JP5662662B2 - シートモールディングコンパウンドの製造方法及びそのための熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、シートモールディングコンパウンドの製造方法及びそのための熱硬化性樹脂組成物に係り、特に、繊維質基材の結合剤として有用である熱硬化性樹脂組成物を用いたシートモールディングコンパウンドの製造方法、及びシートモールディングコンパウンド用の熱硬化性樹脂組成物、更には、そのような製造方法によって得られるシートモールディングコンパウンドや、それを成形硬化して得られる成形体に関するものである。
従来より、FRPと称される繊維強化成形材料からなる成形体は、よく知られているように、優れた機械的強度及び耐久性を有することから、例えば浴槽、貯水槽、浄化槽、外装・内装用パネルの住宅関連部品の他、車両関連部品、広告用ボード、レジャーボート、ボビン等として、実用されている。
また、そのような繊維強化成形材料としては、所定の熱硬化性樹脂に、無機充填材及び必要に応じて硬化促進剤、離型剤等の添加剤を加えて混合したものを、補強用繊維である繊維質基材に含浸乃至は被覆(以下、単に「含浸」という。)せしめ、更に必要に応じて熟成処理を行って半硬化させた複合材料が用いられており、この複合材料を、加熱加圧成形することにより、上述せる如き優れた特性を有する成形体が製造されているのである。そして、そのような繊維強化成形材料の代表的なものとして、シートモールディングコンパウンド(以下、SMCと略称する。)がよく知られており、産業上においても汎用されてきている。
より具体的には、上記のSMCは、シート状形態を有する繊維強化成形材料であって、その製造に際しては、先ず、熱硬化性樹脂に、無機充填材を加え、更に必要に応じて硬化促進剤(増粘剤)、離型剤等の添加剤を加えて攪拌混合して、ペースト状の熱硬化性樹脂組成物(以下、ここでは、単に「ペースト」という。)が予め調製される。次いで、このペーストを、SMC製造装置にて、離型性キャリアフイルム上に塗布した後、その塗布されたペースト上に、繊維質基材を撒布し、更にその上に、ペーストを塗布した別のキャリアフイルムを、繊維質基材をペーストで上下から挟み込むようにして重ね合わせて、三層構造のシートとされる。その後、それを複数のローラ間に通して加圧することにより、繊維質基材にペーストを含浸させると共に、厚さ調整を行って、所定厚さのシートと為し、更に、通常は、熟成処理を行って、目的とするSMCが製造されるのである。そして、このようにして製造されたSMCは、上述せるように、繊維で強化された熱硬化性の成形材料が有する特性を活かして、住宅関連部品や車両関連部品等の素材として利用されているのである。
ところで、そのようなSMCを用いて成形される成形体、特に、車両関連部品等においては、最近、機械的強度等の特性に加えて、地球環境問題の観点から、軽量化のニーズが益々高まってきている。そこで、この軽量化の対策として、例えば、SMCに含有される充填材或いはガラス繊維の含有量を低減させる等の手法を挙げることができるが、充填材やガラス繊維の含有量を減らすと、一般に、得られる成形体の機械的強度が大幅に低下することとなる。また、シラスバルーンやガラスバルーンに代表される中空状の充填材を、SMCに含有せしめることにより、軽量化(低比重化)を図る手法も知られているが、SMCに単に中空状充填材を添加しただけでは、良好な成形性を実現することができず、成形体の表面平滑性が低下して、外観が悪くなると共に、成形体の機械的強度等の物性の低下をも引き起こすため、このような中空状充填材が含有されたSMCを、車体の軽量化が強く求められている航空機や鉄道車両内装部品等の構造部品に適用することは困難であった。
かかる状況下、SMCの軽量化と高剛性化を図るべく、特許文献1においては、中空状充填材を含む低比重SMCを芯材(コア層)とし、その両側の面に、中空状充填材を含まない高強度のSMCを積層してなる3層構造(サンドイッチ状)のものが、提案されている。しかしながら、そのようなサンドイッチ構造のSMCを製造するに際しては、低比重SMCと高強度SMCの少なくとも2種以上の成形材料を準備することが必要となるために、生産性の著しい低下を招く問題が惹起せしめられるようになる。また、特許文献2には、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂に中空状の軽量充填材を含有させた低比重SMC層と、中空状の軽量充填材を含有していない高強度SMC層とが強固に一体化されてなるSMC、及びその製造方法が提案されている。しかし、かかる特許文献2に記載の手法でも、低比重SMC層と高強度SMC層とを形成するために、2種の熱硬化性樹脂組成物を準備する必要があるところから、製造工程が多くなり、生産性の大幅な低下を招くこととなる。しかも、SMCの表面側、特に、低比重SMC層側の表面部分に、繊維強化材が充分に分散せしめられず、これにより、得られる成形体には、機械的強度や比弾性率に劣ったり、表面平滑性に劣る等の問題が内在している。このため、生産性の低下を招来することなく、軽量化を実現すると共に、単層のSMCであっても、優れた機械的強度や比弾性率及び表面平滑性を有するものが強く求められている。
また、特に、繊維強化成形材料であるSMCにあっては、加圧成形時の流動性に優れているものが、強く要請されているのである。
特開平1−225533号公報 特開平1−226311号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、軽量であり、且つ表面平滑性に優れ、また比弾性率にも優れた繊維強化材料(SMC)からなる成形体を提供すること、また、そのような成形体の製造に有利に用いられる流動性に優れたSMCや、その製造方法を提供すること、更には、そのようなSMCの製造に有利に用いられる熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
