本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
媒体との相対移動方向に対して交差するノズル列を有する第1ノズル列と、
前記相対移動方向に対して交差するノズル列を有し、前記相対移動方向に対して交差する方向において、前記第1ノズル列と一部重複して配置される第2ノズル列と、
濃度補正を行って前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とから流体を噴射させて画像を形成させる制御部であって、前記媒体における第1領域において適用される濃度補正値と、前記相対移動方向において前記第1領域よりも下流側の第2領域に適用される濃度補正値とを異ならせて、前記画像を形成させる制御部と、
を備える流体噴射装置。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
かかる流体噴射装置であって、前記第1領域における濃度補正値と前記第2領域における濃度補正値は、前記第1領域と前記第2領域においてそれぞれ補正用パターンが形成され、該補正用パターンの濃度が前記相対移動方向に複数並ぶ画素からなる画素列毎に測定され、測定された前記画素列毎の濃度に基づいてそれぞれ求められることが望ましい。また、前記第1領域及び前記第2領域以外の領域である第3領域の濃度補正値が、前記第1領域における濃度補正値と前記第2領域における濃度補正値とに基づく線形補間を用いることにより求められ、前記制御部は、前記第3領域における前記濃度補正値を用いて前記第3領域における画像を形成させることが望ましい。
また、前記相対移動方向に前記第1ノズル列と前記第2ノズル列との距離だけ前記媒体が相対移動する間に、前記媒体が前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とに対して前記交差する方向に相対的に移動する相対移動量が求められ、前記第1領域及び前記第2領域以外の領域である第3領域における濃度補正値は、前記第1領域における濃度補正値と前記第2領域における濃度補正値と前記第1領域における前記相対移動量と前記第2領域における前記相対移動量と、に基づいて求められることとしてもよい。また、前記第1領域における前記相対移動量に対する濃度補正値と、前記第2領域における前記相対移動量に対する濃度補正値と、が前記相対移動量に関して線形補間され、前記第3領域における相対移動量に対する濃度補正値が、前記線形補間された濃度補正値から求められることで、前記第3領域において適用される濃度補正値が求められることが望ましい。
また、前記相対移動量は、前記相対移動方向に移動する前記媒体について、前記第1ノズル列によって前記相対移動方向に形成された第1罫線と前記第2ノズル列によって前記相対移動方向に形成された第2罫線との距離に基づいて求められることが望ましい。また、前記第3領域において求められる前記濃度補正値は、前記一部重複する範囲における前記第1ノズル列のノズルと前記第2ノズル列のノズルと、前記一部重複する範囲に隣接する各1つのノズルと、が前記相対移動方向に形成するドットラインに対応する画素列の濃度を補正するための濃度補正値であることが望ましい。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
媒体との相対移動方向に対して交差するノズル列を有する第1ノズル列と、前記相対移動方向に対して交差するノズル列を有し、前記相対移動方向に対して交差する方向において、前記第1ノズル列と一部重複して配置される第2ノズル列とを準備することと、
前記媒体における第1領域において適用される濃度補正値と、前記相対移動方向において前記第1領域よりも下流側の第2領域に適用される濃度補正値とを異ならせて生成することと、
前記第1領域に及び前記第2領域において各前記濃度補正値を適用して濃度補正を行い、前記第1ノズル列と前記第2ノズル列とから流体を噴射させて画像を形成させることと、
を含む流体噴射方法。
このようにすることで、濃度むらの発生を抑制することができる。
===第1実施形態===
<用語の説明>
まず、本実施形態を説明する際に用いられる用語の意味を説明する。
図1は、用語の説明図である。
「印刷画像」とは、用紙上に印刷された画像である。インクジェットプリンタの印刷画像は、用紙上に形成された無数のドットから構成されている。
「ドットライン」とは、ヘッドと用紙とが相対移動する方向(移動方向)に並ぶドットの列である。後述の実施形態のようなラインプリンタの場合、「ドットライン」は、用紙の搬送方向に並ぶドットの列を意味する。一方、キャリッジに搭載されたヘッドによって印刷するシリアルプリンタの場合、「ドットライン」は、キャリッジの移動方向に並ぶドットの列を意味する。移動方向と垂直な方向に多数のドットラインが並ぶことによって、印刷画像が構成されることになる。図に示すように、n番目の位置にあるドットラインのことを「第nドットライン」と呼ぶ。
「画像データ」とは、2次元画像を示すデータである。後述する実施形態では、256階調の画像データや、4階調の画像データなどがある。また、画像データは、後述する印刷解像度へ変換前の画像データを指すことも、変換後の画像データを指すこともある。
「印刷画像データ」とは、画像を用紙に印刷するときに用いられる画像データである。プリンタが4階調でドットの形成(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を制御する場合、4階調の印刷画像データは、印刷画像を構成するドットの形成状態を示すことになる。
「読取画像データ」とは、スキャナによって読み取られた画像データである。
「画素」とは、画像を構成する最小単位である。この画素が2次元的に配置されることによって画像が構成される。
「画素列」とは、画像データ上において所定方向に並ぶ画素の列である。図に示すように、n番目の画素列のことを「第n画素列」と呼ぶ。
「画素データ」とは、画素の階調値を示すデータである。後述する実施形態において、ハーフトーン処理前であれば256階調などの多階調のデータを示し、ハーフトーン処理後の4階調の印刷画像データの場合、各画素データは、2ビットデータになり、ある画素のドット形成状態(大ドット・中ドット・小ドット・ドット無し)を示すことになる。
「画素領域」とは、画像データ上の画素に対応した用紙上の領域である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、「画素領域」は、1辺が1/360インチの正方形状の領域になり、用紙上の画素である。
「列領域」とは、画素列に対応した用紙上の領域であり、用紙上の画素列である。例えば、印刷画像データの解像度が360×360dpiの場合、列領域は、1/360インチ幅の細長い領域になる。「列領域」は、印刷画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もあるし、読取画像データ上の画素列に対応した用紙上の領域を意味する場合もある。図中の右下には、前者の場合の列領域が示されている。前者の場合の「列領域」は、ドットラインの形成目標位置でもある。正確に列領域にドットラインが形成される場合、そのドットラインはラスタラインに相当する。後者の場合の「列領域」は、読取画像データ上の画素列が読み取られた用紙上の測定位置(測定範囲)でもあり、言い換えると、画素列の示す画像(画像片)が存在する用紙上の位置でもある。図に示すように、n番目の位置にある列領域のことを「第n列領域」と呼ぶ。第n列領域は第nドットラインの形成目標位置になる。
「画像片」とは、画像の一部分を意味する。画像データ上において、ある画素列の示す画像は、画像データの示す画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、あるラスタラインによって表される画像は、印刷画像の「画像片」になる。また、印刷画像において、ある列領域での発色によって表される画像も、印刷画像の「画像片」に該当する。
