本発明のゴルフボールは、センターと前記センターを被覆する一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するカバーとを有するゴルフボールであって、前記中間層の少なくとも一つが、樹脂成分として、(A)(a−1)重合脂肪酸、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸、(a−3)ポリアミン成分とを必須成分とするポリアミド共重合体と、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種とを含有する中間層用組成物から形成されていることを特徴とする。
まず、本発明で使用する「(A)(a−1)重合脂肪酸と、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸と、(a−3)ポリアミン成分とを必須成分とするポリアミド共重合体」について説明する。前記ポリアミド共重合体は、分子鎖に繰り返し単位としてアミド結合を有する高分子であって、(a−1)重合脂肪酸と、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸と、(a−3)ポリアミン成分とを必須成分として共重合して得られるものであれば、特に限定されない。
前記ポリアミド共重合体には、ポリアミド樹脂とポリアミドエラストマーが含まれる。ポリアミド樹脂は、(a−1)重合脂肪酸と、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸と、(a−3)ポリアミン成分を必須成分として共重合して得られるポリアミド成分のみからなるのに対し、ポリアミドエラストマーは、ポリアミド成分からなるハードセグメント部分とポリエーテルエステル成分またはポリエーテル成分からなるソフトセグメント部分とを有する。本発明で使用し得るポリアミドエラストマーは、例えば、(a−1)重合脂肪酸と、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸と、(a−3)ポリアミン成分とを必須成分とするポリアミド成分と(a−4)ポリオキシアルキレングリコールおよび(a−5)ジカルボン酸からなるポリエーテルエステル成分との反応で得られるポリエーテルエステルアミド、および、(a−1)重合脂肪酸と、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸と、(a−3)ポリアミン成分とを必須成分とするポリアミド成分と(a−4)ポリオキシアルキレングリコールの両末端をアミノ化またはカルボキシル化したものとジカルボン酸またはジアミンからなるポリエーテルとの反応で得られるポリエーテルアミドを挙げることができる。
前記(a−1)重合脂肪酸としては、炭素数が20〜48の重合脂肪酸が好ましく、より好ましくは、不飽和脂肪酸、例えば炭素数が10〜24の二重結合または三重結合を一個以上有する一塩基性脂肪酸を重合して得た重合脂肪酸が用いられる。具体例としては、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の二量体が挙げられる。
市販されている重合脂肪酸は、通常二量体化脂肪酸を主成分とし、他に原料の脂肪酸や三量体化脂肪酸を含有するが、二量体化脂肪酸含量が70質量%以上、好ましくは95質量%以上であり、かつ水素添加して不飽和度を下げたものが望ましい。例えば、プリポール1009、プリポール1004(以上ユニケマ社製)やエンポール1010(ヘンケル社製)等の市販品が好ましい。むろんこれらの混合物も用いられる。
重合脂肪酸とともに用いられる多塩基酸成分としては、重合性、重合脂肪酸との共重合性及び得られるポリアミド共重合体の物性などの点から、(a−2)アゼライン酸、セバシン酸、または、この両者の混合物が挙げられる。
(a−3)ポリアミン成分としては、炭素数が2〜20のジアミンが好ましく、具体的には、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4’−アミノシクロヘキシル)メタン、メタキシリレンジアミンのようなジアミン類が挙げられる。
前記ポリアミドエラストマーを構成する(a−4)ポリオキシアルキレングリコール成分としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロックまたはランダム共重合体、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとのブロックまたはランダム共重合体、またはこれらの共重合体の両末端をアミノ化またはカルボキシル化したものが挙げられる。これらのポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量は、200〜3000の範囲内であることが好ましい。
前記ポリアミドエラストマーを構成する(a−5)ジカルボン酸成分としては、炭素数が6〜20のジカルボン酸が好ましく、具体的にはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。特に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸が重合性及びポリアミドエラストマーの物性の点から好ましい。
本発明で使用するポリアミド共重合体の製造方法としては、(a−1)重合脂肪酸、(a−2)アゼライン酸及び/またはセバシン酸、(a−3)ポリアミン成分の三者を、(a−2)成分に対する(a−1)成分の質量比(a−1)/(a−2)が0.25〜5.2でかつ全カルボキシル基に対し全アミノ基が実質的に当量になるように混合して重縮合させることが好ましい。(a−1)/(a−2)を0.25〜5.2にすることによって、ナイロン12及び外部可塑化ナイロン12と同等の可撓性を有するポリアミド共重合体が得られる。(a−1)/(a−2)が0.25未満であると得られるポリアミド共重合体の可撓性が不十分になる場合があり、5.2より大きくなると、柔らかすぎると共に耐熱性が低下する傾向がある。また、ポリアミド共重合体の温度250℃における溶融粘度が5Pa・sより小さいと、機械的強度が低くなり過ぎ、5Pa・s以上、好ましくは10Pa・s〜500Pa・sにすることが好ましい。
例えば、(a−1)重合脂肪酸、(a−2)アゼライン酸および/またはセバシン酸、(a−3)ヘキサメチレンジアミンの三者の重縮合では、重合脂肪酸とヘキサメチレンジアミンの塩及びアゼライン酸及び/またはセバシン酸とヘキサメチレンジアミンの塩の融点が比較的低く、またこれらの重縮合速度が比較的速いので、カプロラクタム、重合脂肪酸、ヘキサメチレンジアミン系や、アジピン酸、重合脂肪酸、ヘキサメチレンジアミン系のように開環重合反応の促進や均質重合を行わせるために系中に水を添加する必要がなく、従って加圧反応容器を使用する必要がない。アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからプレポリマーを作った後に、重合脂肪酸とヘキサメチレンジアミンとを重縮合させる煩雑な二段重合法を用いる必要もない。
好ましい態様では、窒素で十分に置換した反応容器に、(a−1)重合脂肪酸と、(a−2)アゼライン酸及び/またはセバシン酸と、(a−3)ヘキサメチレンジアミン成分の三者を、上記(a−2)に対する(a−1)の重量比(a−1)/(a−2)が0.25〜5.2で、かつ全カルボキシル基に対し全アミノ基が実質的に当量になるように仕込み、所定量のステアリン酸等の分子量調整剤と少量のリン酸等の重縮合触媒の存在下で200〜280℃に昇温し1〜3時間反応させた後、160mmHg程度の減圧下で更に0.5〜2時間反応させることにより温度250℃での溶融粘度が5Pa・s以上の高分子量で可撓性に優れるポリアミド共重合体が得られる。
