以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
本実施の形態では、写像投影型観察装置(写像投影光学系を有する電子線観察装置)を用いて試料が観察される。この種の電子線観察装置は、1次光学系及び2次光学系を備える。1次光学系は、電子銃から出射される電子ビームを試料に照射して、試料の構造等の情報を得た電子を生成する。2次光学系は、検出器を有し、電子ビームの照射により生成された電子の像を生成する。写像投影型観察装置では、大きな径の電子ビームが用いられ、広範囲の像が得られる。
電子ビームを試料に照射すると、複数の種類の電子が2次光学系で検出される。複数種類の電子とは、ミラー電子、2次電子、反射電子、後方散乱電子である。本実施の形態は、主としてミラー電子の特性を利用して、試料を観察する。ミラー電子とは、試料に衝突せず、試料の直前で跳ね返ってくる電子をいう。ミラー電子現象は、試料表面の電場の作用によって生じる。
また、本実施の形態では、2次電子、反射電子及び後方散乱電子を、2次放出電子という。これら3種の電子が混在する場合も、2次放出電子という用語を用いる。2次放出電子のうちでは、2次電子が代表的である。そこで、2次電子が、2次放出電子の代表として説明されることがある。ミラー電子と2次放出電子の両者について、「試料から放出される」「試料から反射される」「電子ビーム照射により生成される」などの表現が用いられてよい。
図1は、試料に電子ビームを照射したときのランディングエネルギーLEと階調DNの関係を示している。ランディングエネルギーLEとは、試料に照射される電子ビームに付与されるエネルギーである。電子銃に加速度電圧Vaccが印加され、試料にリターディング電Vrtdが印加されるとする。この場合、ランディングエネルギーLEは、加速電圧とリターディング電圧の差(LE=Vacc−Vrtd)で表される。
また、図1において、縦軸の階調DNは、2次光学系の検出器で検出された電子から生成した画像における輝度を表す。すなわち、階調DNは、検出される電子の数を表す。多くの電子が検出されるほど、階調DNが大きくなる。
図1は、0[eV]付近の小さいエネルギー領域における階調特性を示している。図示のように、LEがLEBより大きい領域(LEB<LE)では、階調DNは、比較的小さい一定の値を示す。LEがLEB以下、LEA以上の領域(LEA≦LE≦LEB)では、LEが小さくなるほど、階調DNが増大する。LEがLEAより小さい領域(LE<LEA)では、階調DNが、比較的大きい一定の値を示す。
上記の階調特性は、検出される電子の種類と関係している。LEB<LEの領域では、検出される殆どすべての電子が、2次放出電子である。この領域は、2次放出電子領域ということができる。一方、LE<LEAの領域では、検出される殆どすべての電子が、ミラー電子である。この領域は、ミラー電子領域ということができる。図示のように、ミラー電子領域の階調は、2次放出電子領域の階調より大きい。これは、2次放出電子と比べて、ミラー電子の分布の範囲が小さいからである。分布範囲が小さいので、より多くの電子が検出器に到達でき、階調が大きくなる。
また、LEA≦LE≦LEBの領域は、2次放出電子領域からミラー電子領域(又はその逆)への遷移領域である。この領域は、ミラー電子と2次放出電子が混在する領域であり、混在領域ということもできる。遷移領域(混在領域)では、LEが小さくなるほど、ミラー電子の発生量が増大し、階調が増大する。
LEA及びLEBは、遷移領域の最低ランディングエネルギー及び最高ランディングエネルギーを意味している。LEA及びLEBの具体的な値を説明する。本発明者の研究結果では、LEAが−5[eV]以上であり、LEBは5[eV]以下である(すなわち、−5[eV]≦LEA≦LEB≦5[eV])。
遷移領域のメリットとしては次の通りである。ミラー電子領域(LE<LEA)では、ビーム照射により発生する全ての電子がミラー電子になる。そのため、試料の形状に関係なく、検出される電子が全てミラー電子になり、試料の凹部でも凸部でも階調の差が小さくなり、パターンや欠陥のS/N及びコントラストが小さくなってしまう。したがって、ミラー電子領域を検査に使用するのは難しい場合がある。これに対して、遷移領域では、形状のエッジ部の部位にて特徴的かつ特異的にミラー電子が生じ、他の部位では2次放出電子が生じる。したがって、エッジのS/N及びコントラストを高くすることができる。したがって、遷移領域は検査を行うときに大変有効である。以下、この点について詳細に説明する。
図2は、上記の遷移領域の現象を示している。図2において、ミラー電子領域(LE<LEA)では、総ての電子が、試料に衝突することなく、ミラー電子になる。これに対して、遷移領域では、一部の電子が試料に衝突し、試料が2次電子を放出する。LEが大きくなるほど、2次電子の割合が多くなる。そして、図示されないが、LEがLEBを超えると、2次電子のみ検出される。
次に、図3は、試料表面の凹凸構造のエッジ部におけるランディングエネルギーLEと階調DNの関係を示している。エッジ部は、凹部の両端に位置し、試料の高さが変化する部分である。図3において、点線がエッジ部の階調特性を示し、実線が他の部分の階調特性を示す。他の部分の特性は、図1の特性に対応する。
図3に示すように、エッジ部とその他の部分では、特性線が異なっている。エッジ部の特性線は、ランディングエネルギーが大きくなる方向にずれている。すなわち、エッジ部では、遷移領域の上下限が大きく、遷移領域の上限はLEB+5[eV]である。ここで、LEBは、エッジ以外の部位の遷移領域の上限である。このような特性線のシフトが生じるのは、形状、構造及び材料等がエッジ部と他の部分で異なるからである。そして、特性線のずれることにより、エッジ部と他の部分で階調差ΔDNが生じる。
次に、図3に示されるようにエッジ部の特性が他の部位と異なる理由について、そして階調差ΔDNが生じる理由について検討する。
図4は、試料の凹凸構造の例であり、微細なライン/スペース形状の断面を示している。例えば凸部がラインであり、凹部がスペースである。ライン幅及びスペース幅が100μ以下である。図4の形状では、導体(Si)が凹凸形状を有している。そして、凸部の最上部に酸化膜(SiO2等)が形成されている。
図5は、図4の構造に電子ビームを照射したときに凹凸構造のエッジ部でミラー電子が生じる現象を示している。図5では、縦縞のパターンが形成されている。電子ビームが照射されると、照射電子が、凹部(溝)の一方のエッジの付近で軌道を変え、横方向に曲がり、溝の反対側のエッジに向かって進む。そして、照射電子は、反対側のエッジ付近で再び軌道を変え、上方に戻っていく。こうして、照射電子は、試料に衝突することなく、ミラー電子になる。このようにしてエッジで生じるミラー電子を、エッジミラー電子ということができる。エッジミラー電子は、両端のエッジから対称に生じる。図6も、図5と同様に、図4の構造にて生じるエッジミラー電子を示している。図6では、横縞のパターンが形成されている。
また、図7は、照射電子がエッジミラー電子に変化する電子軌道のもう一つの例である。この例では、照射電子が、凹部の一方のエッジに向って入射し、一方のエッジの近傍を通るカーブ軌道に沿って凹部内に侵入し、凹部の底部に衝突することなく進行方向を転換し、凹部の他方のエッジの近傍を通って、ミラー電子になる。このようなミラー電子も、エッジミラー電子である。エッジ構造では、各照射電子が、図5又は図7の軌道を通り、或いは図5及び図7の中間的な軌道を通り、エッジミラー電子になると考えられる。
次に、電子の軌道がエッジ付近で曲がりやすい理由について説明する。図5の構造では、導体の凸部の表面に酸化膜が形成されている。この構造では、試料表面の酸化膜が負に帯電する。そして、凹部内の導体の電位が、酸化膜の電位よりも相対的に高くなる。エッジ付近で電位が変化するために、電子の軌道が上述のように曲がりやすく、その結果、エッジミラー電子が生じる。
本実施の形態では、プレチャージを行うことも好適である。プレチャージは、試料観察の前に行われる電子ビームの照射である。プレチャージにより、試料の絶縁領域が負に帯電する(図5等の例では、試料表面の酸化膜が負に帯電する)。プレチャージを行うことにより、絶縁領域の電位が安定する。これにより、エッジミラー電子が安定して発生し、図3の特性が安定して得られる。したがって、試料観察を良好に行うことができ、試料観察結果を用いる検査の精度も向上できる。
プレチャージの電子ビームは、試料観察のための電子光学系を用いて照射されてよい。あるいは、別の電子銃が、プレチャージのために設けられてよい。
図8は、試料の凹凸構造に関する別の例を示している。図8も、ライン/スペース形状の断面である。図8では、Si面に、酸化膜(SiO2等)の凸部が形成されている。このような構造では、凹部の両側のエッジにて、等電位面が屈曲する。等電位面の屈曲の影響で、照射電子の軌道が曲がる。その結果、図8の構造においても、照射電子は、図5〜図7に示された軌道を通り、エッジミラー電子になる。図8の構造でもプレチャージが好適に行われ、これにより、凸部の酸化膜の電位を安定させることができる。
また、導電材のみによって凹凸構造が形成されることがある。この場合も、凹凸に沿って等電位面が形成される。そして、凹部の両側のエッジでは等電位面が屈曲する。この等電位面の屈曲の影響で、照射電子の軌道が曲がる。その結果、照射電子は、上述したような軌道を通り、エッジミラー電子になる。
