JP5644988B2 - エタノール発酵性ヘテロタリズム酵母 - Google Patents

エタノール発酵性ヘテロタリズム酵母 Download PDF

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Description

本発明は、エタノール発酵性ヘテロタリズム酵母に関する。より詳細には、本発明は、高胞子形成率および高発芽率を特徴とするエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母に関する。さらに本発明は、高胞子形成率および高発芽率に加えて、耐熱性および耐酸性を特徴とするエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母に関する。
枯渇しつつある石油に代わる代替燃料として、エタノールが注目を浴びている。エタノール生産方法は、主として化学的生産法と生物学的生産法に大別することができ、後者の生物学的生産法としては酵母を生物触媒に用いたエタノール発酵法が広く利用されている。
酵母は、単細胞性の真核微生物で、出芽または分裂によって増殖する。増殖した酵母細胞は、完全に分離せず、互いに接着してブドウ状または樹枝状を呈する場合もある。大部分の酵母は子嚢菌門に属しており、2種の一倍体の細胞が融合して二倍体の細胞になる。これを、「接合」という。接合により二倍体になった酵母細胞は、減数分裂によって細胞内に胞子を形成し得る。
酵母は、接合型により、ホモタリズム酵母とヘテロタリズム酵母の2種に分類できる。図1に示した通り、HO遺伝子をもつホモタリズム二倍体酵母は、接合型がMATa/MATαであり、胞子形成を促すことによりHO MATa型およびHO MATα型の胞子を2対2の割合で合計4胞子に分離する。
HO MATa型胞子を成育・発芽させると、娘細胞は、HO遺伝子産物であるエンドヌクレアーゼの働きにより接合型がMATaからMATαに変換される。そうすると、親であるHO MATa型細胞と娘であるHO MATα型細胞との間で接合が生じ、二倍体のMATa/MATα型細胞となる。同様のことがHO MATα型胞子を成育させたHO MATα型細胞にも起こり、親であるHO MATα型細胞と、娘であり接合変換されたHO MATa型細胞との間で接合が生じ、二倍体MATα/MATa型細胞となる。
したがって、ホモタリズム酵母は、MATaまたはMATαという接合型の相違以外は同じ遺伝子構成をしており、胞子の単離培養によって胞子形成能をもつクローンとして増殖させることができるという特徴を有している。ホモタリズム酵母は、この特徴により工業用酵母として一般的に利用されている。そのような酵母としてSaccharomyces cerevisiae KF7(サッカロミセス・セルビシエ KF7)株があり、この株を用いてエタノール生産がなされたことがこれまでに報告されている(非特許文献1〜3)。
一方、図2に示した通り、ho遺伝子をもつヘテロタリズム酵母は、一倍体のho MATa型細胞と一倍体のho MATα型細胞とが接合して二倍体になり、さらに胞子形成を促すことによりho MATa型およびho MATα型の胞子を2対2の割合で合計4胞子に分離する。しかし、ホモタリズム酵母と違い、ho MATa型またはho MATα型の各胞子を単離培養しても、娘細胞の接合変換が起こらず、各胞子から成育した細胞は、胞子形成能を有さない一倍体のクローンとして増殖する。したがって、ho MATa型の酵母とho MATα型の酵母は、接合させることによりはじめて胞子を形成することができるようになるため、接合させる細胞を代えることによって種々の遺伝子構成を持つ酵母を作製することが可能になる。
例えば、図2に示すとおり、耐酸性の遺伝子Aを有するho MATa型酵母と、耐熱性の遺伝子Bを有するho MATα型酵母を接合させて胞子を形成させると、染色体の自由分配から、親型:テトラ型:非親型が1:4:1の割合で生じる。この時、耐熱性で耐酸性の性質を併せ持つ酵母(遺伝子Aと遺伝子Bを併せ持つ酵母)は、1/4の確率で生じることになる。遺伝子操作によらない、上記した接合による育種により所望の性質を示す細胞を得ることは、事前に耐熱性遺伝子Aや耐酸性遺伝子Bを特定できていない場合に特に有用であった。
K.Kidaら、 (1992)、 Journal of Fermentation and Bioengineering、 Vol. 74、 No. 3、 p.169-173 木田建次ら、(1995)、生物工学会誌、73巻、第2号、109-112 K.Kidaら、(1995)、Journal of Fermentation and Bioengineering、Vol.80、 No.2、 p.204-207