ここで用いられる触媒としては、例えばリン酸、メタリン酸、ポリリン酸などのリン酸系触媒が用いられる。
ポリアミドエラストマーの製造方法としては、均一なエラストマーが得られる方法であれば、どのような方法でも採用できる。例えば、ポリエーテルエステルアミドは、まずポリアミドオリゴマーを合成し、これにポリオキシアルキレングリコールとジカルボン酸を加え、加熱し減圧下で高重合度化する方法で得られるし、またポリアミド形成性モノマーとポリオキシアルキレングリコールとジカルボン酸とを一緒に仕込、加熱して均質化した後に減圧下で高重合度化する方法でも得られる。
本発明で使用する(A)ポリアミド共重合体には、酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤などの安定剤を添加することができる。耐熱安定剤としては、例えば4’,4−ビス(2,6−ジ−tーブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、N,N’−ヘキサメチレンービス(3,5ージ−t−ブチルー4−ヒドロキシ桂皮酸アミド)など各種ヒンダードフェノール類、N,N’−ビス(βーナフチル)−P−フェニレンジアミンや4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンのごとき芳香族アミン類、ジラウリルチオジプロピネート等のごときイオウ化合物やリン化合物、アルカリ土類金属酸化物、シッフ塩基のニッケル塩、ヨウ化第一銅及び/またはヨウ化カリ等を挙げることができる。
耐光安定剤としては、置換ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール類や、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケートや4−ベンゾイルオキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等のピペリジン化合物を挙げることができる。
また、本発明で使用する(A)ポリアミド共重合体には、必要に応じて、補強剤、充填剤、滑剤、離型剤、可塑剤、難燃剤、耐加水分解改良剤等を添加することができる。
前記(A)ポリアミド共重合体のメルトフローレイト(230℃、2.16kg荷重)は、10g/10min以上が好ましく、より好ましくは20g/10min以上、さらに好ましくは30g/10min以上であり、2,000g/10min以下が好ましく、より好ましくは1,800g/10min以下、さらに好ましくは1,500g/10min以下である。前記(A)ポリアミド共重合体のメルトフローレイト(230℃、2.16kg荷重)が10g/10min以上であれば、中間層用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い中間層を成形しやすくなる。また、前記ポリアミド共重合体のメルトフローレイト(230℃、2.16kg荷重)が2,000g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(A)ポリアミド共重合体の曲げ弾性率は、400MPa以上が好ましく、より好ましくは410MPa以上、さらに好ましくは420MPa以上であり、1,000MPa以下が好ましく、より好ましくは950MPa以下、さらに好ましくは900MPa以下である。前記ポリアミド共重合体の曲げ弾性率が低すぎると、ロングアイアンショットのスピン量が低下しにくくなり、曲げ弾性率が高すぎると、ロングアイアンショットのスピン量が低下しすぎる場合があり、さらに、打球感も低下する。
前記(A)ポリアミド共重合体の具体例としては、富士化成工業株式会社製のPA−30R、PA−40R、PA−50R、PA−30L、PA−40L、PA−50L等を挙げることができる。
次に、本発明で使用する(B)成分について説明する。本発明の中間層用組成物は、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種を含有する。本発明の中間層用組成物は、(b−1)二元共重合体および(b−2)その金属イオン中和物の少なくとも一つと、(b−3)三元共重合体および(b−4)その金属イオン中和物の少なくとも一つとを含有することがより好ましく、(b−2)二元共重合体の金属イオン中和物と(b−4)三元共重合体の金属イオン中和物とを含有することがさらに好ましい。前記(B)成分は、中間層用樹脂組成物の流動性を高める。
前記(b−1)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。また、前記(b−2)成分としては、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
前記(b−3)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。前記(b−4)成分としては、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、α,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
なお、本発明において、「(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体」を単に「二元共重合体」と称し、「(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物」を「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体」を単に「三元共重合体」と称し、「(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物」を「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
前記(b−1)二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましく、前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(b−3)三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましい。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは15g/10min以上であり、1700g/10min以下が好ましく、より好ましくは1500g/10min以下、さらに好ましくは1300g/10min以下である。前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が5g/10min以上であれば、中間層用組成物の流動性が良好となり、薄い中間層を成形しやすくなる。また、前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が1700g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(b−1)二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井デュポンポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)5980I」で市販されているエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
