JP5664950B2 - 転造チタン合金ねじ - Google Patents

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Description

この発明は、浸炭処理された転造チタン合金ねじおよびその製造方法に関する。
チタン合金は、比強度、破壊靱性、耐熱性及び耐食性などに優れた特性を有しているため、航空機材料として重要な素材であり、航空機の軽量化や大型化などに伴い、ファン用ブレード、ディスク、コンプレッサ、結合金具類やファスナー類などの一次構造部材に使用されるなど、その使用量も増加しつつある。
チタン合金に対する表面硬化処理として、プラズマ浸炭処理を行う方法が知られている。
このプラズマ浸炭処理では、処理室内に被処理物の載置台が前記直流電源の陰極に接続され、処理室の外壁が直流電源の陽極に接続されており、予め真空雰囲気とした処理室内に水素ガスとアルゴンなどの不活性ガスとの混合ガスを導入し、前記両極間に直流電圧を加えてグロー放電させ、イオン化した水素やアルゴンを金属被処理物の表面に衝突させて、先ずクリーニング処理として酸化被膜などの付着物を除去する。次いで、メタンやプロパンなどの炭化水素系の浸炭用ガスと希釈ガスとの混合ガスを処理室内に導入することにより、前記グロー放電により活性炭素イオンを発生させる。
この活性炭素イオンがチタン金属などの金属被処理物の表面に付着して内部拡散するか、または加速された活性炭素イオンが金属被処理物の内部に打ち込まれるなどして、Tiなどの金属原子と結合し、TiCなどの金属炭化物を含む浸炭層(硬化層)が形成される。
特に、前記処理室内の雰囲気温度を比較的低温に調整し、チタン合金ねじ素材に対してプラズマ浸炭処理し、その後にねじ転造を行なうことにより、ねじ底にプラズマ浸炭による硬化とねじ転造による強化が相乗的に作用し、摩擦特性や締付け特性が改善されることが知られている(特許文献1)。
特開2006−307348号公報
しかし、チタン合金ねじ素材に対してプラズマ浸炭処理する際、5μm以上、例えば10μm程度の深さの浸炭層を形成し、このように浸炭層が表面からできるだけ深くまで硬化されていればよいとするならば、引張りやせん断の応力が作用した際、ねじ底部に亀裂が発生し易くなり、さらには発生した亀裂が広がり(伝播するとも言う)やすくなるという問題が起きる。
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、プラズマ浸炭処理されたチタン合金ねじ素材について、ねじ底部の硬化による低摩擦係数化、締付け特性の向上を維持しつつ、しかもねじ底部の亀裂の発生を防止すると共に、亀裂の伝播も起こり難いチタン合金ねじおよびその製造方法とすることを課題としている。
特に、航空機部品としてのチタン合金ねじは、苛酷な使用条件において確実な安全性が要求されるものであるから、亀裂防止特性は特に重要であることは勿論であり、また海洋分野や発電分野など他の産業分野においてもチタン合金ねじは、重要な役割を果たす部品としてさらなる強度や耐久性を向上させることが求められている。
本願の発明者らは、チタン合金ねじ素材に対してプラズマ浸炭処理をする実験を多数回繰り返した際に、検証を充分に行なうことにより、チタン合金素材に形成する浸炭層を表面からできるだけ深く形成するという発想にとらわれることなく、チタン合金素材の表面下1μm以内の深さに硬さの最大値が存するように浸炭層を形成することにより、その後に転造されるねじ部の底面が確実に強化されていることを見出し、この発明を完成させたものである。
すなわち、前記の課題を解決するために、この発明では、チタン合金素材の表面下1μm以内の深さに硬さの最大値が存するように浸炭層を設け、前記浸炭層のある表面を転造加工によってねじ成形してなる転造チタン合金ねじとしたのである。
上記したように構成されるこの発明の転造チタン合金ねじは、炭化チタンの硬化層からなる浸炭層の表面下1μm以内に硬さの最大値があり、すなわち表面下1μm以内という極く浅い表層内に硬さのピーク(最大値)が存するように、表面以深に硬さ増大層、最大硬さ層、硬さ減少層をこの順に設けたものである。
