド24hに案内され、当該テーパ部の母線方向にスライド可能である。また、可動蓋24には引き抜き用ライン24gの一端が取り付けられている。引き抜き用ライン24gの他端は例えばホッパー21の上縁に引っ掛けられるなど、地上から操作可能な位置に取り付けられている(図8等参照)。
上述の埋設治具20を用いた鋼管杭10を埋設する際の施工手順の一例を以下に説明する(図9参照)。ただし、鋼管杭10の地盤Gへの建て込み工程など、第1の実態形態と同様の工程については説明を省略する。
建て込み工程(ここでは説明を省略)を経たら、鋼管杭10を所定深度まで地盤Gに貫入させ、埋設する(図9(A))。その後、埋設治具20のホッパー21の内部に所定量の地盤改良材(セメントミルクなど)30を充填し(図9(B)参照)、引き抜き用ライン24gを引いて可動蓋21を外し、流出孔21aを開く(図9(C)参照)。その後、埋設治具20のみを地盤Gから引き上げると、流出孔21aから地盤改良材30が流出して拡大掘削孔内に打設される(図9(D)参照)。埋設治具20を完全に引き上げると、所定量の地盤改良材30が打設され、施工が完了する(図9(E)参照)。
<第4の実施形態>
以下、さらに別形態の可動蓋24を採用した埋設治具20および該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法を、本発明の第4の実施形態として説明する(図10、図11参照)。なお、図10では、ホッパー21のみを半裁してその内部も示している。
<第4の実施形態>
以下、さらに別形態の可動蓋24を採用した埋設治具20および該埋設治具20を利用した鋼管杭10の施工方法を、本発明の第4の実施形態として説明する(図10、図11参照)。なお、図10では、ホッパー21のみを半裁してその内部も示している。
本実施形態の埋設治具20は、ホッパー(外枠体)21にゴム弁からなる可動蓋(開閉蓋)24が設けられているというものである。この場合、可動蓋24および該可動蓋24によって開閉される流出孔21aの個数や配置は特に限定されないが、例えば本実施形態では、ホッパー21のテーパ部に流出孔21aを設け、この流出孔21aにゴム弁を設けて可動蓋24としている(図10等参照)。また、埋設治具20の流出孔21aには、地盤改良材30を圧送するための圧送パイプ24iが接続されている(図10等参照)。
上述の埋設治具20を用いた鋼管杭10を埋設する際の施工手順の一例を以下に説明する(図11参照)。ただし、鋼管杭10の地盤Gへの建て込み工程など、第1の実態形態と同様の工程について説明を省略しているのが上述の場合と同じである。
建て込み工程(ここでは説明を省略)を経たら、鋼管杭10を所定深度まで地盤Gに貫入させ、埋設する(図11(A))。その後、圧送パイプ24iに、一端が例えばプラントに接続されているホース24jを接続する(図11(B)参照)。その後、埋設治具20のみを地盤Gから引き上げると同時に、ホース24jおよび圧送パイプ24iを介して地盤改良材30を圧送する。圧送された地盤改良材30は流出孔21aから流出し、拡大掘削孔内に打設される(図11(C)参照)。埋設治具20を完全に引き上げ、所定量の地盤改良材30を打設すると施工が完了する(図11(D)参照)。
本実施形態の場合、地盤改良材30は、ホッパー21内に貯留されずに、圧送パイプ24iを介して拡大掘削孔に直接的に打設される。本実施形態における符号21は他の実施形態と同様「ホッパー」であるが、他の実施形態におけるような貯留装置としては機能しておらず、もっぱら拡大掘削および該掘削孔の形状維持(孔壁維持)のための外枠を有する装置として機能している。
<第5の実施形態>
まず、地盤Gへの鋼管杭10の建て込みに際しては、杭打機1の振れ止め装置4の開閉ガイド(図示省略)を開いておき、リーダー2に沿ってオーガー3を降下させ、鋼管杭10の基端をオーガー3に連結する。その後、オーガー3を上昇させて鋼管杭10を吊り込み、杭芯に合わせて当該鋼管杭10をセットする(図1参照)。鋼管杭10の先端を杭芯にセットしたら、開閉ガイドを閉じて振れ止め状態とし、鋼管杭10を把持させる。
