JP5662899B2 - スイッチング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、スイッチング素子に対して操作信号を伝達してスイッチング制御を行うスイッチング装置に関する。
従来では、製造条件の緩和を図りながら、ノイズフィルタの小型軽量化および放射電磁波強度低減を実現することを目的とした電力スイッチング装置に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献1を参照)。この電力スイッチング装置は、制御回路部が複数種類のパルス周期パターンから所定の繰り返し順序またはランダムな順序で選択し、選択したパルス周期パターンを順次に配列したスイッチング信号によりスイッチング回路部をスイッチングさせる構成である。この構成によれば、スイッチングによって生じる高調波電流をスペクトラム拡散させ、放送波帯域を用いる通信などへの障害を抑止できる。
また、スイッチング周波数をより適切に拡散させることを目的としたスイッチング装置に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献2を参照)。このスイッチング装置は、スイッチング周波数を拡散させ、拡散された各スイッチング周波数について、これに時系列上隣接する少なくとも一方のスイッチング周波数との周波数間隔が、時系列的に隣接しない全スイッチング周波数との周波数間隔以下となるように設定する構成である。この構成によれば、中心周波数に対してスペクトラム拡散によって定まる擬似的な信号波の周波数の整数倍程度ずれた周波数信号(擬似側波帯信号)がノイズとなる。スイッチング周波数の一回の切替における変更幅を小さくすると、擬似側波帯信号が中心周波数に近づき、スイッチング制御に起因するノイズを極力抑制することができる。
さらに、固定周波数方式の基本的な周波数ノイズレベルに対し、一定の減衰量を得ることを目的としたパルス制御装置に関する技術の一例が開示されている(例えば特許文献3を参照)。このパルス制御装置は、周波数掃引波に応じてキャリア波の周波数を所定の周波数拡散幅の範囲で変化させる構成である。この構成によれば、キャリア波ひいては出力パルスの周波数が周波数拡散幅の範囲で分散するので、周波数ノイズの電力密度を低下させることができる。
特開2006−187173号公報 特開2010−279111号公報 特開2008−005682号公報
しかし、特許文献1〜3に開示された技術は、いずれもスイッチング周波数をスペクトラム拡散することでノイズを抑制している。この技術をスイッチング素子に対してオン・オフを制御する操作信号(パルス信号)に適用すると、スイッチング周波数を拡散することから、制御対象(電圧や電流)の制御周期も変化することになる。ここで、「制御周期」はパルス信号のデューティ(Duty)比を変更(更新)する周期を意図する。制御周期の長さ(期間)が経時的に変化すると、制御対象が不安定になったり、高調波電流や電磁ノイズ等に関する仕様(例えばIEC(国際電気標準会議)の規格やCISPR(国際無線障害特別委員会)の規格等)を満足しなくなる可能性がある。
スイッチング周波数(この逆数値がパルス周期である)をスペクトラム拡散する一例を図16に示す。当該図16において、パルス周期パターンPPaの周期(以下では単に「変調周期」と呼ぶ。)Mcは、パルス周期Pca,Pcb,Pccがそれぞれ2つあるので、数式で表すとMc=2Pca+2Pcb+2Pccになる。本例におけるパルス周期Pca,Pcb,Pccについての各制御周期Cca,Ccb,Cccは、数式で表すとそれぞれCca=2Pca、Ccb=2Pcb、Ccc=2Pccになる。
制御周期Cca(時刻t0から時刻taまで)はパルス周期Pcaの逆数値であるスイッチング周波数faになり、デューティ比Draを適用する。同様にして、制御周期Ccb(時刻taから時刻tbまで)と制御周期Ccc(時刻tbから時刻tcまで)は、各々のパルス周期Pca,Pcbの逆数値であるスイッチング周波数fb,fcになり、デューティ比Drb,Drcをそれぞれ適用している(ただしDra≠Drb≠Drcと仮定する)。時刻tc以降は、制御周期Cca,Ccb,Cccを繰り返す。このように変調周期Mc内における制御周期Cca,Ccb,Cccの各長さ(期間)が変化すると、最適な周波数を応答周波数として設定することができない。そのため、入力電流が正弦波から外れた高調波成分を多く含んだり、制御の安定性が悪く発振することで高調波成分が大きくなったり、あるいは電磁ノイズが増大したりする。その結果、上述した仕様を満足しなくなる可能性がある。
本発明はこのような点に鑑みてなしたものであり、スイッチング周波数(この逆数値であるパルス周期)をスペクトラム拡散させる場合でも、制御対象を安定化させ、高調波電流や電磁ノイズの仕様を満足できるスイッチング装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、スイッチング素子に対してオン・オフを制御する操作信号を伝達して、前記スイッチング素子のスイッチング制御を行うスイッチング装置において、複数種類のパルス周期から二種類以上の前記パルス周期を選択するパルス周期選択手段と、前記パルス周期選択手段によって選択された前記パルス周期の合計を制御周期とし、前記制御周期の整数倍を変調周期として設定する制御周期設定手段と、前記制御周期設定手段によって設定された前記制御周期ごとに、前記オン・オフのデューティ比を変更して前記操作信号を伝達する操作信号伝達手段とを有することを特徴とする。
この構成によれば、二種類以上のパルス周期が選択された周期を合計して制御周期とし、制御周期の整数倍を変調周期として設定する。この制御周期ごとにデューティ比を変更し、操作信号としてスイッチング素子に伝達する。二種類以上のパルス周期が選択されるので、その逆数値であるスイッチング周波数がスペクトラム拡散される。一方、制御周期の長さは一定に維持され、かつ、デューティ比も制御周期内で維持されるので、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。
なお「操作信号」には、PWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)信号を含めてもよい。「スイッチング素子」には、操作信号に基づいてオン・オフするスイッチング機能を有する任意の半導体素子を用いることができる。例えば、IGBT、FET(具体的にはMOSFET,JFET,MESFET等)、IGBT、GTO、パワートランジスタなどが該当する。「パルス周期」は、パルス幅(アクティブ状態の時間)とパルス間隔(非アクティブ状態の時間)との合計である。「スイッチング周波数」は、パルス周期とは逆数値の関係である。「二種類以上のパルス周期」は、スイッチング素子に伝達する操作信号に用いることができる複数種類(例えば10種類や200種類等)のパルス周期、すなわち全種類のパルス周期を選択する場合が上限となる。「制御周期」は、上述したようにパルス信号のデューティ比を変更する周期(時間間隔)であり、その周期内ではデューティ比が一定に維持される。「制御対象」は、スイッチング素子から出力される電力や信号等を受けて作動する機器であれば任意である。例えば、コンバータ、インバータ、回転機(電動機,発電機,電動発電機等)、系統(電力系統を含む)などが該当する。