ホモタリズム酵母は、接合型以外は同じ遺伝子構成を有する。したがって、例えば、環境適応性を向上させるなどの所望の性質を示す酵母にするために、ホモタリズム酵母を掛け合わせによって育種することは困難である。それに対して、ヘテロタリズム酵母は接合させる細胞を代えることによって種々の遺伝子構成を持つ酵母を作製することを可能とするので、エタノール発酵性のホモタリズム酵母をヘテロタリズム酵母にすることができれば、エタノール発酵性に所望の性質を加えたより有用な酵母を作製することが可能となる。しかし、これまでに、エタノール発酵性ホモタリズム酵母からヘテロタリズム酵母を得ることは困難である。
したがって、本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。すなわち、本発明は、エタノール発酵性ホモタリズム酵母から得たエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母を提供することを解決すべき課題とした。
さらに本発明は、エタノール発酵性だけでなく、所望の性質、具体的には耐熱性および耐酸性を備えたエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エタノール発酵性ホモタリズム酵母からヘテロタリズム酵母を得ることは、ホモタリズム酵母の(1)接合能が低い、(2)胞子形成率が低い、および(3)発芽率が低いという点から困難であることを見出した。そこで、本発明者らは、工業的なエタノール発酵に有利なホモタリズム酵母KF7(Journal of Fermentation and Bioengineering, 1992, Vol.74, No.3, 169-173)を用いて高度かつ多段階の分離段階を経ることにより、エタノール発酵性ヘテロタリズム酵母を取得することに成功した。
すなわち、本発明によれば、下記[a]〜[e]の特徴を有する酵母が提供される。
[a]エタノール発酵性である。
[b]ヘテロタリズムである。
[c]胞子形成培地上での胞子形成率が0.5%以上である。
[d]YPD固形培地上での発芽率が50%以上である。
[e]YPD液体培地(pH 3.5)における35℃の温度条件下での比増殖速度は、0.1〜0.7h-1である。
好ましくは、本発明の酵母は、さらに下記[f]の特徴を有する。
[f]二倍体を目視で単離できる。
好ましくは、本発明の酵母は、さらに下記[g]の特徴を有する。
[g]形質転換能を有する。
好ましくは、本発明の酵母は、胞子形成率が2%以上、より好ましくは5%以上である。
好ましくは、本発明の酵母は、発芽率が80%以上、より好ましくは90%以上である。
好ましくは、本発明の酵母は、サッカロミセス・セルビシエに属し、より好ましくは受託番号FERM P−21478、FERM P−21479およびFERM P−21480からなる群から選ばれる酵母である。
本発明のエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母は、接合能、胞子形成率および発芽率が高く、さらに種々の性質を持つ異なる接合型の酵母と掛け合わせることができるので、エタノール発酵性だけなく所望の性質を示す種々の酵母を作製することを可能にする。さらに、本発明の耐熱性および耐酸性を併せ持つエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母を用いれば、酸性および高温条件下でのエタノール生産を可能にし、例えば、都市型バイオマスである家庭系生ごみに乳酸菌を噴霧して腐敗を防ぎつつ、エタノール・メタン二段発酵により効率的に燃料用エタノールを製造することができ、バイオマス利用型エタノール生産の実現に大いに貢献することができる。さらに本発明の酵母は、形質転換能力を兼ね備えており、掛け合わせによる育種以外にも通常の遺伝子操作も可能とする。したがって、乳酸を取り込んで発酵する、とか、キシロースおよびグルコースを同時発酵できる酵母の育種が可能となる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の酵母は、下記[a]〜[e]、好ましくは下記[a]〜[f]、より好ましくは下記[a]〜[g]の特徴を有する酵母である。
[a]エタノール発酵性である。
[b]ヘテロタリズムである。
[c]胞子形成培地上での胞子形成率が0.5%以上である。
[d]YPD固形培地上での発芽率が50%以上である。
[e]YPD液体培地(pH 3.5)における35℃の温度条件下での比増殖速度は、0.1〜0.7h-1である。
