JP5659542B2 - 絶縁基板及びパワーモジュール - Google Patents
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Description
ここで、前述の絶縁基板の絶縁層における放熱特性は、以下に示す熱抵抗Rthによって表現される。この式から、面積が大きいほど熱抵抗が低くなり、熱の放散が促進されることになる。
Rth=(1/k)・(t/S)
Rth:熱抵抗、k:熱伝導率、t:絶縁層の厚さ、S:絶縁層の面積
しかしながら、Cu−Mo合金の熱伝導率は170W/m・Kと低くなるため、熱を十分に拡げることができず、半導体素子で発生した熱を効率良く放散することができなくなってしまう。
また、金属基複合板が、一方向における熱伝導率が他方向における熱伝導率よりも高くなるように異方性を有し、金属板が熱伝導率について等方性を有していることから、金属基複合板の部分では、熱伝導率が高く設定された方向に向けて熱が優先的に拡げられ、金属板の部分では、熱が全方向に向けて拡げられることになり、熱の放散を効率良く行うことが可能となる。なお、金属基複合板と金属板のそれぞれの厚さを調整することにより、熱の放散方向を調整することが可能となる。
また、前記金属基複合板の一方の面に、前記金属基複合材料において炭素質部材中に充填された金属からなる金属スキン層が形成されているので、はんだ層を介して半導体素子を確実に搭載することができる。また、この金属スキン層にNiめっき等を行うことによって、はんだ材との密着性を向上させることも可能である。
この場合、基板本体のうち半導体素子が搭載される一方の面側に配設された前記金属基複合板の熱膨張係数が8×10−6/℃以下とされているので、半導体素子を構成するSi等の熱膨張係数に近似することになり、はんだクラックの発生を確実に抑制することができ、この絶縁基板の信頼性を大幅に向上させることができる。
この場合、高熱伝導率方向の熱伝導率が400W/m・K以上とされていることから、熱を高熱伝導率方向に向けて優先的に放散することが可能となる。また、高熱伝導率方向に直交する方向の熱伝導率が200W/m・K以上とされているので、高熱伝導率方向以外においても熱の伝達が行われることになり、熱を確実に放散させることができる。
この場合、前記金属基複合板における高熱伝導率方向が前記基板本体の厚さ方向を向くように構成されていることから、積層された金属板へと熱が優先的に伝達されることになり、この金属板において熱を全方向に拡げることが可能となる。よって、半導体素子から発生した熱を効率的に放散させることができる。
この場合、基板本体全体の厚さ方向の熱伝導率が400〜550W/m・Kの範囲に設定され、基板本体の半導体素子側の熱膨張係数が6〜8×10−6/℃となり、半導体素子との熱膨張係数の差に起因するはんだ層のクラック発生を抑制することができるとともに、効率良く熱を放散することができる。
この場合、アルミニウムまたはアルミニウム合金の融点が比較的低いことから、炭素質部材中にこれらアルミニウムまたはアルミニウム合金を比較的容易に充填することができる。また、基板本体全体の厚さ方向の熱伝導率が400〜450W/m・K、基板本体の半導体素子側の熱膨張係数が6〜8×10−6/℃となり、半導体素子との熱膨張係数の差に起因するはんだ層のクラック発生を抑制することができるとともに、効率良く熱を放散することができる。
この場合、前記基板本体の一方の面側に、前記金属基複合材料において炭素質部材中に充填された金属からなる金属スキン層が形成されているので、はんだ層を介して半導体素子を確実に搭載することができる。また、この金属スキン層にNiめっき等を行うことによって、はんだ材との密着性を向上させることも可能である。
この構成のパワーモジュールによれば、半導体素子から発生する熱を基板本体において拡げて効率的に放散することが可能となる。また、冷熱サイクル負荷時においても、はんだ層にクラックが発生することがない。これにより、パワーモジュールの信頼性を大幅に向上させることができる。
このパワーモジュール1は、絶縁基板10と、この絶縁基板10の一方の面(図1において上面)にはんだ層2を介して接合された半導体チップ3と、絶縁基板10の他方の面(図1において下面)側に配設された冷却器30と、を備えている。ここで、はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。
また、この基板本体20の一方の面には、炭素質部材中に充填された金属からなる金属スキン層25が形成されている。この金属スキン層25の上には、Niめっき膜5が形成されており、このNiめっき膜5の上にはんだ層2を介して半導体チップ3が搭載される構成とされている。
また、前述の金属スキン層25は、炭素質部材中に充填された純度99%以上のアルミニウム(純アルミニウム)で構成されている。
また、金属基複合板21における高熱伝導率方向の熱伝導率が400W/m・K以上、具体的には、400〜450W/m・Kとされており、この高熱伝導率方向に直交する方向の熱伝導率が200W/m・K以上、具体的には、200〜250W/m・Kとされている。
