本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体との相対移動方向について一部重複して配置される第1ノズル列と第2ノズル列において、前記相対移動方向について対応するノズル同士が流体の噴射量を分担して共通のドットラインを形成することによって、前記相対移動方向の交差方向に複数のドットラインを形成して階調値に基づく補正用パターンを形成することであって、前記一部重複しない範囲において単位面積あたりに噴射された前記流体の量よりも前記一部重複する範囲において単位面積あたりに噴射された前記流体の量を多くして前記補正用パターンを形成することと、
前記補正用パターンの濃度を前記相対移動方向に複数並ぶ画素からなる画素列毎に測定することと、
測定した前記画素列毎の濃度に基づいて、前記階調値を補正するための補正値を前記画素列毎に求めることと、
前記第1ノズル列と前記第2ノズル列が設けられた流体噴射装置の記憶部に前記補正値を記憶することと、
を含む流体噴射装置の製造方法。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
かかる流体噴射装置の製造方法であって、前記一部重複する範囲の端部よりも中央において単位面積あたりに噴射された前記流体の量を多くして前記補正用パターンが形成されることが望ましい。また、前記相対移動方向について対応するノズル同士が流体の噴射量を分担して共通のドットラインを形成することによって、前記一部重複する範囲における前記画素列の濃度が前記一部重複しない範囲における前記画素列の濃度よりも高くなるようにして、前記補正用パターンが形成されることが望ましい。また、前記単位面積あたりに噴射された前記流体の量を多くすることは、前記一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて前記一部重複しない範囲のドットラインよりも重複して形成されるドットを多くすることによって行われることが望ましい。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
媒体との相対移動方向について一部重複して配置される第1ノズル列と第2ノズル列において、前記相対移動方向について対応するノズル同士が流体の噴射量を分担して共通のドットラインを形成することによって、前記相対移動方向の交差方向に複数のドットラインを形成して階調値に基づく補正用パターンを形成することであって、前記一部重複しない範囲において単位面積あたりに噴射された前記流体の量よりも前記一部重複する範囲において単位面積あたりに噴射された前記流体の量を多くして前記補正用パターンを形成することと、
前記補正用パターンの濃度を前記相対移動方向に複数並ぶ画素からなる画素列毎に測定することと、
測定した前記画素列毎の濃度に基づいて、前記階調値を補正するための補正値を前記画素列毎に求めることと、
前記第1ノズル列と前記第2ノズル列が設けられた流体噴射装置の記憶部に前記補正値を記憶することと、
を含む流体噴射装置の補正値設定方法。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
(A)媒体との相対移動方向と交差する交差方向に複数のノズルが並ぶ第1ノズル列と、
(B)前記交差方向に複数のノズルが並ぶ第2ノズル列であって、前記相対移動方向について前記第1ノズル列と一部重複して配置される第2ノズル列と、
(C)前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とから流体を噴射させて前記相対移動方向に複数のドットが並ぶドットラインを前記交差方向に複数形成させる制御部であって、
前記一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて前記一部重複しない範囲のドットラインよりも階調値が低くなるように補正する補正値と、前記一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて前記一部重複しない範囲のドットラインよりもドットを多く形成させるようなマスクと、に基づいて前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とから前記流体を噴射させる制御部と、
を備える流体噴射装置。
かかる流体噴射装置であって、前記マスクは、前記一部重複する範囲において前記第1ノズル列用の第1マスクと前記第2ノズル列用の第2マスクとからなり、形成する画像に前記第1マスクと前記第2マスクとを適用することにより、前記一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて前記一部重複しない範囲のドットラインよりも重複して形成されるドットを多くすることが望ましい。また、前記補正値は、前記マスクを適用することによって形成されるドットの量に基づいて求められることが望ましい。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
===第1実施形態===
<用語の説明>
まず、本実施形態を説明する際に用いられる用語の意味を説明する。
図1は、用語の説明図である。
「印刷画像」とは、用紙上に印刷された画像である。インクジェットプリンタの印刷画像は、用紙上に形成された無数のドットから構成されている。
「ドットライン」とは、ヘッドと用紙とが相対移動する方向(移動方向)に並ぶドットの列である。後述の実施形態のようなラインプリンタの場合、「ドットライン」は、用紙の搬送方向に並ぶドットの列を意味する。一方、キャリッジに搭載されたヘッドによって印刷するシリアルプリンタの場合、「ドットライン」は、キャリッジの移動方向に並ぶドットの列を意味する。移動方向と垂直な方向に多数のドットラインが並ぶことによって、印刷画像が構成されることになる。図に示すように、n番目の位置にあるドットラインのことを「第nドットライン」と呼ぶ。
「画像データ」とは、2次元画像を示すデータである。後述する実施形態では、256階調の画像データや、4階調の画像データなどがある。また、画像データは、後述する印刷解像度へ変換前の画像データを指すことも、変換後の画像データを指すこともある。
「印刷画像データ」とは、画像を用紙に印刷するときに用いられる画像データである。プリンタが4階調でドットの形成(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を制御する場合、4階調の印刷画像データは、印刷画像を構成するドットの形成状態を示すことになる。
「読取画像データ」とは、スキャナによって読み取られた画像データである。
「画素」とは、画像を構成する最小単位である。この画素が2次元的に配置されることによって画像が構成される。
「画素列」とは、画像データ上において所定方向に並ぶ画素の列である。図に示すように、n番目の画素列のことを「第n画素列」と呼ぶ。
「画素データ」とは、画素の階調値を示すデータである。後述する実施形態において、ハーフトーン処理前であれば256階調などの多階調のデータを示し、ハーフトーン処理後の4階調の印刷画像データの場合、各画素データは、2ビットデータになり、ある画素のドット形成状態(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示すことになる。
「画素領域」とは、画像データ上の画素に対応した用紙上の領域である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、「画素領域」は、1辺が1/360インチの正方形状の領域になり、用紙上の画素である。
「列領域」とは、画素列に対応した用紙上の領域であり、用紙上の画素列である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、列領域は、1/360インチ幅の細長い領域になる。「列領域」は、印刷画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もあるし、読取画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もある。図中の右下には、前者の場合の列領域が示されている。前者の場合の「列領域」は、ドットラインの形成目標位置でもある。正確に列領域にドットラインが形成される場合、そのドットラインはラスタラインに相当する。後者の場合の「列領域」は、読取画像データ上の画素列が読み取られた用紙上の測定位置(測定範囲)でもあり、言い換えると、画素列の示す画像(画像片)が存在する用紙上の位置でもある。図に示すように、n番目の位置にある列領域のことを「第n列領域」と呼ぶ。第n列領域は第nドットラインの形成目標位置になる。
「画像片」とは、画像の一部分を意味する。画像データ上において、ある画素列の示す画像は、画像データの示す画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、あるラスタラインによって表される画像は、印刷画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、ある列領域での発色によって表される画像も、印刷画像の「画像片」に該当する。
ところで、図1の右下には、画素領域とドットとの位置関係が示されている。ヘッドの製造誤差の影響によって第2ドットラインが第2列領域からズレた結果、第2列領域の濃度が淡くなる。また、第4列領域では、ヘッドの製造誤差の影響によってドットが小さくなった結果、第4列領域の濃度が淡くなる。このような濃度むらや濃度むら補正方法を説明する必要があるため、本実施形態では、「ドットライン」、「画素列」、「列領域」等の意味や関係を上記の内容に沿って説明している。
但し、「画像データ」や「画素」等の一般的な用語の意味は、上記の説明だけでなく、通常の技術常識に沿って適宜解釈して良い。
また、以下の説明において、階調値が高いときに濃度が高く、階調値が低いときに濃度が低いものとして説明を行う。また、説明中、濃度が高い場合は明度が低い場合に対応する。
<印刷システムについて>
図2は、印刷システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態の印刷システム100は、図2に示すように、プリンタ1と、コンピュータ110と、スキャナ120とを有するシステムである。