請求項2に記載の発明は、前記変調周期として設定される前記制御周期に含まれる前記パルス周期は、前記制御周期ごとに異なることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記パルス周期選択手段は、前記複数種類のパルス周期から所定の選択規則に従って前記パルス周期を選択することを特徴とする。この構成によれば、所定の選択規則に従ってパルス周期を選択するので、確実にパルス周期の選択が行え、制御周期の長さが確定する。したがって、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。「所定の選択規則」は任意に設定してよい。例えば、出現順に選択したり、出現とは逆順に選択したり、間欠的に選択したりすることができる。
請求項4に記載の発明は、前記パルス周期選択手段は、前記複数種類のパルス周期からランダムに前記パルス周期を選択することを特徴とする。この構成によれば、パルス周期をランダムに選択するが、選択後は制御周期の長さが確定する。したがって、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。
請求項5に記載の発明は、前記操作信号伝達手段は、フィードバック制御を行う場合において、前記パルス周期選択手段によって選択された前記パルス周期および前記制御周期設定手段によって設定された前記制御周期のうちで一以上の周期に基づいて前記フィードバック制御の制御定数(例えば比例ゲインや積分ゲイン等)を設定し、前記操作信号を伝達することを特徴とする。この構成によれば、パルス周期や制御周期に基づいて適切な制御定数を設定するので、パルス周期(この逆数値であるスイッチング周波数)をスペクトラム拡散させる場合でも、応答周波数を一定にすることができる。
充電システムの第1構成例を模式的に示す図である。 パルス周期、スイッチング周波数、デューティ比等を説明する図である。 制御周期を一定にする第1制御例を示すタイムチャートである。 高調波電流と規制値との関係を示すグラフ図である。 高調波電流と規制値との関係を示すグラフ図である。 高調波電流と規制値との関係を示すグラフ図である。 スペクトラム拡散の有無による雑音端子電圧の違いを示すグラフ図である。 制御周期を一定にする第2制御例を示すタイムチャートである。 制御周期を一定にする第3制御例を示すタイムチャートである。 制御周期を一定にする第4制御例を示すタイムチャートである。 制御周期を一定にする第5制御例を示すタイムチャートである。 制御周期を一定にする第6制御例を示すタイムチャートである。 充電システムの第2構成例を模式的に示す図である。 電力変換システムの構成例を示す模式図である。 インバータ制御装置の構成例を示す模式図である。 従来技術の制御例を示すタイムチャートである。
以下、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、特に明示しない限り、「接続する」という場合には電気的な接続を意味する。各図は、本発明を説明するために必要な要素を図示し、実際の全要素を図示してはいない。上下左右等の方向を言う場合には、図面の記載を基準とする。各実施の形態では、スイッチング素子としてIGBTを用いた例を説明する。
〔実施の形態1〕
実施の形態1は、PFC(Power Factor Correction)コンバータ内に備えるスイッチング素子に対して操作信号を伝達する例であって、図1〜図12を参照しながら説明する。なお、スイッチング素子による制御対象は、PFCコンバータの入力電流とコンバータ(具体的にはDC/DCコンバータ)への出力電圧を例として説明する。
図1には、交流電力源Eac(例えば商用電源等)から電力の供給を受けて、バッテリEdc(例えば車載高電圧バッテリ等)に充電する充電システムの第1構成例を模式的に示す。この充電システムは「車載充電器」の一例であって、PFCコンバータ10、DC/DCコンバータ20、定電圧制御装置40、入力電流正弦波制御装置50Aなどを有する。これらの要素のうちで、定電圧制御装置40と入力電流正弦波制御装置50Aが「スイッチング装置」に相当する。
PFCコンバータ10は、高調波電流エミッションおよび無効電力の双方を低減するため、入力電流を入力電圧と同位相の正弦波にしつつ、出力電圧(直流)を一定に制御する機能を担う。このPFCコンバータ10は、スイッチング素子Q10、ダイオードD10,D11、整流回路Dz1、インダクタL10(主にコイルであるがリアクトルを含む。)などを有する昇圧型コンバータである。なお、高調波電流エミッションの限度値は、IECの規格(例えばIEC61000-3-2やIEC61000-3-12等の規定)が定められている。また、150[kHz]以上の電磁波エミッションに関しては、CISPRの規格(例えばCISPR14-1等の規定)が定められている。
スイッチング素子Q10は、後述する操作信号制御部55(特に操作信号伝達手段55c)から伝達される操作信号Spに従ってオン・オフのスイッチングを行う。本形態の操作信号Spには、後述するようにパルス信号を用いる(図2,図3,図8〜図12を参照)。ダイオードD10(アノード側)とインダクタL10は直列接続され、その接続点はスイッチング素子Q10のコレクタ端子に接続される。ダイオードD11はスイッチング素子Q10のコレクタ端子とエミッタ端子との間に並列接続され、フリーホイールダイオードとして機能する。整流回路Dz1は、交流電力源Eacから供給される交流電力を直流電力に変換して出力する機能を担う。この整流回路Dz1は主にダイオードで構成され、本形態では全波整流を行うダイオードブリッジ回路を用いる。
PFCコンバータ10では、交流電力源Eacから供給される交流電力は整流回路Dz1に入力され、操作信号Spに従ってスイッチング素子Q10がオン・オフ駆動されて、所要電圧値に制御された直流電圧が出力端子(図1ではダイオードD10(カソード側)およびスイッチング素子Q10のエミッタ端子)から出力される。操作信号Spの制御にあたって、PFCコンバータ10の入力側には電圧センサ11が接続され、同じく出力側には電圧センサ13が接続され、さらに内部に電流センサ12が接続される。電圧センサ11,13や電流センサ12には任意のセンサを適用でき、構成等は周知であるので図示および説明を省略する。
DC/DCコンバータ20は、バッテリ電圧や充電電流等を制御する機能を担う。このDC/DCコンバータ20の構成等は周知であるので、図示および説明を省略する。PFCコンバータ10とDC/DCコンバータ20との間には、平滑用のコンデンサC1が接続される。このコンデンサC1は、PFCコンバータ10に含めたり、あるいはDC/DCコンバータ20に含めたりしてもよい。
