JP5646179B2 - 循環器疾患に関連する遺伝的感受性変異体 - Google Patents

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Description

冠動脈疾患の主要合併症、即ち、心筋梗塞(MI)及び急性冠症候群(ACS)は、先進国における入院の主要原因である。循環器疾患は、米国、ヨーロッパ及び日本における主要な死亡原因であり続けている。該疾患のコストは、罹患率及び死亡率両方の観点、ならびに医療システム上の財政負担の観点からみて高い。
心筋梗塞は一般に、アテローム性動脈硬化により、以前に損傷されている冠動脈の血栓性閉塞に続いて、冠状動脈血流の突然の減少があった時に発生する(即ち、冠動脈疾患を有する対象)。ほとんどの症例において、アテローム硬化性プラークが亀裂、破裂又は潰瘍化した場合、及び状態が血栓形成を助長する場合に梗塞が発生する。まれな症例において、梗塞は、冠動脈塞栓、先天性異常、冠動脈攣縮及び広範な全身的、特に炎症性疾患に起因する冠動脈閉塞が原因であることもある。MIの医学的リスク因子には、喫煙、糖尿病、高血圧、及び血清総コレステロール値>200mg/dL、高血清LDLコレステロール及び低血清HDLコレステロールが含まれる。循環器疾患の既往歴のない個体におけるイベント率は約1%である。最初のMI又はACSを有する個体においては、1年以内の反復MIのリスクは、血管形成術及びステント留置を含む最大の医学的管理にもかかわらず、10〜14%である。
アテローム性動脈硬化は、多くの大及び中動脈中の血管床に影響を及ぼし得る。心筋梗塞及び不安定狭心症(急性冠症候群(ACS))は、冠動脈アテローム性動脈硬化(冠動脈疾患)から生じ、一方、虚血性脳梗塞は最も高い頻度で、頚動脈又は大脳動脈アテローム性動脈硬化の結果である。末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)に起因する肢虚血は、腸骨、大腿及び膝窩動脈アテローム性動脈硬化の結果として発生してもよい。アテローム硬化性疾患は、血栓症を阻害する(アスピリン)又は血中の上昇したコレステロールレベル(スタチン)、糖尿病又は高血圧(利尿薬及び降圧薬)のような医学的リスク因子を治療する医薬の広く行き渡った使用にもかかわらず、一般的なままである。
アテローム硬化性疾患は、動脈壁内の脂質の蓄積、特に低密度リポタンパク質(LDL)コレステロールの蓄積により開始される。捕捉されたLDLは酸化され、そしてマクロファージにより内部移行される。このことは、「泡沫細胞」と称される、コレステロール−怒張(engorged)マクロファージの蓄積を含有するアテローム硬化性病変の形成を起こす。病気が進行するにつれて、平滑筋細胞が増殖し、そして動脈壁内へ増殖し、脂質に富む壊死性コアを封入する細胞外マトリックスの「線維性被膜」を形成する。生涯を通してほとんどの人々の動脈壁に存在し、線維性アテローム硬化性プラークは比較的安定である。こうした線維性病変は管腔直径の減少又は心臓への酸素の供給に対する深刻な影響なしに、外側弾性膜を外側へ動かし、動脈壁の広範なリモデリングを起こす。従って、患者は該疾患過程の後期まで、管腔狭小化なしで線維性アテローム硬化性病変を発育させることができる。しかしながら、冠状動脈管腔は時間と共に徐々に狭小化し、ある場合には、特に運動のような高需要状態下、心臓への血流を損なう。このことは、安定狭心症と称される、休息により回復する胸痛を起こす可逆的虚血を生じ得る。
線維性アテローム硬化性病変の相対安定性とは対照的に、心筋梗塞及び不安定狭心症(その各々は急性冠症候群の一部である)に関連する責任病変は薄い線維性被膜、大きな脂質コア、及びTリンパ球及び単球/マクロファージのような炎症細胞の浸潤により特徴付けられる。非侵襲的イメージング技術は、ほとんどのMIが低又は中程度の狭窄を有する部位で発生していることを示し、冠動脈閉塞は最も高い頻度で、血栓又は血塊の形成を生じる責任病変の破裂によるものであり、単に狭窄による管腔狭小化によるものではないことを示している。プラーク破裂は、通常、マクロファージが入り込み、蓄積され及び局所炎症過程により活性化される、病変の縁でのびらん又は線維性被膜の不均等な薄層化によるものであることができる。線維性被膜の薄層化は、活性化マクロファージから放出されたプロテアーゼによる細胞外マトリックスの分解で生じることができる。これらの変化を作り出すプラーク不安定性及びMIのリスクは、組織因子凝血原及び血栓症の可能性を増加させる他の因子の産生により増大させることができる。
急性冠症候群において、局所血栓症を伴う破裂又はびらんを示している責任病変は、典型的には血管形成術により又は管腔開存性を維持するためのバルーン拡張及びステント留置により治療される。ACSを経験している患者は、最初のインシデント後12ヶ月以内に10〜14%に達するイベント率を有する冠動脈疾患の多血管性による、第二の冠状動脈イベントについて高いリスクにある。
MIの考え方は、前から存在する慢性アテローム硬化性病変上の動脈血管壁の炎症性疾患とするものであり、時に責任病変の破裂の引き金を引き、局所血栓症そして引き続いて心筋梗塞を導く。プラーク不安定性を導く動脈壁炎症の引き金を引く及び維持する過程は未知であるが、しかしながら、それは腫瘍壊死因子アルファ及びインターロイキン−6の循環系内への放出を生じる。損傷を受けた血管壁から放出された、これら及び他のサイトカイン又は生物学的メディエーターは、肝臓において炎症性応答を刺激し、C反応性タンパク質を含むいくつかの非特異的一般炎症マーカー上昇を起こす。アテローム性動脈硬化に特異的ではないけれども、上昇したC反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドAは、多分血管壁炎症の代替物として、MIについてのリスクを予測するように思われる。多くの一般炎症マーカーが冠動脈心疾患のリスクを予測するが、これらのマーカーはアテローム性動脈硬化に特異的ではない。例えば、Stein(Stein、S.、Am J Cardiol, 87 (suppl):21A-26A (2001))は、冠動脈心疾患のリスクを予測するための代替物として、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、可溶性血管細胞接着分子(sVCAM)、可溶性脈管間接着分子(sICAM)、E−セレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ1型、マトリックスメタロプロテアーゼ2型、マトリックスメタロプロテアーゼ3型及びマトリックスメタロプロテアーゼ9型を含む血清炎症マーカーのいずれか一つの使用を議論している。一つ以上のこれらの血清炎症マーカーの上昇は冠動脈心疾患に特異的ではなく、年齢にともなっても、又は脳血管疾患、末梢血管疾患、インスリン非依存性糖尿病、変形性関節症、細菌感染及び敗血症に関連しても生じる。
上昇したCRP又は他の血清炎症マーカーは、以前に心筋梗塞があった患者における二回目の心筋梗塞の増加したリスクについての予後診断でもある(Retterstol, L. et al., Atheroscler., 160: 433-440(2002))。
喫煙、高脂血症、高血圧及び糖尿病のような古典的リスク因子は冠動脈心疾患(CHD)及びMIの多くの症例に関連しているが、多くの患者ではこれらのリスク因子は関与していない。実際、一つ又はそれ以上のこれらのリスク因子を示す多くの患者はMIを発症しない。家族歴は、主要なリスク因子の一つとして認識されてきた。いくつかのMIの家族内集積は、他の通常のリスク因子に対する遺伝的寄与を反映するけれども、多くの研究は、既知のリスク因子ものを超える有意な遺伝的感受性因子があることを示唆している(Friedlander Y, et al., Br. Heart J. 1985; 53:382-7, Shea S. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 1984; 4:793-801, 及び Hopkins P. N., et al., Am. J. Cardiol. 1988; 62:703-7)。主遺伝的感受性因子は、家族性高コレステロール血症のような高脂血症の希なメンデリアン(Mendelian)形態についてのみ同定されている。
遺伝的リスクは、集団中の個体間の遺伝子のわずかな相違により与えられる。個体間で異なる遺伝子は、最も高い頻度で一塩基変異多型(SNP)によるものであるが、他の相違も重要である。SNPはヒトゲノム中、平均1000塩基対ごとに位置している。従って、250,000塩基対を含有する典型的なヒト遺伝子は250の異なったSNPを含んでいてもよい。少数のSNPがエクソンに位置しており、該遺伝子によりコードされているタンパク質のアミノ酸配列を変化させる。ほとんどのSNPは遺伝子機能に影響を及ぼさないが、一方、他のものは遺伝子によりコードされているmRNAの転写、スプライシング、翻訳又は安定性を変化させることができる。ヒトゲノム中の追加の遺伝的多型は、短い又は長いDNAの挿入、欠失、転座又は反転により起こされる。疾患リスクを与える遺伝子多型は、それ故、直接的にタンパク質のアミノ酸配列を変化させることができ、遺伝子から産生されるタンパク質の量を増加させることができ、又は遺伝子から産生されるタンパク質の量を減少させることができる。
疾患のリスクを与える遺伝子多型は明らかにされていないので、こうしたリスク因子についての遺伝子試験が、臨床医薬に重要となってきている。例は、アルツハイマー病の異なった診断のために、認知症患者におけるアポE4多形の遺伝的キャリアを同定するアポリポタンパク質E試験、及び深部静脈血栓症の素因についての第V因子ライデン試験である。より重要なことには、癌の治療において、腫瘍細胞中の遺伝子変異体の診断は、個々の患者の最も適切な治療計画の選択のために使用される。乳癌において、エストロゲンレセプター発現又はヘレグリン2型(Her2)レセプターチロシンキナーゼ発現における遺伝子変異は、抗エストロゲン剤(タモキシフェン)又は抗Her2抗体(ハーセプチン)が治療計画内に取り込まれるであろうかどうかを決定する。慢性骨髄性白血病(CML)おける、Bcr及びAblレセプターチロシンキナーゼをコードする遺伝子を融合するフィラデルフィア染色体遺伝子転座の診断は、Bcr−Ablキナーゼの特異的阻害剤、Gleevec(STI571)を該癌の治療に使用すべきであることを示している。こうした遺伝子変異を有するCML患者に対しては、Bcr−Ablキナーゼの阻害は、腫瘍細胞の迅速な除去及び白血病からの寛解を導く。
再狭窄
バルーン冠動脈形成術は、冠動脈バイパス術(CABG)手術よりも冠動脈疾患患者の血管再開通術のためのより侵襲性の少ない方法として1970年代後半に導入された。それ以来、限定された血流しかない領域を血行再建させるための新規経皮的デバイスの開発は急速に進行してきた。しかしながら、血管形成術使用の拡大は、増殖性プロセスにより動脈が血管形成術に反応し、この治療の成功を限定している。このプロセスは再狭窄として知られている。
再狭窄は、動脈の隣接正常セグメントにおける管腔の50%に等しい又は上回る、治療されたセグメントの再狭小化として定義される。研究された患者集団に依存して、再狭窄率は、バルーン拡張により治療された病変の30%〜44%の範囲である。この問題は、再狭窄のリスクを最小にする介入技術の探求を促した。いくつかの臨床試行は、血管内ステント留置で再狭窄率の有意な減少を示した。ステント留置の目的は、放射状の支持を提供する足場プロセスにより動脈管腔を維持することである。通常ステンレススチールにより作製されているステントは、自己拡張型メカニズムか又はバルーン膨張を使用して動脈中に設置される。しかしながら、ステント内(in-stent)再狭窄が、経皮的冠動脈形成術(PTCA)の分野で主たる問題として未だに残っており、患者が繰り返しの手法及び手術を受けることを必要としている。再狭窄は、コラーゲン基質中の平滑筋様細胞の組成からなる新生内膜の形成の結果である。ステント内再狭窄のための現在の治療モダリティーには、反復バルーン血管形成術、反復ステント留置術、カッティングバルーン血管形成術、方向性冠動脈粥腫切除術、回転式冠動脈粥腫切除術、近接照射療法,及び薬剤溶出ステント(DES)が含まれる。再狭窄問題は、局所血管内照射(冠動脈内血近接照射療法)により、及びDESの導入により最小化でき、そしてこれらの治療は、ステント移植又は血管形成術後の細胞増殖を成功裏に防ぐことが示されている。
冠動脈内血近接照射療法は、放射活性物質の密封源が使用され、動脈内腔のアテローム硬化性病変の部位にそれを置くことにより、非常に近い距離での照射が行われる治療である。近接照射療法の身体的利点は、放射線の線量が標的にほとんど直接送達でき、非常に急速に減退した線量しか周囲の正常組織へは与えない。このモダリティーを強調している論拠は、細胞増殖、この場合、新生内膜を形成するように傾いた平滑筋細胞の増殖を阻害するイオン化放射線に基づいている。近い将来、ステント内再狭窄になるリスクに関して患者を分類できることが重要になるであろう。分類の結果により、どの療法が最も適切であるか、及びどこの冠動脈バイパス形成手術を考慮しなければならないかを決定することができる。
動脈瘤
動脈壁の退行性変化は、腹部大動脈瘤(AAA)及び 頭蓋内動脈瘤(IA)を含む、動脈の局所化された拡張、又は動脈瘤を起こすことができる。血管壁のアテローム硬化性変化は、慢性炎症、弾性媒質の破壊的リモデリング及び内側平滑筋細胞の枯渇により病理組織学的に特徴付けられるAAAの大多数で観察されており、大動脈壁の著しい弱体化を生じる。対照的に、頭蓋内動脈の桑実状動脈瘤は、アテローム性動脈硬化に関連していない。さらに、IAの病理組織学的特徴は異なっている。二分枝動脈に位置する典型的な頭蓋内動脈の桑実状動脈瘤は、媒質は薄いか又は存在せず、内弾性板は存在していないか又は激しく断片化されている。
AAA及びIAの両方とも、動脈の変性過程を示し、結果的に治療的介入か又は破裂となる自然経過を伴い、通常は無症候性である動脈の拡張を導く。IAの破裂はくも膜下出血を導き、そしてIA及びAAA両方の破裂は高い疾病率及び死亡率を有している。AAAの場合、破裂リスクは増殖速度ならびに動脈瘤のサイズとともに増加する。
脳動脈瘤又は脳動脈瘤とも称される頭蓋内動脈瘤(IA)は、脳動脈又は静脈の血管壁の弱さが血管の局所的拡張又は膨張を起こす脳血管障害である。
脳動脈瘤の一般的な場所は、ウィリス輪として知られている脳底動脈上である。脳動脈瘤のおよそ85%はウィリス輪の前部に発生し、内頚動脈及び脳の前方及び中央部分を提供するそれらの主要部分が含まれる。動脈瘤は、先天的欠陥、高血圧及びアテローム性動脈硬化のような既存の条件、又は頭部外傷から生じると信じられている。脳動脈瘤は、小児よりも成人でより一般的に発生するが、いかなる年齢でも起こりうる。
脳動脈瘤は、サイズ及び形状の両方で分類される。小動脈瘤は15mm未満の直径を有する。より大きな動脈瘤には、大(15〜25mm)、巨大(25〜50mm)及び超巨大(50mmを超える)のように分類されるものが含まれる。嚢状動脈瘤は、嚢状突出物を有するものであり、脳動脈瘤の最も普通な形態である。漿果状動脈瘤は、漿果に似た頚部及び幹を有する嚢状動脈瘤である。紡錘状動脈瘤は、幹を有しない動脈瘤である。
小さな、変化しない動脈瘤は何の症状も示さないであろう。より大きな動脈瘤の破裂前に、個体は突発性の及び異常に激しい頭痛、悪心、視力障害、嘔吐、及び意識消失のような症状を経験するかもしれないが、個体は全く症状を経験しない無症候性であることもできる。発症は通常突発性であり、警告はない。脳動脈瘤の破裂は危険であり、通常、髄膜又は脳それ自身内への出血を生じ、脳卒中を構成するくも膜下出血(SAH)又は頭蓋内血腫(ICH)を導く。再出血、水頭症(脳脊髄液の過剰蓄積)、血管攣縮(血管の攣縮又は狭小化)又は多発性動脈瘤も生じ得る。未破裂脳動脈瘤の破裂のリスクは動脈瘤のサイズに従って変化し、動脈瘤サイズが増加するとともに、リスクも上昇する。動脈瘤破裂の全体の率は、年当たり1.3%と推定されている。短期再破裂のリスクは、動脈瘤が出血した後に劇的に増加するが、該リスクはおよそ6週後にベースラインに戻る。
破裂した脳動脈瘤を有する個体の救急処置は、一般的に、低下している呼吸を回復すること、及び頭蓋内圧を減少させることを含む。現在、脳動脈瘤に対し二つの治療オプションがある:外科的クリッピング又は血管内コイリング。外科的クリッピングかそれとも血管内コイリングが、破裂した動脈瘤を塞ぐため、そして再出血のリスクを減少させるために最初の3日以内に通常実施される。
破裂した脳動脈瘤を有する患者の予後は、動脈瘤の程度及び場所、患者の年齢、総体的な健康及び神経学的状態に依存する。破裂した脳動脈瘤を有する幾人かの患者は最初の出血で死亡する。破裂した脳動脈瘤の他の患者は、神経学的欠損がほとんど又は全くなしに回復する。結果を決定する最も有意な因子は、動脈瘤の重症度及び年齢である。
腹部大動脈瘤(AAA)は、正常直径を50%以上超える、腹部大動脈の局在化した拡張である。腎臓下大動脈の正常直径は2cmである。AAAは大動脈壁の変性過程に起因する。本動脈瘤は最も一般的には腎臓下に位置しており(90%)、他の可能な場所は腎臓上、又は腎傍である。本大動脈動脈瘤は胸部でも発生し得る。
AAAはアフリカ人、アフリカ系アメリカ人、アジア人及びラテンアメリカ系遺伝形質の個体においては一般的でない。頻度は男性及び女性間で強く変動する。発生のピークは男性では70歳付近であり、60歳を超える男性の有病率は総計2〜6%である。本頻度は、非喫煙者においてよりも喫煙者でより高い(1:8)。他のリスク因子には、高血圧及び男性である性が含まれる。米国において、成人集団におけるAAAの発生率は2〜4%である。AAAの破裂は、65歳又はそれ以上の男性の1〜3%で発生し、死亡率は70〜95%である。
変性過程の正確な理由は未知のままである。既知のリスク因子には、遺伝因子、血流力学的影響、アテローム性動脈硬化、及び感染、外傷、結合組織障害、動脈炎その他のような、種々の他の因子が含まれる。AAAは一般的には、それらのサイズ及び総体症状に従って分けられる。動脈瘤は通常、もし測定された外側大動脈直径が3cmを超えていたら存在していると考えられる(大動脈の正常直径は、約2cmである)。自然経過は、時間とともに直径を増加させるものであり、続いて最終的には症状の発生(通常破裂)を発生させる。もし外径が5cmを上回ったら、動脈瘤は大きいと考えられる。5cm以下の動脈瘤については、破裂のリスクは低く、そのため手術のリスクは通常、破裂のリスクを上回る。5cm未満の動脈瘤は、それ故、修復が当然となり、又は症状が発生するのに十分大きくなる時点まで、監視下に保たれる。大多数の動脈瘤は無症候性である。破裂のリスクは、無症候性動脈瘤においても高く、それ故、手術の適用と考えられる。生じる可能性のある症状には、腰痛、側腹痛、腹痛、脚の付け根の痛み又は拍動性腹部腫瘤が含まれる。合併症には、破裂、末梢塞栓形成 、急性大動脈閉塞、大動静脈瘻又は大動脈十二指腸瘻が含まれる。身体的診察により、触知できる腹部腫瘤は気付き得る。異常音が腎臓又は内臓動脈狭窄の場合に存在し得る。
無症候性AAAのための主な治療オプションは、即時の修復及び最終的な修復のための監視である。監視は、修復のリスクが破裂のリスクを上回る小動脈瘤に適用される。AAAの直径が大きくなると破裂のリスクも増加する。世界中でいくつかの論議があるが、ほとんどの血管外科医は、動脈瘤が5cmの直径に達するまでは修復を考慮しないであろう。修復の閾値は、修復対進行中の監視を考慮した時のリスクと利点のバランスに依存して、個体間でわずかに変化する。個体の自然の大動脈サイズ、ならびに手術のリスクを増加させ又は平均余命を減少させる併存症の存在がこれに影響を及ぼし得る。現在、AAAに利用可能な修復の主な様式は、開腹動脈瘤修復(OR)及び血管内動脈瘤修復(EVAR)である。開腹修復は、選択的手段として若年患者に、又は成長している又は大きな症候性又は破裂した動脈瘤に適用される。開腹修復は、1950年代から最近まで治療介入の中心であった。血管内修復は1990年代に最初に実際的となり、現在、開腹修復の代替法として確立されているが、その役割はまだ明確には規定されていない。一般に、より年を取った高リスク患者又は開腹に適合しない患者に適用される。しかしながら血管内修復は、動脈瘤の形態に依存して、AAAの一部でのみ実行可能である。開腹修復を超える主たる利点は、周術期が患者にあまり影響を与えなくて済むことである。
脳卒中
脳卒中は、いくつかの病態生理学的メカニズムを包含する多様な障害の群である。脳卒中の臨床表現型は複雑であるが:虚血性及び出血性卒中に大別される。脳卒中イベントの大多数(およそ80%)は、大脳動脈が完全に閉塞され、そして脳の一部への血液供給が全体的に又は部分的に遮断された時(血栓症又は塞栓症のため)に生じる虚血(大脳梗塞)による。虚血性脳梗塞はさらに大動脈疾患(LAA)(大血管疾患、LVDとも称される)、心臓塞栓性脳卒中及び小血管疾患に副分割される。虚血性脳卒中イベントのおよそ25%は、脳に血液を供給する大動脈の二つの対、頚動脈及び椎骨動脈の大動脈疾患による。大動脈疾患の最も一般的な原因は、アテローム性動脈硬化である。心臓塞栓性脳卒中は、心臓の内側に源を発する塞栓症により起こされる。心臓が原因の塞栓症は、虚血性脳梗塞の約1/4を占める。心臓塞栓症による脳卒中は、一般に重篤であり、早期及び長期の再発を起こしやすい。虚血性心疾患、リウマチ性僧帽弁狭窄及び人工心臓弁は、心臓塞栓性脳卒中の主要原因であるが、心房細動が依然として最大原因である。
循環器疾患のリスク(増加した及び減少した)を与える遺伝子変異体を理解することについての、継続した及び大きな要求がある。本発明は、MI、冠動脈疾患(CAD)、頭蓋内動脈瘤(IA)、腹部大動脈瘤(AAA)、末梢動脈疾患(PAD)及び再狭窄を含む循環器疾患に対する感受性に関連する事が示されている遺伝子変異体を提供する。これらの変異体は、循環器疾患のリスク管理及び治療介入のための方法に有用である。
Stein, S., Am J Cardiol, 87 (suppl):21A-26A (2001). Retterstol, L. et al., Atheroscler., 160: 433-440(2002). Friedlander Y, et al., Br. Heart J. 1985; 53:382-7. Shea S. et al., J. Am. Coll. Cardiol. 1984; 4:793-801 Hopkins P. N., et al., Am. J. Cardiol. 1988; 62:703-7
本発明は、冠動脈疾患、心筋梗塞、末梢動脈疾患、脳卒中、再狭窄、頭蓋内動脈瘤及び腹部大動脈瘤を含む循環器疾患に対する感受性を決定するための方法に関する。本発明は、循環器疾患に対する感受性に関連することが見出されたある種の多型マーカー及び/又はハプロタイプの評価に基づいた循環器疾患に対する感受性の決定に有用な種々の使用、キット、過程及び装置にも関する。
一つの側面において、本発明はヒト個体における循環器疾患に対する感受性を決定するための方法に関し、該個体から得られた核酸サンプル中の、又は該個体に由来する遺伝子型データセット中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、表10に示された多型マーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択され、該少なくとも一つのアレルの存在は、循環器疾患に対する感受性を示す。本方法は、一つの態様において、該個体から得られた核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在の決定に関することができる。別の態様において、本方法は、該個体に由来する遺伝子型データセット中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在の決定に関する。該遺伝子型データセットは、遺伝情報が誘導される単一個体に関係する鋳型としての特定の核酸サンプルに関係する情報という意味では該個体に由来する。別の側面において、本発明は、ヒト個体における循環器疾患に対する感受性を決定するための方法に関し、該個体から得られた核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、LDブロックC09(配列番号94)に関連するマーカーから選択され、該少なくとも一つのアレルの存在又は不存在の決定は、循環器疾患に対する感受性を示す。一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、表3に示されたマーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。
代わりの側面において、本発明は、ヒト個体における循環器疾患に対する感受性を診断する方法に関し、該方法は該個体から得られた核酸サンプル中の、又は個体に由来する遺伝子型データセット中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、LDブロックC09に関連するマーカーの群から選択され、該少なくとも一つのアレルの存在は、循環器疾患に対する感受性を示す。一つの態様において、連鎖不平衡は、特異的マーカーがLDブロックC09に関連する程度の定量的尺度として使用される。
別の側面において、本発明はヒト個体における循環器疾患への感受性を決定する方法に関し、少なくとも一つの多型マーカー中の少なくとも一つのアットリスクアレルが該個体に由来する遺伝子型データセット中に存在するかどうかを決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、LDブロックC09(配列番号94)内のマーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーより選択され、及び該少なくとも一つのアットリスクアレルの存在の決定は該個体における循環器疾患への増加した感受性を示す。
該遺伝子型データセットは、一つの態様において、マーカー同一性についての情報及び該個体のアレル状態、即ち、該マーカーについて、個体により運ばれている二つのアレルの同一性についての情報を含んでなる。該遺伝子型データセットは、二つ又はそれ以上のマーカー、三つ又はそれ以上のマーカー、五つ又はそれ以上のマーカー、百又はそれ以上のマーカーその他を含む一つ又はそれ以上のマーカーについての遺伝子型情報を含んでなることができる。いくつかの態様において、該遺伝子型データセットは数十万のマーカー又は百万又はそれ以上のマーカーさえ含む、個体の全ゲノム評価からの遺伝子型情報を含んでなる。
一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、配列番号94に示したヌクレオチド配列を有するゲノムセグメントLDブロックC09内に存在する。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970,rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814、rs10757278、rs10757274、rs1333049、D9S1870及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーを含んでなる。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs10757278、rs10757274及びrs10333049、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、表3に示されたマーカーから成る群より選択される一つ又はそれ一つ又はそれより多くのマーカーと、0.8より大きな|D’|及び/又は0.2より大きなr2の数値により定義される強い連鎖不平衡にある少なくとも一つのマーカーを含んでなる。
一つの態様において、循環器疾患への感受性を決定する、又は感受性を診断する方法はさらに、該個体の少なくとも一つのハプロタイプの頻度を評価することを含んでなる。一つのこうした態様において、該少なくとも一つのハプロタイプは、ゲノムセグメントLDブロックC09(配列番号94)内に少なくとも一つの多型マーカー含んでなるからハプロタイプから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのハプロタイプは、表3に示した少なくとも一つのマーカーと連鎖不平衡にあるハプロタイプから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのハプロタイプは、rs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970、rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814、rs10757278、rs10757274、rs1333049、D9S1870及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーから選択される、少なくとも一つの多型マーカーを含んでなるハプロタイプから選択される。
別の側面において、本発明はヒト個体における循環器疾患への感受性を決定する方法に関し、少なくとも一つの多型マーカー中の少なくとも一つのアットリスクアレルが該個体に由来する遺伝子型データセット中に存在するかどうかを決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、表3に示したマーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーより選択され、及び該少なくとも一つのアットリスクアレルの存在の決定は該個体における循環器疾患への増加した感受性を示す。
該遺伝子型データセットは、一つの態様において、マーカー同一性についての情報及び該個体のアレル状態、即ち、該マーカーについて、個体により運ばれている二つのアレルの同一性についての情報を含んでなる。該遺伝子型データセットは、二つ又はそれ以上のマーカー、三つ又はそれ以上のマーカー、五つ又はそれ以上のマーカー、百又はそれ以上のマーカーその他を含む一つ又はそれ以上のマーカーについての遺伝子型情報を含んでなることができる。いくつかの態様において、該遺伝子型データセットは数十万のマーカー又は百万又はそれ以上のマーカーさえ含む、個体の全ゲノム評価からの遺伝子型情報を含んでなる。
一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、本明細書に示した配列番号94内に存在する。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970、rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814、rs10757278、rs10757274、rs1333049、D9S1870及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーを含んでなる。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、表3に示したマーカーからなる群より選択される一つまたはそれ以上のマーカーと、0.8より大きな|D’|及び/又は0.2より大きなr2の数値により定義される強い連鎖不平衡にある少なくとも一つのマーカーを含んでなる。一つの好ましい態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、マーカーrs10757278、rs10757274及びrs1333049、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。別の好ましい対応において、該少なくとも一つの多型マーカーは、マーカーrs10757278、rs10757274及びrs1333049から選択される。さらに別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、LDブロックC09(配列番号94)に関連するマーカーから選択される。一つのこうした態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、LDブロックC09(配列番号94)内の少なくとも一つの多型マーカーと連鎖不平衡にある。
本発明のある種の態様において、循環器疾患に対する感受性を決定する、又は感受性を診断する方法は、該個体における少なくとも一つのハプロタイプの頻度を評価することをさらに含んでなる。一つのこうした態様において、該少なくとも一つのハプロタイプは、表10に示した少なくとも一つの多型マーカー及びそれらと連鎖不平衡にある多型マーカーを含んでなるハプロタイプから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのハプロタイプは、表3に示した少なくとも一つの多型マーカー及びそれらと連鎖不平衡にある多型マーカーを含んでなるハプロタイプから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのハプロタイプは、rs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970、rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814、rs10757278、rs10757274、rs10333049、D9S1870及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される少なくとも一つの多型マーカーを含んでなるハプロタイプから選択される。
本発明のある種の態様において、該個体からの核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアットリスクアレルの存在の決定は、循環器疾患への増加した感受性を示す。一つの態様において、増加した感受性は、少なくとも1.15の相対リスク(RR)又はオッズ比(OR)により特徴付けられる。別の態様において、増加した感受性は、少なくとも1.20の相対リスク(RR)又はオッズ比(OR)により特徴付けられる。別の態様において、増加した感受性は、少なくとも1.30の相対リスク(RR)又はオッズ比(OR)により特徴付けられる。
いくつかの態様において、rs7041637アレルA、rs2811712アレルA、rs3218018アレルA、rs3217992アレルA、rs2069426アレルC、rs2069422アレルA、rs1333034アレルA、rs1011970アレルG、rs10116277アレルT、rs1333040アレルT、rs2383207アレルG、rs1333050 アレルT、D9S1814アレル0、rs10757278アレルG、rs1333049アレルC、rs10757274アレルG、及び/又はD9S1870アレルX(2より小さな全てのアレルの複合アレル)の存在は、循環器疾患に対する増加した感受性を示す。
特定の態様において、該個体からの核酸サンプル中の少なくとも一つの保護アレルの存在は、循環器疾患の減少した感受性を示す。別の態様において、該個体からの核酸サンプル中に少なくとも一つのアットリスクアレルも存在しないことは循環器疾患の減少した感受性を示す。
本発明の別の側面は、ヒト個体における循環器疾患に対する感受性を評価する方法に関し、該個体からの核酸を、ヒト集団において循環器疾患の増加した発生と相関する、配列番号94に示した配列を有するゲノムセグメント中の少なくとも一つの多型マーカー又はハプロタイプについてスクリーニングすることを含んでなり、該核酸中の該少なくとも一つの多型又はアットリスクハプロタイプにおけるアットリスクマーカーアレルの存在は、該個体を循環器疾患に対する上昇した感受性を有していると同定し、該核酸中に該少なくとも一つのアットリスクマーカーアレル又はアットリスクハプロタイプが存在しないことは、該個体を循環器疾患に対する上昇した感受性を有していないと同定する。
一つのこうした態様において、該少なくとも一つの多型マーカー又はハプロタイプは、表10に示したマーカー及びそれらと連鎖不平衡にある多型マーカーから選択される少なくとも一つの多型マーカーを含んでなる。別の態様において、該少なくとも一つのマーカー又はハプロタイプは、表3に示したマーカー及びそれらと連鎖不平衡にある多型マーカーから選択される少なくとも一つの多型マーカーを含んでなる。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカー又はハプロタイプは、マーカーrs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970、rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814、rs10757278、rs10757274、rs10333049、D9S1870及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される少なくとも一つの多型マーカーを含んでなる。ある態様において、連鎖不平衡は、0.8より大きな|D’|及び/又は0.2より大きなr2の数値により特徴付けられる。
本発明のある態様はさらに、LDブロックC09(配列番号94)に関連していない、循環器疾患の少なくとも一つのアットリスク遺伝子変異体の存在について、該核酸をスクリーニングする工程を含んでなる。こうした追加の遺伝子変異体は、具体的態様において、循環器疾患についての感受性又はリスク変異体と同定されているいずれの変異体も含み得る。
本発明の別の側面において、循環器疾患と関連していることが見いだされているマーカー又はハプロタイプの存在は、それ自体が循環器疾患への感受性を決定するために有用であり、循環器疾患のための特定の治療モダリティーへの、対象の異なった応答率を示す。
別の態様において、本発明は、ヒト個体における循環器疾患に対する感受性を評価することにおいて使用するマーカーの同定の方法に関し、該方法は:
LDブロックC09(配列番号94)内の少なくとも一つのマーカーと連鎖不平衡にある少なくとも一つの多型マーカーを同定すること;
循環器疾患と又は循環器疾患への感受性を有すると診断された個体のサンプルの遺伝子型状態を決定すること;及び
対照個体のサンプルの遺伝子型状態を決定すること;
を含んでなり、対照サンプル中の少なくとも一つのアレルの頻度と比較し、循環器疾患と又は循環器疾患への感受性を有すると診断された個体における少なくとも一つの多型中の少なくとも一つのアレルの頻度の有意な相違は、循環器疾患に対する感受性を評価するために有用である少なくとも一つの多型を示す。
一つの態様において、「有意な」は統計的手段により決定され、例えば、相違は統計的に有意である。一つのこうした態様において、統計的有意性は0.05未満のP値により特徴付けられる。他の態様において、該統計的有意性は0.01未満の、0.001未満の、0.0001未満の、0.00001未満の、0.000001未満の、0.0000001未満の、0.0000000001未満の、又は0.00000001未満のP値により特徴付けられる。
一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、表21に示したマーカーから選択される少なくとも一つのマーカーと、0.2より大きなr2及び/又は0.8より大きな|D’|の数値により特徴付けられる連鎖不平衡にある。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、マーカーrs10757278、rs10757274及びrs1333049から選択される少なくとも一つのマーカーと、0.2より大きなr2及び/又は0.8より大きな|D’|の数値により特徴付けられる連鎖不平衡にある。
一つの態様において、対照サンプル中の少なくとも一つのアレルの頻度と比較し、循環器疾患と又は循環器疾患に対する感受性を有すると診断された個体における少なくとも一つの多型中の少なくとも一つのアレルの頻度の増加は、該少なくとも一つの多型が循環器疾患への増加した感受性を評価するために有用であることを示す。別の態様において、対照サンプル中の少なくとも一つのアレルの頻度と比較し、循環器疾患と又は循環器疾患に対する感受性を有すると診断された個体における少なくとも一つの多型中の少なくとも一つのアレルの頻度の減少は、循環器疾患に対する減少した感受性、又は循環器疾患に対する保護を示す。
本発明の別の側面は、ヒト個体から得られた核酸サンプルを遺伝子型同定する方法に関し、該サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つのマーカーは、表3及び表21に示したマーカー、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択され、該少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在は、循環器疾患の感受性の予測である。
