JP5651787B2 - 流体制御デバイス、及び流体混合器 - Google Patents

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Description

本発明は、微小な空間において流体を混ぜる流体制御デバイス、及び流体混合器に関する。このような流体制御デバイス、及び流体混合器は、たとえば、μTAS(「Micro−TAS」とも呼ぶ:Micro Total Analysis Systems)に好適に用いられる。ここで、μTASは、MEMS技術を用いて、チップ上に微小な流路や反応室、混合室を設け、一つのチップもしくはデバイスで血液やDNAをはじめ様々な液体や気体を分析する生化学分析デバイスを意味する。
本願は、2012年4月6日に、日本に出願された特願2012−087669号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
混合、反応、抽出、分離、加熱、冷却などの化学プロセスを微細な流路や微小な空間において行うマイクロ化学プロセスが提案され、微小空間での高効率な混合を可能とするマイクロミキサの研究がなされている。
マイクロミキサは、数百μm以下の微小な空間で混合を行うデバイスであり、混合される基質間の距離を短くできるため、混合効率を大きく向上させることができる。一例として、界面活性剤を用いることなく、エマルジョンを生成することができるマイクロ乳化器及び乳化方法が知られている(特許文献1)。
また、複数の流入口から流入した液体を、精密加工で溝を刻んだプレートの組合せにより形成された三次元的な流路で、分割・混合を繰り返して混合液とするマイクロミキサが知られている(非特許文献1)。
かかるマイクロミキサにおいて、短時間での混合や混ざりにくい液体の混合を可能にするためには、例えば2層の流れを平面上で多数に分割して、多数の層流を形成し、混合・撹拌効率を向上させる方法が挙げられる。
しかしながら、流れを多数に分割するために、精密加工技術を用いて複雑なマルチ流路を形成する必要があり、製造コストが増加するという問題があった。
また、マルチ流路を用いた場合であっても、平面的に形成された微小流路では、流体は依然として層流であり、撹拌・混合は拡散で支配されるため、混合効率に関して改良の余地があった。そのために、マルチ流路が形成されたプレートを積層することにより、三次元的な流路を形成した場合、装置構成が複雑となり、積層されたプレートの接合界面で液漏れし、耐圧も高くすることができないという問題があった。
更に、生成された固形物が積層されたプレートの接合界面の流路の交差部分などに徐々に堆積して流路を部分的に閉塞し、このため、液体の混合効率が大きく低下する虞もあった。
特開2004−81924号公報
Savemation Review 2005年8月号 60−63頁
本発明は、前述した事実に鑑みてなされたものであって、極めて効率的に流体を混ぜることができ、処理能力が高く、高耐圧を有する流体制御デバイス、及び流体混合器を提供することを目的とする。
本発明の第1態様に係る流体制御デバイスは、流体を混ぜるための流体制御デバイスであって、単一の基体と、前記基体内に配される複数の微細孔と、を少なくとも備え、前記微細孔のうち特定の一群を構成する流路群αは、前記基体の表面(外面)における領域Aと領域Bに各々開口部を有し、前記微細孔のうち他の特定の一群を構成する流路群β(n)は、前記基体の表面(外面)における前記領域Aと領域C(n)に各々開口部を有しており、前記基体内において、異なる前記流路群に属する微細孔はその全長に亘離間して配され、前記流路群αを構成する前記微細孔は、前記領域Aと前記領域Bとの間で、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しつつ連通して形成され、前記流路群βを構成する前記微細孔は、前記領域Aと前記領域Cとの間で、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しつつ連通して形成され、前記領域Aの前記開口部は、前記基体の上面側に位置する。ただし、上記nは、自然数を表す。
前記流路群αを構成する前記微細孔は、前記基体内で、前記基体の上面および側面の2方向に沿って形成された部分が互いに直交して形成されていてもよい。前記流路群βを構成する前記微細孔は、前記基体内で、前記基体の上面および側面の2方向に沿って形成された部分が互いに直交して形成されていてもよい。
前記領域Bと前記領域Cに面する前記開口部は、前記流体の流出口であり、前記基体の下面側に位置していてもよい。
前記流路群α、βのうち少なくともいずれかの流路群において、少なくとも一部が前記基体の厚さ方向に隣り合う2つの微細孔は、少なくとも前記基体の側面に沿って延在する箇所が、平面視において略重なっていることが好ましい。
前記流路群α、βのうち少なくともいずれかの流路群において、1つの微細孔と、この微細孔に対して、前記基体の奥行きまたは幅方向に隣り合う全ての微細孔との間隔が、互いに略同一となることが好ましい。
前記領域Aにおいて、全ての微細孔の開口部は二次元的に配置されていてもよい。
前記領域Aにおける開口部の配置は、異なる前記流路群に属する微細孔の開口部同士が、最も隣接した位置を成していてもよい。
本発明の第2態様に係る流体混合器は、上記本発明の第1態様に係る流体制御デバイスと、該流体制御デバイスを内在するとともに、該流体制御デバイスの領域Aに面する単一の流出空間、及び、該流体制御デバイスの領域Bと領域Cに個別に面する流入空間を少なくとも備えた筐体と、から構成されている。
本発明の第3態様に係る流体混合器は、単一の基体に、流路として機能する複数の微細孔、複数の流入空間、及び、共通する流出空間を備え、前記微細孔のうち、一群を構成する全ての微細孔は、一方の開口部が特定の前記流入空間に、他方の開口部が前記流出空間に、各々連通するとともに、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しており、他の一群を構成する全ての微細孔は、一方の開口部が他の特定の前記流入空間に、他方の開口部が前記流出空間に、各々連通するとともに、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しており、前記流出空間が前記基体の上面側に位置する
前記一群を構成する全ての微細孔の他方の開口部と、前記他の一群を構成する全ての微細孔の他方の開口部は、前記流出空間に対する面内において二次元的に配置されていてもよい。
前記流出空間に対する面内における前記微細孔の他方の開口部の配置は、異なる前記流入空間に通じる開口部同士が、最も隣接した位置を成していてもよい。
前記複数の微細孔が、略同じ長さを有してもよい。
上記本発明の態様によれば、極めて効率的な混合を可能にし、処理能力が高く、高耐圧を有する流体混合器、及び流体制御デバイスを提供することができる。