このような浸炭層の細部の層構成のあるチタン合金素材がねじ転造されたねじ谷底部は、加工硬化され、圧縮応力が残留し、塑性加工による転圧効果によって平滑化された状態になる。
そして、転造によって、チタン合金素材の表面下1μmを超える付近の金属のマクロ組織の連続した流れは、ねじ底面の非常に近い部分にねじ底面の形状に沿う乱れのない整流状態で形成され、このような表層部の組織構成による加工硬化は充分なる強度の上昇をもたらす。
また、ねじ底面の圧縮残留応力は、負荷時の表層部の引張り応力成分を小さくし、または打ち消し、またチタン合金表面の平滑化により応力集中が緩和されることと相まって、疲労強度は低下せず、無改質の状態より高く維持される。
このようにして、転造チタン合金ねじは、ねじ底部が極めて表面近くに存在する最大硬さ層を有するため、締付け特性が向上し、しかも表面の低摩擦係数化と、表面下1μmを超える内部が表面より柔らかな基材になだらかな質的変化で連続することによって、亀裂の発生が防止され、かつ亀裂伝播も抑制される特性を有するものになる。
上記の特性が充分に得られるように、炭化チタンを含む浸炭層は、できるだけ表面に近い深さで形成されていることが好ましく、例えば表面から5μm以下の層厚で形成されている上記の転造チタン合金ねじとすることが好ましい。
また、上記したようなチタン合金ねじを製造するには、チタン合金素材を溶体化処理し、次いで480℃から690℃の温度範囲で時効処理した後、350℃から700℃の雰囲気ガス温度範囲でプラズマ浸炭処理をして硬化層を1μm以内の深さに硬さの最大値が存するように浸炭層を設け、その後の転造加工によってねじ成形することからなるチタン合金ねじの製造方法としたのである。
上記した工程からなるこの発明のチタン合金ねじの製造方法おいて、溶体化処理および所定の比較的低い温度範囲で時効処理を経てプラズマ浸炭処理後に、ねじ転造加工を行うことにより、転造ダイス面に設けたねじ山が、チタン合金素材に食い込んで谷を形成し、疲労破壊が発生しやすいねじ谷底部が加工硬化され、圧縮応力が残留し、塑性変形による転圧効果によりプラズマ浸炭処理で生じた肌荒れが平滑化される。
これにより、前記した作用効果を奏する転造チタン合金ねじが製造される。
そして、前記プラズマ浸炭処理の雰囲気ガスの温度は350℃から700℃の比較的低温の範囲にあり、その圧力は10〜2000Paの範囲にあり、かつ所定時間のプラズマ浸炭処理であることが好ましい。
プラズマ浸炭処理の浸炭用ガスを含有する雰囲気ガス温度が700℃を越える高温域では、前記時効処理により生成した析出物が粗大化してチタン合金部品の強度が低下するなどの材質劣化のおそれがある。また、前記雰囲気ガス温度が、350℃よりも低い低温域では、被処理物のチタン合金部品の表面に衝突した前記活性炭素イオンの部品内部への拡散が困難になり、前記部品の表面に煤が生成して、表層部に所望の浸炭層、即ちTiCを含む硬化層を形成することが困難になる。
雰囲気ガスの圧力が2000Paを越える高圧では、雰囲気ガス中の活性炭素イオン濃度が高くなって、チタン合金部品の表層部の侵入炭素量が飽和状態となって、これ以上に前記製品表面に活性炭素イオンが衝突しても、内部へ拡散せず、部品表面に煤が生成するようになる。
また、雰囲気ガスの圧力が、10Pa未満の低圧では、雰囲気ガス中の活性炭素イオン量の濃度が低くなって、チタン合金部品の表層部の侵入炭素量が少なくなり過ぎ、所望の深さに硬さの最大値が存するTiCを含む硬化層が形成できず、前記の耐摩耗性および摺動性を充分改善できなくなる。
このような低温で所定圧域でのプラズマ浸炭処理では、浸炭速度が比較的遅いため、浸炭層、即ちTiCを含む硬化層を、摺動特性の改善に必要な程度に、表面近くの所定の極薄い深さで形成するので、表面付近も硬さが不足せず、引張りやせん断の応力が作用した際に亀裂が発生し難くなり、さらには発生した亀裂が広がらないという作用がある。
前記転造加工は50℃〜350℃の温度域で行うことが好ましい。プラズマ浸炭処理後に、所定の温間域で、即ち変形抵抗を下げた状態でチタン合金のねじ転造加工を行えば、変形応力が小さくなって実質的に加工性が向上するため、特にTi−6Al−4Vなどのα+β型合金に対しても加工性が良い。