一つの態様において、遺伝子型同定は、該少なくとも一つの多型マーカーに隣接するヌクレオチドプライマー対を使用し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により、該少なくとも一つの多型マーカーを含んでなる核酸のセグメントを増幅することを含んでなる。別の態様において、遺伝子型同定は、アレル特異的プローブハイブリダイゼーション、アレル特異的プライマー伸張、アレル特異的増幅、核酸シークエンシング、5’−エキソヌクレアーゼ消化、分子ビーコン(beacon)アッセイ、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、サイズ分析、及び一本鎖配座解析から選択されるプロセスを使用して実施される。好ましい態様において、該プロセスはアレル特異的プローブハイブリダイゼーションを含んでなる。別の好ましい態様において、該プロセスはDNAシークエンシングを含んでなる。好ましい態様において、該方法は:
1)該核酸のコピーと検出オリゴヌクレオチドプローブ及びエンハンサーオリゴヌクレオチドプローブを、該核酸と該オリゴヌクレオチドプローブの特異的ハイブリダイゼーションのための条件下で接触させること;ここで
(a)該検出オリゴヌクレオチドプローブは5〜100ヌクレオチド長であり、そのヌクレオチド配列が少なくとも一つの多型部位を含んでなる配列番号94により与えられる核酸の第一のセグメントに特異的にハイブリダイズし;
(b)該検出オリゴヌクレオチドプローブは、その3’末端に検出可能標識を、及びその5’末端にクエンチング部分を含んでなり;
(c)該エンハンサーオリゴヌクレオチドは5〜100ヌクレオチド長であり、両方のオリゴヌクレオチドが該核酸にハイブリダイズされた時、該エンハンサーオリゴヌクレオチドが該検出オリゴヌクレオチドプローブに関して3’に位置されるように、該オリゴヌクレオチドプローブに関して5’にある該ヌクレオチド配列の第二のセグメントに相補的であり;及び
(d)該オリゴヌクレオチドプローブ及びエンハンサーオリゴヌクレオチドプローブが両方とも該核酸にハイブリダイズされた時、該オリゴヌクレオチド間に単一塩基ギャップが存在するように、第一のセグメント及び第二のセグメント間に単一塩基ギャップが存在する;
2)検出プローブが該核酸にハイブリダイズされた時、該検出プローブの3’末端から検出可能標識を切断して遊離検出可能標識を放出するであろうエンドヌクレアーゼで該核酸を処理すること;及び
3)遊離検出可能標識を測定すること、ここで遊離検出可能標識の存在は、該検出プローブが該核酸の第一のセグメントへ特異的にハイブリダイズされたことを示し、及び検出プローブの補体としての多型部位の配列を示す;
を含んでなる。
特定の態様において、該核酸のコピーはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅により提供される。別の態様において、決定された感受性は増加した感受性である。別の態様において、決定された感受性は減少した感受性である。
本発明の他の側面は、循環器疾患に関連する症状を予防する及び/又は寛解するための療法剤への応答の可能性について個体を評価する方法に関し、該個体から得られた核酸サンプル中の、少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、表21に示したマーカー、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択され、該少なくとも一つのマーカーの少なくとも一つのアレルの存在の決定は、循環器疾患療法剤に対する陽性応答の可能性を示す。一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、マーカーrs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。一つの態様において、該療法剤はベータ遮断薬、ヘパリン及び/又は低分子量ヘパリンを含む抗凝固剤、クロピドグレルのような抗血小板薬、アスピリン、メトプロロール及びカルベジロールを含むベータ遮断薬、ACE阻害剤、スタチン、エプレレノンを含むアルドステロンアンタゴニスト、ロイコトリエンシンターゼ阻害剤、剤表I、剤表IIに示した剤、(R)(+)−アルファ−シクロペンチル−4−(2−キノリニルメトキシ)−ベンゼン酢酸、アトレロウトン及びDG−051としても知られている4−{(S)−2−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェノキシメチル]−ピロリジン−l−イル}−ブチルアミドから選択される。他の態様は、循環器疾患の治療的介入に有用であると本明細書に記載された療法剤のいずれか一つ又は組み合わせを含むことができる。
本発明のさらに別の側面は、循環器疾患と診断された個体の予後を予測する方法に関し、該方法は、該個体から得られた核酸サンプル中の、少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーからなる群より選択され、該少なくとも一つのアレルの存在の決定は、該個体の循環器疾患のより悪い予後を示す。該予後は、ある態様において、再発MIイベント、再発脳卒中イベントの感受性、又は循環器疾患に関連する他の合併症に対する感受性に関連する。
本発明のさらなる側面は、循環器疾患について治療を受けている個体における、治療の進行のモニタリング法に関し、該方法は、該個体から得られた核酸サンプル中の、少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーからなる群より選択され、該少なくとも一つのアレルの存在の決定は、該個体の治療結果を示す。該治療は、ある態様において、外科的治療であることができる。他の態様において、該治療は療法剤の投与によるものであり、本明細書でさらに記述するようなライフスタイル変化又は循環器疾患のリスク因子への環境暴露における変化を含んでいてもよい。
一つの態様において、本方法は個体からのサンプル中の、少なくとも一つのバイオマーカーを評価することを含んでなる。該バイオマーカーは、ある態様において、心臓マーカー又は炎症マーカーである。一つの態様において、該少なくとも一つのバイオマーカーは、クレアチンキナーゼ、トロポニン、グリコーゲンホスホリラーゼ、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、可溶性血管細胞接着分子(sVCAM)、可溶性脈管間接着分子(sICAM)、E−セレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ1型、マトリックスメタロプロテアーゼ2型、マトリックスメタロプロテアーゼ3型、マトリックスメタロプロテアーゼ9型、血清sCD40L、ロイコトリエン、ロイコトリエン代謝物、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びN−チロシンから選択される。一つの態様において、ロイコトリエンは、LTB4、LTC4、LTD4及びLTE4より選択される。別の態様において、該方法はさらに、個体のリスク評価、診断又は予後診断を行うため、非遺伝的情報を分析することを含んでなる。該非遺伝的情報は、一つの態様において、年齢、性別、民族性、社会経済的地位、既往症診断、対象の病歴、循環器疾患の家族歴、生化学的測定及び臨床的測定から選択される。特定の好ましい態様において、全リスクを計算することを含んでなるさらなる工程が用いられる。
本発明の他の側面は、ヒト個体からのゲノムDNAを含んでなるサンプル又はヒト個体に由来する遺伝子型データセットを、表10に示したマーカーのいずれか一つと連鎖不平衡ではない、循環器疾患の少なくとも一つのアットリスク変異体の少なくとも一つのアットリスクアレルの存在又は不存在について分析することに関する。それ故、循環器疾患に関連していると本明細書に記載した変異体は、本明細書に記載した遺伝的に関係していない(即ち、連鎖不平衡にはない)マーカーである、循環器疾患の他の遺伝子変異体と結合することができる。こうした分析は、本明細書に記載したいずれかの方法と組み合わせて企てることができる。さらに、本明細書のいずれか二つのマーカー、又は循環器疾患に関連していると本明細書に記載したマーカー及び/又はハプロタイプのいずれの他の組み合わせも、循環器疾患に対する増加した感受性を評価するために結合することができる。
本発明の方法のいくつかの態様において、個体のリスク評価、診断又は予後診断を行うため、非遺伝的情報が分析される。該非遺伝的情報は、ある態様において、年齢、性別、民族性、社会経済的地位、既往症診断、対象の病歴、循環器疾患の家族歴、生化学的測定及び臨床的測定から選択される。結合された遺伝的因子及び/又は遺伝的及び非遺伝的因子の結合は既知の方法により分析することができ、統合リスクを発生させる。
本発明は、ヒト個体の循環器疾患に対する感受性を評価するためのキットに関し、該キットは、個体のゲノム中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を選択的に検出するための試薬を含んでなり、該多型マーカーは、表10に示したマーカー、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択され、及び該少なくとも一つのアレルの存在は循環器疾患に対する感受性を示す。
一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、配列番号94に示した配列を有するゲノムセグメント内に存在する。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、表21に示したマーカー、及びそれらと連鎖不平衡にある群から選択される。別の態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。
一つの態様において、該試薬は、該少なくとも一つの多型マーカーを含んでなる該個体のゲノムの断片へハイブリダイズする、少なくとも一つの近接するオリゴヌクレオチド、緩衝液及び検出可能な標識を含んでなる。一つの態様において、該試薬は、対象から得られたゲノム核酸セグメントの反対鎖にハイブリダイズする少なくとも一つのオリゴヌクレオチド対を含んでなり、各オリゴヌクレオチドプライマー対は、一つの多型マーカーを含む該個体のゲノムの断片を選択的に増幅するように設計されており、及び該断片は少なくとも30塩基対のサイズである。特定の態様において、該少なくとも一つのオリゴヌクレオチドは該個体のゲノムと完全に相補的である。別の態様において、該少なくとも一つのオリゴヌクレオチドは、該個体のゲノムと少なくとも一つのミスマッチを含み得る。一つの態様において、該オリゴヌクレオチドは約18〜約50ヌクレオチド長である。別の態様において、該オリゴヌクレオチドは20〜30ヌクレオチド長である。
一つの好ましい態様において、該キットは:
5〜100ヌクレオチド長である検出オリゴヌクレオチドプローブ;5〜100ヌクレオチド長であるエンハンサーオリゴヌクレオチドプローブ;及びエンドヌクレアーゼ酵素;を含んでなり;
該検出オリゴヌクレオチドプローブは、そのヌクレオチド配列が少なくとも一つの多型部位を含んでなる配列番号94により与えられている核酸の第一のセグメントへ特異的にハイブリダイズし;及び該検出オリゴヌクレオチドプローブは、その3’末端に検出可能な標識及びその5’末端にクエンチング部分を含んでなり;該エンハンサーオリゴヌクレオチドは5〜100ヌクレオチド長であり、両方のオリゴヌクレオチドが該核酸にハイブリダイズされた時、該エンハンサーオリゴヌクレオチドが該検出オリゴヌクレオチドプローブに関して3’に位置されるように、該オリゴヌクレオチドプローブに関して5’にある該ヌクレオチド配列の第二のセグメントに相補的であり;該オリゴヌクレオチドプローブ及びエンハンサーオリゴヌクレオチドプローブが両方とも該核酸にハイブリダイズされた時、該オリゴヌクレオチド間に単一塩基ギャップが存在するように、第一のセグメント及び第二のセグメント間に単一塩基ギャップが存在し;及び該核酸をエンドヌクレアーゼで処理することは、該検出プローブが該核酸にハイブリダイズされた時、該検出プローブの3’末端から検出可能標識を切断して遊離検出可能標識を放出するであろう。
本発明のさらなる側面は、ヒト個体において循環器疾患を診断する及び/又は循環器疾患に対する感受性を評価するための診断薬の製造におけるオリゴヌクレオチドプローブの使用に関し、該プローブは、そのヌクレオチド配列が少なくとも一つの多型部位を含んでなる配列番号94により与えられる核酸のセグメントにハイブリダイズし、該断片は15〜500長である。一つの態様において、該多型部位は多型マーカーrs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。
本発明のさらに別の側面は:少なくとも一つの多型マーカーのための識別子;循環器疾患と診断された複数の個体における、前記少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの頻度の指標;及び、複数の参照個体における、前記少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの頻度の指標;が保存されるコンピューター可読媒体に関し、該少なくとも一つの多型マーカーは、多型マーカーは表10に示した多型マーカー、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。一つの態様において、該少なくとも一つの多型マーカーは、rs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。
別の側面は、ヒト個体における2型糖尿病についての遺伝的指標を決定するための装置に関し、コンピューター可読メモリー;及びコンピューター可読メモリー上に保存されたルーチン(routine);を含んでなり、該ルーチンは、表10に示したマーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーより選択される少なくとも一つの多型マーカーに関して少なくとも一つのヒト個体についてのマーカー及び/又はハプロタイプ情報を分析するためにプロセッサーで実行されるのに適合しており、そしてマーカー及び/又はハプロタイプ情報に基づいたアウトプットを発生し、該アウトプットはヒト個体についての循環器疾患の遺伝的指標としての該少なくとも一つのマーカー又はハプロタイプのリスク尺度を含んでなる。
一つの態様において、該ルーチンは、循環器疾患と診断された複数の個体における少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレル又は少なくとも一つのハプロタイプの頻度の指標、及び複数の参照個体における少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレル又は少なくとも一つのハプロタイプの頻度の指標をさらに含んでなり、そしてリスク尺度は、循環器疾患と診断された複数の個体についての該少なくとも一つのマーカー及び/又はハプロタイプ情報の頻度の指標とヒト個体についての該少なくとも一つのマーカー及び/又はハプロタイプ状態の比較に基づいている。
本明細書に記載した本発明は、循環器疾患に対する感受性の決定に有用であると本明細書に記載された多型マーカーのいずれか一つ又は組み合わせを使用して実行に移すことができる。これには、循環器疾患に関連していることが本明細書で示されたマーカーが含まれ、こうした変異体と連鎖不平衡にあるマーカーも含まれる。一つの態様において、該少なくとも一つのマーカーは、表3、10、21及び26のいずれかに示されたマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、表10に示されたマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、表3及び表21に示されたマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、表3に示されたマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、表21に示されたマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、CDKN2A及び/又はCDKN2B遺伝子と連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、マーカーrs10811650、rs10116277、rs1333040、rs10738607、rs4977574、rs6475608、D9S1870、rs2383207、rs1333045、rs1333046、rs10757278及びrs1333048から選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、マーカーrs1333040、rs10116277、rs2383207及びrs10757278から選択される。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、rs1333040(配列番号59)である。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、rs10116277(配列番号56)である。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、rs2383207(配列番号82)である。別の態様において、該少なくとも一つのマーカーは、rs10757278(配列番号88)である。いくつかの態様において、該少なくとも一つのマーカーは、上記マーカーのいずれか一つ又は一つ以上の組み合わせと連鎖不平衡にあるマーカーからさらに選択されてもよい。
方法、使用、装置又はキットに関係する本発明の多様な側面における循環器疾患は、いくつかの態様において、動脈疾患である。一つのこうした態様において、動脈疾患表現型は心筋梗塞、急性冠症候群(ACS)、冠動脈疾患、脳卒中、末梢動脈疾患、再狭窄、頭蓋内動脈瘤及び腹部大動脈瘤、経管的冠動脈血管形成術(PTCA)及び冠動脈 バイパス術(CABG)ら選択される。一つの態様において、循環器疾患は心筋梗塞である。別の態様において、循環器疾患は、心筋梗塞又は冠動脈疾患である。さらに別の態様において、循環器疾患は、心筋梗塞、冠動脈疾患、腹部大動脈瘤又は頭蓋内動脈瘤である。別の態様において、循環器疾患は、心筋梗塞、冠動脈疾患、再狭窄、腹部大動脈瘤又は 頭蓋内動脈瘤である。一つの態様において、該脳卒中表現型は、大動脈 アテローム硬化性脳卒中及び/又は心原性脳卒中である。該再狭窄表現型は、一つの態様において、冠状動脈ステント内再狭窄である。ある態様において、該ステント内再狭窄は、金属ステント(BMS)留置に続く再狭窄か又は、薬剤溶出ステント(DES)の留置に続く再狭窄である。
本発明のマーカー及びハプロタイプと連鎖不平衡にある変異体(マーカー及び/又は多型マーカーを含んでなるハプロタイプ)も本発明の方法及びキットに有用である。本発明は、それ故、本発明のマーカー及びハプロタイプと連鎖不平衡にあるマーカーにも関する。本発明の使用、装置又はキットのある態様において、連鎖不平衡は、連鎖不平衡の定量的尺度についての特異的カットオフ値により特徴付けられる。一つのこうした態様において、連鎖不平衡はr2についての特異的カットオフ値により特徴付けられる。別のこうした態様において、連鎖不平衡は|D’|についての特異的カットオフ値により特徴付けられる。さらに別の態様において、連鎖不平衡はr2及び|D’|についての特異的カットオフ値により特徴付けられる。一つの好ましい態様において、連鎖不平衡は0.1より大きなr2の値により特徴付けられる。別の好ましい対応において、連鎖不平衡は0.2より大きなr2の値により特徴付けられる。他のr2のカットオフ値も可能であり、限定されるわけではないが、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99が含まれる。別の好ましい対応において、連鎖不平衡は0.5より大きな|D’|の値により特徴付けられる。別の好ましい対応において、連鎖不平衡は0.8より大きな|D’|の値により特徴付けられる。他の|D’|のカットオフ値も可能であり、限定されるわけではないが、0.2、0.3、0.4、0.6、0.7、0.8、0.9、0.95、0.96、0.97、0.98及び0.99が含まれる。ある態様において、連鎖不平衡は、|D’|か又はr2についてのカットオフ数値により特徴付けられる。一つのこうした態様において、 連鎖不平衡は、0.8より大きな|D’|及び0.2より大きなr2についての数値、又は両方のカットオフ数値により特徴付けられる。
本発明の方法、使用、装置又はキットのある種の態様において、該個体は特定の祖先を有する。一つの態様において、該祖先は、ブラックアフリカ人祖先、コーカサス人祖先及び中国人祖先から選択される。別の態様において、該祖先はブラックアフリカ人祖先である。別の態様において、該祖先はヨーロッパ人祖先である。別の態様において、該祖先はコーカサス人祖先である。該祖先は、ある種の態様において、遺伝子分析又は遺伝子型同定が行われている個体による自己申告である。他の態様において、該祖先は個体からの核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルを検出することを含んでなる遺伝子決定により決定され、ここで該アレルの存在又は不存在は該個体の祖先を示す。
本発明の方法、使用、装置又はキットの他の特定の態様において、少なくとも一つのアットリスク変異体、即ち、少なくとも一つの多型マーカー中のアットリスクアレル又はアットリスクハプロタイプの存在は、循環器疾患の早期発症を示す。早期発症は、いくつかの態様において、75歳前の発症とカテゴリー化される。他の態様において、早期発症は、70歳前、65歳前、60歳前、55歳前、50歳前、45歳前又は40歳前の発症とカテゴリー化される。発症年齢のカテゴリー化についての他の値も企図され、限定されるわけではないが、すべての年齢の整数値が含まれ、そしてこうした年齢カテゴリーも本発明の範囲内である。ある態様において、循環器疾患は心筋梗塞であり、そして発症年齢は男性について50以下及び/又は女性について60以下である。
本発明の前記及び他の目的、特色及び利点は、本発明の好ましい態様の、以下のより特定の記述から明らかになるであろう。
図1は、a)9番染色体上の1Mb間隔(21.6〜22.6Mb、Build 34)中に位置する127SNPについての関連性結果。プロットされているのは−logPであり、PはSNPの染色体位置に対する個体の関連性について調節されたP値である。b)CEU集団の、HapMapリリース19からの同一領域中の、1004の共通SNP間の対応するペアワイズ相関r2。c)最も強い関連性結果を含むLDブロック(NCBI Build 36中の21,920,147〜21,149,982位;配列番号94)を定義するHapMapデータセット(Nature 437, 1299-1320(2005年10月27日))に基づいた二つの組換えホットスポットの場所。d)パネルbで使用したSNPと同一のセットについてD’により測定された、領域中のペアワイズ相関構造。四つ全てのパネルは、パネルaに示された水平Mbスケールを使用した。
発明の詳細な説明
本発明の好ましい態様の記述は以下のようである。
特に示さない限り、核酸配列は左から右へ5’から3’の配向で書かれている。本明細書内に列挙されている数値範囲は、該範囲が定義している数値を全て含み、定義された範囲内の各整数又はいずれの非整数部分も含む。特に示さない限り、本明細書で使用された技術的及び科学的用語は、本発明が関与する当業者により一般的に理解されているものと同一の意味を有する。
本文脈において、以下の用語は示されている意味を有する:
本明細書に記載した「多型マーカー」(「マーカー」と呼ばれることもある)とは、ゲノム多型部位を指す。各多型マーカーは、多型部位の特定のアレルに特徴的な少なくとも二つの配列変異を有する。それ故、多型マーカーへの遺伝的関連は、その特定の多型マーカーの少なくとも一つの特異的アレルとの関連があることを暗示する。該マーカーは、単一ヌクレオチド多型(SNP)、マイクロサテライト、挿入、欠失、重複及び転座を含む、ゲノムで観察されるいずれかの変異体タイプのいずれかのアレルを含み得る。
「アレル」とは、染色体上の所与の座位(位置)のヌクレオチド配列を指す。多型マーカーアレルはそれ故、染色体上の該マーカーの組成(即ち、配列)を指す。個体からのゲノムDNAは、いずれかの所与の多型マーカーについての二つのアレル(例えば、アレル特異的配列)を含有し、各染色体上の各コピーを代表する。本明細書で使用されたヌクレオチドについての配列コードは:A=1、C=2、G=3、T=4、である。マイクロサテライトアレルについては、CEPHサンプル(Centre D'Etudes du Polymorphisme Humain, genomics repository, CEPH sample 1347-02)を基準として使用し、このサンプル中の各マイクロサテライトのより短いアレルを0と設定し、他のサンプル中の、全ての他のアレルはこの基準に関連して番号付けした。それ故、例えば、アレル1はCEPHサンプル中のより短いアレルよりも1bp長く、アレル2はCEPHサンプル中のより短いアレルよりも2bp長く、アレル3はCEPHサンプル中のより短いアレルよりも3bp長いなど、及びアレル−1はCEPHサンプル中のより短いアレルよりも−1bp短く、アレル−2はCEPHサンプル中のより短いアレルよりも−2bp短いなど。
本明細書に記載した配列ヌクレオチド多義性は、IUPAC-IUBにより提唱されている通りである。これらのコードはEMBL、GenBank及びPIRデータベースで使用されているコードと一致している。
Figure 0005646179
集団(天然集団又は合成的集団、例えば、合成分子のライブラリー)中で一つより多くの配列が可能であるヌクレオチド位置が、本明細書中で「多型部位」と称される。
「単一ヌクレオチド多型」又は「SNP」は、種のメンバー間で又は個体中の対となった染色体間で、ゲノム中の特異的位置で単一ヌクレオチドが異なっている場合に生じるDNA配列変異である。ほとんどのSNP多型は二つのアレルを有する。各個体は、この場合、多型の一つのアレルについてホモ接合性であるか(即ち、個体の両方の染色体コピーはSNP位置で同一のヌクレオチドを有する)、又は該個体はヘテロ接合性である(即ち、該個体の二つの姉妹染色体は異ったヌクレオチドを含有する)。本明細書で報告されているSNP命名はNational Center for Biotechnology Information (NCBI)により、それぞれ独特のSNPと指定された公式Reference SNP(rs) ID 同定を指す。
本明細書に記載した「変異体」とは、参照DNAとは異なっているDNAのセグメントを指す。本明細書に記載した「マーカー」又は「多型マーカー」は変異体である。参照と異なっているアレルは「変異体」アレルと称される。
本明細書に記載した「マイクロサテライト」は、特定の部位に、2〜8ヌクレオチド長である多数の小さな塩基のリピートを有する(CAリピートのような)多型マーカーであり、母集団中でリピート長の数は変化する。本明細書に記載した「インデル」は、典型的には数ヌクレオチド長である小さな挿入又は欠失を含んでなる多型の一般形態である。
本明細書に記載した「ハプロタイプ」とは、セグメントに沿って配置されたアレルの特異的組み合わせにより特徴付けされる、ゲノムDNAのセグメントを指す。ヒトのような二倍体生物については、ハプロタイプは各多型マーカー又は座位について一対のアレルの一つのメンバーを含んでなる。特定の態様において、該ハプロタイプは二つ又はそれ以上のアレル、三つ又はそれ以上のアレル、四つ又はそれ以上のアレル、又は五つ又はれ以上のアレルを含み得る。ハプロタイプは、そのハプロタイプ中のマーカー名及びマーカーのアレルとの関連で記述されており、例えば、「G rs10757278」とは、ハプロタイプ中にあるマーカーrs7758851の3アレルを指し、そして「rs10757278アレルG」と均等である。さらに、ハプロタイプ中のアレルコードは、個々のマーカーについてのものである、即ち、1=A、2=C、3=G及び4=T。
本明細書に記載した用語「感受性」とは、ある状態を発生し易い(例えば、ある種の形質、表現型又は疾患)、又は平均個体よりも特定の状態への抵抗する能力が低下している個体(又は個体の群)を指す。本用語は、増加した感受性及び減少した感受性の両方を包含する。それ故、本明細書に記載した本発明の多型マーカー及び/又はハプロタイプにおける特定アレルは、特定のアレル又はハプロタイプについて1より大きな相対リスク(RR)又はオッズ比(OR)により特徴付けられるような、循環器疾患に対する増加した感受性(即ち、増加したリスク)により特徴付けることができる。もしくは、本発明のマーカー及び/又はハプロタイプは、1未満の相対リスクにより特徴付けられるような、循環器疾患に対する減少した感受性(即ち、減少したリスク)を特徴とする。
用語「及び/又は」は、本文脈において、それにより結びつけられている項目の一方又は両方が含まれていることを示すと理解されるものとする。言い換えれば、本用語は本明細書において「一つ又は他方又は両方」と解釈されるものとする。
本明細書に記載された用語「ルックアップテーブル(look-up table)」は、一つの形態のデータを他の形態、又はデータの一つ又はそれ以上の形態を、表現型又は形質のような該データが関連がある予測結果に相互に関連付ける。例えば、ルックアップテーブルは、少なくとも一つの多型マーカーについてのアレルデータと、特定のアレルデータを含んでなる個体が該特定のアレルデータを含んでない個体よりも示し易い又はより示し易い、特定の疾患診断のような特定の形質又は表現型間の相関を含んでなることがでる。ルックアップテーブルは多元的であることができ、即ち、一つのマーカーの複数のアレルについての情報を同時に含むことができ、疾患診断、人種情報、バイオマーカー、生化学的測定値、療法又は薬剤などについての詳細のような他の因子も含んでなることができる。
「コンピューター可読媒体」とは、商業的に入手可能な又は注文製作のインターフェースを使用するコンピューターによりアクセス可能である情報保存媒体である。コンピューター可読媒体の例には、メモリー(例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリーなど)、光学保存媒体(例えば、CD−ROM)、磁気保存媒体(例えば、コンピューターハードドライブ、フロッピー(登録商標) ディスクなど)、パンチカード、又は他の商業的に入手可能な媒体が含まれる。情報は、問題とするシステムと媒体間、コンピューター間、及びコンピューターと保存された情報の保存又はアクセスのためのコンピューター可読媒体間を移動させることができる。こうした伝達は、電気的、又はIRリンク、無線接続のような他の利用可能な方法によるものであり得る。
「核酸サンプル」は、核酸を含有する個体から得られたサンプルである。ある態様、即ち、特異的多型マーカー及び/又はハプロタイプの検出において、該核酸サンプルはゲノムDNAを含んでなる。こうした核酸サンプルは、血液サンプル、羊水のサンプル、脳脊髄液のサンプル、又は皮膚、筋肉、頬側又は結膜粘膜、胎盤、消化管又は他の器官からの組織サンプルを含む、ゲノムDNAを含有するいずれの起源のものでもあり得る。
本明細書に記載した用語「循環器疾患療法剤」とは、循環器疾患に関連する症状を寛解し又は予防し得る剤を指す。
本明細書に記載した用語「冠動脈疾患治療剤」とは、冠動脈疾患に関連する症状を寛解させる又は予防するために使用し得る剤を指す。こうした剤は、例えば、スタチン、ベータ遮断薬、カルシウムチャンネル遮断薬、強心配糖体、降圧薬、利尿薬、レニン-アンギオテンシン系に作用する剤、及びアスピリンであり得る。
本明細書に記載した用語「冠状動脈狭窄」又は「冠状動脈狭窄療法」とは、冠動脈疾患に関連する症状を寛解させる又は予防するために使用し得る方法を指す。こうした方法は、反復バルーン血管形成術、反復ステント留置術、カッティングバルーン血管形成術、経皮的冠動脈形成術(PTCA)、方向性冠動脈粥腫切除術、回転式冠動脈粥腫切除術、近接照射療法,薬剤溶出ステント(DES)挿入、金属ステント挿入、又は冠動脈バイパス術(CABG)のような冠動脈手術であり得る。
本明細書に記載した用語「循環器疾患関連核酸」とは、循環器疾患に関連していることが見出されている核酸を指す。これには、限定されるわけではないが、本明細書に記載したマーカー及びハプロタイプ及びそれらと強い連鎖不平衡不均衡(LD)にあるマーカー及びハプロタイプが含まれる。
本明細書に記載した用語「LDブロックC09」とは、NCBI(National Center for Biotechnology Information)Build34、Build35及びBuild36の9番染色体上の21,920,147から22,149,982位塩基対間の、9番染色体上の連鎖不平衡(LD)ブロックを指す。これらのBuildからのLDブロック領域のヌクレオチド配列は、配列番号94に示されている。
本明細書に記載した用語「循環器疾患」とは、心臓又は血管(動脈及び静脈)を含む疾患の部類を指す。一つの態様において、本発明は、類似の原因及び機構を有すると信じられているアテローム硬化性イベントに関係する動脈疾患に関する。循環器疾患はある種の共通したリスク因子(年齢、喫煙、糖尿病、高コレステロール血症、肥満、高血圧、ストレス、鬱、高心拍数、睡眠不足、環境暴露)を有する。
本明細書に記載した略語「PCTA」、「CABG」、「MI」、「PAD」、「CAD」、「LAA」、「IA」及び「AAA」は以下のことを指す:「PCTA」は経皮的冠動脈形成術を指し、「CABG」は冠動脈バイパス術を指し、「MI」は心筋梗塞を指し、「PAD」は末梢動脈疾患を指し、「CAD」は冠動脈疾患を指し、「LAA脳卒中」は大動脈アテローム硬化性脳卒中を指し、「IA」は頭蓋内動脈瘤を指し、そして「AAA」は腹部大動脈瘤を指す。
本明細書に記載した用語「早期発症」とは、典型的に観察されるよりも低い疾患の発症を指す。本例示の状況において、MI表現型に適用された場合、該用語は50歳前の男性及び60歳前の女性でのMIイベントとして定義される。本用語は、本発明の代わりの態様において、当業者には知られている代替様式で定義され、本明細書でさらに詳細に記述されている。
冠動脈疾患に対する遺伝子変異体の関連性
およそ317,000のこうしたSNPを含有するチップ上でのSNPマーカー間の関連性研究を介して、本発明は9番染色体上のある種のマーカーと循環器疾患との関連性を同定した。最初の発見は、表1及び表12に示したように、心筋梗塞と診断された患者からのSNPデータの分析時になされた。本明細書でLDブロックC09と記述されている領域中のいくつかのマーカーが、1.2ほども高いRR値でMIと強く関連していることが発見された。該領域内の二つのマイクロサテライト、D9S1814及びD9S1870もMI表現型と相関していることも見出された。D9S1870の複合アレルX(2より短い全てのアレルの複合(それぞれアレル、−6、−4、−2及び0))は MIと強く関連していることが見出された(表1)。さらなる調査は、MIと最も強い関連を与える五つのマーカー(rs10116277、rs1333040、rs2383207、D9S1814及びD9S1870;表3参照されたい)と強く相関している90に近い追加のマーカーを同定した。これらのマーカーは、これら五つのマーカーのいずれかの代替マーカーとして働くことができ、それ故、本発明の方法で使用される。
D9S1870マーカーは続いて、追加のMI症例ならびに他の循環器疾患、加えて何千もの追加の集団対照の十分の一を含む、個体の非常に大きなサンプル(70,000以上)において遺伝子型同定された。すべてコーカサス人起源の個体を含む、米国からの三つのコホートにおける再現研究も実施された。表現型MIについてのこれらの研究の結果は、およそ10-12の統合P値で最初の発見の再現を明らかにした(表4及び12〜14)。対応する人口寄与リスクは、この変異体では約17%である。
この変異体のさらなる研究は、MIの発症年齢との有意な相関関係を明らかにした。男性については50歳前及び女性については60歳以下でのMIと任意に定義している早期発症MIは、全MI症例についての1.21と比較して、この早期発症群では1.33と増加した。D9S1870の複合Xアレルのコピー数及びMIの発症年齢の重回帰は、MI個体により運ばれているXの各コピーに対する、発症年齢の非常に有意な低下を明らかにした(表8)。このことは、男性についての50及び女性についての60のカットオフ以外のMIの発症年齢の他の定義も、発症年齢とXアレルのキャリア状態のこの傾向を検出するために使用できることを示している。
本発明は、代替マーカーとしてD9S1870のXアレルを使用し、他の循環器疾患とLDブロックC09内の変異体間の関連性も同定した。このようにして、PADコホートからMIと診断された個体を除去した後でも、末梢動脈疾患(PAD)に対する有意な関連性が見出された。我々は、広義の表現型としての脳卒中、ならびに脳卒中副表現型大血管疾患(LVD)の増加したリスクも観察した(表5及び表29)。我々は、関係する障害、末梢動脈疾患(PAD)及び腹部大動脈瘤(AAA)に対するアットリスク変異体の関連性も調べた。表29に見ることができるように、これらのマーカーはこれらの関係する障害と関連している。関連性は特にAAAについて強力であり、表30に示されているように、これら三つに加え、多数のマーカーについて有意な関連性が観察された。これらの結果は、本発明のマーカー及びハプロタイプが、冠動脈疾患、MI及び腹部大動脈瘤のようなびステント内再狭窄に関連する障害を実際に反映していることを例示している。
ステント内再狭窄の診断を有する個体のさらなる分析が行われた(表9)。有意な関連性が、軽度の再狭窄(<50%)及び重度の再狭窄(>50%)の両方で検出された。このことは、経皮的冠動脈形成術(PTCA)を受けた後、どの個体がステント内再狭窄の増加したリスクにあるのかを示すために使用し得ることを示している。
LDブロックC09内の位置する既知遺伝子は、CDKN2A及びCDKN2Bと称されている。これらの遺伝子は、すべて腫瘍抑制タンパク質をコードし、ARF(p19ARF及びp14ARFとしても知られている)、p15INK4b及びp16INK4aとして知られている三つのタンパク質をコードしている。p15INK4bは、それ自身のオープンリーディングフレームを有するが、p16INK4a及びARFは、共通の第二及び第三のエクソンにスプライスされる異なった第一のエクソンを有する。p16INK4a及びARF間でエクソンを共有しているにもかかわらず、タンパク質は異なったリーディングフレームにコードされている。それ故、p16INK4a及びARFは、相同性を共有しないタンパク質である。これらの遺伝子の産物は、精力的に研究されてきており、腫瘍抑制に広範囲な役割を果たすことが知られている。最新のデータは、ARF、p15INK4b及びp16INK4a座位が細胞の加齢、即ち、自己再生細胞の複製能の低下にも役割を有することを示唆した。いくつかのグループは、齧歯類及びヒトの多くの組織において、加齢と伴にp16INK4aの発現が増加することを示した。実年齢に対立するものとして、p16INK4aの発現を生理的バイオマーカーとして使用できることが提案されている。
ヒト癌は、しばしばARF、p15INK4b及びp16INK4a座位のホモ接合型欠失を有し、三つ全てのタンパク質の減少した発現、そして腫瘍抑制活性の減少を伴っている。ARF、p15INK4b又はp16INK4aが欠損したマウスのノックアウト研究は、これらの系統は野生型マウスよりもより癌を起こしやすいことを明らかにした。さらに、ARF、p15INK4b又はp16INK4a座位を過剰発現しているマウスは、自然発生癌の発生率の減少を示す。マウスにおいて癌が主な死因であるので、このバックグランドに立つと、ARF、p15INK4b又はp16INK4a座位を過剰発現しているマウスの腫瘍抵抗性は、これらのマウスのより長い寿命を導くであろうことも議論することができる。しかしながら、これらのマウスは正常寿命を示すので、それは当てはまらない。このことは、増加したARF、p15INK4b又はp16INK4a座位機能及び減少した腫瘍発生は、アテローム硬化性疾患のような加齢に関係した非悪性症例からの過度の死亡率を犠牲にして成り立つことができることを示唆することができる(Cell, 127、2006年10月20日)。
エクソン、エクソン・イントロンジャンクション、潜在的調節領域を含むCDKN2A及びCDKN2B領域のエクソンの配列決定は、表12に示したプライマーを使用して実施し、表13に示された多数のSNPの同定を得た。これらのSNPの三つは公開データベースでは発見されておらず、これらSNPの隣接配列が表14に示されている。9番染色体のこの領域中でMIに関連していることが見出されているマーカーとLDにあるSNPマーカー又は他の多型はより高いリスクを示すことが可能であるので、表13に示したように、配列決定によりこれら三つの追加のマーカーを遺伝子型同定した。該マーカーのいくつかは1.7〜1.8ほども高いRR値でMIに対する関連性を示した(特にマーカーSG09S291及びrs2069416)。本明細書に記載したマーカーとLDにある、CDKN2A及びCDKN2B遺伝子内のこれらのマーカー及び/又は他のマーカーも、これらの変異体は真の原因変異体か又は内在する原因変異体(単数又は複数)と強いLDにある変異体を表すので、それ故、本発明の範囲内である。
