以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明の一実施形態に係る液体収納容器をインクカートリッジとして用いる印刷装置について、図1を参照して説明する。
(印刷装置の全体構成)
図1は本発明の一実施形態に係る液体収納容器をインクカートリッジとして用いる印刷装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側面図である。図1に示す本実施形態の印刷装置100は、インクジェット方式のラインカラープリンタであるものとする。印刷装置100は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の印刷用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
本実施形態において、上記インクヘッドは、用紙の搬送方向に沿って4つ並べて配置され、各色の画像を互いに重なり合うように用紙に印刷してカラー画像を形成する。印刷装置100の内部には、演算処理装置330が備えられており、この演算処理装置330によって、上述したインクヘッドによる印刷処理や、搬送機構の駆動制御の他、インクカートリッジからのインク供給に関する制御も行う。
この演算処理装置330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールである。演算処理装置330は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理装置330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
印刷装置100は、装置本体1の上面にインクカートリッジ200を取付けるカートリッジ取付機構30が設けられており、このカートリッジ取付機構30に対して上記各色のインクカートリッジ200が複数(ここでは、4本)配列されて装填される。このカートリッジ取付機構30にインクカートリッジ200の着脱機構であるホルダー部が水平方向(着脱操作方向D2)に向けられて設けられている。また、このカートリッジ取付機構30の上方を覆うように上面装置350が配設されており、インクカートリッジ200の装填は、この上面装置350の下面と装置本体1の上面との間に水平方向に挿入することにより行われる。この上面装置350には、例えば、シートフィーダーや操作パネルなどが配設される。
インクカートリッジ200は、印刷装置100に対して水平方向に着脱される扁平な直方体の外装箱(段ボール製の箱、図示せず)を有しており、その内部に、本発明の一実施形態に係る液体収納容器が、インクを収容する袋体として収容される。
(実施形態の液体収納容器の全体構成)
図2は図1のインクカートリッジ200に用いられる本発明の一実施形態に係る液体収納容器の可撓性袋体を示す斜視図、図3は同じく平面図である。図2に示すように、本実施形態の液体収納容器220は、矩形の可撓性袋体221と、可撓性袋体221の一辺に取り付けた導出部材230とを有している。
可撓性袋体221は、一対の可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを熱溶着により固着して構成した袋体であり、着脱操作方向D2に直交する可撓性袋体221の2つの短辺220c,220dのうち一方の短辺220cには、導出部材230が設けられている。
導出部材230は、可撓性袋体221の内部と外部を連通する導出口231を貫設した筒状の樹脂成型品であり、インク残量に応じた可撓性袋体221の膨らみ具合に関係なく導出口231が確保される剛性を有している。導出部材230の基端側の外周面は、図3に示すように、導出口231の貫通方向Xにおいて幅Waに亘り、可撓性フィルム220a,220bの短辺220cの外周縁どうしの間に挟み込んで隙間なく熱溶着されている。
導出部材230の先端側は可撓性袋体221の外方に突出しており、液体収納容器220を不図示の外装箱に収容した状態で、導出部材230は外装箱の外側に露出される。
ところで、可撓性袋体221の短辺220cにおいて、導出部材230を挟んで可撓性フィルム220a,220bどうしを熱溶着した外周縁部分では、可撓性フィルム220a,220bよりも剛性の高い導出部材230により強度が補強されるので、可撓性袋体221の変形時における破袋等に対する耐性が高い。
一方、導出部材230を挟まず可撓性フィルム220a,220bどうしを直接熱溶着した外周縁部分では、剛性の高い導出部材230による補強がないので、可撓性袋体221の変形時における破袋等に対する耐性が低い。
そこで、本実施形態の液体収納容器220では、可撓性袋体221の短辺220cにおいて、可撓性フィルム220a,220bどうしを直接熱溶着した外周縁部分を補強するために、可撓性袋体221の導出部材230を設けた短辺220cとこれに連なる2つの長側辺220e,220fとの各隅部に補強溶着部220g,220hを設けている。
この補強溶着部220g,220hは、図4に要部を拡大して示すように、導出部材230側の短辺220cと長側辺220e,220fとの隅部からそれぞれ適切な寸法ずつに亘って、可撓性フィルム220a,220bの外周縁の溶着幅を広くしている。具体的には、補強溶着部220g,220hは、可撓性袋体221の短辺220cと長側辺220e,220fを二片とし、可撓性袋体221の内側を第1内辺220i及び第2内辺220jで構成する台形状を呈している。各補強溶着部220g,220hでは、可撓性フィルム220a,220bどうしが直接熱溶着されている。
補強溶着部220g,220hの第1内辺220iは、可撓性袋体221の長側辺220e,220fと平行に延在する。また、第2内辺220jは、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から寸法Cだけ短辺220d側の箇所Eと、第1内辺220iの短辺220d側の端部とを接続する斜辺である。第1内辺220iと第2内辺220jとは曲線で接続されている。
補強溶着部220g,220hを設けた部分では、可撓性フィルム220a,220bの溶着幅が大きくなり、可撓性袋体221の変形による負荷に対する耐衝撃性が高くなる。したがって、可撓性袋体221の短辺220cにおいて、導出部材230を介さず可撓性フィルム220a,220bどうしを直接熱溶着した外周縁部分を、補強溶着部220g,220hによって補強し、損傷しにくいようにしている。