前記(b−3)三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAN4318」「ニュクレルAN4319」)」、デュポン社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAE」)」、ダウケミカル社から市販されている商品名「プライマコア(PRIMACOR)(登録商標)(例えば、「PRIMACOR AT310」、「PRIMACOR AT320」)」などを挙げることができる。前記(b−1)二元共重合体または(b−3)三元共重合体は、単独または二種以上を組み合わせて使用しても良い。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、15質量%以上が好ましく、16質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、15質量%以上であれば、得られる中間層を所望の硬度にしやすくなるからである。また、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、30質量%以下であれば、得られる中間層の硬度が高くなり過ぎず、耐久性と打球感が良好になるからである。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。一方、中和度が90モル%以下であれば、中間層用組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
二元系アイオノマー樹脂の中和度=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂としては、ナトリウムで中和された二元系アイオノマー樹脂と、亜鉛で中和された二元系アイオノマー樹脂との混合物を使用することが好ましい。これらの混合物を使用することにより、反発性と耐久性とを両立しやすくなる。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、140MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、550MPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率が低すぎると、ロングアイアンショットのスピン量が増加して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性率が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、中間層用組成物の流動性が良好となり、例えば、中間層の薄肉化が可能となる。また、前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(b−2)二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で50以上であれば、得られる中間層が高硬度となる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で75以下であれば、得られる中間層が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、中間層用組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、中間層用組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。本発明で使用する(b−4)三元系アイオノマー樹脂は、亜鉛で中和されていることが好ましい。亜鉛で中和された(b−4)三元系アイオノマー樹脂を使用することにより、ゴルフボールの耐久性及び低温耐久性が良好となるからである。
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。さらにデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など)」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは11MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは97MPa以下、さらに好ましくは95MPa以下である。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率が低すぎると、ロングアイアンショットのスピン量が増加して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性率が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、20g/10min以下が好ましく、より好ましくは15g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、中間層用組成物の流動性が良好となり、薄い中間層の成形が可能となる。また、前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が20g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(b−4)三元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、得られる中間層が柔らなく成り過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好になる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、得られる中間層が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
本発明の中間層用組成物は、さらに(C)ポリアミド樹脂組成物を含有してもよい。(C)ポリアミド樹脂組成物を含有することにより、硬度及び曲げ弾性率を調整することができ、打球感とスピン性能とを両立することが容易になるからである。前記(C)ポリアミド樹脂組成物は、(c−1)ポリアミド樹脂と、(c−2)水酸基、カルボキシル基、無水酸基、スルホン酸基およびエポキシ基(グリシジル基を含む)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂とを含有し、例えば、(c−1)ポリアミド樹脂と、(c−2)水酸基、カルボキシル基、無水酸基、スルホン酸基およびエポキシ基(グリシジル基を含む)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂との混合物を挙げることができる。(c−2)成分を含有することにより、(C)ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。
前記(c−1)ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合(−NH−CO−)を複数有する重合体であれば特に限定されず、例えば、ラクタムを開環重合させたり、ジアミン成分とジカルボン酸成分とを反応させたりすることによって、アミド結合が分子内に形成された生成物が挙げられる。
前記ラクタムとしては、例えば、ε−カプロラクタム、ウンデカンラクタム、ラウリルラクタムなどが挙げられる。前記ジアミン成分としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルペンタジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシレンジアミン、m−キシレンジアミンなどが挙げられる。前記ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などが挙げられる。