脳動脈瘤に対するrs10757278変異体の関連性の調査は、本来のアイスランド人コホート、ならびにオランダ及びフィンランドからの独立したコホートでの再現において、この表現型に有意な関連性を示した(例えば、表32)。さらに、AAAとの関連性の本来の発見は、ベルギー、カナダ、米国、オランダ、英国及びニュージーランドからのいくつかのコホートにおいて再現された(表32)。これらの結果は、rs10757278マーカー及びそれらとLDにあるマーカーが、心筋梗塞、末梢動脈疾患、脳卒中、頭蓋内動脈瘤及び腹部大動脈瘤よりも動脈疾患を含む心臓血管疾患と本当に有意に関連していることを示している。
染色体9p21上の変異体と本明細書に記載した循環器疾患間の関連性の本来の発見(Helgadottir, A., et. al., Science 316:1491-3,2007も参照されたい)は、CADを有する対象及び対照の研究を含む、いくつかの独立した研究において再現された。コーカサス人におけるCAD/MIとの関連性は、PROCARDIS Consortium(Hum MoI Genet. Epub 2007 Nov 29.)の4,251症例及び4,443対照において、416MI症例及び308対照を含むイタリア人集団において(J Hum Genet. 2008;53(2):144-50. Epub 2007 Dec 8.)、Framingham Heart Studyの参加者(SMC Med Genet. 2007 Sep 19;8 Suppl 1:S5.)において、及びNorthwick Park Heart Study II (Clin Chem. Epub 2008 Feb 4 )において再現されている。rs10757278の関連性ならびに他の相関SNPのCADとの関連性は日本及び韓国からのアジア人集団において、コーカサス人について報告されているものと匹敵するオッズ比有することが確認されている(Arterioscler Thromb Vase Biol. 2008 Feb; 28(2): 360-5. Epub 2007 Nov 29,及び J Hum Genet. Epub 2008 Feb 9を参照されたい )。これらの研究は、本明細書で示したデータを一緒にすると、染色体9p21上のLDブロックC09領域内の変異体は、すべての集団において循環器疾患に関連していることを明白に示している。
マーカー及びハプロタイプの評価
個体が比較された場合、集団内のゲノム配列は同一ではない。むしろ、ゲノム中の多くの位置で、個体間の配列可変性を示す。配列中のこうした変異は一般に多型と称され、各ゲノム内に多くのこうした部位がある。例えば、ヒトゲノムは、平均500塩基対毎に生じる配列変異を示す。最も普通の配列変異体は、ゲノム中の単一塩基位置での塩基変異から成り、こうした配列変異体、又は多型は一般に単一ヌクレオチド多型(「SNP」)と称される。これらのSNPは、単一突然変異イベントで生じると信じられており、それ故、各SNP部位で可能な二つの可能なアレルがある;本来のアレル及び突然変異したアレル。自然の遺伝的ドリフト及び場合により選択圧のため、本来の突然変異は、いずれか所与の集団中の、そのアレルの特定の頻度により特徴付けられる多型を生じる。マイクロサテライト、挿入、欠失、逆位及びコピー数変異体を含む、配列変異体の多くの他のタイプがヒトゲノム中で観察されている。多型マイクロサテライトは、特定の部位に塩基の多数の小さなリピート(CAリピート、相補鎖上のTGのような)を有し、そこではリピート長の数は母集団中で変化する。一般論として、多型部位に関する配列の各バージョンは、多型部位の特異的アレルを表している。これらの配列変異体は、問題とする配列変異体に特徴的な特異的多型部位で生じている多型と、すべて呼び得る。一般論として、多型は任意の数の特異的アレルを含むことができる。それ故、本発明の一つの態様において、該多型はいずれの所与の集団において、二つ又はそれ以上のアレルの存在により特徴付けられる。別の態様において、該多型は三つ又はそれ以上のアレルの存在により特徴付けられる。他の態様において、該多型は四つ又はそれ以上のアレル、五つ又はそれ以上のアレル、六つ又はそれ以上のアレル、七つ又はそれ以上のアレル、九つ又はそれ以上のアレル、又は十又はそれ以上のアレルにより特徴付けられる。すべてのこうした多型が、本発明の方法及びキットにおいて利用することが可能であり、そしてそれ故、本発明の範囲内である。
いくつかの例において、基準アレルを選ぶことなく多型部位での異なったアレルに対して参照が行われる。もしくは、基準配列を特定の多型部位について参照し得る。基準アレルは時には「野生型」アレルと称され、それは通常第一の配列決定されたアレルと、又は「非罹患」個体(例えば、疾患又は異常表現型を示さない個体)からのアレルとして通常選択される。
本明細書で言及されるSNPマーカーについてのアレルは、用いられたSNPアッセイの多型部位で現れるように、塩基A、C、G又はTを指す。本明細書で使用されるSNPについてのアレルコードは以下の通りである:1=A、2=C、3=G、4=T。しかしながら、当業者は反対のDNA鎖をアッセイすること又は読み取ることにより、相補的アレルを各ケースで測定し得ることを理解するであろう。それ故、A/G多型を含有する多型部位(多型マーカー)に対して、用いられるアッセイは、可能な二つの塩基(即ち、A及びG)のパーセンテージか又は比を測定することができる。もしくは、二本鎖DNA鋳型の反対の鎖を検出するアッセイを設計することにより、相補的塩基T/Cのパーセンテージ又は比を測定し得る。定量的には(例えば、相対リスクの点から)、同一の結果が両DNA鎖(+鎖/又は−鎖)の測定から得られるであろう。多型部位(多型マーカー)は、置換、挿入又は欠失に基づいた配列の相違を可能にし得る。例えば、多型マイクロサテライトは、特定の部位に、一般集団とはリピート長の数が異なる、塩基の多数の小さな反復(CAリピートのような)を有する。多型部位に関する配列の各々のバージョンは該多型部位の特異的アレルを表す。
典型的には、基準配列は特定の配列を指す。基準と異なっているアレルは「変異体」アレルと称される。例えば、NCBI Build 34の9番染色体上の21,920,147位から22,149,982位の塩基対からのゲノムDNA配列(「LDブロックC09」;配列番号94)は基準配列に相当する。本明細書で使用する変異体配列とは、基準配列とは異なっているが、それ以外は実質的に類似している配列を指す。本明細書に記載したハプロタイプを作り上げている多型遺伝子マーカーでのアレルは、変異体である。追加の変異体は、ポリペプチドに影響する変化を含み得る。基準ヌクレオチド配列と比較した場合、配列相違は、本明細書に詳細に記載したような、フレームシフトを生じる単一ヌクレオチド又は一つより多くのヌクレオチドの挿入又は欠失;コードされたアミノ酸に変化を生じる少なくとも一つのヌクレオチドの変化;早発性の終止コドンの発生を生じる少なくとも一つのヌクレオチドの変化;ヌクレオチドによりコードされた一つまたはそれより多くのアミノ酸の欠失を生じるいくつかのヌクレオチドの欠失;読み取り枠のコード配列の中断を生じる、非等価組換え又は遺伝子変換によるような一つ又はいくつかのヌクレオチドの挿入;配列のすべて又は一部の重複;転座;又はヌクレオチド配列の再編成を含み得る。こうした配列変化は、核酸によりコードされているポリペプチドを変化させる。例えば、もし核酸配列中の変化がフレームシフトを起こすとすれば、該フレームシフトはコードされたアミノ酸の変化を生じることができ、及び/又は早発性の終止コドンを生じることができ、端が切断されたポリペプチドの発生を起こす。もしくは、冠動脈疾患及びステント内再狭窄又は冠動脈疾患及びステント内再狭窄に対する感受性関連する多型は、一つまたはそれより多くのヌクレオチドの同義変化であり得る(即ち、アミノ酸配列に変化を生じさせない変化)。こうした多型は、例えば、スプライシング部位を変化し、mRNAの安定性又は輸送に影響し、又はさもなくばコードされたポリペプチドの転写又は翻訳に影響し得る。それは、増幅又は欠失のような構造変化が体細胞レベルで生じる可能性を増加させるようにDNAを変化させることもできる。基準ヌクレオチド配列によりコードされているポリペプチドは、特定の基準アミノ酸配列を有する「基準」ポリペプチドであり、及び変異体アレルによりコードされているポリペプチドは、変異体アミノ酸配列を有する「変異体」ポリペプチドと称される。
ハプロタイプとは、セグメントに沿って配置されたアレルの特異的組み合わせにより特徴付けられるDNAのセグメントを指す。ヒトのような二倍体生物では、ハプロタイプは各多型マーカー又は座位について、アレルの対を有する一つのメンバーを含んでなる。ある態様において、該ハプロタイプは、各アレルがセグメントに沿った特異的多型マーカーに対応する二つ又はそれ以上のアレル、三つ又はそれ以上のアレル、四つ又はそれ以上のアレル、又は五つ又はれ以上のアレルを含んでなることが可能である。ハプロタイプは、多型部位に特定のアレルを有する多様な多型マーカー、例えば、SNP及びマイクロサテライトの組み合わせを含んでなることが可能である。該ハプロタイプは、それ故、種々の遺伝子マーカーでアレルの組み合わせを含んでなる。
特異的多型マーカー及び/又はハプロタイプの検出は、多型部位の配列を検出するための当該技術分野では公知の方法により達成し得る。例えば、PCR、LCR、ネステッドPCR及び核酸増幅のための他の技術を利用する蛍光に基づいた技術(Chen, X. et al., Genome Res. 9(5): 492-98 (1999); Kutyavin et al.,Nucleic Acid Res. 34:el28 (2006))のような、SNP及び/又はマイクロサテライトマーカーの存在について遺伝子型同定するための標準技術を使用し得る。SNP遺伝子型同定に利用可能な具体的方法論には、限定されるわけではないが、TaqMan遺伝子型同定アッセイ及びSNPIex プラットフォーム(Applied Biosystems)、質量分析(例えば、Sequenom からのMassARRAY システム)、ミニシークエンシング法、リアルタイムPCR、Bio-Plex システム(BioRad)、CEQ及びSNPstream システム(Beckman)、Molecular Inversion Probe アレイ技術(例えば、Affymetrix GeneChip)及びBeadArray Technologies(例えば、Illumina GoldenGate 及び Infinium アッセイ)が挙げられる。これら又は当業者には利用可能な他の方法により、マイクロサテライト、SNP又は他のタイプの多型マーカーを含む、多型マーカーでの一つ又はそれ以上のアレルを同定し得る。
本明細書に記載したある種の方法において、循環器疾患について増加した感受性を有する(即ち、アットリスク)個体は、循環器疾患に対する増加した感受性を与える一つまたはそれより多くの多型マーカー又はハプロタイプで少なくとも一つの特異的アレルが同定されている(即ち、アットリスクマーカーアレル又はハプロタイプ)個体である。一つの側面において、該アットリスクマーカー又はハプロタイプは、循環器疾患の有意に増加したリスク(又は感受性)を与えるものである。一つの態様において、マーカー又はハプロタイプに関連する有意性は相対リスクにより測定される。一つの態様において、マーカー又はハプロタイプに関連する有意性は相対リスク(RR)により測定される。別の態様において、マーカー又はハプロタイプに関連する有意性はオッズ比(OR)により測定される。さらなる態様において、有意性はパーセンテージにより測定される。一つの態様において、有意に増加したリスクは、限定されるわけではないが、少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.5、少なくとも3.0、少なくとも4.0及び少なくとも5.0を含む、少なくとも1.2のリスク(相対リスク及び/又はオッズ比)として測定される。特定の態様において、少なくとも1.2のリスク(相対リスク及び/又はオッズ比)が有意である。別の特定の態様において、少なくとも1.3のリスクが有意である。さらに別の態様において、少なくとも1.4のリスクが有意である。さらなる態様において、少なくとも約1.5の相対リスクが有意である。別のさらなる態様において、少なくとも約1.7であるリスクの有意な増加が有意である。しかしながら、他のカットオフ、例えば、少なくとも1.15、1.25、1.35なども企図され、こうしたカットオフも本発明の範囲内である。他の態様において、リスクの有意な増加は、限定されるわけではないが、約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%、300%及び500%を含む、少なくとも約20%である。一つの特定の態様において、リスクの有意な増加は少なくとも約20%である。他の態様において、リスクの有意な増加は少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%及び少なくとも100%である。しかしながら、本発明を特徴付けるため、当業者により適していると考えられた他のカットオフ又は範囲も企図され、それらも本発明の範囲内である。ある態様において、リスクの有意な増加は、0.05未満、0.01未満、0.001未満、0.0001未満、0.00001未満、0.000001未満、0.0000001未満、0.00000001未満又は0.000000001未満のp値のようなp値により特徴付けられる。
本発明のアットリスク多型マーカー又はハプロタイプは、健常個体(対照)におけるその存在の頻度と比較して、循環器疾患についてアットリスクである個体(患者)において、少なくとも一つのマーカー又はハプロタイプの少なくとも一つのアレルがより頻繁に存在しているものであり、該マーカー又はハプロタイプの存在は、循環器疾患への増加した感受性を示す。一つの態様において、対照群は集団サンプル、即ち、母集団からのランダムサンプルであることができる。別の態様において、対照群は疾患を有していない個体の群により表される。こうした疾患を有していない対照は、一つの態様において、一つまたはそれ以上の特異的疾患関連症状が存在しないことにより特徴付けることができる。別の態様において、疾患を有していない対照群は、一つ又はそれ以上の疾患特異的リスク因子が存在しないことにより特徴付けられる。一つの態様において、こうしたリスク因子は少なくとも一つの環境リスク因子である。代表的な環境要因は、特異的疾患又は形質に影響することが知られている、又は影響するように企図された天然産物、鉱物又は他の化学物質である。他の環境リスク因子は、限定されるわけではないが、食物及び飲酒習慣、主な生育地の地理的な位置、及び職業的リスク因子を含む、ライフスタイルに関連するリスク因子である。別の態様において、該リスク因子は、少なくとも一つの追加の遺伝的リスク因子を含んでなる。
相関のための単純な検定の例は、2x2分割表でのフィッシャーの直接確率検定であろう。染色体のコホートを考えると、2x2分割表は、マーカー又はハプロタイプの両方を含む、マーカー又はハプロタイプの一つを含む(他方は含まない)及びマーカー又はハプロタイプを含まない染色体の数から構成される。当業者には公知である関連性についての他の統計的試験も企図され、そして本発明の範囲内でもある。
本発明の他の態様において、疾患又は形質について減少した感受性(即ち、減少したリスク)にある個体は、疾患又は形質について減少した感受性を与える一つまたはそれより多くの多型マーカーで少なくとも一つの特異的アレルが同定されている個体である。減少したリスクを与えるマーカーアレル及び/又はハプロタイプは保護的であるとも言われている。一つの側面において、該保護的マーカー又はハプロタイプは、疾患又は形質の有意に減少したリスク(又は感受性)を与えるものである。一つの態様において、有意に減少したリスクは、限定されるわけではないが、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満、0.4未満、0.3未満、0.2未満及び0.1未満を含む0.9未満の相対リスク(又はオッズ比)として測定される。一つの特定の態様において、有意に減少したリスクは0.7未満である。別の態様において、有意に減少したリスクは0.5未満である。さらに別の態様において、有意に減少したリスクは0.3未満である。別の態様において、リスク(又は感受性)の減少は、限定されるわけではないが、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%及び少なくとも98%を含む、少なくとも20%である。一つの特定の態様において、リスクの有意な減少は少なくとも約30%である。別の態様において、リスクの有意な減少は少なくとも約50%である。別の態様において、リスクの減少は少なくとも約70%である。本発明を特徴付けるため、当業者により適していると考えられた他のカットオフ又は範囲もしかしながら企図され、それらも本発明の範囲内である。
当業者は、集団中に存在する二つのアレルを有するマーカーについて研究されていることを理解するであろうし(SNPのような)、ここで一つのアレルは、対照と比較して、集団中の形質又は疾患を有する個体の群において増加した頻度で観察され、該マーカーの他のアレルは、対照と比較して、集団中の形質又は疾患を有する個体の群において減少した頻度で観察されるであろう。こうしたケースにおいて、マーカーの一つのアレル(形質又は疾患を有する個体において増加した頻度で観察された方)がアットリスクアレルであろうし、一方、他のアレルは保護的アレルであろう。
疾患又は形質(例えば、循環器疾患)に関連する遺伝子変異体は、所与の遺伝子型についての疾患のリスクを予測するために単独で使用し得る。SNPのような二アレルマーカーについては、三つの可能な遺伝子型がある:アットリスク変異体についてのホモ接合体、ヘテロ接合体、及びアットリスク変異体の非キャリア。複数の座位で変異体に関連するリスクは、全リスク(overall risk)を推定するために使用し得る。多SNP変異体に対して、kの可能な遺伝子型がある、k=3nx2p;式中、nは常染色体座位の数、pはゴノソーマル(gonosomal)(性染色体)座位の数である。全リスク評価計算は通常、異なった遺伝子変異体の相対リスクを乗じることを仮定し、即ち、特定の遺伝子型合計に関連する全リスク(例えば、RR又はOR)は、各座位での遺伝子型についてのリスク値の積である。もし示されたリスクが、一致した性及び民族性を有する基準集団と比較された、個人、又は個人の特異的遺伝子型についての相対リスクであるならば、統合リスクは座位特異的リスク値の積であり、それは集団と比較された全リスク推定値に相当する。もし、個人についてのリスクがアットリスクアレルの非キャリアとの比較に基づいているのであれば、統合リスクは、すべての座位で所与の組み合わせを有する個人とこれらの座位のいずれにもリスク変異体を運んでいない個体の群を比較する推定値に相当する。いずれかのアットリスク変異体の非キャリアの群は最も低い推定リスクを有し、及びそれ自身(即ち、非キャリア)と比較して1.0の統合リスクを有するが、しかし集団と比較した場合、1.0未満の全リスクを有する。非キャリアの群は非常に小さい可能性がある(特に多数の座位に対して)ことに注目すべきであり、そのような場合、その関連性はそれ相応に小さい。
乗法モデルは、通常、複雑な形質のデータを何とかうまく適合させる簡潔なモデルである。多重度からの偏位は、一般的疾患についての共通変異体との関連ではまず記載されていず、もし報告されていても、座位間の統計的相互作用を示すことが可能であるには非常に大きなサンプルサイズが通常必要とされるので、示唆しているのみである。
例として、前立腺癌と関連していると記述されている8つの変異体を考えてみる(Gudmundsson, J., et al., Nat Genet 39:631-7 (2007), Gudmundsson, J., et al., Nat Genet 39:977-83 (2007); Yeager, M., et al, Nat Genet 39:645-49 (2007), Amundadottir, L., et al., Nat Genet 38:652-8 (2006); Haiman, CA., et al., Nat Genet 39:638-44 (2007))。これらの座位の7つは常染色体上にあり、残りの座位は染色体X上にある。理論的遺伝子型組み合わせの総数は従って37x21=4374である。これらの遺伝子型クラスのいくつかは非常に希であるが、それでも可能であり、全リスク評価には考慮すべきである。遺伝子変異体が明らかに「環境」因子とは相関しないことを仮定すれば、非遺伝子リスク変異体と結合させて多遺伝子変異体のケースに乗法モデルを応用できそうである。言い換えれば、非遺伝子と遺伝子リスク因子が相互作用しないことを仮定すれば、遺伝子及び非遺伝子アットリスク変異体は乗法モデルで評価することが可能であり、統合リスクを推定した。
同様の定量的アプローチを使用し、本明細書に記載したいずれかの循環器疾患に関連する複数の変異体に関する統合又は全リスクを評価することができる。
連鎖不平衡
各減数分裂イベント間に、各染色体対について平均一回起こる組換えの自然現象は、自然が配列(及び結果により生物学的機能)に変異を提供する一つの様式を代表している。ゲノム中では組換えがランダムには起こらないことが発見されており;組換え率の頻度には大きな変動があり、高組換え頻度の小さな領域(組換えホットスポットとも称される)及び低組換え頻度のより大きな領域が生じており、それは一般に連鎖不平衡(LD)ブロックと称されている(Myers, S. et al., Biochem Soc Trans 34:526-530(2006); Jeffreys, A.J., et al.,Nature Genet 29:217-222 (2001); May, C.A., et al., Nature Genet 31:272-275(2002))。
連鎖不平衡(LD)とは二つの遺伝的要素の非ランダム分類を指す。例えば、もし一つの特定の遺伝的要素(例えば、多型マーカーの「アレル」)が集団中で0.50(50%)の頻度で生じ、及び別の要素が0.50(50%)の頻度で生じたとすれば、両方の要素を有するヒトでの予期される発生率は、要素のランダム分布を仮定すれば0.25(25%)である。しかしながら、もし二つの要素が0.25よりも高い頻度で一緒に生じるならば、それらの独立したアレル頻度で予測されるであろうよりも高い比率で一緒に遺伝される傾向があるので、該要素は連鎖不平衡にあると言われている。大マーカーに言うと、LDは、二つの要素間の組換えイベントの頻度に一般的に相関している。集団中の個体の遺伝子型を決定し、及び集団中の各アレル又はハプロタイプの出現率を決定することにより、集団中のアレル又はハプロタイプ頻度を決定し得る。二倍体の集団(例えば、ヒト集団)では、個体は典型的には各遺伝的要素(例えば、マーカー、ハプロタイプ又は遺伝子)について二つのアレル又はアレル組み合わせを有しているであろう。
連鎖不平衡(LD)の強度を評価するため、多くの異なった尺度が提案されてきた。ほとんどは両アレル部位の対間の関連の強さを捕捉する。二つの重要なLDの対尺度はr2(しばしばΔ2で表示される)及び|D’|である。両方の尺度とも0(不平衡なし)から1(「完全」不平衡)の範囲であるが、それらの解釈はわずかに異なっている。|D’|は、もし二つ又は三つの可能なハプロタイプが存在するならば、それは1に等しく、及び四つの可能なハプロタイプが存在するならば、それは<1であるとように定義される。従って、<1である|D’|の値は、二つの部位で歴史的組換えが起こってもよいことを示している(反復性変異も<1である|D’|を生じ得るが、単一ヌクレオチド多型(SNP)についてこのことは組換えよりも起こりにくいと通常考えられている)。尺度r2は、二つの部位間の統計的相関を表しており、もし二つのみのハプロタイプが存在すれば1の値をとる。
2尺度は、r2間の単純な逆関係であり、及び感受性座位及びSNP間の関連を検出するために少量の試料しか必要とされないので、関連マッピングについての間違いなく最もよい関連尺度である。これらの尺度は対の部位について定義されているが、いくつかの適用については、多くの多型部位を含有する全領域にわたり、LDがどれくらい強いかを決定することが望まれるであろう(例えば、LDの強度が座位間で又は集団にわたって有意に異なっているかどうか、又は特定のモデル下で予測されるよりも領域中でLDが大きいか又は小さいかどうかを試験すること)。領域にわたってLDを測定することは容易ではないが、一つのアプローチは集団遺伝学で開発された尺度rを使用するものである。大マーカーに言うと、rは、データに見られるLDを発生させるため、特定の集団モデル下でどのくらいの組換えが必要とされるであろうかを測定する。このタイプの方法は、LDデータが組換えホットスポットの存在についての証拠を提供するかどうかを決定することへの統計的に厳密なアプローチも提供できる可能性がある。本明細書で記載されている方法について、有意なr2値は、少なくとも、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、09〜1、0.92、0.93、0.94、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99又は1.0のように、少なくとも0.1であり得る。一つの好ましい態様において、有意なr2値は少なくとも、0.2であり得る。もしくは、本明細書に記載した連鎖不平衡は、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.85、0.9、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99のような、少なくとも、0.2の|D’|の値により特徴付けられる連鎖不平衡を指す。それ故、連鎖不平衡は特有なマーカーのアレル間の相関を表す。それは相関係数又は|D’|(1.0までのr2及び1.0までの|D’|)により測定される。ある態様において、連鎖不平衡はr2及び|D’|尺度の両方についての値に関して定義される。一つのこうした態様において、有意な連鎖不平衡は、r2>0.1及び|D’|>0.8と定義される。別の態様において、有意な連鎖不平衡は、r2>0.2及び|D’|>0.9と定義される。連鎖不平衡を決定するためのr2及び|D’|の値についての他の組み合わせ及び順列も企図され、それらも本発明の範囲内である。連鎖不平衡は本明細書で定義した単一ヒト集団において決定することもできるし、又は一つより多くのヒト集団からの個体を含んでなるサンプルの集合においても決定し得る。本発明の一つの態様において、LDは、定義されているような(http://www.hapmap.org)、一つ又はそれ以上のHapMap集団(コーカサス人、アフリカ人、日本人、中国人)からのサンプルにおいても決定される。一つのこうした態様において、HapMapサンプルのCEU集団においてLDが決定される。別の態様において、YRI集団においてLDが決定される。さらに別の態様において、アイスランド集団からのサンプルにおいてLDが決定される。
もしゲノム中のすべての多型が集団レベルで独立していれば(即ち、LDなし)、すべての異なった多型状態を評価するため、それらのことごとくが関連性研究で調査される必要があろう。しかしながら、多型の連鎖不平衡のため、強固に連結した多型は強く相関し、それは有意な関連を観察するための関連性研究で調査されることを必要とする多型の数を減少させる。LDの別の結果は、これらの多型が強く相関性があるという事実のため、多くの多型が関連性シグナルを与えることができるということである。
ゲノムLD地図は、ゲノムの全域で作製されており、こうしたLD地図は疾患−遺伝子地図作製のための骨組みとして働くことが提案されてきた(Risch, N. & Merkiangas, K, Science 273:1516-1517(1996); Maniatis, N., et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:2228-2233 (2002); Reich, DE et al, Nature 411:199-204(2001))。ヒトゲノムの多くの部分が、少数の共通ハプロタイプを含有する、一連の分離したハプロタイプブロックに分解され得ることも確立されており;これらのブロックについて、連鎖不平衡データは組換えを示す証拠を提供しなかった(例えば、Wall., J. D. and Pritchard, J. K., Nature Reviews Genetics 4:587-597 (2003); Daly, M. et al., Nature Genet. 29:229-232 (2001); Gabriel, S.B. et al., Science 296:2225-2229 (2002); Patil, N. et al., Science 294:1719-1723 (2001); Dawson, E. et al., Nature 418:544-548 (2002); Phillips, M.S. et al., Nature Genet. 33:382-387 (2003) を参照されたい)。これらのハプロタイプブロックを画定するための二つの主な方法がある:ブロックは、限定されたハプロタイプ多様性を有するDNAの領域として(例えば、Daly, M. et al., Nature Genet. 29:229- 232 (2001); Patil, N. et al., Science 294:1719-1723 (2001); Dawson, E. et al., Nature 418:544-548 (2002); Zhang, K. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 99:7335-7339 (2002) を参照されたい)、又は連鎖不平衡を使用して同定された、広範囲の歴史的組換えを有する遷移域間の領域として(例えば、Gabriel, S.B. et al., Science 296:2225-2229 (2002); Phillips, M.S. et al., Nature Genet. 33:382-387 (2003); Wang, N. et al., Am. J. Hum. Genet. 71:1227-1234 (2002); Stumpf, M.P., and Goldstein, D.B., Curr. Biol. 73:1-8 (2003) を参照されたい)画定し得る。さらに最近、組換え率の高精度地図及びヒトゲノム全域にわたった対応するホットスポットが作製された(Myers, S., et al., Science 310:321 -32324 (2005); Myers, S. et al., Biochem Soc Trans 34:526530 (2006))。該地図は、該ゲノム全域にわたった組換えでの膨大な変異を明らかにし、ホットスポット中では10〜60cM/Mbほど高い組換え率を有し、一方、介在領域では0に近く、それ故、それは限定されたハプロタイプ多様性及び高LDの領域を表している。該地図はそれ故、組換えホットスポットが隣接した領域としてのハプロタイプブロックs/LDブロックを画定するために使用し得る。本明細書で使用される用語「ハプロタイプブロック」又は「LDブロック」は、上記の特徴のいずれかにより、又はこうした領域を画定するために当業者により使用される代替法により画定されたブロックを含む。ハプロタイプブロック(LDブロック)は、単一マーカー又は複数のマーカーを含んでなるハプロタイプを使用し、表現型とハプロタイプ状態間の関連の地図作製に使用し得る。主ハプロタイプが各ハプロタイプブロックで同定でき、次ぎに「タグ付けされた」SNP又はマーカーの組(SNP又はマーカーの最も小さな組がハプロタイプ間を区別するために必要とされる)を同定し得る。これらのタグ付けされたSNP又はマーカーを次ぎに、表現型とハプロタイプ間との関連を同定するため、個体の群からのサンプルの評価に使用し得る。望むなら、隣接したハプロタイプブロックは、ハプロタイプブロック間の連鎖不平衡でも存在することができるので、同時に評価し得る。
ゲノム中の多型マーカーへのいずれかの所与の観察された関連について、ゲノム中の追加のマーカーも関連を示すようであることが明らかにされた。このことは、組換え率の大きな変動により観察されたように、ゲノム全域にわたるLDの一様でない分布の自然の結果である。関連を検出するために使用されたマーカーは、それ故、ある意味で、所与の疾患又は形質に関連するゲノム領域(即ち、ハプロタイプブロック又はLDブロック;例えば、C09 LDブロック)のための「タグ」を表し、そのようであるので、本発明の方法及びキットでの使用に有用である。一つ又はそれ以上の原因となる(機能的)変異体又は突然変異は、該疾患又は形質へ関連していることが見いだされた領域内に属することができる。こうした変異体は、関連性を検出するために使用されたタグ付けマーカーで観察されたよりも高い相対リスク(RR)又はオッズ比(OR)を与えることができる。本発明はそれ故、本明細書に記載した該疾患への関連性を検出するために使用したマーカー、ならびに該マーカーと連鎖不平衡にあるマーカーについて言及する。それ故、本発明のある態様において、本明細書に記載した本発明のマーカー及び/又はハプロタイプとLDにあるマーカーを、代替マーカーとして使用することができる。該代替マーカーは、一つの態様において、本明細書に記載した、該疾患と関連していると最初に見いだされたマーカー又はハプロタイプよりも小さな相対リスク(RR)及び/又はオッズ比(OR)値を有する。他の態様において、該代替マーカーは、本明細書に記載した、該疾患と関連していると最初に見いだされたマーカーについて決定されたRR又はOR値よりも大きな値を有する。こうした態様の例は、本明細書に記載した変異体のような、該疾患に関連していると最初に発見された、より一般的な変異体(>10%の集団頻度)を伴ったLD中の、希な又は相対的に希な変異体(<10%のアレル集団頻度のような)であろう。本明細書に記載した、本発明者により発見された関連を検出するためにこうしたマーカーを同定すること及び使用することは、当業者には公知のルーチン法により実施することができ、そしてそれ故、本発明の範囲内である。
ハプロタイプ頻度の決定
患者及び対照群中のハプロタイプの頻度は期待値最大化(expectation-maximization )アルゴリズム(Dempster A. et al., J. R. Stat. Soc. B, 39:1-38 (1977)) を使用して推定することが可能である。失われた遺伝子型及びフェーズの不確かさを取り扱うことが可能なこのアルゴリズムの実行を使用し得る。帰無仮説下、患者及び対照は同一の頻度を有すると仮定した。尤度アプローチを使用し、対立仮説を試験し、そこでは、本明細書に記載したマーカーを含むことができる候補アットリスクハプロタイプは対照よりも患者でより高い頻度にし、一方、他のハプロタイプの頻度は両群で同一とした。両方の仮説下で尤度を別々に最大化し、対応する1−df尤度比統計を、統計的有意性を評価するために使用した。
領域内のアットリスク及び保護的マーカー及び/ハプロタイプを探すため、例えば、これらのマーカーが実行領域に広がっていると仮定して、遺伝子型決定したマーカーのすべての可能な組み合わせの関連を研究した。合併した患者及び対照群を、患者及び対照の本来の群に等しいサイズで、二つの組にランダムに分割することができる。マーカー及び/ハプロタイプ分析を次ぎに繰り返し、登録された最も有意なP値を決定した。このランダム化スキームを例えば、100回以上繰り返すことができ、P値の実験的分布を構築した。好ましい態様において、<0.05のP値が有意なマーカー及び/又はハプロタイプの関連を示す。
ハプロタイプ解析
ハプロタイプ解析の一つの一般的アプローチはネステッドモデル(NEMO)(Gretarsdottir S., et al., Nat. Genet.35:131-38 (2003))に応用した尤度に基づいた推論を使用することを含んでいる。該方法は、多くの多型マーカー、SNP及びマイクロサテライトを許容するプログラムNEMOで実行される。方法及びソフトウェアーは、患者対照研究について具体的に設計され、異なったリスクを与えるハプロタイプ群を同定することが目的である。それはLD構造を研究するためのツールでもある。NEMOにおいて、最大尤度推定値、尤度比及びP値は、観察されたデータについてそれを失われたデータ問題として取り扱う、EMアルゴリズムの助けを借りて、直接的に計算される。
フェーズの不確かさ及び失われた遺伝子型による情報損失を取り込んだ観察データを直接計算される尤度に基づいた尤度比試験は信頼できて、有効なP値を与えるが、不完全である情報のため、どのくらいの情報が失われていたかを知ることはそれでも興味あることであろう。ハプロタイプ分析についての情報量は、連鎖分析について定義された情報量の自然な流れとしてNicolae and Kong (Technical Report 537, Department of Statistics, University of Statistics, University of Chicago ; Biometrics, 60(2):368-75 (2004)) により記載されており、NEMOで実行された。
疾患と単一マーカー関連について、フィッシャーの直接確率検定を使用することができ、各個体アレルの両側P値を計算した。通常、すべてのP値は特別に示されていない限り、複数比較のために調整されずに示されている。示された頻度(マイクロサテライト、SNP及びハプロタイプについて)は、キャリアー頻度に対立するものとしてのアレル頻度である。連鎖分析のための家族として動員された患者の同系性による偏向を最小化するため、一等親及び二等親血縁者類は患者リストから除去し得る。さらに、Risch, N. & Teng, J.(Genome Res., 8: 1273-1288 (1998)) に記載されている分散調節法を拡大することにより、一般的家族関連性に適用できるように、及び比較のため調整及び未調整P値の両方に提示できるように同胞群についてDNAをプール化することにより(前記文献)、患者間に残った同系性を補正して関連について試験を繰り返し得る。相違は、予測されたごとく一般的に非常に小さかった。多重試験のために補正された単一マーカー関連の有意性を評価するため、同一の遺伝子型データを使用してランダム化試験を実施し得る。患者及び対照のコホートはランダム化できそして関連分析を複数回(例えば、500,000回まで)やり直すことができ、該p値は、元々の患者及び対照のコホートを使用して観察したp値より低いか又は等しい、いくつかのマーカーアレルについてのp値を生み出す再現の一部である。
単一マーカー及び/ハプロタイプ両解析について、相対リスク(RR)及び集団寄与リスク(PAR)を乗法モデル(ハプロタイプ相対リスクモデル)(Terwilliger, J.D. & Ott, J., Hum. Hered. 42:337-46 (1992) 及び Falk, CT. & Rubinstein, P, Ann. Hum. Genet. 51 (Pt 3):227-33 (1987)) 、即ち、二つのアレル/人が多数重なって運んでいるハプロタイプのリスク、を仮定して計算し得る。例えば、もしRRがaに対するAの相対リスクであるとしたら、ホモ接合体AAの人のリスクはヘテロ接合体AaのリスクのRR倍であり、ホモ接合体aaのそれのRR2倍であろう。乗法モデルは、分析及び計算を単純化する素晴らしい特性を有する−罹患した集団内ならびに対照集団内でハプロタイプは独立している(即ち、Hardy-Weinberg平衡で)。その結果、罹患者及び対照のハプロタイプ計算は各々多項分布を有するが、対立仮説下では異なったハプロタイプ頻度を有する。具体的には、二つのハプロタイプ、hi及びhjについて、リスク(hi)/リスク(hj)=(fi/pi)/(fj/pj)、式中、f及びpは、それぞれ患者集団及び対照集団中の頻度を表す。もし真のモデルが乗法的でないとしたら、いくらかのパワーの損失があるが、該損失は極端なケースを除いて軽度である傾向がある。最も重要なことは、P値は帰無仮説に関して計算されるので、常に有効である。
NEMOを使用する連鎖不平衡
マーカーの対間のLDは、D'及びR2の標準定義を使用して計算し得る(Lewontin, R., Genetics 49:49-67(1964); Hill, W.G. & Robertson, A. Theor. Appl Genet. 22:226-231 (1968)) 。NEMOを使用し、二つのマーカーアレルの組み合わせを、最大尤度により推定し、及び連鎖平衡からの逸脱を尤度比試験により評価した。D'及びR2の定義を、辺縁アレル確率により加重した二つのマーカーのすべての可能なアレル組み合わせについての値を平均することによりマイクロサテライトを含むように拡張した。
リスク評価及び診断