プリンタ1は、流体としてのインクを媒体に噴射して該媒体に画像を形成(印刷)する流体噴射装置であり、本実施形態ではカラーインクジェットプリンタである。プリンタ1は、用紙、布、フィルムシート等の複数種の媒体に画像を印刷することが可能である。なおプリンタ1の構成については後述する。
コンピュータ110は、インターフェース111と、CPU112と、メモリ113を有する。インターフェース111は、プリンタ1及びスキャナ120との間でデータの受け渡しを行う。CPU112は、コンピュータ110の全体的な制御を行うものであり、当該コンピュータ110にインストールされた各種プログラムを実行する。メモリ113は、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。コンピュータ110にインストールされたプログラムの中には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプリンタドライバや、スキャナ120を制御するためのスキャナドライバがある。そしてコンピュータ110は、プリンタドライバによって生成された印刷データをプリンタ1に出力する。
スキャナ120は、スキャナコントローラ125と、読取キャリッジ121とを有する。スキャナコントローラ125は、インターフェース122、CPU123、及びメモリ124を有する。インターフェース122は、コンピュータ110との間で通信を行う。CPU123は、スキャナ120の全体的な制御を行う。例えば読取キャリッジ121を制御する。メモリ124は、コンピュータプログラム等を記憶する。読取キャリッジ121は、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する不図示の3つのセンサ(CCDなど)を有する。
以上の構成により、スキャナ120は、不図示の原稿台に置かれた原稿に光を照射し、その反射光を読取キャリッジ121の各センサにより検出し、前記原稿の画像を読み取って、当該画像の色情報を取得する。そして、インターフェース122を介してコンピュータ110のスキャナドライバに向けて画像の色情報を示すデータ(読取データ)を送信する。
<プリンタの構成>
図3は、プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。ここでは、図2のブロック図も参照しつつプリンタの構成について説明する。
プリンタ1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。コントローラ60は、コンピュータ110と接続するためのインターフェース61、演算装置であるCPU62、記憶部に相当するメモリ63、及び、各ユニットを制御するためのユニット制御回路64を含む。
外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙された用紙Sは、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が用紙Sを搬送することによって、用紙Sがヘッドユニット40に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した用紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の用紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、搬送中の用紙Sに対してインクを吐出することによって、用紙Sにドットを形成し、画像を用紙Sに印刷する。本実施形態のプリンタ1はラインプリンタであり、ヘッドユニット40は紙幅分のドットを一度に形成することができる。
図4は、ヘッドユニット40の下面における複数のヘッドの配列の説明図である。図に示すように、紙幅方向に沿って、複数のヘッド41が千鳥列状に並んでいる。各ヘッドには、不図示であるが、ブラックインクノズル列、シアンインクノズル列、マゼンタインクノズル列及びイエローインクノズル列が形成されている。各ノズル列は、インクを吐出するノズルを複数個備えている。各ノズル列の複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチで並んでいる。
図5は、ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。後述するヘッドユニット40は、説明の簡略化のため、2個のヘッド(第1ヘッド41A、第2ヘッド41B)から構成されているものとする。また、説明の簡略化のため、各ヘッドにはブラックインクノズル列だけが設けられているものとする。更に説明を簡略化するため、各ヘッドのブラックインクノズル列は、ノズルを18個ずつ備えているものとする。以下の説明において、搬送方向のことを「x方向」と呼び、紙幅方向のことを「y方向」と呼ぶことがある。第1ヘッド41Aは第1ノズル列411Aを有し、第2ヘッド41Bは第2ノズル列411Bを有している。
各ヘッドのブラックインクノズル列は、1/360インチ間隔で紙幅方向(y方向)に並ぶ18個のノズルから構成されている。各ノズルについて、図中の上から順にノズルの番号が付されている。
なお、搬送中の用紙Sに対して各ノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、各ノズルは、用紙に28個のドットラインを形成する。例えば、第1ノズル列411Aのノズル♯1は第1ドットラインを用紙上に形成し、第2ノズル列411Bのノズル♯1は第11ドットラインを用紙上に形成する。各ドットラインは、搬送方向(x方向)に沿って形成される。
ところで、第1ヘッド41Aのノズル#11〜#18と、第2ヘッド41Bのノズル#1〜#8は、搬送方向について一致するように配置されている。よって、第11ドットライン〜第18ドットラインは、これらの重複するノズルによって分担して形成されることになる。
図6は、参考例のオーバーラップ処理について説明するための図である。図には、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bと、各ノズル列の重複ノズルがドットラインを形成する際のドットの形成割合が示されている。たとえば、各ドットラインを形成するにあたり、第1ノズル列411Aのノズル#11は88.8%、ノズル#12は77.7%、ノズル#13は66.6%、ノズル#14は55.5%、ノズル#15は44.4%、ノズル#16は33.3%、ノズル#17は22.2%、ノズル#18は11.1%の割合でドットを形成することが示されている。また、各ドットラインを形成するにあたり、第2ノズル列411Bのノズル#1は11.1%、ノズル#2は22.2%、ノズル#3は33.3%、ノズル#4は44.4%、ノズル#5は55.5%、ノズル#6は66.6%、ノズル#7は77.7%、ノズル#8は88.8%の割合でドットを形成することが示されている。尚、以下、この割合のことをノズル使用比率として説明する。つまり、第1ノズル列411Aのノズル#11は88.8%のノズル使用比率でドットラインを形成していることになる。
そして、例えば、第1ノズル列411Aのノズル#11と第2ノズル列411Bのノズル#1とのノズル使用比率とを合計すると100%のノズル使用比率となる。第1ノズル列411Aのノズル#11と第2ノズル列411Bのノズル#1とが形成する共通のドットラインにおいて、連続する100個のドットを形成する場合には、第1ノズル列411Aのノズル#11が約89個のドットを形成し、第2ノズル列411Bのノズル#1が約11個のドットを形成するように、ドットの形成を分担することになる。このようにして、参考例における、第1ノズル列411Aのノズル#1〜第2ノズル列411Bのノズル#18のノズル使用比率は、合計すると常に100%となるように設定されている。
このようにして、ノズル列が重複する範囲において徐々にノズル使用比率を変化させることで、2つのノズル列が重複する範囲とノズル列が重複しない範囲との濃度差を目立たないようにして印刷することができるようになっている。
<印刷処理について>
このようなプリンタ1では、コンピュータ110から印刷データを受信すると、コントローラ60は、まず、搬送ユニット20によって給紙ローラ(不図示)を回転させ、印刷すべき用紙Sをベルト24上に送る。用紙Sはベルト24上を一定速度で停まることなく搬送され、ヘッドユニット40の下を通る。ヘッドユニット40の下を用紙Sが通る間に、ヘッドユニット40の各ヘッド41の各ノズルからインクが断続的に噴射される。つまり、ドットの形成処理と用紙Sの搬送処理が同時に行われる。その結果、用紙S上には搬送方向及び紙幅方向に沿った複数のドットからなるドット列が形成され、画像が印刷される。そして、最後にコントローラ60は、画像の印刷が終了した用紙Sを排紙する。
<プリンタドライバによる処理の概要>
上記の印刷処理は、前述したように、プリンタ1に接続されたコンピュータ110から印刷データが送信されることにより開始する。当該印刷データは、プリンタドライバによる処理により生成される。
図7は、プリンタドライバによる処理の説明図である。以下、プリンタドライバによる処理について、図を参照しながら説明する。
印刷画像データは、図に示すように、プリンタドライバによって解像度変換処理(S102)、色変換処理(S104)、ハーフトーン処理(S106)、及び、ラスタライズ処理(S108)が実行されることにより生成される。
先ず、解像度変換処理では、アプリケーションプログラムの実行により得られたRGB画像データの解像度が、指定された画質に対応する印刷解像度に変換される。次に、色変換処理では、解像度が変換されたRGB画像データがCMYK画像データに変換される。ここで、CMYK画像データとは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び、ブラック(K)の色別の画像データを意味する。そして、CMYK画像データを構成する複数の画素データは、それぞれ256段階の階調値で表される。この階調値は、RGB画像データに基づいて定められるものであり、以下、指令階調値ともいう。