しかし、上述した液体収納容器220では、可撓性袋体221が変形して座屈すると、座屈箇所よりも短辺220d側、つまり、座屈箇所の下流側のインクが、座屈箇所を通過して導出口231側に移動できなくなる場合がある。このため、可撓性袋体221に形成する補強溶着部220g,220hは、可撓性袋体221に破袋が生じて内部のインクを印刷装置100に供給できなくなるのを防ぎ、かつ、導出口231へのインクの移動を阻害するような可撓性袋体221の座屈を防ぐものとする必要がある。
そこで、本実施形態の液体収納容器220では、以下に説明するように、可撓性袋体221の耐損傷(破袋)性と耐座屈性を考慮して、補強溶着部220g,220hの形状を決定している。
(耐破袋性を考慮した補強溶着部の構成)
まず、可撓性袋体221が破袋すると、内部のインクが漏出して印刷装置100に供給できなくなる。そこで、可撓性袋体221に耐破袋性を持たせることが重要である。
ところで、可撓性袋体221の破袋は、専ら、可撓性袋体221に加わった外力(振動や衝撃等)により内部のインクが移動した際に、可撓性フィルム220a,220bに大きな応力が集中して加わることで発生する。
そのため、可撓性袋体221の耐破袋性を向上させるには、可撓性袋体221内のインクの流動で大きな応力が集中して加わる箇所ができないように、可撓性袋体221の内部形状を設計することが有効である。
ここで、短辺220cの延在方向における可撓性袋体221の内寸Lは、補強溶着部220g,220hを設けた短辺220c側の方が、短辺220d側よりも短い。また、短辺220c側においても、第2内辺220jの部分よりも第1内辺220iの部分の方が、可撓性袋体221の内寸Lが短くなる。
このため、可撓性袋体221の内部でインクが移動する場合、短辺220d側のインクが補強溶着部220g,220hの間を通過するとインクの流体圧が上がり、さらに短辺220cに到達して進路を塞がれると、可撓性フィルム220a,220bがインクから大きな応力を受ける。この大きな応力について詳しく説明する。
両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分には、図4中に示すように、短辺220cの延在方向においてA′の寸法で、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを導出部材230を挟んで熱溶着した部分が存在する。
そして、本実施形態では、短辺220cの延在方向における導出部材230の寸法A′よりも両補強溶着部220g,220hの間隔Aが大きいので、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを導出部材230を挟んで熱溶着した部分の両側に、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分がさらに存在する。
導出部材230を挟んで可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを熱溶着した部分では、導出部材230の厚みの分だけ可撓性フィルム220a,220bが元々間隔を有している。したがって、可撓性袋体221の内部を移動したインクが短辺220cに流入しても、導出部材230を挟んで熱溶着した可撓性フィルム220a,220bの部分には大きな膨らみ変形が生じず、大きな応力が一箇所に集中して可撓性フィルム220a,220bに加わる傾向は低い。
一方、導出部材230を挟んで可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを熱溶着した部分の両側には、図4中に範囲Mで示す、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分が存在する。この部分Mにインクが流入すると、この部分Mよりも内側の部分の可撓性フィルム220a,220bが流入したインクによって離反する方向に押し広げられ、補強溶着部220g,220hとの境界部分に集中して応力が加わる。
そして、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した短辺220c部分(短辺220cのうち、両補強溶着部220g,220hの間隔Aの部分から導出部材230が存在する寸法A′の部分を除いた残りの部分)が広く存在するほど、この部分Mに流入するインクの量が多くなり、流入したインクによって可撓性フィルム220a,220bどうしが離反する方向に強く押し広げられる。これにより、補強溶着部220g,220hとの境界部分の可撓性フィルム220a,220bに集中して加わる応力も大きくなる。
そこで、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと短辺220cの延在方向における導出部材230の寸法A′との比A/A′(但し、A′≦A)を低くすることが好ましい。導出部材230の寸法A′は固定値であるので、比A/A′を低くすると言うことは、両補強溶着部220g,220hの間隔Aを、導出部材230の寸法A′に対してあまり大きくしないと言うことである。
両補強溶着部220g,220hの間隔Aが導出部材230の寸法A′に対してあまり大きくなければ、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを導出部材230を挟んで熱溶着した部分と補強溶着部220g,220hとの間に、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分Mがあまり存在しなくなる。
可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分Mの存在が少なければ、そこに流入するインクも少なくなるので、両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分に大きな応力が集中して加わるのを抑制するのに役立つことになる。
ところで、補強溶着部220g,220hが形成された部分における可撓性袋体221の短辺220cの延在方向における内寸Lは、補強溶着部220g,220hの第2内辺220jの付近では、短辺220cに近づくに連れて徐々に狭くなる。一方、第1内辺220iの付近では一定である。
