JP5661492B2 - 放射性廃棄物の固化方法 - Google Patents

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Description

本発明は、原子力発電所等の施設で発生する放射性廃棄物の固化方法に関する。
放射性廃棄物をドラム缶等の容器の中に固める放射性廃棄物の固化材として、セメント、アスファルト、プラスチック、及び、ガラスが用いられている。このうち、セメントと放射性廃棄物とを混合して容器の中に固める方法は、原子力施設内での製造が比較的容易なことから、多くの原子力施設で標準的な固化法として用いられている。
しかしながら、セメント固化法では、セメントに水を添加して水和反応により水和物を生成して硬化する反応を利用するため、放射性廃棄物の放射能濃度が高くなると、水和物に不可分に含まれてる水分及び添加した水分が放射線分解されて水素が発生する。そして、発生した水素が容器内に充満して爆発限界濃度(空気中では4%)を超えると、爆発を起こす虞がある。このため、セメント固化法では、セメントと混合する放射性廃棄物の濃度あるいは量を制限して、水素の発生量を抑制する必要がある。つまり、放射能濃度の高い放射性廃棄物をセメント固化する場合には、1個の容器に収納することができる放射性廃棄物の量が制限され、結果として使用する容器の数が増え、放射性廃棄物の輸送費用、処分費用が増大するという問題がある。
この問題を解決する方法として、水分を含まないガラスを固化材とするガラス固化法を適用することが考えられる。しかしながら、ガラス固化は1200℃以上に加熱した溶融ガラスに放射性廃棄物を混合して容器の中に固める高度な技術を要する固化法であり、セメント固化法に比べて汎用性、経済性に劣る。
ここで、特許文献1には、赤泥と灰とを混合した粉末を、ジオポリマーバインダーにより固化する赤泥の固化方法が開示されている。ジオポリマーバインダーは、水和反応を利用しないため、水和物のように不可分に含まれる水分がない。そこで、放射性廃棄物をジオポリマーバインダーで固化することが考えられる。
特開2005−75716号公報
しかしながら、特許文献1のジオポリマーバインダーを用いた固化方法では、水和物のように不可分に含まれる水分がないものの、製造時に使用する水分が残留する。そのため、放射性廃棄物をジオポリマーバインダーで固化する場合、セメントの場合と同様に水分が放射線分解されて水素が発生する問題がある。
本発明の目的は、混合物からの水素発生を抑制することが可能な放射性廃棄物の固化方法を提供することである。
本発明における放射性廃棄物の固化方法は、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合する工程と、前記ジオポリマーバインダーと前記放射性廃棄物との混合物を100〜400℃で加熱することで、前記混合物から水分を除去しながら前記混合物を固化する工程と、を有し、前記混合物の昇温速度を、室温から150℃未満で400℃/分以下、150℃以上で100℃/分以下にすることを特徴とする。
上記の構成によれば、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合した混合物には、余剰な水分が含まれている。ここで、ジオポリマーとは、ケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)をモノマー源とする無機ポリマーの1つである。ジオポリマーバインダーで固化するだけなら、必要な強度さえ得ることができれば、余剰に含まれている水分を考慮する必要はない。ところが、放射性廃棄物を固化する場合、混合物に余剰な水分が含まれていると、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生する。そして、発生した水素が固化物を収納する容器や施設に充満すると爆発を起こす虞がある。そこで、余剰な水分を含んでいる混合物を加熱することで、混合物から水分を除去する。これにより、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生することを抑制することができる。