ところで、図1の右下には、画素領域とドットとの位置関係が示されている。ヘッドの製造誤差の影響によって第2ドットラインが第2列領域からズレた結果、第2列領域の濃度が淡くなる。また、第4列領域では、ヘッドの製造誤差の影響によってドットが小さくなった結果、第4列領域の濃度が淡くなる。このような濃度むらや濃度むら補正方法を説明する必要があるため、本実施形態では、「ドットライン」、「画素列」、「列領域」等の意味や関係を上記の内容に沿って説明している。
但し、「画像データ」や「画素」等の一般的な用語の意味は、上記の説明だけでなく、通常の技術常識に沿って適宜解釈して良い。
また、以下の説明において、階調値が高いときに濃度が高く、階調値が低いときに濃度が低いものとして説明を行う。また、説明中、濃度が高い場合は明度が低い場合に対応する。
<印刷システムについて>
図2は、印刷システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態の印刷システム100は、図2に示すように、プリンタ1と、コンピュータ110と、スキャナ120とを有するシステムである。
プリンタ1は、流体としてのインクを媒体に噴射して該媒体に画像を形成(印刷)する流体噴射装置であり、本実施形態ではカラーインクジェットプリンタである。プリンタ1は、用紙、布、フィルムシート等の複数種の媒体に画像を印刷することが可能である。なおプリンタ1の構成については後述する。
コンピュータ110は、インターフェース111と、CPU112と、メモリ113を有する。インターフェース111は、プリンタ1及びスキャナ120との間でデータの受け渡しを行う。CPU112は、コンピュータ110の全体的な制御を行うものであり、当該コンピュータ110にインストールされた各種プログラムを実行する。メモリ113は、各種のプログラムや各種のデータを記憶する。コンピュータ110にインストールされたプログラムの中には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプリンタドライバや、スキャナ120を制御するためのスキャナドライバがある。そしてコンピュータ110は、プリンタドライバによって生成された印刷データをプリンタ1に出力する。
スキャナ120は、スキャナコントローラ125と、読取キャリッジ121とを有する。スキャナコントローラ125は、インターフェース122、CPU123、及びメモリ124を有する。インターフェース122は、コンピュータ110との間で通信を行う。CPU123は、スキャナ120の全体的な制御を行う。例えば読取キャリッジ121を制御する。メモリ124は、コンピュータプログラム等を記憶する。読取キャリッジ121は、例えばR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する不図示の3つのセンサ(CCDなど)を有する。
以上の構成により、スキャナ120は、不図示の原稿台に置かれた原稿に光を照射し、その反射光を読取キャリッジ121の各センサにより検出し、前記原稿の画像を読み取って、当該画像の色情報を取得する。そして、インターフェース122を介してコンピュータ110のスキャナドライバに向けて画像の色情報を示すデータ(読取データ)を送信する。
<プリンタの構成>
図3は、プリンタ1の搬送処理とドット形成処理を説明するための斜視図である。ここでは、図2のブロック図も参照しつつプリンタの構成について説明する。
プリンタ1は、搬送ユニット20、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラ60を有する。コントローラ60は、コンピュータ110と接続するためのインターフェース61、演算装置であるCPU62、記憶部に相当するメモリ63、及び、各ユニットを制御するためのユニット制御回路64を含む。
外部装置であるコンピュータ110から印刷データを受信したプリンタ1は、コントローラ60によって各ユニット(搬送ユニット20、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラ60は、コンピュータ110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、用紙に画像を印刷する。プリンタ1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラ60に出力する。コントローラ60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、用紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bと、ベルト24とを有する。不図示の搬送モータが回転すると、上流側ローラ22A及び下流側ローラ22Bが回転し、ベルト24が回転する。給紙された用紙Sは、ベルト24によって、印刷可能な領域(ヘッドと対向する領域)まで搬送される。ベルト24が用紙Sを搬送することによって、用紙Sがヘッドユニット40に対して搬送方向に移動する。印刷可能な領域を通過した用紙Sは、ベルト24によって外部へ排紙される。なお、搬送中の用紙Sは、ベルト24に静電吸着又はバキューム吸着されている。
ヘッドユニット40は、用紙Sにインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、搬送中の用紙Sに対してインクを吐出することによって、用紙Sにドットを形成し、画像を用紙Sに印刷する。本実施形態のプリンタ1はラインプリンタであり、ヘッドユニット40は紙幅分のドットを一度に形成することができる。
図4は、ヘッドユニット40における複数のヘッドの配列の説明図である。図に示すように、紙幅方向に沿って、複数のヘッド41が千鳥列状に並んでいる。尚、ここでは、下面からしか見ることができないノズル列を説明の容易のために上部から観察可能に図示している。
各ヘッドには、不図示であるが、ブラックインクノズル列、シアンインクノズル列、マゼンタインクノズル列及びイエローインクノズル列が形成されている。各ノズル列は、インクを吐出するノズルを複数個(ここでは、360個)備えている。各ノズル列の複数のノズルは、紙幅方向に沿って、一定のノズルピッチ(ここでは、360dpi)で並んでいる。
図5は、ヘッド配置とドット形成の様子の説明図である。後述するヘッドユニット40は、説明の簡略化のため、2個のヘッド(第1ヘッド41A、第2ヘッド41B)から構成されているものとする。また、説明の簡略化のため、各ヘッドにはブラックインクノズル列だけが設けられているものとする。更に説明を簡略化するため、各ヘッドのブラックインクノズル列は、ノズルを18個ずつ備えているものとする。以下の説明において、搬送方向のことを「x方向」と呼び、紙幅方向のことを「y方向」と呼ぶことがある。第1ヘッド41Aは第1ノズル列411Aを有し、第2ヘッド41Bは第2ノズル列411Bを有している。
各ヘッドのブラックインクノズル列は、1/360インチ間隔で紙幅方向(y方向)に並ぶ18個のノズルから構成されている。各ノズルについて、図中の上から順にノズルの番号が付されている。また、図には、ノズルに示された斜線の方向と形成されたドットの斜線の方向が一致するように示されており、どのノズル列のノズルがドットを形成したかが示されている。
搬送中の用紙Sに対して各ノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、2つのノズル列は、用紙に28個のドットラインを形成する。例えば、第1ノズル列411Aのノズル♯1は第1ドットラインを用紙上に形成し、第2ノズル列411Bのノズル♯1は第11ドットラインを用紙上に形成する。各ドットラインは、搬送方向(x方向)に沿って形成される。
ところで、第1ノズル列411Aのノズル#11〜#18と、第2ノズル列411Bのノズル#1〜#8は、紙幅方向の座標について一致するように配置されている。よって、第11ドットライン〜第18ドットラインは、これらの重複するノズルによって分担して形成されることになる。ここでは説明の容易のために、ノズル列の重複する範囲における各ノズルのノズル使用比率を50%にしている。そして、ノズル列の重複する範囲のドットラインにおいて、第1ノズル列411Aのノズルによって形成されたドットと第2ノズル列411Bのノズルによって形成されたドットとが交互に現れる様子が示されている。