このため、可撓性袋体221の内部でインクが短辺220cの両補強溶着部220g,220h間の部分に向けて移動する際、第2内辺220jの付近では内寸Lの減少によりインクの流体圧が上昇する傾向が強く、第1内辺220iの付近では流体摩擦によってインクの流体圧が低下する傾向が強い。
そこで、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法Bを長くすれば、可撓性袋体221の内部で移動し両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分に流入するインクの流体圧を低く抑えられる。流入するインクの流体圧が低ければ、流入したインクにより両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分に大きな応力が集中して加わるのを抑制するのに役立つことになる。
なお、第1内辺220iの寸法Bが長く、両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分に到達するインクの流体圧が低ければ、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと短辺220cの延在方向における導出部材230の寸法A′との比A/A′が多少高くても、全体として耐破袋性を確保できる場合がある。そこで、第1内辺220iの寸法Bは、比A/A′との関係で決定するのが好ましい。
詳しくは、上記比A/A′と第1内辺220iの寸法Bとの比(A/A′)/Bを低くして、両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分の応力に対する耐性とこの部分に到達したインクの流体圧とをバランスさせることが、両補強溶着部220g,220h間の短辺220c部分に流入したインクにより、上述した部分Mに大きな応力が集中して加わるのを抑制するのに役立つことになる。
なお、短辺220cの延在方向における導出部材230の寸法A′は、上述したように固定値である。そして、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aは、導出部材230を挟んで可撓性フィルム220a,220bを熱溶着した部分を含んでいる。
したがって、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aは、少なくとも導出部材230の寸法A′以上の寸法となり、このことから、比A/A′は「1」を最小値とする値となる。
そして、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′は、具体的には、
1≦A/A′≦1.6
とすることが好ましい。
また、比A/A′と第1内辺の寸法Bとの比(A/A′)/Bは、具体的には、
0<(A/A′)/B≦0.2
とすることが好ましい。比A/A′と比(A/A′)/Bを上述のような値とすることが好ましい理由については、後に詳しく説明する。
(耐座屈性を考慮した補強溶着部の構成)
次に、可撓性袋体221が座屈変形すると、可撓性袋体221内のインクの流動性が座屈箇所で阻害され、座屈箇所よりも短辺220d側のインクが座屈箇所を通過して導出口231側に移動できなくなる場合がある。
そして、インクカートリッジ200では、不図示の外装箱内の可撓性袋体221が外から見えないので、可撓性袋体221に座屈変形が起こってもそのまま放置される可能性がある。すると、座屈箇所の下流側のインクが可撓性袋体221内にまだ残っているのにインク切れとなってしまう。このため、可撓性袋体221に耐座屈性を持たせることも重要である。
ところで、可撓性袋体221の座屈は、可撓性袋体221に加わった外力(振動や衝撃等)により可撓性袋体221が変形することで発生する。そこで、可撓性袋体の耐座屈性を向上させるには、変形しにくい剛性を持つように可撓性袋体221を設計することが有効である。
ここで、可撓性袋体221の剛性は内部のインクによって補強される。そして、可撓性袋体221内のインクが可撓性袋体221の剛性を補強する程度は、可撓性袋体221の内寸Lの大小によって異なる。
例えば、長側辺220e,220fの延在方向における補強溶着部220g,220hよりも短辺220d側の部分は、可撓性袋体221の中で内寸Lが一番大きく、かつ、一定している。よって、この部分における可撓性袋体221の剛性は、インクによる補強分を含めて高い値で一定している。このように剛性が高く、かつ、一定している部分では、可撓性袋体221の座屈変形は相対的に発生しにくい。
一方、可撓性袋体221における補強溶着部220g,220hの第2内辺220jの部分では、短辺220cの延在方向における可撓性袋体221の内寸Lが短辺220cに近づくほど小さくなり、可撓性袋体221の剛性も短辺220cに近づくほど低くなる。また、補強溶着部220g,220hの第1内辺220iの部分では、内寸Lが可撓性袋体221の中で最も小さい寸法で一定しており、可撓性袋体221の剛性も最も低い強さで一定している。
可撓性袋体221の座屈変形は、可撓性袋体221の剛性が相対的に低い補強溶着部220g,220hの形成部分で発生しやすいが、その中でも、第1内辺220iの形成部分では、長側辺220e,220fの延在方向において剛性が一定しているので、座屈変形が比較的起こりにくい。可撓性袋体221の座屈変形は、専ら、可撓性袋体221の剛性が変化する第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所において起こりやすい。
図5(a)〜(c)は、可撓性袋体221が座屈変形する際の過程を示す説明図である。これらの図には、長側辺220e,220fの延在方向への荷重が加わった可撓性袋体221のうち、剛性が相対的に低い補強溶着部220g,220hの部分を拡大して示している。
