JP5649341B2 - モータ及びモータ用ジョイント部材 - Google Patents

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Description

本発明は、電動パワーステアリング装置の駆動源等として使用されるモータに関し、特に、焼結金属製のジョイント部材により、モータの出力軸と被動軸との間を接続するモータに関する。
電動モータを駆動源として使用するシステムでは、モータの回転トルクを被動側に伝達する際、モータの出力軸と被動軸との間を接続するジョイント部材が使用される。ジョイント部材は、モータ出力軸(シャフト)に圧入固定され、シャフト側又はジョイント部材側に設けられたセレーションによりり止め固定される。このセレーションをシャフト側に設ける場合は、セレーションを形成したシャフトに焼入れを行い、シャフトをジョイントの挿入孔に食い込ませるように取り付ける。
一方、ジョイントの挿入孔にセレーションを設けたものでは、ジョイント側に焼入れを行い、シャフトにセレーションの山を食い込ませるように設定する。図6は、挿入孔側にセレーションを設けたタイプのジョイントの構成を示す説明図である。図6に示すように、ジョイント部材51では、シャフト52にセレーション53を積極的に食い込ませるため、セレーション52を三角歯状に形成している。セレーション53は、表面を削ぐ形でシャフト52に食い込み、ジョイント部材51とシャフト52が固定される。
特開2002-369443号公報 特開2004-88901号公報
ところが、セレーションを食い込ませる形でシャフトと固定されるジョイント部材では、若干の芯ズレがある場合でも、セレーションの食い込みが不均一な状態で、シャフトをジョイントに取り付けることができる。このため、シャフトとジョイントが芯ズレした状態で接続され、両者間の同軸精度が低下し、シャフトの振れが生じ易いという問題があった。また、このようなシャフトの振れが生じると、被動軸を支持するベアリングに偏荷重が掛かり、ベアリングの負担が増大して騒音発生や寿命低下などの問題が生じるおそれがある。
さらに、従来のジョイント部材51では、セレーション52を三角歯状に形成しているため、セレーション先端部54(図6(b)参照)の肉厚が薄くなる。このため、ねじりトルクが加わると、先端部54が欠損しセレーション53が破損するおそれがある。特に、焼結金属製のジョイント部材の場合、三角歯セレーションの先端部は、焼結工程時に圧縮荷重が掛かりにくく、密度が低くなりがちなため、脆くなり易いという問題があった。
本発明の目的は、ねじりトルクに対する剪断強度に優れ、しかも、高い同軸精度を確保し得るモータ用ジョイント部材を使用したモータを提供することにある。
本発明のモータは、出力軸と被動軸との間を焼結金属製ジョイント部材によって接続するモータであって、前記ジョイント部材は、浸炭焼き入れが施されてなり、前記出力軸が圧入固定される駆動軸取付孔と、前記被動軸が挿入される被動軸取付孔とを有し、前記駆動軸取付孔は、前記出力軸が圧入される際、該出力軸の外周面に圧接される曲面状の内周面を有するインボリュート形状に形成されたセレーション部を備え、前記出力軸は、前記セレーション部との間で該出力軸の塑性変形に伴う圧接保持力により、前記駆動軸取付孔内で、前記出力軸と面接触状態で回り止め固定されることを特徴とする。
本発明にあっては、ジョイント部材の駆動軸取付孔にモータの出力軸を圧入すると、駆動軸取付孔に設けたセレーション部により、出力軸とセレーション部との間に圧接保持力が生じる。出力軸は、この圧接保持力によってジョイント部材に固定される。すなわち、出力軸は、セレーションが食い込む形ではなく、ジョイント部材との間の圧接保持力にてジョイント部材内にり止め固定される。
また、本発明のモータ用ジョイント部材は、モータの出力軸と前記モータによって駆動される被動軸との間を接続し、前記出力軸が圧入固定される駆動軸取付孔と、前記被動軸が挿入される被動軸取付孔とを有するモータ用ジョイント部材であって、該モータ用ジョイント部材は浸炭焼き入れが施されてなり、前記駆動軸取付孔は、前記出力軸が圧入される際、該出力軸の外周面に圧接される曲面状の内周面を有するインボリュート形状に形成されたセレーション部を備え、前記出力軸は、前記セレーション部との間で該出力軸の塑性変形に伴う圧接保持力により、前記駆動軸取付孔内で、前記出力軸と面接触状態で回り止め固定されることを特徴とする。