定電圧制御装置40は、フィードバック制御により、PFCコンバータ10の出力電圧を一定に制御する機能を担う。この定電圧制御装置40は、AD変換器41、PI電圧制御部42、加減算器43などを有する。AD変換器41は、電圧センサ13で検出されるアナログ値の検出電圧値V2をデジタル値に変換して出力する機能を担う。加減算器43は、電圧指令値Va*と、電圧センサ13からAD変換器41を通じて入力される検出電圧値V2との偏差ΔVa(=Va*−V2)を求めて出力する。電圧指令値Va*は、PFCコンバータ10が出力する直流電圧値の目標値である。この電圧指令値Va*は、定電圧制御装置40で設定または記録媒体に記録されてもよく、外部装置(例えばECU30等)から伝達されてもよい。PI電圧制御部42は、加減算器43から出力される偏差ΔVaと、比例ゲインや積分ゲイン等とに基づいて電圧値のPI制御を行うため、電圧指令値Vb*を算出して出力する。
入力電流正弦波制御装置50Aは、フィードバック制御により、バッテリEdcに充電を行う際における入力電流を正弦波に制御する機能を担う。この入力電流正弦波制御装置50Aは、ゼロクロス検出部51、AD変換器52,53、デューティ比演算部54、操作信号制御部55、正弦波発生器56、PI電流制御部57、絶対値算部58、演算増幅回路59、加減算器5a,5bなどを有する。なお、上述した定電圧制御装置40とともに、入力電流正弦波制御装置50Aは二次系の伝達関数となる。
ゼロクロス検出部51は、電圧センサ11によって検出される電圧値が0[V]になるときに検出信号を出力する機能を担う。この検出信号を受けて、正弦波発生器56は正弦波信号Vsinを発生させる。演算増幅回路59は、電圧指令値Vb*が電圧振幅値となるように正弦波信号の絶対値|Vsin|を増幅(乗算)し、電圧指令値VIL*を出力する。AD変換器52は、電流センサ12で検出されるアナログ電流値をデジタル値(具体的には電流値に相当する電圧値VIL)に変換して出力する機能を担う。加減算器5aは、電圧指令値VIL*と電圧値VILとの偏差ΔVIL(=VIL*−VIL)を求めて出力する。PI電流制御部57は、加減算器5aから出力される偏差ΔVILと、比例ゲインや積分ゲイン等とに基づいて電流値のPI制御を行うため、電圧指令値Vc*を算出して出力する。
AD変換器53は、電圧センサ11で検出されるアナログ値の検出電圧値V1をデジタル値に変換して出力する機能を担う。絶対値算部58は、AD変換器53によって変換された検出電圧値V1の絶対値を演算して出力する。加減算器5bは、PI電流制御部57から出力された電圧指令値Vc*と、絶対値算部58から出力された絶対値|V1|との偏差ΔVc(=Vc*−|V1|)を求めて出力する。デューティ比演算部54は、偏差ΔVcに基づいて、基準周波数との比較演算によりデューティ比指令値Drを求めて出力する。
操作信号制御部55は、デューティ比演算部54から伝達されるデューティ比指令値Drに基づいて、スイッチング素子Q10に伝達する操作信号Spを出力する機能を担う。この操作信号制御部55は、パルス周期選択手段55a、制御周期設定手段55b、操作信号伝達手段55cなどを有する。パルス周期選択手段55aは、複数種類のパルス周期を検出し、当該複数種類のパルス周期の中から二種類以上のパルス周期を選択する機能を担う。制御周期設定手段55bは、パルス周期選択手段55aによって選択されたパルス周期の合計を制御周期として設定する機能を担う。操作信号伝達手段55cは、制御周期設定手段55bによって設定された制御周期ごとに、現在のデューティ比Drをデューティ比指令値Drに含まれるデューティ比に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する機能を担う。
上述した充電システムにおいて、交流電力源Eacの周波数が例えば50[Hz]の場合は、PFCコンバータ10の出力電圧は100[Hz]の周波数で変動(脈動)する。すなわち入力電圧の2倍の周波数になる。電圧制御の固有角周波数を大きくすると追従性が上がり、リアクトル電流指令値が歪み入力電流の高調波成分が増加する。一方、リアクトル電流は100[Hz]の整流波形に対して、スイッチング素子Q10のスイッチング周波数のリプル電流が加算された波形となる。したがって、入力電流正弦波制御装置50Aによる電流制御は100[Hz]で確実に追従でき、かつ、スイッチング素子Q10のスイッチング周波数に追従しないようにする必要がある。
ここで、入力電流正弦波制御装置50Aで行う電流制御の応答周波数とPIゲイン(すなわち比例ゲインKpと積分ゲインKi)との関係は、下記に示す数式(1a)と数式(1b)のようになる。数式中の「L」はインダクタL10のインダクタンスであり、「ζ」は減衰比であり、「f」は応答周波数であり、「T」は制御周期である。
Figure 0005662899
ここで、ステップ応答に対してオーバーシュートを0に設計すると、減衰比はζ=1になる。またデジタル制御では離散領域で動かすため、積分ゲインKiは制御周期を乗じた値となる。これらのことから、応答周波数とPIゲインとの関係は、下記に示す数式(2a)と数式(2b)のようになる。積分ゲインKiを一定値に固定にすると、制御周期によって応答周波数が変わる。すなわち数式(2b)に従って、制御周期の長さに応じて、PI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する必要がある。
Figure 0005662899
また、応答周波数によって制御の安定性が変わる。応答周波数が小さい場合は、電流の応答が小さいため入力電流が正弦波から外れた高調波成分を多く含んだものとなる。応答周波数が大きい場合は、制御の安定性が悪く発振することで高調波成分が大きくなったり電磁ノイズが増大することがある。したがって、応答周波数には最適な数値(つまり最適なPIゲイン)を設定する必要がある。なお、パルス周期パターンの変調周期は、9[kHz]〜18[kHz]程度が最もノイズ低減効果が高い。
次に、操作信号制御部55によるデューティ比の変更制御例(変更制御例1〜6)について、図2〜図12を参照しながら説明する。ただし、図2には図3以降の記載内容を説明するにあたっての前提を模式的に示す。すなわち図2(A)には、1周期を単パルス周期T1(スイッチング周波数f1)とし、デューティ比Dr1(パルス幅T1a)とするパルス信号を示す。図2(B)には、1周期を単パルス周期T2(スイッチング周波数f2)とし、デューティ比Dr2(パルス幅T2a)とするパルス信号を示す。図2(C)には、1周期を単パルス周期T3(スイッチング周波数f3)とし、デューティ比Dr3(パルス幅T3a)とするパルス信号を示す。図2(A)、図2(B)および図2(C)に示す各パルス信号の例では、T1>T2>T3、f1<f2<f3、Dr1<Dr2<Dr3の大小関係になっている。
スペクトラム拡散に伴って、上記パルス信号を組み合わせた例を図2(D)に示す。図2(D)に示すパルス周期パターンPP0は、パルス周期Pc1(単パルス周期T1のパルス信号が2パルス)と、パルス周期Pc2(単パルス周期T2のパルス信号が3パルス)と、パルス周期Pc3(単パルス周期T3のパルス信号が8パルス)からなる。よって制御周期Cc0の長さは、Cc0=T1+T2+T3になる。なお、各パルス周期のパルス数は任意であり、この例に限られない。制御対象に応じて適切なパルス数が設定される。図3以降では、図示を簡略化して一目で分かり易くするために、図2(D)と同等のパルス周期パターンを図2(E)のように表記することにする。