次に、ハーフトーン処理では、画像データを構成する画素データが示す多段階の階調値が、プリンタ1で表現可能な少段階のドット階調値に変換される。すなわち、画素データが示す256段階の階調値が、4段階のドット階調値に変換される。具体的には、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応する小ドットの形成、ドット階調値[10]に対応する中ドットの形成、及び、ドット階調値[11]に対応する大ドットの形成の4段階に変換される。その後、各ドットのサイズについてドット生成率が決められた上で、ディザ法等を利用して、プリンタ1がドットを分散して形成するように画素データが作成される。
次に、ラスタライズ処理では、ハーフトーン処理で得られた画像データに関し、各ドットのデータが、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更される。そして、ラスタライズ処理されたデータは、印刷データの一部として送信される。
<濃度むらについて>
図8Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。理想的にドットが形成されるとは、画素領域の中心位置にインク滴が着弾し、そのインク滴が用紙S上に広がって、画素領域にドットが形成されることである。各ドットが各画素領域に正確に形成されると、ドットライン(搬送方向にドットが並んだドット列)が列領域に正確に形成される。
図8Bは、濃度むらが発生したときの説明図である。2番目の列領域に形成されたドットラインは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、3番目の列領域側に寄って形成されている。その結果、2番目の列領域は淡くなり、3列目の列領域は濃くなる。また、5番目の列領域に吐出されたインク滴のインク量は規定のインク量よりも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5列目の列領域は淡くなる。
このように濃淡の違うラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、搬送方向に沿う縞状の濃度むらが視認される。この濃度むらは、印刷画像の画質を低下させる原因となる。
以上のような濃度むらを抑制するための方策としては、画像データの階調値(指令階調値)を補正することが考えられる。つまり、濃く(淡く)視認され易い列領域に対しては、淡く(濃く)形成されるように、その列領域を構成する単位領域に対応する画素の階調値を補正すればよい。このため、ラスタライン毎に画像データの階調値を補正する濃度補正値Hを算出することになる。この濃度補正値Hは、プリンタ1の濃度むら特性を反映した値である。
図8Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。ラスタライン毎の濃度補正値Hが算出されていれば、ハーフトーン処理の実行に際してプリンタドライバによって、その濃度補正値Hに基づいてラスタライン毎に画素データの階調値を補正する処理が行われる。この補正処理により補正された階調値で各ドットラインが形成されると、対応するラスタラインの濃度が補正される結果、図8Cに示すように、印刷画像における濃度むらの発生が抑制されることになる。
例えば、図8C中では、淡く視認される2番目と5番目の列領域のドット生成率が高くなり、濃く視認される3番目の列領域のドット生成率が低くなるように、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。このように、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度むらが抑制される。
<濃度補正値Hの算出について>
次に、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する処理(以下、補正値取得処理ともいう)について概説する。補正値取得処理は、例えば、プリンタ1の製造工場の検査ラインにおいて、補正値算出システムの下で行われる。補正値算出システムとは、プリンタ1の濃度むら特性に応じた濃度補正値Hを算出するためのシステムであり、上記の印刷システム100と同様の構成である。つまり、補正値算出システムは、プリンタ1、コンピュータ110、及び、スキャナ120(便宜上、印刷システム100の場合と同一の符号にて表記する)を有する。
プリンタ1は、補正値取得処理の対象機器であり、該プリンタ1を用いて濃度むらがない画像を印刷するためには、前記補正値取得処理において該プリンタ1用の濃度補正値Hを算出することになる。検査ラインに置かれたコンピュータ110には、該コンピュータ110が補正値取得処理を実行するための補正値算出プログラムがインストールされている。
<補正値取得処理について>
図9は、補正値取得処理の流れを示す図である。多色印刷が可能なプリンタ1を対象とする場合、各インク色についての補正値取得処理は同様の手順により実施される。以下の説明では、一のインク色(例えば、ブラック)についての補正値取得処理について説明する。
先ず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、既述の印刷動作と同様の手順により、プリンタ1が補正用パターンCPを用紙Sに形成する(S202)。
図10は補正用パターンCPの説明図である。この補正用パターンCPは、図10に示すように、5種類の濃度のサブパターンCSPで形成される。
各サブパターンCSPは、帯状パターンであり、搬送方向に沿うラスタラインが紙幅方向に複数並ぶことにより構成される。また、各サブパターンCSPは、それぞれ一定の階調値(指令階調値)の画像データから生成されたものであり、図10に示すように、左のサブパターンCSPから順に濃度が濃くなっている。具体的には、左から15%、30%、45%、60%。85%の濃度のサブパターンとなっている。以下、濃度15%のサブパターンCSPの指令階調値をSa、濃度30%のサブパターンCSPの指令階調値をSb、濃度45%のサブパターンCSPの指令階調値をSc、濃度60のサブパターンCSPの指令階調値をSd、そして、濃度85%のサブパターンCSPの指令階調値をSeと表記する。そして、例えば、指令階調値Saにて形成されたサブパターンCSPを、図10に示すように、CSP(1)と表記する。同様に、指令階調値Sb、Sc、Sd、Seにて形成されたサブパターンCSPを、それぞれCSP(2)、CSP(3)、CSP(4)、CSP(5)と表記する。
次に、検査者は補正用パターンCPが形成された用紙Sをスキャナ120にセットする。そして、コンピュータ110は、スキャナ120に補正用パターンCPを読み取らせ、その結果を取得する(S204)。スキャナ120は、前述したようにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する3つのセンサを有しており、補正用パターンCPに光を照射し、その反射光を各センサによって検出する。なお、コンピュータ110は、補正用パターンを読み取った画像データ上において、搬送方向に相当する方向に画素が並んだ画素列数と、補正用パターンを構成するラスタライン数(列領域数)が、同数になるように調整する。つまり、スキャナ120にて読み取った画素列と列領域を一対一で対応させる。そして、ある列領域と対応する画素列の各画素が示す読取階調値の平均値を、その列領域の読取階調値とする。
次に、コンピュータ110は、スキャナ120によって取得された読取階調値に基づいて、各サブパターンCSPのラスタライン毎(換言すると列領域毎)の濃度を算出する(S206)。以下、読取階調値に基づいて算出された濃度のことを算出濃度ともいう。
図11は、指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。図11の横軸は、ラスタラインの位置を示し、縦軸は、算出濃度の大きさを示している。図11に示すように、各サブパターンCSPは、それぞれ同一の指令階調値で形成されたにも関わらずラスタライン毎に濃淡が生じている。このラスタラインの濃淡差が、印刷画像の濃度むらの原因である。
次に、コンピュータ110は、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する(S208)。なお、濃度補正値Hは、指令階調毎に算出される。以下、指令階調Sa、Sb、Sc、Sd、Seについて算出された濃度補正値HのことをそれぞれHa、Hb、Hc、Hd、Heとする。濃度補正値Hの算出手順を説明するために、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)のラスタライン毎の算出濃度が一定になるように指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順を例に挙げて説明する。当該手順では、例えば、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における全ラスタラインの算出濃度の平均値Dbtを、指令階調値Sbの目標濃度として定める。図11において、この目標濃度Dbtよりも算出濃度が淡い第iラスタラインでは、指令階調値Sbを濃くする方へ補正すれば良い。一方、目標濃度Dbtよりも算出濃度が濃い第jラスタラインでは、指令階調値Sbを淡くする方へ補正すればよい。
図12Aは第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。また図12Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。図12A及び図12Bの横軸は指令階調値の大きさを示し、縦軸は算出濃度を示している。
第iラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図12Aに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第iラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値ScのサブパターンCSP(3)における第iラスタラインの算出濃度Dc、に基づいて算出される。より具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも小さくなっている。換言すると、第iラスタラインの濃度は平均濃度よりも淡くなっている。仮に、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第iラスタラインを形成したいのであれば、該第iラスタラインに対応する画素データの階調値、すなわち、指令階調値Sbを、図12Aに示すように、第iラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sb,Db)、(Sc,Dc)から直線近似を用いて、下記式(1)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。
Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Dbt−Db)/(Dc−Db)} (1)
そして、指令階調値Sbと目標指令階調値Sbtから、下記式(2)により、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hが求められる。
Hb=ΔS/Sb=(Sbt−Sb)/Sb (2)
一方、第jラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図12Bに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第jラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値SaのサブパターンCSP(1)における第jラスタラインの算出濃度Da、に基づいて算出される。具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも大きくなっている。仮に、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第jラスタラインを形成したいのであれば、該第jラスタラインの指令階調値Sbを、図12Bに示すように、第jラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sa,Da)、(Sb,Db)から直線近似を用いて、下記式(3)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。
Sbt=Sb+(Sb−Sa)×{(Dbt−Db)/(Db−Da)} (3)
そして、上記式(2)により、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbが求められる。
以上のようにして、コンピュータ110は、ラスタライン毎に、指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbを算出する。同様に、指令階調値Sa、Sc、Sd、Seに対する濃度補正値Ha、Hc、Hd、Heを、それぞれラスタライン毎に算出する。また、他のインク色についても、ラスタライン毎に、指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heを算出する。
その後、コンピュータ110は、濃度補正値Hのデータをプリンタ1に送信し、プリンタ1のメモリ63に記憶させる(S210)。
図13は、メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。この結果、プリンタ1のメモリ63には、図13に図示された、ラスタライン毎に5つの指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heをまとめた補正値テーブルが作成される。
また、図13に示すように、補正値テーブルはインク色別に作成される。この結果、CMYK4色分の補正値テーブルが形成される。この補正値テーブルは、プリンタ1を用いて画像を印刷する際に、当該画像の画像データを構成する各ラスタラインの階調値を補正するためにプリンタドライバによって参照される。
本実施形態では、用紙上の画素列に対応するラスタラインごとに濃度を測定し、測定した濃度に基づいて階調値を補正するための補正値を求めている。このようにすることで、ラスタライン毎に濃度補正を行うことができる。そして、用紙上の色むらの発生を抑制することができる。
ところで、上述のような印刷は、理想的には用紙が搬送方向にのみ移動し、ノズル列方向への移動誤差は生じないとしている。しかしながら、実際には、用紙Sは搬送中にノズル列方向に移動するように蛇行することがある。このように、用紙Sがノズル列方向に移動すると、例えば、本来、第1ノズル列411Aの#11ノズルと第2ノズル列411Bの#1ノズルが分担して搬送方向に一直線に並ぶ共通のドットラインを形成するはずであるのに、お互いのドットの位置がノズル列方向にずれて形成されてしまうことがある。そうすると、ノズル列の重複する範囲において明度変化を生じ、濃度むらを生じてしまうことがある。
図14は、対応するノズル同士が搬送方向について一致していたときの明度変化について説明するための図である。ここでは、説明のさらなる容易のために、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bのノズルの個数を14個に減らしている。そして、第1ノズル列411Aのノズル#11〜#14と第2ノズル列411Bのノズル#1〜4とが搬送方向について重複するものとする。
また、後述する「元の位置」、「狭くなったとき」、「広くなったとき」における、単位面積あたりのインク量と、被覆率とが示されている。尚、ここでは、用紙の搬送方向が紙面の上方を向いており、紙面の下方に配置されているのが第1ノズル列411Aであり紙面の上方に配置されているのが第2ノズル列411Bである。
単位面積あたりのインク量は、重複しない範囲における1つのノズルが形成する1つのラスタラインのインク量を100%としたときに対して、重複する範囲の2つのノズルが形成する1つのラスタラインのインク量である。
また、被覆率とは、ドットが用紙を覆う率である。例えば、同じ面積に2つのドットが形成されたときにおいて、2つのドットが重なり合わずその領域に形成されたときの被覆率は高く、一方、2つのドットが重なり合ってその領域に形成されたときの被覆率は低くなる。これは、2つのドットが重複して重なり合うことで、重複した分だけ用紙を覆う面積が少なくなることに起因する。
図には被覆率に対応するドットの配置が示されているが、いずれのノズル列のノズルによって形成されたドットかが分かるようにするため、ノズルに付されたハッチングの方向とドットに付されたハッチングの方向とを一致させてある。
被覆率を示す図において、左側の図は、第1ノズル列411Aによって形成されたドットの右側に第2ノズル列411Bによって形成されたドットが配置されているときの様子を示している。また、被覆率を示す図において、右側の図は、第1ノズル列411Aによって形成されたドットの左側に第2ノズル列411Bによって形成されたドットが配置されているときの様子を示している。
このような単位面積あたりのインク量と被覆率が、元の位置を維持した場合と、狭くなった場合と、広くなった場合とで示されている。「元の位置」が0とは、図に示される状態が維持されているときのように、重複する範囲のノズル同士が搬送方向について一致するように並んでいる場合に、用紙の搬送においてノズル列方向の移動が生じなかった場合に相当する。
また、「狭くなった」とは、用紙の搬送時にノズル列方向の移動が生じてしまったときであって、2つのノズル列の重複する範囲が増加する方向に第1ノズル列411A又は第2ノズル列411Bが移動したかのような印刷が行われた場合(第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅Y1があたかも狭くなったとき)に相当する。これは、例えば、第1ノズル列411Aによるドットの形成が行われた後の搬送において、用紙がy軸のマイナス方向に若干移動してしまってから、第2ノズル列411Bによるドットの形成が行われた場合に相当する。
また、「広くなった」とは、用紙の搬送時にノズル列方向の移動が生じてしまったときであって、2つのノズル列の重複する範囲が減少する方向に第1ノズル列411A又は第2ノズル列411Bが移動したかのような印刷が行われた場合(第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅Y1があたかも広くなったとき)である。これは、例えば、第1ノズル列411Aによるドットの形成が行われた後の搬送において、用紙がy軸のプラス方向に若干移動してしまってから、第2ノズル列411Bによるドットの形成が行われた場合に相当する。
ところで、上述のような条件のもとに、明度変化は次式で求められる。
明度変化=単位面積あたりのインク量の変化+被覆率の変化
図14を参照すると、明度変化は次のような結果となる。
元の位置のとき:単位面積あたりのインク量は常に100%となっている。また、被覆率を説明する図において、各ドットは重なり合うことはないが隣り合うように並んで形成されている。
狭くなったとき:単位面積あたりのインク量は増加する。また、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに重なるように第2ノズル列411Bによるドットが形成されるようになる。つまり、被覆率が下がるような結果となる。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットから離れるように第2ノズル列411Bによるドットが形成されるようになる。この場合、「元の位置」のときに対して、ドット同士が重複していないことに変化はないため、被覆率に変化は生じない。
よって、単位面積あたりのインク量が増加(濃くなる)し、被覆率は減少(淡くなる)することになるため、両者がほぼ相殺することとなり、明度の変化は現れないか、少ないものと考えられる。
広くなったとき:単位面積あたりのインク量は減少する。これは同じインク量を噴射しても、ノズルの重複範囲が少なくなるため、単位面積あたりのインク量が減少することになるのである。また、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットから離れるように第2ノズル列411Bによるドットが形成される。この場合、「元の位置」のときに対してドット同士が重複していないことに変化はないため、被覆率に変化は生じない。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに重なるように第2ノズル列411Bによるドットが形成される。この場合、被覆率が下がるような結果となる。