また、加熱により、混合物に含まれる水分は水蒸気になるので、加熱中は混合物の内部における水蒸気圧が上昇していく。混合物を400℃よりも高い温度で加熱すると、混合物の内部における水蒸気圧の増加速度が、混合物から外部に水蒸気が放散される速度を上回ることで、混合物の強度が水蒸気圧の上昇に耐えられなくなり、混合物が爆裂する。その点、混合物を100〜400℃で加熱すると、混合物の内部における水蒸気圧の増加速度が、混合物から外部に水蒸気が放散される速度を下回るので、混合物は水蒸気圧の上昇に耐えながら水蒸気を外部に放散させる。これにより、混合物が爆裂するのを抑制することができる。
本発明の放射性廃棄物の固化方法によると、余剰な水分を含んでいる混合物を加熱することで、混合物から水分を除去する。これにより、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生することを抑制することができる。
試料1の温度変化を示すグラフである。 試料2の温度変化を示すグラフである。 試料3の温度変化を示すグラフである。 試料4の温度変化を示すグラフである。 試料5の温度変化を示すグラフである。 試料6の温度変化を示すグラフである。 試料7の温度変化を示すグラフである。 試料8の温度変化を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(放射性廃棄物の固化方法)
本発明の実施形態による放射性廃棄物の固化方法は、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合する工程を有している。本実施形態では、放射性廃棄物を固化する固化材として、ジオポリマーバインダーを用いている。ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とは常温で好適に混合する。ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを常温で混合すると、ソフトクリーム状の混合物となる。
代表的な放射性廃棄物は、酸化鉄(Fe)を主とする金属酸化物の粒子(クラッド)である。しかし、放射性廃棄物は、これに限定されず、イオン交換樹脂の熱分解処理残渣、放射化金属の切粉などの粉状あるいは粒状のものや、板、管などの塊状のもの、液状のもの等であってもよい。
また、ジオポリマーバインダーは、ケイ酸ナトリウム(NaSiO等)と、ケイ酸ナトリウムを溶いて水ガラス(ケイ酸ナトリウムの濃水溶液)にする水(HO)と、Si同士を化学結合させるバインダーとなるアルミナ(Al)と、アルミナに含まれるアルミニウムを水ガラスに溶出させて反応を促進させる反応促進剤としての水酸化ナトリウム(NaOH)と、を含んでいる。ジオポリマーバインダーの組成については後述する。
Alに含まれるアルミニウムは、水ガラス中に溶出してケイ酸モノマー(SiO)を縮重合する。これにより、Si−O−Al結合が生じて、無機ポリマーであるジオポリマーが生成される。具体的には、水ガラスの一部は加水分解してケイ酸(メタケイ酸(HSiO)等)とNaOHになっている。水ガラスの加水分解により生じたNaOHや、水ガラスに添加されたNaOHから生じた水酸化物イオン(OH)は、Al(アルミナ)を水和させて水酸化アルミニウム(Al(OH))などに変え、さらにアルミン酸まで可溶化させる。このアルミン酸とケイ酸とから水(HO)が取り外されることで、Si−O−Al結合が生じて、ジオポリマーが生成される。このジオポリマーが、放射性廃棄物を固化するバインダーとなる。
ここで、ポリマーとは、複数のモノマー(単量体)が重合する(結合して鎖状や網状になる)ことによってできた化合物のことである。また、縮重合とは、複数の化合物が、互いの分子内から水(HO)等の小分子を取り外しながら結合(縮合)し、それらが連鎖的につながってポリマーを生成することである。水ガラスはジオポリマーのモノマー源である。
また、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法は、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物との混合物を100〜400℃で加熱することで、混合物から水分を除去しながら混合物を固化する工程を有している。ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物との混合物には余剰な水分が含まれている。ジオポリマーバインダーで固化するだけなら、必要な強度さえ得ることができれば、余剰に含まれている水分を考慮する必要はない。ところが、放射性廃棄物を固化する場合、混合物に余剰な水分が含まれていると、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生する。そして、発生した水素が固化物を収納する容器や施設に充満して爆発限界濃度を超えると、爆発を起こす虞がある。そこで、余剰な水分を含んでいる混合物を加熱することで、混合物から水分を除去する。これにより、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生することを抑制することができる。