そして、本発明者が、SMCの製造に用いられる熱硬化性樹脂組成物について鋭意検討を重ねた結果、特定の耐圧強度を有する中空状充填材を、特定の密充填かさ密度を有するカオリンクレーと組み合わせて用いることによって、成形体の軽量化を実現することができるだけでなく、SMCに優れた流動性が付与せしめられ得、また、成形体の表面平滑性や反り、比弾性率等の特性が有利に改善され得ることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、繊維質基材に、それを結合せしめる樹脂組成物を適用して、SMCを製造する方法にして、前記樹脂組成物として、フェノール樹脂と、耐圧強度が15〜140MPaの中空状充填材と、密充填かさ密度が0.60〜1.20g/cm3 のカオリンクレーとを必須成分として含有すると共に、質量基準で、中空状充填材:カオリンクレー=1:(0.5〜4.5)となる含有比率とした熱硬化性樹脂組成物の1種類を用い、この樹脂組成物を所定のキャリアフィルム上に0.5〜1.5mmの厚さで直接に塗布する工程と、かかる得られたキャリアフィルム上の塗布層にて、前記繊維質基材を両側から挟み込むようにして、該繊維質基材と該塗布層を与える熱硬化性樹脂組成物とをシート状に一体化する工程とを含むことを特徴とするSMCの製造方法を、その要旨とするものである。
また、かかる本発明に従うSMCの製造方法における好ましい態様の一つにおいては、チキソトロピック指数が、2.2以上とされる。
そして、本発明は、また、SMCにおける繊維質基材の結合剤として用いられる樹脂組成物であって、熱硬化性樹脂と、耐圧強度が15〜140MPaの中空状充填材と、密充填かさ密度が0.60〜1.20g/cm3 のカオリンクレーとを必須成分として含有することを特徴とするSMC用熱硬化性樹脂組成物をも、その要旨とするものである。
なお、そのような本発明に従うSMC用熱硬化性樹脂組成物は、上記した本発明に従うSMCの製造方法において、有利に用いられることとなる。
さらに、本発明は、上記した本発明に従うSMCの製造方法により得られるSMC自体も、その対象としているのである。
加えて、本発明は、かかるSMCを成形硬化せしめてなる成形体をも、その対象としているのである。
このように、本発明に従うSMCの製造に際して用いられる熱硬化性樹脂組成物にあっては、フェノール樹脂に対して、充填材として、15〜140MPaの耐圧強度を有する中空状充填材と0.60〜1.20g/cm3 の密充填かさ密度を有するカオリンクレーとが組み合わされて、含有せしめられているところから、かかる中空状充填材によって、軽量化を有利に実現し得るものとなっていると共に、中空状充填材とカオリンクレーとの組合せによって、高粘度で顕著なチキソトロピー性を発現し、外圧を加えた際の流動性が、効果的に高められ得るようになっているのである。
このため、かかる熱硬化性樹脂組成物と繊維質基材とを含有する本発明に従うSMCにあっては、軽量化を有利に実現し得ると共に、成形時における流動性が効果的に高められ得、また成形性に優れたものとなっている。
従って、このようなSMCを成形硬化して得られる成形体にあっては、軽量化が有利に実現され得ていると共に、上述の如き優れた流動性によって、繊維質基材による異方性を伴い難く、寸法精度や表面平滑性が有利に向上せしめられるのである。また、上述の如きSMCを用いれば、加圧成形時に、繊維質基材が成形体の隅々まで分散して広がるようになり、これにより、かかる繊維質基材と所定の中空状充填材による複合効果が効果的に発揮せしめられて、成形体の比弾性率も有利に改善され得るようになるのである。
また、特に、熱硬化性樹脂として、熱硬化性フェノール樹脂を用いていることにより、得られる成形体に優れた難燃性が付与され得ると共に、上記した作用乃至は効果がより一層有利に発揮されることとなる。
ところで、本発明に従うSMCの製造に際して用いられる熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と、特定の耐圧強度を有する中空状充填材及び特定の密充填かさ密度を有するカオリンクレーとを、必須の成分として含有する組成物であって、繊維質基材や必要に応じて併用される他の無機充填材等の結合剤として、有利に用いられるものである。
ここにおいて、上記熱硬化性樹脂としては、一般に、熱硬化性フェノール樹脂が用いられているものの、その他の熱硬化性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂等の少なくとも1種を上記熱硬化性フェノール樹脂の硬化性を阻害しない量的範囲で、併用することも可能である。これらの中でも、熱硬化性フェノール樹脂にあっては、難燃性の点で有利であることに加えて、本発明の作用・効果が有利に発揮され得ることから、特に好適に用いられることとなる。なお、かかる熱硬化性フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂、ベンジルエーテル型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、及びこれらの変性乃至は改質フェノール樹脂、並びにこれらの混合物を例示することができる。そして、それら熱硬化性フェノール樹脂の中でも、とりわけ、被覆性や硬化特性の観点から、レゾール型フェノール樹脂が好適に採用され得る。
そして、かかる熱硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂組成物中において、一般に、30〜70質量%の割合で、好ましくは、難燃性の点から、35〜60質量%の割合で含有させられるのである。
また、本発明に従う熱硬化性樹脂組成物に含有せしめられる中空状充填材としては、特に、耐圧強度が15〜140MPa、好ましくは20〜130MPa、より好ましくは21〜69MPaの範囲内にあるものが用いられるのである。なぜなら、中空状充填材の耐圧強度が15MPa未満では、熱硬化性樹脂組成物を、繊維質基材の結合剤としてSMC等の繊維強化成形材料に用いて成形体を作製しても、得られる成形体中の中空状充填材が、攪拌・混合時、或いは成形時において、破壊され、充分な軽量化が望めないことに加えて、表面平滑性も劣るからであり、逆に、耐圧強度が140MPaを超えると、中空状充填材が、その高性能性のために高価となり、コストアップに繋がるからである。ここで、「耐圧強度」とは、中空状充填材の圧力に対する強度であり、真密度を測定した中空状充填材を加圧容器に入れて加圧し、その加圧前後の真密度の変化値から、中空状充填材の強度を算出したものである。