第1実施形態に係る流体制御デバイスの一構成例を示す模式図であり、流体制御デバイス1を模式的に示した斜視図。 図1Aの斜視図において矢視X1−X1の断面模式図。 図1Aの斜視図において矢視Y1−Y1の断面模式図。 図1Aの斜視図において矢視Z1の平面図。 第1実施形態の変形例に係る流体制御デバイス1aを示す模式図であり、流体制御デバイス1aを模式的に示した斜視図。 図2Aの斜視図において矢視X2−X2の断面模式図。 図2Aの斜視図において矢視Y2−Y2の断面模式図。 図2Aの斜視図において矢視Z2の平面図。 第1実施形態の変形例に係る流体制御デバイス1bを示す模式図であり、流体制御デバイス1bを模式的に示した斜視図。 図3Aの斜視図において矢視X3−X3の断面模式図。 図3Aの斜視図において矢視Y3−Y3の断面模式図。 図3Aの斜視図において矢視Z3の平面図。 第1実施形態の変形例に係る流体制御デバイス1cを示す模式図であり、流体制御デバイス1cを模式的に示した斜視図。 図4Aの斜視図において矢視X4−X4の断面模式図。 図4Aの斜視図において矢視Y4−Y4の断面模式図。 図4Aの斜視図において矢視Z4の平面図。 第1実施形態の変形例に係る流体制御デバイス1dを示す模式図であり、流体制御デバイス1dを模式的に示した斜視図。 図5Aの斜視図において矢視X5−X5の断面模式図。 図5Aの斜視図において矢視Y5−Y5の断面模式図。 図5Aの斜視図において矢視Z5の平面図。 第1実施形態の変形例に係る流体制御デバイス1eを示す模式図であり、流体制御デバイス1eを模式的に示した斜視図。 図6Aの斜視図において矢視X6−X6の断面模式図。 図6Aの斜視図において矢視Y6−Y6の断面模式図。 図6Aの斜視図において矢視Z6の平面図。 流体制御デバイス1のフィルター機能を説明するための模式図。
第2実施形態に係る流体混合器10の一構成例を示す模式図であり、流体混合器10の断面模式図。 図8Aの流体混合器10を構成する流体制御デバイス1を模式的に示した斜視図。 図8Bの斜視図において矢視X8−X8の断面模式図。 着脱可能な流体制御デバイス1を備えた流体混合器の構成を説明するための模式図。 第2実施形態の変形例に係る流体混合器10aを示す模式図であり、流体混合器10aの断面模式図。 図10Aの流体混合器10aにおいて流出空間Saに対する流路の開口部配置を示す平面図。 第2実施形態に係る流体混合器10または10aを示す模式図であり、流出空間Saに対する流路の開口部配置を示す平面図。 第2実施形態に係る流体混合器10または10aを示す模式図であり、微細孔の形状を示す、流体制御デバイス1の断面模式図。 第2実施形態に係る流体混合器10または10aを示す模式図であり、流体制御デバイス1を模式的に示した斜視図。 第2実施形態に係る流体混合器10または10aを示す断面模式図。 第2実施形態に係る流体混合器10または10aを示す断面模式図。 流体混合器10または10aを搭載したμTASチップ100の一構成例を示す模式図であり、μTASチップ100の平面断面図。 図16AのμTASチップにおいて流体混合器部分(A部)の拡大平面図。 図16AのμTASチップにおいて流体混合器部分(A部)の拡大断面図。
次に図面を参照しながら、以下に実施形態及び具体例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものではない。
また、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
(1)流体制御デバイスの構成
「第1実施形態」
図1Aは、本実施形態に係る流体制御デバイス1の一構成例を示す模式図であり、流体制御デバイス1を模式的に示した斜視図である。図1Bは、矢視X1−X1の断面模式図、図1Cは、矢視Y1−Y1の断面模式図、図1Dは、矢視Z1の平面図である。
以下、本発明に係る第1実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1A〜図1Dに示すように、流体制御デバイス1は、単一の基体2内に、複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・が形成されている。これら複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・のうち特定の一群を構成する流路群αは、基体2の表面(外面)における領域Aと領域Bに各々開口部3a、3a、・・・、3b、3b、・・・を有し、微細孔のうち他の特定の一群を構成する流路群β(1)は、基体2の表面(外面)における領域Aと領域Cに各々開口部4a、4a、・・・、4b、4b、・・・を有している。
また、基体2内において、それぞれの流路群α、β(1)に属する微細孔3、3、・・・、4、4、・・・は、その全長に亘り、他の微細孔と離間して配されている。
図1B、図1Cの断面模式図に示すように、単一の基体2内に設けられた微細孔3、3、・・・は、基体2の表面(外面)における領域Aと領域Bとを連通した3次元的な流路群αとして形成されている。同様に、微細孔4、4、・・・は、基体2の表面(外面)における領域Aと領域Cとを連通した三次元的な流路群β(1)として形成されている。
領域Aに面した流路群α及び流路群β(1)のそれぞれの開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・は、図1Dに示すように、領域Aに対する面内において、二次元的に配列されている。また、開口部同士が、互い違いに、最も隣接した位置をなして形成されている。
図1Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと開口部4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
上記「ピッチ」によって拡散長をコントロールすることが可能である。拡散長が小さいほど、混合速度を高めることができる。
しかし、混合速度を高めるため、流路群のピッチを狭めると設計可能な微細孔径も自ずと小さくなる。微細孔径が小さいと、毛細管力が大きくなる、圧力損失が大きくなる等の弊害が生じる。一方で、微細孔径が大きいと流路群のピッチが自ずと大きくなり混合性が悪くなる。ピッチの公的な範囲は、5〜100μm、より好適には7〜90μm、さらに好適には9〜65μm、よりさらに好適には10〜55μmである。
また、スペースが小さいと、微細孔側壁の厚さが薄くなり、流体流入時に破損に至る。一方、スペースが大きいと異なる液体同士が領域A近傍で直ちには混ざり合うことが無いため、液体同士が混ざり合うことが妨げられる。前記スペースの好適な範囲は、2〜50μm、より好適には3〜30μmの範囲である。
上述したピッチ、スペースの好適な範囲は、微細孔の断面形状が真円であるという前提で示したが、真円でない場合には真円であると近似したうえで上記範囲内にあればよい。
「変形例1」
図2Aは、本実施形態に係る流体制御デバイス1の一変形例を示す模式図であり、流体制御デバイス1aを模式的に示した斜視図である。図2Bは、矢視X2−X2の断面模式図、図2Cは、矢視Y2−Y2の断面模式図、図2Dは、矢視Z2の平面図である。