さらに、金属基複合板21は、高熱伝導率方向が厚さ方向(金属板22との積層方向)を向くように配置されている。
ここで、本実施形態では、金属基複合板21の他方の面側にも、炭素質部材中に充填された純度99%以上のアルミニウム(純アルミニウム)からなる金属スキン層26が形成されており、この金属スキン層26と金属板22とが、ろう材にて接合された構成とされている。
このように構成された基板本体20においては、基板本体20全体の厚さ方向の熱伝導率が300〜350W/m・K、基板本体20の半導体チップ3側の熱膨張係数が6〜8×10−6/℃となる。
まず、アルミニウム−グラファイト複合材料からなる金属基複合板21を形成する(金属基複合板形成工程S1)。この金属基複合板形成工程S1について図4を参照して説明する。まず、気孔率10〜30体積%の黒鉛板41を準備する。このとき、黒鉛板41(炭素質部材)における押出方向が厚さ方向を向くものとする。この黒鉛板41の両面にそれぞれ気孔率5体積%以下の黒鉛からなる挟持板42,42を配設し、この挟持板42,42と黒鉛板41とを、ステンレス製の押圧板43,43によって挟持する。これを、例えば100〜200MPaで加圧した状態で750〜850℃に加熱し、純度99%以上の溶融アルミニウムを黒鉛板41に含浸させ、これを冷却凝固させ、アルミニウム−グラファイト複合材料からなる金属基複合板21が製出される。このとき、溶融アルミニウムの一部が、黒鉛板41(金属基複合板21)の表面に滲み出してアルミニウム層44、44が形成される。このアルミニウム層44、44に切削加工を施して厚さを調整することにより、金属スキン層25、26が形成されることになる。
このようにして、本実施形態である絶縁基板10が製出される。
また、基板本体20の一方の面側に形成された金属スキン層25の表面にNiめっき膜5を形成する(Niめっき工程S5)。このNiめっき工程S5においては、電解めっき、または、無電解めっきのいずれの方法も用いることができる。
これにより、はんだ層2を介して半導体チップ3が絶縁基板10上に接合され、本実施形態であるパワーモジュール1が製出されることになる。
この第2の実施形態であるパワーモジュール101は、図5に示すように、絶縁基板110と、この絶縁基板110の一方の面(図5において上面)にはんだ層102を介して接合された半導体チップ103と、絶縁基板110の他方の面(図5において下面)側に配設された冷却器130と、を備えている。ここで、はんだ層102は、例えばSn−Ag系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材とされている。
なお、絶縁層115を構成する樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂材料や、これらの樹脂材料に無機フィラーを混合したもの等が挙げられる。
また、この基板本体120の一方の面には、炭素質部材中に充填された金属からなる金属スキン層125が形成されている。
また、前述の金属スキン層125は、炭素質部材中に充填された純度99%以上の銅で構成されている。
ここで、金属基複合板121における高熱伝導率方向の熱伝導率が500W/m・K以上、具体的には500〜550W/m・Kとされており、この高熱伝導率方向に直交する方向の熱伝導率が300W/m・K以上、具体的には300〜350W/m・Kとされている。
また、この金属基複合板121の熱膨張係数は、8×10−6/℃以下に設定されている。
ここで、本実施形態では、金属基複合板121の他方の面側にも、炭素質部材中に充填された純度99%以上の銅からなる金属スキン層126が形成されており、この金属スキン層126と金属板122とが、ろう材にて接合された構成とされている。また、金属基複合板121は、高熱伝導率方向が厚さ方向(金属板122との積層方向)を向くように配置されている。
このように構成された基板本体120においては、基板本体120全体の厚さ方向の熱伝導率が400〜450W/m・Kの範囲に設定され、基板本体120の半導体チップ103側の熱膨張係数が6〜8×10−6/℃となる。
まず、銅−グラファイト複合材料からなる金属基複合板121を形成する(金属基複合板形成工程S11)。この金属基複合板形成工程S11では、第1の実施形態と同様に、黒鉛板を加圧した状態で溶融した銅を含浸させることによって形成される。なお、溶融した銅が黒鉛板の表面に滲み出すことによって銅層が形成され、この銅層を切削加工して、その厚さを調整することにより、金属スキン層125、126が形成される。
このようにして、本実施形態である絶縁基板110が製出される。
これにより、はんだ層102を介して半導体チップ103が絶縁基板110上に接合され、本実施形態であるパワーモジュール101が製出されることになる。
押し出し法で製造した炭素質部材を押し出し方向が板厚方向となるように切断し、グラファイト材を準備した。これらをモールド内にセットし、純アルミニウムまたは純銅の溶湯を注いだ後、高圧をかけることにより、金属基複合板(アルミニウム−グラファイト複合材または銅―グラファイト複合材)を製造した。