また、導電材のみで凹凸面が形成されている場合でも、導電膜の表面には自然酸化膜が存在している。したがって、プレチャージを行うことが好適であり、これにより電位を安定させることができる。
以上に詳細に説明したように、試料の凹部では、電子が両端のエッジ付近を通ってUターンし、エッジミラー電子になる。そのため、エッジミラー電子は、通常の部位のミラー電子よりも発生しやすい。その結果、図3に示されるように、エッジ部では、エッジ以外の部分よりも、遷移領域が高いエネルギー側へと広がっている。
また、上記領域では、ミラー電子と2次放出電子が混在する。2次放出電子は、前述したように、2次電子、反射電子又は後方散乱電子である(あるいは、それらが混在している)。2次放出電子は、等方的に広がって放出される。そのため、検出器には、最大でも数%の電子しか到達しない。これに対して、エッジミラー電子は、照射電子がそのまま反射することにより生成される。したがって、エッジミラー電子については、透過率(検出器への到達率)がほぼ100%である。したがって、高い輝度(階調)が得られ、周囲との階調差ΔDNが大きくなる。
上記のように、エッジ部では、ミラー電子が生じやすく、しかも、ミラー電子の透過率が大きい。その結果、図3に示されるように、ランディングエネルギーLEが大きい方へと、エッジ部の階調特性線がずれ、エッジ部と他の部位の間に階調差ΔDNが生じる。
本実施の形態は、上記の現象を利用して、解像度が高くコントラストも大きいパターン画像を生成する。上記で説明された凹構造は、本発明の凹パターンに相当する。本実施の形態では、凹パターンで効率よくエッジミラー電子が生じるように、ランディングエネルギーを設定する。ランディングエネルギーLEは、図示のように、従来一般の観察技術と比べて非常に低い値に設定されることになる。このようなエネルギー設定により、パターンと周囲の階調差ΔDNが大きくなり、高い解像度と高いコントラストの画像が得られる。
具体的には、LEA≦LE≦LEB、又は、LEA≦LE≦LEB+5[eV]になるように、ランディングエネルギーLEが設定される。これにより、ミラー電子と2次電子が混在する領域にランディングエネルギーLEが設定される。
前述したように、本発明の研究結果では、−5[eV]≦LEA≦LEB≦5[eV]である。例えば、LEA=−5[eV]、LEB=5[eV]であったとする。この場合、ランディングエネルギーLEは、−5[eV]≦LE≦5+5[eV]=10[eV]に設定される。さらに詳細には、ランディングエネルギーLEに依存してミラー電子と2次放出電子の混在の状況が変化し、階調差も変化する。ミラー電子の発生数が比較的小さい領域にランディングエネルギーLEを設定することで、大きな効果が得られると考えられる。
次に、上記の試料観察方法を実現するための試料観察装置について説明する。以下の説明では、試料観察装置が、試料検査装置に組み込まれており、試料のパターン欠陥の検査に用いられる。図9は試料検査装置の全体構成を示しており、図10は、試料検査装置の主要部を示している。
図9を参照すると、試料検査装置10は、試料キャリア12と、ミニエンバイロメント14と、ロードロック16と、トランスファーチャンバ18と、メインチャンバ22と、電子コラム24と、画像処理装置90を有する。ミニエンバイロメント14には、大気中の搬送ロボット、試料アライメント装置、クリーンエアー供給機構等が設けられる。トランスファーチャンバ18には、真空中の搬送ロボットが設けられる。
メインチャンバ22には、x方向、y方向及びθ(回転)方向に移動するようにステージ30が設けられる。ステージ30の上に静電チャックが設置されている。静電チャックには試料そのものが設置される。または、試料は、パレットや冶具に設置された状態で静電チャックに保持される。
メインチャンバ22は、真空制御系26により、チャンバ内を真空状態が保たれるように制御される。また、メインチャンバ22、トランスファーチャンバ18及びロードロック16は、除振台28上に載置され、床からの振動が伝達されないように構成されている。
また、メインチャンバ22には電子コラム24が設置されている。この電子コラム24は、電子銃、レンズ、配線及びフィールドスルーを備え、更に、図示のように検出器70を備えている。これら構成が、電子ビームによる写像投影のための1次光学系及び2次光学系を実現している。
検出器70の出力信号は、画像処理装置90に送られて処理される。オンタイムの信号処理及びオフタイムの信号処理の両方が可能である。オンタイムの信号処理は、検査を行っている間に行われる。オフタイムの信号処理を行う場合、画像のみが取得され、後で信号処理が行われる。画像処理装置で処理されたデータは、ハードディスクやメモリなどの記録媒体に保存される。また、必要に応じて、コンソールのモニタにデータを表示することが可能である。このような信号処理を行うため、システムソフト140が備えられている。システムソフト140はコンピュータにてプログラムを実行することにより実現される。また、電子コラム系に電源を供給すべく、電子光学系制御電源130が備えられている。また、メインチャンバ22には、光学顕微鏡110及びSEM式検査装置(SEM)120が備えられている。
図9の試料検査装置10では、ウエハ、マスクなどの試料が、試料キャリア12(ロードポート)からミニエンバイロメント14に搬送される。ミニエンバイロメント14では、アライメント作業がおこなわれる。
次に、試料は、大気中の搬送ロボットにより、ロードロック16に搬送される。ロードロック16は、大気から真空状態へと、真空ポンプにより排気される。圧力が、一定値(例えば1〔Pa〕程度)以下になると、トランスファーチャンバ18に配置された真空中の搬送ロボットにより、試料がロードロック16からメインチャンバ22へ搬送される。試料は、ステージ30上の静電チャック機構上に保持される。
メインチャンバ22では、試料が検査される。ここでは、上述した本発明の試料観察方法を利用して、試料のパターンが検査される。また、後述するように、SEM120を用いて検査が行われる。検査が終了すると、試料は、逆の経路を通って、試料キャリア12へと戻る。
次に、図10を参照し、試料検査装置10の主要部について説明する。図10の構成は、図9のメインチャンバ22及び電子コラム24などに相当する。
図10において、試料検査装置10は、電子ビームを生成する1次光学系40と、試料20を設置するステージ30と、試料からの2次放出電子及びミラー電子の像を生成する2次光学系60と、それらの電子を検出する検出器70と、検出器70からの信号を処理する画像処理装置90とを備える。検出器70は、2次光学系60の一部に含まれる。また、試料検査装置10は、装置全体を制御するために制御部100を備えている。制御部100は、図9のシステムソフト140に対応する。更に、試料検査装置10には、位置合わせのために光学顕微鏡110が設けられ、レビューのためにSEM120が設けられている。
1次光学系40は、電子ビームを生成し、試料20に向けて照射する構成である。1次光学系40は、電子銃41と、レンズ42、45と、アパーチャ43、44と、E×Bフィルタ46と、レンズ47、49、50と、アパーチャ48とを有する。電子銃41により電子ビームが生成される。レンズ42、45及びアパーチャ43、44は、電子ビームの形状を整えるとともに、電子ビームの方向を制御する。そして、E×Bフィルタ46にて、電子ビームは、磁界と電界によるローレンツ力の影響を受ける。電子ビームは、斜め方向からE×Bフィルタ46に入射して、鉛直下方向に偏向され、試料20の方に向かう。レンズ47、49、50は、電子ビームの方向を制御するとともに、適切な減速を行って、ランディングエネルギーLEを調整する。
写像投影光学系の1次光学系40では、E×Bフィルタ46が特に重要である。E×Bフィルタ46の電界と磁界の条件を調整することにより、1次電子ビーム角度を定めることができる。例えば、1次系の照射電子ビームと、2次系の電子ビームとが、試料20に対して、ほぼ垂直に入射するように、E×Bフィルタ46の条件が設定される。
1次光学系40は、撮像のための電子ビームだけでなく、プレチャージのための電子ビームも照射してよい。あるいは、プレチャージのための電子銃等が設けられてもよい。
ステージ30は、上述したように、試料20を載置するための構成である。ステージ30は、xy方向(水平方向)及びθ方向(水平面上での回転方向)に移動可能である。また、ステージ30は、必要に応じてz方向(垂直方向)に移動可能であってもよい。ステージ30の表面には、静電チャック等の試料固定機構が備えられている。
2次光学系60は、試料20から反射した電子を、検出器70に導く構成である。既に説明したように、ミラー電子及び2次放出電子が検出器70に導かれる。2次光学系60は、レンズ61、63と、アパーチャ62と、アライナ64と、検出器70とを有する。電子は、試料20から反射して、対物レンズ50、レンズ49、アパーチャ48、レンズ47及びE×Bフィルタ46を再度通過する。そして、電子は2次光学系60に導かれる。2次光学系60においては、電子は、レンズ61、アパーチャ62、レンズ63を通過し、アライナ64で整えられて、検出器70にて検出される。