そして、本発明において使用される中空状充填材としては、耐圧強度が上記範囲内にあるものであれば、特に限定されるものではなく、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン等、従来から公知の無機系中空状充填材を挙げることができ、これらのうちの1種を単独で用いることも、或いは、2種以上を併用することも可能である。これらの中でも、ガラスバルーン、シリカバルーンが好ましく、更にその中でも、ガラスバルーンが特に好適に用いられることとなる。また、この中空状充填材の形状や大きさも、特に限定されるものではなく、形状としては、一般に、真球状や楕円球状、不定形球状のものが用いられる一方、平均粒子径としては、一般に、1〜100μm、好ましくは25〜70μmのものが用いられる。なお、かかる中空状充填材は、商業的に入手することが可能であって、例えば、住友スリーエム株式会社から市販されているガラスバルーン(商品名:K37、S60)を例示することができる。
また、上述せる耐圧強度を有する中空状充填材は、熱硬化性樹脂組成物中において、一般に、1〜40質量%の割合、好ましくは3〜30質量%の割合で含有されることが望ましい。この理由は、中空状充填材の含有量が上記範囲よりも少ない場合には、中空状充填材による軽量化効果が充分に発揮され得なくなるおそれがあるからであり、また、上記範囲を超える場合には、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなりすぎてしまうと共に、熱硬化性樹脂の含有量が相対的に少なくなって、結合剤としての機能を奏し得なくなったり、また、カオリンクレーの含有量が相対的に少なくなって、成形体の比弾性率や表面平滑性の向上が実現され得なくなるおそれがあるからである。
また一方、本発明に従う熱硬化性樹脂組成物に含有されるカオリンクレーは、ケイ酸アルミニウムを主成分とする、天然に産出する粘土(カオリナイト、ハロイサイト)及びろう石(パイロフィライト)を原料として製造されるカオリンクレー及びろう石クレーであって、特に、密充填かさ密度が、0.60〜1.20g/cm3 の範囲内にあるもの、好ましくは0.65〜1.15g/cm3 、更に好ましくは0.70〜1.00g/cm3 の範囲内にあるものが用いられるのである。なぜなら、密充填かさ密度が0.60g/cm3 未満では、成形体の難燃性が低下するおそれがあるからであり、逆に、密充填かさ密度が1.20g/cm3 を超えると、熱硬化性樹脂組成物に対して、チキソトロピー性を充分に付与することができなくなるところから、該組成物を繊維質基材の結合剤として用いてSMCを製造しても、成形体の表面平滑性を改善することができなくなったり、成形体の比弾性率が低下する傾向があるからである。また、ここで、「密充填かさ密度」とは、文字通り、密充填した場合におけるかさ密度であって、本発明では、タッピング速度:1回/秒、タッピング時間:10分間、タッピングの合計回数:600回の条件で、密充填を充分に行って、単位面積当たりの被検物の質量(かさ密度)を求めたものである。
また、本発明においては、上述の密充填かさ密度を有するカオリンクレーの中でも、特に、平均粒子径が約1〜10μm程度の大きさを有する、扁平状乃至は薄片状のカオリンクレーが、好適に用いられ得るのであり、このような形状のカオリンクレーを用いることによって、後述するように、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高くなると共に、チキソトロピー性がより一層有利に高められ、これにより、該組成物に延展性が付与され、外圧による繊維質基材への含浸性が効果的に高められるのみならず、外圧を受けない位置での過度な横流れを防止することができる。加えて、該組成物は、SMCの加圧流動性の向上に効果的なチキソトロピック指数を有するため、目的とする成形体の表面平滑性を有利に改善し得ることとなるのである。なお、かかる形状のカオリンクレーは、商業的に入手することが可能であって、例えば、フジライト工業株式会社から市販されているカオリンクレー(商品名:FY86)、山陽クレー工業株式会社から市販されているカオリンクレー(商品名:HA、TP)を例示することができる。
そして、上述せる如き密充填かさ密度を有するカオリンクレーは、熱硬化性樹脂組成物中において、一般に、10〜40質量%、好ましくは10〜30質量%の割合で含有されることが望ましい。この理由は、カオリンクレーの含有量が上記範囲よりも少ない場合には、繊維質基材の結合剤として用いたとしても、上述の如き表面平滑性等の効果が有利に発現され得なくなるおそれがあるからであり、また、上記範囲を超える場合には、上述の如き中空状充填材にて軽量化を図っても、比較的に大きな密充填かさ密度のカオリンクレーが多く含有されることとなって、結局、成形体の軽量化を充分に実現できないおそれがあるからである。
また、本発明に従う熱硬化性樹脂組成物においては、上述せる如き中空状充填材とカオリンクレーとが組み合わされて用いられておれば良く、それらの含有比率は、中空状充填材の大きさ、種類等に応じて適宜に設定され得るものの、一般に、質量基準で、中空状充填材:カオリンクレー=1:(0.5〜4.5)となる含有比率で、熱硬化性樹脂組成物中に含有せしめられ、このような含有比率を採用することによって、成形体の軽量化、比弾性率及び表面平滑性の向上をより一層有利に実現することが可能となる。
なお、本発明に従う熱硬化性樹脂組成物には、上記の熱硬化性樹脂や特定の耐圧強度を有する中空状充填材、特定の密充填かさ密度を有するカオリンクレーに加えて、更に必要に応じて、本発明の効果を阻害しない量的範囲において、別の無機充填材や、硬化促進剤(増粘剤)、離型剤、着色剤、シランカップリング剤等の、従来と同様な各種の添加剤が、含有せしめられ得るのである。ここで、無機充填材としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、ケイ砂、ケイ酸カルシウム等を例示することができ、これらのうちの1種又は2種以上が必要に応じて配合され得る。また、硬化促進剤としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物や酸化物を、また離型剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸系金属塩等を、それぞれ、例示することができる。