[f]二倍体を目視で単離できる。
[g]形質転換能を有する。
本明細書にいう「酵母」とは、本明細書において挙げた特徴を有する酵母であれば特に制限されず、例えば、子嚢菌門におけるSaccharomyces属 、Candida属、Torulopsis属、Zygosaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Pichia属、Yarrowia属、Hansenula属、Kluyveromyces属、Debaryomyces属、Geotrichum属、Wickerhamia属、Fellomyces属、Sporobolomyces属、好ましくはSaccharomyces(サッカロミセス)属、より好ましくはSaccharomyces cerevisiae(サッカロミセス・セルビシエ)である。
本明細書にいう「エタノール発酵性」とは、炭水化物および糖類(好ましくは、グルコース)などの炭素源から好気的または嫌気的にエタノールを生産することができる触媒作用を意味する。
本明細書にいう「ヘテロタリズム」酵母とは、図2で示すような、二倍体にした後に胞子を形成させた場合、各胞子を単離培養しても娘細胞の接合変換が起こらず、各胞子から成育した細胞は胞子形成能を有さない一倍体のクローンとして増殖する酵母を意味する。
本明細書にいう「胞子形成培地上での胞子形成率」とは、実施例で示した胞子形成培地に酵母を播種し、30℃、2〜3日静置培養して胞子を形成させた場合の播種した酵母細胞に対する形成した胞子の割合を意味する。本発明の酵母の胞子形成培地上での胞子形成率は、0.5%以上、好ましくは2%以上、より好ましくは5%以上である。
本明細書にいう「YPD固形培地上での発芽率」とは、実施例で示したYPD固形培地に胞子を播種し、30℃、2〜3日静置培養した場合の播種した胞子に対するコロニーを形成した酵母の割合)を意味する。本発明の酵母のYPD固形培地上での発芽率は、50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
本明細書にいう「YPD液体培地(pH 3.5)における35℃の温度条件下での比増殖速度」とは、1N HClでpHを3.5に調節したYPD液体培地を加えたフラスコ等を用いて、35℃の温度条件で振とう培養をした場合に、対数増殖期にある酵母細胞の比増殖速度を意味し、比増殖速度は平均倍加時間を測定することにより下記式(1)により求めることができる。
μ = 0.693/g (1)
(上記式(1)中、μは比増殖速度(h-1)、gは平均倍加時間(h)を表す。)
本明細書にいう「二倍体を目視で単離できる」とは、本発明の酵母を二倍体にした場合に、上記二倍体を直接的または間接的に目視で単離できれば特に制限されないが、例えば、実施例で示したような、拡大鏡または顕微鏡下でミクロマニプレーターを用いて二倍体酵母を単離できることを意味する。このようにして、二倍体酵母を顕微鏡下で観察し、ミクロマニプレーターで細胞を個別に分離できるということは、酵母細胞の接合能が良いからであり、さらに目視で二倍体を分離できるほど数多くの二倍体があるからである。
本明細書にいう「形質転換能」とは、外来DNAを自らの細胞内に取り込み、外来DNAの遺伝的形質を表現し得る能力を意味する。すなわち、形質転換能を有する酵母は、これまでに知られている遺伝子操作技術を制限せずに利用され得る。
上記した本発明の酵母の具体例としては、以下の実施例においてサッカロミセス・セルビシエ KF7から分離して得られたヘテロタリズム酵母であるKFG4−4B、KFG4−6B、及びKFG5を挙げることができ、これらの酵母はそれぞれ独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センター(〒305−8566 茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に2007年12月26日付けで受託番号FERM P−21478、FERM P−21479又はFERM P−21480として寄託されている。
受託番号FERM P−21478、FERM P−21479およびFERM P−21480の主な菌学的性質は以下の通りである。
A 培養的・形態的性質
(1)各種培地における生育状態
2%YPD寒天培地で培養する場合、栄養細胞の大きさは5−10μm;形状は楕円状;増殖態様は出芽;菌糸形成は無い;コロニーは白色で円滑である。液体培地では表面発育がなく、液中に凝集する。
(2)単独では子嚢胞子を形成しない
B 生理学的・化学分類学的性質
(1)最適生育条件(pH、温度):pH、 4.5〜6.0; 温度、33℃〜35℃.