アパーチャ62は、2次系の透過率・収差を規定する役目を持っている。本実施の形態では、アパーチャ62のサイズ、位置及び形状が調整可能である。この調整を行うために、アパーチャ調整機構200が設けられている。アパーチャ調整は、観察画像における試料パターンのコントラストを大きくするために行われる。アパーチャ調整については後述する。
検出器70は、2次光学系60により導かれた電子を検出する構成である。検出器70は、検出面に複数のピクセルを有する。検出器70には、種々の二次元型センサを適用することができる。例えば、検出器70には、CCD(Charge Coupled Device)及びTDI(Time Delay Integration)−CCDが適用されてよい。これらは、電子を光に変換してから信号検出を行うセンサである。そのため、光電変換等の手段が必要である。よって、光電変換又はシンチレータを用いて、電子が光に変換される。
また、検出器70には、EB−TDIが適用されてよい。EB−TDIは、光電変換機構及び光伝達機構を必要としない。電子がEB−TDIセンサ面に直接に入射する。したがって、分解能の劣化が無く、高いMTF(Modulation Transfer Function)及びコントラストを得ることが可能となる。また、検出器70には、EB−CCDが適用されてもよい。
制御部100は、コンピュータで構成され、試料検査装置10の全体を制御する。制御部100は、図9のシステムソフト140と対応する。
制御部100は、電子銃41を含む1次光学系40を制御して、ランディングエネルギーLEを調整する。本実施の形態では、前述したように、試料20のパターンにてエッジミラー電子が効率よく発生するように、ランディングエネルギーLEが設定される。また、制御部100は、1次光学系40及び2次光学系60を制御して、電子銃41から検出器70までの電子の軌道を制御及び調整する。より詳細には、電子ビームが電子銃41から試料20まで所定の適切な軌道を通り、さらに試料20からの電子が検出器70まで所定の適切な軌道を通るように、電子軌道が制御される。また、制御部100は、後述にて詳細に説明するように、アパーチャ調整機構200を制御して、アパーチャ調整を行わせる。
また、制御部100は、画像処理装置90を制御して、検出器70からの信号を処理して、試料20のパターンの画像を生成させる。さらに、制御部100は、画像処理装置90で生成された画像を処理し、パターン欠陥についての判定を行うように構成されている。
以上に、試料検査装置10の各部の構成について説明した。次に、試料検査装置10の動作を説明する。
試料検査装置10は、電子ビームを試料20に照射しながら、ステージ30を水平方向に移動し、試料20からの電子を検出器70にて検出し、検出信号から試料20の画像を生成する。電子ビームは、電子銃41から発射され、1次光学系40に導かれて、試料20に照射される。入射過程では、E×Bフィルタ46にて電子ビームの向きが変えられる。本実施の形態では、写像投影法により検査が行われる。そのため、試料の比較的広い範囲を照射するように、大きな径の電子ビームが用いられる。
電子ビームのランディングエネルギーLEは、上述の試料観察方法の説明で述べたように、エッジミラー電子がパターンのエッジにて発生しやすいように設定されている。具体的には、ランディングエネルギーLEが、LEA≦LE≦LEB+5[eV]に設定される。LEA、LEBは、図1における遷移領域の下限及び上限であり、例えば、−5[eV]及び5[eV]である。
したがって、電子ビームが試料20のパターンに照射されたときに、エッジミラー電子が発生する。より詳細には、電子ビームのうちで、一部の電子がパターンのエッジ付近に照射される。このようなエッジ付近への電子が、図5〜図7に例示された軌道を通り、エッジミラー電子になる。
試料20で生じた電子は、2次光学系60によって検出器70に導かれる。そして、電子の像が検出器70の検出面に生成される。電子ビームの照射により、試料20では、エッジミラー電子の他に、通常のミラー電子も生じ得る。また、ミラー電子の他に、2次放出電子も生じる。したがって、検出器70には、これらの種類の電子の像が形成される。
検出器70は、電子を検出して、検出信号を画像処理装置90に送る。画像処理装置90では、検出信号を処理して、試料20の画像を生成する。ここで、本実施の形態では、ランディングエネルギーLEが適切に設定されており、検出器70に多くのエッジミラー電子が到達する。すなわち、エッジミラー電子の検出数が、他の種類の電子と比べて多い。エッジミラー電子は、試料20のパターンのエッジで生じる。したがって、試料20の画像においては、パターンの階調(輝度)が大きくなる。そして、他の部分との階調差が大きくなる。したがって、パターンのコントラストが大きくなる。
制御部100は、このような試料20の画像を用いて、パターン欠陥の判定を行う。制御部100は、パターンの欠陥の有無を判定してよく、欠陥の位置を検出してよく、さらに欠陥の種類を判定してよい。また、本実施の形態の試料検査装置10は、パターン欠陥だけでなく、異物を検査してもよい。この場合、制御部100は、試料20の画像を処理して、異物の有無を判定してよい。さらに、他の検査も行われてよい。
欠陥判定処理は、「ダイtoダイ(die to die)」であってよい。この処理は、試料20の2つのダイの画像を比較する。より詳細には、順次得られる2つのダイの画像が比較される。2つのダイのパターンが相違する場合に、制御部100は、欠陥があると判定する。
欠陥判定処理は、「ダイto anyダイ(die to any die)」であってよい。この場合、試料20から特定のダイの画像が得られ、判定基準として保持される。そして、判定基準のダイの画像が、他の多数のダイの画像と順番に比較される。この場合も、ダイのパターンが相違する場合に、制御部100は、欠陥があると判定する。
さらに、欠陥判定処理は、「ダイtoデータベース(die to database)」であってよい。この場合、ダイの画像が、設計データ等の登録データと比較される。設計データは例えばCADデータである。そして、ダイの画像が登録データと相違する場合に、制御部100は、欠陥があると判定する。
また、欠陥判定処理は、セル(cell)の欠陥を判定してよい。この場合、上述のダイの画像の代わりに、セルの画像が処理される。欠陥判定処理は、「セルtoセル(cell to cell)」でもよく、「セルto anyセル(cell to any cell)」でもよく、「セルtoデータベース(cell to database)」でもよい。
このようにして、制御部100は、欠陥判定を行う。欠陥判定結果は、モニタに表示されてよく、記録媒体に記録されてよい。また、欠陥判定結果は、以下に説明するように、次の段階でSEM120により利用されてよい。
「写像投影型検査装置とSEMの両方を備えた構成について」
図11は、試料検査装置10の一部であり、特に、メインチャンバ22、電子コラム24及びSEM120を示している。電子コラム24は、メインチャンバ22と共に、写像投影型観察装置を構成している。したがって、本実施の形態の試料検査装置は、写像投影型観察装置とSEM型観察装置の両方を備えた複合型の観察装置を構成している。
図11に示されるように、本実施の形態では、ステージ30が移動可能であり、特に、電子コラム24(写像投影型観察装置)の観察位置とSEM120の観察位置との間で移動可能である。このような構成により、写像方式とSEMという2種類の装置の両方を用いる場合に、観察及び検査を迅速かつ高精度に行うことができる。例えば、写像投影型観察装置でパターン欠陥が検出され、それから、SEMでパターン欠陥が詳細にレビューされる。以下、この特徴について更に詳細に説明する。
図11の構成によれば、試料20が同じステージ30に搭載されたまま、電子コラム24とSEM120の両方が使用される。したがって、試料20(ステージ30)が電子コラム24とSEM120との間を移動したときに、座標関係が一義的に決まる。このことは、パターンの所定箇所を特定したり、パターン欠陥箇所を特定するときに有利である。2つの検査装置が、同一部位の特定を高精度で容易に行うことができる。例えば、電子コラム24により欠陥箇所が特定される。この欠陥箇所が、SEM120にて迅速に位置決めされる。
上記の複合型の構成が適用されなかったとする。例えば、写像式光学検査装置とSEMが、別々の真空チャンバに分かれて配置されたとする。分離された別々の装置間で試料を移動する必要があり、別々のステージに試料を設置する必要がある。そのため、2つの装置が試料のアライメントを別個に行う必要があり、時間がかかる。また、試料のアライメントを別々に行う場合、同一位置の特定誤差は、5〜10〔μm〕となってしまう。
一方、本実施の形態では、図11に示すように、2種類の検査において、同一のチャンバ22の同一のステージ30に、試料20が設置される。写像方式の電子コラム24とSEM120との間でステージ30が移動した場合でも、高精度で同一位置を特定可能である。例えば、1〔μm〕以下の精度での位置の特定が可能である。