(変更制御例1)
変更制御例1について、図3〜図7を参照しながら説明する。この変更制御例1では、図2(E)に示すパルス周期パターンPP0と同様に、パルス周期Pc11,Pc12,Pc13を一組とするパルス周期パターンPP1を繰り返し、当該パルス周期パターンPP1の制御周期Cc1の長さを一定にする制御を行う。パルス周期Pc11はスイッチング周波数f11であり、パルス周期Pc12はスイッチング周波数f12であり、パルス周期Pc13はスイッチング周波数f13である。
この条件下において、パルス周期選択手段55aは、所定の選択規則に従って(あるいはランダムに)、複数種類のパルス周期からパルス周期Pc11,Pc12,Pc13を選択する。所定の選択規則は任意に設定してよく、例えば出現順に選択したり、出現とは逆順に選択したり、間欠的に選択したりすることができる。制御周期設定手段55bは、パルス周期Pc11,Pc12,Pc13の合計を求め、制御周期Cc1および変調周期Mc1として設定する。制御周期Cc1の設定に伴って、上述した数式(2b)に従ってPI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する。操作信号伝達手段55cは、制御周期Cc1ごとに、デューティ比Dr11,Dr12,Dr13を順番に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する。なお、デューティ比Dr11,Dr12,Dr13は少なくとも一つが他のデューティ比と値が異なる。また、本例の変調周期Mc1の長さは制御周期Cc1と一致する。
上述した制御によれば、時刻t10から時刻t13までの期間、時刻t13から時刻t14までの期間、時刻t14から時刻t15までの期間、…は同じ長さである。ただし、パルス周期パターンPP1を経過するごとにデューティ比を順次変更してゆく。すなわち、最初のパルス周期パターンPP1はデューティ比Dr11であるが、時刻t13からはデューティ比Dr12に変更し、時刻t14からはデューティ比Dr13に変更する。時刻t15以降は時刻t10から時刻t15までの繰り返しになる。
上記制御を行う場合において、IECの規格やCISPRの規格等による規制値を満たす応答周波数について、図4〜図7を参照しながら説明する。当該図4〜図6には応答周波数と高調波電流との関係をグラフ図で示す。図7には、スペクトラム拡散の有無によるCISPR14−1での雑音端子電圧の相違をグラフ図で示す。
図4は応答周波数を800[Hz]とした場合であり、図5は応答周波数を900[Hz]とした場合であり、図6は応答周波数を1000[Hz]とした場合である。図4(A),図5(A),図6(A)は、縦軸を高調波電流とし、横軸を高調波次数として、高調波電流を棒グラフで表し、規制値を折れ線グラフで表す。図4(B),図5(B),図6(B)には、入力電流の経時的変化を示す。図7は、縦軸を雑音端子電圧とし、横軸を(測定)周波数として、スペクトラム拡散が有る場合の変化を実線で示し、スペクトラム拡散が無い場合の変化を二点鎖線で示す。
図4(A),図5(A),図6(A)に示す高調波電流を比較してみると、図4(A)に示す範囲Err1と図6(A)に示す範囲Err2では高調波電流が規制値以上になっている。一方、図5(A)に表す高調波電流は全ての高調波次数において規制値を満たす。また、図5(B)に表す波形は、図4(B)や図6(B)に表す波形と比べて高調波成分が少ない。したがって、変更制御例1では応答周波数を900[Hz](あるいは近傍周波数)に設定することができる。上述したように、この応答周波数に基づいて、PI電流制御部57の積分ゲインKiには数式(2b)に従って適正値を設定する。また図7に示すように、スペクトラム拡散が有る場合は無い場合に比べて、雑音端子電圧が低く抑えられる。
(変更制御例2)
変更制御例2について、図8を参照しながら説明する。この変更制御例2では、パルス周期Pc21,Pc22,Pc23,Pc24を一組とするパルス周期パターンPP2を繰り返し、当該パルス周期パターンPP2の制御周期Cc2の長さを一定にする制御を行う。パルス周期Pc21はスイッチング周波数f21であり、パルス周期Pc22はスイッチング周波数f22であり、パルス周期Pc23はスイッチング周波数f23であり、パルス周期Pc24はスイッチング周波数f24である。上述した変更制御例1との相違は、パルス周期パターンPP2を構成するパルス周期(スイッチング周波数)の種類数が異なる。
この条件下において、パルス周期選択手段55aは、所定の選択規則に従って(あるいはランダムに)、複数種類のパルス周期からパルス周期Pc21,Pc22,Pc23,Pc24を選択する。制御周期設定手段55bは、パルス周期Pc21,Pc22,Pc23,Pc24の合計を求め、制御周期Cc2および変調周期Mc2として設定する。制御周期Cc2の設定に伴って、上述した数式(2b)に従ってPI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する。操作信号伝達手段55cは、制御周期Cc2ごとに、デューティ比Dr21,Dr22,Dr23,Dr24を順番に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する。なお、デューティ比Dr21,Dr22,Dr23,Dr24は少なくとも一つが他のデューティ比と値が異なる。変更制御例2によれば、変更制御例1と同様に図4〜図7と同様の特性が得られるので、IECの規格やCISPRの規格等による規制値を満たす応答周波数(例えば900[Hz])を設定することができる。
(変更制御例3)
変更制御例3について、図9を参照しながら説明する。この変更制御例3では、パルス周期Pc31,Pc32,Pc33のそれぞれ2つを一組とするパルス周期パターンPP3を繰り返し、当該パルス周期パターンPP3の制御周期Cc3の長さを一定にする制御を行う。パルス周期Pc31はスイッチング周波数f31であり、パルス周期Pc32はスイッチング周波数f32であり、パルス周期Pc33はスイッチング周波数f33である。上述した変更制御例1との相違は、パルス周期パターンPP3を構成する同一のパルス周期(スイッチング周波数)の個数が異なる。
この条件下において、パルス周期選択手段55aは、所定の選択規則に従って(あるいはランダムに)、複数種類のパルス周期からパルス周期Pc31,Pc32,Pc33を2つずつ選択する。制御周期設定手段55bは、2つずつのパルス周期Pc31,Pc32,Pc33の合計を求め、制御周期Cc3および変調周期Mc3として設定する。制御周期Cc3の設定に伴って、上述した数式(2b)に従ってPI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する。操作信号伝達手段55cは、制御周期Cc3ごとに、デューティ比Dr31,Dr32,Dr33を順番に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する。なお、デューティ比Dr31,Dr32,Dr33は少なくとも一つが他のデューティ比と値が異なる。変更制御例3によれば、変更制御例1と同様に図4〜図7と同様の特性が得られるので、IECの規格やCISPRの規格等による規制値を満たす応答周波数(例えば900[Hz])を設定することができる。