本実施形態では、図5に示すようなノズル使用比率によって印刷を行ったときを例に説明を行うが、ノズル列の重複する範囲におけるノズル使用率を以下のようにすることとしてもよい。
図6は、オーバーラップ処理について説明するための図である。図には、第1ノズル列411Aと第2ノズル列411Bと、各ノズル列の重複ノズルがドットラインを形成する際のドットの形成割合が示されている。たとえば、各ドットラインを形成するにあたり、第1ノズル列411Aのノズル#11は88.8%、ノズル#12は77.7%、ノズル#13は66.6%、ノズル#14は55.5%、ノズル#15は44.4%、ノズル#16は33.3%、ノズル#17は22.2%、ノズル#18は11.1%の割合でドットを形成することが示されている。また、各ドットラインを形成するにあたり、第2ノズル列411Bのノズル#1は11.1%、ノズル#2は22.2%、ノズル#3は33.3%、ノズル#4は44.4%、ノズル#5は55.5%、ノズル#6は66.6%、ノズル#7は77.7%、ノズル#8は88.8%の割合でドットを形成することが示されている。尚、以下、この割合のことをノズル使用比率として説明する。つまり、第1ノズル列411Aのノズル#11は88.8%のノズル使用比率でドットラインを形成していることになる。
そして、例えば、第1ノズル列411Aのノズル#11と第2ノズル列411Bのノズル#1とのノズル使用比率とを合計すると100%のノズル使用比率となる。第1ノズル列411Aのノズル#11と第2ノズル列411Bのノズル#1とが形成する共通のドットラインにおいて、連続する100個のドットを形成する場合には、第1ノズル列411Aのノズル#11が約89個のドットを形成し、第2ノズル列411Bのノズル#1が約11個のドットを形成するように、ドットの形成を分担することになる。このようにして、参考例における、第1ノズル列411Aのノズル#1〜第2ノズル列411Bのノズル#18のノズル使用比率は、合計すると常に100%となるように設定されている。
このようにして、ノズル列が重複する範囲において徐々にノズル使用比率を変化させることで、2つのノズル列が重複する範囲とノズル列が重複しない範囲との濃度差を目立たないようにして印刷することができるようになっている。
図7は、用紙Sが理想状態で搬送されたときにおける印刷について説明する図である。理想状態で搬送されるとは、用紙Sが蛇行することなく、ノズルが並ぶノズル列方向に対して交差する方向に搬送されていることをいう。このとき、全ての画素にドットを形成するようにインクを噴射すると、ドットは用紙Sに対して図5に示したように規則的に並ぶ。このため、重複ノズルに対応する範囲においても重複ノズル以外のノズルに対応する範囲においても、均一にドットが形成されることから、用紙Sにおいて均一な印刷を行うことができる。
図8は、用紙Sが蛇行して搬送されたときにおける印刷について説明する図である。図には、濃度むらの生じている部分としてIR1〜IR10が示されている。
図の左側に示される用紙Sは印刷前の用紙であり、図の右側に示される用紙Sは印刷後の用紙である。ここでも各ヘッドのノズルは、図7のときと同様の噴射タイミングでインクを噴射して、一様な濃度の印刷を行おうとしている。しかしながら、後述するように、図の左側に示される用紙Sは、ノズルが並ぶノズル列方向についても若干移動しつつ搬送方向に搬送される。このように用紙Sが蛇行して搬送されつつ各ノズル列からインクが噴射され画像が形成される場合、ノズル列同士が重複する範囲ではドットが均等に形成されず、結果として濃度むらを生ずることとなる。
これは、第1ノズル列411Aによってドットが形成されてから第2ノズル列411Bによって形成されるまでの搬送において、用紙がノズル列方向に若干移動してしまったために、第1ノズル列411Aによるドットに対して第2ノズル列411Bによるドットがノズル列方向にずれて形成されてしまうためである。
図9は、第1ノズル列411Aの一部のノズルと第2ノズル列411Bの一部のノズルとが紙幅方向の座標について一致しないように配置されているときのドットの形成を説明するための図(その1)である。第1ノズル列411Aによるドットの形成が行われた後の搬送において、用紙がy軸のプラス方向に若干移動してしまってから、第2ノズル列411Bによるドットの形成が行われた場合、第2ノズル列がy軸のマイナス方向に若干ずれて配置されたときと同様の印刷(換言すると、2つのノズル列の重複する範囲が減少する方向に第1ノズル列411A又は第2ノズル列411Bが移動したかのような印刷)が行われることとなる。そして、第11ドットライン〜第18ドットラインの領域における単位面積あたりのインク量が減少することになる。結果として、この領域に白スジが発生することになる。このような原理によって、図8の印刷結果における、白スジ(IR1、IR4、IR5、IR8、IR9)が発生する。
図10は、第1ノズル列411Aの一部のノズルと第2ノズル列411Bの一部のノズルとが紙幅方向の座標について一致しないように配置されているときのドットの形成を説明するための図(その2)である。第1ノズル列411Aによるドットの形成が行われた後の搬送において、用紙がy軸方向のマイナス方向に若干移動してしまってから、第2ノズル列411Bによるドットの形成が行われた場合、第2ノズル列がy軸のプラス方向に若干ずれて配置されたときど同様の印刷(換言すると、2つのノズル列の重複する範囲が増加する方向に第1ノズル列411A又は第2ノズル列411Bが移動したかのような印刷)が行われることになる。そして、第11ドットライン〜第18ドットラインの領域における単位面積あたりのインク量が増加することになる。結果として、この領域に黒スジが発生することになる。このような原理によって、図8の印刷結果における、黒スジ(IR2、IR3、IR6、IR7、IR10)が発生する。
<プリンタドライバによる処理について>
図11は、プリンタドライバによる処理の説明図である。以下、プリンタドライバによる処理について、図を参照しながら説明する。
印刷画像データは、図に示すように、プリンタドライバによって解像度変換処理(S102)、色変換処理(S104)、ハーフトーン処理(S106)、及び、ラスタライズ処理(S108)が実行されることにより生成される。
まず、解像度変換処理では、アプリケーションプログラムの実行により得られたRGB画像データの解像度が、指定された画質に対応する印刷解像度に変換される。次に、色変換処理では、解像度が変換されたRGB画像データがCMYK画像データに変換される。ここで、CMYK画像データとは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び、ブラック(K)の色別の画像データを意味する。そして、CMYK画像データを構成する複数の画素データは、それぞれ256段階の階調値で表される。この階調値は、RGB画像データに基づいて定められるものであり、以下、指令階調値ともいう。
次に、ハーフトーン処理では、画像データを構成する画素データが示す多段階の階調値が、プリンタ1で表現可能な少段階のドット階調値に変換される。すなわち、画素データが示す256段階の階調値が、4段階のドット階調値に変換される。具体的には、ドット階調値[00]に対応するドットなし、ドット階調値[01]に対応する小ドットの形成、ドット階調値[10]に対応する中ドットの形成、及び、ドット階調値[11]に対応する大ドットの形成の4段階に変換される。その後、各ドットのサイズについてドット生成率が決められた上で、ディザ法等を利用して、プリンタ1がドットを分散して形成するように画素データが作成される。
次に、ラスタライズ処理では、ハーフトーン処理で得られた画像データに関し、各ドットのデータが、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更される。そして、ラスタライズ処理されたデータは、印刷データの一部として送信される。
