JP5665715B2 - 遠心薄膜乾燥機、及びその洗浄方法 - Google Patents
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Description
また、原子力施設では、例えば加圧水型原子炉(PWR)において、ホウ酸を含む廃液が発生し、この廃液を乾燥・粉体化する遠心式薄膜乾燥機が用いられている。この廃液に対しカルシウムを添加してホウ酸を不溶化する処理がなされるため、遠心式薄膜乾燥機には、ホウ酸カルシウムを主成分とするスケールが付着する。
遠心薄膜乾燥機に関して、定格運転の期間中に粉体付着の最も多い軸方向中央部分に温水をスプレーして付着物を溶解洗浄する工程を設けるスケールの除去技術が開示されている(例えば、特許文献1,2)
蒸発装置に関して、高圧水を吹き付けてカルシウム塩のスケールを除去する技術が開示されている(例えば、特許文献3)。
また、強酸に属さない酸性洗浄剤として、グリシン型両性界面活性剤、乳酸、ノニオン界面活性剤、ヒドロキシアルキルセルロース又はキサンタンガム等の混合物が開示され(例えば、特許文献5)、その他にもホスホン酸、カルボキシル基を2個以上持つ有機酸とキレート剤の混合物(例えば、特許文献6)、有機酸のクエン酸と無機酸のスルファミン酸の混合物(例えば、特許文献7)が開示されている。
原子力施設で用いられる遠心薄膜乾燥機の場合、前記した洗浄方法は定格運転における性能維持の観点から実施されるもので、機器の分解点検時に残留付着物から作業員が受ける放射線の被曝量を低減させることについては考慮されていない。
原子力施設で用いられる遠心薄膜乾燥機の場合、放射性二次廃棄物の増加は避けたいところである。また、廃棄物をコンクリートで固化処分する際に、キレート剤は、核種の閉じ込め性に悪影響を与える場合があることから、キレート剤を含む洗浄剤の使用も避けたいところである。
図1に示すように実施形態に係る遠心薄膜乾燥機の洗浄方法は、この遠心薄膜乾燥機に廃液を投入して粉体化する粉体化工程(S11)、この粉体化工程のインターバルに遠心薄膜乾燥機を簡易洗浄する工程(S12,S13;NO)、分解工程(S15)に先立って遠心薄膜乾燥機を洗浄剤で徹底洗浄する工程(S13;YES,S14)、を含む。
そして、徹底洗浄工程(S14)の終了後、遠心薄膜乾燥機を分解し(S15)、構成部品の点検、修理、交換、組み立て等といった検査工程を実施する(S15,S16)。
廃液供給部12から供給される廃液は、弁14を介して、遠心薄膜乾燥機20の投入口21に投入される。この遠心薄膜乾燥機20に投入された廃液は、伝熱面23を濡らしながら降下する間に加熱され、廃液中の液体は蒸発し固形分はこの伝熱面23に付着する。
なお、この伝熱面23は、加熱蒸気17が入口24から流入して出口25から排出することにより、連続的に熱供給される。
この掻き落とされた固形分は、乾燥粉体となって遠心薄膜乾燥機20の下部排出口22から排出され、弁16を介して粉体蓄積部42に蓄積される。そしてこの粉体蓄積部42に蓄積された乾燥粉体は、放射性廃棄物としてコンクリートで固化処分される。
廃液に含まれる固形分のうち一部は、下部排出口22から排出されることなく、回転軸26及び回転翼27に付着し、その付着量は粉体化工程(図1;S11)の進行とともに増大していく。すると、遠心薄膜乾燥機20の運転の安定性が次第に低下していく。
そこで、粉体化工程(図1;S11)のインターバルに、遠心薄膜乾燥機を洗浄液(水又は水を加温した温水)で簡易洗浄する工程(S12)を実行する。
この剥離した固形分は、洗浄液とともに遠心薄膜乾燥機20の下部排出口22から排出され、弁16を介して洗排液蓄積部41に蓄積される。
この洗排液蓄積部41の蓄積物は、廃液供給部12にフィードバックされて、次回の粉体化工程(S11)において遠心薄膜乾燥機20で再処理されることになる。
遠心薄膜乾燥機20の定格運転が終了すると、次に遠心薄膜乾燥機20の定期検査が実行される。定期検査直前における遠心薄膜乾燥機20の回転軸26及び回転翼27の表面には、簡易洗浄工程(図3)では落としきれない固形分がスケールとして付着している。
定期検査は、機器の分解・組み立ての作業(図1;S15)を伴うため、作業員の被曝量を極力低減するために、回転軸26及び回転翼27の表面に付着するスケールを徹底洗浄する。なお、徹底洗浄とは上述した簡易洗浄に使用する洗浄液よりもカルシウム塩のスケールの溶解能が高い洗浄剤を使用する洗浄である。
ここで洗浄剤は、ギ酸の濃度が0.5〜10wt%、好ましくは1〜5wt%の範囲に調整されている。
洗浄剤のギ酸濃度が0.5wt%未満であると、遠心薄膜乾燥機20に付着するスケールを除去するのに必要な洗浄剤が大量となりその処理負担が大きくなる。また洗浄剤のギ酸濃度が10wt%を超えると、揮発により作業環境が悪化する。
また使用する洗浄剤の量は、金属表面に付着するスケール中のカルシウムの想定量に対し、有機酸のモル比が2倍以上になるように設定することが望ましい。
前記したギ酸の水溶液は、高温であるほどカルシウム塩のスケールの溶解度が向上するために、洗浄剤の温度は、60℃以上に設定されることが望ましい。
また、このpH検出部35の検出値に基づいて、新規にギ酸(有機酸)を投入して、洗浄剤を適正濃度に制御することができる。