よって、単位面積あたりのインク量が減少(淡くなる)し、被覆率も減少(淡くなる)することになるため、明度はより明るくなるように変化し、淡く視認されるようになると考えられる。
図15は、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が狭くなる方向にずれて配置されていたとき(参考例)の明度変化について説明するための図である。図15では、図14のノズル列に対し1/2ノズルピッチだけ第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が狭くなるように2つのノズル列が配置されている(Y1>Y2)。このようなノズル列配置において、明度変化は次のようになる。
元の位置のとき:単位面積あたりのインク量は、図14のときよりも多くなっている。これは、ノズル列の配置構成において重複範囲が増えていることから、単位面積あたりのインク量が増加しているのである。このとき、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに重なるように第2ノズル列411Bによるドットが形成されている。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに離れるように第2ノズル列411Bによるドットが形成されている。
狭くなったとき:この場合、「元の位置」のときと比較して、単位面積あたりのインク量は増加する。また、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに、より重なるように第2ノズル列411Bによるドットが形成される。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットから、より離れるように第2ノズル411Bによるドットが形成される。
よって、単位面積あたりのインク量が増加(濃くなる)し、被覆率は減少(淡くなる)することになるため、両者がほぼ相殺することとなり、明度の変化は現れないか、少ないものと考えられる。
広くなったとき:「元の位置」のときと比較して、単位面積あたりのインク量は減少する。また、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットと並ぶようにして第2ノズル列411Bによるドットが形成される。つまり、この場合には、「元の位置」のときと比較して、被覆率が増加している。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに近づくようにして第2ノズル列411Bによるドットが形成されるものの、両ドットは重複しないので、「元の位置」のときと比較して、被覆率に変化はない。
よって、単位面積あたりのインク量は減少(淡くなる)するものの、被覆率は増加(濃くなる)するため、両者はほぼ相殺することとなり、明度の変化は現れないか、少ないものと考えられる。
図16は、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が広くなる方向にずれて配置されていたとき(参考例)における明度変化について説明するための図である。図16では、図14のノズル列に対し1/2ノズルピッチだけ第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が広くなるように2つのノズル列が配置されている(Y1<Y3)。このようなノズル列配置において、明度変化は次のようになる。
元の位置のとき:単位面積あたりのインク量は、図14のときよりも少なくなっている。これは、ノズル列の配置構成において重複範囲が減っていることから、単位面積あたりのインク量が減少しているのである。このとき、被覆率を説明する左側の図において、第2ノズル列411Bによって形成されたドットから離れて第1ノズル列411Aによるドットが形成されている。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに重なるように第2ノズル列411Bによるドットが形成されている。
狭くなったとき:「元の位置」のときと比較して、単位面積あたりのインク量は増加する。また、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されるドットに近づくように第2ノズル列411Bによるドットが形成される。しかながら、ドット同士が重複しないことは「元の位置」のときと変わらないので、被覆率に変化はない。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されるドットから離れるように第2ノズル列411Bによるドットが形成される。このとき、「元の位置」において重複していたドットが重複しないドットとなることで、被覆率は高くなる。
よって、単位面積あたりのインク量が増加(濃くなる)し、被覆率も増加(濃くなる)することになるため、明度はより暗くなるように変化するものと考えられる。
広くなったとき:「元の位置」のときと比較して、単位面積あたりのインク量は減少する。また、被覆率を説明する左側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットから離れるようにして第2ノズル列411Bによるドットが形成される。このときの被覆率には変化はない。しかしながら、ドット同士が重複しないことは「元の位置」のときと変わらないので、被覆率に変化はない。また、被覆率を説明する右側の図において、第1ノズル列411Aによって形成されたドットに、より重なり合うようにして第2ノズル411Bによるドットが形成される。このときの被覆率は減少することになる。
よって、単位面積あたりのインク量が減少(淡くなる)し、被覆率が減少(淡くなる)することになるため、明度はより明るくなるように変化するものと考えられる。
図17は、ノズル配置に対する明度変化の関係を説明するための図である。図には、横軸に、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとの配置関係が示されている。ここで、「狭い」とは、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が狭くなるように配置(図15に相当)されているという意味である。また、「広い」とは、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が広くなるように配置(図16に相当)されているという意味である。また、図の縦軸には明度が示されている。
上述のように、「狭い」領域においてd2だけドット位置が変動したときの明度変化はL2である。一方、「広い」領域においてd1だけドット位置が変動したときの明度変化はL1である。このように、ノズル列の配置において、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が狭くなるように配置された場合には、ドットの位置変動による明度変化は少ないことがわかる。
なお、上記のような、ノズル列の配置において、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅が狭くなるように配置された場合に、ドットの位置変動による明度変化が少ないことの理由としては以下のようにも考えられる。
第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bのうちのノズルが重複する範囲の端部付近(図14、15、16の、第1ノズル列411Aのノズル#11と第2ノズル列411Bのノズル#1付近、及び、第1ノズル列411Aのノズル#14と第2ノズル列411Bのノズル#4付近)に着目すると、前述のように、搬送方向に並ぶ共通のドットラインを分担して形成する組になるノズル、例えば第1ノズル列411Aのノズル#11と第2ノズル列411Bのノズル#1とによって、共通してドットを形成する該ドットラインが所定の明度になるように分担してドットラインのドットを形成している。また、重複しない範囲のノズル、例えばノズル列411Aのノズル#10では、当該ノズル単独でドットラインを形成している。
ここで、図15の場合には、ノズル列411Bのノズル#1で形成するドットとノズル列411Aのノズル#10で形成するドットの距離が狭くなっている。今、媒体搬送誤差などにより、2つのノズル列のノズルで形成するドットのノズル列方向の形成位置が、2つのノズル列の重複範囲が少なくなる方向、つまり、ノズル列411Bのノズル#1で形成するドットが図の右方向、にずれた場合を考えると、図でノズル列411Bのノズル#1で形成するドットとノズル列411Aのノズル#10で形成するドットの距離が広くなり、この領域の単位面積あたりのインク量は減少するものの、両ドットはもともと距離が狭く重なっていたことから、ドットの重なりが減り被覆率は増加するため、この領域の明度変化は比較的少ない。
一方、図16の場合には、ノズル列411Bのノズル#1で形成するドットとノズル列411Aのノズル#10で形成するドットの距離が広くなっている。今、同様に、2つのノズル列のノズルで形成するドットのノズル列方向の形成位置が、2つのノズル列の重複範囲が少なくなる方向にずれた場合を考えると、図でノズル列411Bのノズル#1で形成するドットとノズル列411Aのノズル#10で形成するドットの距離がより広くなり、両ドットはもともと重なっていない為、被覆率は変化せず、この領域の単位面積あたりのインク量は減少し、この領域の明度が明るくなる明度変化が比較的大きい。
そして、2つのノズル列の重複範囲の端部付近に上述の影響が起こるものの、実際には、ノズルピッチは非常に小さく重複範囲も小さいものであることから、目視において、重複範囲全体として、図16の場合に明度が明るくなる影響が比較的大きく観察されるのである。
よって、図15のように、一部重複する範囲を増加させる方向に第1ノズル列の端部のノズルを1ノズルピッチ未満(ここでは、1/2ノズルピッチ)ずれるようにして第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bを配置する。このようにすることによって、搬送時の蛇行等により、形成されるドット位置に変動を生じてしまう場合であっても、形成されるドットの位置の変動に対して明度変化の少ない構成とすることができる。