図1A〜図1Dに示した微細孔の三次元的なレイアウトを適宜変更することによって、流路群αおよび流路群β(1)の領域Aに対する開口部を、図2A〜図2Dに示した流体制御デバイス1aのように、千鳥格子状に配置することもできる(図2D)。図2Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと開口部4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の径は、領域Aにおいては、例えば、マイクロ・メーター乃至ナノ・メーターのオーダーとすることが好適である。その好適な範囲は、3〜50μm、より好適には5〜40μm、7〜35μmである。また、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・のピッチLは、例えば、マイクロ・メーター乃至ナノ・メーターのオーダーとすること好適である。複数種類の流体を、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・を通じて領域Aの外側へ噴出させ、それぞれの流体を混ぜる場合に、その処理能力が高くなるからである。
なお、本発明(たとえば、本実施形態に係る流体制御デバイス1の説明)において、「混ぜる」とは、複数の流体を混合させ、反応させ、あるいは、乳化(エマルジョン)することをいう(以下、流体混合器、μTASの説明においても、同様の意味で使用する)。
流路群α及び流路群β(1)を構成する微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の数としては、特に限定されるものではなく、制御される流体の種類、処理能力に応じて、適宜選択することができる。また、領域Bと領域Cは、後述する図7Cの模式図に示すように、同一の基板面の異なる領域に設定されていても良い。さらに、ここでは図示しないが、領域A、領域B、領域C(・・・)が全て同一の面に存在していても良い。
「変形例2」
図3Aは、本実施形態に係る流体制御デバイス1の一変形例を示す模式図であり、流体制御デバイス1bを模式的に示した斜視図である。図3Bは、矢視X3−X3の断面模式図、図3Cは、矢視Y3−Y3の断面模式図、図3Dは、矢視Z3の平面図である。
流体制御デバイス1aは、単一の基体2内に、複数の微細孔30、30、・・・、40、40、・・・が形成されている。これら微細孔30、30、・・・で構成される流路群αは、基体2の表面(外面)における領域Aと領域Bに各々開口部30a、30a、・・・、30b、30b、・・・を有し、微細孔40、40、・・・で構成される他の一群を構成する流路群β(1)は、基体2の表面(外面)における領域Aと領域Cに各々開口部40a、40a、・・・、40b、40b、・・・を有している。第1の流路群α及び第2の流路群β(1)は、基体2内で、領域B、領域Cと領域Aとを複数のメッシュ状に連通した微細孔30、30、・・・、40、40、・・・として形成されている。メッシュ状に連通したそれぞれの微細孔30、30、・・・、40、40、・・・は、互いに離間して、並行配置されている。また、流路群α及び流路群β(1)は、領域B、Cと領域Aとの間で、直交して三次元的な流路群として形成されている。
領域Aに面した流路群α及び流路群β(1)のそれぞれの開口部30b、30b、・・・、40b、40b、・・・は、図3Dに示すように、領域Aに対する面内において、二次元的に配列されている。また、開口部同士が、互い違いに、最も隣接した位置をなして形成されている。図3Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
「変形例3」
図4Aは、本実施形態に係る流体制御デバイスの一変形例を示す模式図であり、流体制御デバイス1cを模式的に示した斜視図である。図4Bは、矢視X4−X4の断面模式図、図4Cは、矢視Y4−Y4の断面模式図、図4Dは、矢視Z4の平面図である。
流体制御デバイス1cは、単一の基板2内に、複数の微細孔31、31、・・・、41、41、・・・が形成されている。これら微細孔31、31、・・・で構成される流路群αは、基体2の表面(外面)における領域Aと、対面した領域B1、B2に各々開口部31a、31a、・・・、31b、31b、・・・を有し、微細孔41、41、・・・で構成される他の一群を構成する流路群β(1)は、基体2の表面(外面)における領域Aと、対面した領域C1、C2に各々開口部41a、41a、・・・、41b、41b、・・・を有している。流路群α及び流路群β(1)は、基体2内で、領域B1、B2及び領域C1、C2と領域Aとを複数のメッシュ状に連通した微細孔31、31、・・・、41、41、・・・として形成されている。メッシュ状に連通したそれぞれの微細孔31、31、・・・、41、41、・・・は、互いに離間して、互いのメッシュの目の中を通過するように配置されている。また、流路群α及び流路群β(1)は、領域B1、B2及び領域C1、C2と領域Aとの間で、直交して三次元的な流路群として形成されている。
領域Aに面した流路群α及び流路群β(1)のそれぞれの開口部31b、31b、・・・、41b、41b、・・・は、図4Dに示すように、領域Aに対する面内において、二次元的に配列されている。また、開口部同士が、互い違いに、最も隣接した位置をなして形成されている。図4Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
「変形例4」
図5Aは、本実施形態に係る流体制御デバイスの一変形例を示す模式図であり、流体制御デバイス1dを模式的に示した斜視図である。図5Bは、矢視X5−X5の断面模式図、図5Cは、矢視Y5−Y5の断面模式図、図5Dは、矢視Z5の平面図である。
流体制御デバイス1dは、単一の基板2内に、複数の微細孔32、32、・・・、42、42、・・・が形成されている。これら微細孔32、32、・・・で構成される流路群αは、基体2の表面(外面)における対面した領域A1、A2と、対面した領域B1、B2に各々開口部32a、32a、・・・、32b、32b、・・・を有し、微細孔42、42、・・・で構成される他の一群を構成する流路群β(1)は、基体2の表面(外面)における対面した領域A1、A2と、対面した領域C1、C2に各々開口部42a、42a、・・・、42b、42b、・・・を有している。流路群α及び流路群β(1)は、基体2内で、領域B1、B2及び領域C1、C2と領域A1、A2とを複数のメッシュ状に連通した微細孔32、32、・・・、42、42、・・・として形成されている。メッシュ状に連通したそれぞれの微細孔32、32、・・・、42、42、・・・は、互いに離間して、互いのメッシュの目の中を通過するように配置されている。また、流路群α及び流路群β(1)は、領域B1、B2及び領域C1、C2と領域A1、A2との間で、直交して三次元的な流路群として形成されている。
領域A1、A2に面した流路群α及び流路群β(1)のそれぞれの開口部32b、32b、・・・、42b、42b、・・・は、図5Dに示すように、領域A1(A2)に対する面内において、二次元的に配列されている。また、開口部同士が、互い違いに、最も隣接した位置をなして形成されている。図5Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
「変形例5」
図6Aは、本実施形態に係る流体混合器の一変形例を示す模式図であり、流体制御デバイス1eを模式的に示した斜視図である。図6Bは、矢視X6−X6の断面模式図、図6Cは、矢視Y6−Y6の断面模式図、図6Dは、矢視Z6の平面図である。