ところで、本発明に従う熱硬化性樹脂組成物を調製するに際しては、従来と同様な手法が採用され得る。例えば、月島機械株式会社製MTI・ユニバーサルミキサー等の公知の混合装置を用いて、この混合装置内に、必須成分である熱硬化性樹脂と、耐圧強度が15〜140MPaである中空状充填材と、密充填かさ密度が0.60〜1.20g/cm3 であるカオリンクレーと、更に必要に応じて他の各種添加剤とを、同時に又は任意の順序で投入し、撹拌混合することによって、ペースト状の本発明に従う熱硬化性樹脂組成物が調製され得るのである。なお、かかる熱硬化性樹脂組成物の調製に際しては、必要に応じて、水、アルコール、アセトン等の溶媒を添加することも可能である。
そして、このようにして得られる熱硬化性樹脂組成物にあっては、15〜140MPaの耐圧強度を有する中空状充填材と共に、0.60〜1.20g/cm3 の密充填かさ密度を有するカオリンクレーが用いられていることから、粘度が高められると共に、チキソトロピー性が付与され、チキソトロピック指数が有利に向上せしめられ得るのである。なお、ここにおいて、「チキソトロピック指数」は、「攪拌回転数:n1 における粘度」に対する「攪拌回転数:n2 における粘度」の比(ただし、n1 >n2 )にて表されるものであり、本発明においては、市販の粘度計(例えば、米国ブルックフィールド社製プログラマブルデジタル粘度計)を用い、25℃において、1rpmにおける粘度(A)と10rpmにおける粘度(B)を測定して、算出された比(A/B)を、チキソトロピック指数とする。
さらに、かかる本発明に従う熱硬化性樹脂組成物にあっては、成形性を向上させるために、上記チキソトロピック指数が2.2以上とされることが望ましい。また、チキソトロピック指数の上限としては、熱硬化性樹脂組成物の急激な粘度上昇に伴う繊維質基材への含浸性の悪化を考慮して、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下とされることが望ましい。このように、チキソトロピック指数が2.2以上となると、外圧を加えた際の流動性が、効果的に高められ得ることとなって、熱硬化性樹脂組成物を繊維質基材の結合剤として用いた場合、SMCに対して、優れた成形性を付与することができるのである。
ここにおいて、本発明に従う熱硬化性樹脂組成物は、繊維質基材の結合剤として、SMCの製造に有利に用いられるものであって、以下では、そのような熱硬化性樹脂組成物と繊維質基材を含んで構成される、本発明に従うSMCとその製造方法について、具体的に説明することとする。
すなわち、本発明に従うSMCは、上述せる如きペースト状の熱硬化性樹脂組成物(以下、ペーストと呼称する。)と繊維質基材とを必須成分として含有するものであって、そのペーストとしては、上述せる如き熱硬化性樹脂と、特定の耐圧強度を有する中空状充填材及び特定の密充填かさ密度を有するカオリンクレーとを少なくとも含有するものが、用いられる。
一方、繊維質基材としては、繊維質であるものを主体として、補強機能を有するものであれば、特に限定されるものではなく、SMCに要求される特性やその適用分野等に応じて、任意の形状と材質のものが適宜に選択されて、用いられることとなる。そして、この繊維質基材の形状としては、例えば、フィラメント、ロービング、ストランド、チョップドストランド、ペーパー、マット、クロス等の形状を有する各種繊維を挙げることができる。また、繊維質基材の材質としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、フェノール繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アルミナ繊維、金属繊維の他、ウイスカー、ミルドファイバー、リンターパルプ、麻繊維、木材チップ等を挙げることができる。これらの繊維質基材は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、これらの中でも、SMCにおいては、コストや強度、入手容易性等の観点から、ガラス繊維が最も好適に用いられるのである。
なお、上記ガラス繊維を繊維質基材として使用する場合には、シランカップリング剤を併用することが望ましく、これにて、ペーストに含まれる熱硬化性樹脂とガラス繊維との親和性が高められ、その結果、熱硬化性樹脂とガラス繊維との接着性が効果的に向上せしめられるのである。このようなシランカップリング剤としては、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシランが、好適に用いられる。また、かかるシランカップリング剤は、一般に、ガラス繊維の100質量部に対して、0.01〜5質量部の範囲となる割合で使用されることとなるが、シランカップリング剤の添加による効果の発現やコスト等の観点から、好ましくは、0.05〜3.0質量部の範囲となる割合で使用されることが望ましい。かかるシランカップリング剤は、通常、上述せる如きペースト中に、予め、添加・混合されることとなる。
そして、本発明に従うSMCは、従来と同様な手法により、上記繊維質基材に上記ペーストを含浸せしめることによって、作製され得るのである。この際、繊維強化成形材料(SMC)中の繊維質基材の配合割合としては、3〜60質量%、好ましくは5〜50質量%、更に好ましくは25〜45質量%の割合で含有されるのである。なぜなら、上記配合割合が3質量%未満では、繊維質基材による補強効果が充分に発揮され得ず、強度不足を惹起するおそれがあるからであり、逆に、60質量%を超えると、軽量効果が低下すると共に、繊維質基材にペーストを含浸させることが困難となる傾向があるからである。