任意の所与の集団内では、特定の期間に特定の疾患又は形質を発生する可能性として定義される、疾患又は形質を発生する絶対リスクがある。例えば、乳癌の女性一生涯絶対リスクは9人に1人である。換言すると、9人の内の1人の女性は、彼女の生涯のある時点で乳癌を発症するであろう。リスクは、特定の個人よりもむしろ、非常に多くの人々を見ることにより典型的には測定される。リスクはしばしば絶対リスク(AR)及び 相対リスク(RR)に関して示される。相対リスクは、二つの変異体に関連するリスク、又は人々の二つの異なった群のリスクを比較するために使用される。例えば、ある遺伝子型を有する人々の群と異なった遺伝子型を有する別の群を比較するために使用し得る。疾患について、2の相対リスクは、一つの群が他の群より疾患を発症する2倍の可能性を有していることを意味する。示されたリスクは通常、一致した性及び民族性を有する集団と比較された、一個人又は一個人の特定の遺伝子型についての相対リスクである。同一の性及び民族性の2個体のリスクも同様に様式で比較できる。例えば、集団と比較して、もし第一の個体が相対リスク1.5を有し、そして第二の個体が相対リスク0.5を有していれば、第二の個体と比較された第一の個体のリスクは1.5/0.5=3である。
本明細書に記載したように、こうしたマーカーを含有するある種の多型マーカー及びハプロタイプは、循環器疾患、例えば、動脈疾患、例えば、心筋梗塞、冠動脈疾患、再狭窄、末梢動脈疾患、脳卒中、頭蓋内動脈瘤及び腹部大動脈瘤のリスク評価に有用であることが見いだされた。リスク評価は、循環器疾患への感受性を診断するためのマーカーの使用を含み得る。多型マーカーの特定のアレルが、循環器疾患と診断されていない個体よりも、循環器疾患を有する個体でより頻度高く観察された。従って、これらのマーカーアレルは、個体において循環器疾患の検出又は循環器疾患への感受性を予測することに役に立つ。本発明のマーカーのようなアットリスクマーカーを含んでなるハプロタイプブロック又はLDブロック内のタグ付けマーカーは、該ハプロタイプブロック又はLDブロック内の他のマーカー及び/又はハプロタイプの代替物として使用し得る。1に等しいr2の値を有するマーカーは該アットリスク変異体の完全な代替物である;即ち、一つのマーカーについての遺伝子型は、他についての遺伝子型を完全に予測する。1より小さなr2の値を有するマーカーも該アットリスク変異体の代替物であることができ、もしくは、アットリスク変異体と同じ高さの又はもしかするとさらにより高い相対リスク値を有する変異体を示す。同定されたアットリスク変異体は、それ自身が機能性変異体ではなくてもよいが、この例においては真の機能性変異体と連鎖不平衡にある。本発明は、本明細書に記載したマーカーのこうした代替マーカーの評価を包含する。こうしたマーカーは、当業者には公知であるように、注釈が付けられ、地図作製され、及び公開データベースに収載されるか、もしくは、個体のグループ中で本発明のマーカーにより同定された領域又は領域の一部を配列決定することにより容易に同定することができ、そして生じた配列群中の多型を同定する。その結果、当業者は容易に及び実験することなく、本明細書に記載したマーカー及び/又はハプロタイプと連鎖不平衡にある代替マーカーを遺伝子型同定し得る。検出されたアットリスク変異体とLDにあるタグ付け又は代替マーカーも、個体における循環器疾患への関連又は循環器疾患への感受性を検出することを予測することに役に立つ。本発明のマーカー及び/又はハプロタイプと連鎖不平衡にあるこれらのタグ付け又は代替マーカーは、これらの類似性が循環器疾患への感受性を検出することを予測することに役に立つので、ハプロタイプを識別する他のマーカーも含み得る。
本発明は、ある態様において、循環器疾患に関連すると記載された変異体の存在について、個体からのゲノムDNAを含んでなるサンプルを評価することにより実行し得る。こうした評価は、当業者には公知の及び本明細書にさらに記載された方法を使用して少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を検出する、及びこうした評価の結果に基づいて、サンプルを採取した個体が循環器疾患の増加した又は減少したリスク(増加した又は減少した感受性)にあるかどうかを決定する工程を含む。もしくは、本発明は、循環器疾患に関連すると本明細書に記載された少なくとも一つの多型マーカー(又は、循環器疾患に関連すると本明細書で示された少なくとも一つのマーカーと連鎖不均衡にあるマーカー)の遺伝子型状態についての情報を含んでなるデータセットを利用することにより実行し得る。言い換えれば、こうした遺伝子状態についての情報を含有するデータセット(例えば、ある多型マーカーでの遺伝子型数の形、又はマーカー複数性(例えば、あるアットリスクアレルの存在又は不存在の指示)、又は一つ又はそれ以上のマーカーについての実際の遺伝子型)は本発明者により循環器疾患に関連していることが示されたある種の多型マーカーでのある種のアットリスクアレルの存在又は不存在についてただすことができる。循環器疾患に関連する変異体(例えば、マーカーアレル)についての正の結果は、本明細書に示したように、データセットが由来する個体が、少なくとも一つの循環器疾患(例えば、動脈疾患、例えば、心筋梗塞、冠動脈疾患、再狭窄、末梢動脈疾患、脳卒中、頭蓋内動脈瘤及び腹部大動脈瘤)の増加した感受性(増加したリスク)にあることを示す。
本発明のある態様において、多型マーカーは、該多型マーカーについての遺伝子型データを、多型の少なくとも一つのアレルと循環器疾患との相関を含んでなるルックアップテーブルに参照することにより循環器疾患に相関付けされる。いくつかの態様において、該テーブルは一つの多型についての相関を含んでなる。他の態様において、該テーブルは複数の多型についての相関を含んでなる。両方のシナリオにおいて、マーカーと循環器疾患間の相関の指示を与えるルックアップテーブルに参照することにより、循環器疾患のリスク又は循環器疾患に対する感受性を、サンプルが採取された個体で同定し得る。いくつかの態様において、相関は統計的尺度として報告される。統計的尺度は相対リスク(RR)、絶対リスク(AR)又はオッズ比(OR)のようなリスク尺度として報告することができる。
本発明のマーカー及びハプロタイプ、例えば、本明細書の表1−36に示されたマーカー、例えば、表3、10及び21のマーカーは、単独で又は組み合わせて、循環器疾患(例えば、動脈疾患、例えば、心筋梗塞、冠動脈疾患、再狭窄、末梢動脈疾患、脳卒中、頭蓋内動脈瘤及び腹部大動脈瘤)のリスク評価及び診断目的に有用である。それ故、個々のマーカーによるリスクの増加が比較的軽微(即ち、10〜30%程度)の場合においても、該関連性は有意な意味を有する。それ故、比較的一般的な変異体が全リスクに対して有意に寄与し(集団寄与リスク(Population Attributable Risk )が高い)、マーカーの統合リスクに基づいて、循環器疾患を発生する有意な統合リスクを有する個体の群を規定するために、マーカーの組み合わせを使用し得る。
バイオマーカー
循環器疾患は、いくつかの共通バイオマーカーを有することが知られており、それらは循環器疾患を発症する増加したリスクに関係すると信じられている。これらには、上昇したフィブリノゲン、PAI−1、ホモシステイン、不斉ジメチルアルギニン、C反応性タンパク質及びB型ナトリウム利尿ペプチドド(BNP)が含まれる。これらの共通バイオマーカーは循環器疾患の共通の病因を強調している。最近、尿ペプチドが、循環器疾患、特に冠動脈疾患(CAD)についてのバイオマーカーとして有望であることが示された(Zimmerli,L.U.,et al.,Mol Cell Proteomics 7:290-8 (2008))。これらは、非侵襲的である利点を有しており、評価すべき個体からの尿サンプルを必要とするのみである。一つの応用において、尿サンプル中のポリペプチドのパターンが、CADの増加したリスクに特徴的である。
多くの一般的炎症マーカーは、CAD及びMIを含む冠動脈心疾患のリスクを予測するが、これらのマーカーはアテローム性動脈硬化に特異的ではない。例えば、スタイン(Stein,S.,Am J Cardiol,87 (suppl):21A-26A (2001))は、以下の血清炎症マーカーのいずれか一つを、冠動脈心疾患のリスクを予測するための代替物としての使用を議論しており、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、可溶性血管細胞接着分子(sVCAM)、可溶性脈管間の接着分子(sICAM)、E−セレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ1型、マトリックスメタロプロテアーゼ2型、マトリックスメタロプロテアーゼ3型及びマトリックスメタロプロテアーゼ9型が含まれている。
血清中のCRPレベル及び冠動脈心疾患に対する増加したリスク間の有意な関連性がWomen's Health Study において見出され、これらの女性の血清CRPの最も高い五分位点において、4.5の最も高い相対リスクが観察された(Ridker, P.M. et al., New England. J. Med., 347: 1557-1565 (2001))。女性における、増加した血清CRP及び冠動脈心疾患に対する増加したリスク間の類似の相関が報告されている(Ridker, P. M et al., New Engld. J. Med., 342:836-843 (2000); Bermudez, E.A. et.al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 22: 1668-1673 (2002))。CRPのような増加した血清炎症マーカーと冠動脈心疾患に対する増加したリスク間の類似の相関が、男性について報告されている(Doggen, C. J. M. et al., J.. Internal Med., 248:406-414 (2000) 及び Ridker, P.M. et al., New England. J. Med., 336: 973-979 (1997))。上昇したCRP又は他の血清炎症マーカーも、以前に心筋梗塞を起こした患者における二度目の心筋梗塞の増加した予後リスクである(Retterstol, L. et al., Atheroscler., 160: 433-440(2002))。新たな証拠も、上昇したCRPが悪い臨床転帰の独立したリスク因子であることを示唆している。例えば、Ridker et al., N. Engl. J. Med. 352: 1 (January 6, 2005) を参照されたい。
ロイコトリエン経路の最終産物は、アラキドン酸から誘導された強力な炎症性脂質メディエーターである。これらは脂質酸化及び/又は炎症誘発効果を介してアテローム性動脈硬化及びアテローム硬化性プラークの不安定化に寄与する可能性があり、LTC4、LTD4及びLTE4は血管収縮を誘発することが知られている。一方、LTB4は、強い炎症誘発剤である。ロイコトリエン経路のこれらの最終産物の増加した産生は、それ故、MI及びアテローム性動脈硬化のリスク因子として働くことができ、かかるがゆえ、炎症及び血管収縮/血管攣縮の両方がMI及びアテローム性動脈硬化の病因において確立された役割を有している。
本発明のある態様において、MI、CAD、AAA、IA、脳卒中及び/又はPADのような循環器疾患の遺伝子リスク変異体は、少なくとも一つのバイオマーカーと結合させて評価される。例えば、適切な試験サンプル(例えば、血清、血漿又は尿)における炎症マーカーのレベルは測定することができ、対照(正常、疾患のない対照、又は集団からの無作為サンプル)と相対的なサンプル中のバイオマーカーレベルの決定が行われる。分析の結果は、本明細書に記載した変異体により与えられる遺伝的リスクと結合させて分析することができ、全リスクが決定される。代表的な炎症マーカーには:C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、血清sCD40L、ロイコトリエン(例えば、LTB4、LTC4、LTD4、LTE4)、ロイコトリエン代謝産物、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、可溶性血管細胞接着分子(sVCAM)、可溶性脈管間接着分子(sICAM)、E−セレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ1型、マトリックスメタロプロテアーゼ2型、マトリックスメタロプロテアーゼ3型、マトリックスメタロプロテアーゼ9型、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びN−チロシンが含まれる。好ましい態様において、該マーカーは、CRP、sCD40L又はMPOである。バイオマーカーの決定は、当業者には公知の標準法により行われる。例えば、一つの態様において、ロイコトリエン代謝産物の産生を、カルシウムイオノフォアを使用し、個体からの第一の試験サンプル中で刺激する。産生のレベルを、対照レベルと比較する。該対照レベルは、MI、CAD、AAA、IA、脳卒中又はPADのアットリスクがない個体のような対照個体(単数又は複数)で典型的に観察されるレベルであり;もしくは、対照レベルは、測定のより高いバンド(例えば、平均又は中央値、第二、第三又は第四の四分位値;第二、第三、第四又は第五の五分位値より高い)と比較された、測定の最も低いバンドに関連する集団中の減少したリスクの比較により見出されたレベルである。
上記のように、ヒトゲノムのハプロタイプブロック構造は、疾患又は形質と本来関連する変異体と連鎖不平衡にある多数の変異体(マーカー及び/又はハプロタイプ)が、該疾患又は形質との関連を評価するための代替マーカーとして使用することができる効果を有する。こうした代替マーカーの数は、領域中の歴史的組換え率、領域中の突然変異頻度(即ち、領域中の多型部位又はマーカーの数)、及び領域中のLDの程度(LDブロックのサイズ)のような因子に依存するであろう。これらのマーカーは、本明細書に記載した方法を使用して、又は当業者には公知の他の方法により画定された、問題とするLDブロック又はハプロタイプブロックの物理的境界内に通常位置する。しかしながら、時にはマーカー及びハプロタイプ関連性は、画定されたハプロタイプブロックの物理的境界を超えて拡大していることが観察される。こうしたマーカー及び/又はハプロタイプは、これらのケースにおいて、画定されたハプロタイプブロック内に物理的に属する該マーカー及び/又はハプロタイプの代替マーカー及び/又はハプロタイプとしても使用することができる。その結果、本明細書に記載したマーカー及びハプロタイプとLDにある(典型的には、0.3より大きなr2を含む、0.4より大きなr2も含んだ0.2より大きなr2のような、0.1より大きなr2により特徴付けられる)マーカー及びハプロタイプは、たとえそれらが定義されたハプロタイプブロックの境界を超えて位置してしても、本発明の範囲内である。これには、本明細書に記載したマーカー(例えば、表1〜36;例えば、表3、10及び21)が含まれるが、表3、10及び21に示したマーカーを含む、表1〜35にリストした一つ又はそれ以上のマーカーと強いLD(例えば、0.1又は0.2より大きなr2及び/又は|D’|>0.8により特徴付けられる)にある他のマーカーも含まれる。
本明細書に記載したSNPマーカーについては、患者で過剰であることが観察されたアレル(アットリスクアレル)と逆のアレルは、循環器疾患において減少した頻度で観察された。これらのマーカー及びハプロタイプは、それ故循環器疾患に対して保護的であり、即ち、それらは循環器疾患を発生するこれらのマーカー及び/又はハプロタイプを運んでいる個体に減少したリスク又は感受性を与える。
ある種のハプロタイプを含んだ本発明のある種の変異体は、いくつかのケースにおいて、種々の遺伝子マーカー(例えば、SNP及びマイクロサテライト)の組み合わせを含んでなる。ハプロタイプを検出することは、多型部位の配列を検出するために当該技術分野で公知である及び/又は本明細書に記載された方法により達成し得る。さらに、ある種のハプロタイプ又はマーカーの組と疾患表現型間の相関は、標準技術を使用して検証し得る。相関についての単純な試験の代表的例は、2x2表でのフィッシャーの直接確率検定であろう。
具体的態様において、前立腺癌と関連するアレル又はハプロタイプマーカー(例えば、表3、10及び21にリストしたマーカーアレル)は、健常な個体(対照)におけるその存在の頻度と比較し、循環器疾患のリスクがある個体(患者)においてより高頻度で存在するアレル又はハプロタイプマーカーであり、該アレル又はハプロタイプマーカーの存在は循環器疾患又は循環器疾患に対する感受性を示す。他の態様において、冠動脈疾患及びステント内再狭窄を含む循環器疾患と関連することが観察された一つ又はそれ以上のマーカー(例えば、表3、10及び21にリストしたマーカーアレル)と連鎖不平衡にあるアットリスクマーカーは、健常な個体(対照)におけるそれらの存在の頻度と比較して、循環器疾患のリスクがある個体(患者)により高頻度で存在するタグ付けマーカーであり、該タグ付けマーカーの存在は循環器疾患に対する感受性を示す。さらなる態様において、循環器疾患と関連することが観察された一つ又はそれ以上のマーカー(例えば、表3、10及び21にリストしたマーカーアレル、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカー)と連鎖不平衡にあるアットリスクマーカーアレル(即ち、増加した感受性を与える)は、健常な個体(対照)におけるそれらの存在の頻度と比較して、循環器疾患のリスクがある個体(患者)により高頻度で存在する一つ又はそれ以上のアレルを含んでなるマーカーであり、該マーカーの存在は循環器疾患に対する感受性を示す。
調査対象集団
一般的な意味において、本発明の方法及びキットは、いずれの起源及びいずれの個体からの核酸物質(DNA又はRNA)含有サンプルにも利用し得る。好ましい態様において、該個体はヒト個体である。該個体は、大人、子供、又は胎児であり得る。核酸源は、核酸物質を含んでなる任意のサンプルであることができ、生体サンプル又はそれらから誘導される核酸物質を含んでなるサンプルが含まれる。本発明は、標的集団のメンバーである個体中のマーカー及び/又はハプロタイプを評価するためにも提供される。こうした標的集団は、一つの態様において、他の遺伝因子、バイオマーカー、生物物理的パラメーター(例えば、体重、BMD、血圧)又は一般健康及び/又はライフスタイルパラメーター(例えば、疾患又は関連疾患の病歴、疾患の診断歴、疾患の家族歴)に基づいて疾患を発生するリスクを有する個体の集団又は群である。
本発明は、40歳以上、45歳以上、又は50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳又は85歳以上のような特異的年齢副群からの個体を含む態様を提供する。本発明の他の態様は、80歳未満、75歳未満、又は70歳、65歳、60歳、55歳、50歳、45歳、40歳、35歳、又は30歳未満のような、85歳未満の年齢の個体のような他の年齢群に関する。他の態様は、いずれかの上記の年齢範囲に疾患の発症年齢を有する個体に関する。45歳より上で60歳未満での発症年齢のような年齢範囲がある種の態様で関連することができることも企図される。しかしながら、上にリストした年齢値によりひとくくりにされたすべての年齢範囲を含む、他の年齢範囲も企図される。本発明はさらに両方の性(男性又は女性)の個体に関する。
アイスランド人集団は、北ヨーロッパ祖先のコーカサス人集団である。アイスランド人集団における遺伝子連鎖及び関連性の結果を報告している多数の研究が、ここ数年公開されてきた。これらの研究の多くは、他の集団において、特定の疾患に関連しているとして元々アイスランド人集団で同定された変異体の再現を示した(Stacey, S. N., et al., Nat Genet. May 27 2007 (Epub ahead of print; Helgadottir, A., et al., Science 316:1491-93 (2007); Steinthorsdottir, V., et al., Nat Genet. 39:770-75 (2007); Gudmundsson, J., et al., Nat Genet. 39:631-37 (2007); Amundadottir, L.T., et al., Nat Genet. 38:652-58 (2006); Grant, S.F., et al., Nat Genet. 38:320-23 (2006))。それ故、アイスランド人集団における遺伝的発見は、アフリカ及びアジアからの集団を含む他の集団においても一般に再現されてきた。
循環器疾患に関連していることが見いだされた本発明のマーカーは、他のヒト集団においても同様の関連を示すと信じられる。個々のヒト集団を含んでなる特定の態様もそれ故企図され、本発明の範囲内である。こうした態様は、限定されるわけではないが、コーカサス人、ヨーロッパ人集団、アメリカ人集団、ユーラシア人集団、アジア人集団、中央/南アジア人集団、東アジア人集団、中東人集団、アフリカ人集団、ラテンアメリカ人系集団及びオセアニア人集団を含む、一つ又はそれ以上のヒト集団であるヒト対象に関する。ヨーロッパ人集団には、限定されるわけではないが、スウェーデン人、ノルウェー人、フィンランド人、ロシア人、デンマーク人、アイスランド人、アイルランド人、ケルト人、イギリス人、スコットランド人、オランダ人、ベルギー人、フランス人、ドイツ人、スペイン人、ポルトガル人、イタリア人、ポーランド人、ブルガリア人、スラブ人、セルビア人、ボスニア人、チェチェン人、ギリシア人及びトルコ人集団が含まれる。他の態様において、本発明はさらに、バンツー、マンデンカ、ヨルバ、サン、ムブティピグミー、オルカディアン、エディゲル、ロシア、サルジニア、トスカナ、ムザブ、ベドウィン、ドルーズ、パレスティナ、バローチ、ブラフイ、マクラーニー、シンド、パターン、ブルーショー、ハザラ、ウィグル、カラーシュ、ハン、ダイ、ダフール、ホジェン、ラフ、ミャオ、オロチョン、シ、エ、トゥチャ、トウ、シボ、イー、モンゴル、ナシ、カンボジア、ジャパニーズ、ヤクート、メラネシア、パプア、カリティアナ、スルイ、コロンビア、マヤ及びピマを含む特異的ヒト集団においても実施し得る。
一つの好ましい態様において、本発明は、アフリカ系家系又は血統の人々を含んでなる集団のようなブラックアフリカ人祖先を含む集団に関する。ブラックアフリカ人祖先は自己申告により、ブラック人種のメンバーである又はネグロ人種のメンバーである、アフリカンアメリカ人、アフロアメリカ人、ブラックアメリカ人として決定することができる。例えば、アフリカンアメリカ人又はブラックアメリカ人は北アメリカに住み、そしてアフリカのブラック人種群のいずれかに起源を有する人々である。別の例において、ブラックアフリカ人祖先の自己申告をした人々は、少なくとも一人のブラックアフリカ人祖先の親又は少なくとも一人のブラックアフリカ人祖先の祖父母を有している。別の態様において、本発明はコーカサス人起源の個体に関する。
個々の対象における人種的寄与も遺伝子分析により決定することができる。祖先の遺伝子分析は、Smith et al. (Am J Hum Genet 74, 1001 -13 (2004))により示されているような非連鎖マイクロサテライトマーカーを使用して実施することができる。
ある態様において、本発明は上記の特異的集団で同定されたマーカー及び/又はハプロタイプに関する。当業者は、連鎖不平衡(LD)の尺度は、異なった集団に適応された場合に異なった結果を与えることを認識するであろう。このことは、異なったヒト集団の異なった集団歴史、ならびに特異的ゲノム領域中のLDの相違を導くことができる異なった選択圧による。ある種のマーカー(例えば、SNPマーカー)は、異なった集団において異なった集団頻度を有し、又は一つの集団では多型であるが、別の集団ではそうではないことも、当業者には公知である。しかしながら、当業者はいずれの所与のヒト集団においても本発明を実施するため、利用可能な及び本明細書で考えられた方法を適用するであろう。このことは、特異的集団内で最も強い関連性を与えるマーカーを同定するための、本発明のLD領域中の多型マーカーの評価が含まれる。それ故、本発明のアットリスク変異体は、多様なヒト集団において異なったハプロタイプバックグラウンド上に、及び異なった頻度で存在することができる。しかしながら、当該技術分野で公知である方法及び本発明のマーカーを利用し、本発明はいずれの所与のヒト集団においても実行し得る。
遺伝子検査の有用性
当業者は、本明細書に記載した変異体は、それ自身では循環器疾患を発症するであろう個体の絶対的同定を一般に提供しないことを認識及び理解するであろう。しかしながら、本明細書に記載した変異体は、本発明のアットリスク又は保護的変異体を運んでいる個体が、少なくとも一つの循環器疾患に関連する症状(例えば、MI、CAD、IA、AAA、再狭窄、脳卒中PAD)を発症するであろうという、増加した又は減少した可能性を示す。しかしながら、この情報は例えば、初期段階で治療を応用することが可能なように、早期段階で予防的測定を開始するため、定期的な身体的及び/又は精神的試験を実施して症状の進行及び/又は出現をモニターするため、又は早期症状を同定するため定期的な間隔での試験を計画するために使用し得るので、以下により詳細に概説するように、それ自身非常に有益である。
循環器疾患を発生するリスクを与える遺伝子変異体についての知識は、疾患を発生する増加したリスクを有する個体(即ち、アットリスク変異体のキャリア)及び疾患を発生する減少したリスクを有する個体(即ち、保護的変異体のキャリア)間を区別するための遺伝子試験を適用する機会を与える。上記の群の両方に属する個体についての遺伝子試験の中核的意義は、早期段階で疾患、又は疾患に対する素因を診断することができる可能性であり、最も適切な治療を適用することが可能であるように疾患の予後/進行性について、臨床医に情報を提供することである。
循環器疾患の家族歴及びアットリスク変異体のキャリアを有する個体は、遺伝的リスク因子の存在の知識、又は一つ又はそれ以上のリスク因子のキャリアであるという増加したリスクの証拠は、より健康的なライフスタイル(例えば、減量する、運動を増加させる、喫煙を止める、ストレスを減少させる、など)を実行するための増加した意欲を提供するので、遺伝子を検査することにより恩恵を受けることができる。患者の遺伝子検査はさらに、該疾患の主原因についての有用な情報を与えることができ、そして各個体に最良の治療オプション及び投薬の選択することにおいて臨床医を助け得る。
本発明は、循環器疾患のリスク評価のために使用することができ、個体が心筋梗塞、冠動脈疾患、PAD、AAA、IA、脳卒中又は再狭窄のような循環器疾患を発生するリスクにあるかどうかを診断することを含んでいる。本発明の多型マーカーは、単独で又は組み合わせて、ならびに循環器疾患についての個体のリスク評価のための、既知のバイオマーカーを含む他の因子と組み合わせて使用し得る。循環器疾患を発生するリスクを発生する個体の素因に影響することが知られている多くの因子が当業者には公知であり、こうした評価において利用し得る。これらには、限定されるわけではないが、年齢、性別、喫煙経験、身体活動性、ウエスト・ヒップ外周比、循環器疾患の家族歴、以前に診断された循環器疾患、肥満、糖尿病の診断、ストレス、鬱、高心拍数、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール、高血圧、血圧上昇、コレステロールレベル、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリド、アポリポタンパク質AI及びBレベル、フィブリノゲン、フェリチン、C反応性タンパク質及びロイコトリエンレベルが含まれる。こうした評価に使用し得る、当該技術分野の既知の方法には、本明細書でさらに記述される多変量解析又はロジスティック回帰が含まれる。
方法
循環器疾患のリスク評価のための方法がここに記載されており、そしてそれらは本発明に包含されている。本発明は、循環器疾患の療法剤に対する応答の可能性について個体を評価する方法、循環器疾患の療法剤の有効性を予測するための方法、核酸、ポリペプチド及び抗体及びコンピューター実行機能も包含する。循環器疾患に対する感受性を検出するため、対象からのサンプルを評価するためのキットも本発明に包含される。
診断法
ある態様において、本発明は、少なくとも一つの循環器疾患(例えば、MI、CAD、IA、AAA、脳卒中、PAD、再狭窄)を有する対象又は循環器疾患に感受性である対象により高頻度で出現する遺伝子マーカーでの特定のアレルを検出することにより、循環器疾患又は循環器疾患への感受性を診断する又は診断を助ける方法に関する。特定の態様において、本発明は、少なくとも一つの多型マーカー(例えば、本明細書に記載したマーカー)の少なくとも一つのアレルを検出することによる、循環器疾患に対する感受性を診断する方法である。本発明は、特定のマーカー又はハプロタイプの特定のアレル検出が循環器疾患に対する感受性を示す方法を記載する。こうした予後又は予測的アッセイは、循環器疾患の症状の発病に先立って、対象の予防的治療を決定するために使用し得る。本発明は、いくつかの態様において、診断、例えば、医学専門家により実施される診断の臨床応用の方法に関する。他の態様において、本発明は素人により実施される感受性の診断又は決定に関する。Molecular Inversion Probe アレイ技術(例えば、Affymetrix GeneChip)及び BeadArray Technologies(例えば、Illumina GoldenGate and lnfinium アッセイ)のようなSNPマーカーの高スループット遺伝子型同定を含む遺伝子型決定における最近の技術進歩は、比較的少ないコストで、百万までのSNPが同時に評価された自身の遺伝子型を個人が有することを可能にした。得られた遺伝子型情報(個人が利用できるようにされた)は、種々のSNPに関連する疾患又は形質のリスクについて公開文献からの情報と比較できる。本明細書に記載した疾患関連アレルの診断応用は、彼/彼女の遺伝子型データの分析を介して個人により、又は臨床試験の結果に基づいて医療従事者により実施することが可能である。言い換えれば、遺伝的リスクに基づいた感受性の評価は、彼の/彼女の遺伝子型についての情報及び種々のリスク因子についての論文に基づいて、医療従事者、遺伝子カウンセラー又は素人により行い得る。本文脈において、用語「診断する」及び「感受性を診断する」とは、上記の方法を含むいずれかの利用可能な診断法を指すことを意味する。
加えて、ある他の態様において、本発明は、循環器疾患と診断されていない個体又は母集団中よりも、循環器疾患と診断された患者において低い頻度で出現する特定の遺伝子マーカーアレル又はハプロタイプを検出することによる、循環器疾患を診断すること、又は循環器疾患への減少した感受性の診断を助ける方法に関する。
本明細書に記載した及び例示したごとく、特定のマーカーアレル又はハプロタイプ(例えば、表3、10及び21にリストしたマーカー又はそれらと連鎖不平衡にあるマーカー)は循環器疾患と関連している。一つの態様において、該マーカーアレル又はハプロタイプは、循環器疾患への有意なリスク又は感受性を与えるものである。別の態様において、本発明は、ヒト個体における循環器疾患に対する感受性を診断する方法に関し、該方法は、該個体から得られた核酸サンプル中の、又は該個体に由来する遺伝子型データセット中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含んでなり、該少なくとも一つの多型マーカーは、表3、10及び21にリストした多型マーカー、及びそれらと連鎖不均衡にあるマーカーから成る群より選択される。別の態様において、該マーカーアレル又はハプロタイプは、健常対象(対照、集団対照のような)における存在の頻度と比較して、循環器疾患を有している又は循環器疾患に罹りやすい対象(患者)においてより高頻度に存在する。ある態様において、該少なくとも一つのマーカーアレル又はハプロタイプの関連の有意性は、p値<0.05により特徴付けられる。他の態様において、該関連の有意性は、<0.01、<0.001、<0.0001、<0.00001、<0.000001、<0.0000001、<0.00000001又は<0.000000001のような、より小さなp値により特徴付けられる。
これらの態様において、該少なくとも一つのマーカーアレル又はハプロタイプの存在は、循環器疾患(例えば、MI、CAD、IA、脳卒中、AAA、再狭窄、PAD)への感受性を示す。これらの診断法は、循環器疾患に関連している少なくとも一つのマーカーアレル又はハプロタイプの存在又は不存在を検出することを含む。本明細書に記載したハプロタイプは、多様な遺伝子マーカー(例えば、SNP、マイクロサテライト)でのアレルの組み合わせを含む。特定のハプロタイプを作り上げる特定の遺伝子マーカーアレルの検出は、本明細書に記載した及び/又は当該技術分野で既知の多様な方法により実行し得る。例えば、遺伝子マーカーは、核酸レベルで(例えば、直接ヌクレオチドシークエンシング又は当業者には公知の他の手段により)又は、もし遺伝子マーカーが、冠動脈疾患及びステント内再狭窄を含む循環器疾患関連核酸によりコードされたタンパク質のコード配列に影響するならばアミノ酸レベルで(例えば、タンパク質シークエンシングにより、又はこうしたタンパク質を認識する抗体を使用するイムノアッセイにより)検出し得る。本発明のマーカーアレル又はハプロタイプは、循環器疾患に関連するゲノムDNA配列の断片に相当する。こうした断片は、問題とする多型マーカー又はハプロタイプのDNA配列を包含するが、該マーカー又はハプロタイプと強いLD(連鎖不平衡)にある(例えば、r2及び/又は|D’|の特定のレベル)DNAセグメントも含むことができる。
一つの態様において、循環器疾患に対する感受性の診断は、限定されるわけではないが、サザン分析、ノーザン分析及び/又はインサイツハイブリダイゼーションを含むハイブリダイゼーション法(Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. et al, eds., John Wiley & Sons 、すべての補足を含んで、を参照されたい)を使用して達成し得る。特異的マーカーアレルの存在は、該特定のアレルに特異的である核酸プローブの配列特異的ハイブリダイゼーションにより示し得る。一つより多くの特異的マーカーアレル又は特異的ハプロタイプの存在は、それぞれが特定のアレルに特異的である、いくつかの配列特異的核酸プローブを使用することにより示し得る。一つの態様において、ハプロタイプは、特定のハプロタイプに特異的である(即ち、該ハプロタイプに特徴的な特異的マーカーアレルを含んでなるDNA鎖に特異的にハイブリダイズする)単一核酸プローブにより示し得る。配列特異的プローブは、ゲノムDNA、RNA又はcDNAへハイブリダイズするように方向付け得る。本明細書で使用される「核酸プローブ」は、相補的配列にハイブリダイズするDNAプローブ又はRNAプローブであり得る。当業者は、特定のアレルが試験サンプルからのゲノムDNA中に存在する場合にのみ配列特異的ハイブリダイゼーションが起こるように、こうしたプローブをどのように設計するのかを承知しているであろう。
循環器疾患に対する感受性を決定する又は診断するため、循環器疾患関連核酸を含有する試験サンプルと少なくとも一つの核酸プローブを接触させることによりハイブリダイゼーションサンプルを形成させる。mRNA又はゲノムDNAを検出するためのプローブの非制限例は、本明細書に記載したmRNA又はゲノムDNA配列にハイブリダイズすることができる標識核酸プローブである。該核酸プローブは完全長核酸分子、又は例えば、ストリンジェント条件下で適切なmRNA又はゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分である、少なくとも15、30、50、100、250又は500ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドのようなそれらの一部であり得る。例えば、該核酸プローブは、本明細書に記載したLDブロックC09(配列番号94)のヌクレオチド配列の全て又は一部を含んでなることが可能であり、随意に本明細書に記載したマーカーの少なくとも一つのアレル、又は本明細書に記載した少なくとも一つのハプロタイプを含んでいてもよく、又は該プローブはこうした配列の相補配列であることが可能である。特定の態様において、該核酸プローブは本明細書に記載したLDブロックC09(配列番号94)全て又は一部であり、随意に本明細書に記載したマーカーの少なくとも一つのアレル、本明細書の少なくとも一つの多型マーカーを含んでなる一つの多型マーカー又はハプロタイプの少なくとも一つのアレルを含んでなり、又は該プローブはこうした配列の相補配列であることが可能である。本発明の診断アッセイに使用するための他の適したプローブは本明細書に記載されている。ハイブリダイゼーションは当業者には公知の方法により実施し得る(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel, F. et al, eds., John Wiley & Sons 、すべての補足を含んで、を参照されたい)。一つの態様において、ハイブリダイゼーションは特異的ハイブリダイゼーション、即ち、誤対合のないハイブリダイゼーション(正確なハイブリダイゼーション)を指す。一つの態様において、特異的ハイブリダイゼーションのためのハイブリダイゼーション条件は、高いストリンジェシーである。
特異的ハイブリダイゼーションは、もし存在するならば、次ぎに標準法を使用して検出される。もし特異的ハイブリダイゼーションが、該核酸プローブと試験サンプル中の冠動脈疾患及びステント内再狭窄関連核酸との間で起こったら、該サンプルは、該核酸プローブ中に存在するヌクレオチドに相補的であるアレルを含有する。該プロセスは、本発明の他のマーカー、又は本発明のハプロタイプを作り上げるマーカーについても繰り返すことができ、一つまたはそれより多くのマーカーアレルを検出するために複数のプローブを同時に使用し得る。特定のハプロタイプの一つより多くのマーカーアレルを含有する単一プローブ(例えば、特定のハプロタイプを作り上げる2、3、4、5又はすべてのマーカーに相補的なアレルを含有するプローブ)を設計することが可能である。該サンプル中のハプロタイプ特定のマーカーの検出は、サンプルの起源が特定のハプロタイプ(例えば、一つのハプロタイプ)を有し、それ故、循環器疾患(例えば、MI、CAD、IA、脳卒中、AAA、再狭窄、PAD)に対して感受性であることを示す。
一つの好ましい態様において、一つの方法は、Kutyavin et al.,(Nucleic Acids Res. 34:e128 (2006))により記載されているように、蛍光部分を3’末端に、及びクエンチャーを5’末端に、及びエンハンサーオリゴヌクレオチドを含んでなるオリゴヌクレオチドプローブの検出を利用する。該蛍光成分はGig Harbor Green又はYakima Yellow 又は他の適した蛍光成分であり得る。該検出プローブは、検出されるべきSNP多型を含む短い核酸配列へハイブリダイズするように設計されている。好ましくは、該SNPは末端残基から検出プローブの3’末端から6残基の間のいずれかにある。該エンハンサーは、検出プローブに関して3’のDNA鋳型へハイブリダイズする短いオリゴヌクレオチドプローブである。該プローブは、検出プローブ及びエンハンサーヌクレオチドプローブの両方が鋳型に結合された場合、両者間に単一ヌクレオチドギャップが存在するように設計されている。該ギャップは、エンドヌクレアーゼIVのようなエンドヌクレアーゼにより認識される合成塩基脱落部位を創造する。該酵素は、完全に相補的な検出プローブの染料を切断するが、ミスマッチを含有する検出プローブを切断できない。それ故、放出された蛍光部分の蛍光を測定することにより、検出プローブの核酸配列により規定された特定のアレルの存在の評価を実施し得る。
該検出プローブはどのようなサイズでもよいが、好ましくは、該プローブは比較的短い。一つの態様において、該プローブは5〜100ヌクレオチド長である。別の態様において、該プローブは10〜50ヌクレオチド長である。別の態様において、該プローブは12〜30ヌクレオチド長である。該プローブの他の長さも可能であり、当業者の範囲内である。
好ましい態様において、SNP多型を含有する該DNA鋳型は、検出に先立ってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅される。こうした態様において、該増幅されたDNAは、該検出プローブ及び該エンハンサープローブのための鋳型として働く。
該検出プローブ、該エンハンサープローブ及び/又はPCRによる鋳型の増幅に使用されたプライマーのある種の態様は、修飾A及び修飾Gを含む修飾塩基の使用を含む。修飾塩基の使用は、鋳型DNAに対するヌクレオチド分子(プローブ及び/又はプライマー)の融点を調節するために、例えば、低パーセンテージのG又はCを含有する領域の融点を上昇させるために(その相補的Tと三つの水素結合を形成する能力を有する修飾Aを使用し得る)、又は高パーセンテージのG又はCを含有する領域の融点を低下させるために(例えば、二本鎖DNA分子中で、その相補的Cと二つの水素結合しか形成しない修飾G塩基を使用することにより)、有用であり得る。好ましい態様において、修飾塩基は、検出ヌクレオチドプローブの設計に使用される。当業者には既知のいずれの修飾塩基もこれらの方法において選択することができ、適した塩基の選択は、本明細書の教示に基づくと当業者の範囲内であり、及び当業者には公知のように既知の塩基が商業的供給源から入手可能である。