(変更制御例4)
変更制御例4について、図10を参照しながら説明する。この変更制御例4では、パルス周期Pc41,Pc42,Pc43を一組とし、2つで新しい一組としたパルス周期パターンPP4を繰り返し、当該パルス周期パターンPP4の制御周期Cc4の長さを一定にする制御を行う。パルス周期Pc41はスイッチング周波数f41であり、パルス周期Pc42はスイッチング周波数f42であり、パルス周期Pc43はスイッチング周波数f43である。上述した変更制御例1との相違は変更制御例3と同様である。当該変更制御例3との相違は、パルス周期パターンPP4内におけるパルス周期(スイッチング周波数)の生起順が異なる。すなわち、変更制御例3では2つのパルス周期Pc31→2つのパルス周期Pc32→2つのパルス周期Pc33の生起順であるのに対して、変更制御例3ではパルス周期Pc41,Pc42,Pc43の生起順を2回繰り返す。
この条件下において、パルス周期選択手段55aは、所定の選択規則に従って(あるいはランダムに)、複数種類のパルス周期からパルス周期Pc41,Pc42,Pc43を2つずつ選択する。制御周期設定手段55bは、2つずつのパルス周期Pc41,Pc42,Pc43の合計を求め、制御周期Cc4および変調周期Mc4として設定する。制御周期Cc4の設定に伴って、上述した数式(2b)に従ってPI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する。操作信号伝達手段55cは、制御周期Cc4ごとに、デューティ比Dr41,Dr42,Dr43を順番に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する。なお、デューティ比Dr41,Dr42,Dr43は少なくとも一つが他のデューティ比と値が異なる。変更制御例4によれば、変更制御例1と同様に図4〜図7と同様の特性が得られるので、IECの規格やCISPRの規格等による規制値を満たす応答周波数(例えば900[Hz])を設定することができる。
(変更制御例5)
変更制御例5について、図11を参照しながら説明する。この変更制御例5では、パルス周期Pc51,Pc52,Pc53を一組とするパルス周期パターンPP5を繰り返し、当該パルス周期パターンPP5の制御周期Cc5の長さを一定にする制御を行う。パルス周期Pc51はスイッチング周波数f51であり、パルス周期Pc52はスイッチング周波数f52であり、パルス周期Pc53はスイッチング周波数f53である。上述した変更制御例1〜4との相違は、制御周期と変調周期との長さが異なる。すなわち変更制御例1〜4では制御周期と変調周期との長さが一致するのに対して、変更制御例5では制御周期Cc5と変調周期Mc5との長さが一致しない。
この条件下において、パルス周期選択手段55aは、所定の選択規則に従って(あるいはランダムに)、複数種類のパルス周期からパルス周期Pc51,Pc52,Pc53を2つずつ選択する。制御周期設定手段55bは、パルス周期Pc51,Pc52,Pc53の合計を制御周期Cc5として設定し、2つずつのパルス周期Pc51,Pc52,Pc53の合計を変調周期Mc5として設定する。この結果、変調周期Mc5の長さは制御周期Cc5よりも長い(Mc5>Cc5)。制御周期Cc5の設定に伴って、上述した数式(2b)に従ってPI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する。操作信号伝達手段55cは、制御周期Cc5ごとに、デューティ比Dr51,Dr52,Dr53を順番に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する。なお、デューティ比Dr51,Dr52,Dr53,Dr54,Dr55は少なくとも一つが他のデューティ比と値が異なる。変更制御例5によれば、制御周期Cc5と変調周期Mc5との長さは一致しないものの、変更制御例1と同様に図4〜図7と同様の特性が得られるので、IECの規格やCISPRの規格等による規制値を満たす応答周波数(例えば900[Hz])を設定することができる。
(変更制御例6)
変更制御例6について、図12を参照しながら説明する。この変更制御例6では、パルス周期Pc61,Pc62,Pc63,Pc64,Pc65を一組とするパルス周期パターンPP6を繰り返し、当該パルス周期パターンPP6の制御周期Cc6の長さを一定にする制御を行う。パルス周期Pc61はスイッチング周波数f61であり、パルス周期Pc62はスイッチング周波数f62であり、パルス周期Pc63はスイッチング周波数f63であり、パルス周期Pc64はスイッチング周波数f64であり、パルス周期Pc65はスイッチング周波数f65である。上述した変更制御例1〜4との相違は、制御周期と変調周期との長さが異なる。変更制御例5との相違は、同じ制御周期でもパルス周期(スイッチング周波数)の個数が異なる。
この条件下において、パルス周期選択手段55aは、複数種類のパルス周期からパルス周期Pc61,Pc62,Pc63,Pc64,Pc65を選択する。制御周期設定手段55bは、パルス周期Pc61,Pc62,Pc63の合計と、パルス周期Pc64,Pc65の合計とが一致するので、それぞれ制御周期Cc6として設定する。制御周期Cc6の設定に伴って、上述した数式(2b)に従ってPI電流制御部57の積分ゲインKiを設定する。また、パルス周期Pc61,Pc62,Pc63,Pc64,Pc65の合計を変調周期Mc6として設定する。この結果、変調周期Mc6の長さは制御周期Cc6よりも長(Mc6>Cc6)、制御周期Cc6の整数倍(図12では2倍)が変調周期Mc6である。操作信号伝達手段55cは、制御周期Cc6ごとに、デューティ比Dr61,Dr62,Dr63,Dr64,Dr65を順番に変更して操作信号Spをスイッチング素子Q10に伝達する。なお、デューティ比Dr61,Dr62,Dr63,Dr64,Dr65は少なくとも一つが他のデューティ比と値が異なる。変更制御例6によれば、同じ制御周期Cc6でもパルス周期(スイッチング周波数)の個数が異なるものの、変更制御例1と同様に図4〜図7と同様の特性が得られるので、IECの規格やCISPRの規格等による規制値を満たす応答周波数(例えば900[Hz])を設定することができる。
上述した実施の形態1によれば、以下に示す各効果を得ることができる
(1)入力電流正弦波制御装置50A(スイッチング装置)において、複数種類のパルス周期から二種類以上のパルス周期を選択するパルス周期選択手段55aと、パルス周期選択手段55aによって選択されたパルス周期の合計を制御周期として設定する制御周期設定手段55bと、制御周期設定手段55bによって設定された制御周期ごとに、デューティ比を変更して操作信号Spを伝達する操作信号伝達手段55cとを有する構成とした(図1を参照)。この構成によれば、二種類以上のパルス周期が選択された周期を合計して制御周期とし、この制御周期ごとにデューティ比を変更し、操作信号Spとしてスイッチング素子Q10に伝達する(図3,図8〜図12を参照)。二種類以上のパルス周期が選択されるので、その逆数値であるスイッチング周波数がスペクトラム拡散される。一方、制御周期の長さは一定に維持され、かつ、デューティ比も制御周期内で維持されるので、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。