<濃度むらについて>
図12Aは、理想的にドットが形成されたときの様子の説明図である。理想的にドットが形成されるとは、画素領域の中心位置にインク滴が着弾し、そのインク滴が用紙S上に広がって、画素領域にドットが形成されることである。各ドットが各画素領域に正確に形成されると、ドットライン(搬送方向にドットが並んだドット列)が列領域に正確に形成される。
図12Bは、濃度むらが発生したときの説明図である。2番目の列領域に形成されたドットラインは、ノズルから吐出されたインク滴の飛行方向のばらつきにより、3番目の列領域側に寄って形成されている。その結果、2番目の列領域は淡くなり、3列目の列領域は濃くなる。また、5番目の列領域に吐出されたインク滴のインク量は規定のインク量よりも少なく、5番目の列領域に形成されるドットが小さくなっている。その結果、5列目の列領域は淡くなる。
このように濃淡の違うラスタラインからなる印刷画像を巨視的に見ると、搬送方向に沿う縞状の濃度むらが視認される。この濃度むらは、印刷画像の画質を低下させる原因となる。
以上のような濃度むらを抑制するための方策としては、画像データの階調値(指令階調値)を補正することが考えられる。つまり、濃く(淡く)視認され易い列領域に対しては、淡く(濃く)形成されるように、その列領域を構成する単位領域に対応する画素の階調値を補正すればよい。このため、ラスタライン毎に画像データの階調値を補正する濃度補正値Hを算出することになる。この濃度補正値Hは、プリンタ1の濃度むら特性を反映した値である。
図12Cは、濃度むらの発生が抑制された様子を示す図である。ラスタライン毎の濃度補正値Hが算出されていれば、ハーフトーン処理の実行に際してプリンタドライバによって、その濃度補正値Hに基づいてラスタライン毎に画素データの階調値を補正する処理が行われる。この補正処理により補正された階調値で各ドットラインが形成されると、対応するラスタラインの濃度が補正される結果、図12Cに示すように、印刷画像における濃度むらの発生が抑制されることになる。
例えば、図12C中では、淡く視認される2番目と5番目の列領域のドット生成率が高くなり、濃く視認される3番目の列領域のドット生成率が低くなるように、各列領域に対応する画素の画素データの階調値が補正される。このように、各列領域のラスタラインのドット生成率が変更され、列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像全体の濃度むらが抑制される。
<濃度補正値Hの算出について>
次に、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する処理(以下、補正値取得処理ともいう)について概説する。補正値取得処理は、例えば、プリンタ1の製造工場の検査ラインにおいて、補正値算出システムの下で行われる。補正値算出システムとは、プリンタ1の濃度むら特性に応じた濃度補正値Hを算出するためのシステムであり、上記の印刷システム100と同様の構成である。つまり、補正値算出システムは、プリンタ1、コンピュータ110、及び、スキャナ120(便宜上、印刷システム100の場合と同一の符号にて表記する)を有する。
プリンタ1は、補正値取得処理の対象機器であり、該プリンタ1を用いて濃度むらがない画像を印刷するためには、前記補正値取得処理において該プリンタ1用の濃度補正値Hを算出することになる。検査ラインに置かれたコンピュータ110には、該コンピュータ110が補正値取得処理を実行するための補正値算出プログラムがインストールされている。
<補正値取得処理について>
図13は、補正値取得処理の流れを示す図である。多色印刷が可能なプリンタ1を対象とする場合、各インク色についての補正値取得処理は同様の手順により実施される。以下の説明では、一のインク色(例えば、ブラック)についての補正値取得処理について説明する。
先ず、コンピュータ110が印刷データをプリンタ1に送信し、既述の印刷動作と同様の手順により、プリンタ1が補正用パターンCPを用紙Sに形成する(S202)。
図14は補正用パターンCPの説明図である。この補正用パターンCPは、図14に示すように、5種類の濃度のサブパターンCSPで形成される。
各サブパターンCSPは、帯状パターンであり、搬送方向に沿うラスタラインが紙幅方向に複数並ぶことにより構成される。また、各サブパターンCSPは、それぞれ一定の階調値(指令階調値)の画像データから生成されたものであり、図14に示すように、左のサブパターンCSPから順に濃度が濃くなっている。具体的には、左から15%、30%、45%、60%。85%の濃度のサブパターンとなっている。以下、濃度15%のサブパターンCSPの指令階調値をSa、濃度30%のサブパターンCSPの指令階調値をSb、濃度45%のサブパターンCSPの指令階調値をSc、濃度60のサブパターンCSPの指令階調値をSd、そして、濃度85%のサブパターンCSPの指令階調値をSeと表記する。そして、例えば、指令階調値Saにて形成されたサブパターンCSPを、図14に示すように、CSP(1)と表記する。同様に、指令階調値Sb、Sc、Sd、Seにて形成されたサブパターンCSPを、それぞれCSP(2)、CSP(3)、CSP(4)、CSP(5)と表記する。
次に、検査者は補正用パターンCPが形成された用紙Sをスキャナ120にセットする。そして、コンピュータ110は、スキャナ120に補正用パターンCPを読み取らせ、その結果を取得する(S204)。スキャナ120は、前述したようにR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)に対応する3つのセンサを有しており、補正用パターンCPに光を照射し、その反射光を各センサによって検出する。なお、コンピュータ110は、補正用パターンを読み取った画像データ上において、搬送方向に相当する方向に画素が並んだ画素列数と、補正用パターンを構成するラスタライン数(列領域数)が、同数になるように調整する。つまり、スキャナ120にて読み取った画素列と列領域を一対一で対応させる。そして、ある列領域と対応する画素列の各画素が示す読取階調値の平均値を、その列領域の読取階調値とする。
次に、コンピュータ110は、スキャナ120によって取得された読取階調値に基づいて、各サブパターンCSPのラスタライン毎(換言すると列領域毎)の濃度を算出する(S206)。以下、読取階調値に基づいて算出された濃度のことを算出濃度ともいう。
図15は、指令階調値がSa、Sb、ScのサブパターンCSPについてラスタライン毎の算出濃度を示すグラフである。図15の横軸は、ラスタラインの位置を示し、縦軸は、算出濃度の大きさを示している。図15に示すように、各サブパターンCSPは、それぞれ同一の指令階調値で形成されたにも関わらずラスタライン毎に濃淡が生じている。このラスタラインの濃淡差が、印刷画像の濃度むらの原因である。
次に、コンピュータ110は、ラスタライン毎の濃度補正値Hを算出する(S208)。なお、濃度補正値Hは、指令階調毎に算出される。以下、指令階調Sa、Sb、Sc、Sd、Seについて算出された濃度補正値HのことをそれぞれHa、Hb、Hc、Hd、Heとする。濃度補正値Hの算出手順を説明するために、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)のラスタライン毎の算出濃度が一定になるように指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順を例に挙げて説明する。当該手順では、例えば、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における全ラスタラインの算出濃度の平均値Dbtを、指令階調値Sbの目標濃度として定める。図15において、この目標濃度Dbtよりも算出濃度が淡い第iラスタラインでは、指令階調値Sbを濃くする方へ補正すれば良い。一方、目標濃度Dbtよりも算出濃度が濃い第jラスタラインでは、指令階調値Sbを淡くする方へ補正すればよい。