より具体的には、本発明に従うSMCは、以下のようにして、製造されることとなる。即ち、公知のSMC製造装置が用いられて、上下に配置されたポリエチレンやポリプロピレン等からなるキャリアフィルムの互いに対向する面に、上述のペースト(熱硬化性樹脂組成物)が、それぞれ0.5〜1.5mmの厚みとなるように、好ましくは、上下に配置されたキャリアフィルムへのペーストの塗布厚みが等しくなるように、塗布されることとなる。ここで、そのようなペーストのキャリアフィルムへの塗布厚みが上下とも0.5mm未満となると、得られるSMCが薄くなってしまい、結果として、単位面積当たりの重量も軽くなってしまうために、生産性の観点から適当ではないのである。また、片方の塗布厚みのみが0.5mm未満となる場合においては、得られる成形体に反り変形が生じる。一方、かかる塗布厚みに比例して、SMCシート内の強化繊維の量も変化するが、塗布厚みが2.0mmを超えるようになると、強化繊維のボリュームが大きくなることによる含浸性の低下が惹起される恐れがあり、そのために、得られる成形体の表面平滑性が低下したり、反り変形が生じたり、また、強度や比弾性率等の特性も低くなる等の問題を惹起するようになる。
次いで、その下方のキャリアフィルムに塗布されたペースト上に、繊維質基材が撒布され、更にその上に、上方のキャリアフィルムが重ね合わされることによって、繊維質基材が上下のペーストで挟まれる。これを、複数のロール間に通す等して、加圧することによって、繊維質基材にペーストを含浸せしめると同時に厚さ調整を行って、上下方向にキャリアフィルム、ペーストが含浸された繊維質基材の層(ペースト+繊維質基材+ペースト)及びキャリアフィルムが順次積層されてなる三層構造のシートが作製され、その後、必要に応じて、熟成処理(増粘処理)が施されることによって半硬化され、本発明に従う繊維強化成形材料としてのSMCが製造されるのである。ここにおいて、上記熟成処理を行う場合、その条件は、SMCの成形性を考慮して適宜に設定され得るものであり、例えば、40〜70℃の温度で数時間〜数日の間、加熱処理が施される。
このようにして製造されるSMCにあっては、繊維質基材に、前述せる如きペーストを含浸せしめて得られるものであるところから、成形時における材料の流動性が効果的に高められており、以て、優れた成形性を発揮することとなるのである。このため、異方性の発現が有利に抑制され得て、目的とする成形体の表面に凹凸等が発生することも有利に防止され得、更には、深絞り成形を極めて容易に行うことが可能となっている。しかも、流動性に優れているところから、加圧成形時に、繊維質基材が流動することなく局在化するようなことが有利に防止され、換言すれば、ペーストだけが流動して、圧延されるようなことが有利に防止されて、繊維質基材が成形体の隅々まで分散して広がるようになるのである。それ故、繊維質基材が均一に分散しないことに起因して成形体の比弾性率が低くなるようなことも、有利に防止され得て、成形体の比弾性率が有利に高められ得る。加えて、中空状充填材を用いていることから、上記効果に加えて、成形体の軽量化をも実現され得るのである。
さらに、かくの如き本発明に従うSMCを用いて、目的とするSMC成形体を製造するに際しても、従来と同様な手法を採用することが可能であり、例えば、先ず、目的とする成形体形状を与える上下分離可能な金型を準備して、この金型に、キャリアフィルムを剥がしたSMCを必要な量だけ投入した後、加熱加圧し、その後金型を開き、目的とする成形体を取り出すという、通常のプレス成形法等によって、目的とするSMC成形体が製造されることとなる。この際、成形圧力や成形温度は、目的とする成形体の大きさや形状等によって適宜に設定され得るものであり、例えば、SMC成形体として建材用パネルを作製する場合には、一般に、1〜80MPa程度の成形圧力と、30〜240℃程度の成形温度が採用され得るのであるが、本発明においては、上述せるように、SMCの流動性が効果的に高められているところから、低い圧力下でも有利に成形することが可能となっているのである。
そして、本発明に従う成形体にあっては、充填材として、特定の耐圧強度を有する中空状充填材が含有されているところから、その軽量化が有利に実現され得ている。また、特定の耐圧強度を有する中空状充填材と特定の密充填かさ密度を有するカオリンクレーとが組み合わされて含有されているところから、上述せるように、中間体として得られるペーストにチキソトロピー性が付与せしめられ、これにより、成形体の素材であるSMCの流動性が効果的に高められて、優れた成形性が実現され得ているのである。そして、このようなSMCを成形硬化して得られる成形体にあっては、深絞り成形が容易に行われ得ると共に、強化材たる繊維質基材が、成形体の隅々まで均一に分散することとなって、中空状充填材を配合しているにも拘わらず、充分な比弾性率が付与されているのである。また、SMCの流動性が効果的に高められることによって、表面平滑性も有利に向上せしめられて、外観欠陥のない成形体が有利に製造され得るのである。
しかも、本発明においては、従来技術の如き2種類の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造されたSMCを積層成形して成形体を製造する必要もなく、1種類の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造されたSMCを単独で成形して成形体を製造することが出来るものであるところから、生産性の大幅な低下を招くことなく、しかも、製造工程の簡素化が有利に実現され、大きな経済的効果が発揮され得ることとなる。
かくして、本発明に従う成形体は、その軽量化が有利に実現され得ていると共に、反り変形がなく、また優れた比弾性率及び表面平滑性を有していることから、例えば、浴槽、貯水槽、浄化槽、外装・内装用パネル等の住宅関連部品や、車両関連部品、広告用ボード、レジャーボート、ボビン等として、有利に利用され得るのである。中でも、熱硬化性樹脂として、熱硬化性フェノール樹脂を用いた場合には、成形体に優れた難燃性が付与されるところから、難燃性が重視される車両関連部品や住宅関連部品等として、有利に用いられることとなる。また更に、本発明においては、難燃性に加え、軽量性能も向上されているため、地球環境問題の観点から軽量化が強く求められている航空機や鉄道車両内装部品等として、特に有利に用いられることとなる。なお、本発明に従う成形体を用いるに際しては、必要に応じて、塗装処理等の表面処理が施されてもよいことは、勿論、言うまでもないところである。
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記した具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等が加え得るものであることが、理解されるべきである。