(2)パルス周期選択手段55aは複数種類のパルス周期から所定の選択規則に従ってパルス周期を選択する構成とした(変更制御例1〜6;図3,図8〜図12を参照)。この構成によれば、所定の選択規則に従ってパルス周期を選択するので、確実にパルス周期の選択が行え、制御周期の長さが確定する。したがって、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。
(3)パルス周期選択手段55aは複数種類のパルス周期からランダムにパルス周期を選択する構成とした(変更制御例1〜6;図3,図8〜図12を参照)。この構成によれば、パルス周期をランダムに選択するが、選択後は制御周期の長さが確定する。したがって、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。
(4)操作信号伝達手段55cは、制御周期設定手段55bによって設定された制御周期に基づいてフィードバック制御の積分ゲインKi(制御定数)を設定し、操作信号Spを伝達する構成とした。この構成によれば、制御周期に基づいて適切な積分ゲインKiを設定するので、パルス周期(この逆数値であるスイッチング周波数)をスペクトラム拡散させる場合でも、応答周波数を一定にすることができる。
〔実施の形態2〕
実施の形態2は、DC/DCコンバータ内に備えるスイッチング素子に対して操作信号を伝達する例であって、図13を参照しながら説明する。なお、スイッチング素子による制御対象は、バッテリへの電圧と電流を例として説明する。なお図示および説明を簡単にするために、実施の形態2では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図13には、交流電力源Eac(例えば商用電源等)から電力の供給を受けて、バッテリEdc(例えば車載高電圧バッテリ等)に充電する充電システムの第2構成例を模式的に示す。この充電システムは、実施の形態1と同様に、PFCコンバータ10、DC/DCコンバータ20、定電力出力装置50Bなどを有する。これらの要素のうちで、定電力出力装置50Bが「スイッチング装置」に相当する。
PFCコンバータ10は、高調波電流エミッションおよび無効電力の双方を低減するため、入力電流を入力電圧と同位相の正弦波にしつつ、出力電圧(直流)を一定に制御する機能を担う。このPFCコンバータ10は、実施の形態1に示す構成としてもよく、周知の構成としてもよい。よって、図示および説明を省略する。
DC/DCコンバータ20は、バッテリ電圧や充電電流等を制御する機能を担う。このDC/DCコンバータ20は、スイッチング素子Q21,Q22,Q23,Q24、ダイオードD21,D22,D23,D24、トランスTr、整流回路Dz2、インダクタL20、コンデンサC20などを有する。
スイッチング素子Q21,Q23は直列接続されてハーフブリッジを構成し、同様にスイッチング素子Q22,Q24は直列接続されてハーフブリッジを構成する。これらのスイッチング素子Q21,Q22,Q23,Q24がそれぞれ有する入力端子P21,P22,P23,P24は、操作信号制御部55から伝達される操作信号Spを受ける。ダイオードD21,D22,D23,D24は、それぞれスイッチング素子Q21,Q22,Q23,Q24の各コレクタ端子とエミッタ端子との間に並列接続され、フリーホイールダイオードとして機能する。スイッチング素子Q21,Q23の接続点と、スイッチング素子Q22,Q24の接続点とは、トランスTrの1次側端子にそれぞれ接続される。
トランスTrの2次側端子は整流回路Dz2の入力端子に接続される。整流回路Dz2の出力端子は、プラス側がインダクタL20を介してバッテリEdcのプラス端子に接続され、マイナス側がバッテリEdcのマイナス端子に接続される。整流回路Dz2は、実施の形態1と同様に主にダイオードで構成され、本形態では全波整流を行うダイオードブリッジ回路を用いる。バッテリEdcのプラス端子とマイナス端子との間にはコンデンサC20が接続される。これらのインダクタL20およびコンデンサC20は、電流の脈動を除去するため、平滑回路やフィルタ回路として機能する。なお、電圧センサ11はDC/DCコンバータ20の入力側に接続され、電圧センサ13はDC/DCコンバータ20の出力側に接続され、電流センサ12はDC/DCコンバータ20内に接続される。
定電力出力装置50Bは、実施の形態1の入力電流正弦波制御装置50Aに対応する(図1を参照)。この定電力出力装置50Bは、入力電流正弦波制御装置50Aと比べて、一部の構成要素が異なる。すなわち、実施の形態1(図1)に示すAD変換器52、デューティ比演算部54、操作信号制御部55および加減算器5aのほかに、AD変換器5c、電圧制御比例ゲイン部5d、電圧制御積分ゲイン部5e、演算増幅回路5f、加減算器5gなどを新たな要素として構成する。以下では、定電力出力装置50Bを構成する新たな要素について説明する。なお定電圧制御装置40については、バッテリEdcは定電圧負荷と等価であり、電流のPI制御とみなせることから、不要としている。
AD変換器5cは、実施の形態1(図1)におけるAD変換器41に相当する機能を担う。すなわち、電圧センサ13で検出されるアナログ値の検出電圧値V2をデジタル値に変換して出力する。演算増幅回路5fは、AD変換器5cから伝達される検出電圧値V2と、電力指令値Pout*とに基づいて、電流指令値VIo*を演算(除算)して出力する。具体的には、「VIo*=Pout*÷V2」を演算する。
AD変換器52および加減算器5aは、実施の形態1(図1)と同じ機能を担う。ただし本形態では、AD変換器52は変換して出力するデジタル値を「電圧値VIo」とし、加減算器5aが求める偏差を偏差ΔVIo(=VIo*−VIo)とする。
電圧制御比例ゲイン部5dは、加減算器5aから伝達される偏差ΔVIoに基づいて、電圧を制御するべく比例ゲインVdpを求めて出力する。電圧制御積分ゲイン部5eは、加減算器5aから伝達される偏差ΔVIoに基づいて、電圧を制御するべく積分ゲインVdiを求めて出力する。加減算器5gは、電圧制御比例ゲイン部5dから伝達される比例ゲインVdpと電圧制御積分ゲイン部5eから伝達される積分ゲインVdiとを演算(和算)し、比例積分ゲインVd(=Vdp+Vdi)として出力する。なお電圧制御比例ゲイン部5dおよび電圧制御積分ゲイン部5eは電圧に基づく制御を行うが、当該電圧には電流センサ12で検出されて変換された電圧値VIoを含む。すなわちPFCコンバータ10を流れる電流を制御するので、電圧制御比例ゲイン部5dおよび電圧制御積分ゲイン部5eは実施の形態1のPI電流制御部57に相当する(図1を参照)。
デューティ比演算部54および操作信号制御部55は、実施の形態1(図1)と同じ機能を担う。ただし、デューティ比演算部54については、加減算器5gから伝達される比例積分ゲインVdに基づいて、デューティ比指令値Drを求めて出力する。