図16Aは第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。また図16Bは、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbを算出する手順についての説明図である。図16A及び図16Bの横軸は指令階調値の大きさを示し、縦軸は算出濃度を示している。
第iラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図16Aに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第iラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値ScのサブパターンCSP(3)における第iラスタラインの算出濃度Dc、に基づいて算出される。より具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも小さくなっている。換言すると、第iラスタラインの濃度は平均濃度よりも淡くなっている。仮に、第iラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第iラスタラインを形成したいのであれば、該第iラスタラインに対応する画素データの階調値、すなわち、指令階調値Sbを、図16Aに示すように、第iラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sb,Db)、(Sc,Dc)から直線近似を用いて、下記式(1)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。
Sbt=Sb+(Sc−Sb)×{(Dbt−Db)/(Dc−Db)} (1)
そして、指令階調値Sbと目標指令階調値Sbtから、下記式(2)により、第iラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hが求められる。
Hb=ΔS/Sb=(Sbt−Sb)/Sb (2)
一方、第jラスタラインの指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbは、図16Bに示す指令階調値SbのサブパターンCSP(2)における第jラスタラインの算出濃度Db、及び、指令階調値SaのサブパターンCSP(1)における第jラスタラインの算出濃度Da、に基づいて算出される。具体的には、指令階調値SbのサブパターンCSP(2)では、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtよりも大きくなっている。仮に、第jラスタラインの算出濃度Dbが目標濃度Dbtと等しくなるように該第jラスタラインを形成したいのであれば、該第jラスタラインの指令階調値Sbを、図16Bに示すように、第jラスタラインにおける指令階調値及び算出濃度の対応関係(Sa,Da)、(Sb,Db)から直線近似を用いて、下記式(3)により算出される目標指令階調値Sbtまで補正すればよい。
Sbt=Sb+(Sb−Sa)×{(Dbt−Db)/(Db−Da)} (3)
そして、上記式(2)により、第jラスタラインについて指令階調値Sbを補正するための濃度補正値Hbが求められる。
以上のようにして、コンピュータ110は、ラスタライン毎に、指令階調値Sbに対する濃度補正値Hbを算出する。同様に、指令階調値Sa、Sc、Sd、Seに対する濃度補正値Ha、Hc、Hd、Heを、それぞれラスタライン毎に算出する。また、他のインク色についても、ラスタライン毎に、指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heを算出する。
その後、コンピュータ110は、濃度補正値Hのデータをプリンタ1に送信し、プリンタ1のメモリ63に記憶させる(S210)。
図17は、メモリ63に記憶された補正値テーブルを示す図である。この結果、プリンタ1のメモリ63には、図17に図示された、ラスタライン毎に5つの指令階調値Sa〜Seの各々に対する濃度補正値Ha〜Heをまとめた補正値テーブルが作成される。
また、図17に示すように、補正値テーブルはインク色別に作成される。この結果、CMYK4色分の補正値テーブルが形成される。この補正値テーブルは、プリンタ1を用いて画像を印刷する際に、当該画像の画像データを構成する各ラスタラインの階調値を補正するためにプリンタドライバによって参照される。
本参考例では、用紙上の画素列に対応するラスタラインごとに濃度を測定し、測定した濃度に基づいて階調値を補正するための補正値を求めている。このようにすることで、ラスタライン毎に濃度補正を行うことができる。そして、用紙上の色むらの発生を抑制することができる。
<印刷処理>
図18は、ユーザ下でプリンタドライバが行う印刷処理のフロー図である。プリンタ1を購入したユーザは、プリンタ1に同梱されているCD−ROMに記憶されたプリンタドライバ(若しくは、プリンタ製造会社のホームページからダウンロードしたプリンタドライバ)を、コンピュータにインストールする。このプリンタドライバには、図中の各処理をコンピュータに実行させるためのコードを備えている。また、ユーザは、コンピュータにプリンタ1を接続する。
まず、プリンタドライバは、プリンタ1のメモリに記憶されている補正値テーブル(図17参照)を、プリンタ1から取得する(S302)。
ユーザがアプリケーションプログラム上から印刷を指示したとき、プリンタドライバが呼び出され、印刷対象となる画像データ(印刷画像データ)をアプリケーションプログラムから受け取り、その印刷画像データに対して解像度変換処理を行う(S304)。解像度変換処理とは、画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、用紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。ここでは、印刷解像度は360×360dpiであり、解像度変換処理後の各画素データは、RGB色空間により表される256階調のデータである。
次に、プリンタドライバは、色変換処理を行う(S306)。色変換処理とは、プリンタ1のインク色の色空間に合わせて画像データを変換する処理である。ここでは、RGB色空間の画像データ(256階調)が、CMYK色空間の画像データ(256階調)に変換される。
これにより、256階調のCMYK色空間の画像データが得られる。なお、以下の説明では、説明の簡略化のため、CMYK色空間の画像データのうちの、ブラック平面の画像データについて説明する。
次に、プリンタドライバは、濃度むら補正処理を行う(S308)。濃度むら補正処理は、用紙上の画素列(ラスタラインに対応)ごとの補正値に基づいて、各画素列に属する画素データの階調値をそれぞれ補正する処理である。
例えば、ユーザのコンピュータ110のプリンタドライバは、各画素データの階調値(以下、補正前の階調値をSinとする)を、その画素データが対応するラスタラインの濃度補正値Hに基づいて補正する(以下、補正後の階調値をSoutとする)。
具体的には、あるラスタラインの階調値Sinが指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seの何れかと同じであれば、コンピュータ110のメモリに記憶されている濃度補正値Hをそのまま用いることができる。例えば画素データの階調値Sin=Sbであれば、補正後の階調値Soutは次式によって求められる。
Sout=Sb×(1+Hb)
一方、画素データの階調値が指令階調値Sa、Sb、Sc、Sd、Seと異なる場合、その周囲の指令階調値の濃度補正値を用いた補間に基づいて補正値を算出する。例えば指令階調値Sinが指令階調値Sbと指令階調値Scとの間の場合、指令階調値Sbの濃度補正値Hb、及び指令階調値Scの濃度補正値Hcを用いた線形補間により求めた補正値をH´とすると、指令階調値Sinの補正後の階調値Soutは次式によって求められる。
Sout=Sin×(1+H´)
このようにして、濃度補正処理が行なわれる。