可撓性袋体221に長側辺220e,220fの延在方向への荷重が加わると、補強溶着部220g,220hの部分において、まず、図5(a)に示すように、第1内辺220iと第2内辺220jの境界箇所Fを通る線上で屈曲変形が生じる。可撓性袋体221に加わる荷重が大きいと、補強溶着部220g,220hの屈曲変形は、図5(b)に示す、各補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと第2内辺220jの境界箇所Fどうしを結ぶ境界線Nにおいてさらに進行し、やがて、図5(c)に示すように、第1内辺220iと第2内辺220jとが境界箇所Fを境に可撓性袋体221の外側で折り重なる座屈変形状態に至る。
このような座屈変形が可撓性袋体221に生じると、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fが可撓性袋体221の内側に食い込む。そして、第2内辺220jとこれに連なる長側辺220e,220fとが折り重なり、これらに囲まれた空間のインクが、可撓性袋体221内を導出口231側に移動できなくなる。
そこで、図4に示す第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θを大きくすることが好ましい。第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θが大きくすると、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fにおいて、可撓性袋体221の内側の形状が直線に近づく。これにより、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fにおける可撓性袋体221の剛性変化が小さくなる。境界箇所Fにおける剛性変化が小さければ、各補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと第2内辺220jの境界箇所Fどうしを結ぶ境界線Nにおいて可撓性袋体221を座屈変形しにくくするのに役立つことになる。
また、両補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gでは、可撓性フィルム220a,220bが直接熱溶着された外周縁部分と、可撓性フィルム220a,220bの間に可撓性袋体221が形成された部分とが隣接し、可撓性袋体221内のインクにより剛性が補強される部分とそうでない部分とが隣接する。このように、第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gでも可撓性袋体221の剛性が変化するので、この接続箇所Gを境に可撓性袋体221が座屈しやすい。
但し、短辺220cには、可撓性フィルム220a,220bよりも剛性が高い導出部材230を挟んで可撓性フィルム220a,220bを熱溶着した部分が存在する。この部分が、第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gに近ければ、可撓性袋体221内のインクによって補強されない可撓性フィルム220a,220bの熱溶着部分の剛性が、導出部材230の剛性によって補強される。これにより、隣接する可撓性袋体221が形成された部分との剛性の差が少なくなり、第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gにおける剛性の変化が小さくなる。
そこで、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′を低くすることが好ましい。これにより、第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gが導出部材230に近づき、この接続箇所Gを境に可撓性袋体221の剛性が大きく変化しなくなる。このことが、外力により可撓性袋体221が第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gで座屈しにくくするのに役立つことになる。
そして、耐座屈性の観点からも、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′は、具体的には、
1≦A/A′≦1.6
とすることが好ましい。
なお、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θが180°以上であると、短辺220cの延在方向における可撓性袋体221の内寸Lが、両補強溶着部220g,220hの第2内辺220jの部分において、第1内辺220iの部分と同じかそれより短い寸法となる。
このことは、両補強溶着部220g,220hよりも短辺220d側の可撓性袋体221部分における内寸Lが、両補強溶着部220g,220hの第1内辺220iの部分における内寸L以下の寸法となることを意味する。このような可撓性袋体221の形状は、インクの収納可能容量の面から非効率的、かつ、非現実的な形状となる。
したがって、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θは、180°未満の値となる。
そして、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θは、具体的には、
147°≦θ<180°
とすることが好ましい。
以上の点を総合すると、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′が、
1≦A/A′≦1.6
この比A/A′と第1内辺220iの寸法Bとの比(A/A′)/Bが、
0<(A/A′)/B≦0.2
さらに、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θが、
147°≦θ<180°
となるように、各補強溶着部220g,220hの形状を決定することで、外力が加わっても破袋や座屈が生じにくい可撓性袋体221を構成することができる。
(実施形態の液体収納容器の作用、効果)
以上のようにして両補強溶着部220g,220hの形状を決定することで、本実施形態の液体収納容器220では、可撓性袋体221の破袋や座屈変形を抑制することができる。
なお、図4に示す、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cと第1内辺220iの寸法Bとの差分(C−B)を、補強溶着部220g,220hの形状を決定するのに際してさらに考慮しても良い。