なお、本実施例において、中空状充填材の耐圧強度の測定、及びカオリンクレーの密充填かさ密度の測定、ペーストの粘度及びチキソトロピック指数の測定、SMCの流動性の評価、比重及び比弾性率の測定、表面平滑性並びに反りの評価は、以下の方法で行ったものである。
(1)耐圧強度の測定
耐圧強度が69.0MPa未満の中空状充填材については、窒素法により、耐圧強度を測定した。具体的には、先ず、真密度を測定した中空状充填材を加圧容器に入れ、乾燥窒素ガスにて加圧する。次いで、この加圧の後、中空状充填材の真密度を再度測定して、加圧前後の真密度の変化値より、算出した。また、耐圧強度が69.0MPa以上の中空状充填材については、グリセロール法により、耐圧強度を測定した。即ち、上記の窒素法の場合と同様に、真密度を測定した中空状充填材を加圧容器に入れ、一定量のグリセロールと混合して、空気が混入しないように密封する。次いで、かかる混合試料を加圧シリンダーに入れた後、徐々に加圧しながら混合試料の体積を観測して行き、混合試料の残存体積が90vol%になるときの圧力を、中空状充填材の耐圧強度とした。
(2)密充填かさ密度の測定
先ず、容積:100cm3 のステンレス製かさ密度測定用カップ(内径:50.40mm、高さ:50.15mm)の質量(α)を測定した。次いで、かかる測定用カップの開口部にキャップを装着し、このキャップの上部まで、薬さじ等を用いて、被検物(カオリンクレー)を静かに入れた後、かかる被検物の飛散を防止するためのキャップカバーを取り付けて、測定用試料を準備した。そして、ホソカワミクロン株式会社製のパウダテスター(TYPE:RT−E)を用いて、そのタッピングホルダに、上記測定用試料をセットして、1回/秒の速度にて、10分間、合計600回のタッピングを行った。その後、タッピングホルダから測定用試料を取り出して、キャップ及びキャップカバーを測定用カップより静かに外し、次いで、測定用カップの開口部から盛り上がった余分な被検物をブレードですりきり、被検物の入った測定用カップの質量(β)を測定した。そして、下記計算式にて、被検物の入った測定用カップの質量(β)から測定用カップ質量(α)を差し引いた質量(β−α)、即ち被検物の質量を、測定用カップの容積100cm3 で割ることによって、密充填かさ密度を算出し、この測定を4回繰り返し行って、密充填かさ密度(平均値)とした。
密充填かさ密度 [g/cm3 ]=(β−α)/100
(3)ペーストの粘度及びチキソトロピック指数の測定
ペーストの粘度は、アルミ製の円筒容器内に約10gのペーストを採取した後、これを温水循環型恒温装置内で25±1.0℃の温度に調整し、その後、プログラマブルデジタル粘度計(形式:DV−II+、米国ブルックフィールド社製)を用いて、回転数10rpmにおける粘度(B)を測定することにより、求めた。また一方、チキソトロピック指数は、上記と同様に、25±1.0℃の温度に調整したペーストを用いて、回転数1rpmにおける粘度(A)を測定し、この回転数10rpmにおける粘度(B)に対する上記回転数1rpmにおける粘度(A)の比(=A/B)を算出することにより、求めた。
(4)SMCの流動性の評価
作製したSMC(厚さ:約2mm)からテストピース(縦:50mm、横:50mm)を切り出した後、これを2枚の鏡面仕上げのステンレス板(縦:470mm、横:290mm、厚さ:1.5mm)に挟み込み、温度:150℃、成形圧力:5.88MPaで2分間にわたって、加熱加圧成形を行うことにより、略円形状の成形体を得た。そして、この得られた成形体の差し渡し径を、周方向に45°の間隔をおいて、4箇所測定した。更に、この測定を2回繰り返して平均値を算出し、その得られた平均値を、SMCの流動性(mm)とした。かかる流動性の値が大きい程、流動性が高く、成形性に優れていると判断することができる。
(5)比重及び比弾性率の測定試験
比重は、作製した板状成形体を切り出し、室温下で、アルファーミラージュ社製電子比重計(MD−200S)を用いて測定した。また、比弾性率は、作製した板状成形体からテストピース(縦:40mm、横:25mm、厚さ:2.1mm)を切り出し、このテストピースについて、ミネベア社製万能試験機を用いて、JIS K 6911に基づく試験を行い、曲げ弾性率を測定し、その得られた曲げ弾性率を比重で除することによって、求めた。
(6)表面平滑性の評価
表面平滑性の評価は、成形体表面の凹凸状態(凹凸の有無及びその程度)や成形体表面に映る蛍光灯の鮮明さを目視観察することにより、行った。なお、判定基準は、◎:凹凸がなく、蛍光灯の映りも問題なし、○:凹凸がなく、蛍光灯の映りが◎より少し劣る、△:凹凸が多少あり、蛍光灯の映りも悪い、×:凹凸があり、蛍光灯の映りも極めて悪い、とした。
(7)反りの評価
反りの評価は、プレス成型によって作製した平板状の成形体を定盤の上に置き、定盤からの成形体の反りあがりをノギスにて計測し、そこから成形体の厚みを減ずることによって評価した。
(実施例1)
レゾール型フェノール樹脂(商品名:AKP−012、旭有機材工業株式会社製)の36.8質量部と、中空状充填材としての耐圧強度:21.0MPaのガラスバルーン(商品名:K37、住友スリーエム株式会社製)の7.4質量部と、密充填かさ密度:0.81g/cm3 のカオリンクレー(商品名:HA、山陽クレー工業株式会社製)の23質量部と、硬化促進剤(増粘剤)としての水酸化カルシウムの0.6質量部と、離型剤としてのステアリン酸亜鉛の1質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの0.5質量部とを、ハンドミキサーにより約10分間、攪拌・混合して、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製した。そして、このようにして得られたペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定したところ、それぞれ、粘度(25℃):110000mPa・s、チキソトロピック指数:2.35であった。
