JP5642727B2 - 内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体、Nb3Sn超電導線材、及びそれらの製造方法 - Google Patents
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また、本発明の内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体の製造方法は、純TiまたはNbTi合金で形成されたTi芯材を準備する工程と、Cuマトリクスの内周側にNb層を配置するとともに前記Nb層の内周側に前記Ti芯材を配置してTi単芯線材を作製する工程と、Cuマトリクスの内周側にNb芯材を配置してNb単芯線材を作製する工程と、前記Ti単芯線材と前記Nb単芯線材とを組み合わせてNbセグメント線材を作製する工程と、Sn合金(Ti以外の金属とSnとからなる合金)または純Snで形成されたSn芯材を準備する工程と、Cuマトリクスの内周側に前記Sn芯材を配置してSnセグメント線材を作製する工程と、前記Snセグメント線材の周囲を取り囲むように前記Nbセグメント線材を配置して超電導マトリクスを作製する工程と、安定化銅層の内周側に拡散バリア層を配置するとともに前記拡散バリア層の内周側に前記超電導マトリクスを配置して複合体を作製する工程と、前記複合体を縮径加工する工程と、を備える。
なお、ブロンズ法は、ブロンズ(Cu−Sn合金)を備える前駆体を用いた超電導線材の製法である。このブロンズ中のSn濃度には限界(質量百分率で約16%)がある。以下では、質量百分率で表した濃度を「質量%」とする。Snの濃度が不十分であることによりNbとSnとの反応が不十分となり、超電導相の形成が不十分となり、臨界電流密度を十分高くできない場合がある。一方、内部Sn法では、Sn濃度に上記のような限界がない。よって、超電導相を十分に形成させることができ、その結果、超電導線材の臨界電流密度を高くできる。
次に、前駆体1および超電導線材の製造方法を説明する。この製造方法は、Nbセグメント線材20を作製する工程と、Snセグメント線材10を作製する工程と、複合体(縮径加工前の前駆体1)を作製して縮径する工程と、前駆体1に熱処理を施して超電導線材を作製する工程とを備える。なお、以下では前駆体1の段階での部材名を括弧を付して記載する場合がある。
本発明の実施例、比較例1、及び比較例2の超電導線材を作製した。そして、各超電導線材について、臨界電流密度、及び、断線回数を測定した。
(Ti単芯線材40)上記(b)の工程で用いたCu管(Cuマトリクス41)は、外径:140mmφ、内径:110mmφである。同工程で用いたNbシート(Nb層42)は、厚さ:0.2mmである。上記(c)の工程で用いたTiビレット(Ti芯材43)は、Nb−47wt%Ti合金(Tiが47質量%)で形成され、外径:109mmφである。上記(a)〜(g)の工程で作製したTi単芯線材40の対辺長さ(正六角形断面の平行な2辺間の最短距離)は4.3mmである。
(Nb単芯線材30)上記(h)の工程で用いたCu管(Cuマトリクス31)は、外径:68mmφ、内径:61mmφである。同工程で用いたNbビレット(Nb芯材32)は、外径:60.8mmφである。上記(h)及び(i)の工程で作製したNb単芯線材30の対辺長さは4.3mmである。
(Nbセグメント線材20)上記(j)の工程で用いたCu管は、外径:34mmφ、内径:30mmφである。上記(j)〜(l)の工程で作製した1本のNbセグメント線材20は、図1に示すように、1本のTi単芯線材40と36本のNb単芯線材30とを備えるものである。このNbセグメント線材20の対辺長さは1.7mmである。
(Snセグメント線材10)上記(n)の工程で用いたCu管(Cuマトリクス11)は、外径:24mmφ、内径:21mmφである。上記(m)の工程で用いたSn棒(Sn芯材12)は、純Snで形成されたものであり、外径:20.6mmφである。上記(m)〜(o)の工程で作製したSnセグメント線材10の対辺長さは1.7mmである。
(複合体)上記(p)及び(q)の工程では、1本のSnセグメント線材10の周囲全体を6本のNbセグメント線材20が取り囲むような配置とした。また、138本のNbセグメント線材20と73本のSnセグメント線材10とを組み合わせて超電導マトリクス5を作製した。上記(r)の工程で用いたCu管(安定化銅層2)は、外径34mmφ、内径:30mmφである。同工程で用いたNbシート(拡散バリア層3)は、厚さ:0.2mmを重ね巻きしたものである。上記(a)〜(s)の工程で作製した前駆体1は、直径:1.0mmφである。
(熱処理)ブロンズ化熱処理(u)は、210℃で50時間、及び、350℃で100時間行った。Nb3Sn生成熱処理(v)は、670℃で100時間行った。