流体制御デバイス1eは、単一の基板2内に、複数の微細孔50、50、・・・、60、60、・・・、70、70、・・・、80、80、・・・が形成されている。これら微細孔50、50、・・・で構成される流路群αは、基体2の表面(外面)における領域Aと、領域B1に各々開口部50a、50a、・・・、50b、50b、・・・を有している。微細孔60、60、・・・で構成される他の一群を構成する流路群β(1)は、基体2の表面(外面)における領域Aと、領域C1に各々開口部60a、60a、・・・、60b、60b、・・・を有している。微細孔70、70、・・・で構成される他の一群を構成する流路群β(2)は、基体2の表面(外面)における領域Aと、領域B2に各々開口部70a、70a、・・・、70b、70b、・・・を有している。微細孔80、80、・・・で構成される他の一群を構成する流路群β(3)は、基体2の表面(外面)における領域Aと、領域C2に各々開口部80a、80a、・・・、80b、80b、・・・を有している。
それぞれの流路群は、基体2内で、対面する位置にある領域ごとに、該領域へ連通する複数の微細孔50、50、・・・、60、60、・・・、70、70、・・・、80、80、・・・が複数のメッシュ状に連通した4つの構成を成しており、複数のメッシュ状に連通したそれぞれの微細孔50、50、・・・、60、60、・・・、70、70、・・・、80、80、・・・は、互いに離間して、互いのメッシュの目の中を通過するように配置されている。
メッシュ状に連通したそれぞれの微細孔50、50、・・・、60、60、・・・、70、70、・・・、80、80、・・・は、何れも、1つの共通した領域Aに連通している。また、それぞれの流路群は、対面した位置にある領域B1、B2及び領域C1、C2と領域Aとの間で、直交して三次元的な流路群として形成されている。
領域A面したそれぞれの流路群のそれぞれの開口部50b、50b、・・・、60b、60b、・・・、70b、70b、・・・、80b、80b、・・・は、図6Dに示すように、領域Aに対する面内において、二次元的に配列されている。また、開口部同士が、互い違いに、最も隣接した位置をなして形成されている。図6Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
図7は、流体制御デバイス1のフィルター機能を説明するための模式図である。
図7に示すように、例えば、流体の流入口となる基体2の領域Ba、Caに面したそれぞれの微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流入側の開口部3a、4aを、流入させる流体を構成する粒子等の径以上の穴径として形成することで、係る粒子等よりも大きな、例えば、異物等を堰き止めることができる。
なお、開口部3a、4aに設けるフィルター部の大きさは、流体の種類によって、適宜決定することができる。
また、係るフィルター機能は、後述するように、レーザ光を集光照射して複数の改質部を形成した後、基体の内部に形成された改質部をエッチングにより除去することにより形成することができる。
(2)流体制御デバイスの製造方法
次に、上述した流体制御デバイス1の製造方法を説明する。なお、流体制御デバイス1の変形例に係るそれぞれの流体制御デバイスの製造方法についても、流体制御デバイス1と同様である。
本実施形態の流体制御デバイス1の製造工程は、基体2の内部にパルス時間幅がピコ秒オーダー以下のパルス幅を有するレーザ光を集光照射して複数の改質部を形成する工程と、基体2の内部に形成された改質部をエッチングにより除去して、流路を形成する工程と、からなる。
(2.1)改質部形成工程
まず、基体2の流路となる領域にレーザ光照射を行う。レーザ光の光源としては、例えば、フェムト秒レーザ光を用いることができる。フェムト秒レーザとは、パルスの時間幅がフェムト秒(fs)オーダーのレーザである。数フェムト秒から数百フェムト秒という超短パルスであるが故に1(ワン)パルスが高いピーク強度を有するという特徴を有しており、焦点付近で非線形光学現象である多光子吸収を誘起するため、焦点近傍で加工対象物である基体2の物性を変化させ、微細な改質部を形成することができる。その際、被加工材料である基体2としては、たとえばガラス材料などの透明材料が好適に用いられる。なお、パルスの時間幅が10ps未満でも同様に前記改質部を形成することができ、3ps未満、より好ましくは2ps未満であれば、より確実に改質部を形成することができる。
レーザ光は、例えば、基体2の一方の主面側から照射され、形成される流路が基体2内の少なくとも2層以上に並べて配置されるように集光部Sを走査する。また、流路となる改質部は、レーザ光源から遠い方から順に形成されるように、集光部Sを走査する。その結果、基体2内部に、流路となる改質部を三次元的に形成することができる。
また、混合させる流体に応じて、照射するレーザ光の出力を適宜調整することにより、所望の流路径が形成される改質部とすることができる。
照射強度は、基体2を構成する材料の加工閾値以上が好ましく、より好適には基体2の表面をアブレーションできる閾値、いわゆるアブレーション閾値以上であることが望ましい。
なお、改質部を形成する際、レーザ光を照射する方向としては、基体の一方または他方の主面からのみ照射しても、基板の両主面から照射しても良い。
また、アクリルなどの樹脂材料を基体2に用いた場合、後述するウェットエッチングによる流路形成工程を用いずに、レーザー照射のみで3次元流路を形成できる。
(2.2)流路形成工程
改質部形成工程を経て、流路となる領域が改質された基体2を、エッチング液(薬液)に浸漬して、改質部をウェットエッチングし、改質部を基板から除去する。改質部が除去された基体2内部には、一群の流路が三次元的に形成される。
本実施形態に係る流体制御デバイス1においては、基体2として石英ガラスを用い、エッチング液としてフッ酸(HF)を主成分とする溶液を用いた。かかるエッチング処理は、レーザ光の未照射領域に比べて改質部が数十倍のエッチング速度でエッチングされる現象を利用するものである。従って、エッチング時間を制御することにより、レーザ光を照射した流路を形成すべき領域のみを選択的にエッチングして除去することができ、このエッチングの選択性を利用して基体2内に固定構造として一群の流路を三次元的に形成することができる。
エッチング液は特に限定されず、例えば、フッ酸(HF)を主成分とする溶液の他、フッ酸に硝酸等を適量添加したフッ硝酸系の混酸やKOH等のアルカリも用いることができる。また、基体2の材料に応じて、他の薬液を用いることもできる。
(3)作用・効果
本実施形態に係る流体制御デバイス1は、単一の基体2内に、それぞれが独立した複数の微細孔が形成されている。複数の微細孔は特定の一群を構成する流路群αと、他の特定の一群を構成する流路群β(n)として、基体2の表面(外面)において、流体が流入する領域B、Cと、流体が流出する領域Aに各々開口部を有し、領域Aと、領域B及び領域Cとを連通した3次元的な流路群として形成されている。
領域Aに面した流路群α及び流路群β(n)のそれぞれの開口部は、領域Aに対する面内において、二次元的に配列されている。また、それぞれの流路群α及び流路群β(n)を構成する微細孔の開口部は、領域Aに通じる開口部同士が、互い違いに、最も隣接した位置をなして形成されている。