次いで、SMC製造装置を用いて、30μm厚さのポリエチレン製キャリアフイルム上に、上記で得られたSMC用ペーストを1.0mmの厚さで塗布し、これに、約2.54cm(約1インチ)の長さに切断したロービング状ガラス繊維を撒布し、更にその上に、かかるペーストを1.0mmの厚さで塗布したキャリアフィルムを、かかるペースト塗布層が下になるようにして重ね合わせることにより、ガラス繊維をペーストの間に挟み込んで、三層構造のシートと為し、これを上下に設けられた複数のローラ間に通して、ガラス繊維にペーストを含浸させると共に、シートの厚さ調整を行った。この際、ガラス繊維は、下記表1に示されるように、レゾール型フェノール樹脂と中空状充填材とカオリンクレーとを合わせた67.2質量部に対して、32.8質量部の割合で用い、各原料の体積含有率が、それぞれ、フェノール樹脂:略42.6vol%、中空状充填材:略27.6vol%、カオリンクレー:略11.9vol%及びガラス繊維:略17.9vol%となるようにした。その後、得られたシートに対して、50℃の温度で65時間、熟成処理を施すことにより、平均厚さ:約2mmのSMCを得た。このようにして得られたSMCを用いて、上述の如き流動性の評価を行い、その結果を下記表1に示した。
また、得られたSMCを124cm3 となるように切り出し、これを、150℃に余熱した加圧プレス機上に装着されたクロムメッキ表面仕上げの成形金型のキャビティ(縦:270mm、横:210mm、深さ:2.1mm)内に収容した後、直ちに押型をセットして、成形圧力:5.88MPaで5分間、加熱加圧成形して、厚さ:2.1mmの成形体を作製した。ここでのSMCの仕込み体積は、成型金型のキャビティの体積に1.05を乗じて得られるものである。このようにして得られた成形体を用いて、上述の如き比重及び比弾性率の測定、表面平滑性の評価、並びに反りの評価を行い、その結果を、下記表1に併せ示した。
(実施例2,3,4,5)
実施例1の耐圧強度:21.0MPaの中空状充填材に代えて、実施例2では、耐圧強度:28.0MPaの中空状充填材(商品名:S38、住友スリーエム株式会社製)、実施例3では、耐圧強度:42.0MPaの中空状充填材(商品名:K46、住友スリーエム株式会社製)、実施例4では、耐圧強度:69.0MPaの中空状充填材(商品名:S60、住友スリーエム株式会社製)、実施例5では、耐圧強度:124.0MPaの中空状充填材(商品名:S60HS、住友スリーエム株式会社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製し、このペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表1に示した。
また、各原料(フェノール樹脂、中空状充填材、カオリンクレー及びガラス繊維)の体積含有率が、上記実施例1の各原料の体積含有率と同じになるように、得られたペーストとガラス繊維を用いて、SMCを作製した。このSMCについて、流動性の評価を行い、その得られた結果を、下記表1に示した。更にまた、このSMCを用いて、成形体を作製した。そして、得られた成形体について、上述の如き比重及び比弾性率の測定、表面平滑性の評価、並びに反りの評価を行い、その得られた結果を、下記表1に併せ示した。
(実施例6)
実施例1の耐圧強度:21.0MPaの中空状充填材(商品名:K37、住友スリーエム株式会社製)を用い、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製し、このペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表1に示した。
そして、各原料(フェノール樹脂、中空状充填材、カオリンクレー及びガラス繊維)の体積含有率が、上記実施例1の各原料の体積含有率と同じになるように、得られたペーストとガラス繊維を用いて、SMCを作製した。このSMCについて、流動性の評価を行い、その得られた結果を、下記表1に示した。また、得られたSMCから成形体を作製するが、その際、成形圧力を4.00MPaに変更する以外は、上述の方法と同様にして行い、厚さ:2.1mmの成形体を作製した。そして、得られた成形体について、上述の如き比重及び比弾性率の測定、表面平滑性の評価、並びに反りの評価を行い、その得られた結果を、下記表1に併せ示した。
(実施例7,8)
実施例2の耐圧強度:28.0MPaの中空状充填材(商品名:S38、住友スリーエム株式会社製)を用い、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製し、このペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表2に示した。
また、各原料(フェノール樹脂、中空状充填材、カオリンクレー及びガラス繊維)の体積含有率が、上記実施例1の各原料の体積含有率と同じになるように、得られたペーストとガラス繊維を用いて、SMCを作製した。その際、実施例7ではSMC用ペーストを0.5mmの厚さで両キャリアフィルム上に塗布し、また実施例8ではSMC用ペーストを1.5mmの厚さで両キャリアフィルム上に塗布すること以外は、上述の方法と同様にして行い、この得られたSMC(実施例7 厚さ:1.0mm、実施例8 厚さ:4.0mm)について、流動性の評価を行い、その結果を、下記表2に示した。更にまた、このSMCを用いて、成形体を作製した。そして、得られた成形体について、上述の如き比重及び比弾性率の測定、表面平滑性の評価、並びに反りの評価を行い、その得られた結果を、下記表2に併せ示した。
(比較例1)
実施例1の耐圧強度:21.0MPaの中空状充填材に代えて、比較例1では、耐圧強度:5.2MPaの中空状充填材(商品名:K25、住友スリーエム株式会社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製し、このペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表2に示した。
また、各原料の体積含有率が、上記実施例1の各原料の体積含有率と同じになるように、得られたペーストとガラス繊維を用いて、SMCを作製した。このSMCについて、流動性の評価を行い、その得られた結果を、下記表2に示した。更に、このSMCを用いて、所定の体積の成形体を成形しようと試みたが、充填不足となり、完全な成形体を得ることはできなかった。