ここで、混合物の加熱は、混合物に流動性がある段階で行われる。即ち、混合物はその表面から内部に向かって固化していくので、混合物の表面が十分に固化する前に混合物の加熱を行う。それは、混合物の表面が十分に固化した状態で加熱を行うと、混合物の内部に閉じ込められた水蒸気が外部に放散できなくなり、水蒸気圧の上昇に耐えられなくなった混合物が爆裂するからである。
また、混合物は100℃以上400℃以下で加熱される。混合物を400℃よりも高い温度で加熱すると、混合物の内部における水蒸気圧の増加速度が、混合物から外部に水蒸気が放散される速度を上回ることで、混合物の強度が水蒸気圧の上昇に耐えられなくなり、混合物が爆裂する。その点、混合物を100〜400℃、好ましくは100〜300℃で加熱すると、混合物の内部における水蒸気圧の増加速度が、混合物から外部に水蒸気が放散される速度を下回るので、混合物は水蒸気圧の上昇に耐えながら水蒸気を外部に放散させる。これにより、混合物が爆裂するのを抑制することができる。
なお、混合物の固化は、全て加熱により行ってもよいし、常温で養生させてある程度固化させた後に加熱により完全に固化させてもよい。また、加熱によりある程度固化させた後に自然乾燥等により完全に固化させてもよい。混合物は固化して固化体となる。これにより、放射性廃棄物はジオポリマーバインダーの中に封じ込められることとなる。
(ジオポリマーバインダーの組成)
次に、ジオポリマーバインダーの組成について説明する。ジオポリマーバインダーは、組成が重量%で、HO:30〜60%、SiO:15〜35%、NaO:10〜30%、Al:5〜15%であり、不可分の不純物を含有している。なお、原料であるクラッドとジオポリマーとを混合する際にHOを添加し、最終的なHO含有量を20〜60wt%とする。
ジオポリマーバインダーの主要成分であるHO、SiO、NaO、Al、および、不可分の不純物の許容範囲を上記のように限定した理由は、以下のとおりである。
Oは、ジオポリマーバインダーを放射性廃棄物と混合する際に、十分な流動性を確保するために必要な成分である。即ち、HOは、ケイ酸ナトリウムを溶いて水ガラスにするとともに、この水ガラスにアルミナや放射性廃棄物を懸濁させるのに必要な成分である。また、HOは、ジオポリマーが生成される際の縮重合で生成される成分である。HOの量が不足すると、原料であるクラッドを懸濁させる際に流動性が低下して不均一な混合になる。したがって、上記のHOの含有量に加えて、クラッド混合時にHOを追加してもよい。この場合、流動性を確保するために、最終的なHOの量が20〜60%になるまで、HOを追加してもよい。一方、HOが過剰になると、加熱による強制乾燥で水分を除去する際に乾燥時間が長くなる。これらを考慮して、ジオポリマーバインダーの組成としてのHOは30〜60wt%にして、クラッド混合時のHO含有量としては20〜60wt%としている。
また、SiOは、Si−O−Al結合によりジオポリマーを形成し、固化体となるための基本成分である。そこで、SiOに関しては、HO以外の成分全体の大半となる量として15〜35wt%としている。
また、NaOはSiOを水溶性とする化合物であり、ケイ酸ナトリウムの濃水溶液である水ガラス(NaO・nSiO、n=2〜4)としてSiOと共存する。そこで、NaOに関しては、SiOの比率を勘案して、10〜30wt%としている。
また、Al(アルミナ)は、Si−O−Al結合によりSi同士を化学結合させるバインダーとなる成分である。そこで、Alに関しては、5〜15wt%としている。
(固化実験)
次に、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法を用いて放射性廃棄物を固化した固化実験の結果について説明する。
代表的な放射性廃棄物である、冷却水に含まれるクラッド(Fe等の炉内構造物の酸化生成物)を、非放射性のFeの粉末で模擬し、これをジオポリマーバインダーからなる組成の異なる複数種類の固化材A〜Dでそれぞれ固化した。使用した固化材A〜Dを表1に示す。数値の単位はwt%である。