従って、本実施形態に係る流体制御デバイス1においては、領域B、Cから流入した複数の種類の流体が、領域Aから流出するまでに、混ざることがなく、独立して流体の流れを制御することができる。そのために、複数の流体が流路内で混ざることにより生成される固形物などが、流路内に徐々に堆積して流路を部分的に閉塞するという虞がない。
また、基体2内において、複数の流路群が三次元的に積層して形成されているために、二次元的な流路に比べて飛躍的に多数の流路を設けることができ、処理能力及び生産性を高めることができる。
更に、基体2内の流路群は、一体で連続体であるために接合界面で液漏れすることがなく、耐圧性能を高くすることができる。
「第2実施形態」
(1)流体混合器の全体構成
図8Aは、本実施形態に係る流体混合器10の一構成例を示す模式図であり、流体混合器10の断面模式図である。図8Bは、流体混合器10を構成する流体制御デバイス1を模式的に示した斜視図、図8Cは、流体制御デバイス1の矢視X7−X7の断面模式図である。
以下、本発明に係る第2実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図8Aに示すように、流体混合器10は、流路として機能する複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・が形成された流体制御デバイス1と、該流体制御デバイス1を内在し、該流体制御デバイス1の領域Aに面する単一の流出空間Saと、該流体制御デバイス1の領域Bと領域Cに個別に面する単一の流入空間Sb、Scを備えた筐体20から構成されている。筐体20としては、ステンレス等の金属類を用いることができる。
流体制御デバイス1は、単一の基体2内に、流路として機能する、それぞれが独立した複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・が形成されている。複数の微細孔は、基体2の表面(外面)において、流体が流入する領域B、Cと、流体が流出する領域Aに各々開口部を有し、領域Aと、領域B及び領域Cとを連通した三次元的な流路群として形成されている(図8B、図8C参照)。
筐体20は、流体制御デバイス1を構成する基体2の領域Aの表面(外面)に対向して流出空間Saを形成する上部筐体20aと、基体2の領域B、Cの表面(外面)に対向して流入空間Sb、Scを形成する下部筐体20bと、からなる。また、流体制御デバイス1の領域A、B、Cのそれぞれの表面(外面)と、上部筐体20a及び下部筐体20bとは、シール部材Rを介して接合され、流出空間Saと流入空間Sb、Scとは独立した空間として形成されている。シール部材としては、Oリング等の弾性シール部材を用いることができる。
流体混合器10では、異なる材料(流体)が、それぞれ異なる空間、例えば流入空間Sb、Scから流入し、流路である微細孔3、3、・・・、4、4、・・・を通り、共通する空間、例えば流出空間Saから流出する。
図9に示すように、流体混合器10は、流体制御デバイス1を、上下に分割した筐体20a、20bで挟持して接合することによって、流体制御デバイス1を着脱可能としている。従って、混ぜられる流体の種類、性質に応じて、流体制御デバイスを適宜選択することができる。
「変形例」
図10Aは、本実施形態に係る流体混合器10の一変形例を示す模式図であり、流体混合器10aの断面模式図である。図10Bは、流出空間Saに対する流路の開口部配置を示す平面図である。
図10Aに示すように、流体混合器10aは、単一の基体2に、流路として機能する複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・と、複数の流入空間Sb、Sc、及び、共通する流出空間Saを備え、複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・のうち、一群を構成する全ての微細孔3、3、・・・は、一方の開口部が流入空間Sbに、他方の開口部が流出空間Saに、各々連通している。また、他の一群を構成する全ての微細孔4、4、・・・は、一方の開口部が流入空間Scに、他方の開口部が流出空間Saに、各々連通している。なお、図10A、図10Bでは、筐体の分割位置やシール部材は省略してある。
図10Bに示すように、一群を構成する全ての微細孔3、3、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・と、他の一群を構成する全ての微細孔4、4、・・・の他方の開口部4b、4b、・・・は、流出空間Saに対する面内において二次元的に配置されている。
流出空間Saに対する面内におけるそれぞれの微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・の配置は、複数の流入空間Sb、Scに通じる開口部同士が、最も隣接した位置をなしている。図10Dにおいて、符号Sは「スペース」であり、隣接する開口部3bと開口部4bの外周端間の距離を意味する。符号Lは「ピッチ」であり、隣接する開口部3bの中心(黒丸)と開口部4bの中心(黒丸)との距離を意味する。
より詳細には、符号Sは、「流出空間Saにおける基体2にて、一群を構成する全ての微細孔3、3、・・・の開口部(出口)の一つに着目した場合、他の一群を構成する全ての微細孔4、4、・・・の開口部(出口)の内、もっとも隣接する位置にある微細孔までの距離」として定義される。
流出空間Saに面する微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の径は、例えば、マイクロ・メーター乃至ナノ・メーターのオーダーとすることが好適である。また、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・のピッチLは、例えば、マイクロ・メーター乃至ナノ・メーターのオーダーとすることが好適である。
流体の流入口となる流入空間Sb、Scに面したそれぞれの微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流入側の開口部3a、4aを、流入させる流体を構成する粒子等の径以上の穴径として形成することで、流入口にフィルター機能を備えることができる。
なお、開口部3a、4aに設けるフィルター部の深さは、流体の種類によって、適宜決定することができる。
(2)作用・効果
(2a)本実施形態に係る流体混合器10及び10aは、単一の基体2内に、それぞれが独立した複数の流路と、複数の流路の一方の開口部が面した流入空間と、複数の流路の他方の開口部が面した流出空間と、を備えて構成されている。単一の基板内に設けられたそれぞれの流路は、流入空間と流出空間の間で流入空間と流出空間とを連通した一群の流路として、互いに交わることなく三次元的な流路として形成され、流出空間Saに対する面内におけるそれぞれの微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部同士が、最も隣接した位置をなしている。そのため、それぞれの開口部から流出空間Saに噴出した流体同士の混合効率や反応性を高くすることができ、短時間での混合や混ざりにくい液体の混合が可能となる。また、内包した流体混合デバイスを容易に交換することが可能となる。さらに、筐体の分割洗浄も可能となる。