本発明のモータによれば、出力軸と被動軸との間を焼結金属製ジョイント部材によって接続するモータにて、前記ジョイント部材の駆動軸取付孔に、出力軸が圧入される際、該出力軸の外周面に圧接されるセレーション部を設け、このセレーション部と出力軸との間に生じる圧接保持力により、出力軸を駆動軸取付孔内にり止め固定するようにしたので、出力軸にセレーションを食い込ませる形ではなく、圧接力にてジョイント部材と出力軸を固定することが可能となる。
このようなセレーション部を設けることにより、芯ズレがある状態では出力軸をジョイント部材内に圧入しにくくなり、ジョイント部材と出力軸を高い同軸精度で結合することが可能となる。また、かかるセレーション部は、三角歯状セレーションに比して、内径寸法を高精度に仕上げることができるため、この点においても、出力軸とジョイントとの間の同軸精度向上が図られる。
さらに、前述のセレーション部は、三角歯状セレーションに比して、周方向の厚さを大きくできるため、セレーションの強度が向上すると共に、焼結密度を上げることも可能となる。従って、ねじりトルクによりセレーション部が破損してしまうのを防止することができ、ジョイント部材の信頼性向上が図られる。
一方、本発明のモータ用ジョイント部材によれば、モータの出力軸とモータによって駆動される被動軸との間を接続し、出力軸が挿入される駆動軸取付孔と、被動軸が挿入される被動軸取付孔とを有するモータ用ジョイント部にて、材駆動軸取付孔に、出力軸が圧入される際、該出力軸の外周面に圧接されるセレーション部を設け、このセレーション部と出力軸との間に生じる圧接保持力により、出力軸を駆動軸取付孔内にり止め固定するようにしたので、出力軸にセレーションを食い込ませる形ではなく、圧接力にてジョイント部材と出力軸を固定することが可能となる。
本発明の一実施例であるモータの構成を示す断面図である。 本発明の一実施例であるジョイントの構成を示す断面図である。 ジョイントの右側面図である。 出力軸圧入時のインボリュートセレーションと出力軸の状態を示す説明図である。 台形歯形状のセレーションの構成を示す説明図である。 従来のジョイントの構成を示す説明図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例であるモータを用いたモータユニットの構成を示す断面図である。図1のモータユニット10は、電動パワーステアリング装置の駆動源として使用され、運転者がハンドルを操作すると、その操舵角や車両走行速度等に従い、操舵補助力を供給する。モータユニット10は、モータ11と、減速機構部41とから構成されており、モータ11の出力軸12は、本発明の一実施例であるジョイント(ジョイント部材)1を介して、減速機構部41の入力軸(被動軸)13と接続されている。
モータユニット10では、モータ11の回転は、ジョイント1を介して入力軸13に伝わる。入力軸13の回転は、減速機構部41内にて適宜減速される。減速機構部41のギヤハウジング42内には、ベアリング43a,43bによって、入力軸13が回転自在に支持されている。入力軸13にはウォーム44が形成されており、ウォームホイール45と噛合している。ウォームホイール45はホイール軸46に固定されており、ホイール軸46は、ウォームホイール45と共に回転する。
モータ11が回転すると、その回転は減速機構部41によって減速され、ホイール軸46から出力される。ホイール軸46の回転は、図示しないユニバーサルジョイント等を介してステアリングコラムに伝達される。ステアリングコラムの回転動作は、ラックアンドピニオン型のステアリングギア部においてタイロッドの往復動作に変換され、操向車輪の転舵が行われる。これにより、操舵力がモータ11の回転力により補助され、運転者は小さな力でハンドルを操作することが可能となる。
モータ11は通常の電磁モータであり、円筒状のヨーク15内面には複数の界磁永久磁石16が固定されている。界磁永久磁石16の内側には、アーマチュア17が回転自在に配置されている。アーマチュア17は、軸方向に延びる複数のスロット18を有するコア19と、スロット18に巻回された巻線20とを備えている。アーマチュア17は出力軸12に固定され、ベアリング21a,21bにて回転自在に支持されている。
アーマチュア17の図1において左側には整流子22が設けられている。整流子22は、出力軸12に固定され、その表面にはブラシ23が当接している。ブラシ23は、ブラシホルダ24内に保持されている。ブラシホルダ24は、ブラケット25内に収容され、ねじ26にてブラケット25に固定されている。ブラケット25は、ボルト27によりヨーク15と結合されている。