このような高精度の特定は、以下の場合に大変有利である。まず、試料20の検査が写像方式で行われ、パターン及びパターン欠陥が検査される。それから、検出した欠陥の特定及び詳細観察(レビュー)が、SEM120で行われる。正確な位置の特定ができるので、欠陥の有無(無ければ疑似検出)が判断できるだけでなく、欠陥のサイズや形状の詳細観察を高速に行うことが可能となる。
前述したように、欠陥検出用の電子コラム24と、レビュー用のSEM式検査装置120とが別々に設けられると、欠陥位置の特定に多くの時間を費やしてしまう。このような問題が本実施の形態により解決される。
以上に説明したように、本実施の形態では、写像光学方式によるパターンとパターン欠陥の撮像条件を用いて、超微小なパターンが高感度で検査される。さらに、写像光学方式の電子コラム24とSEM式検査装置120が同一チャンバ22に搭載される。これにより、特に、100〔nm〕以下の超微小なパターンの検査と、パターンの判定及び分類を、大変効率良く、高速に行うことができる。
「アパーチャ調整」
次に、本実施の形態のもう一つの特徴であるアパーチャ調整について説明する。
まず、アパーチャ調整の概要を説明する。アパーチャ調整では、2次光学系60のアパーチャ62のサイズ、位置及び形状が、アパーチャ62を通過するミラー電子に合うように調整される。この意味で、本実施の形態のアパーチャ62は、可変アパーチャ(又は調整用アパーチャ等)と呼ぶことができる。調整目標は、アパーチャ62の高さでのミラー電子のスポット(プロファイル)と、アパーチャ62の孔とを極力一致させることである。ただし、実際にはミラー電子スポットとアパーチャ62を完全に一致させることは困難である。したがって、実際には、ミラー電子スポットよりもある程度広く、アパーチャ62が調整されてよい。
このようにしてアパーチャ62を調整することにより、画像中のパターンのコントラストを増大できる。より詳細には、試料から検出される電子は、ミラー電子と2次放出電子を含む。既に説明したように、2次放出電子は広範囲に広がるのに対し、ミラー電子はあまり広がらない。したがって、ミラー電子に応じてアパーチャ62を適切に調整することにより、アパーチャ62を通過する2次放出電子を減らし、ミラー電子の検出量を相対的に増大できる。したがって、画像中のパターンのコントラストを更に増大できる。
アパーチャ62は、アパーチャ調整機構200により調整される。具体的には、複数種類のアパーチャ62が備えられてよい。複数種類のアパーチャ62では、サイズ及び形状が異なる。それら複数種類のアパーチャ62は一体的に構成されてもよく、別々の部材であってもよい。アパーチャ調整機構200は、光軸上で観察に用いられるアパーチャ62を切り換え可能である。そして、アパーチャ調整機構200は、制御部100の制御下で、複数種類のアパーチャ62からミラー電子に応じたアパーチャ62を選択し、光軸上に配置する。さらに、アパーチャ調整機構200は、ミラー電子に応じてアパーチャ62の位置を調整する。こうして、アパーチャ62のサイズ、形状及び位置が好適に調整される。
本発明の範囲内で、アパーチャ62の位置は、2次光学系60の軸に沿った方向の位置も含んでよい。したがって、アパーチャ調整機構200は、アパーチャ62を水平方向(XY方向)に移動するだけでなく、光軸方向(Z方向)に移動して、アパーチャ位置を最適化してよい。また、アパーチャ62の位置は、回転方向の位置、すなわちアパーチャ角度も含んでよい。アパーチャ調整機構200は、アパーチャ62を水平面上で回転してよく、回転中心は2次光学系60の軸でよい。
上記のアパーチャ調整のためには、アパーチャにおけるミラー電子の像を利用することが効果的である。このミラー電子像は、上記のミラー電子スポットを表す。そこで、アパーチャにおけるミラー電子像に適合するように、アパーチャ62が調整される。
アパーチャにおけるミラー電子像を測定するためには、EB−CCD等の検出器がアパーチャの高さに好適に追加される。あるいは、アパーチャ62と、検出器70(図10)とを、光学的に共役な位置に配置することが好適である。これにより、検出器70にて、アパーチャ62におけるミラー電子像が得られる。
以上に、アパーチャ調整の概要を説明した。次に、具体例を用いながら、アパーチャ調整についてさらに詳細に説明する。
(アパーチャ位置の調整)
パターン観察では、パターンからのミラー信号を効率よく取得することが重要である。アパーチャ62の位置は、信号の透過率と収差を規定するので、大変に重要である。2次電子は、試料表面から広い角度範囲で、コサイン則に従い放出され、アパーチャでは均一に広い領域に到達する。したがって、2次電子は、アパーチャ62の位置に鈍感である。これに対し、ミラー電子の場合、試料表面での反射角度が、1次電子ビームの入射角度と同程度となる。そのため、ミラー電子は、小さな広がりを示し、小さなビーム径でアパーチャ62に到達する。例えば、ミラー電子の広がり領域は、二次電子の広がり領域の1/20以下となる。したがって、ミラー電子は、アパーチャ62の位置に大変敏感である。アパーチャにおけるミラー電子の広がり領域は、通常、φ10〜100〔μm〕の領域となる。よって、ミラー電子強度の最も高い位置を求めて、その求められた位置にアパーチャ62の中心位置を配置することが、大変有利であり、重要である。
このような適切な位置へのアパーチャ62の設置を実現するために、アパーチャ調整機構200が、アパーチャ62を、電子コラム24の真空中で、1〔μm〕程度の精度で、x、y方向に移動させる。アパーチャ62を移動させながら、信号強度が計測される。画像の輝度が、信号強度として求めれてよい。評価値は例えば輝度の合計である。そして、信号強度が最も高い位置が求められ、その求められた座標位置に、アパーチャ62の中心が設置される。
上記では、アパーチャ62がxy方向に移動された。本発明の範囲内で、アパーチャ62がアパーチャ調整機構20により回動されて、アパーチャ62の角度が調整されてもよい。そして、信号強度の計測結果に基づき、角度が設定されてよい。角度は、回転方向の位置であり、したがってアパーチャの角度も本発明ではアパーチャ位置に含まれる。アパーチャ62の回転軸は、2次光学系60の軸であってよい。まず、上述したxy方向の調整が行われ、信号強度が最も高い位置へとアパーチャ中心が調整されてよい。それから、アパーチャ62が所定の小さい角度ずつ回転され、信号強度が最も高くなる角度へアパーチャ62が調整されてよい。
また、x、y方向だけでなく、z軸方向にアパーチャ62の位置調整を行えるように、アパーチャ等が構成されてよい。z軸方向は、2次光学系60の軸方向である。この場合、z軸方向にもアパーチャ62が移動され、信号強度が測定され、信号強度が最も高くなる位置へとアパーチャ62が調整されてよく、この構成も有利である。アパーチャ62は、ミラー電子が最も絞られる位置に好適に設置される。これによりミラー電子の収差の低減、及び、2次放出電子の削減を、大変効果的に行うことができる。したがって、より高いS/Nを得ることが可能となる。
(信号強度の計測の構成)
ここでは、信号強度計測のためのさらに好適な構成を説明する。
図12は、図10の試料検査装置の変形例である。図12では、2次光学系60aの構成が、図10の2次光学系60と異なっており、具体的には、アパーチャの高さにEB−CCD65が設けられている。アパーチャ62とEB−CCD65は、開口67、68を有する一体の保持部材であるXYステージ66に設置されている。XYステージ66には開口67、68が設けられているので、ミラー電子及び2放出次電子がアパーチャ62又はEB−CCD65に到達可能である。
XYステージ66は、アパーチャ62とEB−CCD65を移動し、それらの位置制御及び位置決めを行う。これによりアパーチャ62とEB−CCD65が切り換えられ、そして、アパーチャ62の電流吸収とEB−CCD65の画像取得が独立に行われる。XYステージ66は、アパーチャ調整機構200により駆動される(XYステージ66がアパーチャ調整機構200の一部であってよい)。
このような構成の2次光学系60aを用いる場合、まず、EB−CCD65を用いて、電子ビームのスポット形状とその中心位置が検出される。画像処理装置90又は他の構成がEB−CCD65の検出信号を処理して画像を生成してよい。制御部100が、検出信号の画像からミラー電子のスポット形状と中心位置を求めてよい。前述のようにミラー電子の輝度は、2次放出電子の輝度より大きい。したがって、ミラー電子のスポットが、周囲の2次放出電子の部分よりも明るくなる。そこで、例えば、輝度が所定値以上の領域が、ミラー電子のスポット(プロファイル)として特定される。また例えば、画像からエッジで囲まれた領域が、ミラー電子のスポットとして検出される。そして、制御部100は、XYステージ66を制御し、検出されたスポットの中心位置に、アパーチャ62の孔中心を配置する。
以上に説明したように、本実施の形態では、EB−CCD65が大変有利に用いられる。ビームの2次元的な情報を知ることができ、検出器70に入射する電子数を求めることができるので、定量的な信号強度の評価が可能となる。そして、このような計測結果を利用して、直接的にアパーチャ62の位置調整を行うことが可能となる。これにより、アパーチャの高精度な位置決めが可能となり、電子像の収差が低減し、均一性が向上する。そして、透過率均一性が向上し、分解能が高く階調が均一な電子像を取得することが可能となる。
