JP4189413B2 - チタン合金ねじ部品の製造方法を用いたチタン合金ねじ部品 - Google Patents

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Description

この発明は、プラズマ浸炭処理を施したチタン合金ねじ部品の疲労特性を改善する製造方法を用いたチタン合金ねじ部品に関する。
チタン合金は、比強度、破壊靱性、耐熱性及び耐食性などに優れた特性を有しているため、航空機材料として重要な位置を占めており、その使用量も増加しつつあり、航空機の高速化や大型化などに伴い、外板、フレーム、結合金具類やファスナー類などの一次構造部材に使用されるようになり、純チタンよりも強度の高いチタン合金が主として使用されている。また、チタン合金は、その良好な耐食性と比強度のバランスを活かして、海洋分野、発電分野や自動車分野などにおいても実用例が見られる。
例えば、ボルト、ナットなどのファスナー類では、熱応力を含めて繰返し応力を受ける苛酷な条件で使用される場合や、また、炭素繊維強化プラスチックの炭素繊維との接触電位差が小さく、腐食を引き起しにくい利点を有することなどから、航空機の尾翼などに採用される前記炭素繊維強化プラスチック積層材の締結にも使用される場合などがある。
前記ファスナー類では、いずれも、ねじ部品としての所要の耐摩耗性及び設計上必要な締め付け力を確保するための良好な摺動性などの特性が要求される。しかし、チタン合金は、無潤滑の状態では摩擦係数が大きいため、焼付きの問題が生じる。一般に、潤滑油、黒鉛、二硫化モリブデンなどの潤滑剤を使用することにより、摩擦係数を下げることができるが、長時間の使用に耐えることができない。また、フェノール樹脂などにアルミ粉などの金属粉を混ぜた樹脂コーティングを用いると、耐久性は改善されるが、導電性がないために、万一、飛行中に落雷があると、前記ねじ部品にごく短時間、高電圧がかかり、前記プラスチック積層材とねじ部品との空気間隙が膨らんで、小爆発を起こし、被締結材が破損して墜落する危険性がある。この対策として、前記ねじ部品を金属箔で覆ったり、アース取りをするなどにより導電性をもたせる方法がとられているが、これには多大の費用を要している。
そこで、耐久性のある焼付き防止のため、そして、万一の落雷時にも、安全性を確保するためには、チタン合金の表面に耐摩耗性および摺動性を向上させ、かつ導電性のある表面硬化処理をすることが必要である。
前記の表面硬化処理として、プラズマ浸炭処理を行う方法が知られている。このプラズマ浸炭処理は、真空雰囲気中で、例えば、処理室内の上部断熱材が直流電源の陽極に接続され、被処理物の載置台が前記直流電源の陰極に接続され、両極間に直流電圧を加えてグロー放電を生じさせ、処理室の要所に設けたマニホールドから、まず、水素ガスとアルゴンまたは窒素などの不活性ガスとの混合ガスを導入し、イオン化した水素やアルゴンまたは窒素を金属被処理物の表面に衝突させて、酸化被膜などの付着物除去してクリーニングを行う。次いで、メタンやプロパンなどの炭化水素系の浸炭用ガスと希釈ガスとの混合ガスを導入し、前記グロー放電により活性炭素イオンを発生させ、この活性炭素イオンがチタン金属などの金属被処理物の表面に衝突して付着し内部に拡散する、または加速された活性炭素イオンが金属処理物の表面に衝突した際に、直接、内部に打ち込まれるなどして、Tiなどの金属原子と結合して、表面部にTiCなどの金属炭化物の硬化層を形成する処理である。
しかし、前記プラズマ浸炭処理工程においては、浸炭処理時に加速された活性炭素イオンがチタン合金の表面に衝突し、また、前処理のクリーニング処理において、イオン化した窒素や水素が酸化被膜などの付着物を撥ね飛ばす際に表面に衝突するなどのために、チタン合金の表面粗さは、プラズマ浸炭処理の前に比べて大きくなり、肌荒れを生じる。このような肌荒れ、即ち表面の凹凸は結晶粒のずれをもたらし、その部分が応力の集中源となるために、亀裂が発生しやすくなり、とくに、亀裂などの切欠き効果に敏感なチタン合金の疲労強度を低下させる原因となる。