(2b)基体2内において、複数の流路が三次元的に積層して形成されているために、二次元的な流路に比べて飛躍的に多数の流路を設けることができ、処理能力及び生産性を高めることができる。更に、基体2内の一群の流路は、一体で連続体であるために接合界面で液漏れすることがなく、耐圧性能を高くすることができる。
さらに、以下に述べる4点においても、従来技術に比べて本発明は優れている。
(2c)基体2に内在する一群の流路は、一体をなすと共に連続体である。これに加えて、流出空間Saにおける基体2では、一群を構成する全ての微細孔3、3、・・・の開口部(出口)一つに注目した場合、他の一群を構成する全ての微細孔4、4、・・・の開口部(出口)のうち、もっとも隣接する微細孔の数は、最外周を除き、4カ所とすることができる。これにより、2流体の境界面を増大させることが可能となり、耐圧性能だけではなく混合性が向上する。
(2d)また、微細孔の数を増やすだけで容易に混合の処理量を高めることができる。従来は流路本数を増やし処理量を増大させる場合、1次元方向に流路数を増やさざるを得なかった。これに対して、本発明では2次元方向に流路数を増やすことができる。そのため、流体混合デバイスの小型化が容易となる。
(2e)また、流体混合デバイスの耐薬品性を高めるため、後述するコーティング層を施すことができる。従来は混合に用いる流路部にも耐薬品性の低い材料が使用させている。流路部の流路幅を100μmオーダー以下とする必要がある場合、厚塗りが必要な耐薬品コーティングを、このような細い流路の内壁に施すことは極めて困難であり、耐薬品性を高めることはできなかった。これに対して、本発明によれば、基体2にガラスを用いた場合、基体2は高い耐薬品性を備えることができる。また、筐体には前記コーティングを施すことができるため、結果として、従来の流体混合デバイスよりも耐薬品性を高められる。
(2f)本発明の流体混合デバイスは、設計の自由度が高いので、2液の混合だけではなく、複数の液(3液以上)の混合を行うことも可能である。
(3)その他の応用例
(3a)このような流体混合器10及び10aにおいて、複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の圧力損失のばらつきを、±10%以内に収めることが好ましい。すなわち、複数の微細孔3、3、・・・において圧力損失のばらつきが±10%以内、複数の微細孔4、4、・・・において圧力損失のばらつきが±10%以内、に各々設計されることが好ましい。微細孔3と微細孔4の圧力損失は異なっていても構わない。圧力損失のばら付きが±10%よりも大きくなると、処理速度によっては、流体の混合性に大きなばらつきが生じる可能性がある。
(3b)流体混合器10及び10aにおいて、複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・が、略同じ長さを有することが好ましい。ここで、「複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・が、略同じ長さを有する」とは、「流路群α、βがそれぞれ略同じ長さである」ことを意味する。すなわち、必ずしも、「α=β」である必要はない。
流路として機能する複数の微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の長さを統一することにより、流出空間Saに対する面内における各微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・における、流体の流速を均一化することができる。それぞれの微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流出口となる、他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・における流体の流速を揃えることで、均一に流体が流出し、流体をより均一に混合することができる。各微細孔の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・における流速誤差は、平均値より±100%以内であることが好ましく、±50%以内であることがより好ましい。
各微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の径が同じであるとみなせるとき、各微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の長さが等しくなるように設計すればよい。これにより、各微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・における、流体の流速を均一化することができる。一方、各微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の径が異なる場合、径に応じて長さを適宜変えることにより、開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・における流体の流速を、より均一にすることができる。微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の長さを変える場合には、流出口となる他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・のピッチを調整する、あるいは流入口となる一方の開口部3a、3a、・・・、4a、4a、・・・の位置を調整することで、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の長さを変えることができる。
(3c)流体混合器10および10aにおいて、流出空間Saに対する面内における微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・の配置を、流出空間Saに対する面内において、ピッチがランダムになるようにしてもよい。
微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流出口となる、他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・のピッチを乱し、ランダムな配置とする。これにより、流体の拡散長が場所によって異なることとなり、均一ではない(ランダムな)混合を実現できる。その結果、ランダムな生成物を得ることができる。例えば、この流体混合器10および10aをナノ粒子製造に用いる場合、粒径の揃った単分散の粒子ではなく、流径が一定のばらつきを持った、多分散の粒子を一度に安定して加工することができる。
(3d)流体混合器10及び10aにおいて、流出空間Saに対する面内における微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・の配置を、該面内における特定の領域におけるピッチと、他の特定の領域におけるピッチとが、異なるようにしてもよい。