(2)生育の範囲(pH、温度):pH、 3.0〜7.0; 温度、25℃〜40℃.
C 炭素源の資化性
(1)D−キシロース −
(2)D−グルコース +
(3)D−マンノース +
(4)D−ガラクトース +
(5)D−フラクトース +
(6)マルトース +
(7)シュークロース +
(8)セロビオース −
(9)トレハロース +
(9)可溶性デンプン −
(10)DL−乳酸塩 −
本発明の酵母は、上記特徴を有する酵母を分離できるのであれば特に制限されないが、例えば、ホモタリズム酵母であるサッカロミセス・セルビシエKF7株から実施例で示した方法により分離できる。
本発明の酵母は、通常この技術分野で用いられる酵母用の培地および培養条件下で培養することができる。炭素源としては、上記した本発明の酵母が資化できる炭素源であれば特に制限されない。窒素源としては硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩、硝酸塩およびペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、コーングルーテンミール、綿実油、脱脂大豆などの有機物を用いることができる。その他微量の無機金属類、ビタミン類、成長促進因子、たとえばチアミン、ビオチンを含む酵母エキスなどを添加してもよい。これらの培地成分は本発明の酵母の生育を阻害しない濃度であればよく、炭素源は通常0.025〜0.5重量%を用いるのが適当である。窒素源は通常0.05〜1重量%用いるのが適当である。培地は通常pH 4.5〜8.5、好ましくはpH 5.0〜7.5、さらに好ましくはpH 5.5に調整し、滅菌して使用する。培養温度の範囲は本発明の酵母が生育し得る温度であればよく、通常20〜40℃ 、好ましくは30℃が適当である。本発明の酵母を液体培養する場合は、振とう培養または通気撹拌培養するのが好ましい。培養時間は種々の培養条件によって異なるが、振とう培養または通気撹拌培養のばあいは1〜5日間、好ましくは2〜3日間が適当である。
得られた培養液を、所望により、遠心分離または濾過することにより集菌し、集められた本発明の酵母は引き続きエタノール発酵に供することができる。エタノール発酵は、通常この技術分野で用いられるエタノール発酵用の培地および発酵条件で達成できる。エタノール発酵用培地の炭素源として通常グルコースやフルクトースなどの単糖類が好ましく用いられるが、例えば、デンプンなどの多糖類が存在する場合、または種々の糖類が混在する場合において、これらを所望の糖類に分解する酵素を存在させて、上記所望の糖類を得つつ、同時的にエタノール発酵を行うこともできる。エタノール発酵についての先行技術として、例えば、生物工学会誌(木田建次ら、(1997)、75巻、第1号、15−34)および図解バイオエタノール製造技術(社団法人アルコール協会編、(2007))に記載の方法がよく知られている。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
1.培地
YPD培地 1Lは、バクトペプトン 20g、バクト酵母エキス 10g、グルコース 20gを含む。必要ならばアデニンとウラシルを最終濃度で40mg/L最終濃度で加えた。寒天培地の場合は、寒天を最終濃度20g/Lで加えた。1NのHCl溶液で特別な場合を除いてpH5.5に調整した。
胞子形成培地1Lは、酢酸カリウム 10g、寒天 20gを含む。1NのHCl溶液でpH5.5に調整した。
2.胞子形成法とその検定法
YPD固形培地上で30℃、1日静置培養した。増殖した被試験酵母菌コロニーを滅菌した爪楊枝で胞子形成培地に移した。30℃、2〜3日静置培養し、胞子形成させた。滅菌した爪楊枝でサンプルを取り、スライドガラス上の5μLの滅菌水中に懸濁した。光学顕微鏡で(300倍、対物レンズx20、接眼レンズx10、中間変倍x1.5、オリンパス光学顕微鏡BH2)胞子形成を観察し、胞子形成を検定した。