一方、このような構成は、重複するノズルに対応するラスタライン上のドットの数を予め増加させておくことによっても実現することができる。つまり、第1ノズル列411Aによるドットと第2ノズル列411Bによるドットが重なり合うように形成される部分を作っておくことにより、2つのノズル列の重複する範囲が減少する方向に第1ノズル列411A又は第2ノズル列411Bが移動したかのような印刷が行われた場合(第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとで構成されるノズル列の幅Y1があたかも広くなったとき)でも、単位面積あたりのインク量が減少するものの、重複して形成されたドット同士が離れるように移動することで被覆率が増加する。そして、両者は相殺し、明度変化が生じにくくなる。
ただし、単にこのような構成で印刷を行うとすると、一部重複する範囲に対応する領域において濃度の高い印刷となってしまうため、上述のような補正値取得処理(図9)のような処理を行って階調値補正を行うことにする。つまり、図15のような構成で補正用パターンを印刷し、その後、図9に示す補正値取得処理を行う。そして、得られた補正値を用いて階調値補正を行いつつ、補正用パターンを形成したときのノズル構成で印刷を行うことでより、ドット位置の変動に対して影響の少ない印刷を行うことができるようになる。すなわち、濃度むらの少ない印刷を行うことができるようになる。
以下に示す実施形態では、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとの配置を、重複する範囲のノズル同士が搬送方向について重なり合うような構成としつつも、重複する範囲におけるノズル使用比率を重複する範囲以外におけるノズル使用比率よりも高めるようにして、重複する範囲に対応する領域により多くのドットを形成して濃度の高い印刷を行うこととしている。
<本実施形態におけるオーバーラップ処理について>
図18は、オーバーラップ処理の実現方法を説明するための図である。図の上段には、入力画像が示されている。ここでは、このような入力画像を2つのノズル列(第1ノズル列411A、第2ノズル列411B)で分担して形成する手法が示されている。その入力画像の下段には、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bに分配された入力画像が示されている。また、更に下段には、第1ノズル列411Aの重複領域(第2ノズル列411Bと一部重複する範囲)において適用されるマスク(以下、オーバーラップマスク)と、第2ノズル列411Bの重複領域において適用されるオーバーラップマスクと、が示されている。後述するが、このようなオーバーラップマスクをそれぞれ適用することによって、重複領域においてノズル列毎に分担して形成する画像を得ることができるようになっている。図の最下段には、各ノズル列が形成を受け持つ画像が示されている。
尚、ここで示される画像は、説明の容易のために、ドットを形成するかドットを形成しないか、の2つの状態の画素の集合からなる画像としている。
分配した入力画像に対して、各ノズル列に対応するオーバーラップマスクの論理積をとることによって、各ノズル列が形成を受け持つ画像(ドット)を特定することができる。このようにして、重複領域に対応するノズルについて、ノズル列毎に形成するドットを特定することができる。
図19は、参考例のオーバーラップマスクの作成方法について説明するための図である。図の最上段には、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bの各ノズルのノズル使用比率が示されている。また、ノズル使用比率の下段には、第1ノズル列411Aのノズル使用比率で8つのノズル(8ラスタ分)とその両側のノズル(それぞれ1ラスタ分)が255階調の画像を形成したときのグレースケールが示されている。
例えば、第1ノズル列411Aのノズル#1〜#10は、対応するドットラインを形成するにあたって100%のノズル使用比率である。このときの階調値は255である。また、第1ノズル列411Aのノズル#11は、対応するドットラインを形成するにあたって、88.8%のノズル使用比率となる(階調値は226)。また、ノズル#12は、対応するドットラインを形成するにあたって、77.7%のノズル使用比率となる(階調値は198)。また、ノズル#13は、対応するドットラインを形成するにあたって、66.6%のノズル使用比率となる(階調値は170)。また、ノズル#14は、対応するドットラインを形成するにあたって、55.5%のノズル使用比率となる(階調値は142)。また、ノズル#15は、対応するドットラインを形成するにあたって、44.4%のノズル使用比率となる(階調値は113)。また、ノズル#16は、対応するドットラインを形成するにあたって、33.3%のノズル使用比率となる(階調値は85)。また、ノズル#17は、対応するドットラインを形成するにあたって、22.2%のノズル使用比率となる(階調値は57)。また、ノズル#18は、対応するドットラインを形成するにあたって、11.1%のノズル使用比率となる(階調値は28)。
このような対応関係にて形成されるグレースケールについてハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理は、前述のようなディザ法などによる既知のハーフトーン処理が用いられる。このようにハーフトーン処理が行われると、図の最下段に示されるような第1ノズル列411A用のオーバーラップマスクが作成される。図において、黒色で示された部分と重複する画像のドットを第1ノズル列411Aのノズルが形成することになる。一方、図において、白色で示された部分と重複する画像のドットを第2ノズル列411Bのノズルが形成する。図において白色で示された部分は、図18における第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクと同じになっている。
このようにすることで、各ノズル列のノズル使用比率に応じたオーバーラップマスクを作成することができる。
図20は、ノズル列の重複領域について合計のノズル使用比率が100%のときのドットの形成の一例について説明する図である。図において、各斜線で示した正方形が形成されるドットである。そして、各ドットについて、どちらのノズル列のノズルが形成したドットであるのかが分かるように、ノズル列のノズルに付された斜線の方向と、正方形に付された斜線の方向が一致するように示されている。そして、図に示すように各ノズルがドットを形成することにより、各画素領域は必ずいずれかのノズルによってドットが形成されるようになっている。
尚、ここでは、前述の図19に示したオーバーラップマスクとは異なるオーバーラップマスクを適用して形成するドットが割り当てられている。
図21は、第2ノズル列411Bによるドットの位置がノズル列方向にずれたときの一例について説明する図である。これは、例えば、第1ノズル列411Aによるドットの形成が行われた後の搬送において、用紙がy軸のプラス方向に若干移動してしまってから、第2ノズル列411Bによるドットの形成が行われた場合に相当する。これは、搬送において用紙がy軸方向に移動せず、第2ノズル列411Bがy軸のマイナス方向にずれているときと相対的に同様のものである。
よって、図では、前述の図20に対して、第2ノズル列411Bがy軸のマイナス方向に1/2ノズルピッチだけずれた様子が示されている。また、このようなノズル列の配置において形成されたドットが正方形にて示されている。尚、このとき、第2ノズル列411Bの位置がずれて配置された事以外は、図20に示されたドット形成と同じ条件でドットを形成している。
このようにドットが配置された結果、図に示されるようにドット同士が重複して形成される箇所がある一方、ドット同士の間隔が広くあいてしまっている箇所が存在することが分かる。このように、ドット同士が重複して形成される箇所が存在するようになる一方で、ドット同士の間隔が広くあいてしまっている箇所が存在するようになると、図20のときと比べて被覆率が低下する。すると、この領域では色が淡くなり、結果として白スジとなって現れるようになる。
図22は、ノズル列の重複領域について合計のノズル使用比率が100%を超えるときのドットの形成の一例について説明する図である。ここでも、図において、各斜線で示した正方形が形成されるドットである。そして、各ドットについて、どちらのノズル列のノズルが形成したドットであるかが分かるように、ノズル列のノズルに付された斜線の方向と、正方形に付された斜線の方向とが一致するように示されている。
そして、図に示すようにドットを形成することにより、各画素領域には必ずいずれかのノズルによってドットが形成され、かつ、いくつかの画素領域には両方のノズル列のノズルによってドットが形成されるようになっている。
図23は、ノズル列の重複する部分について合計のノズル使用比率が100%を超え、かつ、第2ノズル列411Bによるドットの位置がノズル列方向にずれたときにおけるドットの形成の一例について説明する図である。これも例えば、第1ノズル列411Aによるドットの形成が行われた後の搬送において、用紙がy軸のプラス方向に若干移動してしまってから、第2ノズル列411Bによるドットの形成が行われた場合に相当する。これは、搬送において用紙がy軸方向に移動せず、第2ノズル列411Bがy軸のマイナス方向にずれているときと相対的に同様のものである。
よって、図では、前述の図22に対して、第2ノズル列411Bがy軸のマイナス方向に1/2ノズルピッチだけずれた様子が示されている。また、このようなノズル列の配置において形成されたドットが正方形にて示されている。尚、このとき、第2ノズル列411Bの位置がずれて配置された事以外は、図22に示されたドット形成と同じ条件でドットを形成している。
このようにドットが配置された結果、図に示されるようにドット同士が重複して形成される箇所がある一方、ドット同士の間隔が広くあいてしまっている箇所が存在することが分かる。そして、図22のときと比べて被覆率が低下する。しかしながら、2つのノズル列のノズルによって重複してドットの形成される箇所において、ドット同士が離れるように形成されることで、その箇所の被覆率は増加する。よって、被覆率の低下と増加とが相殺され、結果として、明度変化は少なくなる。