別のハイブリダイゼーション法において、ノーザン分析 (Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel、F. et al., eds., John Wiley & Sons 、上記文献、を参照されたい) を、循環器疾患に関連する多型の存在を同定するために使用する。ノーザン分析のためには、適切な手段により対象からRNAの試験サンプルを得る。本明細書に記載したごとく、対象からのRNAへの核酸プローブの特異的ハイブリダイゼーションは、プローブに相補的な特定のアレルを示す。核酸プローブの使用の代表的な例は、例えば、米国特許番号5,288,611及び4,851,330を参照されたい。
さらに、又はもしくは、ペプチド核酸(PNA)プローブを、本明細書に記載したハイブリダイゼーション法の核酸プローブに加えて、又は代わりに使用し得る。PNAは、N−(2−アミノエチル)グリシンユニットのような、ペプチド様無機主鎖を有し、メチレンカルボニルリンカーを介して該グリシン窒素に有機塩基(A、G、C、T又はU)が結合されているDNA模倣物である(例えば、Nielsen, P., et al, Bioconjug. Chem. 5:3-7(1994) を参照されたい) 。PNAプローブは、循環器疾患に関連する一つまたはそれより多くのマーカーアレル又はハプロタイプを含有すると疑われるサンプル中の分子に特異的にハイブリダイズするように設計し得る。PNAプローブのハイブリダイゼーションは、循環器疾患を診断するものである。
本発明の一つの態様において、対象から得られたゲノムDNAを含有する試験サンプルが集められ、本発明の一つまたはそれより多くのマーカー又はハプロタイプを含んでなる断片を増幅するためポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が使用される。本明細書に記載したように、循環器疾患に関連する特定のアレル又はハプロタイプマーカーの同定は種々の方法(例えば、配列分析、制限消化による分析、特異的ハイブリダイゼーション、一本鎖コンホメーション多型アッセイ(SSCP)、電気泳動分析など)により達成し得る。別の態様において、診断は定量的PCR(動力学的熱サイクリング)を使用する発現分析により達成される。この技術は、例えば、TaqMan(登録商標)(Applied Biosystems、 Foster City、 CA) のような商業的に入手可能な技術を利用する。該技術は、循環器疾患に関連する核酸によりコードされているポリペプチド又はスプライシング変異体(単数又は複数)の発現又は組成の発現における変化の存在を評価し得る。さらに、該変異体(単数又は複数)の発現を物理的に又は機能的に異なったものとして定量し得る。
本発明の別の方法において、もしアレルが基準配列と比べて制限部位の創造又は除去を生じていたら、制限消化による分析を、特定のアレルを検出するために使用し得る。ゲノムDNAを含有する試験サンプルは、該対象から得られる。PCRを、試験対象からの試験サンプル中の核酸の循環器疾患に関連する特定の領域(例えば、表3、10又は21の多型マーカー及びハプロタイプ、及びそれらと連鎖不均衡にあるマーカー)を増幅するために使用し得る。例えば、Current Protocols in Molecular Biology、上記文献、に記載されている、制限断片長多型(RFLP)分析を実行することが可能である。関連DNA断片の消化パターンは、サンプル中の特定のアレルの存在又は不存在を示す。
冠動脈疾患及びステント内再狭窄を含む循環器疾患に関連する多型部位の特定のアレルを検出するため(例えば、表3、10又は21の多型マーカー及びハプロタイプ、及びそれらと連鎖不均衡にあるマーカー)、配列分析も使用することができる。それ故、一つの態様において、特定のマーカーアレル又はハプロタイプの存在又は不存在の決定は配列分析を含んでなる。例えば、DNA又はRNAの試験サンプルは試験対象から得ることができる。PCR又は他の適切な方法を、循環器疾患に関連する核酸の一部を増幅するために使用することができ、そして特異的アレルの存在は、サンプル中のゲノムDNAの多型部位(又は複数の多型部位)を配列決定することにより直接的に検出し得る。
別の態様において、対象からの標的核酸配列セグメントに相補的であるオリゴヌクレオチドプローブのアレイを、循環器疾患に関連する核酸中の多型(例えば、表3、10又は21の多型マーカー及びハプロタイプ、及びそれらと連鎖不均衡にあるマーカー)を同定するために使用し得る。例えば、オリゴヌクレオチドアレイを使用し得る。オリゴヌクレオチドアレイは典型的には、異なった既知の位置で基質の表面に結合する複数の異なったオリゴヌクレオチドプローブを含んでなる。これらのアレイは一般的には、機械的合成法又は光リソグラフ法及び固相オリゴヌクレオチド合成を取り込んだ光指向(light directed)合成法、又は当業者には公知の他の方法を使用して製造される(Fodor,S. et al., Science,251:767-773 (1991);Pirrung et al., 米国特許番号5,143,854(公開PCT出願番号WO90/15070も参照されたい);及びFodor. S. et al., 公開PCT出願番号WO92/10092 及び米国特許番号5,424,186 、これらの各々の全教示が本明細書において援用される) 。機械的合成法を使用したこれらのアレイの合成のための技術については、例えば、米国特許番号5,384,261 (その全教示が本明細書において援用される)に記載されている。別の例においては、リニアアレイを利用し得る。多型の検出のためのオリゴヌクレオチドアレイの使用の追加の記述は、例えば、米国特許番号5,858,659 及び5,837,832 (両方の全教示が本明細書において援用される)に見ることができる。
当業者が利用可能である核酸分析の他の方法が、循環器疾患に関連する多型部位での特定のアレルを検出するために使用し得る。代表的な方法には、例えば、直接マニュアルシークエンシング(Church and Gilbert, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 1991-1995 (1988);Sanger, F.,et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA,74:5463-5467(1977);Beavis、 et al.,米国特許番号5,288,644);自動化蛍光シークエンシング;一本鎖コンホメーション多型アッセイ(SSCP);クランプト変性ゲル電気泳動(CDGE);変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)(Sheffield, V., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:232-236 (1989))、移動度シフト分析 (Orita, M., et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA, 86:2766- 2770 (1989))、制限酵素分析 (Flavell, R., et al, Cell, 15:25-41 (1978); Geever, R., et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78:5081-5085 (1981));ヘテロ二重鎖分析;化学ミスマッチ切断(CMC) (Cotton, R., et al, Proc. Natl Acad. Sci USA, 85:4397-4401 (1985));RNase保護アッセイ (Myers, R., et al, Science, 230:1242-1246 (1985)) ;大腸菌mutSタンパク質のようなヌクレオチドミスマッチを認識するポリペプチドの使用;及びアレル特異的PCRが含まれる。
本発明の別の態様において、循環器疾患又は循環器疾患に対する感受性の診断は、本発明の遺伝子マーカー(単数又は複数)又はハプロタイプ(単数又は複数)がポリペプチドの組成又は発現に変化をもたらすような場合には、循環器疾患に関連した核酸によりコードされたポリペプチドの発現及び/又は組成を試験することによって行うことができる。それ故、循環器疾患に対する感受性の診断は、本発明の遺伝子マーカー又はハプロタイプが、ポリペプチドの組成又は発現に変化をもたらすような場合には、これらのポリペプチドの一つ、又は循環器疾患に関連した核酸によりコードされた別のポリペプチドの発現及び/又は組成を試験することにより行うことができる。循環器疾患への関連を示す本発明のハプロタイプ又はマーカーは、これらの近隣の遺伝子(例えば、CDKN2A及びCDKN2B遺伝子)の一つまたはそれより多くへの、それらの効果を介して関与することができる。これらの遺伝子に影響することが可能な機構には、例えば、転写への影響、RNAスプライシングへの影響、mRNAの別のスプライス形の相対量の変化、RNA安定性への影響、核から細胞質への輸送に対する影響、及び翻訳の効率及び正確さに対する影響が含まれる。
それ故、別の態様において、循環器疾患への関連を示している本発明の変異体(マーカー又はハプロタイプ)は、近隣遺伝子(例えば、CDKN2A及びCDKN2B)の発現に影響する。遺伝子発現に影響している調節要素は、遺伝子のプロモーター領域から遠く離れて、数十から数百キロ塩基離れた所までも位置することができることがよく知られている。本発明の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を評価することにより、こうした近隣遺伝子の発現レベルを評価することが可能である。それ故、一つ又はそれ以上のCDKN2A及び/又はCDKN2Bの発現を評価するために、本発明のマーカー又はハプロタイプの検出を使用できることが企図される。
酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降及び免疫蛍光を含む多様な方法を、タンパク質発現レベルを決定するために使用し得る。対象からの試験サンプルは、循環器疾患に関連した核酸によりコードされたポリペプチドの発現の変化及び/又は 組成の変化の存在について評価される。循環器疾患に関連した核酸によりコードされたポリペプチドの発現における変化は、例えば、定量的ポリペプチド発現(即ち、産生されたポリペプチドの量)であろう。循環器疾患に関連した核酸によりコードされたポリペプチドの組成における変化は、定量的ポリペプチド発現(突然変異体ポリペプチドの又は異なったスプライシング変異体の発現)である。一つの態様において、循環器疾患への感受性の診断は、本明細書に記載した循環器疾患に関連した核酸によりコードされた特定のスプライシング変異体、又はスプライシング変異体の特定のパターンを検出することにより行われる。
両方のこうした変化(定量的及び定性的)も存在し得る。本明細書で使用されるポリペプチド発現又は組成(例えば、CDKN2A及び/又はCDKN2Bポリペプチド)における「変化」とは、対照サンプル中のポリペプチドの発現又は組成と比較して、試験サンプル中のポリペプチドの発現又は組成の変化を指す。対照サンプルは、試験サンプルに対応するサンプル(例えば、同一タイプの細胞から)であり、及び循環器疾患に罹患していない及び/又は循環器疾患に対する感受性を有していない対象からのものである。一つの態様において、該対照サンプルは、本明細書に記載した循環器疾患に関連したマーカーアレル又はハプロタイプを有していない対象からのものである。同様に、対照サンプルと比較して、試験サンプル中の一つ又はそれ以上の異ったスプライシング変異体の存在、又は試験サンプル中の異なったスプライシング変異体の有意に異なった量での存在は、循環器疾患に対する感受性を示し得る。対照サンプルと比較して、試験サンプル中のポリペプチドの発現又は組成における変化は、アレルが対照サンプル中の基準に関連したスプライス部位を変化させている例においては、特異的アレルを示す。当業者には既知の核酸によりコードされたポリペプチドの発現又は組成を試験する多様な手段を使用することができ、分光法、比色分析法、電気泳動法、等電点電気泳動及びイムノブロッティングのような免疫アッセイ(例えば、David et al., 米国特許番号4,376,110)が含まれる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, 特に10章 、上記文献、を参照されたい)。
例えば、一つの態様において、循環器疾患に関連した核酸によりコードされたポリペプチド(例えば、CDKN2A及び/又はCDKN2Bポリペプチド)に結合することが可能である抗体(例えば、検出可能な標識を有する抗体)を使用し得る。抗体はポリクローナルでもモノクローナルでもよい。無傷の抗体、又はそれらの断片(例えば、Fv、Fab、Fab',F(ab')2)を使用し得る。プローブ又は抗体に関する用語「標識された」とは、プローブ又は抗体へ検出可能物質をカップリング(即ち、物理的連結)させることによるプローブ又は抗体の直接標識化、ならびに直接的に標識された別の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接標識を包含することが意図される。間接標識の例には、標識二次抗体(例えば、蛍光標識二次抗体)を使用する一次抗体の検出、及び蛍光性標識ストレプトアビジンで検出できるような、ビオチンによるDNAプローブの末端標識が含まれる。
この方法の一つの態様において、試験サンプル中の循環器疾患に関連する核酸によりコードされたポリペプチドのレベル又は量が、対照サンプル中の該ポリペプチドのレベル又は量と比較される。対照サンプル中のポリペプチドのレベル又は量よりも高い又は低い試験サンプル中のポリペプチドのレベル又は量(相違が統計的に有意であるような)は、核酸によりコードされたポリペプチドの発現における変化を示し、発現に相違を起こすことの原因となる特定のアレル又はハプロタイプについての診断である。もしくは、試験サンプル中のポリペプチドの組成が対照サンプル中のポリペプチドの組成と比較される。別の態様において、該ポリペプチドのレベル及び量の両方を試験サンプル中及び対照サンプル中で評価し得る。
別の態様において、循環器疾患に対する感受性の診断は、追加のタンパク質に基づいた、RNAに基づいた、又はDNAに基づいたアッセイと結合された、本発明の少なくとも一つのマーカー又はハプロタイプ(例えば、表3、10及び/又は21にリストしたマーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーのアレルに関連した)を検出することにより行われる。
キット
診断法に有用なキットは、例えば、核酸増幅のためのプライマー、ハイブリダイゼーションプローブ、制限酵素(例えば、RFLP分析)、アレル特異的オリゴヌクレオチド、循環器疾患(例えば、MI、CAD、IA、脳卒中、AAA、再狭窄、PAD)に関連した核酸によりコードされた変化したポリペプチドに(例えば、本発明の少なくとも一つの多型マーカー及び/又はハプロタイプを含んでなる、LDブロックC09(配列番号94)又はCDKN2A及び/又はCDKN2B遺伝子又はそれらの断片、例えば、ゲノムセグメントによりコードされたポリペプチドに結合する抗体)、又は循環器疾患に関連する核酸によりコードされた変化していない(天然の)ポリペプチドに結合する抗体、を含む本明細書に記載したいずれかの方法、循環器疾患に関連する核酸の増幅のための手段、循環器疾患に関連する核酸の核酸配列を分析するための手段、循環器疾患に関連する核酸によりコードされたポリペプチドのアミノ酸配列を分析するための手段、その他、に有用な成分を含んでなる。該キットは、例えば、必要な緩衝液、本発明の核酸(例えば、本明細書に記載した一つ又はそれ以上の多型マーカーを含んでなる核酸セグメント)を増幅するための核酸プライマー、及びこうしたプライマー及び必要な酵素(例えば、DNAポリメラーゼ)を使用して増幅された断片のアレル特異的検出のための試薬を含んでいる。加えて、キットは、本発明の方法と組み合わせて使用されるべき、アッセイのための試薬、例えば、本明細書に記載した他の診断アッセイで使用するための試薬を提供し得る。
一つの態様において、本発明は循環器疾患又は循環器疾患に対する感受性の検出するため、対象からのサンプルをアッセイするためのキットであり、該キットは、個体のゲノム中の、本発明の少なくとも一つの多型の少なくとも一つのアレルを選択的に検出するために必要な試薬を含んでなる。特定の態様において、該試薬は、少なくとも一つの本発明の多型を含んでなる個体のゲノムの断片にハイブリダイズする、少なくとも一つの近接するオリゴヌクレオチドを含んでなる。別の態様において、該試薬は、対象から得られたゲノムセグメントの反対鎖にハイブリダイズする少なくとも一つの対のオリゴヌクレオチドを含んでなり、各オリゴヌクレオチドプライマー対は、少なくとも一つの多型を含む個体のゲノムの断片を選択的に増幅するように設計されており、表3、10及び21のいずれかにリストした多型、及びそれらと連鎖不平衡にある多型マーカーから成る群より選択される。さらに別の態様において、該断片は少なくとも20塩基対のサイズである。こうしたオリゴヌクレオチド又は核酸(例えば、オリゴヌクレオチドプライマー)は、循環器疾患を示す多型(例えば、SNP又はマイクロサテライト)に隣接する核酸の一部を使用して設計し得る。別の態様において、該キットは、循環器疾患に関連する一つ又はそれ以上の特異的多型マーカー又はハプロタイプを検出が可能な一つ又はそれ以上の標識核酸、及び標識を検出するための試薬を含んでなる。適した標識には、例えば、放射性同位元素、蛍光標識、酵素標識、酵素補因子標識、磁気標識、スピン標識、エピトープラベルが含まれる。
特定の態様において、本キットの試薬により検出されるべき多型マーカー又はハプロタイプは、本明細書の表3、10及び21のマーカー、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから成る群より選択される一つ又はそれ以上のマーカー、二つ又はそれ以上のマーカー、三つ又はそれ以上のマーカー、四つ又はそれ以上のマーカー、五つ又はそれ以上のマーカーを含んでなる。別の態様において、検出されるべきマーカー又はハプロタイプは、本明細書の表3、10及び21にリストされたマーカーを含んでなる。別の態様において、検出されるべきマーカー又はハプロタイプは、rs10757278、rs10116277、rs1333040、D9S1814、D9S1870及びrs2383207から成るマーカーの群の少なくとも一つのに対し、0.2より大きなr2値により定義される強い連鎖不平衡にあるマーカーの群からの少なくとも一つのマーカーを含んでなる。さらに別の態様において、検出されるべき多型マーカー又はハプロタイプは、rs10757278、rs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970、rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814及びD9S1870から成るマーカーの群より選択される少なくとも一つのマーカーを含んでなる。
一つの好ましい態様において、本発明のマーカーを検出するためのキットは、検出されるべきSNP多型を鋳型DNAのセグメントにハイブリダイズする検出オリゴヌクレオチドプローブ、エンハンサーオリゴヌクレオチドプローブ及びエンドヌクレアーゼを含んでなる。上で説明したように、該検出オリゴヌクレオチドプローブは、蛍光成分又は基を3’末端に、及びクエンチャーをその5’末端に含んでなり、及びKutyavin et al. (Nucleic Acids Res. 34:e128 (2006))に記載されているエンハンサーオリゴヌクレオチドが用いられている。該蛍光成分はGig Harbor Green又はYakima Yellow 又は他の適した蛍光成分であり得る。該検出プローブは、検出されるべきSNP多型を含む短い核酸配列へハイブリダイズするように設計されている。好ましくは、該SNPは末端残基から検出プローブの3’末端から6残基の間のいずれかにある。該エンハンサーは、検出プローブに関して3’のDNA鋳型へハイブリダイズする短いオリゴヌクレオチドプローブである。該プローブは、検出プローブ及びエンハンサーヌクレオチドプローブの両方が鋳型に結合された場合、両者間に単一ヌクレオチドギャップが存在するように設計されている。該ギャップは、エンドヌクレアーゼIVのようなエンドヌクレアーゼにより認識される合成塩基脱落部位を創造する。該酵素は、完全に相補的な検出プローブの染料を切断するが、ミスマッチを含有する検出プローブを切断できない。それ故、放出された蛍光部分の蛍光を測定することにより、検出プローブの核酸配列により規定された特定のアレルの存在の評価を実施し得る。
検出プローブはどのようなサイズでもよいが、好ましくは、該プローブは比較的短い。一つの態様において、該プローブは5〜100ヌクレオチド長である。別の態様において、該プローブは10〜50ヌクレオチド長である。別の態様において、該プローブは12〜30ヌクレオチド長である。該プローブの他の長さも可能であり、当業者の範囲内である。
好ましい態様において、SNP多型を含有する該DNA鋳型は、検出に先立ってポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅され、そしてこうした増幅のためのプライマーは、該試薬キットに含まれている。こうした態様において、該増幅されたDNAは、該検出プローブ及び該エンハンサープローブのための鋳型として働く。
該検出プローブ、該エンハンサープローブ及び/又はPCRによる鋳型の増幅に使用されたプライマーのある種の態様は、修飾A及び修飾Gを含んでいる修飾塩基の使用を含む。修飾塩基の使用は、鋳型DNAに対するヌクレオチド分子(プローブ及び/又はプライマー)の融点を調節するために、例えば、低パーセンテージのG又はCを含有する領域の融点を上昇させるために(その相補的Tと三つの水素結合を形成する能力を有する修飾Aを使用し得る)、又は高パーセンテージのG又はCを含有する領域の融点を低下させるために(例えば、二本鎖DNA分子中で、その相補的Cと二つの水素結合しか形成しない修飾G塩基を使用することにより)、有用であり得る。好ましい態様において、修飾塩基は、検出ヌクレオチドプローブの設計に使用される。当業者には既知のいずれの修飾塩基もこれらの方法において選択することができ、適した塩基の選択は、本明細書の教示に基づくと当業者の範囲内であり、及び当業者には公知のように既知の塩基が商業的供給源から入手可能である。
こうした態様の一つにおいて、該マーカー又はハプロタイプの存在は、循環器疾患に対する感受性(増加した感受性又は減少した感受性)を示す。別の態様において、該マーカー又はハプロタイプの存在は、循環器疾患の療法剤への応答を示す。別の態様において、該マーカー又はハプロタイプの存在は、個体における循環器疾患の予後を示す。さらに別の態様において、該マーカー又はハプロタイプの存在は、循環器疾患の治療の進行を示す。こうした治療は、手術による、投薬又は他の手段(例えば、ライフスタイル変更)による介入を含むことができる。
本発明のさらなる側面において、医薬パック(キット)が提供され、該パックは療法剤、及び本明細書に記載した本発明の一つ又はそれ以上の変異体について診断的に試験されるヒトへの療法剤の投与に関する説明書のセットを含んでなる。該療法剤は、低分子薬剤、抗体、ペプチド、アンチセンス又はRNAi分子、又は他の療法的分子であり得る。一つの態様において、本発明の少なくとも一つの変異体のキャリアと同定された個体は、該療法剤の処方された用量を服用するように指示される。一つのこうした態様において、本発明の少なくとも一つの変異体のホモ接合性キャリアと同定された個体は、該療法剤の処方された用量を服用するように指示される。別の態様において、本発明の少なくとも一つの変異体の非キャリアと同定された個体は、該療法剤の処方された用量を服用するように指示される。
ある態様において、該キットはさらに、キットに含まれている試薬を使用するための説明書のセットを含んでなる。
療法剤
本発明の変異体(例えば、本明細書に記載した本発明のマーカー及び/又はハプロタイプ、例えば、表3、10及び21にリストしたマーカー)は、循環器疾患の新規療法的標的を同定するためにも使用し得る。例えば、循環器疾患に関連する変異体(マーカー及び/又はハプロタイプ)を含有する又は連鎖不平衡にある遺伝子又はそれらの産物(例えば、CDKN2A及びCDKN2B遺伝子及びそれらの遺伝子産物)、ならびにこれらの変異体遺伝子又はそれらの産物により直接的に又は間接的に調節されている、又は相互作用する遺伝子又はそれらの産物は、循環器疾患を治療する、又は循環器疾患に関連する症状の発症を予防する又は遅延するための、療法剤の開発の標的であり得る。療法剤は、一つ又はそれ以上の、例えば、小さな非タンパク質及び非核酸分子、タンパク質、ペプチド、タンパク質断片、核酸(DNA、RNA)、PNA(ペプチド核酸)又は標的遺伝子又はそれらの遺伝子産物の機能及び/又はレベルを変調し得るそれらの誘導体又は模倣物を含んでなることができる。
本発明の核酸及び/又は変異体、又はそれらの相補的配列を含んでなる核酸は、アンチセンス構築物として使用することができ、細胞、組織又は器官中の遺伝子発現を制御する。アンチセンス技術に関連する方法論は当業者には公知であり、Antisense Drug Technology: Principles, Strategies, and Applications, Crooke, ed., Marcel Dekker Inc., New York (2001) 、に記述及び概説されている。一般に、アンチセンス分子がmRNAにハイブリダイズし、タンパク質へのmRNAの翻訳を阻止するように、アンチセンス核酸分子は、遺伝子により発現されるmRNAの領域と相補的であるように設計される。切断剤及び阻止剤を含むいくつかのクラスのアンチセンスオリゴヌクレオチドが当業者において公知である。前者は標的RNA部位に結合し、標的RNAを切断する細胞内ヌクレアーゼ(例えば、RnaseH又はRnaseL)を活性化する。阻止剤は標的RNAに結合し、リボソームの立体障害によりタンパク質翻訳を阻害する。阻止剤の例には、核酸、モルホリノ化合物、ロックト核酸及びメチルホスホン酸が含まれる(Thompson, Drug Discovery Today, 7:912-917 (2002))。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、直接的に療法剤として有用であり、遺伝子機能を決定する及び検証するためにも(例えば、遺伝子ノックアウト又は遺伝子ノックダウン実験により)有用である。アンチセンス技術はさらに、Lavery et al., Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 6:561-569 (2003), Stephens et al., Curr. Opin. Mol. Ther. 5:118-122 (2003), Kurreck, Eur. J. Biochem. 270:1628-44 (2003), Dias et al., Mol. Cancer Ter. 1:347-55 (2002), Chen, Methods Mol. Med. 75:621-636 (2003), Wang et al., Curr. Cancer Drug Targets 1:177-96 (2001) 及びBennett, Antisense Nucleic Acid Drug.Dev. 12:215-24 (2002) 、に記述されている。
本明細書に記載した変異体は、特定の変異体に特異的であるアンチセンス試薬の選択及び設計に使用し得る。本明細書に記載した変異体に関する情報を使用し、本発明の一つ又は以上の変異体を含有するmRNA分子を特異的に標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド又は他のアンチセンス分子を設計し得る。この様式において、一つ又はそれ以上の本発明の変異体(マーカー及び/又はハプロタイプ)を含有するmRNA分子の発現を、阻害又は阻止することができる。一つの態様において、該アンチセンス分子は標的核酸の特定のアレル形(即ち、一つ又は数個の変異体(マーカー及び/又はハプロタイプ))に特異的に結合するように設計され、それによりこの特異的アレル又はハプロタイプに由来する産物の翻訳を阻害するが、標的核酸分子の特異的多型部位で他の又は代わりの変異体へは結合しない。
アンチセンス分子は、遺伝子発現を阻害するために、mRNAを不活性化するように使用することができるので、該分子は、循環器疾患のような疾患を治療するために使用し得る。方法論は、翻訳されるべきmRNAの能力を弱める、mRNA中の一つ又はそれ以上の領域に相補的なヌクレオチド配列を含有するリボザイムによる切断を含み得る。こうしたmRNA領域には、例えば、タンパク質コード領域、特に触媒活性に対応するタンパク質コード領域、基質及び/又はリガンド結合部位、又はタンパク質の他の機能性領域が含まれる。
RNA干渉(RNAi)の現象は、C.エレガンスでのその最初の発見(Fire et al., Nature 391 :806-11 (1998))以来、ここ十年間活発に研究されてきており、ヒト疾患の治療における使用可能性が活発に追求されている(Kim & Rossi,Nature Rev. Genet. 8:173-204 (2007) に概説されている)。RNA干渉(RNAi)は遺伝子サイレンシングとも称され、特異的遺伝子をオフにするための二本鎖RNA分子(dsRNA)を使用することに基づいている。細胞内で、細胞性二本鎖RNA分子(dsRNA)は細胞性複合体により小さな干渉RNA(siRNA)にプロセッシングされる。siRNAは、タンパク質−RNA複合体の標的を標的mRNA上の特異的部位へと導く(Thompson, Drug Discovery Today, 7:912-917 (2002))。siRNA分子は典型的には、約20、21、22又は23ヌクレオチド長である。それ故、本発明の一つの側面は、単離された核酸分子、及びRNA干渉へのこれらの分子の使用(即ち、小さな干渉RNA分子(siRNA)としての)に関する。一つの態様において、該単離された核酸分子は18〜26ヌクレオチド長、好ましくは19〜25ヌクレオチド長、より好ましくは20〜24ヌクレオチド長、及びより好ましくは21、22又は23ヌクレオチド長である。それ故、本発明の一つの側面は、単離された核酸分子、及びRNA干渉へのこれらの分子の使用(即ち、小さな干渉RNA分子(siRNA)としての)に関する。一つの態様において、該単離された核酸分子は18〜26ヌクレオチド長、好ましくは19〜25ヌクレオチド長、より好ましくは20〜24ヌクレオチド長、及びより好ましくは21、22又は23ヌクレオチド長である。
RNAi仲介遺伝子サイレンシングの別の経路は、細胞中でプロセッシングされて前駆体miRNA(pre−miRNA)を発生し、内因的にコードされている一次マイクロRNA(pri−miRNA)転写体に由来する。これらのmiRNA分子は、核から細胞質へ輸送され、プロセッシングを受けて成熟miRNA分子(miRNA)を発生し、それはmRNAの3’非翻訳領域中の標的部位を認識することによる翻訳阻害及びPボディーをプロセッシングすることによる続いてのmRNA分解を指示する(Kim & Rossi, Nature Rev. Genet. 8:173-204 (2007) により概説されている)。
RNAiの臨床応用には、およそ20〜23ヌクレオチドのサイズであり、そして好ましくは2ヌクレオチドの3’オーバーラップを有する合成siRNA二重鎖の取り込みが含まれる。遺伝子発現のノックダウンは、標的mRNAのための配列特異的設計により確立されている。こうした分子の最適化設計及び合成についてのいくつかの商業的サイトが当業者には知られている。
他の応用は、より長いsiRNA分子(典型的には、25〜30ヌクレオチド長、好ましくは約27ヌクレオチド)、ならびに小さなヘアピンRNA(shRNA; 典型的には約29ヌクレオチド長)を提供する。後者は、Amarzguioui et al., (FEBS Lett. 579:5974-81 (2005))により記載されているように、天然に発現される。化学合成siRNA及びshRNAは、インビボプロセッシングの基質であり、いくつかの場合、より短い設計よりも強力な遺伝子サイレンシングを提供する(Kim et al., Nature Biotechnol. 23:222-226 (2005); Siolas et al., Nature Biotechnol. 23:227-231 (2005))。一般に、siRNAは、それらの細胞内濃度が続いての細胞分裂により希釈されるので、遺伝子発現の一時的サイレンシングしか提供しない。対照的に、発現されたshRNAは、shRNAの転写が起こる限り、標的転写体の長期、安定なノックダウンを仲介する(Marques et al., Nature Biotechnol. 23:559-565 (2006); Brummelkamp et al., Science 296: 550-553 (2002))。
siRNA、miRNA及びshRNAを含むRNAi分子は配列依存性様式で働くので、本発明の変異体(例えば、表5A、5B及び5Cに示したマーカー、及びそれらの連鎖不平衡にあるマーカー、例えば、表3、10及び21に示したマーカーのヌクレオチド配列)は、特異的アレル及び/又はハプロタイプ(例えば、本発明のアレル及び/又はハプロタイプ)を含んでなる特異的核酸分子を認識するが、一方、他のアレル又はハプロタイプを含んでなる核酸分子は認識しないRNAi試薬を設計するために使用し得る。これらのRNAi試薬は、それ故、標的核酸分子を認識し及び破壊できる。アンチセンス試薬と同様に、RNAi試薬は療法剤として有用であり得るが(即ち、疾患関連遺伝子又は疾患関連遺伝子変異体をオフにする)、遺伝子機能を特徴付ける及び検証するためにも有用であることができる(例えば、遺伝子ノックアウト又は遺伝子ノックダウン実験により)。
RNAiの送達は、当業者には公知のさまざまな方法論により実行することができる。非ウイルス送達を利用する方法には、コレステロール、安定核酸−リピッド粒子(SNALP)、重鎖抗体断片(Fab)、アプタマー及びナノ粒子が含まれる。ウイルス送達法には、レンチウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスの使用が含まれる。siRNA分子はいくつかの態様において、それらの安定性を増加させるため、化学的に修飾される。このことには、RNAse活性への耐性を提供する、2’−O−メチルプリン及び2’−フルオロピリミジンを含むリボースの2’での修飾が含まれる。他の化学的修飾が可能であり、当業者には公知である。
以下の参照文献はRNAiのさらなる要約であり、RNAiを使用する特異的遺伝子標的化の可能性である:Kim & Rossi, Nat. Rev. Genet. 8:173-184 (2007), Chen & Rajewsky, Nat. Rev. Genet. 8:93-103 (2007), Reynolds, et al., Nat. Biotechnol. 22:326-330 (2004), Chi et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 100:6343-6346 (2003), Vickers et al., J. Biol. Chem. 278:7108-7118 (2003), Agami, Curr. Opin. Chem. Biol. 6:829-834 (2002), Lavery, et al., Curr. Opin. Drug Discov. Devel. 6:561- 569 (2003), Shi, Trends Genet. 19:9-12 (2003), Shuey et al., Drug Discov. Today 7:1040-46 (2002), McManus et al., Nat. Rev. Genet. 3:737-747 (2002), Xia et al., Nat. Biotechnol. 20:1006-10 (2002), Plasterk et al., Curr. Opin. Genet. Dev. 10:562-7 (2000), Bosher et al., Nat. Cell Biol. 2:E31-6 (2000), 及びHunter, Curr. Biol. 9:R440-442 (1999) 。
循環器疾患を含む疾患の発生について増加した素因又はリスクを導く遺伝的欠陥、又は該疾患を起こす欠陥は、該遺伝的欠陥の部位で正常/野生型ヌクレオチド(単数又は複数)を供給する、修復配列を組み入れる核酸断片を欠陥を運んでいる対象に投与することにより永久に修正することができる。こうした部位特異的修復配列は、対象のゲノムDNAの内因性修復を促進するように作用するRNA/DNAオリゴヌクレオチドを包含することができる。配列修復の投与は、ポリエチレンイミンとの複合体、陰イオン性リポソームでのカプセル化、アデノウイルスベクターのようなウイルスベクター、又は投与された核酸の細胞内取り込みを促進するために適した他の医薬組成物のような適切なビヒクルにより実施することができる。キメラオリゴヌクレオチドが対象のゲノム内への正常配列の組み入れを誘導し、正常/野生型遺伝子産物の発現を導くので、遺伝的欠陥を克服することができる。置き換えが伝搬され、それ故、恒久的修復及び疾患又は状態に関連する症状の緩和を与える。
本発明は、循環器疾患を治療するために使用できる化合物又は剤を同定する方法を提供する。それ故、本発明の変異体は療法剤の同定及び/又は開発のための標的として有用である。ある態様において、こうした方法は、本発明の少なくとも一つの変異体(マーカー及び/又はハプロタイプ)を含む核酸、又は核酸(CDKN2A及びCDKN2B遺伝子の一つ又は両方)がコードする産物の活性及び/又は発現を変調する剤又は化合物の能力をアッセイすることを含むことができる。このことは順に、コードされた核酸産物の望まれない活性又は発現を阻害する又は改変する剤又は化合物を同定するために使用し得る。こうした実験を実施するためのアッセイは、当業者には公知のように、細胞に基づいたシステム又は無細胞システムで実施し得る。細胞に基づいたシステムには、問題とする核酸分子を天然に発現している細胞、又はある種の所望の核酸分子を発現するように遺伝子修飾されている組換え細胞が含まれる。
患者における変異体遺伝子発現は、変異体含有核酸配列(例えば、少なくとも一つの本発明の変異体を含有する遺伝子、それは少なくとも一つの変異体を含有するRNAに転写することができ、順にタンパク質に翻訳される)の発現により、又は正常転写体の発現のレベル又はパターンに影響する変異体(例えば、遺伝子の調節又は制御領域中の変異体)のため、正常/野生型核酸配列の発現の変化により評価し得る。遺伝子発現についてのアッセイには、直接核酸アッセイ(mRNA)、発現されたタンパク質レベルについてのアッセイ、又は経路、例えば、シグナル経路に関与する傍系化合物のアッセイが含まれる。さらに、シグナル経路に応答して上方又は下方制御される遺伝子の発現もアッセイし得る。一つの態様は、問題とする遺伝子(単数又は複数)の調節領域に動作可能なように連結された、ルシフェラーゼのようなレポーター遺伝子を含む。
遺伝子発現の変調剤は、一つの態様において、細胞を候補化合物又は剤と接触させ、そしてmRNAの発現が決定された時に同定し得る。候補化合物又は剤の存在下でのmRNAの発現レベルが、該化合物又は剤の不存在下での発現レベルと比較される。この比較に基づき、循環器疾患を治療するための候補化合物又は剤を、該変異体遺伝子の遺伝子発現を変調するものとして同定し得る。mRNA又はコードされたタンパク質の発現が、候補化合物又は剤の存在下でその不存在下よりも統計的に有意に高い場合、該候補化合物又は剤は該核酸の発現の刺激剤又は上方調節剤として同定される。核酸発現又はタンパク質レベルが、候補化合物又は剤の存在下でその不存在下よりも統計的に有意に低い場合、該候補化合物は該核酸発現の抑制剤又は下方調節剤として同定される。
本発明はさらに、遺伝子変調剤(即ち、遺伝子発現の刺激剤及び/又は抑制剤)の薬剤(化合物又は剤)スクリーニングを介して同定された化合物を使用する治療の方法も提供する。
療法剤及び方法への応答の可能性を評価する方法、治療進行をモニタリングする方法及び循環器疾患を治療するための方法
当該技術分野で既知であるように、個体は特定の療法(例えば、療法剤又は治療法)に対して異なった応答を有し得る。薬理ゲノミクスは、薬剤の体内動態の変化及び/又は異常な又は変化した薬剤の作用のため、どのように遺伝子変異体(例えば、本発明の変異体(マーカー及び/又はハプロタイプ))が薬剤応答に影響するかの問題について取り組んだ。そのため、異なった応答の基礎が一部遺伝学的に決定された。薬剤応答に影響する遺伝子変異体による臨床的結果は、ある種の個体(例えば、遺伝子変異体のキャリア又は非キャリア)において薬剤の毒性、又は薬剤の治療不全を生じてもよい。それ故、本発明の変異体は、療法剤及び/又は方法が体に作用する様式、又は体が療法剤を代謝する経路を決定することができる。