例えば図11に示すように、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流出口となる、他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・のピッチを、面内の第一の領域Mと、第二の領域Nとで、異なるものとする。これにより、流体の拡散長が面内の領域によって異なることとなる。例えば第一の領域Mにおける微細孔のピッチL1と、第二の領域Nにおける微細孔のピッチL2との関係を、L1<L2とした場合、流体の混合速度が、第一の領域Mでは第二の領域Nよりも早くなる。また、例えば、この流体混合器をナノ粒子製造に用いる場合、粒径の揃った単分散の粒子ではなく、粒径2水準を有する粒子の同時成形等、異なる2種の生成物或いはばらつきを持った生成物を得ることができる。
(3e)流体混合器10及び10aにおいて、流出空間Saに対する面内における微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・近傍において、微細孔の径が絞られた構造としてもよい。
図12に示すように、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流出口となる、他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・近傍において、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の径を絞り、テーパー状とする。これにより、流出口近傍での流体の流速が上がり、渦流が発生しやすくなる。これにより流体の混合性が向上する。また、流出口近傍の流路径のみが細いので、圧力損失の上昇を最小限に抑えることが可能となる。なお、図12では、微細孔の形状を説明するために、1つの孔のみを示している。
テーパー角には好適な角度として、微細孔3、4の流出口径をdとし、内部径をdとしたとき、テーパー距離Lに対する、流路幅の縮小分ΔD(d−d)の比率(ΔD/L)が、0.05〜4の範囲が好ましく、0.1〜1の範囲がより好ましい。(ΔD/L)が0.05よりも小さい場合、十分な流路径差を生み出すことが難しくなる。一方、(ΔD/L)が4よりも大きい場合、流体の種類によっては、流路内で滞留が起き、流路内に堆積物ができやすくなる。例えば、微細孔の流出口径dが23μm、内部径dが25μmである場合、流出口近傍では18%程度の流速の増大が期待できる。そのため、流路径の差ΔDは、1μm以下であれば十分な効果が得られる。
(3f)流体混合器10及び10aにおいて、流出空間Saに対する面内における微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・近傍において、微細孔の径が広げられた構造としてもよい。
微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の流出口となる、他方の開口部3b、3b、・・・、4b、4b、・・・近傍において、微細孔3、4の径を広げた構造としてもよい。このような構造とすることで、隣りあう微細孔3、3、・・・、4、4、・・・から流出する2種類の流体間に生じる流れの剥離を抑制することができる。これにより乱流及び微細孔3、3、・・・、4、4、・・・から流出した流体の抵抗を抑えることができるため、より大きな圧力で流体を押し出すことが可能となる。その結果、混合物の処理量を増加することができる。
(3g)流体混合器10及び10aにおいて、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の側壁に、コーティング層が設けられていてもよい。
なお、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・に粘着性の高い流体を流すと、側壁に付着物が堆積し、孔が詰まる懸念がある。フッ素樹脂コーティング層は薄膜で塗布形成することができるため、微細孔内にも形成可能である。そのため、基体2側へのフッ素樹脂コーティング層を設けることで、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・の詰まりを抑制することができる。
また、筐体にコーティング層を設けることにより、流体混合器の耐薬品性を向上することができる。耐薬品性を持たせるには、コーティング層の厚膜化が必要となるため、基体2側に厚膜コーティング層を設けることは困難であるが、筐体側には容易に設けることができる。なお、基体2にガラスを用いた場合、耐薬品性を高めることができる。一方で、筐体はSUSなどの材料で加工されるため、一般に耐薬品性が低い。そのため、筐体側に耐薬品性を持たせることは極めて有効な手段である。
(3h)流体混合器10及び10aにおいて、基体2の内部に、温度調整手段が設けられていてもよい。
領域Aの下流側に別途マイクロ流路を設け、流路内を流れる物質の温度をコントロールできるように温度調整手段を設けてもよい。温度調整手段としては特に限定されるものではないが、基体2上に、ヒーター、あるいはヒーター及び温度センサ部となる配線構造を形成することができる。この際、溶液に対して絶縁を保つため、基体2上に絶縁層を設けても構わない。ヒーターあるいは温度センサの配線としては、例えば、ニクロム、ITOなどが上げられる。また、昇温のためにマイクロ波を使用しても構わない。
例えば図13に示すように、基体2上に導管あるいはPWW(ポストウォールウェーブガイド)90などを設け、基体2の内部に流路25を設けることで、加熱することが可能となる。また、基体2上に流路を設け、この流路内に、適切な温度を有する流体(液体やガス)を流すことにより、昇温、冷却を行ってもよい。
(3i)流体混合器10及び10aにおいて、基体2の外側に、温度調整手段が設けられていてもよい。
基体2の外側(例えば筺体20部分)に、温度調整機構を設けてもよい。温度調整手段としては、特に限定されず、例えば、温度センサとなる熱電対、ヒータとなるマイクロヒータを用いることができる。これらの温度調整機構の挿入口を、基体2の外側に設ければよい。或いは、基体2内部に流路を設け、この流路内に、適切な温度を有する流体(液体やガス)を流すことにより、昇温、冷却を行ってもよい。
(3j)流体混合器10及び10aにおいて、基体2は、一方が流出空間Saに連通し、他方が表面に連通する流出口流路21を有し、該流出口流路21は、一方側が広く、他方側が狭くなるように径が絞られた構造としてもよい。
図14に示すように、筐体20に設けられた、一方が流出空間Saに連通し、他方が表面に連通する流出口流路21において、流出口流路21の他方側を絞りのある構造としてもよい。領域Aでは微細孔3、3、・・・、4、4、・・・が2次元的な配列をとるため、領域Aにおいて基体2の開口面積は、流路群のある領域の面積よりも大きな面積とする必要がある。一方で、微細孔3、3、・・・、4、4、・・・を出た2種類の流体の混合を速めるには、流出口流路の径を小さくし、流体間の拡散距離を小さくすることが好ましい。そのため、領域Aにおける流出口流路を絞りを有する構造とすることが好ましい。