ここで、ねじ転造加工温度が50℃未満では、変形抵抗の低下が不充分となり、また、350℃を超える高温度域でのねじ転造加工は、ねじ谷底などの加工硬化層が軟化し、圧縮残留応力が緩和され、いずれの場合も、上記の効果が得られ難い。このような理由からみて、より好ましい転造加工の温度域をさらに挙げれば120℃〜350℃である。
この発明の転造チタン合金ねじは、チタン合金素材の表面下1μm以内の深さに硬さの最大値が存するように浸炭層を設けて転造加工によってねじ成形したことにより、表面付近も硬さが不足せず、引張りやせん断の応力が作用した際に亀裂が発生し難くなり、さらには発生した亀裂が広がらないので、低摩擦係数化、締付け特性の向上を維持しつつ、しかもねじ底部の亀裂の発生を防止すると共に、亀裂の伝播も起こり難いチタン合金ねじとなる利点がある。
また、所定の溶体化処理および時効処理がされたチタン合金素材を所定温度などの条件でプラズマ浸炭処理をすることにより、所定深さに硬さの最大値が存する浸炭層を形成できるから、その後の転造加工によって前記のような引張りやせん断の応力が作用した際に亀裂が発生し難くなり、さらには発生した亀裂が広がらない転造チタン合金ねじを効率よく製造することができる。
実施例1に用いるチタン合金素材1の硬さとナノインデンターの圧子の押込み深さとの関係を示す図表 実施例2に用いるチタン合金素材2の硬さとナノインデンターの圧子の押込み深さとの関係を示す図表 実施例3のねじ底部の表面を示す走査型電子顕微鏡写真 (a)実施例3のフィレット部の断面を示す光学顕微鏡写真、(b)実施例3のねじ底部の断面を示す光学顕微鏡写真 改質ボルトと無改質ボルトの最大(負荷)応力と破壊までのサイクル数との関係を示す図表(S−N曲線) (a)引張疲労試験後の短寿命ボルトの破断面の走査型電子顕微鏡写真、(b)引張疲労試験後の長寿命ボルトの破断面の走査型電子顕微鏡写真 締付け試験中の締付けトルクと締付け力との関係を示す図表
転造チタン合金ねじの発明の実施形態は、チタン合金素材の表面下1μm以内の深さに硬さの最大値が存するように浸炭層を設け、さらに浸炭層のある表面を転造加工によってねじ成形して設けたものである。
この発明に用いるチタン合金素材は、使用目的に合せて適当な組成のチタン合金を素材として使用可能であり、例えば、Ti−6Al−4Vを用いることができる。この組成のものは強度と靱性のバランスに優れ、熱処理性及び成形性に優れた代表的なα+β型チタン合金である。
チタン合金ねじの素材は、予め所要の長さに切断されたチタン合金の丸棒を、溶体化処理と同程度の900℃から980℃の温度域に加熱し、周知のプレスにより、ボルト頭と所要の軸形状を有するボルト素材に形成したものである。
溶体化処理は、このようなボルト素材を、900℃から970℃の温度範囲に20分から70分程度の加熱保持をした後、水冷することにより行うことができる。
プラズマ浸炭処理装置は、周知のものであるが、例えば(株)エスディーシー製のものを用いることができ、このものは加熱炉の炉殻の内周面に取り付けられた断熱材等によって囲まれた処理室を有し、この処理室がその内部に設けたグラファイトロッドからなる発熱体により加熱されるものである。
また、処理室内が直流電源の陽極に接続され、被処理物の載置台が前記直流電源の陰極に接続され、両極間に直流グロー放電を生じさせ、処理室の要所に設けたマニホールドから導入した炭化水素系の浸炭用ガスをイオン化して活性炭素イオンを発生させ、この活性炭素イオンを被処理物の表面に衝突させて浸炭処理を行う。また、処理室には、その内部を真空状態にするために、真空ポンプが接続されている。
被処理物の溶体化処理を終えた前記ボルト素材は、まず、有機溶剤または超音波を用いた洗浄処理がなされる。そして、前記処理室の載置台上に置かれたチタン合金素材を、480℃から690℃の温度範囲に2〜8時間保持することにより、時効処理が行われる。次に、前記発熱体により浸炭処理温度と同等の350℃以上700℃未満の温度域の所定の温度に加熱し、処理室内に導入し、前記グロー放電によりプラズマ化した水素ガスとアルゴンガスを混合した不活性ガスからなるクリーニング用ガスで、前記素材表面の酸化皮膜を跳ね飛ばすクリーニング処理を行う。