出力軸12の左端部には、ジョイント1の一端側(図1において右端側)が取り付けられる。一方、ジョイント1の他端側(同左端側)には、入力軸13が取り付けられ、これによって出力軸12と入力軸13とが連結される。ジョイント1は、鉄やステンレス等を用いた焼結金属製の軸継手であり、浸炭焼き入れ・焼き戻しが施されている。ジョイント1は、ベアリング21bの端面との間に約0.3〜1mm程度の間隙をあけて取り付けられる。
図2は、ジョイント1の構成を示す断面図、図3は、ジョイント1の右側面図である。図2に示すように、ジョイント1は円筒状に形成されており、その一端側には、駆動軸取付孔(駆動軸取付部)2が設けられている。駆動軸取付孔2の内周面には、インボリュートセレーション(セレーション部)31が形成されている。インボリュートセレーション31は、インボリュート曲線にて歯形が形成されており、その内周面は曲面状となっている。駆動軸取付孔2には、出力軸12が圧入固定される。ジョイント1の他端側には、被動軸取付孔(被動軸取付部)3が設けられている。被動軸取付孔3の内周面には、スプライン32が形成されている。被動軸取付孔3には、入力軸13が挿入固定される。
当該ジョイント1では、被動軸取付孔3は、駆動軸取付孔2よりも大径に形成されており、被動軸取付孔3の基準ピッチ円径は10mm、駆動軸取付孔2の基準ピッチ円径は8.5mmに形成されている。また、インボリュートセレーション31は、モジュール0.25,歯数34、スプライン32は、モジュール0.5,歯数20に形成されている。なお、これらの数値はモータ等の仕様によって適宜変更可能なのは言うまでもない。
このようなモータ11では、次のようにして出力軸12と入力軸13が連結される。ここではまず、図1のように、ジョイント1を出力軸12に取り付ける。前述のように、駆動軸取付孔2には出力軸12が圧入され、その際、インボリュートセレーション31が出力軸12に圧接される。図4は、出力軸圧入時のインボリュートセレーション31と出力軸12の状態を示す説明図である。図4に示すように、出力軸12を駆動軸取付孔2に圧入すると、インボリュートセレーション31の内周面31aが、出力軸12の外周面12aに圧接する。この圧接により出力軸12の外周面12aが塑性変形し、出力軸12とインボリュートセレーション31が密接し、両者間の摩擦力によって圧接保持力が生じる。そして、出力軸12は、この圧接保持力の下、インボリュートセレーション31に面接触状態でり止め固定される。
ジョイント1では、駆動軸取付孔2の内周面を、三角歯状ではなく、曲面状のセレーションとしている。このため、ジョイント1は、従来のジョイントのようにセレーション部分をシャフトに食い込ませる構成ではなく、圧接保持力にてインボリュートセレーション31と出力軸12が固定される。つまり、出力軸12は、セレーションによって削がれる形ではなく、出力軸12の塑性変形に伴う圧接保持力によってジョイント1内に固定される。従って、従来のジョイントとは異なり、芯ズレがある状態では出力軸12をジョイント1内に圧入しづらく、ジョイント1は出力軸12に高い同軸精度にて取り付けられる。
また、従来の三角歯状セレーションでは、セレーション部分の内径、すなわち、三角歯先端部の内径寸法を高精度に成形することは難しく、圧入されるシャフトとの同軸性低下が避けがたかった。これに対し、本発明によるジョイント1では、セレーションがインボリュート形状のため、内径寸法を高精度に仕上げることができる。従って、この点においても、出力軸12とジョイント1との間の同軸精度が向上する。また、寸法精度の向上に伴い、圧入荷重の調整も容易となる。
さらに、インボリュートセレーション31と出力軸12の圧接部分は、従来の三角歯と異なり、周方向の厚さ(図3における左右方向の厚さt)が大きくなるため、セレーション自体の強度も向上する。また、三角歯のように、焼結工程時の圧縮荷重が掛かりにくい部位がなく、焼結密度を上げることができ、この点においても、セレーション強度の向上が図られる。従って、ねじりトルクによりインボリュートセレーション31が破損してしまうのを防止することができ、ジョイント1の信頼性向上が図られる。