前記(c−1)ポリアミド樹脂としては、ジカルボン酸成分として、重合脂肪酸を使用しないものが好ましく、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T、ポリアミドM5T、ポリアミド612などの脂肪族系ポリアミド;ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミドなどの芳香族系ポリアミドなどが挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族系ポリアミドが好適である。
前記(c−1)ポリアミド樹脂の具体例を商品名で示すと、例えば、アルケマ社から市販されている「リルサン(登録商標)B(例えば、BESN TL、BESN P20 TL、BESN P40 TL、MB3610、BMF O、BMN O、BMN O TLD、BMN BK TLD、BMN P20 D、BMN P40 Dなど)」、DSMエンジニアリングプラスチックス社から市販されている「ノバミッド(登録商標)(例えば、1010C2、1011CH5,1013C5,1010N2,1010N2−2、1010N2−1ES,1013G(H)10−1、1013G(H)15−1、1013G(H)20−1、1013G(H)30−1、1013(H)45−1、1015G33、1015GH35、1015GSTH、1010GN2−30、1015F2、ST220、ST145、3010SR、3010N5−SL4、3021G(H)30、3010GN30など)」、東レ社製「アミラン(登録商標)(例えば、CM1007、CM1017、CM1017XL3、CM1017K、CM1026、CM3007、CM3001−N、CM3006、CM3301L、CM1011G−15、CM1001G−15、CM1001G−20、CM1011G−30、CM1016G−30、CM1011G−45、CM1016G−45N、CM1001R、CM3001G−15、CM3006G−15、CM3001G−30、CM3006G−30、CM3001G−45、CM3006G−45、CM3511G33、CM3511G50、CM3511G60、CM3516G33、CM3501G50、EA1R21G33、CM3001R、CM1014−V0、CM3004−V0、CM3304−V0、CM3004G−15、CM3004G−20、CM3004G−30、HF3074G−15、HF3074G−30、HF3064G15、HF3064G30、CM1023G1000、CM1003G30、CM3003G1000、CM3003G30、CM3903GX01、U121、U141、U127GX07、U320、U328、U625X21など)」などが挙げられる。
前記(C)ポリアミド樹脂組成物に含有される(c−2)水酸基、カルボキシル基、無水酸基、スルホン酸基およびエポキシ基(グリシジル基を含む)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂(以下、単に「(c−2)官能基含有樹脂」ということがある)について説明する。
前記(c−2)官能基含有樹脂は、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、無水酸基(−CO−O−CO−)、スルホン酸基(−SO3H)、エポキシ基(−COC)(グリシジル基を含む)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するものであれば、特に限定されない。なお、(c−2)官能基含有樹脂には、上述した(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物は含まない。
前記(c−2)官能基含有樹脂を構成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性エラストマーが好ましい。前記熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリオレフィンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、熱可塑性ポリオレフィンエラストマーまたは熱可塑性スチレンエラストマーが好適である。
前記熱可塑性ポリオレフィンエラストマーとしては、構成成分としてエチレンを含有するものが好ましい。官能基を含有する熱可塑性ポリオレフィンエラストマーとしては、例えば、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−グリシジル(メタ)アクリレート−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
前記熱可塑性スチレンエラストマーとしては、ポリスチレンブロックと共役ジエン化合物を主体とするブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。ここで、ブロック共重合体の水素添加物とは、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来する不飽和結合の少なくとも一部が水素添加されているものである。前記熱可塑性スチレンエラストマーとしては、共役ジエン化合物として1,3−ブタジエンを用いたブロック共重合体の水素添加物(スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック(SEBS));共役ジエン化合物として2−メチル−1,3−ブタジエンを用いたブロック共重合体の水素添加物(スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン(SEPS))が挙げられる。
前記(c−2)官能基含有樹脂の具体例を商品名で示すと、例えば、アルケマ社製の「ロタダー(LOTADER)AX8840」、東亜合成社製の「アルフォン(ARUFON)(登録商標)UG−4030」、住友化学社製の「ボンドファスト(登録商標)E」などの官能基を有する熱可塑性ポリオレフィンエラストマー;旭化成社製の「タフテック(登録商標)M1913、タフテックM1943」、デュポン社製の「FUSABOND(登録商標)NM052D」、JSR社製の「ダイナロン(登録商標)4630P」などの官能基を有する熱可塑性スチレンエラストマーが挙げられる。そして、前記(C)ポリアミド樹脂組成物の具体例を商品名で示すと、例えば、三菱エンジニアリング社製の「ノバミッド(登録商標)ST120」などが挙げられる。
前記(C)ポリアミド樹脂組成物のメルトフローレイト(240℃×2.16kg荷重)は、5.0g/10min以上が好ましく、より好ましくは6.0g/10min以上、さらに好ましくは7.0g/10min以上であり、150g/10min以下が好ましく、より好ましくは120g/10min以下、さらに好ましくは110g/10min以下である。前記(C)ポリアミド樹脂組成物のメルトフローレイト(240℃×2.16kg荷重)が5.0g/10min以上であれば、中間層用組成物の流動性が良好となり、中間層の薄肉化が可能となるため、ロングアイアンなどのショットに対して低スピン化が図られ飛距離が向上する。また、前記(C)ポリアミド樹脂組成物のメルトフローレイト(240℃×2.16kg荷重)が150g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