3.Mass mating法
被試験酵母菌細胞を滅菌した白金線で2mlのYPD液体培地に植菌した。さらに標準株の酵母菌細胞(例えばBY4849 (MATα ura3−1 leu2−3、112 trp1−1 his3−11、15 ade2−1 can1−100 rad5−535))を滅菌した白金線で同じ培地に植菌した。この混合した2mLのYPD懸濁液を30℃で数時間静置培養した。さらに30℃で一晩静置培養した。
4.接合子の判定
mass matingした細胞培養液を滅菌したピペットマンP20で5μL取り、スライドガラスにのせた。カバーガラスをその上にのせ、光学顕微鏡で観察した。接合子の具体的な図は、例えば、酵母分子遺伝学実験法(学会出版センター、大嶋泰治 編著11ページ図I−3)にある。
5.ミクロマニプレーターによる酵母菌の単細胞分離
被試験菌(例えばKF7)をYPD固形培地に植菌し、30℃で1日静置培養した。生じたコロニーを2mLのYPD液体培地に懸濁し、20mLのYPD固形培地の上に火炎滅菌した白金耳で載せた。その後、ミクロマニプレーター(シンガーMSMシステム200、Singer Instruments、 Roadwater、 Watchet、 Somerset TA23 0RE、 UK)を用いて、顕微鏡下、典型的な二倍体酵母である卵形に近い形の単細胞を分離した。30℃で2日間、静置培養し、単細胞から増殖したコロニーを得た。
6.子嚢胞子の解剖
胞子形成培地上の細胞を300μg/ml最終濃度でzymolyase20を含む75μlの0.15M リン酸カルウム緩衝液pH7.5に懸濁し、30℃で20分保温した。その後、滅菌した白金耳で胞子懸濁液を取り、YPD固形培地上に移した。ミクロマニプレーターで4胞子を単胞子ずつに解剖した後、30℃で2日から3日間、静置培養した。
7.KF7からヘテロタリズム酵母分離の方法
分離のフローチャートを図4に示す。KF7からミクロマニプレーターを用いて単細胞を分離し、得られた株をKF7(D4)と名付けた。KF7(D4)株を胞子形成させた。4胞子形成を顕微鏡下で確認した。胞子形成細胞を300μg/mL濃度でzymolyase20を含む0.15M リン酸カルウム緩衝液pH7.5に懸濁し、30℃で20分保温した。その後、ミクロマニプレーターで4胞子を単胞子(4分子)に解剖した。30℃で2日から3日間、静置培養し、4胞子とも発芽したコロニーを新しいYPD固形培地に移し、30℃で1日静置培養した。調べた20子嚢胞子の内、4胞子とも発芽し、コロニー形成したものは5子嚢であった。5子嚢からの20コロニーを新しいYPD固形培地に移し、30℃で1日静置培養した。このコロニーを胞子形成培地に移し、胞子形成の検定法に従って観察したところ、3子嚢から得られたコロニーはすべて胞子形成した。従って、ホモタリズム酵母であり、KF7はHO/HO遺伝子型と推定できた。残り2子嚢からのコロニーの内、KF7−5CとKF7−4Bは明確な胞子形成は認められなかった。
KF7−5CとBY4849 (MATα ura3−1 leu2−3、112 trp1−1 his3−11、15 ade2−1 can1−100 rad5−535)とをmass mating法で接合させ、典型的な二倍体細胞を単細胞分離法で分離した。得られた細胞をYPD固形培地に移し、30℃で1日静置培養した。その細胞を胞子形成法で胞子形成させ、続いて4胞子分離法で4胞子に分けた。4胞子の増殖用の固形培地には40μg/mLの最終濃度でアデニンを含むYPD固形培地(YPDA固形培地)を用いた。得られた15子嚢胞子の表現型を調べたところ、対立遺伝子に関して基本的に2+:2−分離をした。すなわち、KF7−5C株はヘテロタリズム一倍体酵母で接合型はMATaであることを示している。そこで、この凝集性株の遺伝子型をMATa Flo1とした。