従って、一つの態様において、本明細書に記載した多型マーカーの特定のアレルの存在、又はハプロタイプの存在は、循環器疾患についての特定の治療モダリティー(modality)に対する異なった奏功率を示す。このことは、循環器疾患と、又は循環器疾患に対してアットリスクと診断された、及び本発明の多型又はハプロタイプにある種のアレル(例えば、アットリスク及び/又は本発明のハプロタイプ)を運んでいる患者は、循環器疾患を治療するために使用される特定の療法、薬剤及び/又は他の療法により良好に、又はより悪く応答するであろう。それ故、該アレル又はハプロタイプマーカーの存在又は不存在は、該患者に対してどのような治療を使用すべきかの決定において助けとなることができる。例えば、新規に診断された患者に対して、本発明のマーカー又はハプロタイプの存在を評価することができる(例えば、本明細書に記載したように、血液サンプル又はゲノムDNAを含有する他のサンプルに由来するDNAを試験することを介して)。もし患者がマーカーアレル又はハプロタイプについて陽性であれば(即ち、マーカーの少なくとも一つの特異的アレル又はハプロタイプが存在)、医者は一つの特定の療法(例えば、一つの特定の療法剤又は療法剤の併用)を推奨し、一方、もし患者がマーカーの少なくとも一つのアレルについて陰性であれば、療法の異なったコースが推奨される(疾患の進行について連続的にモニターすること以外は、即時の療法を実施することは推奨しないことを含むことができる)。それ故、患者のキャリア状態を、特定の治療モダリティーを与えるべきかどうかを決定するのを助けるために使用できる。最も適切な治療を選択するために早期段階で疾患を診断することが可能であること、及び最も適切な治療を適用することが可能なように疾患の予後/進行性度について臨床医に情報を提供する可能性にも意義がある。
一つの例として、再狭窄に対する遺伝子検査の応用は、冠状動脈ステント法後に再狭窄を発生する高いリスクにある対象を同定し得る。薬剤溶出ステント及び近接照射療法導入のような冠動脈疾患のためのいくつかの治療法は、ステント内再狭窄の減少したリスクに関連していることが知られているが、経済的理由を含む多くの理由により、これらの方法の使用は限定されている。冠状動脈ステント法を受けている個体群内での、ステント内再狭窄についての遺伝子リスク変異体を運んでいる、個体の同定は、これらの個体の標的化を可能にし、ステント内再狭窄の減少したリスクに関連する療法から最も利益を受けるであろう。
本発明は、冠動脈疾患、MI、脳卒中、PAD、IA、AAA及び再狭窄を含む循環器疾患の、治療の有効性をモニタリングする方法にも関する。このことは本発明のマーカー及び/ハプロタイプの遺伝子型及び/又はハプロタイプ状態に基づいて、本明細書に記載した少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を評価することにより、又は本発明の変異体(マーカー及び/ハプロタイプ)に関連している遺伝子(例えば、CDKN2A及びCDKN2B)の発現をモニタリングすることにより行い得る。リスク遺伝子mRNA又はコードされたポリペプチドは、組織サンプル(例えば、末梢血液サンプル又は生検サンプル)で測定し得る。発現レベル及び/又はmRNAレベルは、それ故、その有効性をモニターするため、治療前及び治療間に決定される。もしくは、又は同時に、本明細書で示された、前立腺癌についての少なくとも一つのリスク変異体の遺伝子型及び/又はハプロタイプ状態が、その有効性をモニターするため、治療前及び治療間に決定される。
本発明が関与する循環器疾患の治療モジュールには、限定されるわけではないが、心筋梗塞又は心筋梗塞に対する感受性の治療の方法;心筋梗塞のための予防療法の方法;一過性脳虚血発作又は脳卒中又は脳卒中、又は脳卒中に対する感受性のための治療法;跛行、PAD又はPADに対する感受性のための治療法;急性冠症候群(例えば、不安定狭心症、非−ST−上昇心筋梗塞(NSTEMI)又はST−上昇心筋梗塞(STEMI))のための治療の方法;MI、脳卒中又はPADのリスクを減少させるための方法;二次心筋梗塞又は脳卒中のリスクを減少させるための方法;動脈(例えば、冠状動脈、頚動脈及び/又は大腿動脈)の血流を回復するための治療(例えば、血管形成術、ステント、血管再開通術法)を必要としている患者のためのような、アテローム性動脈硬化に対する治療の方法;0.9未満の無症候性足首/上腕指標に対する治療の方法;及び/又はロイコトリエン合成を減少させるための方法(例えば、心筋梗塞、脳卒中又はPADの治療のため)、腹部大動脈瘤の治療のための方法、頭蓋内動脈瘤の治療のための方法;が含まれる。
冠動脈疾患及びMIの治療は、(i)予防治療及び(ii)疾患管理のようにカテゴリー化することができる。後者の主たるゴールは、心臓への損傷を最少にし、そしてさらなる合併症を防ぐことである。最も重要な疾患の管理は、典型的には、酸素、アスピリン、硝酸グリセリル( ニトログリセリン)及びモルヒネのような鎮痛又は関連薬の一つ又はそれより多くの投与が含まれる。MIの診断がなされたら、追加の療法には、ベータ遮断薬、ヘパリン及び/又は低分子量ヘパリンを含む抗凝固剤、及び可能ならクロピドグレルのような抗血小板剤を含むことができる。二次的予防、即ち、再発MIのリスク管理には、典型的には、以下の一つ又はそれより多くが含まれる:アスピリン及び/又はクロピドグレルを含む抗血小板薬療法、メトプロロール及びカルベジロールを含むベータ遮断薬療法、ACE阻害剤療法、スタチン療法、エプレレノンを含むアルドステロンアンタゴニスト療法。さらに、オメガ−3脂肪酸のような栄養補助食品の非治療的投与も利点があるであろう。
CAD、MI及び脳卒中を含む、循環器疾患のための新規予防療法には、プラークの形成及び/又は破裂に作用する剤、及びホスホジエステラーゼ阻害剤も含まれる。こうした治療剤は、本明細書に記載したように、本発明の方法において有用である。これには、限定されるわけではないが、ロイコトリエン合成経路を標的にする剤が含まれる。ロイコトリエン合成阻害剤は、ロイコトリエン合成経路のメンバー(例えば、LAP、5−LO、LTC4S、LTA4H、及びLTB4DH)を阻害する又は拮抗するいずれの剤でもあり得る。例えば、ロイコトリエン合成阻害剤は、FLAPポリペプチド活性(例えば、FLAP阻害剤)及び/又はFLAP核酸発現(例えば、FLAP核酸アンタゴニスト)を阻害する又は拮抗する剤であり得る。別の態様において、ロイコトリエン合成阻害剤は、ロイコトリエン生合成経路の別のメンバー(例えば、LTC4S、LTA4H)のポリペプチド活性及び/又は核酸発現を阻害する又は拮抗する、又はロイコトリエンの分解を増加させる(例えば、LTB4DH)剤であり得る。好ましい態様において、該剤はFLAP、LTA4H又は5−LOの活性及び/又は核酸発現を変化させる。好ましい剤には剤表Iに示したものが含まれる。別の態様において、好ましい剤には:別名MK−0591として知られている1−((4−クロロフェニル)メチル)−3−((l,l−ジメチルエチル)チオ)−アルファ,アルファ−ジメチル−5−(2−キノリニルメトキシ)−1H−インドール−2−プロパン酸、別名BAY−x−1005として知られている(R)−(+)−アルファ−シクロペンチル−4−(2−キノリニルメトキシ)−ベンゼン酢酸、別名A−81834として知られている3−(3−(1,1−ジメチルエチルチオ−5−(キノリン−2−イルメトキシ)−1−(4−クロロメチルフェニル)インドール−2−イル)−2,2−ジメチルプロピオンアルデヒドオキシム−0−2−酢酸;であり得、又はジレウトン、アトレロウトン、別名ZD−2138として知られている6−((3−フルオロ−5−(テトラヒドロ−4−メトキシ−2H−ピラン−4−イル)フェノキシ)メチル)−l−メチル−2(1H)−キノリノン、別名MK−886として知られている1−((4−クロロフェニル)メチル)−3−((1,1−ジメチルエチル)チオ)−アルファ,アルファ−ジメチル−5−(2−キノリニルメトキシ)−1H−インドール−2−プロパン酸、別名CJ−13610として知られている 4−(3−(4−(2−メチル−イミダゾール−1−イル)−フェニルスルファニル)−フェニル)−テトラヒドロ−ピラン−4−カルボン酸アミドであり得る。追加の剤には、Penning et al., Med Chem. 2002 45(16):3482-90, Penning, Curr Pharm Des. 2001, 7(3): 163-79 及びPenning et al., J Med Chem. 2000 43(4):721-35 、に記載されているものが含まれる。別の態様において、該剤は、ロイコトリエンアンタゴニスト又はロイコトリエンに対する抗体、ならびにロイコトリエンレセプター(例えば、BLT1、BLT2、CysLTR1及びCysLTR2)の活性を変化させる剤のように、ロイコトリエン(例えば、LTA4、LTB4、LTC4、LTD4、LTE4、CysLTl、CysLT2)の代謝又は活性を変化させる。
他の好ましい態様において、該剤はLTA4Hの活性及び/又は核酸発現を変化させる。好ましい剤には、剤表IIに示したもの:限定されるわけではないが、以下の剤:
1−[2−[4−(フェニルメチル)フェノキシ]エチル]−2−メチル−4−テトラゾリルピペリジン;1−[2−[4−(4−オキサゾリル)フェノキシ)フェノキシ]エチル]ピロリジン;3−[メチル[3−[4−(2−チエニルメチル)フェノキシ]プロピル]アミノ]プロピオン酸;3−[メチル[3−[4−(2−チエニルメチル)フェノキシ]プロピル]アミノ]プロピオン酸メチル;3−[メチル[3−[4−(3−チエニルメチル)フェノキシ]プロピル]アミノ]プロピオン酸;3−[メチル[3−4−(3−チエニルメチル)フェノキシ]プロピル]アミノ]プロピオン酸メチル;3−[メチル[3−[4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ]プロピル]アミノ]プロピオン酸;3−[メチル[3−[4−(4−ビフェニルオキシ)フェノキシ]プロピル]アミノ]プロピオン酸;N−[3−[[3−[4−(フェニルメチル)フェノキシ]プロピル]メチルアミノ]プロピオニル]ベンゼンスルホンアミド;1−[2−[4−(フェニルメチル)フェノキシ]エチル]−2−メチル−4−(1H−テトラゾール−5−イル)ピペリジン;1−[2−[4−(フェニルメチル)フェノキシ]エチル]−4−(1H−テトラゾール−5−イル)ピペリジンも含まれる。別の態様において、好ましい剤は:別名SC−56938として知られている1−[2−[4−(フェニルメチル)フェノキシ]エチル]−4−ピペリジン−カルボン酸エチル;別名RP64966として知られている[4−[5−(3−フェニル−プロピル)チオフェン−2−イル]ブトキシ]酢酸;別名SA6541として知られている(R)−S−[[4−(ジメチルアミノ)フェニル]メチル]−N−(3−メルカプト−2メチル−l−オキソプロピル−L−システインであり得る。一つの好ましい態様において、該治療剤は、4−{(S)−2−[4−(4−クロロ−フェノキシ)−フェノキシメチル]−ピロリジン−1−イル}−ブチルアミド、DG−051としても知られている;である。
循環器疾患を治療する又は予防するための剤は単独で、又はスタチンと併用して投与し得る。スタチンには、限定されるわけではないが、剤ロブバスタチン、フルバスタチン、アトルバアスタチン、ラバスタチン(メボリンとしても知られている)、シンバスタチン、プラバスタチン、ピタバスタチン、メバスタチン、クレバスタチン、ML−236A、ML−236B、MBV−530A及びMB−530Bが含まれる。
上に及び剤表I及び剤表IIにリストした全ての剤には、それらの光学的に純粋なエナンチオマー、塩、化学的誘導体、及び類似体が含まれる。
Figure 0005646179
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もしくは、本発明のマーカー及び/ハプロタイプに関連する生物学的ネットワーク又は代謝経路を、mRNA及び/又はポリペプチドを決定することによりモニターし得る。このことは、例えば、治療前及び治療間に採取されたサンプル中の、該ネットワーク又は経路に属しているいくつかの遺伝子の発現レベル又はポリペプチドをモニターすることにより行い得る。もしくは、治療前及び治療間に、生物学的ネットワーク又は代謝経路に属している代謝産物を決定し得る。治療の有効性は、治療の間に観察された発現レベル/代謝レベルの変化を、健常対象からの対応するデータと比較することにより決定される。
さらなる側面において、本発明のマーカーは、臨床試行の能力及び有効性を増加させるために使用し得る。それ故、本発明の少なくとも一つのアットリスク変異体のキャリアである個体は、特定の治療モダリティーにより応答し易いようである。一つの態様において、特定の治療(例えば、低分子薬剤、例えば、上にリストした低分子薬剤、例えば、剤表I及び剤表IIにリストした薬剤)が標的としている、経路及び/又は代謝ネットワーク中の遺伝子(単数又は複数)のアットリスク変異体を運んでいる個体は、該治療のレスポンダーである可能性が高い。別の態様において、一つの遺伝子のアットリスク変異体を運んでいる個体(発現及び機能がアットリスク変異体により変化している)は、該遺伝子、その発現又はその遺伝子産物を標的とする治療モダリティーのレスポンダーである可能性が高い。
さらなる側面において、本発明のマーカー及び/ハプロタイプは、特定の個体のための医薬品の選択を目標に使用し得る。治療モダリティーの個別化選択、ライフスタイル変化(例えば、食事の変化、運動、減量計画、禁煙、よりストレスの少ないライフスタイル、その他)又は二つの組み合わせは、本発明のアットリスク変異体の利用により実現し得る。それ故、本発明の特定のマーカーについての個体の状態は、本発明のアットリスク変異体により影響される標的遺伝子又は遺伝子産物を標的とする治療オプションの選択に有用であり得る。変異体のある種の組み合わせは、治療オプションの一つの選択に適していることができ、一方、他の遺伝子変異体の組み合わせは、他の治療オプションを目的とすることができる。こうした変異体の組み合わせは、臨床的に信頼できる正確さで治療モジュールの選択を決定するのに必要とされる場合、一つの変異体、二つの変異体、三つの変異体、又は 四つ又はそれ以上の変異体を含むことができる。
本発明の変異体の診断的及び療法的使用に加えて、該変異体(マーカー及び/ハプロタイプ)は人物同定に有用なマーカーでもあり、そのため法医学、親子鑑定及びバイオメトリクスにおいても有用である。法医学目的のためのSNPの具体的使用は、Gill (Int. J. Legal Med. 114:204-10 (2001) )により概説されている。個体間のゲノムDNA中の遺伝子変異は、個体を同定するため及び生物学的サンプルと個体を結びつけるための遺伝子マーカーとして使用し得る。SNP及びマイクロサテライトを含む遺伝子マーカーは、個体を識別するために有用であり得る。より多くのマーカーが分析されると、いずれかの所与の個体中のマーカーのアレル組み合わせが無関連個体と同一である可能性を低くする(マーカーは相関していないこと、即ち、該マーカーは完全連鎖平衡にあることを仮定して)。それ故、好ましいマーカーは、本発明のマーカーのような利用可能なマーカーより選択することができ、選択されたマーカーは、異なった染色体上のマーカーを含む、ヒトゲノム中の異なった領域からのマーカーを含んでなることができる。
ある種の応用において、法医学試験に有用なSNPは縮重コドン位置からのものである(即ち、SNPの変異がコドンによりコードされているアミノ酸に影響しないように、ある種のコドンの三番目の位置)。人種、祖先又は物理的特色を含む表現型特徴を予想するための応用のような他の応用において、コードされたタンパク質のアミノ酸配列に影響するSNPを利用するのがより有用であり及び望ましいであろう。他のこうした態様において、該変異体(SNP又は他の多型マーカー)は近隣の遺伝子の発現レベルに影響し、それ故、変化したタンパク質発現を導く。
コンピューター利用側面
本発明は、循環器疾患に関連すると本明細書に記載された多型マーカー及びハプロタイプのコンピューター実行応用にも関する。こうした応用は、本発明の方法に有用な遺伝子型データを保存する、操作する又はさもなくば解析するために有用であり得る。一つの例は、第三者(例えば、個人)に遺伝子型情報を提供することが可能なように、又は、例えば、循環器疾患への増加した感受性に寄与する遺伝的リスク因子に関する情報と遺伝子型データを比較することにより遺伝子型データから情報を引き出すため、及びこうした比較に基づいた結果を報告するために、可読媒体上に個体に由来する遺伝子型情報を保存することに関する。
一つのこうした側面はコンピューター可読媒体である。一般用語において、こうした媒体は、(i)少なくとも一つの多型マーカーのための識別子;(ii)循環器疾患(例えば、MI;CAD、IA、AAA、脳卒中、再狭窄、PAD)と診断された個体における、前記少なくとも一つのマーカーの少なくとも一つのアレルの頻度又はアレルの頻度の指標;及び、参照集団における、前記少なくとも一つのマーカーの少なくとも一つのアレルの頻度又はハプロタイプの頻度の指標;を保存する容量を有する。該参照集団は母集団からのランダムサンプルである。もしくは、該参照集団は一般集団からのランダムサンプルであり、それ故、全体の集団を代表する。頻度指標は、計算された頻度、アレル及び/又はハプロタイプコピーの総数、又は特定の媒体に適している実際の頻度の規格化された又はさもなくば操作された値であることができる。
祖先情報、性、身体属性又は特性(身長及び体重を含む)、生化学的測定値(血圧、血中脂質レベル、コレステロールレベルのような脂質レベル)、本明細書に記載した循環器疾患に関係するバイオマーカーについての情報、又は特定の個体の遺伝子型状態に関係する、保存する又は操作することが望まれるその他の有用な情報のような、個体についての追加の情報は該媒体に保存し得る。
本発明はさらに、ヒト個体における循環器疾患に対する感受性を決定するために有用な遺伝子型データの決定又は操作に適している装置に関する。こうした装置は、コンピューター可読メモリー、コンピューター可読メモリーに保存されたデータを操作するためのルーチン、遺伝子データの尺度を含むアウトプットを発生するためのルーチンを含み得る。こうした尺度は、アレル又はハプロタイプ頻度、遺伝子型数、性、年齢、表現型情報、オッズ比(OR)又は相対リスク(RR)についての値、集団寄与リスク(PAR)、本来の遺伝子型データの直接統計値、又は遺伝子データに基づいた計算に基づいているその他の有用な情報のような値を含み得る。
循環器疾患の増加した感受性(例えば、増加したリスク)に関連すると本明細書で示されたマーカー及びハプロタイプは、ある態様において、遺伝子型データの説明及び/又は解析に有用である。それ故ある態様において、本明細書に示された循環器疾患についてのアットリスクアレル、又は循環器疾患に関連すると本明細書に示されたマーカーのいずれか一つとLDにある多型マーカーにおけるアレルは、遺伝子型データが由来する個体が循環器疾患の増加したリスクにあることを示す。一つのこうした態様において、遺伝子型データは、循環器疾患に関連すると本明細書に示されたマーカーの少なくとも一つ、又はそれらと連鎖不均衡にあるマーカーについて発生される。該遺伝子型データは次ぎに、例えば、インターネットでアクセス可能なユーザーインターフェースを介し、例えば、循環器疾患のリスク尺度(絶対リスク(AR)、リスク比(RR)又はオッズ比(OR)のような)の形態での遺伝子型データの解釈とともに、データが由来する個体が利用できるようにされた。別の態様において、個体から誘導された遺伝子型データセット中で同定されたアットリスクマーカーを評価し、データセット中のこうしたアットリスク変異体の存在により与えられたリスクの評価からの結果は、例えば、安全なウェブインターフェース又は他の通信手段により、該個体が利用できるようにされた。こうしたリスク評価の結果は、数字の形態(例えば、絶対リスク、相対リスク及び/又はオッズ比のようなリスク値、又は基準と比較されたリスクのパーセンテージ増加)で、図的手段、又は遺伝子型データが誘導された個体に対するリスクを例示するために適した他の手段により報告し得る。特定の態様において、リスク評価の結果は、第三者、例えば、医師、他の医療従事者又は遺伝子カウンセラーに公開される。
本発明の種々の側面で有用なマーカー
上記の応用は、循環器疾患に対する感受性を評価する方法に関してより詳細に記述されてきた、及び本明細書で詳細に記述されている、本発明のマーカー及びハプロタイプですべて実施し得る。それ故、これらの応用は、表1〜35にリストしたマーカー、及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーのいずれかを使用して一般に実行に移し得る。いくつかの態様において、該マーカーは表3、10又は21に示したマーカー及びそれらと連鎖不平衡にあるマーカーから選択される。一つの態様において、該マーカー及びハプロタイプは、その配列が配列番号94に示されたゲノムセグメント内に存在する。別の態様において、該マーカー及びハプロタイプは、rs7041637、rs2811712、rs3218018、rs3217992、rs2069426、rs2069422、rs1333034、rs1011970、rs10116277、rs1333040、rs2383207、rs1333050、D9S1814、rs10757278、rs10757274、rs10333049、D9S1870から選択される少なくとも一つのマーカーを含んでなり、随意に、それらと連鎖不平衡にあるマーカーを含んでいてもよい。一つの具体的態様において、連鎖不平衡は、0.2より大きなr2の数値により定義される。別の態様において、該マーカー又はハプロタイプは、rs7041637アレルA、rs2811712アレルA、rs3218018アレルA、rs3217992アレルA、rs2069426アレルC、rs2069422アレルA、rs1333034アレルA、rs1011970アレルG、rs10116277アレルT、rs1333040アレルT、rs2383207アレルG、rs1333050アレルT、D9S1814アレル0、rs10757278アレルG、rs1333049アレルC、rs10757274アレルG、及び/又はD9S1870アレルX(2より小さな全てのアレルの複合アレル)から選択される少なくとも一つのマーカーを含んでなり、示されたアレルは、循環器疾患に対する増加した感受性を示す。
核酸及びポリペプチド
本明細書に記載した核酸及びポリペプチドは、本発明の方法又はキットに使用し得る。本明細書で使用される「単離された」核酸分子とは、通常は遺伝子又はヌクレオチド配列が隣接する核酸(ゲノム配列のように)から分離された及び/又は他の転写された配列から完全に又は部分的に精製された(例えば、RNAライブラリー中のように)ものである。例えば、本発明の単離された核酸は、それが自然に生じる複雑な細胞環境、又は組換え技術により産生された場合の培養培地、又は化学的に合成された場合の化学前駆体又は他の化学薬品に関して実質的に単離し得る。いくつかの例において、単離された物質は組成物(例えば、他の物質を含む粗抽出物)、緩衝液系又は試薬混合物の一部を形成するであろう。他の状況下では、該物質は、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)又はカラムクロマトグラフィー(例えば、HPLC)により決定されるように、本質的に均一にまで精製し得る。本発明の単離された核酸分子は、存在するすべての巨大分子の少なくとも約50%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%(モルに基づいて)含まれている。ゲノムDNAに関しては、用語「単離された」は、ゲノムDNAが天然に付随していた染色体から分離された核酸分子を指す。例えば、単離された核酸分子は、該核酸分子が由来した細胞のゲノムDNA中の該核酸分子に隣接する、約250kb、200kb、150kb、100kb、75kb、50kb、25kb、10kb、5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kb又は0.1kb未満のヌクレオチドを含み得る。
該核酸分子は、他のコード又は調節配列と融合することが可能であり、それでも単離されたと考えられる。それ故、ベクター中に含まれている組換えDNAは、本明細書で使用した「単離された」の定義に含まれる。また、単離された核酸分子には、異種宿主細胞又は異種生物体中の組換えDNA分子、ならびに溶液中の部分的に又は実質的に精製されたDNA分子も含まれる。「単離された」核酸分子は本発明のDNA分子のインビボ又はインビトロRNA転写体も包含する。単離された核酸分子又はヌクレオチド配列は、化学的に合成された又は組換え手段による核酸分子又はヌクレオチド配列を含み得る。こうした単離されたヌクレオチド配列は、例えば、コードされたポリペプチドの製造における、相同的配列(例えば、他の哺乳類種からの)を単離するためのプローブとして、遺伝子地図作製のために(例えば、染色体とのインサイツハイブリダイゼーションによる)、又はノーザンブロット分析又は他のハイブリダイゼーション技術によるような組織中の(例えば、ヒト組織)遺伝子発現を検出するために有用である。
本発明は、本明細書に記載したヌクレオチド配列に、選択的ハイブリダイゼーションのためのような高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする核酸分子にも関する(例えば、本明細書に記載したハプロタイプに関連する多型を含有するヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズする核酸分子)。一つの態様において、本発明は、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション及び洗浄条件下(例えば、選択的ハイブリダイゼーション)LDブロックC09(配列番号94)のヌクレオチド配列又はそれらの断片(又は、配列番号94に示したLDブロックC09のヌクレオチド配列の補体を含んでなるヌクレオチド配列)を含んでなるヌクレオチドにハイブリダイズする変異体を含み、該ヌクレオチド配列は、本明細書に記載した少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアットリスクアレル(又は少なくとも一つのハプロタイプ)を含んでなる。
二つのヌクレオチド又はアミノ酸配列のパーセント同一性は、最適比較目的のために配列をアラインすることにより決定し得る(例えば、ギャップを第一の配列中に導入し得る)。対応する位置でのヌクレオチド又はアミノ酸を次ぎに比較し、二つの配列間のパーセント同一性は、配列により共有されている同一位置の数の関数である(即ち、%同一性=同一位置の数/位置の総数x100)。ある態様において、比較目的のためにアラインされた配列の長さは、基準配列の長さの少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%である。二つの配列の正確な比較は、例えば、数学的アルゴリズムを使用する公知の方法により達成し得る。こうした数学的アルゴリズムの非制限例は、Karlin, S. and Altschul, S., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:5873-5877 (1993) に記載されている。Altschul, S. et al, Nucleic Acids Res., 25:3389-3402 (1997) に記載されているように、こうしたアルゴリズムはNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、NBLAST)のデフォルトパラメーターを使用し得る。ncbi.nlm.nih.gov. のワ−ルドワイドウェブ上のウェブサイトを参照されたい。一つの態様において、配列比較のためのパラメーターは、スコア=100、ワードレングス=12に設定することができるが、あるいは変化させることも可能である(例えば、W=5又はW=20)。他の例には、Myers and Miller, CABIOS (1989)、のアルゴリズム、Torellis, A. and Robotti, C1 Comput. Appl. Biosci. 10:3-5 (1994) に記載されているADVANCE及びADAM;及びPearson, W. and Lipman, D., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444-48 (1988) に記載されているFASTAが含まれる。別の態様において、二つのアミノ酸配列間のパーセント同一性はGCGソフトウェアパッケージ(Accelrys, Cambridge, UK)中のGAPプログラムを使用して達成し得る。
本発明は、LDブロックC09のヌクレオチド配列(配列番号94)を含んでなる、又はから成る核酸、又はLDブロックC09のヌクレオチド配列(配列番号94)の補体を含んでなる、又はから成るヌクレオチド配列に、高ストリンジェント条件下、ハイブリダイズする断片又は一部を含有する、単離された核酸分子も提供し、該ヌクレオチド配列は本明細書に記載したマーカー及びハプロタイプ中に含有された少なくとも一つの多型アレルを含んでなる。本発明の核酸断片は、少なくとも約15、少なくとも約18、20、23又は25ヌクレオチドであり、30、40、50、100、200、500、1000、10,000又はそれ以上のヌクレオチド長でもあり得る。
本発明の核酸断片は、本明細書に記載したアッセイにおいてプローブ又はプライマーとして使用される。「プローブ」又は「プライマー」は、核酸分子の相補鎖に塩基特異的様式でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。DNA及びRNAに加え、こうしたプローブ及びプライマーには、Nielsen, P. et al, Science 254:1497-1500(1991) に記載されているポリペプチド核酸(PNA)が含まれる。プローブ又はプライマーは、LDブロックC09からの近接ヌクレオチド配列を含んでなる、核酸分子の少なくとも約15、典型的には約20〜25、及びある態様において約40、50又は75の連続したヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含んでなり、そして、本明細書に記載した少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレル又は少なくとも一つのハプロタイプ、又はそれらの補体を含んでなる。特定の態様において、プローブ又はプライマーは、100又はより少ないヌクレオチド;例えば、ある態様において6〜50ヌクレオチド、又は、例えば、12〜30ヌクレオチドを含み得る。他の態様において、該プローブ又はプライマーは、該連続したヌクレオチド配列と、又は該連続したヌクレオチド配列の相補体と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一又は少なくとも95%同一である。別の態様において、該プローブ又はプライマーは、該連続したヌクレオチド配列に、又は該連続したヌクレオチド配列の相補体に選択的にハイブリダイズすることが可能である。しばしば、該プローブ又はプライマーはさらに、標識、例えば、ラジオアイソトープ、蛍光標識、酵素標識、酵素補因子標識、磁気標識、スピン標識、エピトープ標識を含んでなる。
上記のような本発明の核酸分子は、当業者には公知の標準分子生物学技術及びLDブロックC09のヌクレオチド配列(配列番号94)により提供された配列情報を使用して同定する及び単離し得る。一般的には、PCR Technology: Principles and Applications for DNA Amplification (ed. H. A. Erlich, Freeman Press, NY, NY, 1992); PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications (Eds. Innis, et al., Academic Press, San Diego, CA, 1990); Mattila, P. et al., Nucleic Acids Res., 19:4967- 4973 (1991); Eckert, K. and Kunkel, T., PCR Methods and Applications, 1: 17-24 (1991); PCR (eds. McPherson et al., IRL Press, Oxford);及び米国特許第4,683,202号(これらの各々の全教示は本明細書において援用される)を参照されたい。
一般に、本発明の単離された核酸配列は、サザンゲル上の分子量マーカーとして、及び関連する遺伝子位置を地図作製するために標識された染色体マーカーとして使用し得る。該核酸配列は循環器疾患又は循環器疾患に対する感受性を同定するため、患者の内在性DNA配列と比較するため、及び関連DNA配列をハイブリダイズする及び発見するための、又はサンプルから既知の配列を差し引くための(例えば、サブトラクティブハイブリダイゼーション)プローブとしても使用し得る。該核酸配列はさらに、遺伝子フィンガープリンティングのためにプライマーを誘導するため、免疫化技術を使用する抗ポリペプチド抗体を上昇させるため、及び/又は抗DNA抗体を上昇させる又は免疫応答を惹起するために使用し得る。
本明細書に記載した二つのポリペプチド(又はポリペプチドの領域)は、約アミノ酸配列が少なくとも約45〜55%が相同的又は同一の場合、実質的に相同的又は同一である。他の態様において、二つのポリペプチド(又はポリペプチドの領域)は、約アミノ酸配列が少なくとも約70〜75%、少なくとも約80〜85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%が相同的又は同一、又は同一の場合、実質的に相同的又は同一である。本発明に従った実質的に相同的なアミノ酸配列は、LDブロックC09のヌクレオチド配列(配列番号94)又はそれらの一部を含んでなる核酸分子によりコードされているであろうし、さらに表3、10又は21に示された少なくとも一つの多型を含んでなり、コードしている核酸は、より特定的に本明細書で記載されたようなストリンジェント条件下、LDブロックC09のヌクレオチド配列(配列番号94)にハイブリダイズするであろう。一つの態様において、該ポリペプチドは、CDKN2A及び/又はCDKN2Bのアミノ酸配列の全て又は一部を含んでなる。
抗体
遺伝子産物の一つの形態に特異的に結合するが、遺伝子産物の他の形態には結合しないポリクローナル抗体及び/又はモノクローナル抗体も提供される。変異体又は多型部位(単数又は複数)を含有する基準遺伝子産物の一部を結合する抗体も提供される。本明細書で使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、即ち、抗原を特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。本発明のポリペプチドに特異的に結合する分子は、そのポリペプチド又はそれらの断片に結合するが、サンプル、例えば、天然に該ポリペプチドを含有する生物学的サンプル中の他の分子には実質的に結合しない分子である。免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の例には、該抗体をペプシンのような酵素で処理することにより発生し得る、F(ab)及びF(ab’)2断片が含まれる。本発明は、本発明のポリペプチドに結合するポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体を提供する。本明細書で使用する用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、本発明のポリペプチドの特定のエピトープと免疫反応することが可能である抗原結合部位のただ一つの種を含有する、抗体分子の集団を指す。モノクローナル抗体組成物は、それ故典型的には、それが免疫反応する本発明の特定のポリペプチドに対する単一の結合親和性を示す。
ポリクローナル抗体は、所望の免疫原、例えば、本発明のポリペプチド又はそれらの断片で、適した対象を免疫化することにより、上記のように調製し得る。免疫化対象中の抗体力価は、固定化ポリペプチドを使用する、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)のような標準技術により、時間を通してモニターし得る。もし望むなら、該ポリペプチドに対して方向付けられた抗体分子を、哺乳動物から(例えば、血液から)単離することが可能であり、そしてプロテインAクロマトグラフィーのような公知の技術によりさらに精製できて、IgG分画を得る。免疫化後の適切な時点で(例えば、抗体力価が最も高い時)、対象から抗体産生細胞を得ることが可能であり、Kohler and Milstein, Nature 256:495-497 (1975) により最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al, Immunol. Today 4: 72 (1983))、EBV−ハイブリドーマ技術 (Cole et al., Monoclonal Antibodys and Cancer Therapy, Alan R. Liss,1985, Inc., pp. 77-96) 及びトリオーマ技術のような標準的技術によりモノクローナル抗体を調製するために使用する。ハイブリドーマを産生するテクノロジーは公知である(一般的には、Current Protocols in Immunology (1994) Coligan et al (eds.) John Wiley & Sons, Inc., New York, NY を参照されたい)。簡潔には、不死細胞株(典型的には骨髄腫)を、上記のように免疫原で免疫した哺乳動物からのリンパ球(典型的には脾細胞)と融合させ、生じたハイブリドーマ細胞の培養上清を、本発明のポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定するためにスクリーニングする。
リンパ球及び不死細胞株を融合させるために使用される多くの公知のプロトコールのいずれもが、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を発生させる目的に応用し得る(例えば、Current Protocols in Immunology, 上記文献; Galfre et al., Nature 266:55052 (1977); R.H. Kenneth, Monoclonal Antibodies : A New Dimension In Biological Analyses 中, Plenum Publishing Corp., New York, New York (1980); 及び Lerner, YaIe J. Biol. Med. 54:387-402 (1981) を参照されたい)。さらに、当業者は、有用であろう、こうした方法の多くの変形があることを理解するであろう。
モノクローナル抗体分泌ハイブリドーマを調製する代案として、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、該ポリペプチドを結合する免疫グロブリンライブラリーメンバーを単離するために該ポリペプチドで組換えコンビナトリアル免疫グロブリンライブラリー(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリー)をスクリーニングすることにより同定する又は単離することが可能である。ファージディスプレイライブラリーを発生する及びスクリーニングするためのキットは商業的に入手可能である(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System, カタログ番号27-9400-01 ;及びStratagene SurfZAP(商標) Phage Display Kit, カタログ番号240612 )。加えて、抗体ファージディスプレイライブラリーを発生する及びスクリーニングするために特に受け入れられる方法及び試薬の例は、例えば、米国特許第5,223,409号;PCT公開番号WO92/18619;PCT公開番号WO91/17271;PCT公開番号WO92/20791;PCT公開番号WO92/15679;PCT公開番号WO93/01288;PCT公開番号WO92/01047;PCT公開番号WO92/09690;PCT公開番号WO90/02809; Fuchs et al., Bio/Technology 9:1370-1372 (1991); Hay et al., Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85 (1992); Huse et al., Science 246: 1275-1281 (1989); 及び Griffiths et al, EMBO J. 12:725-734 (1993) に見ることができる。
加えて、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体のような組換え抗体は、ヒト及び非ヒト部分を含んでなり、標準組換えDNA技術を使用して作製でき、本発明の範囲内である。こうしたキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当該技術分野では既知の組換えDNA技術により製造し得る。