(比較例2)
レゾール型フェノール樹脂(商品名:AKP−012、旭有機材工業株式会社製)の40質量部と、密充填かさ密度:1.22g/cm3 のカオリンクレー(商品名:TC−600、東洋化成株式会社製)の35質量部と、硬化促進剤(増粘剤)としての水酸化カルシウムの0.6質量部と、離型剤としてのステアリン酸亜鉛の1質量部と、シランカップリング剤としての3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの0.5質量部とを、ハンドミキサーにより約10分間、攪拌・混合して、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製した。そして、このようにして得られたペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表2に示した。
また、SMC製造装置を用いて、キャリアフィルム上に、上記で得られたSMCペーストを1.0mmの厚さで塗布した後、下記表2に示される含有率にてガラス繊維を撒布し、更に、ペーストを1.0mmの厚さで塗布したキャリアフィルムを重ね合わせることにより、SMCを作製した。この得られたSMCについて、流動性の評価を行い、その得られた結果を、下記表2に示した。更にまた、このSMCを用いて、成形体を作製した。そして、得られた成形体について、上述の如き比重及び比弾性率の測定、表面平滑性の評価、並びに反りの測定を行い、その得られた結果を、下記表2に併せ示した。
(比較例3)
実施例1の耐圧強度:21.0MPaの中空状充填材に代えて、耐圧強度:5.2MPaの中空状充填材(商品名:K25、住友スリーエム株式会社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製し、そしてこのペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表2に示した。
また、各原料(フェノール樹脂、中空状充填材、カオリンクレー及びガラス繊維)の体積含有率が、上記実施例1の各原料の体積含有率と同じになるように、得られたペーストとガラス繊維を用いて、SMCを作製した。このSMCについて、流動性の評価を行い、その得られた結果を、下記表2に示した。また、かかる得られたSMCから成形体を作製するのに成形圧力を4.00MPaに変更すること以外は、上述の方法と同様にして成形を行ったが、充填不足となり、完全な成形体を得ることはできなかった。
(比較例4)
実施例1の耐圧強度:21.0MPaの中空状充填材に代えて、耐圧強度:28.0MPaの中空状充填材(商品名:S38、住友スリーエム株式会社製)を用いること以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性樹脂組成物たるSMC用ペーストを調製し、このペーストの粘度及びチキソトロピック指数を測定して、その得られた結果を、下記表2に示した。
また、各原料(フェノール樹脂、中空状充填材、カオリンクレー及びガラス繊維)の体積含有率が、上記実施例1の各原料の体積含有率と同じになるように、上記得られたペーストとガラス繊維を用いて、SMCを作製した。この際、実施例7と同様にして、上記SMC用ペーストをキャリアフィルム上に2.0mmの厚さで塗布して、SMCを作製した。この得られたSMCについて、流動性の評価を行い、その得られた結果を、下記表2に示した。更にまた、このSMCを用いて、成形体を作製した。そして、その得られた成形体について、上述の如き比重及び比弾性率の測定、表面平滑性の評価、並びに反りの評価を行い、その得られた結果を、下記表1に併せ示した。
Figure 0005662662
Figure 0005662662
かかる表1の結果から明らかなように、耐圧強度が、21.0〜124.0MPaの中空状充填材と、密充填かさ密度が0.60〜1.20g/cm3 のカオリンクレーとが併用された実施例1〜8では、耐圧強度が21.0MPa未満の中空状充填材を用いた比較例1,3に比べて、充填不良の問題もなく、目的とする成形体が作製されており、また比較例2に比べて、SMCにおいてより優れた流動性を発現し、その結果、成形体において優れた表面平滑性が得られ、比弾性率の向上も図られていることが認められる。また、比較例4に比べて、成形体において、優れた表面平滑性が得られ、且つ反り変形が高度に抑えられており、更には、比弾性率の向上が確認された。
これに対して、中空状充填材とカオリンクレーとが組み合わされて、用いられているものの、中空状充填材の耐圧強度が本発明の範囲外である比較例1,3では、良好な成形体が得られないことが認められるのであり、また比較例2,4にて作製する成形体においても、成形体の比弾性率が低下すると共に、表面平滑性や反り変形において、著しい低下が見られるのである。

Claims (4)

  1. 繊維質基材に、それを結合せしめる樹脂組成物を適用して、シートモールディングコンパウンドを製造する方法にして、
    前記樹脂組成物として、フェノール樹脂と、耐圧強度が15〜140MPaの中空状充填材と、密充填かさ密度が0.60〜1.20g/cm3 のカオリンクレーとを必須成分として含有すると共に、質量基準で、中空状充填材:カオリンクレー=1:(0.5〜4.5)となる含有比率とした熱硬化性樹脂組成物の1種類を用い、この樹脂組成物を所定のキャリアフィルム上に0.5〜1.5mmの厚さで直接に塗布する工程と、
    かかる得られたキャリアフィルム上の塗布層にて、前記繊維質基材を両側から挟み込むようにして、該繊維質基材と該塗布層を与える熱硬化性樹脂組成物とをシート状に一体化する工程と、
    を含むことを特徴とするシートモールディングコンパウンドの製造方法。
  2. 前記熱硬化性樹脂組成物のチキソトロピック指数が、2.2以上である請求項1記載のシートモールディングコンパウンドの製造方法。
  3. 請求項1又は請求項に記載の製造方法により得られるシートモールディングコンパウンド。
  4. 請求項に記載のシートモールディングコンパウンドを成形硬化せしめてなる成形体。
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