次いで、前記処理室内に浸炭用ガスとしてのプロパンガスと希釈ガスとしてのクリーニング作用を有する水素ガスとの混合ガスが、処理室内の圧力が10Pa〜2000Paの範囲内の所定の圧力の真空雰囲気になるようにそれぞれ流量調節されて導入され、チタン合金素材が浸炭処理温度を維持できるように、前記発熱体により、この混合ガス、即ち雰囲気ガスが350℃〜700℃の温度範囲の所定の温度に保持される。
そして、前記グロー放電によりプロパンガス中の炭素がイオン化されて、活性炭素イオンが発生し、この活性炭素イオンがチタン合金素材の表面に衝突し、拡散してTiと結合し、その表層部に浸炭層、即ちTiCを含んだ硬化層が形成される。
前記浸炭処理温度が350℃から700℃の低温域にあるために、前記時効処理の温度域と同様の温度レベルにあり、浸炭処理過程で、時効処理により生成した析出物が粗大化し、引張強度、剪断強度および疲労強度の低下をもたらすなどの材質劣化のおそれがなくなる。また、TiCを含んだ硬化層の厚みを、10μm未満、好ましくは5μm以下に薄くコントロールしやすくなる。
さらに、プラズマ浸炭処理をして上記のような薄い浸炭層について、さらに1μm以内の深さに硬さの最大値が存するように設けるためには、例えば雰囲気ガス圧力10〜2000Paにおける所定時間のプラズマ浸炭処理とする。
このような浸炭の処理ガス圧力や浸炭時間は、浸炭温度によって調整すればよく、例えばTi−6Al−4Vに対して、538℃〜690℃で30分の浸炭処理条件を採用することもできる。
このようにプラズマ浸炭処理の終了後、処理室内の浸炭性ガスが排気され、窒素ガスやアルゴンガスが処理室内に導入されて、チタン合金素材が常温まで冷却され、処理室から取り出される。
そして、前記ボルト素材を高周波加熱装置などにより50℃〜350℃の温度域に再加熱した後、迅速に、平ダイスまたは丸ダイス転造盤などの周知のねじ転造装置に供給され、前記50℃〜350℃の温度域で、所要のねじ転造加工が行われる。
このようにプラズマ浸炭処理後にねじ転造加工を行うことにより、ねじ面に沿って材料のマクロ組織が連続して流れ、ねじ面、とくにねじ谷底部が加工硬化し、圧縮残留応力が発生し、さらに、このような塑性転圧加工によってプラズマ浸炭処理によって生じた肌荒れが平滑化されるなどの転造効果が得られる。
この発明では、プラズマ浸炭処理後にねじ転造加工を行うため、前記のねじ面、とくにねじ谷底部に生じた加工硬化層が熱処理により軟化しないので、圧縮応力が緩和されずに残留する。そのため、前記加工硬化層は強度が向上する。
また、転造チタン合金ねじは、表面以深に硬さ増大層、最大硬さ層、硬さ減少層をこの順に有しており、炭化チタンを含む硬化層からなる浸炭層の表面下1μm以内に硬さの最大値があり、すなわち表面下1μm以内という極く浅い表層内に硬さのピーク(最大値)が存する。
このような浸炭層の細部層構成によって、ねじ底部は極表層の最大硬さ層が、チタン合金ねじ素材について、締付け特性の向上が維持され、しかも表面の浸炭層によって低摩擦係数化され、そのように極薄く若干柔らかな層に表面が被覆されていることによって亀裂の発生が防止され、かつ亀裂伝播の抑制も可能な特性を有するものになる。
所要の長さに切断した直径約9mmのチタン合金Ti−6Al−4Vの丸棒を、950℃に加熱し、周知のプレスを用いて、所定の軸形状とボルト頭とを有するボルト素材を成形した後、溶体化時効処理を行なった。すなわち、同じ950℃に1時間保持した後、水冷して溶体化処理を行ない、このボルト素材の軸部を、切削および研削により所要の寸法に仕上げた後、アセトン中で超音波洗浄した後、前記プラズマ浸炭装置の処理室内で540℃に4時間保持して時効処理を行なった。その後、浸炭処理温度と同等の538℃にまで加熱し、水素ガスを混合した窒素ガスを用いて、前述のクリーニング処理を行った。
そして、浸炭用ガスとしてのプロパンガス(流量0.02L/min)と希釈ガスとしての水素ガス(流量0.1L/min)の混合ガスからなる雰囲気ガスを前記処理室に導入し、この雰囲気ガス温度、即ち浸炭処理温度が538℃、同ガス圧力が約30Pa、処理時間が30分の条件で、プラズマ浸炭処理を行った。浸炭処理終了後、迅速に雰囲気ガスを排気し、処理室に窒素ガスを導入してチタン合金素材を常温まで強制冷却した。その後、前記チタン合金素材を高周波誘導加熱装置で200℃に再加熱し、迅速に、周知の平ダイス転造装置に供給し、ねじ転造加工を行い、5/16インチのボルトを作製した。