また、図12の構成は、アパーチャ62を少しずつ動かしながら信号強度を計測するといった作業を不要にできる。したがって、計測時間の短縮にも有効である。
また、図12の構成は、アパーチャ調整だけでなく、スポット形状の調整にも好適に利用される。制御部100は、スポット形状が極力円形に近く、最小になるように、スティグメーター、レンズ61、63及びアライナ64の電圧調整を行う。この点に関し、従来は、アパーチャ62におけるスポット形状及び非点収差の調整を直接行うことはできなかった。このような直接的な調整が本実施の形態では可能となり、非点収差の高精度な補正が可能となる。
また、図12の構成では、EB−CCD65が検出器として設けられている。しかし、他の種類の検出器が設けられてもよい。
図12では、EB−CCD65の追加により、アパーチャ62におけるビーム像が得られた。しかし、別の構成によっても同様のビーム像を得ることが可能である。具体的には、z方向において、アパーチャ62と検出器70の検出面の位置関係が、光学的に共役の関係になるように、アパーチャ62が配置される。この構成も大変有利である。これにより、アパーチャ62におけるビームの像が、検出器70の検出面に結像される。したがって、アパーチャ62におけるビームプロファイルを、検出器70を用いて観察することができ、アパーチャ62のミラー電子像が得られる。しかも、EB−CCD65を設けなくてもよい。
その他、上述の説明では、測定結果がアパーチャ位置調整に用いられた。制御部100は、測定結果を下記のアパーチャサイズ及びアパーチャ形状の調整にも好適に使用してよい。
(アパーチャサイズ及びアパーチャ形状の調整)
アパーチャ62のサイズ(アパーチャ径)も本実施の形態では重要である。上述のようにミラー電子の信号領域が小さいので、効果的なサイズは、10〜200〔μm〕程度である。更に、アパーチャサイズは、好ましくは、ビーム径に対して10〜100〔%〕大きいサイズである。
この点に関し、電子の像は、ミラー電子と二次放出電子により形成される。アパーチャサイズの設定により、ミラー電子の割合をより高めることが可能となる。これにより、ミラー電子のコントラストを高めることができ、つまり、パターンのコントラストを高めることができる。
更に詳細に説明すると、アパーチャの孔を小さくすると、アパーチャ面積に反比例して2次放出電子が減少する。そのため、正常部の階調が小さくなる。しかし、ミラー電子信号は変化せず、パターンの階調は変化しない。よって、周囲の階調が低減した分だけ、パターンのコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
アパーチャ形状についても同様の原理が成り立つ。アパーチャ形状を、アパーチャ62におけるミラー電子のスポット形状(プロファイル)に合わせることが好適である。これにより、ミラー電子信号を変えずに、アパーチャ62を通過する2次放出電子を低減できる。したがって、パターンのコントラストを大きくでき、より高いS/Nが得られる。
上記のアパーチャサイズ及び形状の調整においても、上述した信号計測が行われてよい。アパーチャサイズ及び形状を少しずつ変えながら、信号計測が繰り返されてもよい。好ましくは、図12の構成を用いて、アパーチャ62におけるミラー電子のスポットが計測される。あるいは、検出器70とアパーチャ62の位置関係を共役関係に設定することにより、検出器70にてスポットの像が取得される。これにより、簡単かつ迅速にアパーチャサイズ及び形状を調整できる。
以上に説明したように、ミラー電子は、アパーチャサイズと形状に非常に敏感である。よって、アパーチャサイズと形状と適切に選択することは、高いS/Nを得るために大変重要である。
(アパーチャのバリエーションについて)
次に、本実施の形態に好適に適用されるアパーチャのバリエーションについて、図13〜図18を参照して説明する。
図10等ではアパーチャ62が単なる線で表されている。しかし、実際のアパーチャ62は、孔を有する部材(部品)である。一般に、部材がアパーチャと呼ばれることもあり、孔がアパーチャと呼ばれることもある。以下のアパーチャのバリエーションの説明では、部材(部品)とその孔を区別するため、部材をアパーチャ部材と呼ぶ。そして、部材の孔を、アパーチャ孔という。その他の識別の方法として、アパーチャ部材をNAアパーチャ等と呼ぶことも可能である。
図13〜図18では、符合62a〜62dは、アパーチャ部材である。符号169、69、69a、69bは、アパーチャ孔を示す。アパーチャ形状は、一般に、アパーチャ孔の形状を意味する。アパーチャサイズ及び位置も、具体的にはアパーチャ孔のサイズ及び位置である。ここではアパーチャ部材とアパーチャ孔を区別するものの、本明細書の全体では一般的表現に従ってアパーチャ部材及びアパーチャ孔が単にアパーチャと呼ばれてよい。
図13は、参考例であり、従来のアパーチャ孔169を示している。図13に示すように、従来は、円形のアパーチャ孔169が固定位置に設置されていた。よって、上述のような適切なアパーチャサイズと形状の選択はできなかった。一方、本実施の形態に係る試料検査装置10は、アパーチャを2次元的又は3次元的に移動し、アパーチャ調整を行えるように構成されている。
図14は、アパーチャ形状の一例を示している。図14において、アパーチャ孔69は、楕円形である。この孔形状は、ミラー電子信号の強度分布に合うように設定されている。この例では、アパーチャ部材62におけるミラー電子の強度分布の測定結果において、強度分布がy方向に長い楕円形状である。ここで、y方向とは、E×Bフィルタ46で偏向される方向である。y方向は、1次電子ビームの光軸の方向と一致する。y方向の楕円形状の原因は、E×Bフィルタ46での偏向成分であると考えられる。よって、効率よくミラー電子を捕捉するためには、y方向に長軸を有するアパーチャ形状が大変有利である。
これにより、従来よりもミラー電子の収率を高め、より高いS/N(例えば、×2以上)を得ることが可能となる。例えば、2次電子ビームの強度分布が、y方向に100〔μm〕、x方向に50〔μm〕とする(これらの値は、半値全幅である)。楕円形のアパーチャ孔69は、2次電子ビーム径に対して、プラス10〜100〔%〕の範囲で選択される。例えば、アパーチャサイズがy方向に150〔μm〕、x方向に75〔μm〕になるように、アパーチャ孔69が選択されてよい。
次に、図15乃至図18を用いて、複数のアパーチャ孔を有するアパーチャ部材の構成について説明する。ここでは、複数のアパーチャ孔が、一つのアパーチャとして機能する。
図15は、複数のアパーチャ孔69aを有するアパーチャ部材62aの構成の一例を示している。図15において、アパーチャ部材62aは、2つの円形のアパーチャ孔69aを有する。この例では、ミラー電子の強度中心を基準に、2つの孔が±y方向にずらした位置に配置される。ずれ量は、例えば、50〔μm〕程度である。この構成は、散乱された+y側と−y側のミラー電子の双方を捕捉できる。したがって、この構成は、散乱したミラー電子の信号と、バックグラウンドの2次放出電子との信号量の差を大きくでき、高いS/Nを得ることが可能となる。この理由を説明すると、2次放出電子の場合、散乱方向に飛散する量が少量に限られる。そのため、バックグラウンドが低減し、相対的にS/Nを向上させることができる。
図16は、4つのアパーチャ孔69aを有するアパーチャ部材62aの構成の一例を示している。図16において、4つの円形のアパーチャ孔69aが、x軸及びy軸に対称に配置されている。すなわち、2つのアパーチャ孔69aがx軸上に配置され、2つのアパーチャ孔69aがy軸上に配置され、4つのアパーチャ孔69aが中心(原点)から等距離に位置している。別の言い方では、4つのアパーチャ孔69aは、原点の回りに等間隔に配置されている。さらに簡単にいうと、4つのアパーチャ孔69aが菱形状に配置されている。これにより、x方向とy方向の双方に散乱されたミラー電子が存在する場合にも、高S/Nで電子を取得することができる。
図17は、4つのアパーチャ孔69aを有するアパーチャ部材62cを示している。図17の構成は、図16の構成と異なる一例である。図17においては、4個の円形のアパーチャ孔69aが、xy平面における第1象限から第4象限にそれぞれ配置されている。この例でも、4つのアパーチャ孔69aは、x軸及びy軸に対称に配置されており、中心(原点)から等距離に配置されている。別の言い方では、4つのアパーチャ孔69aは、原点の回りに等間隔に配置されている。このような形状のアパーチャ部材62cにおいても、ミラー電子の信号強度が高くなる位置にアパーチャ孔69aを設けることができ、高S/Nの信号を取得することができる。
図16及び図17に示すように、アパーチャ孔69aの数が同じであって、それらの配置が異なってよい。これにより、用途に応じた適切なアパーチャ部材62b、62cを用いることができる。そして、各々の用途について、高いS/Nを取得することが可能となる。
図18は、8つのアパーチャ孔69bを有するアパーチャ部材62dの構成の一例を示した図である。図18に示すように、アパーチャ孔69dの数は、4つよりも更に多くてもよい。図18に示したアパーチャ部材62dにおいては、ミラー電子の強度中心の回りの円周上に、複数のアパーチャ孔69bが等間隔に配置されている。この構成は、円周上のどこかのアパーチャ孔69bの位置に特異的に強い散乱をするミラー電子がある場合に有利である。そのようなミラー電子の適切な捕捉が可能となる。