濃度むら補正処理の後、プリンタドライバは、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、高階調数のデータを、低階調数のデータに変換する処理である。ここでは、256階調の印刷画像データが、プリンタ1の表現可能な4階調の印刷画像データに変換される。ハーフトーン処理方法としてディザ法などが知られており、本実施形態もこのようなハーフトーン処理を行う。
本実施形態において、プリンタドライバは、濃度むら補正処理された画素データに対して、ハーフトーン処理を行うことになる。この結果、濃く視認されやすい部分の画素データの階調値は低くなるように補正されているので、その部分のドット生成率は低くなる。逆に、淡く視認されやすい部分ではドット生成率が高くなる。
次に、プリンタドライバは、ラスタライズ処理を行う(S312)。ラスタライズ処理は、印刷画像データ上の画素データの並び順を、プリンタ1に転送すべきデータ順に変更する処理である。その後、プリンタドライバは、プリンタ1を制御するための制御データを画素データに付加することによって印刷データを生成し(S314)、その印刷データをプリンタ1に送信する(S316)。
プリンタ1は、受信した印刷データに従って、印刷動作を行う。具体的には、プリンタ1のコントローラ60は、受信した印刷データの制御データに従って搬送ユニット20などを制御し、印刷データの画素データに従ってヘッドユニット40を制御して各ノズルからインクを吐出する。このようにして生成された印刷データに基づいてプリンタ1が印刷処理を行えば、各ラスタラインのドット生成率が変更され、用紙上の列領域の画像片の濃度が補正されて、印刷画像の濃度むらが抑制される。
図19は、参考例の濃度補正を行ったときにおける印刷結果の様子を説明するための図である。図において、補正用パターンを配置した箇所の周辺については、ノズル列方向についても濃度が補正され濃度が均一になっている様子が示されている。一方、補正用パターンが配置された箇所から搬送方向について離れた領域については、濃度補正の結果、濃度むらが生じてしまっている様子が示されている。
淡くなるような濃度むらIR1が生じていたラスタラインについては、濃度を高くするような濃度補正が行われることになる。よって、濃度むらIR1はほぼ解消されるのであるが、その一方で濃度が高くなるように濃度むらIR11が生じる。そして、さらに、濃度が高くなるように生じていた濃度むらIR2が、より濃度が高くなるような濃度むらIR2’として生じている。同様のことが、濃度むらIR5が生じていたラスタライン、及び、濃度むらIR9が生じていたラスタラインについても生じている。
また、濃くなるような濃度むらIR3が生じていたラスタラインについては、濃度を低くするような濃度補正が行われることになる。よって、濃度むらIR3はほぼ解消されるのであるが、その一方で濃度が高くなるように濃度むらIR12が生じる。そして、さらに、濃度が低くなるように生じていた濃度むらIR4が、より濃度が低くなるような濃度むらIR4’として生じている。同様のことが、濃度むらIR7が生じていたラスタラインについても生じている。
このように、用紙Sが蛇行して搬送される場合において、搬送方向について濃度むらが抑制される箇所とされない箇所が生ずる場合がある。よって、以下に示す実施形態では、媒体を搬送方向についていくつかの領域に仮想的に分割し、領域毎に上記の濃度補正を行うこととして、各領域についての濃度むらを抑制することとしている。
図20は、本実施形態における濃度補正を模式的に説明するための図である。図には、便宜上、用紙Sが仮想的に3つの領域(第1領域A1、第2領域A2、及び、第3領域A3)に分割されていることが示されている。そして、これらの各領域について、前述の補正用パターンが印刷される。ここでは、第1領域A1に補正用パターンCP1が形成され、第2領域A2に補正用パターンCP2が形成され、第3領域A3に補正用パターンCP3が形成される。
そして、各領域の補正用パターンごとに、前述の補正値取得処理(図13)が行われる。すなわち、第1領域A1〜第3領域A3のそれぞれが1つの単位として、補正値取得処理が行われる(S202〜S210)。
図21は、各領域の補正値テーブルを示す図である。本実施形態では3つの領域についてそれぞれ補正値テーブルが作成される。図には、第1領域A1、第2領域A2、及び、第3領域A3に対応する補正値テーブルが示されている。これらの補正値テーブルは、プリンタ1のメモリ63に記憶され、各領域における濃度補正に利用されることになる。
印刷処理(図18)では、ステップS302では、各領域の濃度補正値がプリンタ1から取得されることになる。その後、前述の同様に解像度変換処理(S304)と色変換処理(S306)が行われる。
次のステップS308の濃度むら補正処理では、前述の濃度むら補正処理と同様の処理が各領域についてそれぞれ対応する領域の濃度補正値を用いて行われる。このようにすることによって、搬送方向について分割された各領域において、それぞれ適切に濃度補正が行われる。
その後、ハーフトーン処理(S310)、ラスタライズ処理(S312)、印刷エータ生成処理(S314)、及び、印刷データの送信(S316)が行われる。このようにして、搬送方向について分割された各領域において、それぞれ濃度むらの発生を抑制することができる。
尚、ここでは、搬送方向についての領域の分割数を3つにしたが、2つであってもよいし、4以上の分割数であってもよい。
===第2実施形態===
前述の実施形態では、搬送方向について分割された複数の領域について、それぞれ補正用パターンを印刷し、対応する濃度補正値を得ることとしていた。ここでは、分割された全ての領域について補正用パターンを印刷することは行わず、補正用パターンの印刷を行わない領域を設ける。そして、補正用パターンの印刷を行わない領域の濃度補正値については、補正用パターンが印刷された領域において取得した濃度補正値から推定することによって求めることとする。
図22は、補間によって濃度補正値を求める方法について説明するための図である。
第2実施形態では、いくつかの補正用パターンによって求められた濃度補正値に基づいて、補正用パターンが印刷されていない領域においての濃度補正値を線形補間によって求めること事とする。そして、線形補間によって求められた濃度補正値を用いて、補正用パターンが印刷されていない領域における濃度補正を行うこととしている。
図には、各領域として、第1領域A1’、第2領域A2’、第3領域A3’、第4領域A4’、及び、第5領域A5’が示されている。そして、各領域の搬送方向の中心位置としてCtr1〜Ctr5が示されている。また、図には、2つの補正用パターンCP2’、CP4’が用紙S上に示されている。尚、補正用パターンCP1’、CP3’、CP5’が示されているが、これらは用紙S上には印刷されない。これは、第1実施形態では補正用パターンCP1’、CP3’、CP5’を用いて直接的に求められるべき第1領域A1’、第3領域A3’、第5領域A5’の濃度補正値が、第2実施形態では補正用パターンCP2’、CP4’から補間により求められることを示すものである。
第2実施形態では、前述の実施形態と同様の方法で、これら2つの補正用パターンCP2’、CP4’を用いて第2領域A2’と第4領域A4’の濃度補正値が求められる。そして、第2領域A2’における濃度補正値と第4領域A4’における濃度補正値とから、第1領域A1’において適用される濃度補正値と、第3領域A3’において適用される濃度補正値と、第5領域A5’において適用される濃度補正値が求められる。
図23は、線形補間によって濃度補正値を求める方法について説明するための図である。図には、横軸を用紙の位置として各領域の搬送方向における中心位置Ctr1〜Ctr5が示されている。また、縦軸を濃度補正値としたグラフが示されている。
図には例えば、第2領域A2’における第1ラスタラインの濃度補正値HaがA2’Haとして示されている。また、第4領域A4’における第1ラスタラインの濃度補正値HaがA4’Haとして示されている。