ここで、寸法Cと第1内辺220iの寸法Bとの差分(C−B)は、長側辺220e,220fの延在方向における第2内辺220jの寸法である。また、補強溶着部220g,220hよりも短辺220d側の可撓性袋体221における内寸Lと、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aとの差分(L−A)は、各補強溶着部220g,220hにおける、短辺220cの延在方向における第2内辺220jの寸法成分を足した数である。
そして、両差分の余弦(tan((L−A)/(C−B))は、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θを180゜から差し引いた角度となる。したがって、寸法Cと寸法Bの差分(C−B)は、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θと同様に、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fにおいて可撓性袋体221を座屈変形しにくくする指標として用いることができる。
具体的には、寸法Cと寸法Bの差分(C−B)を大きくすることで、第2内辺220jの寸法Dを長くし、これにより、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θをできるだけ180゜に近づけて、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fにおいて可撓性袋体221を座屈変形しにくくすることができる。
(実施形態の可撓性袋体の評価試験)
以下、本実施形態の液体収納容器220の耐破袋性と耐座屈性の評価試験の結果について説明する。各評価試験は、段ボール製の外装箱(図示せず)に液体収納容器220を収容したインクカートリッジ200を用いて行った。
なお、いずれの試験に用いたインクカートリッジ200も、可撓性袋体221には、インクに代えてダミー液体としての水を1000ml充填した。また、いずれの試験に用いた可撓性袋体221も、補強溶着部220g,220hよりも短辺220d側の部分における可撓性袋体221の内寸Lを114mm、短辺220cの延在方向における導出部材(スパウト)230の寸法A′を34mmとした。
そして、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔A、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法B、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cをさまざまな値に変えて試験を行い、その結果を用いて液体収納容器220の耐破袋性と耐座屈性の評価を行った。
(耐破袋性の評価試験)
まず、耐破袋性の評価試験では、「1角3稜6面」の落下試験を行った。これは、評価対象物(例えば、立方体)の1つの角と、そこから延出する3本の稜線と、立方体の各面(全6面)とをそれぞれ下に向けて、評価対象物を落下させる試験で、ここでは、評価対象物であるインクカートリッジ200を200cmの高さから落下させた。そして、各落下の際に、可撓性袋体221に破袋が生じたか否かを確認した。その結果を示したのが、図6の説明図である。
なお、試験の結果可撓性袋体221の破袋が生じた箇所は、いずれも、先に説明した、短辺220cの両補強溶着部220g,220h間における可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分であった。
最初に、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを44mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法Bを5mm(比較例1)、10mm(実施例1)、17mm(実施例2〜4)にそれぞれ変えて、試験を行った。
特に、第1内辺220iの寸法Bが17mmである場合については、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cを60mm(実施例2)、70mm(実施例3)、80mm(実施例4)にそれぞれ変えて、試験を行った。
そして、第1内辺220iの寸法Bが5mm(比較例1)の場合には、可撓性袋体221に破袋が生じ、第1内辺220iの寸法Bが10mm(実施例1)の場合には、可撓性袋体221に破袋が生じなかった。
比較例1と実施例1のどちらも、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′は同じ値(=1.3)である。このため、比較例1では、この比A/A′に対して第1内辺220iの寸法Bが短すぎ、第1内辺220iの部分を通過した際に水の流体圧を十分に下げられなかったものと考えられる。その結果、短辺220cの両補強溶着部220g,220h間における可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分に、大きな応力が集中して加わり、可撓性袋体221の破袋に至ったものと思われる。
ちなみに、第1内辺220iの寸法Bを17mmに増やした場合については、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cを、実施例1の65mmよりも短い60mm(実施例2)に減らしたり、65mmよりも長い70mm(実施例3)や80mm(実施例4)に増やしたりした。しかし、いずれの場合も可撓性袋体221に破袋は生じなかった。
次に、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを54mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法Bを5mm(比較例2)、10mm(実施例5)、17mm(実施例6〜9)にそれぞれ変えて、試験を行った。
特に、第1内辺220iの寸法Bが17mmである場合については、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cを50mm(実施例6)、60mm(実施例7)、65mm(実施例8)、70mm(実施例9)、80mm(比較例3)にそれぞれ変えて、試験を行った。