図4では洗浄剤を循環させる徹底洗浄工程を示したが、図5は洗浄剤をワンパスで流動させる徹底洗浄工程を示している。
この場合、遠心薄膜乾燥機20の内部を洗浄剤で満たし、回転軸26及び回転翼27をドブ付けした状態で間欠的に低速回転させることが望ましい。
これにより、スケールの付着した金属表面に対し、洗浄剤が流動接触することとなり、洗浄剤を循環させた場合と同様の洗浄効果を得ることができる。
スケールのサンプルは、次のように作製した。まず、ホウ酸溶液を水酸化ナトリウムで中和しホウ酸ナトリウムを形成させ、さらに水酸化カルシウムを添加してホウ酸カルシウムCa(BO2)2を主成分とした模擬廃液を作製した。
作製した模擬廃液を、遠心式薄膜乾燥機のモックアップに投入して乾燥処理を実行し、その金属表面にスケールを付着させた。そしてこの付着したスケールを剥離させて実験用のスケールサンプルとした。
これら各種溶媒100mLを60℃に設定し、スケールサンプル3gとともにスターラーで10時間撹拌した。撹拌終了後、孔径0.45μmのシリンジフィルタを通してサンプリングした溶液のカルシウム濃度を測定し、スケールサンプルの溶解率を算出した結果を図6に示す。
図6の結果から、カルシウム塩のスケールの溶解能は、有機酸であるギ酸が一番優れるといえる。
有機酸溶媒としてそれぞれ2.5wt%に濃度設定されたギ酸(実施例2)、クエン酸(比較例4)、L−アスコルビン酸(比較例5)を用い、参考例として水溶媒も用いた。
これら各種溶媒に対し、図6と同じ条件でスケールサンプルを溶解させ溶解率を算出した結果を図7に示す。
図7の結果から、カルシウム塩のスケールの溶解能は、有機酸のなかでもギ酸が一番優れ、スケールサンプルの全量溶解が確認された。
図8より、カルシウム塩のスケールの溶解が進行するのに伴ってギ酸は消費され、スケールを全部溶解させるのに必要なギ酸量が不足するほど、溶液のpHはアルカリ側にシフトしていくことが判る。
これより、カルシウム塩の溶液(洗浄剤)のpHを監視することで、スケールの溶解反応に対するギ酸量の過不足を把握することができる。そして、この過不足情報に基づいてギ酸量を適宜追加制御して、遠心薄膜乾燥機を効率的に洗浄することが可能になる。
図9より、ギ酸/カルシウムのモル比が2以上であることにより、ビーカに投入されたスケールサンプルの全量が溶解することを確認した。このことから、機器に付着したスケールのカルシウム当量に対しモル比で2倍以上のギ酸を含む洗浄剤を用いれば、スケールを全量溶解することが可能である。
但し、スケールは全量が溶解しなくても、ある程度溶解し構造が崩れると機器表面から脱落して除去されるために、事情によってはモル比が2倍以上である必要はない。
その結果、スケールサンプルを全溶解させるのに十分なギ酸量の存在下であっても、流動無し条件においては、温度上昇に伴い溶解率が向上する傾向が確認された。さらに、流動有り条件では、温度に依存せずスケールサンプルの全量溶解が確認された。
このことから、洗浄剤を流動させること、又は加温することにより、スケールの溶解が促進されることが実証された。これらの結果より、遠心薄膜乾燥機において、ポンプによる洗浄液の循環や、回転軸を低速回転させることにより、洗浄剤を加温しなくても十分な洗浄性が得られる。また、洗浄液を流動させなくとも、60℃以上に加温することにより洗浄性を向上させることができる。
実施形態において遠心薄膜乾燥機に付着したスケールの洗浄方法について例示したが、発明の適用対象は、遠心薄膜乾燥機に限定されるものでなく、ボイラーや熱交換器といった一般産業機器にも適用することができる。
また、適用対象を特に限定せずに、カルシウム塩のスケールを洗浄するための洗浄剤としても発明の保護の範囲が及ぶ。
Claims (6)
- 少なくともギ酸を成分に有し金属表面に付着したカルシウム塩のスケールを洗浄する難溶解性付着物の洗浄剤を供給する供給タンクが接続されることを特徴とする遠心薄膜乾燥機。
- 請求項1に記載の遠心薄膜乾燥機において、
前記洗浄剤は、ギ酸の濃度が0.5〜10wt%の範囲に調整されていることを特徴とする遠心薄膜乾燥機。 - 請求項1又は請求項2に記載の遠心薄膜乾燥機において、
前記洗浄剤を循環させる循環路を備えることを特徴とする遠心薄膜乾燥機。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の遠心薄膜乾燥機において、
前記洗浄剤を加熱する加熱部を備えることを特徴とする遠心薄膜乾燥機。 - 請求項3又は請求項4に記載の遠心薄膜乾燥機において、
前記循環している洗浄剤の水素イオン濃度を検出するpH検出部を備えることを特徴とする遠心薄膜乾燥機。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の遠心薄膜乾燥機にカルシウムを含む廃液を投入して粉体化する粉体化工程と、
前記粉体化工程のインターバルに前記遠心薄膜乾燥機を簡易洗浄する工程と、
分解工程に先立って前記遠心薄膜乾燥機を前記洗浄剤で徹底洗浄する工程と、を含むことを特徴とする遠心薄膜乾燥機の洗浄方法。
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