また、定電力出力装置50B(具体的には操作信号制御部55)が操作信号Spを伝達する対象は、スイッチング素子Q21,Q22,Q23,Q24になる点が相違する。すなわち、上アームとしてのスイッチング素子Q21,Q22と、下アームとしてのスイッチング素子Q23,Q24に対応して個別に操作信号Spを伝達する。操作信号制御部55によるデューティ比の変更制御例(変更制御例1〜6)については、実施の形態1と同様である。そのため、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
〔実施の形態3〕
実施の形態3は、インバータ内に備えるスイッチング素子に対して操作信号を伝達する例であって、図14,図15を参照しながら説明する。なお、スイッチング素子による制御対象は、回転機の回転数やトルクを例として説明する。なお図示および説明を簡単にするために、実施の形態3では実施の形態1と異なる点について説明する。よって実施の形態1で用いた要素と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図14には、直流電力源E1(例えばバッテリや燃料電池等)から電力の供給を受けて、回転機(本例では電動発電機)の回転制御を行う電力変換システムの構成例を模式的に示す。この電力変換システムは、DC/DCコンバータ20、インバータ60、インバータ制御装置90などを有する。これらの要素のうちで、インバータ制御装置90が「スイッチング装置」に相当する。なお、本形態では回転機に電動発電機を用いる。
DC/DCコンバータ20は、直流電力源E1から平滑用のコンデンサC1を介して供給される直流電圧(電圧値V3;例えば300[V]等)を、インバータ60で必要とする直流電圧(電圧値Vdc)に変換して出力する機能を担う。このDC/DCコンバータ20は、実施の形態2に示す構成としてもよく、周知の構成としてもよい。よって、図示および説明を省略する。なお、インバータ60が必要とする直流電圧によっては、DC/DCコンバータ20を接続しない場合もある。
インバータ60は、供給される直流電圧(電圧値Vdc;例えば660[V]等)を電力変換して電動発電機80に出力する機能を担う。DC/DCコンバータ20とインバータ60との間には、平滑用のコンデンサC2が接続される。このコンデンサC2は、DC/DCコンバータ20に含めたり、あるいはインバータ60に含めたりしてもよい。
インバータ60は、スイッチング素子Q61,Q62,Q63,Q64,Q65,Q66(以下では単に「Q61〜Q66」と表記する)や、ダイオードD61,D62,D63,D64,D65,D66(以下では単に「D1〜D6と表記する)などを有する。スイッチング素子Q61〜Q66は、それぞれが有する入力端子P61,P62,P63,P64,P65,P66は、インバータ制御装置90に備える操作信号制御部55(図15を参照)から伝達される操作信号Spを受ける。スイッチング素子Q61〜Q63やダイオードD61〜D63などは上アーム側に配置され、スイッチング素子Q64〜Q66やダイオードD64〜D66などは下アーム側に配置される。ダイオードD1〜D6は、それぞれ対応するスイッチング素子Q61〜Q66のコレクタ端子とエミッタ端子との間に並列接続され、フリーホイールダイオードとして機能する。
インバータ60内の回路素子は、一点鎖線で囲って示すように三相(本例ではU相,V相,W相)に分けられ、インバータ制御装置90によって相ごとに作動が制御される。U相は、スイッチング素子Q61,Q64やダイオードD61,D64などで構成される。V相は、スイッチング素子Q62,Q65やダイオードD62,D65などで構成される。W相は、スイッチング素子Q63,Q66やダイオードD63,D66などで構成される。U相のスイッチング素子Q61,Q64は、直列接続されてハーフブリッジを構成する。V相のスイッチング素子Q62,Q65と、W相のスイッチング素子Q63,Q66とについても同様に、直列接続されてハーフブリッジを構成する。ハーフブリッジの各接続点と電動発電機80の三相端子とは、線路Ku,Kv,Kwによって相ごとに接続されている。線路KuにはU相電流Iuが流れ、線路KvにはV相電流Ivが流れ、線路KwにはW相電流Iwが流れる。
インバータ制御装置90は、DC/DCコンバータ20やインバータ60等の動作を司る。本発明を実現するためのインバータ制御装置90の構成例については後述する(図15を参照)。インバータ制御装置90が入力する信号には、例えば「外部装置」に相当するECU30から伝達されるトルク指令値T、電流センサ70から伝達される電流I(すなわち相電流Iu,Iv,Iw)、レゾルバ81から伝達される信号、二点鎖線で示す車速センサ100から伝達される速度Vs(車速)、二点鎖線で示す加速度センサ110から伝達される加速度ωaなどが該当する。インバータ制御装置90が出力する信号は、スイッチング素子Q61〜Q66の制御端子P1〜P6に伝達する操作信号Spや、DC/DCコンバータ20に備える駆動回路に伝達する電圧制御信号などが該当する。
電動発電機80は、例えば発電機能と電動機能とを兼ね備える三相の発電電動機(図1には「MG」と記載する)を適用する。電流センサ70には、電動発電機80を流れる相電流Iu,Iv,Iwを検出可能なセンサを用いる。例えば、磁気比例型センサ,電磁誘導型センサ,ファラデー効果型センサ,変流器型センサなどが該当する。レゾルバ81は、電動発電機80に備える回転部材(例えば主軸やロータ等)の電気角に基づく信号(SIN検出信号SsやCOS検出信号Sc等)を出力する。
図15に示すインバータ制御装置90は、電流指令部91、加減算器92、PI制御部93、三相変換部94,操作信号制御部55,二相変換部95などを有する。このインバータ制御装置90は「インバータECU」とも呼ばれる。各要素の機能等については以下に説明する。
加減算器92は、電流指令部91から伝達される電流指令信号と、二相変換部95から伝達されるdq軸電流(d軸電流Idおよびq軸電流Iq)との偏差ΔId(=Id*−Id)およびΔIq(=Iq*−Iq)を求めて出力する。二相変換部95は、電流センサ70によって検出される電流I(相電流Iu,Iv,Iw)と、RD変換部82から伝達される電動発電機80の回転角度θとに基づいて三相・二相変換し、d軸電流Idおよびq軸電流Iqとして出力する。RD変換部82は、レゾルバ81から出力される信号(SIN検出信号SsやCOS検出信号Sc等)に基づいて、上記回転角度θを出力する。回転角度θは、電動発電機80における所定位置を基準とする角度である。所定位置は任意に設定可能であり、ノースマーカの設置に伴う信号を検出することもできる。
PI制御部93は、加減算器92から伝達される偏差(d軸電流偏差ΔIdおよびq軸電流偏差ΔIq)と、ゲイン(比例ゲインKpおよび積分ゲインKi)とに基づいてPI制御を行うため、電圧位相指令信号(d軸電圧指令値Vd*およびq軸電圧指令値Vq*)を算出して出力する。三相変換部94は、PI制御部93から伝達される電圧位相指令信号と、RD変換部82から伝達される電動発電機80の回転角度θとに基づいて二相・三相変換し、相電圧指令信号(U相電圧指令値Vu*,V相電圧指令値Vv*およびW相電圧指令値Vw*を含む)として出力する。操作信号制御部55は、三相変換部94から伝達される相電圧指令信号に基づいて、インバータ60に含まれるスイッチング素子を駆動する操作信号Spを出力する。