また、KF7−4BとBY4848 (MATa ura3−1 leu2−3、112 trp1−1 his3−11、15 ade2−1 can1−100 rad5−535)との掛け合わせの結果も、調べた5子嚢すべてについて2+:2−分離をした。従って、KF7−4Bの接合型はMATαであり、この凝集性株の遺伝子型をMATα Flo1とした。KF7はEP1株誘導体とIR2株誘導体との細胞融合株から得られた4倍体を胞子形成して得られた二倍体であることを考慮すると、KF7のHO遺伝子型はHOEP1/HOIR2と推定できる。掛け合わせからHO間の組換えが生じ、その組換え型はhoの遺伝子型を示すと考えられた。
KF7−5Cの性質として、胞子形成率は悪いが、発芽率は良いことを認めた。一方、KF7−4Bの性質として、胞子形成率はやや良いが、発芽が遅く、発芽率も悪いことを認めた。また、両者とも親細胞から出芽した娘細胞と元の親細胞との分離が悪く、KF7−5Cでは細胞形態がブドウ状になること、KF7−4Bでは分枝状になること、細胞の大きさも通常の実験室酵母よりもやや小さいことを認めた。
そこで、両者の掛け合わせから接合子の観察が容易にできるほど接合能があり、胞子形成率の良い、発芽率の良い、細胞分離の良い、細胞の大きさが実験室酵母に迫る細胞を分離することを目的とした。KF7−5CとKF7−4Bとの掛け合わせから二倍体を分離し、胞子形成させ、4胞子からのクローンを得た。それぞれの接合型を実験室酵母との掛け合わせから決定した。また、光学顕微鏡下で細胞の形態を観察した。接合型がMATaである株とNAM3−15D (MATα dse2::KanMX sed1::Zeocinr ura3Δ0)と掛け合わせ、胞子形成と発芽率が良い株を選び出した。また、接合型がMATαである株とNAM3−8A (MATa dse2::KanMX sed1::Zeocinr ura3Δ0)と掛け合わせ、胞子形成と発芽率が良い株を選び出した。それらの株間で掛け合わせ、胞子形成率の良い、発芽率の良い株がKFG1−1B (MATa Flo1)とKFG1−4B (MATα FLO1)である。全細胞の0.5−1%が胞子形成をし、発芽率も50%程度となった(図3)。さらにKFG1−1BとKFG1−4Bとの掛け合わせから同様の解析法でKFG2−17DとKFG2−20Aを得た(図3)。さらにKFG2−17DとKFG2−20Aの掛け合わせからKFG3−4AとKFG3−2Bを得た。この掛け合わせでは、全細胞の10%以上が胞子形成をし、その90%が発芽するようになった(図3)。この掛け合わせで得られたヘテロタリズム一倍体酵母がKFG4−6B(MATa Flo1:受託番号FERM P−21479)とKFG4−4B(MATα FLO1:受託番号FERM P−21478)である。両者とも細胞の分離はある程度良く、細胞の大きさも実験室酵母に迫る程度であった。両者を掛け合わせで得た二倍体酵母がKFG5(受託番号FERM P−21480)である(図3)。
また、KFG4−6Bを50 mlのYPD液体培地で100世代ほど培養して得られた株は、35℃でpH3.5でも比増殖速度が0.51h-1と十分な増殖を示し、耐酸性と耐熱性を兼ね備えていた。さらにKFG4−6Bは形質転換能を有していた。
本発明のエタノール発酵性ヘテロタリズム酵母により、種々の条件、例えば、酸性および高温条件下での工業的なエタノール発酵を実施することができる。
図1は、ホモタリズム酵母の胞子形成および発芽の概略を示す。 図2は、ヘテロタリズム酵母の胞子形成および発芽の概略を示す。 図3は、KFG4−6BおよびKFG4−4Bの分離方法の概略を示す。

Claims (1)

  1. 受託番号FERM P−21478、FERM P−21479およびFERM P−21480からなる群から選ばれる酵母。
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