前記(C)ポリアミド樹脂組成物の曲げ弾性率は、500MPa以上が好ましく、より好ましくは520MPa以上、さらに好ましくは550MPa以上であり、4000MPa以下が好ましく、より好ましくは3500MPa以下、さらに好ましくは3000MPa以下である。前記(C)ポリアミド樹脂組成物の曲げ弾性率が500MPa以上であれば、中間層が十分に高弾性化されて、ロングアイアンなどのショットに対して低スピン化の効果が得られる。また、前記(C)ポリアミド樹脂組成物の曲げ弾性率が4000MPa以下であれば、中間層が硬くなりすぎず、打球感および耐久性が良好となる。
本発明で使用する中間層用組成物は、さらに、白色顔料(酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。また、本発明で使用する中間層用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、流動性改質剤として脂肪酸および/またはその金属塩などを併用しても良いが、カバーに対する密着性および機械的物性などを低下させる原因となるため、脂肪酸および/またはその金属塩などの低分子材料は併用しないことが好ましい。
本発明の中間層用組成物が、樹脂成分として、(A)成分と(B)成分とを含有する場合、(A)成分の含有率は、10質量%〜80質量%が好ましく、15質量%〜60質量%がより好ましく、25質量%〜60質量%がさらに好ましく、(B)成分の含有率は、20質量%〜90質量%が好ましく、40質量%〜85質量%がより好ましく、40質量%〜75質量%がさらに好ましい。また、本発明の中間層用組成物が、樹脂成分として、さらに(C)成分を含有する場合、(A)成分の含有率は、1質量%〜70質量%が好ましく、5質量%〜50質量%が好ましく、(B)成分の含有率は、15質量%〜65質量%が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましく、(C)成分の含有率は、15質量%〜60質量%が好ましく、20質量%〜60質量%がより好ましい。ただし、各成分の合計が100質量%になるようにする。また、(A)成分に対する(C)成分の質量比率((C)/(A))は、1〜15が好ましく、5〜14がより好ましい。(A)成分に対する(C)成分の比率が高くなれば、流動性と耐久性のバランスが一層良好になる。
本発明で使用する中間層用組成物は、例えば、(A)成分と(B)成分と、必要に応じて(C)成分とをドライブレンドすることにより得られる。また、ドライブレンドした混合物を、押出してペレット化してもよい。ドライブレンドには、例えば、ペレット状の原料を配合できる混合機を用いるのが好ましく、より好ましくはタンブラー型混合機を用いる。押出は、一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など公知の押出機を使用することができる。
前記中間層用組成物のメルトフローレイト(240℃×2.16kg)は、10g/10min以上が好ましく、15g/10min以上がより好ましく、18g/10min以上がさらに好ましく、100g/10min以下が好ましく、70g/10min以下がより好ましく、40g/10min以下がさらに好ましい。中間層用組成物のメルトフローレイトが、上記範囲内であれば、成形性が良好である。
本発明で使用する中間層用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で66以上が好ましく、67以上がより好ましく、75以下が好ましく、74以下がより好ましく、73以下がさらに好ましい。スラブ硬度がショアD硬度で66以上の中間層用組成物を用いることにより、コアが、外剛内柔構造を有し、ロングアイアンショットに対して高打出角および低スピンのゴルフボールが得られる。その結果、ロングアイアンショットの飛距離が大きくなる。一方、スラブ硬度がショアD硬度で75以下の中間層用組成物を用いることにより、耐久性に優れるゴルフボールが得られる。ここで、中間層用組成物のスラブ硬度とは、中間層用組成物をシート状に成形して測定した硬度であり、後述する測定方法により測定する。
本発明で使用する中間層用組成物の曲げ弾性率は、350MPa以上が好ましく、より好ましくは370MPa以上、さらに好ましくは400MPa以上であり、1,000MPa以下が好ましく、より好ましくは900MPa以下、さらに好ましくは800MPa以下である。前記中間層用組成物の曲げ弾性率が350MPa以上であれば、得られるゴルフボールを外剛内柔構造とすることができ、飛距離が向上する。また、前記中間層用組成物の曲げ弾性率が1,000MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
なお、前記中間層用組成物のメルトフローレイト、曲げ弾性率、およびスラブ硬度は、前記(A)成分、(B)成分、および(C)成分などの種類、添加量などを適宜選択することによって、調整することができる。
本発明のゴルフボールは、上述した中間層用組成物から成形された中間層を有するゴルフボールであれば、特に限定されない。例えば、センターと前記センターを被覆するように配設された単層の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するスリーピースゴルフボール;または、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボール(前記スリーピースゴルフボールを含む)において、前記中間層の少なくとも一つが上述した中間層用組成物から成形されているゴルフボールを挙げることができる。
以下、本発明のゴルフボールを、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなるコアと、前記コアを被覆するように配設されたカバーとを有するゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)であって、前記中間層の少なくとも一つが、上述した中間層用組成物から成形されている態様に基づいて、詳述する。
本発明のゴルフボールのコアの構造としては、例えば、センターと前記センターを被覆するように配設された一以上の中間層とからなる多層コアを挙げることができる。コアの形状としては、球状であることが好ましい。コアの形状が球状でない場合には、カバーの厚みが不均一になる。その結果、部分的にカバー性能が低下する箇所が生じるからである。
前記センターの形状としては、球状が一般的であるが、球状センターの表面を分割するように突条が設けられていても良く、例えば、球状センターの表面を均等に分割するように突条が設けられていても良い。前記突条を設ける態様としては、例えば、球状センターの表面にセンターと一体的に突条を設ける態様、あるいは、球状センターの表面に突条の中間層を設ける態様などを挙げることができる。前記突条は、例えば、球状センターを地球とみなした場合に、赤道と球状センター表面を均等に分割する任意の子午線とに沿って設けられることが好ましい。例えば、球状センター表面を8分割する場合には、赤道と、任意の子午線(経度0度)、および、斯かる経度0度の子午線を基準として、東経90度、西経90度、東経(西経)180度の子午線に沿って設けるようにすれば良い。突条を設ける場合には、突条によって仕切られる凹部を、複数の中間層、あるいは、それぞれの凹部を被覆するような単層の中間層によって充填するようにして、コアの形状を球形とするようにすることが好ましい。前記突条の断面形状は、特に限定されることなく、例えば、円弧状、あるいは、略円弧状(例えば、互いに交差あるいは直交する部分において切欠部を設けた形状)などを挙げることができる。