第1領域A1’と第2領域A2’と第3領域A3’と第4領域A4’と第5領域A5’のそれぞれの搬送方向の中心位置は、予め求めることができる。よって、これらの中心位置間の距離と、第2領域A2’における第1ラスタラインの濃度補正値A2’Haと第4領域A4’における第1ラスタラインの濃度補正値A4’Haとを用いて線形補間することによって、第1領域A1’における第1ラスタラインの濃度補正値A1’Haと、第3領域A3’における第1ラスタラインの濃度補正値A3’Haと、第5領域A5’における第1ラスタラインの濃度補正値A5’Haと、を求めることができる。
このような、補間による濃度補正値の算出は、各ラスタラインの各濃度補正値(Ha〜He)について行われる。このようにすることで、図17に示したような補正値テーブルが5つ(第1領域A1’についての補正値テーブル、第2領域A2’についての補正値テーブル、第3領域A3’についての補正値テーブル、第4領域A4’についての補正値テーブル、及び、第5領域A5’についての補正値テーブル)完成される。これらの補正値テーブルは、プリンタ1のメモリ63に記憶され、各領域における濃度補正に利用されることになる。
その後の印刷処理(図18)は、第1実施形態とほぼ同様であるので説明を省略する。
このようにすることで、用紙Sが紙幅方向(y方向)に一定速度で移動してしまう場合にも、線形補間した濃度補正値を用いて、補正用パターンを形成しなかった領域についても適切に濃度むらを抑制することができるようになる。
===第3実施形態===
第2実施形態では、補正用パターンの印刷を行わない領域を設け、補正用パターンの印刷を行わない領域の濃度補正値については、補正用パターンが印刷された領域における濃度補正値に基づいて線形補間して求められた濃度補正値を用いることとしていた。この方法であると、用紙が紙幅方向に一定速度で移動してしまう場合には適切に濃度補正値を得ることができる。しかしながら、紙幅方向への移動が一定でなく、例えばサインカーブを描くような蛇行を行っている場合には、適切な濃度補正値を得ることができない。
第3実施形態では、単に搬送方向についての移動量に関して濃度補正値を線形補間で求めるのではなく、用紙Sが搬送方向に第1ノズル列411Aから第2ノズル列411Bとの距離だけ移動する間に紙幅方向に媒体が移動した量に基づいて、補正用パターンの印刷を行わない領域についての濃度補正値を求めることとしている。
本実施形態では、各ヘッドによって形成された罫線の用紙幅方向の距離と、補正用パターンが形成された領域における濃度補正値とに基づいて、補正用パターンが形成されていない領域における濃度補正値を求める。ここでは、第2実施形態のときと同様に第2領域A2’と第4領域A4’に補正用パターンCP2’、CP4’が形成され、これら2つの領域についての濃度補正値は既に得られているものとする。
図24は、第3実施形態における濃度補正値の求め方を説明するフローチャートである。まず、罫線パターンとして第1ラインL1〜第12ラインL12の罫線が印刷される(S402)。
図25は、ヘッド間距離に基づく線形補間によって濃度補正値を求める方法について説明するための図である。ここで、ヘッド間距離とは見かけ上のヘッド間距離であって、第1ヘッド41Aから第2ヘッド41Bの位置まで用紙Sが移動するときにおける、用紙Sの紙幅方向の移動量(相対移動量に相当)である。このように、紙幅方向の移動量を「ヘッド間距離」として説明するのは、第1ヘッド41Aから第2ヘッド41Bの位置まで移動したときに用紙Sが紙幅方向に微少ながらに移動してしまうと、あたかも第1ヘッド41Aと第2ヘッド41Bとの紙幅方向のヘッド間距離が変化したかのようにドットが形成されるからである。
図には、ヘッド間距離を測定するための罫線パターンが示されている。また、図には、搬送方向について分割された複数の領域(第1領域A1’〜第5領域A5’)が示され、各領域の搬送方向についての中央位置Ctr1〜Ctr5が示されている。
罫線パターンは、第1ラインL1から第12ラインL12の12本のラインによって構成される。12本のラインは、各ヘッドのブラックノズル列のノズルによって形成される。各ノズル列は、360dpiのノズルピッチで360個のノズルを有している。そして、y方向の上部から下部に向かってノズル番号が#1〜#360まで付されたとしたときに、これらの罫線は、例えば、各ヘッドのノズル列のノズル#90とノズル#270によって形成される。これにより、第1ヘッド41Aによって第1ラインL1と第2ラインL2が形成される。同様にして、第2ヘッド41Bによって、第3ラインL3と第4ラインL4が形成される。また、第3ヘッド41Cによって、第5ラインL5と第6ラインL6が形成される。また、第4ヘッド41Dによって、第7ラインL7と第8ラインL8が形成される。また、第5ヘッド41Eによって、第9ラインL9と第10ラインL10が形成される。また、第6ヘッド41Fによって、第11ラインL11と第12ラインL12が形成される。
理想的な用紙の搬送が行われるか、または、紙幅方向についての用紙の移動が搬送方向の移動に対して一定の割合で移動してしまう場合には、異なるヘッドが形成するライン間の紙幅方向についての距離が変化することはない。この場合、例えば、第1ラインL1と第3ラインL3との用紙幅方向の距離は一定となる。しかしながら、これらの第1ラインL1〜第12ラインL12は、前述のように用紙Sが蛇行した場合には直線には描かれず、また、上流側のヘッド(第1ヘッド、第3ヘッド、第5ヘッド)によって画像が形成されてから遅れて下流側のヘッド(第2ヘッド、第4ヘッド、第6ヘッド)によって画像が形成されるため、例えば、第1ヘッドによって形成された罫線と第2ヘッドによって形成された罫線との距離は変動するものとなる。
次に、各領域の搬送方向の中央位置における2本のラインの紙幅方向座標の平均値を、2本のラインを形成したヘッド毎に求める(S404)。具体的には、各ラインのx方向座標におけるy方向の座標が計測される。これらの位置の計測は、スキャナによって罫線が読み取られ、読み取った画像に基づいて罫線位置を計測することができる。このとき、例えば、360dpiの解像度で計測が行われる。尚、計測器を用いて目視によって計測が行われることとしてもよい。
そして、ラインを形成したヘッド毎に2本のラインの紙幅方向座標の平均値を算出する。このようにヘッド毎の平均値が求められるのは、紙幅方向におけるインクの飛行曲がりの誤差を平均化させるためである。x座標の各点における第1ヘッドの平均罫線位置Head1は、
Head1(x)=(L1のy座標(x)−L2のy座標(x))/2
で求めることができる。このとき、例えば、xの値を1/360インチ毎に変化させたものとして平均罫線位置が求められる。このような計算は、第2ヘッド41B〜第6ヘッド41Fについても行われ、第2ヘッドの平均罫線位置Head2〜第6ヘッドの平均罫線位置Head6が求められる。
次に、ヘッド間距離が求められる(S406)。ここで、ヘッド間距離とは、前述の通り、見かけ上のヘッド間距離であって、例えば、第1ヘッドから第2ヘッドの位置まで媒体が移動するときにおける、前記媒体の用紙幅方向の移動量である。
第1ヘッド41Aと第2ヘッド41Bとのヘッド間距離である第1ヘッド間距離D1(x)は、第1ヘッドのノズル#180と第2ヘッドのノズル#180の実際のy軸方向の距離をHD1realとすると、
D1(x)=Head1(x)−Head2(x)−HD1real
で求めることができる。このような計算は、第2ヘッド間距離D2(第2ヘッド41Bと第3ヘッド41Cとのヘッド間距離)、第3ヘッド間距離D3(第3ヘッド41Cと第4ヘッド41Dとのヘッド間距離)、第4ヘッド間距離D4(第4ヘッド41Dと第5ヘッド41Eとのヘッド間距離)、及び、第5ヘッド間距離D5(第5ヘッド41Eと第6ヘッド41Fとのヘッド間距離)についても行われる。尚、このときの第iヘッドのノズル#180と第(i+1)ヘッドのノズル#180の実際のy軸方向の距離をHDirealは予め計測して求められているものとする。