一般に、本発明の抗体(例えば、モノクローナル抗体)は、アフィニティークロマトグラフィー又は免疫沈降のような標準技術による本発明のポリペプチドの単離に使用し得る。ポリペプチド特異的抗体は、細胞からの天然のポリペプチドの、又は宿主細胞中で発現された組換え的に産生されたポリペプチドの精製を容易にすることができる。さらに、本発明のポリペプチドに特異的な抗体は、該ポリペプチドの発現の存在量及びパターンを評価するため、該ポリペプチド(例えば、細胞溶解物、細胞上清又は組織サンプル中の)を検出することに使用し得る。抗体は、臨床試験法の一部として、例えば、所与の治療計画の効力を決定するために組織中のタンパク質レベルをモニターするように、診断的に使用し得る。該抗体はその検出を容易にするため、検出可能な物質に結合させることができる。検出可能な物質の例には、多様な酵素、補欠分子族、蛍光物質、化学発光物質、生物化学発光物質及び放射性物質が含まれる。適した酵素の例には、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが含まれ、適した補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれ;適した蛍光物質の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリン;適した化学発光物質の例にはルミノールが含まれ;生物化学発光物質の例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが含まれ、及び適した放射性物質の例には125I、131I、35S又は3Hが含まれる。
抗体は、薬理ゲノミクスの解析においても有用であることができる。こうした態様において、本発明の少なくとも一つの多型マーカーを含有する核酸によりコードされている変異体タンパク質のような、本発明に従った核酸によりコードされている変異体タンパク質に対する抗体は、修飾治療モダリティーを必要とする個体を同定するために使用し得る。
抗体はさらに、循環器疾患の活性状態における、又はタンパク質の機能に関係する疾患、特に循環器疾患の素因を有する個体におけるような、疾患状態における変異体タンパク質の発現を評価するために有用であり得る。例は、本明細書でさらに記述されているようなバイオマーカー(例えば、心臓マーカー)により提供される。本明細書に記載した少なくとも一つの多型マーカー又はハプロタイプを含んでなる核酸によりコードされている本発明の変異体タンパク質(例えば、CDKN2A及び/又はCDKN2B)に特異的な抗体は、該変異体タンパク質の存在をスクリーニングするために、例えば、該変異体タンパク質の存在により示される循環器疾患の素因についてスクリーニングするために使用することができる。
抗体は他の方法においても使用し得る。それ故、電気泳動移動度、等電点、トリプシン又は他のプロテアーゼ消化による分析と併用して、又は当業者には既知の他の物理的アッセイで使用するため、本発明の変異体タンパク質のようなタンパク質を評価する診断ツールとして抗体は有用である。抗体は組織分類にも使用することができる。一つのこうした態様において、特異的変異体タンパク質は特定の組織タイプでの発現と相関しており、変異体タンパク質に特異的な抗体は、特定の組織タイプを同定するために使用し得る。
変異体タンパク質を含むタンパク質の細胞内局在性も抗体を使用して決定することができ、そして多様な組織中の細胞における該タンパク質の異常な細胞内局在性を評価するために応用し得る。こうした使用は遺伝子試験におけるのみではなく、特定の治療モダリティーのモニタリングにおいても応用し得る。治療が、該変異体タンパク質の発現レベル又は存在を、又は該変異体タンパク質の異常な組織分布又は発生過程での発現を是正することを目的とする場合、該変異体タンパク質又はそれらの断片に特異的な抗体は、治療効率をモニターするために使用し得る。
抗体はさらに、例えば、結合分子又は相手への変異体タンパク質の結合を阻止することにより変異体タンパク質機能(例えば、CDKN2A及び/又はCDKN2B)を阻害するために有用である。こうした使用は、治療が変異体タンパク質の機能を阻害することを含む療法状況にも応用し得る。抗体は、例えば、結合を阻止する又は競合的に阻害するために使用でき、それにより該タンパク質の活性を変調する(即ち、刺激する又は拮抗する)。抗体は、特異的機能に必要な部位を含有する特定のタンパク質断片に対して、又は細胞又は細胞膜に関連している無傷のタンパク質に対して調製し得る。インビボでの投与のため、抗体を放射性核種、酵素、免疫原性エピトープ、又は細菌毒素(リシンのようなジフテリア又は植物毒素)を含む細胞毒のような追加の療法的ペイロード(payload)と連結させることができる。抗体又はそれらの断片のインビボ半減期は、ポリエチレングリコールへのコンジュゲーションを経たペグ化により増加させることができる。
本発明はさらに、本明細書に記載した方法において抗体を使用するためのキットに関する。これには、限定されるわけではないが、試験サンプル中の変異体タンパク質の存在を検出するためのキットが含まれる。一つの好ましい態様は、標識された又は標識可能な抗体のような抗体、及び生体サンプル中の変異体タンパク質を検出するための化合物又は剤、該サンプル中の変異体タンパク質の量又は存在及び/又は不存在を決定するための手段、及び該サンプル中の変異体タンパク質の量を標品と比較するための手段、ならびにキットの使用のための説明書を含んでなる。
本発明はここで、以下の非制限的実施例により例示されるであろう。
以下には、SNPマーカー及びマイクロサテライトマーカーの単一ポイント分析を介して、冠動脈疾患及びステント内再狭窄と関連していることが見出された感受性因子の同定の記述が含まれている。
方法
本研究は、Data Protection Commission of Iceland 及びNational Bioethics Committee により承認された。
アイスランド人冠動脈疾患及びステント内再狭窄コホート
LDブロックC09中のマーカーと冠動脈疾患間の関連性は、元々、該マーカー及び冠動脈疾患の最も懸念される合併症(冠動脈疾患の副表現型)である心筋梗塞間の関連として発見された。過去8年にわたり、MIを患った個体を、deCODE での循環器疾患(CVD)遺伝子プログラムを介して集めた。現在、血液サンプルは2525MI患者から集められている。MIを患った個体は、a)1981年〜2002年にアイスランドにおいて、75歳前にMIを有し、MONICA基準(J Clin Epidemiol 41、105-14 (1988))を満たした;b)過去30年にわたってIceland Heart Association(IHA)により行われた大規模予測疫学研究(1)に参加し、1981年以前にMIを有した;c)2003及び2004年にレイキャビークの主な病院からのMI退院診断を受けた、10,000を超える個体登録から識別された。登録における全ての個体のMI診断は、徴候、症状、心電図、心筋酵素及び剖検所見に基づいた厳格な診断規則に従った(2)。患者には、deCODE でのCVD遺伝子プログラムの協力医師を通して接触した。研究参加者のほとんどはIHAを訪れ、血液採取を行ったが、レイキャビーク区域の外側に居住する参加者は、彼らの地方健康センターを訪れた。
冠動脈疾患を有する追加の対象(既知の心筋梗塞の病歴がない)は、1993年及び2003年にレイキャビークの主な病院で冠状動脈ステント術を受けたリストから識別された。
このリスト上の700を超える対象について、種々の程度の再狭窄(0〜100%ステント内再狭窄)を有する対象を含む、ステント内再狭窄についての情報が入手可能である。再狭窄と確認された発端者(proband)は、介入心臓/放射線科医により読み取られた冠動脈造影により決定された、50%又はそれ以上のステント内狭窄を有する対象である。
研究に使用された対照は、deCODE での種々の遺伝子プログラムの一部として集められた。対照の病歴は、対照対象がCVD遺伝子プログラム(即ち、MI、脳卒中、末梢血管疾患、II型糖尿病、肥満、家族性家族性混合型脂質異常症、冠状動脈 再狭窄、及び高血圧遺伝子プログラム)のいずれかに参加していない限り未知であった。既知のMI、脳卒中、末梢血管又は冠動脈疾患を有する個体は対照から除外された。
米国からの対象
フィラデルフィアからのコホート
フィラデルフィアからの研究の参加者は、心臓カテーテルを受けている対象における、冠動脈疾患(CAD)と生化学的及び遺伝的因子との関連性を研究するPENN CATH研究プログラムを介してUniversity of Pennsylvania Medical Center で登録された。総計で3850人の対象が参加した。本研究の目的のため、以下の冠動脈疾患の一つを有すると診断されたPENN CATH研究個体から選択された:心筋酵素の上昇及び心電図変化の観点から急性MIの基準に基づいたMI、又はMIの自己申告病歴、冠動脈バイパス術(CABG)又は経皮的冠動脈形成術(PTCA)の病歴。対照として使用するため、冠動脈造影で有意な管腔狭窄がない(50%未満の管腔狭窄)個体を選択した。民族性情報は自己申告であった。
University of Pennsylvania Institutional Review Board は研究を承認し、全ての対象は書面によるインフォームド・コンセントを受けた。
クリーブランドからのコホート
研究の参加者は、冠状動脈カテーテル法受けている個体についての生物学的サンプルと連動してデータの登録があるGenebank プログラムを介してCleveland Clinic Heart Center で登録された。MIについての診断基準は以下の少なくとも二つに基づいている:長期胸痛、急性MIに一致するECGパターン、又は心筋酵素の有意な上昇。冠動脈造影で有意な管腔狭窄がない(<50%の管腔狭窄)がなく、及びCADの既往歴がないGenebank 登録からの対象が、本研究の対照として選択された。
この研究は、Cleveland Clinic Foundation Institutional Review Board on Human Subjects は研究を承認し、全ての対象は書面によるインフォームド・コンセントを受けた。
アトランタからのコホート
研究の参加者は、Emory Genebank study and Clinical Registry in Neurology(CRIN)を介してEmory University Hospital、the Emory Clinic and Grady Memorial Hospitals で登録された。Emory Genebank は心臓カテーテル法を行っている対象における、CADと生化学的及び遺伝的因子との関連性を研究している。本研究の目的のため、MI、CABG又はPTCAの自己申告病歴を有する対象を選択し、患者群として使用した。対照対象は、CRINから集められた非血管性神経学的疾患(主にパーキンソン病及びアルツハイマー病)を有する個体の群、それらの配偶者、親族ではない友人及び地域ボランティアから選択された。これらの対象は、年齢及び民族性について患者集団と一致させた。もし彼らがMI又は冠動脈疾患の既往症を有していたら、対照から除外された。全ての対象は書面によるインフォームド・コンセントを受けた。民族性情報は自己申告であった。
遺伝子型同定
心筋梗塞(MI)と診断された1570アイスランド人個体及び7088集団対照の全ゲノムスキャンは、単一チップ上、およそ317,000の一塩基変異多型(SNP)をアッセイするためのIllumina からのInfinium HumanHap300 SNPチップ(Illumina、San Diego、CA、US)を使用して実施した。他の症例対照コホートにおける再現のためのSNP遺伝子型同定は、Centaurus platform (Nanogen)を使用して実施した。
関連解析についての統計的方法
冠動脈疾患又は心筋梗塞のような疾病表現型への関連性について個々のマーカーを試験するため、尤度比検定を使用し、マーカーの各アレルの両側p値を計算した。乗法(multiplicative)モデルを仮定し、相対リスク(RR)及び集団寄与リスク(PAR)を計算した(C. T. FaIk, P. Rubinstein, Ann Hum Genet 51 (Pt 3), 227(1987); J. D. Terwilliger, J. Ott, Hum Hered 42, 337(1992))。領域中のマーカー間の連鎖不平衡を評価するため、CEPHコーカサス人HapMapデータを使用した。D’(R. C. Lewontin, Genetics 50, 757 (1964))及び相関係数r2についての(W. G. Hill, A. Robertson, Genetics 60, 615 (Nov, 1968)標準定義を使用し、SNPの対間のLDを計算した。アイスランド人コホートには、個体の幾人かはお互いに親類であることを考慮に入れ、アイスランド人系統学を介した、又は最初の全ゲノム関連性スキャンにおける関連性について、試験された300,000全てについての試験統計値からの遺伝子型をシミュレートすることにより、試験統計値の帰無統計値を得た(引用)。遺伝子型相対リスクのモデルフリー推定値は以下のように発生させた:遺伝子型G0と比較された遺伝子型G1のRRは[n(G1)n(G0)]/[m(G1)m(G0)(式中、n及びmはそれぞれ患者及び対照における遺伝子型計数値を示す)により見積もられた。異なったコホートからの結果は、コホートはアレル/遺伝子型について異なった集団頻度を有してもよいが、共通の相対リスクを有していると仮定される、マンテル・ヘンツェルモデル(引用)を使用して合併した。
マーカー、及び症例におけるMIの発症年齢のような定量的形質間の関連性について試験するために重回帰を使用し、個体により運ばれているアットリスク変異体のコピー数を説明変数として、そして定量的形質を応答変数として採用した。適切ならば、回帰分析において対応する項を説明変数として含ませることにより、年齢及び性について関連性が調整される。
対象及びゲノム対照の関係性についての補正
アイスランド人患者及び対照群の両方における個体のいくつかは互いに関連しており、カイ2乗検定が平均>1及び中央値>0.6752を有することを起こしている(Devlin, B & Roeder, K., Biometrics 55, 997 (1999))。我々は、全ゲノム関連性についての拡大要因(inflation factor)を、305,953のカイ2乗統計値を計算することにより推定し、それはゲノム対照(Devlin, B & Roeder, K., Biometrics 55, 997 (1999))を関連性及び集団層別化可能性の両方について補正する方法である。拡大要因は、1.129と見積もり、全ゲノム関連性から示された結果は、それらの各々を1.129で割ることによりカイ2乗検定値を調整することに基づいている。アイスランド人再現コホート及び合併アイスランド人再現及び発見コホートに対し、708,683人のアイスランド人の系統学を介して遺伝子型をシミュレートする前記の手順を使用し、調整因子を見積もった(S9)。対応する調整因子は、それぞれ1.092及び1.029であった。
cDNAライブラリーのPCRスクリーニング
cDNAライブラリーは全血(90個体のプール)、EBV形質転換ヒトリンパ芽球様細胞(90個体のプール)、ヒト心筋細胞(Sciencell, カタログ番号6200)、ヒト大動脈平滑筋細胞(Sciencell, カタログ番号6110)、ヒト心臓線維芽心室細胞(Sciencell カタログ番号6310)及びヒト初代臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(4個体のプール)から構築した。全RNAは使用説明書に従って、RNeasy RNA単離キット(Qiagen, カタログ番号75144)、全血キットからのRNeasy RNA単離キット(Qiagen, カタログ番号52304)、又は全RNA単離法を使用するmirVana RNA単離キット(Ambion Inc. カタログ番号1560)を使用して単離した。cDNAライブラリーは、ランダムプライマーを使用するHigh Capacity cDNA Archive Kit(Applied Biosystems PN 4322171)を使用してdeCODE で調製した。上記ライブラリーに加え、全心臓(Clontech-639304)及び大動脈(Clontech-639325)からの二つの市販のcDNAライブラリーをスクリーニングした。
PCRスクリーニングは、Operon Biotechnologies からのプライマーを用い、使用説明書に従ってAdvantage2Rポリメラーゼミックス(Clontech cat.no. 639202)を使用して実施した。PCR反応は、3.5μMのフォワード及びリバースプライマー、2mM dNTP、1xAdvantage2 PCR緩衝液、0.2μlのAdvantage酵素及び0.5μlのcDNAライブラリーの最終濃度で、10μlの容量で実施した(表23参照)。発現は、試験したいくつかのライブラリー中のすべてのESTで検出された。どのESTも77bpより大きなオープンリーディングフレームを有していなかった。それらの多くは、その発現がpl4/ARFと共クラスター化することが示されている、最近報告されたアンチセンス非コードRNAと重なっていた(Pasmant, E., et al., Cancer Res 67, 3963 (2007))。
CDKN2A及びCDKN2Bの配列決定
PCR増幅及び配列決定反応は、Zymark SciClone ALH300 ロボットワークステーションにセットし、MJR Tetrads で増幅した。PCR産物は、アガロースゲル電気泳動により正確な長さを確認し、AMPure (Agencourt Bioscience) を使用して精製した。精製された生成物はABI PRISM Fluorescent Dye Terminator システムを使用して配列決定し、CleanSEQ (Agencourt) を使用して再精製し、Applied Biosystems 3730 キャピラリーシークエンサーで決定した。一次配列データからのSNP呼び出しは、deCODE Genetics Sequence Miner ソフトウェアーを使用して実施した。自動化システムにより同定されたすべての変異体は、一次シグナルトレースの手による検査により確認した。96の早期発症MI患者からのサンプルは、表25に示したプライマーを使用して配列決定し、同定されたSNPのリストは表26に提供されている。
候補領域中の候補調節変異体についての調査
University of California Santa Cruzゲノムブラウザ(genome.ucsc.edu)を、MI領域を取り囲む600kb(hgリリース17、9番染色体、塩基21800000〜22400000)について、SNP及び保存TF結合部位の位置を抽出するために使用した。二つの表をPython スクリプトで相互参照し、結合部位に位置するSNPは、HapmapのCEUサンプル中のrs1333040とのLDについて調べた(リリース22)。分析は、ヒトゲノムのリリース18について実行し、結果はhg17座標に変換した。
MI領域を取り囲む600kbのこの生物情報学的分析は、転写因子の保存結合部位に一致する16SNPを与えた(表27)。MIタグ付けSNPに対するLDの欠如は、この候補リストから16SNPの半分の除外を可能にした。残りの多型は、保存TF結合部位を変化させることにより、遺伝子機能に影響を与えることができた。同時に、保存ブロック(UCSCゲノムブラウザを介して入手可能なMultiz アラインメントに基づいて、リリースhg18)中に位置するSNPとMIハプロタイプタグ付けSNP間の相関を探した。74SNPの約半分がHapMapに示されたが、MIハプロタイプと高度に相関しているものは発見できなかった(データは示されていない)。要するに、これらの分析はMIハプロタイプ上の推定調節変異体として特定のSNPを同定しなかった。注意;本分析は、i)MIハプロタイプは完全に配列決定されていない、ii)いくつかの候補SNPはHapmap中で分類わけされていないので、該領域中の機能的候補の一部のみしか検出しないであろうし、それ故、それらがリスク付与ハプロタイプ上にあるかどうかは未知である。加えて、それは、あまり保存されない領域中の多形は機能的変異体であるという、現実的な可能性である。
実施例1
全ゲノム関連性研究
我々は、Illumina 330Kチップを使用し、1570のアイスランド人心筋梗塞患者及び7088の既知の冠動脈疾患の既往症がない集団対照個体(コホートA)を成功裏に遺伝子型同定した。成功裏に遺伝子型同定された各309,091SNPを個々に試験することにより、MIへの関連性についての全ゲノムスキャンを実施した。染色体9p上の単一LDブロック(本明細書においてLDブロックC09と表示されている)中にすべて位置している三つのマーカー(rs10116277、rs1333040、rs2383207)が、MIと強い関連性を示す(図1及び表1a参照)。三つすべてのマーカーは、強く相関しており(表2)、アットリスク変異体の集団頻度は42%〜49%の範囲であり、対応する相対リスクはおよそ1.2である。同じ三つのマーカーのリスクアレルは、MI患者内のより低い発症年齢に有意な相関も示した−アットリスク変異体を運んでいる個体は、アットリスクアレルの非キャリアである個体よりも若い年齢でMIを発症する有意なリスクを有する(表8a)。
三つの関連マーカーを含有する該LDブロック、LDブロックC09は二つの組換えホットスポットに隣接する、又は規定されている−一つは9番染色体上のBuild 34中のおよそ21,920,000bpに、他方はおよそ22,150,000bpに(Nature 437、1299-1320(27 October 2005)) 。LDブロックC09中の他の遺伝子マーカーの探索で、マーカーrs10116277、rs1333040及びrs2383207のアットリスクアレルと強く相関している二つのマイクロサテライトマーカー、D9S1870及びD9S1814が同定された。表1bは、全ゲノム関連性スキャンで使用されたMI患者及び対照の同一コホートにおける、該マイクロサテライトマーカーの各アレルのMIへの関連性を示している。マーカーD9S1814については、関連したアレルはアレル0であったが、D9S1870は複数のアレル(アレル−4、−2及び0)がMIの増加したリスクを示した。D9S1870の異なったアレルとマーカーrs10116277、rs1333040及びrs2383207のアットリスクアレル間の相関を調べることにより、2より小さいD9S1870の全てのアレル(それぞれアレル−6、−4、−2及び0)を一緒にプールすることにより、複合アレル(Xで表される)はSNPの本来のアットリスクアレルと強く相関することが観察された(表2)。D9S1870の複合アレルX及びD9S1814のアレル0は、rs10116277、rs1333040及びrs2383207のアットリスクアレル(表1c)と同様のMIへの関連性を示し、五つ全てのアットリスクアレルは高度に相関している(表2)。
LDブロックC09によって規定される染色体領域中に位置する、HapMap v9 CEUデータセット中のすべてのSNPのさらなる調査は、五つのマーカーrs10l16277、rs1333040、rs2383207、D9S1814及びD9S1870の少なくとも一つのアットリスクアレルと強い相関を有する、さらなる88マーカーを同定し(表3)、それ故、それらのマーカーはLDブロックC09中で観察されたMIへの関連性をタグ付けするための代替マーカーとしても使用することができる。
中でも、668の追加のMI症例及び冠動脈疾患の既往歴がない58,643の追加の対照を含む、70,000を超えるアイスランド人の大きなコホート(コホートB)において、マイクロサテライトマーカーD9S1870を遺伝子型同定した。加えて、クリーブランドからの549MI患者及び606対照;Upenn からの580MI症例及び404対照;及びEmory からの400MI症例及び477対照を含む、米国からの三つの再現コホートにおいて、マイクロサテライトD9S1870を同定した。米国コホートの全ての個体はコーカサス人起源である。四つ全てのコホートにおいて、MIとの関連性について複合アレルXを試験し(表4a及びb)、一つ(クリーブランド)を除いた全てにおいて、有意な関連性が示された。四つの再現コホートからの結果を合併すると(表4c)、統合P値=2.65x10-8を得た。全ゲノム関連性で使用された本来のアイスランド人コホート(コホートA)と合併すると、P値は1.44x10-12であり、乗法モデルを仮定すると、各アレルXは非キャリアのリスクと比較して、運ばれているコピー当たり1.214の推定相対リスク(RR)[95%CI:1.151−1.281]を与えた。対応する合併集団寄与リスク(PAR)は、17.1%である。
もし、Xを運んでいない個体と比較して、リスクアレルXについてのヘテロ接合性個体及びXについてホモ接合性個体に与えられたリスクを別々に調べると(表7a)、ヘテロ接合性個体の推定遺伝子型相対リスク(GRR)は1.204[CI:1.094−1.324]であり、ホモ接合個体のGRRは1.507[CI:1.360−1.670]である。このことは、乗法モデル、即ち、MIのリスクへのアレルXの相加的寄与と一致している。
四つのすべてのコホートにおいて、MIの発症年齢に対するリスクアレルXの相関をさらに調べた。早期発症MI症例(男性については50歳及び女性については60歳前のMIイベントとして定義される)に分析が制限されるため、すべてのMI症例の1.214と比較して、合併コホートの相対リスクは1.331[CI:1.223−1.449;P=3.96x10-11;PAR=24.7%]に上昇した(表6c)。相当する遺伝子型相対リスクは、アレルXのヘテロ接合性及びホモ接合体キャリアについて、それぞれ、1.314[CI:1.105−1.562]及び1.790[CI:1.517−2.113]に増加した(表7b)。もしくは、重回帰を使用し、MI症例群の個体により運ばれているXのコピー数とMIの発症年齢間の相関を試験した(表8b)。四つすべてのコホートからの結果を合併すると、MI個体により運ばれているXの各コピーについて、平均発症年齢が0.95年[SE=0.25]低下することが観察された(P=0.000099)。アイスランド人及びEmory コホートにおいてマーカーD9S1870について同定された個体は、経皮的冠動脈形成術(PTCA)又は冠動脈バイパス手術(CABG)(両方とも重度の冠動脈疾患(CAD)を示す)を受けた個体である。もしこれらの個体が、対照と比較し、リスクアレルXの増加した頻度も有しているならば、該変異体は、単にMIよりも、より一般的な冠動脈疾患に個体をかかりやすくしていることが考えられる(表5a及びc)。両方のコホートにおいて、より強くはないにせよ、MIに類似したPTCA及びCABGについての増加したリスクが観察され、それはアイスランド人コホートにおいては非常に有意であったが、Emory コホートではPTCAへの関連性のみ有意であった。しかしながら、Emory コホートにおいては、PTCA及びCABGを有する個体の数が小さいことに注意するべきである。この関連性は、PTCA及びCABG群から既知のMI症例を除去した後でさえも、アイスランド人コホートでは保たれた(表5b)。
加えて、アイスランド人コホートにおいて、末梢動脈疾患(PAD)のような冠動脈疾患、及び梗塞又は一過性脳虚血発作(TIA)のような脳卒中表現型に関係する他の疾患との関連性を調べた。1661PAD症例について、非常に有意な関連性、P=5.36x10-5及びRR=1.154[CI:1.074−1.239]が観察された(表5a)−効果はいくらか弱かったが、この関連性は、PADコホートからMI症例を除去した後でも有意に保たれた(表5b)。梗塞又はTIAを有する1678個体について、Xへの有意な関連性は観察されなかったが、大血管疾患(LVD)(冠動脈疾患に最も密接に関係する脳卒中副表現型)と診断された個体については、もしMI症例を含ませる又は除外すると、それぞれ増加したリスク、RR=1.120又は1.172が観察された(表5a及びb)。しかしながら、アイスランド人コホートにおいてLVDと診断されたのは197個体のみであり、この関連性は統計的に有意ではない。
ステント内再狭窄の情報を有し及び変異体について遺伝子型同定された、454人のアイスランド人個体の群における、マーカーD9S1870の頻度を調べた。該コホートを重度のステント内再狭窄(50%又はより大きな)の個体、及び軽度のステント内再狭窄(50%未満)の個体に分割した。これらの個体すべてがPTCAを行っているので、そしてそれ故冠動脈疾患を有しており、両群とも、対照で観察される頻度よりも、変異体Xの有意に高い頻度を有する(表9a)。しかしながら、重度の再狭窄を有する個体の群における頻度は、軽度の再狭窄を有する群よりも高く、RR=1.067[0:0.827−1.376]、及びこの相違は有意ではなく(表9b)、このことは、PTを行った冠動脈疾患患者において、該変異体がステント内再狭窄の重症度示すことができることを示唆している。
実施例2
染色体9p21上の共通変異体が心筋梗塞のリスクに影響する
急性心筋梗塞(MI)を含む冠動脈疾患(CAD)は世界的に主要な死因である(Thorn, T., et al., Circularion 113:e85 (2006))。心臓疾患に内在する遺伝的構造の同定は、改善されたリスク評価及び予防及び治療のより良い尺度を提供することができる。
この目的のため、Illumina Hap300 チップを使用し、MIを有するアイスランド人患者についての全ゲノム関連性研究を実施した。質で選別後、男性で70前及び女性で75前の発症年齢を有する1607症例のサンプル及びCAD歴のない6728対照において、MIへの関連性について305,953SNPを試験した(Helgadottir, A., et al., Science 316:1491 (2007))。ゲノムコントロールの方法(3)を使用し、個体及び集団層別化の可能性間の関係性について結果を調整した。実施された試験の数について調整後は有意であるSNPはなかったが、有意に近いより多くのシグナルが偶然により予測されるよりも観察された。それ故、全ゲノム有意性に最も近いSNPをさらに探索した。
MIへの最も強い関連性が、各々、リスクアレルについて約1.22のオッズ比(OR)及びおよそ1x10-6のPで、三つの相関したSNPs、rs1333040、rs2383207及びrs10116277で観察された(表15)。三つ全てのSNPは、本明細書でLDブロックC09と表される染色体9p21上の連鎖不平衡(LD)ブロック内に位置している(図1)。これら3つのSNPから離れて、同じLDブロック中の11の他のSNPが名目上有意なMIへの関連性を示した。これらのSNPへの関連性は、上記三つのSNPへの関連性について計算した後は、より弱くなる傾向がある(表15)。調整後、少数が名目上の有意さを保ったが(P<0.05)、P<0.01を有するものはなかった。
観察された関連性を再現するため、追加の665アイスランド人MI症例及び3533対照において、及び米国からの三つの市:フィラデルフィア、アトランタ及びダラムからの、ヨーロッパ人家系の三つの症例−対照サンプルセットにおいて、三つのSNP、rs1333040、rs2383207及びrs10116277を遺伝子型同定した(2)。整合性のため、発見群と同一の発症年齢基準を関連性分析に使用した。MIとの関連性は、四つ全ての群において有意性を持って再現された(表16)。再現セットがマンテル・ヘンツェルモデル(Mantel, N. & Haenszel, J. Natl. Cancer Inst. 22:719 (1959))を使用して合併された場合、三つ全てのSNPは高度に有意なMIへの関連性(P<Ix10-8)を示し、ORはアイスランド人発見サンプルのORに匹敵した。全ての群が合併された場合、rs2383207が最も有意な関連性を示し(P=2.0x10-16)、リスクアレルGについて1.25(95%CI 1.18−1.31)のORを有していた。rs2383207及びrs10116277は高度に相関しており(r2=0.90)、それらの効果は、これらのデータにおいてはお互いに確実に区別することができないことが注目される。SNP rs1333040もrs2383207及びrs10116277と実質的に相関する(それぞれr2=0.57及び0.67)。この関連性シグナルをリファインする試みにおいて、Hapmap CEUデータに基づき、Illumina Hap300 チップの一部ではないrs2383207と実質的に相関している(r2>0.5)SNPを同定した。36のこうしたSNPの中で、遺伝子型同定されるべき八つを選択した。36のSNPの各々は該八つの一つであるか、又はそれらの中の非常に良好な代替物であった(r2 >0.90)(表21)。合併された全ての症例対照群からのデータでは、リファインメントSNP rs10757278のアレルGが疾患に対して最も強い関連性を示した(OR=1.28,P=1.2xl0-20;表12及び16)。さらに、rs10757278について調整後は、rs2383207はもはや有意ではなかった一方(P=0.25)、rs10757278はrs2383207について調整後も有意性を保った(P=2.0x10-5)。個々に試験された場合、疾患への非常に有意な関連性を示すこの領域中のSNPの中で、調整でもわずかに有意(P=0.044)であったリファインメントSNP rs13330406を除いて、rs10757278について調整後は、有意であったものはなかった(表22)。以後、提示を簡単にするため、主文においては最も有意なSNP rs10757278に焦点を合わせ、本領域中の他のSNPの追加の結果は表16〜20に提供されている。
遺伝様式をより詳細に調べるため、rs10757278についての遺伝子型特異的ORを計算した。非キャリアと比較した合併された全ての群からの結果では、該リスクアレルGのヘテロ接合性及びホモ接合体キャリアについてのORは、それぞれ1.26及び1.64であった(表13)。該アレルについての45.3%の頻度を仮定すると(アイスランド及び米国における頻度の平均)、対応するPARは21%である。
CADに対する遺伝的因子の影響が若い年齢でより大きなことが示されているので(5)、MIの発症年齢に対するrs10757278のアレルGの相関を調べた。この分析においては、それぞれ70歳又は75歳以後に発症した男性及び女性を含む、既知の発症年齢を有する全ての症例を使用したことに注意されたい。このことで、症例−対照分析に使用した群と比較して、総計で973症例が研究群に加わった。リスクアレルの数に発症年齢を回帰させると、リスクアレルの各コピーについて、MIの発症年齢は平均しておよそ1年減少したことを示した(P=2.9xl0-7)(表18)。もしくは、50歳前の男性及び60歳前の女性のMIと定義される早期発症MIに症例対照分析を限定することは、合併した全ての群におけるrs10757278GについてのアレルORを1.42(95%CI 1.31〜1.53)に増加させる(表19)。非キャリアと比較した、早期発症MIの遺伝子型特異的ORは、リスクアレルのヘテロ接合性及びホモ接合体キャリアについて、それぞれ1.49及び2.02である(表13)。
rs10757278のアレルGがMIに関連することが確立されたので、CADのより広い表現型に対するその影響を探求した(表14)。最初の全ゲノム研究における最も有意な変異体の選択から生じ得る偏向を除去するため、アイスランド人発見群(アイスランドA)からの症例及び対照はここでは含まれていない。もし後者が含まれていると、推定効果への変化は少ないであろうが、より大きなサンプルサイズのため結果はより有意になるであろうことに留意した。また、ダラムからの群はMIのないCAD症例を有していなかった。予想した通り、rs10757278は、高い有意性でCADに関連していた(合併群についてOR=1.29、P=3.6x10-14)。分析からMI症例を除去後、アイスランド及びアトランタからの群では関連性は有意なまま残ったが、フィラデルフィア群では残らなかった。三つの群からの合併結果は、1.24のORを与えた(P=0.000011)。
MIに関連した染色体9q21上の変異体は、CDKN2A及びCDKN2B遺伝子を含有するLDブロック中に位置する。p16INK4a、ARF及びp15INK4bと称される、これらの遺伝子によりコードされたタンパク質は、多くの細胞型における細胞増殖、細胞加齢/老化及びアポトーシスに決定的役割を有している(Kim, W. Y. & Sharpless, N. E. Cell 127:265 (2006))。これらは全て、MI及びCADに潜在する理由であるアテローム発生の重要な特色である(Lusis, A.J. Nature 407:233 (2000); Minamino, T. & Komuro, I. Circ Res 100:15 (2007))。エクソン、エクソン・イントロンジャンクション及びCDKN2A及びCDKN2Bの調節領域にわたった93人の早期発症MI患者の配列決定は、rs10757278への観察された関連性を説明できる機能性変異体又は他の変異体についての明白な候補を明らかにしなかった(表25及び26)。CDKN2A及びCDKN2B遺伝子に加えて、LDブロックはmRNA転写体AF109294の二つのエクソン、仮定上のメチルチオアデノシンホスホリラーゼ融合タンパク質mRNA及び多様な組織で発現されるいくつかのESTを含有する(Helgadottir, A., et al., Science 316:1491 (2007))。MI/CADへのこのゲノム領域の変異体の機能的関連性はまだ解明されていない。
要約すると、染色体9p21上の腫瘍抑制遺伝子CDKN2A及びCDKN2Bの近くに位置する共通遺伝子変異体がMIに関連することが示された。これは、ヨーロッパ人家系の複数の症例対照群においてMIの相当なリスク(OR>1.20)を一貫して与えることが発見された最初の共通変異体である。その高い頻度のため、該変異体の集団寄与リスクは、一般にMIについておよそ21%、及び早期発症症例についておよそ31%であり、公衆衛生の観点から相当なものである。しかしながら、相対リスクは極めて高くはなく、該疾患の家族性クラスター化のごくわずかのみを説明し、大きな連鎖スコアを発生しない。それ故に、他の感受性変異体はまだ同定されておらず、いくつかは全ゲノム連鎖スキャンで同定された候補領域中に位置する可能性がある(Zintzaras, E. & Kitsios, G., J Hum Genet 51:1015 (2006); Wang Q., et al., Am J Hum Genet 74:262 (2004); Samani, NJ., et al., Am J Hum Genet 77:1011 (2005))。ここで同定された変異体は、MIに対するそれらの影響に加え、一般にCADのリスクを増加できることを支持する証拠がある(さらなる探求を保証する観察結果)。遺伝子変異体がMIの病因にそれらの効果を発揮する機構は、まだ解明されていない。
実施例3
配列決定を通して同定された多型マーカーの遺伝子型同定
表25に示されたプライマーを使用する、CDKN2A及びCDKN2B遺伝子のエクソン、エクソン・イントロンジャンクション及び潜在的調節領域の配列決定は、表26に示されたように、多数のSNPの同定をもたらした。公開データベースでは見出すことができなかったSNPの三つについての隣接配列が表31に示されている。9番染色体のこの領域において、MIに関連していることが見出されたマーカーとLDにあるSNPマーカー又は他の多型は、より高いリスクとの関連性を示すことが可能であるので、表28に示したように、配列決定によりこれらの追加のマーカーの遺伝子型同定を行った。いくつかのマーカー、特にマーカーSG09S291及びrs2069416は、1.7〜1.8ほど高いRR値でMIへの関連性を示す。
実施例4
関連心臓血管障害との関連性
本明細書で示されたような、9番染色体上でシグナルを与えるマーカーの三つについて、関係する障害、末梢動脈疾患(PAD)、腹部大動脈瘤(AAA)及び大血管疾患脳卒中(LVD)に対する本発明のアットリスク変異体の関連性を調べた。表29に見ることができるように、これらのマーカーはこれらの関係する障害と関連している。該関連性はAAAについて特に有力であり、表30に示されたように、これら三つに加え、多数のマーカーについて有意な関連性が観察された。これらの結果は、本発明のマーカー及びハプロタイプが、実際、腹部大動脈瘤のような冠動脈疾患、MI及びステント内再狭窄に関係する障害を反映していることを例証している。
実施例5
動脈表現型AAA、IA及び脳卒中への関連性のさらなるリファインメント
他の循環器疾患に対するrs10757278の効果をより詳細に調べるため、腹部大動脈瘤(AAA)及び脳卒中への関連性をさらに探求し、動脈障害頭蓋内動脈瘤(IA)も調べた。
方法
研究集団
冠動脈疾患群
アイスランド及び米国からの冠動脈疾患群は上に記載されている(Helgadottir, A., et.al., Science 316:1491-3 (2007) も参照されたい)。
アイスランド人対照