前記センターには、公知のゴム組成物(以下、単に「センター用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができる。前記センターは、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。0.3質量部未満では、センターが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を増加する必要があり、反発性が不足気味になる。
前記共架橋剤としては、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有するものであれば特に限定されず、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、55質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、センターが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
センター用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下、より好ましくは20質量部以下であることが望ましい。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
前記センター用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類を好適に使用することができる。前記ジフェニルジスルフィド類としては、例えば、ジフェニルジスルフィド;ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4−フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4−ヨードフェニル)ジスルフィド,ビス(4−シアノフェニル)ジスルフィドなどのモノ置換体;ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(3,5−ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロ−5−ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−5−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのジ置換体;ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−シアノ−4−クロロ−6−ブロモフェニル)ジスルフィドなどのトリ置換体;ビス(2,3,5,6−テトラクロロフェニル)ジスルフィドなどのテトラ置換体;ビス(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,3,4,5,6−ペンタブロモフェニル)ジスルフィドなどのペンタ置換体などが挙げられる。これらのジフェニルジスルフィド類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドを用いることが好ましい。前記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
前記センターは、前述のセンター用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃〜200℃、圧力2.9MPa〜11.8MPaで10分間〜60分間で行われ、例えば、前記ゴム組成物を130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは、130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
前記センターの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは35.0mm以上、さらに好ましくは35.2mm以上であり、41.2mm以下が好ましく、より好ましくは41.0mm以下、さらに好ましくは40.8mm以下である。前記センターの直径が34.8mm以上であれば、中間層またはカバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性がより良好となる。一方、センターの直径が41.2mm以下であれば、中間層またはカバー層が薄くなり過ぎず、中間層またはカバー層の機能がより発揮される。
前記センターは、直径34.8mm〜41.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、1.90mm以上が好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下が好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が、1.90mm以上であれば打球感がより良好となり、4.00mm以下であれば、反発性がより良好となる。
前記センターの表面硬度は、ショアD硬度で45以上が好ましく、より好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上であり、65以下が好ましく、より好ましくは62以下、さらに好ましくは60以下である。前記センターの表面硬度を、ショアD硬度で45以上とすることにより、センターが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記センターの表面硬度をショアD硬度で65以下とすることにより、センターが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
中間層は、例えば、センターを中間層用組成物で被覆して形成する。中間層を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、中間層用組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてセンターを包み、130℃〜170℃で1分間〜5分間加圧成形するか、または中間層用組成物を直接センター上に射出成形してセンターを包み込む方法などが用いられる。本発明のゴルフボールの中間層は、射出成形法により成形されることが好ましい。射出成形法を採用することにより、中間層をより容易に生産することができるからである。
中間層用組成物をセンター上に射出成形して中間層を成形する場合、押出して得られたペレット状の中間層用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、樹脂成分や顔料などの材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。本発明では、押出して得られたペレット状の中間層用組成物を用いて射出成形することが好ましい。中間層成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、センターを投入してホールドさせた後、加熱溶融された中間層用組成物を注入して、冷却することにより中間層を成形することができる。
圧縮成形法により中間層を成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。中間層用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いて中間層を成形する方法としては、例えば、センターを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層に成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する中間層を成形できる。