まず、地盤Gへの鋼管杭10の建て込みに際しては、杭打機1の振れ止め装置4の開閉ガイド(図示省略)を開いておき、リーダー2に沿ってオーガー3を降下させ、鋼管杭10の基端をオーガー3に連結する。その後、オーガー3を上昇させて鋼管杭10を吊り込み、杭芯に合わせて当該鋼管杭10をセットする(図1参照)。鋼管杭10の先端を杭芯にセットしたら、開閉ガイドを閉じて振れ止め状態とし、鋼管杭10を把持させる。
ここで、鋼管杭10が鉛直に建て込まれていることを確認した後、オーガー3で鋼管杭10に正回転(右回転)を与え、当該鋼管杭10の螺旋状羽根12によって生じる推進力で地盤Gに埋設させる(図12(A)、(B)参照)。第1の鋼管杭10(10A)を埋設したら、必要に応じ、第2以降の鋼管杭10(10B)を溶接あるいは機械式継手などによって継ぎ足す(図12(C)参照)。
次に、本発明にかかる埋設治具20を所定位置に設置する。ここでは、第2の鋼管杭10(10B)の上部から埋設治具20を降下させ、内部鋼管22の内側に鋼管杭10を通した状態とする(図12(D)参照)。なお、後述する実施例におけるように、埋設治具20の内部鋼管22の中に第2の鋼管杭10(10B)を挿入し、挿入したまま両鋼管杭を継ぎ足すようにしてもよい。次いで、鋼管杭10の係合用突起11を、内部鋼管22の杭係合部22bの切り欠き22c(図12においては切り欠きカバー22dの図示を省略)に係合させる(図12(E)参照)。このとき、鋼管杭10が埋設治具20の内部鋼管22を通過した状態となっていることから、鋼管杭10を埋設治具20の回転中心にほぼ一致させた状態で保持することができる。
続いて、オーガー3で埋設治具20を正回転(右回転)させ、鋼管杭10をさらに埋設する(図12(F)参照)。本実施形態の場合、オーガー3による駆動力は、埋設治具20の係合用突起22a → 内部鋼管22 → 杭係合部22b → 係合用突起11 → 第1の鋼管杭10A → 第2の鋼管杭10Bという経路で鋼管杭10に伝達され、また、埋設治具20の係合用突起22a → 内部鋼管22 → スポーク(連結部材)23 → ホッパー21 → 共回り用突起21b → 共回り用切り欠き24d → パイプ部24a → 可動蓋24という経路で可動蓋24に伝達される。埋設治具20を正回転(右回転)させて鋼管杭10を埋設する際、当該鋼管杭10(本実施形態の場合第2の鋼管杭10B)の周辺をホッパー21によって拡大掘削することができる。
次に、埋設治具20のみを地盤Gから引き上げる(図12(G)参照)。埋設治具20を引き上げると、地盤Gには、ホッパー21の外形どおりの拡大掘削孔が築造されている(図12(H)参照)。その後、この拡大掘削孔に地盤改良材を打設し、地盤改良を行う。この際、地盤Gから引き上げた埋設治具20を利用して、次なる鋼管杭10の埋設および拡大掘削孔の築造を並行して行うことが可能である。
以上説明したように、本実施形態における鋼管杭10の施工方法によれば、鋼管杭10の埋設工程、地盤改良用の拡大掘削工程、といった各種工程を同時に実施することができる。すなわち、この施工方法によれば、埋設治具20を利用して鋼管杭10を地盤Gに埋設する工程と、ホッパー21によって鋼管杭10の周辺に拡大掘削孔を築造する工程とを同時に進行させることができる。これによれば、鋼管杭10の埋設工程と、拡大掘削孔の築造工程という異なる工程を一度に行うことが可能となるため、施工時に経る工程数が減少し、施工効率を向上させることが可能となる。また、工程数が減少することは、鋼管杭10の施工時におけるコスト面や品質管理面においても有利である。
また、本実施形態における施工方法によれば、拡大径の掘削孔をあらかじめ築造することなく鋼管杭10を地盤Gに埋設し、当該鋼管杭10の上部の周辺のみを拡大掘削することができる(図12等参照)。これによれば、その後に打設される地盤改良材30が拡大掘削孔の中で固化するまでの間、鋼管杭10の先端を地中に埋設させ、拡大掘削孔の中で鋼管杭10が動き難い状態を維持することができる。このため、当該鋼管杭10の周辺に地盤改良材30を均等な状態で固化させることができるから、余分な調整・管理工程を経ずとも、鋼管杭10の水平耐力を向上させやすいという利点がある。