本関連性研究に使用された14278アイスランド人対照は、種々のGWA研究に参加した、及びdeCODE での遺伝子プログラムの一部として集められた個体の中から選択された。対照の病歴は、対照対象がCVD遺伝子プログラム(即ち、MI、脳卒中、PAD、T2D、肥満、家族性家族性混合型脂質異常症、冠状動脈再狭窄、及び高血圧)の一つ又はそれ以上にも参加していない限り未知であった。既知のMI、脳卒中、PAD又はCAD、又はT2Dを有する個体は対照から除外された。14259対照の内9202は、我々の以前のMIにおけるGWA研究(Helgadottir, A., et.al., Science 316:1491-3 (2007))で使用された対照と重複する。本対照は5615人の男性及び8644人の女性を含み、平均年齢は55.2歳(SD 21.7)であった。種々の遺伝子プログラムへの対照群の分解はおおまかである(二つの変異体、rs10757278アレルG及びrs10811661アレルTの頻度で、括弧内):統合失調症500(0.428/0.825)、前立腺癌900(0.447/0.815)、乳癌1300(0.433/0.817)、結腸癌700(0.413/0.817)、依存症2600(0.4440.814)、不安症900(0.442/0.824)、感染性疾患1200(0.434/0.821)、集団対照700(0.427/0.830)、マイクロアレイ発現研究400(0.445/0.817)、寿命1100(0.450/0.819)、片頭痛1100(0.446/0.818)、下肢静止不能症候群400(0.439/0.812)、アルツハイマー病350(0.457/0.822)、喘息1300(0.419/0.819)、失読症600(0.438/0.830)。二つの変異体のいずれについても、疾患群間で頻度の有意な相違は観察されなかった(rs10757278及びrs10811661それぞれについて P=0.52及びP=0.99)。
脳卒中群
アイスランド人脳卒中患者は、1993年〜2002年の間にレイキャビークの主要病院、Landspitali University Hospital で虚血性脳梗塞又はTIAと診断された個体を含む4000個体以上の登録から集められた。脳卒中患者は、deCODE での循環器疾患(CVD)遺伝子プログラムを介して過去9年間にわたって登録されてきた。Karolinska University Hospital の脳卒中部又は脳卒中外来診察室、Huddinge 部、ストックホルム、スウェーデン、に通っている、虚血性脳梗塞又はTIAを有するスウェーデン人患者が、進行中の遺伝子疫学研究、南ストックホルム虚血性脳卒中研究(SSISS)の一環として1996年〜2002年に集められた。アイスランド及びスウェーデンからのすべての患者は、コンピューター断層撮影法(CT)又は/及び磁気共鳴イメージング(MRI)による脳イメージング、ならびに頚動脈及び椎骨動脈のデュプレックス超音波検査法を含む補助的な診断検査、心エコー、ホルター心電図、MR−血管造影、CT−血管造影及び標準血液検査を含む臨床的に関係する検査が実施されている。患者は、オリジナルのイメージング及びデータを検討した医師により、急性発作治療(TOAST)分類のTrial of Org 10172 に従って虚血性サブタイプに分類された(Adams, H. P. Jr., et al., Stroke 24:35-41 (1993))。心臓塞栓性脳卒中及び確認された心房細動を有する患者は分析から除外された。この研究で使用されたスウェーデン人対照は、患者と同一の中央スウェーデン地域から集められた(この地域の一般集団を代表する)、集団に基づいた対照である。個体は、正常基準集団を代表するため、Karolinska University Hospital のClinical Chemistry Department により集められた、供血者(2001年に集められた)か又は健常者(1990年〜1994年に集められた)であった。アイスランド及びスウェーデンからのこれらの脳卒中研究は、関連するInstitutional Review Boards 又は倫理委員会により承認され、全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを受けた。
頭蓋内動脈瘤群
アイスランド人IA患者は、その国において神経外科的なサービスを行っている唯一の病院であるLandspitali University Hospital での、1994年〜2006年の入院患者から同定された。1996年〜2006年の、ICDl0診断160.0−7(動脈瘤性くも膜下出血)、167.1(破裂した脳動脈瘤)及び169.0(くも膜下出血の後遺症)を有する全ての患者、ならびに、1994〜1996年の、ICD9診断430(破裂した脳動脈瘤からのくも膜下出血)を有する患者が登録された。これを総計すると367IA患者となる。全ての患者は頭のCTスキャン図及び/又は通常の脳血管造影図、CT血管造影図又はMRI血管造影図を含む、臨床的に関連した検査が実行されている。DNAサンプルは、367の内の170患者から入手可能であった。
University Medical Center Utrecht に入院した、破裂した(91.5%)又は破裂していない(8.5%)IAを有するオランダ人患者が本研究で使用された。破裂した頭蓋内動脈瘤は、CT上のくも膜下血と組み合わされたくも膜下出血(SAH)の示唆的症状及び血管造影(通常の血管造影図、CT−又はMR−血管造影図)で証明された動脈瘤により定義され、破裂していない頭蓋内動脈瘤は、CT又はMR血管造影又は通常の血管造影により同定された。多発性頭蓋内動脈瘤は、症例の20.5%で発見された。SAH時の平均年齢は、49.5歳(10〜84歳の範囲)であり、及び患者の66.1%は女性であった。対照は、ヨーロッパ人起源の健常オランダ人血液バンクドナーである。
頭蓋内動脈瘤の治療でフィンランドのUniversity Hospital of Kuopio 又はUniversity Hospital of Helsinki に運び込まれたフィンランド人IA患者を研究に使用した。この研究群及びフィンランド人対照は、以前に記載されている(Weinsheimer, S. et al., Stroke 38:2670-6 (2007))。
アイスランド人、オランダ人及びフィンランド人IA研究は、関連するInstitutional Review Boards又は倫理委員会により承認され、全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを受けた。
末梢動脈疾患群
PADを有するアイスランド人患者は、1983年〜2006年の間に、レイキャビークの主要病院Landspitali University HospitalでPADと診断された個体の登録から集められた。PAD診断は、血管イメージング又はセグメンタル血圧測定によって確認された。PAD患者は、deCODE でのCVD遺伝子プログラムの一環として過去9年間にわたって登録されてきた。
イタリア人患者及び対照は、2000年から2001年に、A. Gemelli University Hospital of Rome のDepartment of Internal Medicine and Angiology に連続して入院していた対象の中から集められた。PAD群の試験対象患者基準は、ヨーロッパ人家系及びPADの存在である。PADの診断は確立された基準(J Vasc Surg 4:80-94 (1986))に従って行われた。すべての患者は、0.8より低い足首/腕圧力指数であり、Fontaine ステージIIであり、間歇性跛行を有し、休息痛又は栄養性病変はなかった。対照群のための試験対象患者基準は、ヨーロッパ人家系、PAD及びCADがないこと、及び症例との非関連性である。追加の研究からの除外基準は、腫瘍、慢性炎症性疾患及び自己免疫疾患であった(Flex, A., et al., Eur J Vasc Endovasc Surg 24: 264-8 (2002) を参照されたい)。
スウェーデン人PAD患者及び対照は、三つのスウェーデンの最南端健康管理地区(2001年の居住者723,750人)において、重症肢虚血を有するすべての患者のためのただ一つの紹介センター、Malmo University Hospital のDepartment of Vascular Diseases で集められた。重症肢虚血の診断は、足関節血圧(<50〜70mmHg)、減少したつま先血圧(<30〜50mmHg)又は減少した経皮酸素圧により証明されたPADに起因する潰瘍、壊疽又は休息痛のTransAtlantic Inter-Society Consensus 科学的判断基準に従って行われた(Dormandy, J. A. & Rutherford, R.B., J Vasc Surg 31:S1-S296 (2000))。診断は、熟練した血管手術コンサルタント、及び非圧縮性であり及び足関節血圧が>50〜70mmHgである発症した脚の動脈を有する患者のつま先血圧測定により確認した。対照群は、予防医療プロジェクトのための健康スクリーニングプログラムに含まれた健常者から成っていた。いずれも症候性PADを有していなかった(Barani, J., et al., J Vasc Surg 42:75-80(2005))。
ニュージーランド人PAD患者は、その国のオタゴ南部領域から集められ、大多数(>97%)は以前に報告されているようにアングロ−ヨーロッパ人先祖を有していた(Jones G.T., et al., Clin Chem 53:679-85 (2007))。PADは、足関節上腕血圧比<0.7、脈容量記録及び血管造影/超音波イメージングによって確認された。対照群は、同じ地理的領域からの血管疾患非既往歴のない高齢個体から成っていた。対照は、PADについて無症候性のであり、上腕血圧指数>lを有する。腹部超音波スキャンで、PAD及び対照群の両方から同時発生的なAAAを除外した。
アイスランド人、イタリア人、スウェーデン人及びニュージーランド人PAD研究は、関連するInstitutional Review Boards又は倫理委員会により承認され、全ての参加者は、書面によるインフォームドコンセントを受けた。
腹部大動脈瘤群
AAAを有するアイスランド人患者は、症候性又は破裂したAAAの緊急修復のためか又は待機手術のために1980〜2005年にレイキャビーク、アイスランドのLandspitali, University Hospitalに行った個体の登録から集められた。AAAを有する対象は、deCODE でのCVD遺伝子プログラムの一環として過去9年間にわたって登録されてきた。いくつかの分析において、1981年〜2006年にアイスランドにおいて診断されたCAD患者の包括的リスト(Helgadottir, A., et.al., Science 316:1491-3 (2007))と重複するAAA症例は除外した。397人の(288人の男性及び109人の女性、平均年齢75.3歳(SD8.7))AAA症例内208人がCAD患者と重複した。CADで残った189人(131人の男性及び58人の女性、平均年齢75.5歳(SD9.3))の内、138症例は情報が入手不可能であり、51個体はCADと診断されていないとアンケートで答えた。
93の英国の病院で血管外科医に紹介された、AAAを有する英国人患者はUK Small Aneurysm Trial に登録された。本研究の目的のため、AAA直径4.0cm〜5.5cmを有するとUK Small Aneurysm Trialでのサーベイランスに無作為に選ばれた患者を患者群として選択したが、幾人かの患者は試行のため、動脈瘤が4.0cm閾値に達する前にモニターした。ベースラインでの平均AAA直径は4.5cm(3.2cm〜5.5cm)であった(Eriksson, P.,et al., Br J Surg 92:1372-6 (2005))。CAD発生の情報は、AAA症例の97%(479の内の466)について入手可能であった。CAD歴は、もし対象が狭心症について治療中であった、以前にMIを有していた、冠動脈バイパス術又は血管形成術を受けていたなら、又はもし、二人の独立した熟練観察者による判断によりECGコーディングが虚血のいずれかの徴候を有していたら、陽性とみなされた。この情報を有するものの中で、AAA対象内のCAD頻度は、52%であった。対照はヨーロッパ人家系であり、イングランドから集められた。
破裂したAAAの緊急修復か又は待機手術のため、ベルギーのUniversity Hospital of Liege 及びハリファックス、カナダのDalhousie University Hospital に行ったAAAを有するベルギー人及びカナダ人患者を本研究に使用した。これらの症例−対照セットの詳細は以前に報告されている(Ogata, T., et al., J Vasc Surg 41:1036-42 (2005))。すべての患者は、ヨーロッパ人家系であり、腎臓大動脈下直径は≧3cmを有していた。35人の患者は、超音波検査によりAAAと診断され、老齢のため又は動脈瘤が比較的小さかったので手術を受けなかった。AAA患者のおよそ40%は、AAAの家族歴を有していた。ベルギー人AAA患者についてのCAD歴の情報は、面接を通してならびに医療ファイルから手術を受けたものを確認した。加えて、すべての患者は、もしCADが疑われたら、経胸壁超音波検査、ストレステスト及び冠動脈造影のような心臓学的検査を受けた。この研究のためのCAD情報は、ベルギーからのAAA症例の45%(176の内の79)が入手可能であった。この情報を有するものの内、AAA対象中のCADの頻度は29%であった。ヨーロッパ人家系の対照サンプル(51%男性)は、AAA患者の配偶者から、又はAAA以外の理由で同じ病院に来院した個体から得られた。
AAAの待機又は緊急手術のためUniversity Hospital of Pittsburgh に来院した患者を本研究のために選択した(St Jean, P. L., et al., Ann Hum Genet 59:17-24 (1995))。CAD歴は自己申告であり、86%(101の内の87)が入手可能であった。この情報を有するものの内、AAA対象中のCADの頻度は48%であった。対照は、University of Pennsylvania Medical Center PhiladelphiaでのPENN CATH 研究プログラムの参加者から選択された。対照群は、冠動脈造影有意な管腔狭窄を有しない(50%未満の管腔狭窄)及びMI歴を有しない個体を意味した。これらは、ペンシルベニアからのCADサンプルについての関連性分析で使用された対照と同じ対照である(Helgadottir, A., et.al., Science 316:1491-3 (2007))。
AAAを有するニュージーランド人患者は、その国のオタゴ南部領域から集められ、大多数(>97%)は以前に報告したようにアングロ−ヨーロッパ人先祖である(Jones, G.T., et al., Clin Chem 53:679-85 (2007))。患者のおよそ80%は、AAA修復手術を受けた(典型的にはAAA>直径50mm)。対照は、ニュージーランド人PAD群との比較のために記載したような同じ血管疾患を有しない個体である。CAD情報は、AAA患者の98%(588の内の575)から入手可能であった。この情報を有するものの内、CADの頻度は40%であった。
オランダ人からのAAAサンプルセットは、ほとんど患者が血管外科医を訪れた時に、又は希な場合入院の間に、その国の八つのセンターから集められた。対照は、ヨーロッパ人起源の健常なオランダ人供血者であった。他のCVDの情報は自己申告であり、69%(480の内の330)について入手可能であった。狭心症の治療、以前のMI、冠動脈バイパス形成手術又はステント挿入はCADと考えられた。情報を有する330人の内、96人がCAD(29%)を有していた。
アイスランド、英国、ベルギー、カナダ、ペンシルベニア、オランダ及びニュージーランドからのこれらのAAA研究は、関連するInstitutional Review Boards 又は倫理委員会により承認され、全ての参加者は書面によるインフォームドコンセントを受けた。
SNP遺伝子型同定
全てのサンプルについてのSNP遺伝子型同定は、レイキャビーク、アイスランドのdeCODE genetics で行われた。個々のSNP遺伝子型同定は、Centaurus (Nanogen)婦ラットホームで実施された(Kutyavin、I.V.,et al.,nucleic acids Res 34:el28 (2006))。各CentaurusSNPアッセイの質は、CEU及び/又はYRI HapMapサンプルにおける各アッセイを遺伝子同定し及び結果をHapMapデータと比較することにより評価した。キーとなるマーカーrs10757278及びrs10811661は10%を超えるサンプルで再遺伝子同定し、ミスマッチは0.5%未満のサンプルで観察された。いくつかのサンプルについては、Illumina 317K Bead チップ又はCentaurus 法でSNP rs1333040、rs2383207及びrs10116277を遺伝子同定していた。これらのSNPはrs10757278と高度に相関しており(それぞれr2=0.57、0.87及び0.90、HapMap CEUデータセットにおいて)、失われた場合、rs10757278の遺伝子型を帰属させるために使用した。加えて、アイスランド人サンプルの多数のSNPについてSNP rs2383208(Illumina 317K Bead チップ上に存在している)は以前に遺伝子同定されている。このSNPは、SNP rs10811661の完全な代替物であり(r2=1 HapMap CEUデータセットにおいて)、rs10811661の遺伝子型を帰属するために使用した。
SNPは、分析に使用したいずれの研究コホートにおいてもハーディーワインベルグ平衡から逸脱しなかった。
関連性分析
NEMOソフトウェアーで実行される標準尤度比統計を使用し、両側p値及び各個々のアレルについてのオッズ比(OR)を計算し、リスクについての乗法モデルを仮定し、即ち、ヒトが運んでいる2つのアレルのリスクのかけ算をした。キャリア頻度よりむしろアレル頻度がマーカーについて、及び、アイスランド研究群について示されており、p値は、対象の関連性について補正した後に、以前に記載したように(Stefansson、H.,et al.,Nat Genet 37:129-37 (2005))708,683アイスランド人の家系を介して遺伝子型をシミュレートすることにより、与えられた。遺伝子型特異的ORを推定する場合(表34)、集団における遺伝子型頻度は、HWEを仮定して推定した。異質性検定は、種々の群についてのORの推定値は対数正規分布を有していることを仮定して実施した。尤度比カイ二乗検定を、関連した自由度が比較された群の数マイナス1に等しいとして使用した。
一般に、アレル/ハプロタイプ頻度は、最大尤度により推定し、症例及び対照間の相違の検定は、一般化尤度比検定を使用して実施した。この方法は、問題とするマーカーについていくつかの失われた遺伝子型がある状況において特に有用であり、問題とするマーカーと強いLDにある別のマーカーの遺伝子型が使用され、いくらかの部分情報を提供する。フェーズ及び失われた遺伝子型による不確定性を取り扱うため、最大尤度推定、尤度比及びp値は観察されたデータについて直接計算し、フェーズ及び失われた遺伝子型による不確定性による情報の損失は尤度比により自動的に捕捉した。
年齢及び性両方に対するrs10757278アレルG及びrs10811661アレルTTの相関をアイスランド人対照集団で試験した。アレルのいずれも、これらの共変量に有意な関連を示さなかった。加えて、AAA症例内においては、男女間の変異体の頻度に有意な相違は示されなかった(データは示されていない)。さらに、アイスランド人サンプル中のAAAに対するrs10757278アレルGの相関性分析における共変量として年齢及び性を含ませることは、結果に無視できる影響しか与えなかった。それ故、簡単にするため、関連性分析は年齢及び性についての調整なしで示されている。
AAAに対するrs10757278アレルGについて観察された関連性結果が集団層別化により影響される可能性を、英国人AAA症例及び対照について、WTCCCサンプルにおける地理的相違(Nature 447:661-78 (2007))についての強い証拠を示しているとして同定された13SNPを分類することにより追求した。それらSNPの一つのみが英国人AAA症例及び対照間に名目上の有意な相違を示し(P=0.017)、もし試験した13SNPで調整するならば、それは有意ではなかった。もし症例−対照分析においてこのSNPについて調整するならば、英国人症例−対照群のAAAに対に対するrs10757278アレルGの関連性は影響されない(P=0.0063及び/又は=1.35の代わりにP=0.0052及び/又は=1.36)。アイスランド人症例−対照分析において、研究個体の関係性について調整した。この調整は、アイスランド人集団における全ゲノム関連性研究の最近の論文(Steinthorsdottir, V., et al., Nat Genet 39:770-5 (2007); Gudmundsson, J. et al., Nat Genet 39:631-7 (2007))中の、いずれかの集団層別化についての調整を含むであろう、ゲノムコントロールに基づいた調整と非常によく一致していたことが示された。そして何よりも大切なことは、五つのAAAデータセットから得られた非常に類似したアレルオッズ比は、集団層別化が効果の推定に対して何らかの大きな影響を及ぼすことを非常にありそうもなくしている。
複数の症例−対照群からの結果をマンテル−ヘンツェルモデルを使用して合併し、そこで該群はアレル、ハプロタイプ及び遺伝子型について異なった集団頻度を有することが可能であったが、共通の相対リスクを有することが仮定されている(Mantel, N. & Haenszel, W. J Natl Cancer Inst 22: 719-48 (1959))。
結果
表32示にされた結果は、アイスランド人IAコホート、再現コホート及び該コホートについて合併された分析の結果を示している。研究された複数の症例−対照群からの結果がIA、AAA、PAD及びLAA/心原性脳卒中について別々に合併された場合、rs10757278アレルGは四つ全ての表現型に対して有意な関連性を示した。しかしながら、推定されたエフェクトサイズはかなり異なっており、AAA(合併分析、OR=1.31、P=1.2x10-12)及びIA(複合解析、OR=1.29、P=2.5x10-6)に対して最も強かった。高い全体的な統計的有意性に加え、IA及びAAAに対してrs10757278アレルGにより与えられた推定リスクは、アイスランド(OR=I.36)、フィンランド(OR=I.33)及びオランダ(OR=I.24)(Phet、不均質試験についてのP値=0.75)からの三つのIAサンプルセット、及びアイスランド(OR=1.37)、ベルギー(OR=I.21)、カナダ(OR=I.29)、ペンシルベニア US(OR=I.39)、連邦王国(英国)(OR=I.35)、オランダ(OR=I.31)及びニュージーランド(又は=I.25)(Phet=0.98)からの七つのAAAサンプルセットにわたって非常に類似していた。IA及びAAAに対するrs10757278アレルGの効果は、CADについて以前に報告されているものに匹敵している(Helgadottir,A.,et al. Science 316: 1491-3 (2007))(表32)。
AAA及びCAD間の高い共罹患率のため、CADの証拠を有する症例を除外した後、AAAについての関連性分析を繰り返すことにより、二つの条件に対する変異体の効果の性質を探究した。表33に示されたように、CADの証拠がないAAAに対するrs10757278アレルGの効果は、全サンプルセットに対するよりもほんのわずか小さく、又はアイスランドについてOR=I.3、英国について1.31、ペンシルベニアについて1.19、ベルギーについて1.20、オランダについて1.25及びニュージーランドサンプルセットについて1.18。入手可能なCAD情報を有する六つの異なった群については、既知のCAD症例を除外した後、合併したORは1.25及びP=3.0x10-6であり、AAAへの関連性は、単にrs10757278アレルG及びCAD間の関連性の結果ではないことを示している。知るところでは、IA及びCADの同時分離を示唆している文献では証拠はない。さらに、IAにおける性別比も、CADのようなアテローム硬化性疾患のものとは異なっている;IAは男性よりも女性において頻度が高く、そして発症のピークもCADがより若い年齢である(Schievink, W. I., N Engl J Med 336:28-40(1997))。IAに対するrs10757278アレルGの効果は、それ故、CADを介して仲介されない。
遺伝子型特異的効果が、七つ全てのAAA及び三つのIAサンプルセットからのデータに基づいて研究される場合、リスクアレルGのヘテロ接合性及びホモ接合性キャリアについてのORは、AAAについてそれぞれ1.36及び1.74、及びIAについてそれぞれ1.38及び1.72であると見積もられている(表34)。Gアレルについて47.5%の集団頻度を仮定すると、対応する集団寄与リスクは、AAA及びIAの両方について約26%である。rs10757278アレルGはIA又はAAAのリスクに影響すると記述された最初の共通配列変異体である。
AAAの有病率(>大動脈の直径3cmと定義される)は50歳以上の男性及び女性でそれぞれ4.3%及び1.0%であると報告されており(Lederle, F. A., et al, J Vasc Surg 34:122-6 (2001); Lederle, F.A:, et al. Arch Intern Med 160:1425-30(2000))、母集団の2〜5%がIAを有している(Brisman, J. L, et al., N Engl J Med 355:928-39 (2006))。AAA及びIAの両方とも、動脈の変性過程を示し、結果的に治療的介入か又は破裂となる自然経過を伴い、通常は無症候性である動脈の拡張を導く。IAの破裂はくも膜下出血を導き、そしてIA及びAAA両方の破裂は高い疾病率及び死亡率を有している(Brisman, J. L, et al., N Engl J Med 355:928-39 (2006); Thompson, R.w. Cardiovasc Surg 10: 389-94 (2002))。AAAの場合、破裂リスクは増殖速度ならびに動脈瘤のサイズとともに増加する。英国研究群からの患者は小さな無症候性動脈瘤(大動脈<直径5.5cm)を有する患者のみを含む一方、他の研究群は主として、動脈瘤修復を受けている患者を含み、そしてそれ故、大きな及び症候性動脈瘤(大動脈>直径5.5cm)に対するバイアスがかかりそうである。採用の相違にもかかわらず、ORは類似しており、該変異体は大動脈動脈瘤の増大の直接リスクは与えないことを示唆している。この概念を、英国からのサンプルセットにおいてさらに調査し、ここで小さな無症候性AAAを有する対象は、連続的大動脈動脈瘤サイズ測定で追跡されてきている(Eriksson, P. et al., Br J Surg 92:1372-6 (2005))。表35に示したように、rs10757278アレルGと動脈瘤増殖か又は破裂間の関連性の証拠はない。ホモ接合性GG群及びヘテロ接合性AG群の平均成長速度の相違は−0.46mm/年であり、名目上有意であり(P=0.05)、観察はさらなる調査を保証している。もし確認されたら、この逆の関連性は、より低い動脈瘤増殖速度が、全身性アテローム性動脈硬化のマーカーである低い足首/上腕圧力指数を有する患者で観察されたという以前の発見(Brady A. R., et al., irculation 110:16-21 (2004))に同調するであろう。これらのデータは、配列変異体は、急速な動脈瘤進行のリスクを増加させるというよりも、むしろ動脈瘤を発生させる増加した感受性を導くことを示唆している。
PAD及びLAA/心原性脳卒中のリスクに対するrs10757278アレルGの効果は、AAA、IA及びCADよりも弱いようである(表32)。アイスランド人サンプルにおいて、AAA及びIA症例間ではrs10757278アレルGの頻度に相違はなかったが、PAD及びLAA/心原性脳卒中症例の両方において、AAA及びIA症例の合併群よりも頻度は低かった(それぞれP=0.012及びP=0.052)。さらに、分析から既知のCADを有するPAD及びLAA/心原性脳卒中対象を除外した後は、特にPADにおいて効果はよりさらに減少した(表33)。
アフリカ系アメリカ人サンプルにおいて、LDブロックC09領域中のいくつかの変異体とMIとの関連性を試験した。表36に示された結果により示されるように、アフリカ系アメリカ人における効果は、相対リスクにより測定する場合、コーカサス人サンプルにおける効果に程度が匹敵している。多くのマーカーについての、アフリカ系アメリカ人サンプルにおける関連性の名目上の統計的有意性の欠如(0.05未満のP値)は、比較的小さなサンプルサイズによるものである。最も重要なことは、アフリカ系アメリカ人で観察された関連性は、コーカサス人について決定されたものに匹敵する日本及び韓国に由来するアジア人サンプルで報告されている関連性(Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2008 Feb; 28(2): 360-5. Epub 2007 Nov 29, 及び J Hum Genet. Epub 2008 Feb 9を参照されたい)と一緒になって、アイスランドからのコーカサス人サンプルにおいて最初に発見された遺伝的効果が、それ自身他のヒト集団に現れることを示している。該効果は、それ故、全ての主要なヒト集団において、循環器疾患と密接な関係を有する。
これらのデータは、rs10757278アレルGが、CADに対するよりもアテローム硬化性の疾患、PAD及びLAA/心原性脳卒中に対してはより小さな効果しか有していないことを示している。対照的に、二つの動脈瘤性疾患(アテローム性動脈硬化に弱い関連性を有するAAA及びこうした関係がないIA)に対する効果は、CADに対する効果に匹敵し、該変異体は、これらの動脈表現型に共通する病態生理学的構成要素において役割を果たしていることを示唆している。これには、CAD、AAA及びIAの病因の鍵と成るものとして同定されている異常血管リモデリング及び/又は修復(Chatzidisis, Y.S. et al., J Am Coll Cardiol 49:2379-93 (2007); Hashimoto, T. et al., Neurol Res 8:372-80(2006); Moore, J. E., Jr., et al, Atherosclerosis 110:225-40(2006))が含まれる。染色体9p21上の配列変異体rs10757278アレルG及び/又はrs10757278と連鎖不平衡にある変異体は、それ故、下腹部大動脈において、IAが発生するウィリス輪において、及び不安定で破裂を起こしやすいアテローム硬化性プラークを発生しやすい冠状動脈樹の領域においてよく発生する不利な条件に対する組織応答の遺伝的決定基として機能することができる。
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Claims (10)

  1. ヒト個体における動脈疾患に対する罹病性を決定するための方法であって、
    該個体から得られた核酸サンプル中又は該個体に由来する遺伝子型データセット中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含み、
    該少なくとも一つのアレルは、rs10757260のアレルA、rs7041637のアレルA、rs2811712のアレルA、rs3218018のアレルA、rs3217992のアレルA、rs2069426のアレルC、rs2069422のアレルA、rs2151280のアレルT、rs1333034のアレルA、rs1011970のアレルG、rs1333040のアレルT、rs10116277のアレルT、rs2383207のアレルG、rs10757278のアレルG、rs1333050のアレルT、rs10811650のアレルG、rs10738607のアレルG、rs4977574のアレルG、rs6475608のアレルG、rs1333045のアレルC、rs1333046のアレルA、rs1333048のアレルC、D9S1870のアレルX、又はD9S1814のアレル0から選択され、そして
    該少なくとも一つのアレルの存在は、動脈疾患に対する罹病性増加を示す、
    前記方法。
  2. 動脈疾患に関連する症状を予防するため及び/又は改善するための療法剤に対する応答の可能性について個体を評価する方法であって、
    該個体から得られた核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含み、
    該少なくとも一つのアレルは、rs10757260のアレルA、rs7041637のアレルA、rs2811712のアレルA、rs3218018のアレルA、rs3217992のアレルA、rs2069426のアレルC、rs2069422のアレルA、rs2151280のアレルT、rs1333034のアレルA、rs1011970のアレルG、rs1333040のアレルT、rs10116277のアレルT、rs2383207のアレルG、rs10757278のアレルG、rs1333050のアレルT、rs10811650のアレルG、rs10738607のアレルG、rs4977574のアレルG、rs6475608のアレルG、rs1333045のアレルC、rs1333046のアレルA、rs1333048のアレルC、D9S1870のアレルX、及びD9S1814のアレル0から成る群より選択され、そして
    該少なくとも一つのマーカーの少なくとも一つのアレルの存在は、療法剤への陽性応答の可能性を示す、
    前記方法。
  3. 動脈疾患と診断された個体の予後を予測する方法であって、
    該個体から得られた核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含み、
    該少なくとも一つのアレルは、rs10757260のアレルA、rs7041637のアレルA、rs2811712のアレルA、rs3218018のアレルA、rs3217992のアレルA、rs2069426のアレルC、rs2069422のアレルA、rs2151280のアレルT、rs1333034のアレルA、rs1011970のアレルG、rs1333040のアレルT、rs10116277のアレルT、rs2383207のアレルG、rs10757278のアレルG、rs1333050のアレルT、rs10811650のアレルG、rs10738607のアレルG、rs4977574のアレルG、rs6475608のアレルG、rs1333045のアレルC、rs1333046のアレルA、rs1333048のアレルC、D9S1870のアレルX、及びD9S1814のアレル0から成る群より選択され、そして
    該少なくとも一つのアレルの存在は、該個体の動脈疾患のより悪い予後を示す、
    前記方法。
  4. 動脈疾患について治療を受けている個体における、治療の進行のモニタリング法であって、
    該個体から得られた核酸サンプル中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルの存在又は不存在を決定することを含み、
    該少なくとも一つのアレルは、rs10757260のアレルA、rs7041637のアレルA、rs2811712のアレルA、rs3218018のアレルA、rs3217992のアレルA、rs2069426のアレルC、rs2069422のアレルA、rs2151280のアレルT、rs1333034のアレルA、rs1011970のアレルG、rs1333040のアレルT、rs10116277のアレルT、rs2383207のアレルG、rs10757278のアレルG、rs1333050のアレルT、rs10811650のアレルG、rs10738607のアレルG、rs4977574のアレルG、rs6475608のアレルG、rs1333045のアレルC、rs1333046のアレルA、rs1333048のアレルC、D9S1870のアレルX、又はD9S1814のアレル0から選択され、そして
    該少なくとも一つのアレルの存在は、該個体の治療結果を示す、
    前記方法。
  5. ヒト個体における動脈疾患についての遺伝的指標を決定するための装置であって;
    コンピューター可読メモリー;及び
    コンピューター可読メモリー上に保存されたルーチン;
    を含み;
    該ルーチンは、rs10757260のアレルA、rs7041637のアレルA、rs2811712のアレルA、rs3218018のアレルA、rs3217992のアレルA、rs2069426のアレルC、rs2069422のアレルA、rs2151280のアレルT、rs1333034のアレルA、rs1011970のアレルG、rs1333040のアレルT、rs10116277のアレルT、rs2383207のアレルG、rs10757278のアレルG、rs1333050のアレルT、rs10811650のアレルG、rs10738607のアレルG、rs4977574のアレルG、rs6475608のアレルG、rs1333045のアレルC、rs1333046のアレルA、rs1333048のアレルC、D9S1870のアレルX、又はD9S1814のアレル0より選択される少なくとも一つのアレルに関して少なくとも一人のヒト個体についてのマーカー及び/又はハプロタイプ情報を分析するためにプロセッサーで実行されるのに適合しており、そしてマーカー及び/又はハプロタイプ情報に基づいたアウトプットを発生し、
    該アウトプットは、少なくとも一つのアレルの存在に基づき、ヒト個体についての動脈疾患の遺伝的指標として動脈疾患のリスク増加のリスク尺度を含む、
    前記装置。
  6. 個体からのサンプル中の少なくとも一つのバイオマーカーを評価することをさらに含み、該バイオマーカーが、好ましくは心臓マーカー又は炎症マーカーであり、そしてより好ましくは、クレアチンキナーゼ、トロポニン、グリコーゲンホスホリラーゼ、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドA、フィブリノゲン、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、可溶性血管細胞接着分子(sVCAM)、可溶性脈管間の接着分子(sICAM)、E−セレクチン、マトリックスメタロプロテアーゼ1型、マトリックスメタロプロテアーゼ2型、マトリックスメタロプロテアーゼ3型、マトリックスメタロプロテアーゼ9型、血清sCD40L、ロイコトリエン、ロイコトリエン代謝物、インターロイキン−6、組織壊死因子アルファ、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びN−チロシンから選択されるバイオマーカーである、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. ヒト個体の動脈疾患に対する罹病性を評価するためのキットであって、
    個体のゲノム中の少なくとも一つの多型マーカーの少なくとも一つのアレルを選択的に検出するための試薬を含み、
    アレルは、rs10757260のアレルA、rs7041637のアレルA、rs2811712のアレルA、rs3218018のアレルA、rs3217992のアレルA、rs2069426のアレルC、rs2069422のアレルA、rs2151280のアレルT、rs1333034のアレルA、rs1011970のアレルG、rs1333040のアレルT、rs10116277のアレルT、rs2383207のアレルG、rs10757278のアレルG、rs1333050のアレルT、rs10811650のアレルG、rs10738607のアレルG、rs4977574のアレルG、rs6475608のアレルG、rs1333045のアレルC、rs1333046のアレルA、rs1333048のアレルC、D9S1870のアレルX、又はD9S1814のアレル0から選択され、
    該試薬は、該少なくとも一つの多型マーカーを含む該個体のゲノムの断片へハイブリダイズする少なくとも一つの近接するオリゴヌクレオチド、緩衝液、及び検出可能な標識を含み、そして
    該少なくとも一つのアレルの存在は、動脈疾患に対する罹病性を示す、
    前記キット。
  8. 該オリゴヌクレオチドが、約18〜約50ヌクレオチドの長さである、請求項に記載のキット。
  9. 該少なくとも一つのアレルが、rs1333040のアレルT、rs10757278のアレルG、及びrs2383207のアレルGから選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  10. 該少なくとも一つのアレルが、rs1333040のアレルT、rs10757278のアレルG、及びrs2383207のアレルGから選択される、請求項に記載の装置。
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