図24は、重複領域ついて合計のノズル使用比率が100%を超えるときの第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bのノズル使用比率を説明する図である。図に示すようなノズル使用比率にすることで、重複領域について合計のノズル使用比率が100%を超えるようにすることができる。そして、重複領域における合計のノズル使用比率が100%を超えるようにするために、2つのノズル列のノズルによってほぼ同じ箇所に重複してドットが形成されるようにすることで、ドットの位置変動に対して明度変化を少なくすることができる。このようにして、重複領域における合計のノズル使用比率が100%を超えるようにするために、2つのノズル列のノズルによってほぼ同じ箇所に重複してドットが形成されるようなオーバーラップマスクを使用する必要がある。
次に、重複領域における合計のノズル使用比率が100%を超えるときに対応するオーバーラップマスクの作成方法について説明する。
図25は、本実施形態におけるオーバーラップマスクを作成するためのマトリックスについて説明するための図である。ここでも、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bのそれぞれ8つのノズルが搬送方向について重複する場合を例に説明する。8つのノズルが重複しているため、このマトリックスは、8×8の升目からなる。尚、以下の説明では、図に示すようにm行n列の行と列とを特定することにより、このマトリックスの各升目を引用する。
図26Aは、本実施形態におけるノズル使用比率を示す図である。図には、第1ノズル列411Aのノズル番号と、対応するノズル使用比率とが示されている。また、第2ノズル列411Bのノズル番号と、対応するノズル使用比率とが示されている。ここで示されるノズル使用比率は、図6において示されるノズル使用比率よりも高く設定されている。
図26Bは、本実施形態におけるノズル使用比率に対する階調値を示す図である。ここでは、最高階調値を255としたときの、ノズル使用比率に対する階調値が示されている。図には、第1ノズル列411Aのノズル番号と対応する階調値が示されている。また、第2ノズル列411Bのノズル番号と対応する階調値が示されている。
図27は、本実施形態における第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクについて説明するための図である。図には、本実施形態における第1ノズル列411Aのノズル使用比率に対応する階調値と、これによって作成される第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクが示されている。オーバーラップマスクは、ドットの形成を可能とすることを示す「1」と、ドットを形成させないことを示す「0」とで示されている。
このようなオーバーラップマスクは、前述の図25におけるマトリックスに示された閾値と、ノズル使用比率に対応する階調値をと、が比較され、階調値の方が高いときには「1」が設定され、階調値の方が高くない場合には「0」が設定されることにより作成される。
例えば、図に示すように、第1ノズル列411Aのノズル#11に対応する階調値(245)が図25に示される行列の1列目(n=1)の値と比較される。1行1列目(m=1,n=1)の値は191であるため、階調値である245と比較すると、階調値の方が高い値である。よって、対応する升目である、1行1列目(m=1,n=1)には「1」が設定されることになる。また、例えば、第1ノズル列411Aのノズル#12に対応する階調値(232)が図25に示される行列の2列目(n=2)の値と比較される。2行2列目(m=2,n=2)の値は、239であるため、階調値である232と比較すると、階調値のほうが低い値である。よって、対応する升目である、2行2列目(m=2,n=2)には「0」が設定されることになる。
このような作業が8行8列のマトリックスについて行われることによって、図27に示すような第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクを作成することができる。
図28は、本実施形態における第2ノズル列411Bのオーバーラップマスク作成の途中経過を説明するための図である。図には、本実施形態における第2ノズル列411Bのノズル使用比率に対応する階調値と、255からこの階調値を減算した反転階調値とが示されている。また、反転階調値によって作成される第2ノズル列411Bのビット反転前オーバーラップマスクが示されている。
ここでも、前述のように図25における行列に示された閾値と反転階調値とが比較され、反転階調値の方が高いときには「1」が設定され、階調値の方が高くない場合には「0」が設定されることにより作成される。
例えば、図に示すように、第2ノズル列411Bのノズル#1に対応する反転階調値(197)が図25に示される行列の1列目(n=1)と比較される。1行1列目(m=1,n=1)の値は、191であるため、反転階調値である197と比較すると、反転階調値のほうが高い値である。よって、対応する升目である1行1列目(m=1,n=1)には「1」が設定されることになる。
このような作業が8行8列の行列について行われることによって、図28に示すような、第2ノズル列411Bのビット反転前オーバーラップマスクを作成することができる。そして、このビット反転前オーバーラップマスクの各値を反転(「1」の場合「0」に、「0」の場合「1」に)することにより、第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクを作成することができる。
図29は、本実施形態における第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクについて説明するための図である。図には、本実施形態における第2ノズル列411Bのノズル番号と対応するオーバーラップマスクが示されている。
図30は、本実施形態における第1ノズル列411のオーバーラップマスクと第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクについて論理積演算を行ったときの行列を示す図である。ここでは、図27に示された第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクと、図29に示された第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクの、同じ升目に対応するビット同士について論理積演算が行われた結果が示されている。
例えば、第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクの1行1列目(m=1,n=1)の値「1」と、第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクの1行1列目(m=1,n=1)の値「0」と、の論理積演算を行った結果として、1行1列目には「0」が示されている。また、第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクの5行1列目(m=5,n=1)の値「1」と、第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクの5行1列目(m=5,n=1)の値「1」と、の論理積演算を行った結果として、5行1列目には「1」が示されている。
このように、論理積演算を行うことで、2つのオーバーラップマスクにおいて共に値が「1」である升目に「1」が示されていることになる。そして、その位置には第1ノズル列411Aによってもドットが形成され、第2ノズル列411Bによってもドットが形成されることになる。つまり、ドットが重複して形成される箇所が「1」で示されることになる。
図30の下段には、マトリックスの列に対応する重なり合計数が示されている。重なり合計数は、対応する列にいくつの「1」が存在するかを示したものである。図を参照すると、重複領域のノズルにおいて、その中央付近(第1ノズル列411Aのノズル#14〜#15、第2ノズル列411Bのノズル#4〜#5に対応)の重なり合計数が多いことがわかる。これは、図24に示すように重複領域において、その中央付近のノズル使用比率をその端部より高めたためである。
また、重なり合計数のいずれもが1以上の数値になっている。このようにすることによって、重複領域のノズルが、重複領域以外のノズルが形成するドットよりも多くのドットを形成することができるようになっている。
図31は、本実施形態における第1ノズル列411Aのオーバーラップマスクと第2ノズル列411Bのオーバーラップマスクについて論理和演算を行ったときの行列を示す図である。図には、行列の全てに「1」が設定されていることが示されている。すなわち、このような方法で作成された本実施形態におけるオーバーラップマスクを用いて印刷を行うことで、いずれの場所にも抜けがないようにドットを形成することができるとともに、一部の場所(画素領域)については図30に示すように、第1ノズル列411Aのノズルと第2ノズル列411Bのノズルの両者によって重複してドットが形成されるようにすることができる。
ただし、単にこのようなオーバーラップマスクを用いて印刷を行うこととすると、前述のように重複領域に対応する範囲の濃度が高くなってしまうため、上述のような補正値取得処理(図9)のような処理を行って階調値補正を行うことにする。つまり、図24のような構成で補正用パターンを印刷し、その後、図9に示す補正値取得処理を行う。そして、得られた補正値を用いて階調値補正を行いつつ、補正用パターンを形成したときのような構成で印刷を行うことにより、ドット位置の変動に対して影響の少ない印刷を行うことができるようになる。
その結果として、ノズル列同士が一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて一部重複しない範囲のドットラインよりも階調値が低くなるように補正する濃度補正値が設定されたプリンタであって、ノズル列同士が一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて一部重複しない範囲のドットラインよりもドットを多く形成させるようなオーバーラップマスクを有するプリンタが実現される。