また、この施工方法においては、拡大径の掘削孔をあらかじめ築造することなく、ホッパー(外枠体)21を回転させながら地中に推進させて拡大掘削孔を築造するといったことから、施工時に排土が行われないという点でも特徴的である。すなわち、鋼管杭10の施工時に発生する残土(建設副産物)をなくす(あるいは少なくする)ことで、残土処分費(産業廃棄物扱い)を削減することが可能になる。また、このように建設副産物の発生を抑制することは環境面でも望ましいことである。
さらに、この施工方法によれば、埋設治具20を地中から引き上げた後、拡大掘削した部分に地盤改良材を打設しながら、他の場所において次の鋼管杭10を埋設することが可能である。つまり、本実施形態の施工方法によれば、一の杭の埋設・拡大掘削孔の築造の工程を終えた後、当該拡大掘削した部分に地盤改良材を打設する工程と、次なる杭の埋設・拡大掘削孔の築造の工程とを並行して進めることができるから、施工速度を向上させて全体に要する施工時間を短縮することが可能である。一般的な杭施工に際しては、所定の範囲に複数の鋼管杭10を一機(ないしは限られた数)の杭打機1で順次施工することが多く行われていると考えられるところ、本実施形態の杭施工方法のように、一の鋼管杭10の埋設・拡大掘削孔の築造の工程と、拡大掘削孔に地盤改良材を打設して固化させる工程とを別個独立に実施することができれば、異なる場所で各工程を並行して進めることが可能になるという点で好ましい。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、可動蓋24のパイプ部24aの周囲に螺旋状羽根24cが形成されている埋設治具20を例示したが、この他の部位、例えばホッパー21の外周面に別の螺旋状羽根が形成されていてもよい。
また、上述した実施形態では施工対象となる杭の具体例として鋼管杭を示したがこれは好適な一例にすぎず、例えばコンクリート製杭など他の種類の杭に対しても本発明を適用することが可能である。
また、上述した実施形態では、ホッパー(外枠体)21を地中から完全に引き出した後に地盤改良材を充填する態様を例示したが(図12(H)、(I)参照)、これも好適な一例にすぎない。この他、例えば、ホッパー21が完全に地中から引き出されるよりも前に拡大掘削孔への地盤改良材の打設を開始してももちろん構わない。要は、本発明にかかる施工方法においては、埋設治具20を介さずに地盤改良材を打設すること、地盤改良材の打設とは無関係に埋設治具20を使用することが可能となっている。したがって、ホッパー21が地中から完全に引き出されたかどうかは、地盤改良材の打設タイミングに影響を与えない。
さらに、上述した実施形態では、流出孔21a、可動蓋24などを備えた埋設治具20を例示したうえで鋼管杭10の施工方法を説明したが、このような埋設治具20も好適な一例にすぎない。詳述すれば、上述した構造の埋設治具20は、ホッパー21内に充填された地盤改良材を流出孔21aから流出させることによって当該地盤改良材を拡大掘削孔に打設する場合に有用なものであるが、これ以外の構造の埋設治具20によっても本発明を実施することが当然に可能である。例示すれば、これらのような流出孔21aや可動蓋24などを備えていない、単なる容器状のホッパー(外枠体)21によっても上述した実施形態と同様に本発明を実施することが可能である。
本発明は、螺旋状羽根を有する杭(例えば鋼管杭)を振れ止めしながら回転させ、地盤に埋設する場合に埋設治具を利用する場合に適用して好適である。
Claims (19)
- 地盤を拡大掘削するとともに地盤改良材を貯留可能なホッパーとして機能する外枠体と、前記杭の杭芯を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態を保持するガイドと、を備える前記埋設治具を用い、