固化材Aでは、アルカリの含有量を低めに設定したが、その他の固化材B,C,Dは標準的な組成とした。これら固化材A〜Dに模擬廃棄物を混合して固化体A〜Dとした。固化体A〜Dにおける固化材A〜Dと模擬廃棄物との混合比率を表2に示す。数値の単位はg(グラム)であり、括弧内の数値の単位は%である。
固化体Aでは、模擬廃棄物の割合を10%と少なめにした。一方、固化体Dでは、模擬廃棄物の割合を約80%と多めにした。固化体B,Cでは、模擬廃棄物の割合を標準的な混合である約50%とした。固化体A〜Dの製造条件を表3に示す。
固化体Aおよび固化体Dは、同じ条件で2回ずつ実験した。表中の(1)、(2)は、1回目、2回目をそれぞれ表わしている。150℃の加熱による1次乾燥は、固化材と模擬廃棄物とを混合させてから、すぐに行った。固化体A,B,Cは、乾燥前に加圧成形せずに容器に入れて乾燥させ、固化体Dは、乾燥前に加圧成形して容器に入れずに乾燥させた。乾燥前の加圧成形は、模擬廃棄物の混合量が多く(水分が相対的に少なく)、混合物が粘土状である場合に、混合物の体積を小さくした状態で固化させるのに適している。また、固化体B,C,Dでは600℃の加熱による2次乾燥を行った。実験結果を表4に示す。
混合物からの水分の除去量は、混合物の重量変化から求めている。固化体A〜Dのいずれにおいても、1次乾燥後の含水率が3%以下になり、十分に水分を除去できていることがわかった。また、固化体B,C,Dにおいては600℃で2次乾燥を行ったが、水分の除去は150℃の1次乾燥で十分に達成されることがわかった。また、圧縮強度の測定結果から、固化体Dのように、模擬廃棄物を約80%混合しても、固化体に一定の強度を持たせることができることがわかった。セメント固化では放射性廃棄物を30%程度しか混合できないため、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法の有用性が実証された。
また、廃棄物体積増加比の測定結果から、固化体A,Bにおいては、固化する前の模擬廃棄物の体積よりも体積が増加したが、固化体Dにおいては、固化する前の模擬廃棄物の体積よりも体積が減少した。これにより、減容効果があることがわかった。
(固化試験)
次に、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法を用いて放射性廃棄物を固化する過程において、ジオポリマーバインダーと模擬廃棄物との混合物が爆裂する条件を調査した固化試験の結果について説明する。
この試験には、放射性廃棄物を模擬した非放射性のFeの粉末とジオポリマーバインダーとを混合した混合物Eを使用した。混合物Eの配合重量および配合比を表5に示す。
混合物Eは、ジオポリマーバインダーと模擬廃棄物とを混合し、この混合物を円筒状の試料容器に充填して油圧プレスで2トンの加圧を行った後に、試料容器から抜き出すことで調製した。混合物Eの総重量は200gである。
ここで、混合物の爆裂現象は、水分蒸発に伴う内部圧の上昇により起こると考えられる。そこで、混合物Eからなる試料を8つ用意し、水分の蒸発に影響の大きい加熱温度、昇温速度、および、養生条件をそれぞれ変化させて試験を行った。試験は、試料1〜8を室温で養生した後に、試料1〜8に試料内温度計(熱電対)を挿入して加熱炉(マイクロ波加熱器)で加熱し、加熱中の試料1〜8の温度を測定することで行った。
なお、予備試験として、マイクロ波加熱器での加熱中に混合物の温度を計測した結果、混合物の温度は最高で200℃を超えた。そこで、150℃以上の温度で試験を行った。また、昇温速度を速める(急速昇温する)ために、予め設定温度に保持した加熱炉に試料を挿入する方法を用いた。
また、混合物を室温で十分に養生すると、混合物の表面が十分に固化してしまい、この状態で加熱を行うと、混合物の内部に閉じ込められた水蒸気が外部に放散できなくなり、水蒸気圧の上昇に耐えられなくなった混合物が爆裂する。そこで、養生日数を1〜5日で異ならせて、養生による影響を調べた。
試料の試験条件、爆裂の有無、および、昇温速度を表6に示す。
試験の結果、試料6〜8は爆裂したが、試料1〜5は爆裂しなかった。加熱により、試料1〜8に含まれる水分は水蒸気になるので、加熱中は試料内部の水蒸気圧が上昇していく。爆裂した試料6〜8については、試料内部の水蒸気圧の増加速度が、試料外部へ水蒸気が放散される速度を上回ったために、試料強度が水蒸気圧の上昇に耐えられなくなり、爆裂したものと考えられる。