また、銅−グラファイト複合材の熱伝導率を、レーザーフラッシュ法で板厚方向に平行方向と垂直方向とで測定した。その結果、板厚方向で530W/m・K、垂直方向で342W/m・Kであった。また、面内に平行方向にRT〜200℃までの平均熱膨張係数を測定した結果、7.5×10−6/℃であった。
この金属基複合板(アルミニウム−グラファイト複合材または銅−グラファイト複合材)を用いて、平均熱膨張係数、熱抵抗、はんだクラックについて評価した。
次に、熱抵抗Rthは、50mm角の金属基複合板/金属板(複合基板)に、Sn−Ag−Cuからなるはんだ材を介して10mm角のシリコンチップを接合し、このシリコンチップを発熱させて温度測定を行い、複合基板上面と金属板下面の熱抵抗を以下の式で算出した。
Rth=(Tj−Ta)/Q
Tj:シリコンチップ温度、Ta:複合基板下面の温度、Q(W):半導体チップ発熱量
評価結果を表1に示す。
例えば、金属基複合材料を、炭素質部材中にアルミニウムまたは銅を充填したアルミ二ウム−グラファイト複合材料または銅−グラファイト複合材料として説明したが、これに限定されることはなく、他のアルミニウム合金や銅合金、他の金属を充填したものであってもよい。
さらに、金属基複合板を1枚、金属板を1枚、積層して基板本体を構成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、複数の金属基複合板、金属板を積層して基板本体を構成してもよい。
さらに、金属基複合板の両面に金属スキン層を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、金属スキン層を片面のみに形成してもよいし、両面ともに金属スキン層を形成しなくてもよい。
さらに、絶縁層を構成する材料は、例示された樹脂材料等に限定されることはない。また、絶縁層の形成方法についても、本実施形態に限定されることはない。
2、102 はんだ層
3、103 半導体チップ(半導体素子)
10、110 絶縁基板
15、115 絶縁層
20、120 基板本体
21、121 金属基複合板
22、122 金属板
25、125 金属スキン層
30、130 冷却器
Claims (6)
- 板状をなす基板本体の一方の面が、半導体素子が搭載される搭載面とされ、前記基板本体の他方の面側に絶縁層が形成されてなる絶縁基板であって、
前記基板本体は、炭素質部材中に金属が充填された金属基複合材料からなる金属基複合板を有し、この金属基複合板の他方の面側に金属板が積層された構造とされており、
前記金属基複合板の一方の面及び他方の面には、前記金属基複合材料において炭素質部材中に充填された金属を前記金属基複合板の表面に滲み出させることによって金属スキン層が形成されており、
前記金属基複合板の一方の面に形成された前記金属スキン層に前記半導体素子が搭載されるとともに、前記金属基複合板の他方の面に形成された前記金属スキン層と前記金属板とが接合されており、
前記金属基複合板は、一方向における熱伝導率が他方向における熱伝導率よりも高くなるように異方性を有しており、前記金属板は、熱伝導率について等方性を有していることを特徴とする絶縁基板。 - 前記金属基複合板の熱膨張係数が8×10−6/℃以下とされていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁基板。
- 前記金属基複合板における高熱伝導率方向の熱伝導率が400W/m・K以上とされており、この高熱伝導率方向に直交する方向の熱伝導率が200W/m・K以上とされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁基板。
- 前記金属基複合板を構成する金属基複合材料において充填される金属材料が銅または銅合金とされ、前記金属板が銅または銅合金で構成されており、
前記金属基複合板の厚さt1と前記金属板の厚さt2との比t1/t2が、1≦t1/t2≦2の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絶縁基板。 - 前記金属基複合板を構成する金属基複合材料において充填される金属材料がアルミニウムまたはアルミニウム合金とされ、前記金属板がアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成されており、
前記金属基複合板の厚さt1と前記金属板の厚さt2との比t1/t2が、1≦t1/t2≦2の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絶縁基板。 - 請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の絶縁基板と、前記絶縁基板の前記基板本体の一方の面上に搭載される半導体素子と、を備えたことを特徴とするパワーモジュール。
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