前記チタン合金素材については、これを試料としてナノインデンター(MTS社製:Nano IndenterXP、解析用ソフト:Test Works 4)を用いて、浸炭層の深さと硬さの関係を調べ、この結果を図1に示した(図中には全測定点のうち、硬さの最大値を示すものと最小値を示すものを代表例として示した)。
測定条件としては、圧子の押し込み深さ設定3000nm(3μm)、測定点数15、測定点間隔200μm、測定温度23℃(室温)、標準試料フューズドシリカを用いた。
図1の結果からも明らかなように、チタン合金素材1の表面下1μm以内の深さに硬さの最大値(ピーク)が存在し、それより深くなると徐々に低下して1000nm(1μm)程度以深からあまり変化しなくなり、2000nm(2μm)以深では安定していることから、浸炭層は最も深くても5μm(5000nm)以内の層厚で形成されていることがわかる。
実施例1において、浸炭処理温度を610℃としたこと以外は、全く同様にしてチタン合金素材を作製し、ねじ転造加工を行ない、5/16インチのボルトを作製した。
前記チタン合金素材については、これを試料として前記同様に浸炭層の深さと硬さの関係を調べ、この結果を図2に示した(図中には全測定点のうち、硬さの最大値を示すものと最小値を示すものを代表例として示した)。
図2の結果からも明らかなように、チタン合金素材2の表面下1μm以内の深さに硬さの最大値(ピーク)が存在し、それより深くなると徐々に低下して1000nm(1μm)程度以深からあまり変化しなくなった。実施例1と同様に実施例2でも2000nm(2μm)以深では安定していることから、浸炭層は最も深くても5μm(5000nm)以内の層厚で形成されていることがわかる。
ボルトブランク試験片は、工業用に製造された直径9mmのTi−6Al−4V合金棒から製造し、30分アルゴンプラズマ中で、スパッタリングによりクリーニング処理した後、540℃(813K)、1時間(3.6Ksec)、プロセスガス7容量%のメタン−水素混合ガス、圧力130pa、バイアス電圧650Vの条件で、パルス化した直流グロー放電を使用したプラズマ浸炭を行ない、その室温までアルゴン雰囲気中で冷却した。
フィレット部を圧延後、ねじブランク部を高周波誘導加熱装置により150℃に加熱し、一般的な転造装置により2対の円柱形のダイスで、一回の加工で温間ロールによってねじ部を形成し、実施例3の転造チタン合金ねじを得た。
[光学顕微鏡またはSEMによる金属組織の観察]
実施例3のねじ底部を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、その写真を図3に示した。
また、実施例3のフィレット部及びねじ底部のボルト軸に沿った断面について、これらを機械研磨後にクロール液(3%HF、10%HNO)により化学腐食し、光学顕微鏡で観察し、その金属組織の顕微鏡写真をそれぞれ図4a、bに示した。
観察の結果、ねじ底の表面は、ねじ転造により明らかに平滑化されており、表面に亀裂は認められなかった。なお、ASTM−E−1417に従って、これら両表面に蛍光浸透探傷試験を行なったが、いずれの表面にもクラックは発見されなかった。
なお、ねじ底部の硬さは、マイクロビッカース硬さ計で荷重0.1N、保持時間15秒で約460HVであり、また深さ方向の硬さ分布をみると約100μmの深さまで徐々に低下した。
断面の金属組織の状態については、平均粒径約10μmからなり、それらは約20%初析αと80%変態βからなるバイモーダルであり、プラズマ浸炭によるフィレットとねじ底部の炭素拡散層は、非常に薄い層であるためにはっきりと見えなかった。ねじ転造により生じたねじ底部の結晶粒の流れは、はっきり認められ、結晶粒の流線はねじ輪郭に連続で整合しており、結晶粒の流れの深さは約100μmであった。しかし、フィレット部は圧延率が非常に低いため、はっきりと認められなかった。
[静的引張り強度とせん断強度]