(3k)流体混合器10及び10aにおいて、基体2は、一方が流出空間Saに連通し、他方が表面に連通する流出口流路21を有し、該流出口流路21が屈曲した構造としてもよい。
図15に示すように、筐体20に設けられた、一方が流出空間Saに連通し、他方が表面に連通する流出口流路21において、流出口流路21の一方側を屈曲した構造としてもよい。流出口流路を屈曲させることで、この部分で対流が強制的に起きる。さらに、この対流によって流体変形が生じ、2種類の流体間の拡散距離を短くすることができる。これにより、より効率的な混合を実現できる。
「第3実施形態」
図16Aは、上述したような流体制御デバイス1、1a、1b、1c、1dを搭載した本実施形態に係るμTASチップ100の一構成例を示す模式図であり、μTASチップ100の平面図である。図16Bは、流体制御デバイス部分の拡大平面図、図16Cは、流体制御デバイス部分の拡大断面図である。
図16A〜図16Cに示したμTASチップ100は、μTASチップ本体として機能する基体110と、この基体110と一体を成すように設けられた流体制御デバイス10(10a)を少なくとも備える。このμTASチップ100は、さらに、流体制御デバイス10(10a)の下流側にリアクタ120、セパレータ130、検出器140を備えているが、これはμTASチップの一構成例であって、これに限定されるものではない。たとえば、リアクタ120、セパレータ130、検出器140は、μTASチップ100と別体を成す構成としてもよい。
分析対象の流体(液体や気体)と、選択されたキャリアとは、流入空間Sb、Scから、それぞれのフィルター機能部Fを通った後、流体制御デバイス10(10a)の流路へ流入し、流出空間Saで混合される。その後、リアクタ120で反応したサンプルは、必要に応じてセパレータ130で、キャリアと分離され、所望の分析情報が検出器140によって、外部機器等へ取り出される。
なお、μTASの構成としては、本実施形態のように流体混合部やリアクタ、セパレータ等を一つの基板に集積させたものの他に、流体混合器、リアクタ、セパレータ等の個別部品を組み上げてシステム化することもできる。
以上、本発明の実施形態として、具体例を挙げて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
1a、1b、1c、1d、1e(1) 流体制御デバイス、2 基体、3、4、30、31、32、40、41、42、50、60、70、80 微細孔、10a(10) 流体混合器、100 μTASチップ、Sa 流出空間、Sb、Sc 流出空間、α、β(n) 流路群。

Claims (12)

  1. 流体を混ぜるための流体制御デバイスであって、
    単一の基体と、前記基体内に配される複数の微細孔と、を少なくとも備え、
    前記微細孔のうち特定の一群を構成する流路群αは、前記基体の表面(外面)における領域Aと領域Bに各々開口部を有し、
    前記微細孔のうち他の特定の一群を構成する流路群β(n)は、前記基体の表面(外面)における前記領域Aと領域C(n)に各々開口部を有しており、
    前記基体内において、異なる前記流路群に属する微細孔はその全長に亘離間して配され、
    前記流路群αを構成する前記微細孔は、前記領域Aと前記領域Bとの間で、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しつつ連通して形成され、
    前記流路群βを構成する前記微細孔は、前記領域Aと前記領域Cとの間で、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しつつ連通して形成され、
    前記領域Aの前記開口部は、前記流体の流出口であり、前記基体の上面側に位置することを特徴とする流体制御デバイス。
    ただし、上記nは、自然数を表す。
  2. 前記流路群αを構成する前記微細孔は、前記基体内で、前記基体の上面および側面の2方向に沿って形成された部分が互いに直交して形成され、
    前記流路群βを構成する前記微細孔は、前記基体内で、前記基体の上面および側面の2方向に沿って形成された部分が互いに直交して形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の流体制御デバイス。
  3. 前記領域Bと前記領域Cに面する前記開口部は、前記流体の流入口であり、前記基体の下面側に位置することを特徴とする請求項1乃至2に記載の流体制御デバイス。
  4. 前記流路群α、βのうち少なくともいずれかの流路群において、少なくとも一部が前記基体の厚さ方向に隣り合う2つの微細孔は、少なくとも前記基体の側面に沿って延在する箇所が、平面視において略重なっていることを特徴とする請求項3に記載の流体制御デバイス。
  5. 前記流路群α、βのうち少なくともいずれかの流路群において、1つの微細孔と、この微細孔に対して、前記基体の奥行きまたは幅方向に隣り合う全ての微細孔との間隔が、互いに略同一となることを特徴とする請求項3乃至4に記載の流体制御デバイス。
  6. 前記領域Aにおいて、全ての微細孔の開口部は二次元的に配置されている、ことを特徴とする請求項乃至のうちいずれか一項に記載の流体制御デバイス。
  7. 前記領域Aにおける開口部の配置は、異なる前記流路群に属する微細孔の開口部同士が、最も隣接した位置を成している、ことを特徴とする請求項に記載の流体制御デバイス。
  8. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の流体制御デバイスと、該流体制御デバイスを内在するとともに、該流体制御デバイスの領域に面する単一の流出空間、及び、該流体制御デバイスの領域Bと領域Cに個別に面する流入空間を少なくとも備えた筐体と、から構成されている、ことを特徴とする流体混合器。
  9. 単一の基体に、流路として機能する複数の微細孔、複数の流入空間、及び、共通する流出空間を備え、
    前記微細孔のうち、
    一群を構成する全ての微細孔は、一方の開口部が特定の前記流入空間に、他方の開口部が前記流出空間に、各々連通するとともに、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しており、
    他の一群を構成する全ての微細孔は、一方の開口部が他の特定の前記流入空間に、他方の開口部が前記流出空間に、各々連通するとともに、前記基体内で3次元的に交差または屈曲しており、
    前記流出空間が前記基体の上面側に位置することを特徴とする流体混合器。
  10. 前記一群を構成する全ての微細孔の他方の開口部と、前記他の一群を構成する全ての微細孔の他方の開口部は、前記流出空間に対する面内において二次元的に配置されている、ことを特徴とする請求項に記載の流体混合器。
  11. 前記流出空間に対する面内における前記微細孔の他方の開口部の配置は、異なる前記流入空間に通じる開口部同士が、最も隣接した位置を成している、ことを特徴とする請求項10に記載の流体混合器。
  12. 前記複数の微細孔が、略同じ長さを有すること、を特徴とする請求項乃至11のいずれか一項に記載の流体混合器。
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