また、浸炭用ガスの組成である水素もイオン化して、雰囲気内に存在するため、前記浸炭処理を施さない場合に比べて、水素が被処理物内の、とくに表層部に侵入しやすくなる。そのため、前記浸炭処理物は、靱性の低下や引張り強度よりも低い荷重で疲労破壊するなど、所謂水素脆性を引起しやすくなる。
これらのことは、前述のように苛酷な使用条件においても安全性が要求される航空機部品は勿論、海洋分野や発電分野など他の産業分野において用いられるチタン合金部品にとって致命的な欠点となる。
そこで、この発明の課題は、プラズマ浸炭処理を施したチタン合金ねじ部品の肌荒れや水素の侵入などによる疲労強度の低下を改善する製造方法により製造されたチタン合金ねじ部品を提供することである。
前記の課題を解決するために、この発明では、チタン合金素材を溶体化処理し、次いで480℃から690℃の温度範囲で時効処理した後に、350℃から700℃の雰囲気ガス温度範囲でプラズマ浸炭処理を施して炭化チタンの硬化層を形成し、その後に転造加工によりねじ成形し、このねじ成形は、ねじ谷底部の加工硬化層を軟化せず圧縮応力を残留させて行なうことからなるチタン合金ねじ部品の製造方法を用いたチタン合金ねじ部品としたのである。
このように、プラズマ浸炭処理後に、ねじ転造加工を行うことにより、転造ダイス面に設けたねじ山が、チタン合金素材に食い込んで谷を形成し、押しのけられた材料が流動して前記ダイス面のねじ山間に充満してねじ山が成形され、ねじ面に沿って材料のマクロ組織が連続して流れる。また、表面層、とくに、疲労破壊が発生しやすいねじ谷底部が加工硬化し、圧縮応力が残留し、さらに、このような塑性変形によってプラズマ浸炭処理によって生じた肌荒れが平滑化される、などの転造効果が得られる。このねじ転造加工が仕上げ加工となるために、前記転造効果がねじ部品に残存する。
前記のねじ面に沿ったマクロ組織の連続した流れ、および表層部の加工硬化は強度の上昇をもたらす。そして、前記圧縮残留応力は、負荷時の表層部の引張り応力成分を小さくし、または打ち消し、また、チタン合金表面の平滑化により応力集中が緩和されることと相まって、表面の凹凸および表層部のα相とβ相の界面に析出した水素化物を起点とする亀裂発生までの潜伏期間が長くなり、亀裂の発生が遅延する。これらによって、前記の肌荒れおよび水素脆性による疲労強度の低下が改善される。
前記プラズマ浸炭処理の雰囲気ガスの温度が350℃から700℃の範囲にあり、その圧力が10〜2000Paの範囲にあることが望ましい。
プラズマ浸炭処理の浸炭用ガスを含有する雰囲気ガス温度が700℃を越える高温域では、前記時効処理により生成した析出物が凝集、粗大化してチタン合金部品の強度が低下するなどの材質劣化のおそれがある。また、前記雰囲気ガス温度が、350℃よりも低い低温域では、被処理物のチタン合金部品の表面に衝突した前記活性炭素イオンの部品内部への拡散が困難になり、前記部品の表面に煤が生成して、表層部に所望の浸炭層、即ちTiCの硬化層を形成することが困難になる。
雰囲気ガスの圧力が2000Paを越える高圧では、雰囲気ガス中の活性炭素イオン濃度が高くなって、チタン合金部品の表層部の侵入炭素量が飽和状態となって、これ以上に前記製品表面に活性炭素イオンが衝突しても、内部へ拡散せず、部品表面に煤が生成するようになる。
また、雰囲気ガスの圧力が、10Pa未満の低圧では、雰囲気ガス中の活性炭素イオン量の濃度が低くなって、チタン合金部品の表層部の侵入炭素量が少なくなり過ぎ、所望のTiCの硬化層が形成できず、前記の耐摩耗性および摺動性を充分改善できなくなる。
このような低温域でのプラズマ浸炭処理では、浸炭速度が比較的遅いため、浸炭層、即ちTiCの硬化層を、摺動特性の改善に必要な程度に、比較的薄く形成しやすいので、プラズマ浸炭処理後でも、支障なく、ねじ転造加工を行うことができる。とくに、加工性の良好なβ型合金などでは、冷間でもクラックなどの表面欠陥を発生せずに、ねじ転造加工を行うことができる。