実施例3の転造チタン合金ねじに対して、引張試験と二面せん断試験を、それぞれNASM-1312-8とNASM-1312-13の試験方法に従い、破壊まで34kN/minと68.5kN/minの一定負荷率で実験室雰囲気、室温の条件で行なった。
その結果、引張試験によるボルトの破壊部位は、全てナットとの第一噛み合い面のねじ底であり、また改質した実施例3のねじ(図中、改質ボルトと称する)の引張強さとせん断強さは、無改質ボルトとほぼ同じであり、それぞれ1150MPa、710MPaであった。この結果から、改質したボルトの静的引張強さと、せん断強さはプラズマ浸炭の影響を受けていないことがわかる。
[引張疲労試験]
実施例3の転造チタン合金ねじに対して、NASM-1312-11の試験方法に従って、一定荷重下で油圧サーボ試験機を使用し、応力比0.1(R=0.1)、周波数15Hzで実験室雰囲気、室温で引張疲労試験を行ない、疲労限は10サイクルにセットし、その結果のS−N曲線を図5に示した。
その結果を説明すると、引張疲労試験においてもボルトの破壊部位は、全てナットとの第一噛み合い面のねじ底であり、フィレットでの破壊はなかった。そして、図5の結果からも明らかなように、改質ボルト(実施例3)と比較対照に用いた無改質ボルトは、同じような疲労寿命水準を示し、改質ボルトの疲労寿命は、長寿命域で長い傾向が見られた。
また、引張疲労試験後、各試験片の破断面をSEMで詳細に観察し、その断面写真を図6に示した。
図6(a)に示すように、高荷重(495MPa)を負荷した結果、10サイクル未満の短寿命で破壊したボルトでは、無改質ボルトと改質ボルトとも疲労亀裂は、ねじ底部で発生し、内部へ伝播している。短寿命域では、複数の亀裂生成場所が発生している。
図6(b)に示すように、低荷重(440MPa)を負荷した結果、すなわち低応力負荷側の10サイクル以上の長寿命で破壊したボルトは、無改質ボルトと同様に疲労亀裂の起点は表面にあるが、亀裂が生成した箇所は、ねじ底外周の1箇所であった。
[締付け試験]
ISO16047の試験方法に従い、トルクと荷重のロードセルを積載したねじ性能試験機を使用し、ボルト回転速度10rpmで無潤滑の実験室雰囲気、室温条件で締付け試験を行なった。組み合わせ用のナットは、ボルトと同じねじサイズで材料の六角ナットを用い、座面板は、HRC56の硬さの鋼製六角座金、穴径8.9mm、厚さ5mmのものを用い、その結果を図7に示した。
図7の結果からも明らかなように、締付けトルク(ねじ部トルクと座面トルクとに分解できる)と締付け力の関係からみて、改質ボルトに与えたトルクは無改質ボルトよりも有効に締付け力を発生させた。このことは、同じ締付け力を得るために、改質ボルトのトルクの方が、無改質ボルトのトルクより低いことから明らかである。さらに、座面トルクよりもねじ部トルクの改善効果が高く、締付け試験後の改質ボルトには、ゴーリングや摩り減りの兆候はなかった。
さらに、SEM観察によると、改質ボルトのねじ表面には、剥れ、欠け、割れおよび分裂が見られなかった。

Claims (4)

  1. チタン合金素材の表面下1μm以内の深さに最大硬さのピークが存するように5μm以内の層厚で浸炭層を設け、前記浸炭層のある表面を転造加工によってねじ成形してなる転造チタン合金ねじ。
  2. チタン合金素材を溶体化処理し、次いで480℃から690℃の温度範囲で時効処理した後、350℃から700℃の雰囲気ガス温度範囲でプラズマ浸炭処理をして表面下1μm以内の深さに最大硬さのピークが存するように5μm以内の層厚で浸炭層を設け、その後の転造加工によってねじ成形することからなる転造チタン合金ねじの製造方法。
  3. プラズマ浸炭処理が、雰囲気ガス圧力10〜2000Paにおける所定時間のプラズマ浸炭処理である請求項に記載の転造チタン合金ねじの製造方法。
  4. 転造加工が、50℃〜350℃の温度域で行う転造加工である請求項またはに記載の転造チタン合金ねじの製造方法。
JP2009004546A 2009-01-13 2009-01-13 転造チタン合金ねじ Active JP5664950B2 (ja)

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