また、図15乃至図18では、ミラー電子の信号の強度中心とアパーチャ孔69a、69bとの関係については、アパーチャ位置が強度中心とずれている。しかし、本発明はこれに限定されず、アパーチャ位置が強度中心と一致してよい。すなわち、一つのアパーチャ孔が、ミラー電子強度中心と一致するように設置されてよい。この場合、他のアパーチャ孔は、散乱したミラー電子の捕捉を行う。それら電子が強度中心のミラー電子とともに電子像に含まれる。このような合成像が検出器70で得られる。このようにして、強いミラー電子と特異的に散乱されたミラー電子との合成像を取得することができる。したがって、高いS/Nを得ることができるとともに、散乱方向に特徴がある観察対象を効果的に検出できる。また、散乱方向の特徴を、観察対象の分類に役立てることも可能となる。
(ランディングエネルギーに応じたアパーチャ調整)
更に、本実施の形態によれば、使用するランディングエネルギーLEに対して、適切なアパーチャ孔形状及びサイズを選択することもできる。この選択も大変に有利な効果を提供する。ランディングエネルギーLEによりミラー電子の強度分布が変化する。そこで、本実施の形態の検査装置は、使用するランディングエネルギーLEに応じたアパーチャサイズ及び形状を選択するように構成されてよい。これにより強度分布に応じたアパーチャ調整ができ、大変有利である。
例えば、ミラー電子が、y方向に長い楕円形状の強度分布を有する場合を考える。異なった2つの条件で撮像又は検査が行われるとする。例えば、1番目の撮像・検査条件では、ランディングエネルギーが第1の値すなわちLE=3〔eV〕であるとする。第2番目の撮像・検査条件では、ランディングエネルギーが第2の値すなわちLE=2〔eV〕とする。ここで、ランディングエネルギーLEが小さくなると、アパーチャ高さではミラー電子強度分布が大きくなる。このような分布変化に適合するように、アパーチャサイズ及び形状が好適に選択される。
例えば、第1のランディングエネルギーが用いられるときは、y方向に100〔μm〕、x方向に50〔μm〕の楕円のアパーチャ孔69が選択されてよい。第2のランディングエネルギーが用いられるときは、ミラー電子強度分布が2倍程度大きくなる。そこで、y方向に200〔μm〕、x方向に100〔μm〕の楕円形状のアパーチャ孔69が用いられてよい。このようにして、大変効果的にミラー電子を検出できる。
(アパーチャ調整機構)
最後にアパーチャ調整機構について説明を補足する。本実施の形態では、複数のアパーチャ(アパーチャ部材)が一体化されてよい。すなわち、一つのアパーチャ部材に複数のアパーチャ孔が設けられてよい。複数のアパーチャ孔では、形状及びサイズが異なってよい。この場合、アパーチャ調整機構は、アパーチャ部材を移動することにより、アパーチャ孔を切り換え、アパーチャ形状及びアパーチャサイズを調整する。
別の例は、アパーチャが一体化されない構成である。すなわち、複数のアパーチャ部材が設けられ、各々アパーチャ部材が、アパーチャ孔を有している。複数のアパーチャ部材では、孔サイズ及び孔形状の少なくとも一方が異なる。この場合、アパーチャ調整機構は、アパーチャ部材を選択及び切り換えることにより、アパーチャ形状及びアパーチャサイズを調整する。
上記の2つの構成が組み合わされてよい。例えば、アパーチャ形状の種類ごとに、1つのアパーチャ部材が用意される。各アパーチャ部材は、同一形状でサイズが異なる複数のアパーチャ孔を有する。逆に、アパーチャサイズ毎に、1つのアパーチャ部材が用意される。この場合、各アパーチャ部材は、同一サイズで形状が異なる複数のアパーチャ孔を有してよい。
アパーチャ調整機構200は、アパーチャを移動及び切り換えるために任意の構成を有してよい。図12の例に示されたXYステージを用いてアパーチャが移動及び切り換えられてよい。また、アパーチャがリニアモータにより移動及び切り換えられてよい。また、回転支持部材でアパーチャが支持されてよく、通常の回転式のモータがアパーチャを移動し、また、切り換えてよい。
以上に本実施の形態のアパーチャ調整について詳細に説明した。上記のアパーチャは、サイズ、位置及び形状の全部を変更可能であった。本発明はこのような構成に限定されない。本発明の範囲で、サイズ、位置及び形状の少なくとも1つが調整されてよい。
また、上記説明では、アパーチャ設定は随時変更可能であった。しかし、本発明の範囲で、アパーチャ設定は、調整後に固定されてもよい。この場合、まず、上述の原理に従ってアパーチャサイズ、位置、形状が調整及び決定されてよい。それから、決定されたアパーチャ仕様が固定的に用いられてよい。例えば上述の楕円形状のアパーチャが継続的に用いられてよい。
以下では、これまで説明してきた第1の態様の試料観察方法及び試料観察装置を基礎として考案された、複合的な試料観察方法及び試料観察装置について説明する。なお、これら第2の態様の試料観察方法及び試料観察装置は、上述した第1の態様の試料観察方法又は試料観察装置が備える構成や効果において共通する。よって、以下の説明においては繰り返しての説明は省略する。
図19は、本発明の第2の態様の試料観察装置の一部の構成例を示す図である。なお、この図に示された構成以外は既に、図9、図10、図12等に図示されて説明もなされているので以降の説明では省略する。この図に示すように、パターンを有する試料20を載置するステージ30を収容するメインチャンバ22には、1次ビーム系40及び2次ビーム系60を有する写像投影型観察装置の電子コラム24とSEM120と光学顕微鏡110が設けられている。また、ステージ30は、電子コラム24、SEM120、光学顕微鏡110のそれぞれで試料20上の任意の位置を観察できるように、これら3つの観察装置の間を移動可能に構成されている。
メインチャンバ22内に設けられたステージ30は、いわゆるXYステージ30aと回転ステージ30bを有しており、試料載置面であるXY面内のX方向及びY方向に試料20を移動可能であるとともに、XY面内で試料20を回転させることも可能なステージとして構成されている。
写像投影型観察装置の2次ビーム系60の上部に設けられた検出器70は、制御部100からの信号を受けて、電子検出面(XdYd面)内でのXd方向及びYd方向及び電子検出面内での回転が可能に構成されている。
このような構成の複合型の試料観察装置では、写像投影型観察装置、SEM型観察装置、及び光学顕微鏡の3種の観察装置により、同一の試料の特定の箇所を観察したりパターンの検査をすることができる。
仮に、これら3種の観察装置を個別に用いて複合的観察を行おうとすると、ある装置のステージから他の装置のステージへと観察対象試料を移す必要があるが、このような試料移動を行うと先の観察で特定された箇所を別の装置で再度特定し直す必要が生じて手間がかかるのみならず、その再現性は高々10μm程度と低いものとならざるを得ないから、信頼性という観点からも問題がある。
例えば、ミラー電子画像を解析してパターン欠陥と思われる異常部の存在を確認し、当該異常部の試料上の位置を特定したとする。そして、このパターン不良部が真の欠陥であるかどうかをSEM観察により判断しようとする場合には、写像投影型観察装置のステージからSEM型観察装置のステージへと試料を移し、既にミラー電子画像の解析で特定されているパターン不良部があるとされた試料上の位置を探してSEM観察を行うこととなる。しかし、その位置を正確に再現できなければ、誤った場所を観察してしまったり、パターン不良部が極めて小さなものである場合には当該パターンの異常を確認することさえできない場合も生じ得る。
これに対して、上述したような複合型の試料観察装置の構成とすれば、原理的には、試料上の同一の場所を異なる種類の装置で観察することができる。試料を載置させるステージの駆動制御は1μm以上の精度(1μm以下の誤差)とすることも可能であるから、サブミクロンレベルでの高精度な観察位置特定を容易かつ迅速に行うことができ、しかも当該特定の位置をSEM観察することで欠陥の真偽判定や欠陥種の判断などを容易に行うことができる。
このような高精度での観察位置の特定を行うためには、例えば、制御部100に記憶部を設けておき、光学顕微鏡、写像投影型観察装置、及びSEM型観察装置、のそれぞれの光学中心の位置関係を座標データとして記憶させ、この座標データに基づいてステージをこれら3つの光学中心間で移動可能とするようにすればよい。
例えば、ステージ30上に特定のパターンの配列を有する試料20を載置し、この特定のパターンの配列を含む領域を光学顕微鏡110で観察する。このとき、基準となる特定のパターンが光学顕微鏡の光学中心にくるようにステージ30を移動させ、そのときのステージ移動量から光学顕微鏡の光学中心位置の座標を決める。このようにして決定された光学顕微鏡の光学中心位置座標を、仮に、(xo,yo)であるとする。
次に、ステージを写像投影型観察装置の観察位置にまで移動させ、更に、上述の基準特定パターンが写像投影型観察装置の光学中心にくるようにステージ30を移動する。そして、ステージの移動量から写像投影型観察装置の光学中心位置の座標を決める。このようにして決定された写像投影型観察装置の光学中心位置座標を、仮に、(xt,yt)であるとする。