前記転造加工を150℃〜350℃の温度域で行うことができる。
このように、プラズマ浸炭処理後に、温間域で、即ち変形抵抗を下げた状態でチタン合金のねじ転造加工を行えば、変形応力が小さくなって実質的に加工性が向上するため、とくに、加工性があまり良好でない、Ti−6Al−4Vなどのα+β型合金に対して有効である。また、転造圧力も低減して、転造ダイス寿命の点でも好ましい。
ここで、ねじ転造加工温度が150℃以下であると、変形抵抗の低下が不十分となり、また、350℃を超える温度域でのねじ転造加工では、ねじ谷底などの加工硬化層が軟化し、圧縮残留応力が緩和され、いずれの場合も、上記の効果が得られない。
以上のように、この発明によれば、溶体化処理および時効処理後のチタン合金にプラズマ浸炭処理を施し、このプラズマ浸炭処理後に、ねじ転造加工を行うようにしたので、ねじ面、とくに疲労破壊が発生しやすいねじ谷底部の加工硬化層が軟化せず、また、圧縮応力が緩和されずに残留するなど、転造効果が維持される。さらに、転造圧力による塑性変形により、プラズマ浸炭処理による肌荒れが平滑化される。これらにより、プラズマ浸炭処理による肌荒れや侵入した水素に起因する亀裂の発生を遅延させることができ、疲労強度が改善される。それにより、チタン合金ねじ部品の表層部に形成されたTiCの硬化層の本来の特性が発揮でき、前述の耐摩耗性及び摺動性が向上し、航空機等に適用される部品としての要求特性を満足することができる。
以下に、この発明の実施形態のチタン合金ねじ部品の製造方法を添付の図1および図2を参照して説明する。
例えば、強度と靱性のバランスに優れ、熱処理性及び成形性に優れた代表的なα+β型チタン合金であるTi−6Al−4Vについて記せば、まず、所要の長さに切断された前記チタン合金の丸棒が、前記溶体化処理と同程度の900℃から980℃の温度域に加熱され、周知のプレスにより、ボルト頭と所要の軸形状を有するボルト素材が成形される。このボルト素材を、900℃から970℃の温度範囲に20分から70分程度加熱保持した後、水冷することにより、溶体化処理が行われ、次いで480℃から690℃の温度範囲に2〜8時間保持することにより、時効処理が行われる。
前記プラズマ浸炭処理に用いる装置(日本電子工業社製)は、加熱炉の炉殻の内周面に取り付けられた断熱材等によって囲まれて処理室が形成され、この処理室がその内部に設けたグラファイトロッドからなる発熱体により加熱される。処理室内の上部断熱材が直流電源の陽極に接続され、被処理物の載置台が前記直流電源の陰極に接続され、両極間に直流電圧を加えてグロー放電を生じさせ、処理室の要所に設けたマニホールドから導入した炭化水素系の浸炭用ガスをイオン化して活性炭素イオンを発生させ、この活性炭素イオンを被処理物の表面に衝突させて浸炭処理を行うにようになっている。また、処理室には、その内部を真空状態にするために、真空ポンプが接続されている。
被処理物の時効処理を終えた前記ボルト素材は、まず、有機溶剤または超音波を用いた洗浄処理がなされる。そして、前記処理室の載置台上に置かれたチタン合金素材を、前記発熱体により浸炭処理温度と同等の350℃以上700℃未満の温度域の所定の温度に加熱し、処理室内に導入し、前記グロー放電によりプラズマ化した水素ガスを混合した不活性ガスからなるクリーニング用ガスで、前記素材表面の酸化皮膜を跳ね飛ばすクリーニング処理を行う。
なお、前記洗浄処理を溶体化処理の水冷後に行い、時効処理直後に、時効処理時の顕熱を有するボルト素材を、前記処理室に装入するようにすることもできる。また、前記クリーニング処理法として、前述の温度域で、フッ化窒素(NF3 )ガスを含む窒素ガスを処理室内に導入し、前記酸化被膜をフッ化膜に置換する方法もある。