操作信号制御部55の具体的な構成は、実施の形態1の通りである。ただし、操作信号Spを伝達する対象は、スイッチング素子Q61〜Q66になる点が相違する。すなわち、上アームとしてのスイッチング素子Q61〜Q63と、下アームとしてのスイッチング素子Q64〜Q66に対応して個別に操作信号Spを伝達する。操作信号制御部55によるデューティ比の変更制御例(変更制御例1〜6)については、実施の形態1と同様である。そのため、実施の形態1と同様の作用効果が得られる。
〔他の実施の形態〕
以上では本発明を実施するための形態について実施の形態1〜3に従って説明したが、本発明は当該形態に何ら限定されるものではない。言い換えれば、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施することもできる。例えば、次に示す各形態を実現してもよい。
上述した実施の形態1〜3では、制御周期設定手段55bは、パルス周期選択手段55aによって選択された二種類以上のパルス周期を合計し、制御周期を設定する構成とした(図3,図8〜図12を参照)。この形態に代えて、パルス周期選択手段55aによって選択された二種類以上のパルス周期の合計を整数倍した期間を制御周期として設定するか、または、整数倍した期間の逆数値を制御周期として設定する構成としてもよい。この構成によれば整数倍した期間やその逆数値を制御周期としても、制御周期の長さは一定に維持され、かつ、デューティ比も制御周期内で維持される。したがって、制御対象が安定し、高調波電流や電磁ノイズを低減することができる。
上述した実施の形態1〜3では、操作信号伝達手段55cは、変更制御例1〜6においてパルス周期が昇順になるように設定して制御周期が一定となるように操作信号Spを出力する制御を行う構成とした(図3,図8〜図12を参照)。例えば変更制御例1では、パルス周期Pc1→パルス周期Pc2→パルス周期Pc3の順番である。この形態に代えて、操作信号伝達手段55cは、パルス周期選択手段55aによって選択された二種類以上のパルス周期を順不動で設定して、制御周期が一定となるように操作信号Spを出力する制御を行う構成としもよい。スイッチング周波数が変化する順番が変わるものの、制御周期は一定であるので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
上述した実施の形態1〜3では、PI電圧制御部42、PI電流制御部57、PI制御部93はいずれも比例要素と積分要素を含むPI制御を行う構成とした(図1,図13,図15を参照)。この形態に代えて、さらに微分要素を含めてPID制御を行う構成としてもよく、図1,図13,図15では括弧内に示す。スイッチング装置内を流れる電流が急激に変化する場合があり、このような場合も制御応答性が向上する。
実施の形態1〜3では、スイッチング素子Q10,Q21〜Q24,Q61〜Q66としてIGBTを用いた。この形態に代えて、操作信号Spに基づいてオン・オフする他のスイッチング素子を用いることができる。他のスイッチング素子は、例えばFET(具体的にはMOSFET,JFET,MESFET等)、GTO、パワートランジスタなどが該当する。他のスイッチング素子であっても操作信号Spに基づいてオン・オフするので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
制御対象は、実施の形態1ではPFCコンバータの入力電流とDC/DCコンバータ20を適用し(図1を参照)、実施の形態2ではバッテリEdcへの電圧と電流を適用し(図13を参照)、実施の形態3では電動発電機80の回転数やトルクを適用した(図14を参照)。この形態に代えて、他の制御対象を適用してもよい。他の制御対象は、例えば電動発電機以外の回転機(電動機や発電機等)、系統(電力系統を含む)などが該当する。単に制御対象が相違するに過ぎないので、実施の形態1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
10 PFCコンバータ
11,13 電圧センサ
12,70 電流センサ
Q10,Q21〜Q24,Q61〜Q66 スイッチング素子
Sp 操作信号
20 DC/DCコンバータ
30 ECU(外部装置)
40 定電圧制御装置(スイッチング装置)
41,52,53,5c AD変換器
42 PI電圧制御部
43,5a,5b,92 加減算器
50A 入力電流正弦波制御装置(スイッチング装置)
50B 定電力出力装置(スイッチング装置)
51 ゼロクロス検出部
54 デューティ比演算部
55 操作信号制御部
55a パルス周期選択手段
55b 制御周期設定手段
55c 操作信号伝達手段
56 正弦波発生器(信号波発生器)
57 PI(PID)電流制御部
58 絶対値算部
59,5f 演算回路
5a,5b,5g 加減算器
5d 電圧制御比例ゲイン部
5e 電圧制御積分ゲイン部
60 インバータ
80 電動発電機
81 レゾルバ(回転検出器)
90 インバータ制御装置
93 PI(PID)制御部

Claims (5)

  1. スイッチング素子に対してオン・オフを制御する操作信号を伝達して、前記スイッチング素子のスイッチング制御を行うスイッチング装置において、
    複数種類のパルス周期から二種類以上の前記パルス周期を選択するパルス周期選択手段と、
    前記パルス周期選択手段によって選択された前記パルス周期の合計を制御周期とし、前記制御周期の整数倍を変調周期として設定する制御周期設定手段と、
    前記制御周期設定手段によって設定された前記制御周期ごとに、前記オン・オフのデューティ比を変更して前記操作信号を伝達する操作信号伝達手段と、
    を有することを特徴とするスイッチング装置。
  2. 前記変調周期として設定される前記制御周期に含まれる前記パルス周期は、前記制御周期ごとに異なることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング装置。
  3. 前記パルス周期選択手段は、前記複数種類のパルス周期から所定の選択規則に従って前記パルス周期を選択することを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング装置。
  4. 前記パルス周期選択手段は、前記複数種類のパルス周期からランダムに前記パルス周期を選択することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のスイッチング装置。
  5. 前記操作信号伝達手段は、フィードバック制御を行う場合において、前記パルス周期選択手段によって選択された前記パルス周期および前記制御周期設定手段によって設定された前記制御周期のうちで一以上の周期に基づいて前記フィードバック制御の制御定数を設定し、前記操作信号を伝達することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のスイッチング装置。
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