なお、インボリュートセレーション31の歯数(山の数)が少ない場合には、接触面が大きくなり圧接力も大きくなるが、圧入荷重も増大するため、圧入代を小さく設定し、圧接保持力を確保しつつ作業性悪化を回避する。逆に、インボリュートセレーション31の歯数が多い場合には、接触面が小さくなり圧接力も小さくなるが、圧入荷重も小さくなるため、圧入代を大きく設定して固着力を確保する。このように、ジョイント1と出力軸12の間の固着力は、専ら両者間の圧入代に依っており、歯数と圧入代、圧入荷重を適宜設定することにより、インボリュートセレーション31の圧接による緊縛力を調整することができる。
ジョイント1を出力軸12に取り付けた後、被動軸取付孔3に入力軸13を挿入する。入力軸13の先端部にはスプライン部14が形成されており、このスプライン部14を被動軸取付孔3のスプライン32と係合させつつ、入力軸13を被動軸取付孔3に挿入する。これにより、入力軸13がジョイント1にり止めされた状態で取り付けられ、出力軸12と入力軸13がジョイント1によって連結される。その際、ジョイント1は、前述のように同軸精度が高い状態で出力軸12に取り付けられており、入力軸13は出力軸12と高同軸精度で接続される。従って、芯ズレに起因する入力軸13の振れが抑えられ、ベアリング43a,43bに掛かる偏荷重も抑制される。このため、モータユニット10の振動や異音、寿命低下などを抑制することができ、モータユニット10の静粛性や耐久性の向上を図ることが可能となる。
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、駆動軸取付孔2の内周面にインボリュートセレーション31を形成した例を示したが、インボリュートセレーション31に代えて、図5のような、台形歯形状のセレーション35を形成しても良い。このような台形歯形状のセレーション35も内径寸法精度が確保し易く、歯自体の強度も高い。また、セレーション内周面をインボリュート形状ではなく、サイン曲線や楕円曲線等の他の曲面形状とすることも可能である。
一方、前述の実施例では、本発明によるジョイント1をブラシ付きモータに使用した例を示したが、本発明のモータの形式には特に限定はなく、ブラシレスモータなどにも適用可能である。また、モータの用途にも特に限定はなく、ワイパ装置等の他の車載モータや、家電製品等に使用される一般のモータにも本発明は使用可能である。なお、モータ以外の回転電機、例えば、発電機などにも本発明のジョイントは使用可能である。
1 ジョイント(ジョイント部材)
2 駆動軸取付孔
3 被動軸取付孔
10 モータユニット
11 モータ
12 出力軸
12a 外周面
13 入力軸(被動軸)
14 スプライン部
15 ヨーク
16 界磁永久磁石
17 アーマチュア
18 スロット
19 コア
20 巻線
21a,21b ベアリング
22 整流子
23 ブラシ
24 ブラシホルダ
25 ブラケット
26 ねじ
27 ボルト
31 インボリュートセレーション(セレーション部)
31a 内周面
32 スプライン
35 セレーション
41 減速機構部
42 ギヤハウジング
43a,43b ベアリング
44 ウォーム
45 ウォームホイール
46 ホイール軸
51 ジョイント部材
52 シャフト
53 セレーション
54 セレーション先端部

Claims (2)

  1. 出力軸と被動軸との間を焼結金属製ジョイント部材によって接続するモータであって、
    前記ジョイント部材は、浸炭焼き入れが施されてなり、前記出力軸が圧入固定される駆動軸取付孔と、前記被動軸が挿入される被動軸取付孔とを有し、
    前記駆動軸取付孔は、前記出力軸が圧入される際、該出力軸の外周面に圧接される曲面状の内周面を有するインボリュート形状に形成されたセレーション部を備え、
    前記出力軸は、前記セレーション部との間で該出力軸の塑性変形に伴う圧接保持力により、前記駆動軸取付孔内で、前記出力軸と面接触状態で回り止め固定されることを特徴とするモータ。
  2. モータの出力軸と前記モータによって駆動される被動軸との間を接続し、前記出力軸が圧入固定される駆動軸取付孔と、前記被動軸が挿入される被動軸取付孔とを有するモータ用ジョイント部材であって、
    該モータ用ジョイント部材は浸炭焼き入れが施されてなり、
    前記駆動軸取付孔は、前記出力軸が圧入される際、該出力軸の外周面に圧接される曲面状の内周面を有するインボリュート形状に形成されたセレーション部を備え、
    前記出力軸は、前記セレーション部との間で該出力軸の塑性変形に伴う圧接保持力により、前記駆動軸取付孔内で、前記出力軸と面接触状態で回り止め固定されることを特徴とするモータ用ジョイント部材。
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