次いで、前記処理室内に浸炭用ガスとしてのプロパンガスと希釈ガスとしてのクリーニング作用を有する水素ガスとの混合ガスが、処理室内の圧力が10Pa〜2000Paの範囲内の所定の圧力の真空雰囲気になるようにそれぞれ流量調節されて導入され、チタン合金素材が浸炭処理温度を維持できるように、前記発熱体により、この混合ガス、即ち雰囲気ガスが350℃〜700℃の温度範囲の所定の温度に保持される。そして、前記グロー放電によりプロパンガス中の炭素がイオン化されて、活性炭素イオンが発生し、この活性炭素イオンがチタン合金素材の表面に衝突し、拡散してTiと結合し、その表層部に浸炭層、即ちTiCの硬化層が形成される。
前記浸炭処理温度が350℃から700℃の低温域にあるために、前記時効処理の温度域と同様の温度レベルにあり、浸炭処理過程で、時効処理により生成した析出物が凝集、粗大化し、引張り強度、剪断強度および疲労強度の低下をもたらすなどの材質劣化のおそれがなくなる。また、TiCの硬化層の厚みを、摺動特性の改善に必要な程度に、例えば10μm程度と比較的に薄くコントロールしやすくなる。
前記プラズマ浸炭処理の終了後、処理室内の浸炭性ガスが排気され、窒素ガスが処理室内に導入されて、チタン合金素材が常温まで冷却され、処理室から取り出される。そして、前記プラズマ浸炭処理装置に隣接して設置した加熱装置で、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で前記ボルト素材を150℃〜350℃の温度域に再加熱した後、迅速に、平ダイスまたは丸ダイス転造盤などの周知のねじ転造装置に供給され、前記150℃〜350℃の温度域で、所要のねじ転造加工が行われる。そして冷却過程での割れを防止するため、その後速やかに、不活性ガスを充満させた円筒型容器に投入して緩速冷却を行う。
このように、プラズマ浸炭処理後に、ねじ転造加工を行うことにより、ねじ面に沿って材料のマクロ組織が連続して流れ、ねじ面、とくにねじ谷底部が加工硬化し、圧縮応力が残留し、さらに、このような塑性変形によってプラズマ浸炭処理によって生じた肌荒れが平滑化されるなどの転造効果が得られる。
プラズマ浸炭処理後にねじ転造加工を行うため、前記のねじ面、とくにねじ谷底部に生じた加工硬化層が軟化せず、また、圧縮応力が緩和されずに残留する。前記加工硬化層は強度の上昇をもたす。そして、前記圧縮残留応力は、負荷時の表層部の引張り応力成分を小さくし、または打ち消し、また、ねじ成形されたチタン合金ねじ部品表面の平滑化により応力集中が緩和されることと相まって、表面の凹凸および表層部のα相とβ相の界面に析出した水素化物を起点とする亀裂が発生するまでの潜伏期間が長くなり、その発生が遅延する。これらによって、前記の肌荒れおよび水素脆性による疲労強度の低下を改善でき、所要の疲労強度を有するチタン合金ねじ部品を実現することができる。
そして、チタン合金ねじ部品の表層部のTiCの硬化層による耐摩耗性および摺動性の向上により、圧力が作用した状態で繰り返し応力を受ける場合の疲労特性、即ちフレッティング疲労特性の向上も期待される。
所要の長さに切断した直径約8mmのチタン合金Ti−6Al−4Vの丸棒を、950℃に加熱し、周知のプレスを用いて、所定の軸形状とボルト頭とを有するボルト素材を成形した後、STA処理、即ち同じ950℃に1時間保持後、水冷して溶体化処理を行ない、次いで、540℃に8時間保持して時効処理を行った。このボルト素材の軸部を、研削により所要の寸法に仕上げた後、アセトン中で超音波洗浄した後、前記プラズマ浸炭装置の処理室内で浸炭処理温度と同等の630℃にまで加熱し、水素ガスを混合した窒素ガスを用いて、前述のクリーニング処理を行った。
そして、浸炭用ガスとしてのプロパンガス(流量0.02L/min)と希釈ガスとしての水素ガス(流量0.1L/min)の混合ガスからなる雰囲気ガスを前記処理室に導入し、この雰囲気ガス温度、即ち浸炭処理温度が約630℃、同ガス圧力が約30Pa、処理時間が約40分の条件で、プラズマ浸炭処理を行った。浸炭処理終了後、迅速に雰囲気ガスを排気し、処理室に窒素ガスを導入してボルト素材を常温まで強制冷却した。その後、前記ボルト素材を300℃に再加熱し、迅速に、周知の平ダイス転造装置に供給し、ねじ転造加工を行い、5/16インチのボルトを作製した。