そして、第1内辺220iの寸法Bが5mm(比較例2)の場合には、可撓性袋体221に破袋が生じ、第1内辺220iの寸法Bが10mm(実施例5)の場合には、可撓性袋体221に破袋が生じなかった。
比較例2と実施例5のどちらも、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′は同じ値(=1.6)である。このため、比較例2では、比A/A′に対して第1内辺220iの寸法Bが短すぎ、第1内辺220iの部分を通過した際に水の流体圧を十分に下げられなかったものと考えられる。その結果、短辺220cの両補強溶着部220g,220h間における可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分に、大きな応力が集中して加わり、可撓性袋体221の破袋に至ったものと思われる。
ちなみに、第1内辺220iの寸法Bを17mmに増やした場合については、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cを50mm(実施例6)に減らしたり、60mm(実施例7)のままとしたり、65mm(実施例8)、70mm(実施例9)、あるいは80mm(比較例3)に増やしたりした。この中で、80mmに増やした比較例3を除いた他の実施例6〜9では、いずれの場合も可撓性袋体221に破袋は生じなかった。
一方、寸法Cを80mmに増やした比較例3では、可撓性袋体221に破袋が生じた。但し、この場合は、寸法Cを増やした結果、可撓性袋体221に占める両補強溶着部220g,220hの面積が増えたため、1000mlの水を充填したことで可撓性袋体221の充填率が、寸法Cを70mm以下とした実施例6〜9に比べて高くなりすぎ、可撓性袋体221の耐破袋性が低下したものと考えられる。
実際、比較例3の可撓性袋体221に充填する水の量を、実施例6〜9と同じ充填率となるように減らした場合には、同じ条件で落下試験を行っても可撓性袋体221に破袋は生じなかった。
このため、比較例3で可撓性袋体221に破袋が生じた本質的な原因は、寸法Cの過剰な長寸法化にあり、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′や、第1内辺220iの寸法Bには、原因がないものと考えられる。
続いて、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを64mmとした場合について試験を行った。なお、間隔Aを64mmとすると、間隔Aを44mmや54mmとした場合よりも比A/A′の値が高くなる。比A/A′の値が高い場合、先に説明した試験結果の傾向から、第1内辺220iの寸法Bは大きい方が耐破袋性の面で有利と考えられる。そこで、両補強溶着部220g,220hの間隔Aを64mmとした場合については、第1内辺220iの寸法Bを一番長い17mmとして(比較例4)、試験を行った。
その結果、比較例4では、可撓性袋体221に破袋が生じた。この破袋は、比A/A′の値が高くなりすぎた結果、短辺220cの両補強溶着部220g,220h間における可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分が広くなったことが原因であるものと考えられる。即ち、落下の衝撃でここに多くの水が流入して大きな応力が集中して加わり、可撓性袋体221の破袋に至ったものと思われる。
以上の実施例1〜9と比較例1〜4の試験結果から、比A/A′は、
1≦A/A′≦1.6
とすることが好ましく、比A/A′と第1内辺220iの寸法Bとの比(A/A′)/Bは、
0<(A/A′)/B≦0.2
とすることが好ましいことがわかった。
(耐座屈性の評価試験)
次に、耐座屈性の評価試験では、インクカートリッジ200の外装箱から露出させた導出部材230側を下に向けて、インクカートリッジ200を20cmの高さから落下させた。そして、各落下の際に、可撓性袋体221に座屈が生じたか否かを確認した。その結果を示したのが、図7の説明図である。
なお、試験の結果可撓性袋体221の座屈が生じた箇所は、後述する比較例8を除いて、各補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと第2内辺220jの境界箇所F(図5(a)〜(c)参照)を通る境界線N(図4及び図5(b)参照)上である。
最初に、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを44mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法Bを5mm(実施例10(耐破袋性試験の比較例1と同一パラメータの試験パターン))、10mm(実施例11(耐破袋性試験の実施例1と同一パラメータの試験パターン))、17mm(比較例5、実施例12〜13)にそれぞれ変えて、試験を行った。
特に、第1内辺220iの寸法Bが17mmである場合については、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cを60mm(比較例5(耐破袋性試験の実施例2と同一パラメータの試験パターン))、70mm(実施例12(耐破袋性試験の実施例3と同一パラメータの試験パターン))、80mm(実施例13(耐破袋性試験の実施例4と同一パラメータの試験パターン))にそれぞれ変えて、試験を行った。
そして、第1内辺220iの寸法Bが17mmでかつ寸法Cが60mm(比較例5)の場合には、可撓性袋体221に座屈が生じ、第1内辺220iの寸法Bが5mm(実施例10)、10mm(実施例11)の場合と、寸法Bが17mmでかつ寸法Cが70mm(実施例12)や80mm(実施例13)の場合には、可撓性袋体221に座屈が生じなかった。
この結果から、比較例5では、補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θが小さすぎ、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fにおける可撓性袋体221の剛性変化が大きくなって、境界箇所Fにおいて可撓性袋体221が座屈変形しやすくなったものと思われる。