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また中間層用組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状の中間層用組成物を、プランジャー面積:1cm2、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、.荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
本発明のゴルフボールの中間層の厚みは、1.5mm以下が好ましく、より好ましくは1.4mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下である。中間層の厚みが1.5mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記中間層の厚みは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上である。中間層の厚みが0.5mm以上であれば、中間層の成形がより容易となり、また得られるゴルフボールの耐久性がより向上する。
本発明のゴルフボールが、少なくとも二以上の中間層を有する場合、中間層のうちの少なくとも一つが、上述した中間層用樹脂組成物から形成されていればよい。この場合には、最外側の中間層が、上述した中間層用組成物から形成された中間層とすることが好ましい。また、中間層のすべてが、上述した中間層用組成物から形成されていることも好ましい態様である。
本発明のゴルフボールのコアの直径は、39.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは39.5mm以上、さらに好ましくは40.8mm以上である。コアの直径が39.0mm未満では、カバーが厚くなり過ぎて反発性が低下するからである。また、コアの直径は、42.2mm以下であることが好ましく、より好ましくは42.0mm以下、さらに好ましくは41.8mm以下である。コアの直径が42.2mmを超えると相対的にカバーが薄くなり過ぎて、カバーによる保護効果が十分に得られないからである。
また、前記コアは、直径39.0mm〜42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が1.90mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が1.90mm未満では、コアが硬くなって打球感が低下する傾向があり、一方、4.00mmを超えると、柔らかくなりすぎて打球感が重く感じられる場合がある。
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上であり、さらに好ましくは35以上である。コアの中心硬度がショアD硬度で30未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で50以下であることが好ましく、より好ましくは48以下であり、さらに好ましくは46以下である。前記中心硬度がショアD硬度で50を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で55以上であることが好ましく、より好ましくは56以上であり、さらに好ましくは57以上である。前記表面硬度が55未満では、軟らかくなり過ぎて、反発性が低下する場合がある。また、コアの表面硬度は、ショアD硬度で75以下であることが好ましく、より好ましくは73以下であり、さらに好ましくは70以下である。前記表面硬度がショアD硬度で75を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下する場合があるからである。
また、コア表面硬度をコア中心硬度より大きくすることも好ましい。コア表面硬度をコア中心硬度より大きくすることによって、ロングアイアンショットに対して高打出角、低スピンのゴルフボールが得られる。高打出角および低スピンのゴルフボールは、飛距離が大きい。コア表面硬度とコア中心硬度との硬度差(表面硬度−中心硬度)は、ショアD硬度で、4以上とすることが好ましく、より好ましくは7以上である。また、前記硬度差(表面硬度−中心硬度)は、40以下とすることが好ましく、より好ましくは35以下である。硬度差が大きくなりすぎると、耐久性が低下するおそれがあるからである。
本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)」、デュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)」、および、エクソンモービル化学(株)から市販されている「アイオテック(Iotek)」などのアイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY85A」、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリスチレンエラストマーなどが挙げられる。また、(B)成分である(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、および、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体を用いることもできる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
前記カバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。より好ましい態様では、カバー用組成物が、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを含有する。ポリウレタンカバーを採用することにより、アプローチショットのコントロール性を向上させることができる。
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で65以下が好ましく、より好ましくは60以下、さらに好ましくは55以下である。カバー用組成物のスラブ硬度を65以下とすることによって、ショートアイアンなどのアプローチショット時のスピン量が高くなる。その結果、アプローチショット時のコントロール性に優れるゴルフボールが得られる。また、アプローチショット時のスピン量を十分確保するためには、前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
カバーを成形する際には、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
前記カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。カバーの厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。カバーの厚みが0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上、より好ましくは7μm以上、25μm以下、より好ましくは18μm以下であることが望ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が25μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
(1)メルトフローレイト(MFR)(g/10min)
MFRは、フローテスター(島津製作所社製、島津フローテスターCFT−100C)を用いて、JIS K7210に準じて測定した。なお、測定は、測定温度190℃×荷重2.16kg、210℃×荷重2.16kg、230℃×荷重2.16kgまたは240℃×荷重2.16kgの条件で行った。
(2)曲げ弾性率(3点曲げ、MPa)