このような処理を実施した前記ボルトを供試材として引張り疲労試験を実施した。この疲労試験には、デジタル油圧サーボ式疲労試験機(島津製作所製)を用い、実部品に要求される疲労強度に基づいて応力条件を設定し、最大応力530MPa、最小応力53MPa、応力比0.1、応力振幅約240MPa、繰返し速度10Hzで実施した。
一方、比較のため、前記ボルト素材をSTA処理した後、ねじ転造加工を行い、その後、上記と同じ処理条件でプラズマ浸炭処理を行ったボルト素材についても、上記と同じ試験条件で引張り疲労試験を実施した。
これらの各ボルト素材について、破断に至るまでの繰返し数を表1に、破断面のSEM写真を図1(a)(工程A:STA処理+プラズマ浸炭処理+ねじ転造加工)、および(b)(工程B:STA処理+ねじ転造加工+プラズマ浸炭処理)に示す。
表1に示したように、工程Bの「STA処理+ねじ転造加工+プラズマ浸炭処理」の場合には、繰返し数が約7.1×103 で破断したが、実施形態の工程Aの「STA処理+プラズマ浸炭処理+ねじ転造加工」の場合には、破断に至るまでの繰返し数は2.1×105 にまで増加した。
図1(a)および(b)に示したように、工程A、工程Bのいずれの場合も、破断は、切欠き効果の大きいねじの導入部、即ち不完全ねじ部で生じている。
工程Bでは、ねじ転造加工の後にプラズマ浸炭処理を行うため、前述のようにボルト表面が肌荒れして、亀裂の起点となる結晶粒のずれをもたらし、また、プラズマ浸炭処理時の加熱により、ねじ転造加工により生じたボルト表面の加工硬化層が軟化し、圧縮残留応力が緩和されるため、前記不完全ねじ部の表面から内部へ向かって小さな亀裂を生じ、この亀裂が疲労破壊の起点となって早期に破断したと考えられる。
一方、実施形態の工程Aでは、工程Bの場合に発生した不完全ねじ部表面の明瞭な亀裂は認められない。これは、プラズマ浸炭処理後にねじ転造加工を行うことにより、前述のように、ボルト表面に加工硬化層および圧縮残留応力が存在し、しかも転造圧力による塑性変形により、肌荒れが平滑化されるため、疲労破壊の起点発生が抑制された結果、表1に示したように、破断に至るまでの繰返し数が増加し、疲労強度が改善されたものと考えられる。
なお、前述のプラズマ浸炭処理を施した後にねじ転造加工を行うねじ部品の製造方法は、前記のTi−6Al−4Vに代表されるα+β型チタン合金のほかに、Ti−15V−3Cr−3Al−3Snなどのβ型チタン合金、Ti−4.5Al−3V−2Mo−2Feなどの準α+β型チタン合金のいずれにも適用することができる。
また、前記チタン合金ねじ部品は、航空機用のみならず、コンロッドなどの自動車のエンジン周りの部品の締結など、前述のチタン合金の特徴を活かした各種の使用形態をとることができる。
(a)実施形態の製造方法を用いたチタン合金ボルトの疲労試験後の破断面を示す写真、(b)同上の一部拡大写真 (a)比較材のチタン合金ボルトの疲労試験後の破断面を示す写真、(b)同上の一部拡大写真

Claims (3)

  1. チタン合金素材を溶体化処理し、次いで480℃から690℃の温度範囲で時効処理した後に、350℃から700℃の雰囲気ガス温度範囲でプラズマ浸炭処理を施して炭化チタンの硬化層を10μm程度の厚みに薄く調整して形成し、その後に転造加工によりねじ成形したものからなり、このねじ成形は、ねじ谷底部の加工硬化層を軟化せず圧縮応力を残留させて行なうねじ成形であるチタン合金ねじ部品。
  2. プラズマ浸炭処理の雰囲気ガスの圧力が、10〜2000Paの範囲にある請求項1に記載のチタン合金ねじ部品。
  3. 転造加工を、150℃〜350℃の温度域で行う請求項1または2に記載のチタン合金ねじ品。
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