なお、爆裂しなかった試料1〜5の固化前後における重量変化を測定したところ、試料1では10.5%、試料2では10.6%、試料3では10.2%、試料4では11.2%、試料5では11.3%、重量が減少した。
試料1〜8の加熱中の温度変化を図1〜図8に示す。図6〜図8に示すように、爆裂した試料6〜8は、爆裂した時点で温度変化の曲線が乱れている。これは、爆裂した時に試料内温度計(熱電対)が高温の雰囲気にさらされたためである。
試料6は、330℃付近で爆裂した。このことから、爆裂防止の観点から、混合物を100℃以上400℃以下、好ましくは100以上300℃以下で加熱するのが好ましいといえる。
また、爆裂しなかった試料1〜5と、爆裂した試料6〜8とで、室温から約150℃までの昇温速度、および、約150℃から約300℃までの昇温速度を比較すると、爆裂した試料6〜8は、約150℃から約300℃までの昇温速度が約100℃/分以上と大きいことがわかった。
また、試料5は、室温から約150℃までの昇温速度が、約300℃/分であっても爆裂しなかった。これは、水蒸気圧は高温の方が高いので、室温から約150℃までの水蒸気圧増加速度よりも、約150℃から約300℃までの水蒸気圧増加速度の方が影響が大きいためと考えられる。
したがって、150℃から300℃までの昇温速度が100℃/分以上の場合には、試料が爆裂すると考えられる。爆裂防止の観点から、昇温速度は、室温から150℃未満で400℃/分以下、150℃以上で100℃/分以下が好ましいといえる。
(効果)
以上のように、ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合した混合物には、余剰な水分が含まれている。ジオポリマーバインダーで固化するだけなら、必要な強度さえ得ることができれば、余剰に含まれている水分を考慮する必要はない。ところが、放射性廃棄物を固化する場合、混合物に余剰な水分が含まれていると、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生する。そして、発生した水素が固化物を収納する容器や施設に充満して爆発限界濃度を超えると、爆発を起こす虞がある。そこで、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法においては、余剰な水分を含んでいる混合物を加熱することで、混合物から水分を除去する。これにより、放射性廃棄物による水分の放射線分解で水素が発生することを抑制することができる。
また、加熱により、混合物に含まれる水分は水蒸気になるので、加熱中は混合物の内部における水蒸気圧が上昇していく。混合物を400℃よりも高い温度で加熱すると、混合物の内部における水蒸気圧の増加速度が、混合物から外部に水蒸気が放散される速度を上回ることで、混合物の強度が水蒸気圧の上昇に耐えられなくなり、混合物が爆裂する。そこで、本実施形態の放射性廃棄物の固化方法においては、混合物を100〜400℃、好ましくは100〜300℃で加熱する。混合物を100〜400℃で加熱すると、混合物の内部における水蒸気圧の増加速度が、混合物から外部に水蒸気が放散される速度を下回るので、混合物は水蒸気圧の上昇に耐えながら水蒸気を外部に放散させる。これにより、混合物が爆裂するのを抑制することができる。
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
例えば、固化実験において固化体B,C,Dを600℃で2次乾燥しているが、2次乾燥の効果は小さいので、2次乾燥を省略してもよい。
また、固化実験においては、混合後すぐに加熱を行っているが、混合物に流動性がある段階で加熱を行えばよい。よって、水分が多い場合には、数日養生して自然乾燥により一定量の水分を除去した後に加熱を行ってもよい。

Claims (1)

  1. ジオポリマーバインダーと放射性廃棄物とを混合する工程と、
    前記ジオポリマーバインダーと前記放射性廃棄物との混合物を100〜400℃で加熱することで、前記混合物から水分を除去しながら前記混合物を固化する工程と、
    を有し、
    前記混合物の昇温速度を、室温から150℃未満で400℃/分以下、150℃以上で100℃/分以下にすることを特徴とする放射性廃棄物の固化方法。
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