前記杭を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持し、該埋設治具を回転させて前記杭を地中に埋設するとともに前記外枠体によって前記杭の周辺を拡大掘削し、前記外枠体に貯留されている前記地盤改良材を、前記埋設治具を地中から引き上げながら前記拡大掘削した部分に打設することによって当該杭の周辺を地盤改良する、埋設治具を利用した杭の施工方法。 - 前記埋設治具の地中への推進時および地中からの引き上げ時に当該地中での抵抗を受けて前記地盤改良材の流出孔を開閉する開閉蓋が設けられた埋設治具を利用する、請求項1に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 引き上げ時における前記開閉蓋に対する地中での抵抗を増大させる抵抗増大部が当該開閉蓋に設けられた埋設治具を用いる、請求項2に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 前記抵抗増大部は回転時に地中への推進力を生じさせる羽根であり、前記杭の埋設時、当該埋設治具を回転させる、請求項3に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 前記杭を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持する際、当該杭の杭頭部を、前記外枠体の上縁の高さに略等しくなる位置で保持する、請求項1から4のいずれか一項に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 埋設治具が回転力を伝達する杭の上部に別の杭が接続されてガイドに保持されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 前記ガイドとして、前記外枠体の中心に配置した管状部材を用いる、請求項1から6のいずれか一項に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 地盤を拡大掘削する外枠体と、前記杭の杭芯を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態を保持するガイドと、を備える前記埋設治具を用い、
前記杭を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態で保持し、該埋設治具を利用して前記杭を地中に埋設するとともに前記外枠体により前記杭の周辺を拡大掘削し、前記埋設治具を介さずに、前記拡大掘削した部分に前記地盤改良材を打設することによって当該杭の周辺を地盤改良する、埋設治具を利用した杭の施工方法。 - 埋設治具が回転力を伝達する杭の上部に別の杭が接続されてガイドに保持されている、請求項8に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 前記埋設治具を地中から引き上げる途中または引き上げた後、前記拡大掘削した部分に前記地盤改良材を打設する、請求項8または9に記載の埋設治具を利用した杭の施工方法。
- 杭施工用の埋設治具であって、
地盤を拡大掘削する外枠体と、
施工対象とする前記杭の杭芯を当該埋設治具の回転中心に略一致させた状態を保持するガイドと、
前記杭の一部に係合する杭係合部と、
を備える、杭施工用埋設治具。 - 前記外枠体が、地盤改良材を貯留可能なホッパーであり、該ホッパーには前記地盤改良材の流出孔が設けられている、請求項11に記載の杭施工用埋設治具。
- 当該埋設治具の地中への推進時、および地中からの引き上げ時に当該地中での抵抗を受けて前記流出孔を開閉する開閉蓋が設けられている、請求項12に記載の杭施工用埋設治具。
- 前記流出孔は前記ホッパーの底部に設けられている、請求項13に記載の杭施工用埋設治具。
- 当該埋設治具の地中からの引き上げ時における前記開閉蓋に対する地中での抵抗を増大させる突起物が当該開閉蓋に設けられている、請求項14に記載の杭施工用埋設治具。
- 前記突起物は、回転時に地中への推進力を生じさせる羽根である、請求項15に記載の杭施工用埋設治具。
- 前記ホッパーとしての外枠体は、その上縁が、施工対象である前記杭の杭頭と略等しい高さに位置するように形成されている、請求項11から16のいずれか一項に記載の杭施工用埋設治具。
- 前記ガイドは、前記杭の外径よりも内径が大きい内部鋼管であり、該内部鋼管の軸が前記外枠体の回転中心と略一致するように一体化された、請求項11から17のいずれか一項に記載の杭施工用埋設治具。
- 前記外枠体の少なくとも一部がテーパ状である、請求項11から18のいずれか一項に記載の杭施工用埋設治具。
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