続いて、ステージをSEM型観察装置の観察位置にまで移動させ、更に、上述の基準特定パターンがSEM型観察装置の光学中心にくるようにステージ30を移動する。そして、ステージの移動量からSEM型観察装置の光学中心位置の座標を決める。このようにして決定されたSEM型観察装置の光学中心位置座標を、仮に、(xs,ys)であるとする。これらの操作を行うと、光学顕微鏡と写像投影型観察装置とSEM型観察装置の3つの観察装置それぞれの光学中心の位置関係が座標データとして求められる。なお、これらの座標データはステージの移動量から求められたものであるから、実際には、メインチャンバ22内でのステージ30の位置を示す座標データに対応している。
観察装置それぞれの光学中心の位置関係を明確にしておくと、光学顕微鏡観察で特定された試料上の場所が仮に(xo,yo)であるとすると、同一の場所を写像投影型観察装置で観察する時には試料を(xt,yt)に移動させればよく、SEM型観察装置で観察する時には試料を(xs,ys)に移動させればよい。また、このような切替処理は制御部100において瞬時に実行されるから、高精度な位置合わせを迅速に行うことができる。
本発明の第2の態様の試料観察装置には、試料上の特定のパターンの配列方向がステージの移動方向であるX方向又はY方向に一致するようにステージ上の試料位置を調整するアライメント部を設けるようにしてもよい。このようなアライメント部は、例えば、制御部100内に設けることができる。
また、このアライメント部には、試料位置調整後の試料上の特定のパターンの配列方向が写像投影型観察装置で得られたミラー電子画像のフレームのX方向又はY方向に一致するように検出器70を調整する機能をもたせることができる。
さらに、このアライメント部には、SEM型観察装置で試料位置調整後の試料上の特定のパターンを観察して得られた観察像がSEM画像の中心に位置するようにSEM型観察装置の光学系を調整する機能をもたせることができる。
次に、上述の複合型の試料観察装置を用いて観察を実行する際の手順を説明する。
図20は本発明の第2の態様の試料観察方法の基本的な概念を説明するための図で、この試料観察装方法は、写像投影型観察装置と該写像投影型観察装置とは別のSEM型観察装置と光学顕微鏡により同一のステージ上に載置された試料を観察するための複合型の試料観察方法であって、写像投影型観察装置、SEM型観察装置、及び光学顕微鏡の3つの観察装置それぞれの光学中心の位置関係を座標データとして記憶し、該座標データに基づいてステージを上記3つの光学中心間で移動させて試料上の特定の箇所を3つの観察装置で個別に観察を行うことを可能としている。
図21及び図22は、本発明の第2の態様の試料観察装置を用いて観察を実行する際の手順を例示により説明するための図で、以下に説明するように、これらの試料観察方法は、下記の各ステップを備えている。
すなわち、本発明の第2の態様の試料観察方法は、試料載置面であるXY面内の回転並びにX方向及びY方向の移動が可能なステージ上に特定のパターンの配列を有する試料を載置し、該特定のパターンの配列を含む領域を光学顕微鏡観察して該特定のパターンの配列方向が前記X方向又は前記Y方向となるように前記ステージ上の試料位置を調整するステップ(a)と、本発明の第1の態様の試料観察方法として既に説明した手法により試料の特定のパターンの配列を含む領域のミラー電子画像を得て、上記特定のパターンの配列の方向をミラー電子画像のX方向又はY方向に一致させるとともに上記特定のパターンがミラー電子画像のフレームの中央にくるようにミラー電子の検出系を調整するステップ(b)と、上記試料の特定のパターンを含む領域をSEM観察し、該試料の特定のパターンがSEM画像の所定の中央にくるようにSEM型観察装置の光学系を調整するステップ(c)と、上記ステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(c)の調整後の各ステージの位置座標を相互に対応づけ、これら3つの位置座標の何れか1つから他の2つの位置座標の少なくとも一方を算出するステップ(d)とを備えている。
なお、図21及び図22に示した態様では、上述のステップ(a)、ステップ(b)、ステップ(c)、及び、ステップ(d)が、この順に実行される。
図21を参照すると、先ず、観察対象であるパターンを有する試料をステージ30上に載置して観察をスタートする(S101)。次に、光学顕微鏡(OM)110によりステージ30上の試料20の位置を確認し(S102)、ステージ上の試料位置が適正であるか否かを判断し(S103)、必要であれば(S103:No)、回転ステージ30bにより試料位置を調整する(S104)。
図23(a)は、OM観察開始時のステージ30上の試料20を示している。この試料20には、縦横方向(X方向又はY方向)に延在するライン・アンド・スペースパターンのほかに、当該ライン・アンド・スペースパターンの延在方向と平行又は垂直な方向に、アライメント用として「+」パターンが3つ配列されている。
この状態の試料は、アライメント用の「+」パターンの配列方向が、XYステージ30aの移動方向(ここではY方向)とはθsだけずれている。このような載置状態では、他の観察装置である写像投影型観察装置及びSEM型観察装置で同一箇所を観察しようとしても位置合わせ(アライメント)が容易ではなく精度も低くなってしまう。そこで、回転ステージ30bをθsだけ反時計回りに回転させて試料上のパターンの方向をXYステージ30aの移動方向に合わせる。
図23(b)は、上記位置合わせ後のステージ30上の試料20を示しており、アライメントの精度は、例えば、1/100〜1/100000ラジアン(rad)とすることができる。
この状態で、例えば図23(b)中の3つの「+」パターンの中央のものに注目してこの「+」パターンが光学顕微鏡の光学中心に位置するようにステージ位置を調整する。そして、当該位置調整後のステージ位置から光学顕微鏡の光学中心位置の座標(xo,yo)を求める。
このような試料位置のアライメントは、パターンマッチングなどの画像処理によって行うようにしてもよい。画像処理を利用した場合のアライメント精度は、1/10〜1/100ピクセル(Px)とすることができる。また、このような画像処理は、例えば、光学顕微鏡110で得られたOM画像を画像処理装置90で処理させるようにしてもよく、当該画像処理結果に基づいて制御部100内に設けられたアライメント部によりステージの調整を行わせるようにしてもよい。
次に、写像光学系検出器70の調整を行う。具体的には、検出器70のセンサの画素配列方向を確認し(S105)、センサの画素配列方向がステージ30の移動方向(X方向又はY方向)に一致しているかどうかを判断し(S106)、必要であれば(S106:No)、検出器70のθt調整を行う(S107)。
図24は、上述の手順でアライメントが終了した後の試料上のパターンの延在乃至配列方向(図24(a))、アライメント前の検出器70のセンサの画素配列方向(図24(b))、及び、アライメント後の検出器70のセンサの画素配列方向(図24(c))の相互の関係を説明するための図である。
検出器70のセンサの電子検出面71には、p11〜pmnのm×n個の画素が設けられているとする。このとき、検出器70のアライメント前の状態では、画素の配列方向(例えば、p11〜p1m及びp11〜pm1)は、パターンの延在方向に一致しておらず、画素の配列方向はアライメント用の「+」パターンの配列方向とθtだけ傾いている(図24(b))。
このような状態は、写像光学系検出器の回転角θtは不適正と判断され(S106:No)、検出器70のθt調整を実行して、画素の配列方向をアライメント用の「+」パターンの配列方向に一致させる(図24(c))。
図25は、上記検出器70のアライメント終了後の試料上のパターンの延在乃至配列方向(図25(a))、アライメント前の検出器で得られたアライメント用「+」パターンのミラー電子画像の様子(図25(b))、及び、アライメント後の検出器で得られた上記パターンのミラー電子画像の様子(図25(c))の相互の関係を概念的に説明するための図である。
アライメント前の検出器(図24(b))で得られたミラー電子画像では、検出器の画素の配列方向がパターンの延在方向とθtだけ傾いているために、得られるパターン像及びその配列方向も当該、ステージの移動方向(ここではY方向)に対してθtだけ傾いてしまう(図25(b))。
これに対し、アライメント後の検出器(図24(c))で得られたミラー電子画像では、検出器の画素の配列方向をパターンの配列方向に一致させたため、得られるパターン像の配列方向はステージの移動方向(ここではY方向)に一致している(図25(c))。
上述のとおり、試料位置は既に、1/100〜1/100000ラジアン(rad)程度の高い精度でアライメントされている。この状態でステージをY方向に移動させ、それに同期させてパターンのミラー電子画像を取得し、当該ミラー電子画像が最も良好となる状態(例えば、コントラストが最大となる状態)に検出器の回転角θtを調整する。このような検出器のアライメントの精度は、試料位置調整と同様に、例えば、1/100〜1/100000ラジアン(rad)とすることができる。