図26は、各領域における第1ヘッド間距離D1と濃度補正値を示す表である。図27は、各領域における第2ヘッド間距離D2と濃度補正値を示す表である。表には、第1領域A1’〜第5領域A5’の各搬送方向における開始位置及び終了位置、濃度補正値、補正用パターンの印字領域、及び、ヘッド間距離が示されている。ここで、ヘッド間距離は、前述のような方法で求められたものである。また、ヘッド間距離は、各領域の搬送方向における中央位置Ctr1〜Ctr5についてのものが示されている。また、前述の通り、第2領域A2’と第4領域A4’における濃度補正値は各ラスタラインについて既に求められているため、C2、C4には既に具体的な数値が求められていることになる。
次に、得られたヘッド間距離とこれらの濃度補正値とに基づいて、第1領域A1’、第3領域A3’、及び、第5領域A5’における濃度補正値が求められる(S408)。尚、濃度補正値は前述の通りラスタライン(列領域)ごとに求められるが、ここでは、繋ぎ目ノズルに対応するラスタラインについてのみ求められる。ここで、繋ぎ目ノズルとは、異なるノズル列間において同じラスタラインを形成しようとしているノズルであり、例えば、図5における第1ノズル列411Aのノズル#11〜#18、及び、第2ノズル列411Bのノズル#1〜#8である。
用紙Sが蛇行したときにおいて濃度むらが顕著に発生する箇所は前述のIR2’、IR4’、IR6’、IR8’、及び、IR11〜IR15(図19)で示される領域であった。これらは、ノズル列が重複して配置される範囲(例えば、図5であると第1ノズル列411Aのノズル#11〜#18と第2ノズル列411Bのノズル#1〜#8に対応する範囲)において生ずる。それ以外のノズルが形成するドットラインは紙幅方向について均一に並ぶため、濃度むらは発生しにくいのに対し、これらのノズルによって形成されるドットは紙幅方向について均一に並ばないため濃度むらが生じてしまうのである。よって、このようなときに均一なドット配置を形成することができないノズルに関してのみ上述のような補間を行って濃度補正値を求める。具体的には、重複して配置されるノズル(例えば、図5であると第1ノズル列411Aのノズル#11〜#18と第2ノズル列411Bのノズル#1〜#8)と、これらのノズルに隣接するノズル(例えば、図5であると第1ノズル列411Aのノズル#10と第2ノズル列411Bのノズル#9)に対応するラスタラインについて濃度補正値を求めることとする。
一方、継ぎ目ノズルに対応しないラスタラインの濃度補正値は、第2領域A2’において求められた濃度補正値、又は、第4領域A4’において求められた濃度補正値を流用することとする。
図28は、第1ヘッド間距離D1におけるヘッド間距離と濃度補正値を説明する図である。図には、ヘッド間距離に対する濃度補正値が示されている。前述の図26の表に示されるように、第2領域A2’の中央Ctr2におけるヘッド間距離は、20μmであり、このときの第2領域A2’の濃度補正値はC2である。また、第4領域A4’の中央Ctr4におけるヘッド間距離は、−20μmであり、このときの第4領域A4’の濃度補正値はC4である。そうすると、図28に示されるような、第2領域A2’の濃度補正値C2と第4領域A4’の濃度補正値C4とによって線形補間されたヘッド間距離と濃度補正値のグラフを得ることができる。
ここで、第1領域A1’におけるヘッド間距離は10μmである。そうすると、このような線形補間されたヘッド間距離と濃度補正値とのグラフから、ヘッド間距離が10μmであるときにおける濃度補正値の推定値(第1領域A1’における濃度補正値の推定値)C1を求めることができる。また、第3領域A3’におけるヘッド間距離は0μmである。そうすると、このグラフから、ヘッド間距離が0μmであるときにおける濃度補正値の推定値(第3領域A3’における濃度補正値の推定値)C3を求めることができる。また、第5領域A5’におけるヘッド間距離は−10μmである。そうすると、このグラフから、ヘッド間距離が−10μmであるときにおける濃度補正値の推定値(第5領域A5’における濃度補正値の推定値)C5を求めることができる。
このようにすることで、第1領域A1’、第3領域A3’、及び、第5領域A5’においても図17に示すような補正値テーブルを作成することができるが、ここでは、第1ヘッド41Aと第2ヘッド41Bとにおける継ぎ目ノズルに対応するラスタラインの濃度補正値が求められることになる。一方、第1領域A1’、第3領域A3’、及び、第5領域A5’における継ぎ目ノズルに対応するラスタライン以外のラスタラインについては、第2領域A2’又は第4領域A4’における同じ番号のラスタラインの濃度補正値が用いられることになる。
図29は、第2ヘッド間距離D2におけるヘッド間距離と濃度補正値を説明する図である。図には、ヘッド間距離に対する濃度補正値が示されている。前述の図27の表に示されるように、第2領域A2’の中央Ctr2におけるヘッド間距離は、−20μmであり、このときの第2領域A2’の濃度補正値はC2’である。また、第4領域A4’の中央Ctr4におけるヘッド間距離は、20μmであり、このときの第4領域A4’の濃度補正値はC4’である。そうすると、図29に示されるような、第2領域A2’の濃度補正値C2’と第4領域A4’の濃度補正値C4’とによって線形補間されたヘッド間距離と濃度補正値のグラフを得ることができる。
ここで、第1領域A1’におけるヘッド間距離は−10μmである。そうすると、このような線形補間されたヘッド間距離と濃度補正値のグラフから、ヘッド間距離が−10μmであるときにおける濃度補正値の推定値(第1領域A1’における濃度補正値の推定値)C1’を求めることができる。また、第3領域A3’におけるヘッド間距離は0μmである。そうすると、このグラフから、ヘッド間距離が0μmであるときにおける濃度補正値の推定値(第3領域A3’における濃度補正値の推定値)C3’を求めることができる。また、第5領域A5’におけるヘッド間距離は10μmである。そうすると、このグラフから、ヘッド間距離が10μmであるときにおける濃度補正値の推定値(第5領域A5’における濃度補正値の推定値)C5’を求めることができる。
このようにすることで、第2ヘッド41Bと第3ヘッド41Cとにおける継ぎ目ノズルに対応するラスタラインの濃度補正値が求められることになる。
ここでは、第1ヘッド間距離D1を用いて第1ヘッド41Aと第2ヘッド41Bとにおける継ぎ目ノズルに対応するラスタラインの濃度補正値と、第2ヘッド間距離D2を用いて第2ヘッド41Bと第3ヘッド41Cとにおける継ぎ目ノズルに対応するラスタラインの濃度補正値と、の求め方について説明を行ったが、第3ヘッド41Cと第4ヘッド41Dにおける継ぎ目ノズル、第4ヘッド41Dと第5ヘッド41Eにおける継ぎ目ノズル、第5ヘッド41Eと第6ヘッド41Fにおける継ぎ目ノズルに対応するラスタラインの濃度補正値についても同様に求めることができる。
このようにして、補正用パターンを印刷しない領域があっても、補正用パターンを印刷した領域におけるヘッド間距離と濃度補正値と、補正用パターンを印刷しない領域におけるヘッド間距離とに基づいて、補正用パターンを印刷しない領域における濃度補正値を求めることができる。また、用紙Sが蛇行して搬送する場合であっても、補正用パターンが形成されない領域の濃度補正値を適切に求め、濃度補正を行うことができる。そして、適切に濃度むらの発生を抑制することができるようになる。
図30は、2つのノズル列間においてノズルが重複しないときについて説明する図である。図に示されるように、2つのノズル列について重複するノズルが存在しない場合には、これらのノズルの端部ノズル(第1ノズル列411A’のノズル#14と第2ノズル列411B’のノズル#1)に対応する画素について濃度補正を行う濃度補正値を求めることとしてもよい。
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、流体噴射装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
<ヘッドについて>
前述の実施形態においてインクを噴射させる方法としては、圧電素子を用いてインクを噴射することとすることができる。しかし、液体を噴射する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。