次に、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを54mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法Bを5mm(実施例14(破袋性試験の比較例2)、10mm(実施例15(破袋性試験の実施例5と同一パラメータの試験パターン))、17mm(比較例6〜7、実施例16〜18)にそれぞれ変えて、試験を行った。
特に、第1内辺220iの寸法Bが17mmである場合については、短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から第2内辺220jと長側辺220e,220fとの接続箇所Eまでの寸法Cを50mm(比較例6(破袋性試験の実施例5と同一パラメータの試験パターン))、60mm(比較例7(破袋性試験の実施例7と同一パラメータの試験パターン))、65mm(実施例16(破袋性試験の実施例8と同一パラメータの試験パターン))、70mm(実施例17(破袋性試験の実施例9と同一パラメータの試験パターン))、80mm(実施例18(破袋性試験の比較例3と同一パラメータの試験パターン))にそれぞれ変えて、試験を行った。
そして、第1内辺220iの寸法Bが17mmでかつ寸法Cが50mm(比較例6)や60mm(比較例7)の場合には、可撓性袋体221に座屈が生じ、第1内辺220iの寸法Bが5mm(実施例14)、10mm(実施例15)の場合と、寸法Bが17mmでかつ寸法Cが65mm(実施例16)、70mm(実施例17)、80mm(実施例18)の場合には、可撓性袋体221に座屈が生じなかった。
この結果から、比較例6〜7では、補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θが小さすぎ、第1内辺220iと第2内辺220jとの境界箇所Fにおける可撓性袋体221の剛性変化が大きくなって、境界箇所Fにおいて可撓性袋体221が座屈変形しやすくなったものと思われる。
続いて、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを64mmとした場合について試験を行った。なお、先に説明した試験結果の傾向から、補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θが大きい方が耐座屈性の面で有利と考えられる。そこで、両補強溶着部220g,220hの間隔Aを64mmとした場合については、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θを、実施例10〜18中の最大値である155°として(比較例8(破袋性試験の比較例4と同一パラメータの試験パターン))、試験を行った。
その結果、比較例8では、可撓性袋体221の、各補強溶着部220g,220hの第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gに座屈が生じた。この座屈は、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′の値が高くなりすぎた結果、短辺220cの両補強溶着部220g,220h間における可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分が広くなったことが原因であるものと考えられる。
即ち、比較例8では、導出部材230を挟んで可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを熱溶着した部分よりも剛性が低い、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分が、短辺220c上に広く存在するようになった。このため、短辺220cの各補強溶着部220g,220hが形成された部分と、これに隣接する、可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分との間で、可撓性袋体221の剛性が大きく変化するようになり、第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gを境に可撓性袋体221が座屈変形しやすくなったものと思われる。
このように、比較例8では、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θを、可撓性袋体221に座屈が生じなかった実施例10〜18中の最大値である155°としているにも拘わらず、第1内辺220iと短辺220cとの接続箇所Gに座屈が生じた。そのため、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θによってこの比較例8を、各補強溶着部220g,220hの許容される設計パターンから除外することはできない。
しかし、先に説明した耐破袋性の試験結果から、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aと導出部材230の寸法A′との比A/A′を、
1≦A/A′≦1.6
とすることで、比較例8(破袋性試験の比較例4)を、各補強溶着部220g,220hの許容される設計パターンから除外することができる。
以上の実施例10〜18と比較例5〜8の試験結果からも、比A/A′は、
1≦A/A′≦1.6
とすることが好ましく、また、この試験結果から、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θは、
147°≦θ<180°
とすることが好ましいことがわかった。
なお、比A/A′の下限が1であるのは、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220g,220hの間隔Aを、導出部材230の寸法A′よりも短くすることが構造上不可能であるからである。また、第1内辺220iと第2内辺220jとのなす角度θの上限が180゜であるのは、第1内辺220iと第2内辺220jとを直線に近づけるほど、可撓性袋体221の内側と補強溶着部220g,220hとの境界部分の剛性が高くなり、可撓性袋体221の耐座屈性において有利になるからである。
(参考例の液体収納容器の全体構成)
上述した実施形態では、可撓性袋体221の両補強溶着部220g,220hを台形状としたが、図8の説明図に示すように、第1内辺220i及び第2内辺220jを直線状として直角三角形状の補強溶着部220k,220lに変えることで、可撓性袋体221Aを、インクの収納容量を増やした構造とすることもできる。