中間層を構成する樹脂成分および中間層用組成物を射出成形により、長さ80.0±2mm、幅10.0±0.2mm、厚み4.0±0.2mmの試験片を作製し、直ちに防湿容器中で23℃±2℃で24時間以上保持した。この試験片を防湿容器から取り出した後、速やか(15分以内)に、曲げ弾性率をISO178に準じて測定した。測定は、温度23℃、湿度50%RHで行った。
(3)スラブ硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物、中間層を構成する樹脂成分、および中間層用組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、スプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて測定した。
(4)センター、コア硬度(ショアD硬度)
ASTM−D2240に規定するスプリング式硬度計ショアD型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、センターまたはコアの表面部において測定したショアD硬度をセンター表面硬度Hs1、コア表面硬度Hsとした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定したショアD硬度をセンターまたはコア中心硬度Hoとした。
(5)圧縮変形量(mm)
ゴルフボールまたはコアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にゴルフボールまたはコアが縮む量)を測定した。
(6)ロングアイアンでのショット
ゴルフラボラトリー社製スイングロボットM/Cに、5番アイアン(SRIスポーツ社製ZTXDGS200 510)を取り付け、ヘッドスピード41m/sでゴルフボールを打撃した。打撃直後のゴルフボールのスピン速度は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行い、その平均値をスピン速度とした。
[ゴルフボールの作製]
(1)センターの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、170℃で30分間加熱プレスすることによりセンターを得た。
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR−730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日本蒸溜工業社製、「ZNDA−90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド:川口化学社製
(2)コアの作製
次に、表2に示した配合の中間層材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状の中間層用組成物を調製した。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。得られた中間層用組成物を上述のようにして得られたセンター上に射出成形して、センターと前記センターを被覆する中間層を有するコア(直径41.7mm)を作製した。
表2で使用した原料の詳細は、以下の通りである。
PA30L:富士化成工業株式会社製ポリアミド共重合体(曲げ弾性率:850MPa、メルトフローレイト(230℃×2.16kg荷重):80g/10min、ショアD硬度:76)
PA40L:富士化成工業株式会社製ポリアミド共重合体(曲げ弾性率:600MPa、メルトフローレイト(230℃×2.16kg荷重):80g/10min、ショアD硬度:73)
ハイミランAM7337:三井デュポンポリケミカル社製のナトリウムイオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5g/10min、曲げ弾性率:254MPa)
ハイミランAM7329:三井デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):5g/10min、曲げ剛性率:221MPa)
ハイミランAM7327:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル三元共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):0.7g/10min、曲げ剛性率:35MPa)
サーリン6320:デュポン社製、マグネシウムイオン中和エチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル三元共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):1.0g/10min、曲げ剛性率:53MPa)
ノバミッドST120:三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポリアミド6と水酸基、カルボキシル基、無水酸基、スルホン酸基およびエポキシ基(グリシジル基を含む)よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂との混合樹脂(曲げ弾性率:2000MPa、メルトフローレイト(240℃×2.16kg荷重)30g/10min)
(3)ハーフシェルの成形
表3に示したポリウレタンエラストマー100質量部に対して酸化チタン4質量部をドライブレンドし、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物を得た。押出は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35で行った。配合物は、押出機のダイの位置で150〜230℃に加熱された。ハーフシェルの圧縮成形は、得られたペレット状のカバー用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間5分、成形圧力2.94MPaの条件で行った。
エラストランXNY85A:BASF社製、熱可塑性ポリウレタンエラストマー
(4)カバーの成形
(2)で得られたコアを(3)で得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形によりカバー(厚み0.5mm)を成形した。圧縮成形は、成形温度145℃、成形時間2分、成形圧力9.8MPaの条件で行った。
得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.8mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。得られたゴルフボールついて評価した結果を併せて表2に示した。
ゴルフボールNo.1〜No.10,No.12〜No.15は、中間層が、(A)(a−1)重合脂肪酸、(a−2)セバシン酸および/またはアゼライン酸、(a−3)ポリアミン成分とを必須成分とするポリアミド共重合体と、(B)(b−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(b−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物、(b−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および、(b−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物より成る群から選択される少なくとも1種とを含有する中間層用組成物から形成されている場合である。いずれもロングアイアンで打撃したときの飛距離が大きいことが分かる。