なお、上述のアライメントには、これまでの説明のように、特別なアライメント用パターン(マークを含む)を用いてもよいが、例えば上記例の試料上に設けられているライン・アンド・スペースパターンをアライメント用に併用してもよい。
次に、上述の検出器のθt調整に続き、試料位置のアライメントで用いた「+」パターンやマークがミラー電子画像のフレームの中心にくるように、写像投影型観察装置の光学系の調整を行う。
具体的には、検出器のθt調整を終了した後に、ミラー電子画像の画像フレームの中心座標の確認を行う(S108)。ミラー電子画像は2次元の連続像であるので、画像処理により、連続像をフレームに分割することができる。例えば、1000×1000Px、2000×2000Px、或いは4000×4000Px等を1つのフレームとするようにミラー電子画像のフレーム分割を行うことができる。
図26は、上記検出器70のアライメント終了後の試料上のパターンの延在乃至配列方向(図26(a))、アライメント後の検出器で得られたアライメント用「+」パターンのミラー電子画像の様子(図26(b))、及び、画像フレームの中心座標のアライメントを実行した後のアライメント用「+」パターンのミラー電子画像の様子(図26(c))の相互の関係を概念的に説明するための図である。
図26(b)に示した例では、3つのアライメント用「+」パターンは、第1、第3、及び、第5の画像フレーム中に映し出されているが、これらのパターンの中心は画像フレームの中心からずれている。このような状態では画像フレームの中心座標は不適正と判断され(S109:No)、画像フレームのxy座標の調整が実行され(S110)、図26(c)に図示したような適正状態となるようにアライメントされる。
画像フレームの中心位置のX方向の調整は、写像投影型観察装置の光学系を微調整する等により行うことができる。この場合、1/10Px〜10Px程度の精度での調整が可能である。
また、画像フレームの中心位置のY方向の調整は、X方向の調整と同様に写像投影型観察装置の光学系を微調整する等により行うことができるが、フレーム分割の位置を変更することによっても可能である。後者の調整は画像処理装置90に入力するパラメータの変更により容易に実行できる。
このようなアライメントを行った状態で、試料位置調整で用いた3つの「+」パターンの中央のものに注目してこの「+」パターンが写像投影型観察装置の光学中心に位置するようにステージ位置を調整する。そして、当該ステージ位置から写像投影型観察装置の光学中心位置の座標(xt,yt)を求める。
これに続いて、少なくとも上記3つの「+」パターンの中央のものが含まれる領域をSEM観察し、中央の「+」パターンがSEM観察像中の概ね中心の位置にあることを確認する。つまり、当該中央の「+」パターンがSEM型観察装置の光学中心位置にあることの確認を行う(S111)。そして、このときのステージの位置からSEM型観察装置の光学中心の座標(xs,ys)を求め、既に求められている光学顕微鏡及び写像投影型観察装置の光学中心の座標とともに、相互の位置関係としての座標データとして記憶する(S112)。
なお、SEM型観察装置の光学中心の位置(xs,ys)と他の光学中心の位置(xo,yo)及び(xt,yt)との関係をより高い精度で決定する場合には、上述の3つの「+」パターンのうちの中央の「+」パターンがSEM観察像中の中心にくるようにSEM型観察装置の光学系を調整すればよい。
この場合、図22に示したように、上述のステップS111に続き、SEMの光学中心の座標と光学顕微鏡及び写像投影型観察装置の光学中心の座標との関係が所望する高い精度で求められているかどうかを判断し(S113)、不十分と判断した場合には(S113:No)、上述のSEMの光学中心調整を実行する(S114)。
このような光学系の調整は電磁レンズ(偏向器)の調整により行うことができる。偏向器として8極以上のものが用いられている場合には、1/1000〜1/100000rad程度の高い精度での偏向角度制御が可能である。
本発明の第2の態様の試料観察装置は、検査装置としての利用も可能である。例えば、上述の構成の試料観察装置に設けられている画像処理部により、ミラー電子画像に基づいて試料上のパターンの検査を行うことができる。
このような試料検査装置は、画像処理部に演算部を設け、パターン検査で判定されたパターン不良個所をSEM観察して欠陥の真偽判定を行う構成としてもよい。
また、上記演算部を用いて、真の欠陥と判定されたパターン不良個所の欠陥種の分類を行わせるようにしてもよい。
更に、上記演算部を用いて、真の欠陥と判定されたパターン不良個所の座標ファイルを、光学顕微鏡像、ミラー電子画像、及び、SEM画像の少なくともひとつの画像と対応づけて作成させるようにしてもよい。
このような態様に加え、試料クリーニング機能を有する試料観察装置とすることも可能である。
図27は、上述した本発明の第2の態様の試料観察装置に試料クリーニング機能を付加した装置の構成を概念的に説明するための図で、この装置には、試料20の表面に付着した汚染物を除去するためのクリーニング用ガスを供給するガス供給部150と、クリーニング用ガスをメインチャンバ22内へと導くガス導入部160とを備えており、流量調整部170で流量調整されたクリーニング用ガスはガス導入部160の先端に設けられたノズル180から、試料の表面に向けて射出される。
一般に、SEM観察を行うと、試料表面にはカーボンなどの汚染物が付着する。このような汚染物は本来、観察対象試料とは無関係なものであるが、このような汚染物が電子線照射等により特定の形状を有する偽欠陥となる可能性がある。そこで、図27に示した態様の試料観察装置では、メインチャンバ22内にクリーニング用ガスを導き、SEM観察を行いながら、或いは、写像投影型観察装置に設けられている電子ビーム照射系を利用して、上記汚染物の除去を可能としている。
クリーニング用ガスとしては、汚染物と反応して除去作用を奏するガス又は前記電子ビームの照射を受けて前記除去作用を奏するガスを用いることができる。
例えば、メインチャンバ22内に酸素ガスや酸素とアルゴンの混合ガス、或いはSF6等のフッ素系ガスを導入した状態でSEM観察を行う。SEM観察中に試料上には汚染物が付着するが、このような汚染物はメインチャンバ22内に導入されている上記ガスと反応して昇華性のガス(例えば、COガスやCO2ガス)などに変化し、試料表面から除去されることとなる。
このほかにも、例えば、SEM観察を行った後に写像投影型観察装置の電子ビーム照射系から面ビームを試料上に照射し、広範囲にわたってクリーニングを行うことも可能である。面ビームの試料上での照射面積が例えば200×200μm2である場合、30mm/sの速度でステージを移動させると、100×100mm2の面積範囲のクリーニングを約30分で完了することができる。
以上に本発明の実施の形態について説明した。本発明によれば、ランディングエネルギーを適切に調整することにより、試料の微細なパターンのコントラストを増大でき、したがって、微細なパターンを観察できる。
本発明は、特に、両側にエッジがあるために凹パターンではミラー電子が生じやすいというミラー電子発生現象の特性に着目している。このような特性は従来はパターン観察に活用されていなかった。凹パターンでのミラー電子発生量は、電子ビームのランディングエネルギーに依存する。そこで、凹パターンにて照射電子が効率よくミラー電子になるように、ランディングエネルギーが設定される。これにより、凹パターンでの解像度とコントラストを増大でき、微細なパターンの観察が可能になる。
本発明の技術は、ランディングエネルギーを相当に低い値に設定する。そこで、本発明の観察技術は、低ランディングエネルギー技術と呼んでよい。
本発明は、上記の低ランディングエネルギー技術を写像投影型観察装置に適用している。これにより、微細なパターンを短時間で観察することができる。
また、低ランディングエネルギーは、具体的には、ミラー電子と2次放出電子が混在する遷移領域に設定されてよい。また、ランディングエネルギーLEは、LEA≦LE≦LEB+5eVに設定されてよい。このような設定により、パターン部分でミラー電子が発生しやすくなり、画像でのパターンのコントラストを増大できる。
また、本発明では、上述にて詳細に説明したように、アパーチャのサイズ、位置及び形状が好適に調整され、これにより、画像中のパターンのコントラストを更に増大することができる。
また、本発明では、写像投影型観察装置とSEMが同一チャンバに備えられ、同一ステージを使用し、複合型の観察装置を構成する。これにより、2種類の検査を連続して行うときに、位置決めの時間が短くなり、かつ、位置決め精度が大幅に増大する。したがって、迅速かつ高精度な観察が可能になる。
さらに、本発明の第2の態様の試料観察方法及び装置では、光学顕微鏡による試料観察、ミラー電子画像による試料観察、及び、SEM画像による試料観察で得られた各画像が観察対象試料のどの位置に対応しているのかを相互に対応付けることとしたので、上記3つの観察方法のうちのある方法で特定された観察目的個所を他の観察方法で観察しようとした場合でも、上記観察目的箇所を迅速かつ正確に特定することが可能となる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明した。しかし、本発明は上述の実施の形態に限定されず、当業者が本発明の範囲内で上述の実施の形態を変形可能なことはもちろんである。