具体的には、可撓性袋体221Aの短辺220cの熱溶着された外周縁の内側から寸法Hだけ短辺220d側の箇所Jと、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔Aの両端の箇所Kとを、直線状の内辺220mで接続して各補強溶着部220k,220lを構成している。なお、図8では、可撓性袋体221Aの短辺220d側の図示を省略している。
この参考例の液体収納容器220Aでは、接続箇所Jにおける可撓性袋体221Aの長側辺220e,220fと各補強溶着部220k,220lの内辺220mとのなす角度θ′と、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔Aと短辺220cの延在方向における導出部材230の寸法A′との比A/A′と、長側辺220e,220fの延在方向における内辺220mの寸法Hとを、適切な値に設定することで、可撓性袋体221Aの耐破袋性と耐座屈性とを確保することができる。
(参考例の可撓性袋体の評価試験)
以下、本参考例の可撓性袋体221Aの耐破袋性と耐座屈性の評価試験の結果について説明する。各評価試験は、段ボール製の外装箱(図示せず)に液体収納容器220Aを収容したインクカートリッジ200を用いて行った。
なお、いずれの試験に用いたインクカートリッジ200も、可撓性袋体221Aには、インクに代えてダミー液体としての水を1000ml充填した。また、いずれの試験に用いた可撓性袋体221Aも、補強溶着部220k,220lよりも短辺220d側の部分における可撓性袋体221Aの内寸Lを114mm、短辺220cの延在方向における導出部材(スパウト)230の寸法A′を34mmとした。
そして、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔A、長側辺220e,220fの延在方向における内辺220mの寸法H、長側辺220e,220fと各補強溶着部220k,220lの内辺220mとのなす角度θ′をさまざまな値に変えて試験を行い、その結果を用いて液体収納容器220Aの耐破袋性と耐座屈性の評価を行った。
(耐破袋性と耐座屈性の評価試験)
まず、耐破袋性の評価試験では、「1角3稜6面」の落下試験を行った。ここでは、インクカートリッジ200を200cmの高さから落下させた。そして、各落下の際に、参考例の可撓性袋体221Aに破袋が生じたか否かを確認した。
また、耐破袋性の評価試験では、インクカートリッジ200の外装箱から露出させた導出部材230側を下に向けて、インクカートリッジ200を20cmの高さから落下させた。そして、各落下の際に、可撓性袋体221Aに座屈が生じたか否かを確認した。
そして、耐破袋性と耐座屈性の評価試験の結果を示したのが、図9の説明図である。
なお、試験の結果可撓性袋体221Aの破袋が生じた箇所は、いずれも、短辺220cと内辺220mとの接続箇所K(図8参照)であった。
最初に、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔Aを39mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における内辺220mの寸法Hを67mm(参考例1)、72mm(参考例2)、90mm(実施例3)にそれぞれ変えて、試験を行った。そして、これらのいずれの場合にも、可撓性袋体221Aに破袋と座屈はどちらも生じなかった。
また、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔Aを41mmとした場合についても、長側辺220e,220fの延在方向における内辺220mの寸法Hを72mm(参考例4)として試験を行った。その結果、この場合にも可撓性袋体221Aに破袋や座屈は生じなかった。
一方、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔Aを39mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における内辺220mの寸法Hを63mm(比較例9)に変えると、可撓性袋体221Aに座屈は生じなかったものの破袋が生じた。
この比較例9では、比A/A′に対して内辺220mの寸法Iが短すぎ、内辺220mの部分を通過した際に水の流体圧を十分に下げられなかったものと考えられる。その結果、短辺220cの両補強溶着部220k,220l間における可撓性フィルム220a,220bの外周縁どうしを直接熱溶着した部分に、大きな応力が集中して加わり、可撓性袋体221Aの破袋に至ったものと思われる。
次に、短辺220cの延在方向における両補強溶着部220k,220lの間隔Aを44mmとした場合について、長側辺220e,220fの延在方向における第1内辺220iの寸法Hを63mm(比較例10)、72mm(比較例11)、81mm(比較例12)にそれぞれ変えて、試験を行った。そして、いずれの比較例10〜12の場合にも、可撓性袋体221に座屈が生じ、比較例10においては破袋も生じた。
そして、比較例10では、比A/A′に対して内辺220mの寸法Iが短すぎ、比較例9と同じ原因で、可撓性袋体221Aの破袋に至ったものと思われる。また、比較例10〜12では、比A/A′の値が高くなりすぎた結果、各補強溶着部220k,220lの内辺220mの部分における可撓性袋体221Aの剛性変化が大きくなって、内辺220mの部分において可撓性袋体221Aが座屈変形しやすくなったものと思われる。
以上の参考例1〜4と比較例9〜12の試験結果から、比A/A′は、
1≦A/A′≦1.2
とすることが好ましく、長側辺220e,220fの延在方向における内辺220mの寸法Hは、
65≦H(単位mm)
とすることが好ましく、長側辺220e,220fと各補強溶着部220k,220lの内辺220mとのなす角度θ′は、
153°≦θ′
とすることが好ましいことがわかった。
なお、上述した実施形態においては、印刷装置100のインクカートリッジ200に本発明の液体収納容器を適用した場合について説明したが、例えば、シャンプーの詰め替え液用の容器等、本発明が適用される液体収納容器は印刷装置のインクカートリッジに限らず任意である。