===印刷処理===
図32は、ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。プリンタ1を購入したユーザは、プリンタ1に同梱されているCD−ROMに記憶されたプリンタドライバ(若しくは、プリンタ製造会社のホームページからダウンロードしたプリンタドライバ)を、コンピュータにインストールする。このプリンタドライバには、図中の各処理をコンピュータに実行させるためのコードを備えている。また、ユーザは、コンピュータにプリンタ1を接続する。
まず、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリに記憶されている補正値テーブル(図13参照)を、プリンタ1から取得する(S302)。
ユーザがアプリケーションプログラム上から印刷を指示したとき、プリンタドライバが呼び出され、印刷対象となる画像データ(印刷画像データ)をアプリケーションプログラムから受け取り、その印刷画像データに対して解像度変換処理を行う(S304)。解像度変換処理とは、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。ここでは、印刷解像度は360×360dpiであり、解像度変換処理後の各画素データは、RGB色空間により表される256階調のデータである。
次に、プリンタドライバは、色変換処理を行う(S306)。色変換処理とは、プリンタ1のインク色の色空間に合わせて画像データを変換する処理である。ここでは、RGB色空間の画像データ(256階調)が、CMYK色空間の画像データ(256階調)に変換される。
これにより、256階調のCMYK色空間の画像データが得られる。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、CMYK色空間の画像データのうちの、ブラック平面の画像データについて説明する。
次に、プリンタドライバは、濃度むら補正処理を行う(S308)。濃度むら補正処理は、用紙上の画素列(ラスタラインに対応)ごとの補正値に基づいて、各画素列に属する画素データの階調値をそれぞれ補正する処理である。
例えば、ユーザのコンピュータ110のプリンタドライバは、各画素データの階調値(以下、補正前の階調値をSinとする)を、その画素データが対応するラスタラインの濃度補正値Hに基づいて補正する(以下、補正後の階調値をSoutとする)。
具体的には、あるラスタラインの階調値Sinが指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seの何れかと同じであれば、コンピュータ110のメモリに記憶されている濃度補正値Hをそのまま用いることができる。例えば画素データの階調値Sin=Sbであれば、補正後の階調値Soutは次式によって求められる。
Sout=Sb×(1+Hb)
一方、画素データの階調値が指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seと異なる場合、その周囲の指令階調値の濃度補正値を用いた補間に基づいて補正値を算出する。例えば指令階調値Sinが指令階調値Sbと指令階調値Scとの間の場合、指令階調値Sbの濃度補正値Hb、及び指令階調値Scの濃度補正値Hcを用いた線形補間により求めた補正値をH´とすると、指令階調値Sinの補正後の階調値Soutは次式によって求められる。
Sout=Sin×(1+H´)
このようにして、濃度補正処理が行なわれる。
濃度むら補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、高階調数のデータを、低階調数のデータに変換する処理である。ここでは、256階調の印刷画像データが、プリンタ1の表現可能な4階調の印刷画像データに変換される。ハーフトーン処理方法としてディザ法などが知られており、本実施形態もこのようなハーフトーン処理を行う。
本実施形態において、プリンタドライバは、濃度むら補正処理された画素データに対して、ハーフトーン処理を行うことになる。この結果、濃く視認されやすい部分の画素データの階調値は低くなるように補正されているので、その部分のドット生成率は低くなる。逆に、淡く視認されやすい部分ではドット生成率が高くなる。
次に、プリンタドライバは、ラスタライズ処理を行う(S312)。ラスタライズ処理は、印刷画像データ上の画素データの並び順を、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。その後、プリンタドライバは、プリンタ1を制御するための制御データを画素データに付加することによって印刷データを生成し(S314)、その印刷データをプリンタ1に送信する(S316)。
プリンタ1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的には、プリンタ1のコントローラ60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20などを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御して各ノズルからインクを吐出する。このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタ1が印刷処理を行えば、各ラスタラインのドット生成率が変更され、用紙上の列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像の濃度むらが抑制される。
===第2実施形態===
ノズル列同士が一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて一部重複しない範囲のドットラインよりも階調値が低くなるように補正する濃度補正値が設定されたプリンタであって、ノズル列同士が一部重複する範囲に対応するドットラインにおいて一部重複しない範囲のドットラインよりもドットを多く形成させるようなオーバーラップマスクを有するプリンタを、次のように実現することもできる。
第2実施形態では、ドットの出力比率に応じて濃度補正係数rを設定することとする。ここでは、例としてブラックKについての濃度補正について説明するが、濃度補正係数rに対する、濃度補正後の濃度K’と濃度補正前の濃度Kは次式で表される。
K’(iraster)=K’(iraster)×r(iraster)
ここで、irasterは、ラスタ番号である。
図33は、ドット出力比率と濃度補正係数について説明するための図である。図には、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bの位置に対応するドット出力比率と濃度補正係数が示されている。
ここでドット出力比率は、各ラスタラインにおいて第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bの形成可能なドットの数を百分率で表したものである。ここでは、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bのノズル列同士が重なり合う領域(前述の重複領域)のドット出力比率が、ノズル列同士が重なり合わない部分のドット出力比率よりも高くなるようにされている。
濃度補正係数rは、上式において示される係数であるが、濃度補正係数rは、補正後濃度が、重複領域とそうでない領域とで、ほぼ同じ濃度になるように決められる。
そのため、図の重複領域において、ドット出力比率は100%よりも高い値となり、ドットが多く出力されている分、濃度補正係数は濃度を低くするような低い値に設定されている。
ドット出力比率を関数f(iraster)とした場合、濃度補正係数は、その逆数に所定の係数αを乗じたものとして表される。すなわち、
r(iraster)=α×1/f(iraster)
で表される。ここで、係数αは1よりも小さい値とする。
前述の第1実施形態におけるプリンタは、その構成から、重複領域におけるドット出力比率が高めに設定される。よって、これに対して、補正後の濃度が低くなるように濃度補正係数を予め設定して、補正用パターンCPを形成することができる。このとき、αの値は1よりも小さい値とされているので、重複領域において形成される補正用パターンCPは重複領域以外の箇所と比較して、若干濃度の高い印刷がなされる。
このように、補正値取得処理を行う前に、ドット出力比率に応じた濃度補正係数を設定しておくこととしてもよい。
このようにすることによって、濃度むらの発生を抑制することができる。
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、ノズル列411Aとノズル列411Bの重複範囲のノズル数を、1重複範囲の1ノズル列当たり8個としているが、8個に限らず1個以上であればよい。
また、上述の実施形態は、プリンタなど印刷装置の製造工程において行なってもよいし、製造後のメンテナンス等において、補正値設定方法等として行なってもよい。その場合、当該印刷装置を使用するユーザが行なっても良い。なお、補正値は印刷装置と一体の記憶部に記憶されても良いし、印刷装置とは別体の記憶部に記憶されても良い。また、記憶部は、半導体記憶部の他に、光学的に読取可能な記憶部でも良いし、磁気的な記憶部や可視記憶部など他の記憶部でも良い。
また、上述の実施形態では、図32において、S306色変換処理とS310ハーフトーン処理の間に濃度むら補正処理を行なっているが、これに限らず、最終的に、ドットによって形成されるドットラインの濃度補正が行なえるものであればよく、どの段階で濃度むら補正をおこなってもよい。
上述の実施形態では、流体噴射装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
<シリアル型プリンタについて>
前述の実施形態では、複数のヘッドがノズル列方向に並び、搬送される用紙に対して印刷を行う、所謂ライン型プリンタを例に説明を行ったが、前述の第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bとを1つのキャリッジに搭載し、このキャリッジを用紙の搬送方向と交差する方向に移動させながら印刷する場合にも適用することができる。
<ヘッドについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。