また、実施例の超電導線材では、超電導マトリクス5内のNb成分に対するTi成分の割合は1.1質量%とした。この割合は、実施例と比較例1とで統一した。
比較例1の超電導線材の前駆体(1)は、Ti単芯線材40を備えない。すなわち、比較例1の超電導線材の前駆体(1)は、実施例のTi単芯線材40を、Nb単芯線材30に置き換えたものである。
また、実施例のSn芯材12は純Snで形成したが、比較例1のSn芯材(12)はSn−2wt%Ti合金で形成したものである。
実験結果を表1に示す。なお、表中の「Jc特性」は臨界電流密度である。
また、臨界電流密度は、実施例のほうが比較例2よりも大きくなった。この理由は、比較例2(ブロンズ法)よりも実施例(内部Sn法)の方が、超電導マトリクス5中のSn濃度が高く、その結果、超電導相を十分に形成できたからである。
次に、本発明の前駆体1等の効果を説明する。前駆体1(内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体)は、安定化銅層2と、安定化銅層2の内周側に配置された拡散バリア層3と、拡散バリア層3の内周側に配置された超電導マトリクス5と、を備える。超電導マトリクス5は、Snセグメント線材10と、Snセグメント線材10の周囲を取り囲むように配置されたNbセグメント線材20と、を備える。Snセグメント線材10は、Cuマトリクス11の内周側に配置されたSn芯材12を備える。Sn芯材12は、Ti以外の金属とSnとからなるSn合金、または純Snで形成される。Nbセグメント線材20は、Nb単芯線材30と、Ti単芯線材40と、を備える。Nb単芯線材30は、Cuマトリクス31の内周側に配置されたNb芯材32を備える。Ti単芯線材40は、Cuマトリクス41の内周側に配置されたNb層42と、Nb層42の内周側に配置されたTi芯材43と、を備える。Ti芯材43は、純TiまたはNbTi合金で形成される。
Nbセグメント線材20は、Nb層42と、Nb層42の内周側に配置されたTi芯材43とを備える。よって、前駆体1を製造するための縮径加工の際(特に縮径加工中の焼鈍しの際)、Ti芯材43のTi成分がNb層42の外周側に拡散することが抑制される。よって、このTi成分と超電導マトリクス5中のSn成分とが、断線の原因となるSnTi合金を形成することを抑制できる。したがって、前駆体1を製造するための縮径加工時に線材(縮径加工前の前駆体1、及び、Snセグメント線材10)が断線することを抑制できる。
また、縮径加工によりNb層42が十分薄くなった状態で、前駆体1に対して熱処理を長時間施せば、Ti芯材43のTi成分は周囲に拡散される。その結果、このTi成分は、Nb3sn系超電導相内に拡散される。よって、超電導特性(高磁場での臨界電流密度)を向上できる。
Ti芯材43は、純TiまたはNbTi合金で形成される。純Ti及びNbTi合金は、SnTi合金よりも加工性が良いので、前駆体1を製造するための縮径加工時の線材の断線を抑制できる。また、純Ti及びNbTi合金は、SnTi粒子を微細化したSnTi合金(上述したように加工性の向上を図った合金)よりも入手が容易で安価なので、前駆体1を安価に製造できる。
Ti単芯線材40の量は、超電導マトリクス5内のNb成分に対するTi成分の割合が0.1〜5.0質量%になるように調整される。前記割合が0.1質量%以上なので、臨界電流密度を十分高くできる。前記割合が5.0質量%以下なので、Ti成分が多すぎることによる加工性(縮径加工の加工性)の悪化を抑制できる。
本発明のNb3Sn超電導線材は、前駆体1に対して、拡散熱処理を施してNb3Sn系超電導相を形成したものである(本発明のNb3Sn超電導線材の製造方法は、前駆体1に対して拡散熱処理を施してNb3Sn系超電導相を形成する工程を備える)。この超電導線材は、上記の効果を奏するものである。
前駆体1(内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体)の製造方法は、純TiまたはNbTi合金で形成されたTi芯材43を準備する工程と、Cuマトリクス41の内周側にNb層42を配置するとともにNb層42の内周側にTi芯材43を配置してTi単芯線材40を作製する工程とを備える。さらに、この製造方法は、Cuマトリクス31の内周側にNb芯材32を配置してNb単芯線材30を作製する工程と、Ti単芯線材40とNb単芯線材30とを組み合わせてNbセグメント線材20を作製する工程とを備える。さらに、この製造方法は、Sn合金(Ti以外の金属とSnとからなる合金)または純Snで形成されたSn芯材12を準備する工程と、Cuマトリクス11の内周側にSn芯材12を配置してSnセグメント線材10を作製する工程とを備える。さらに、この製造方法は、Snセグメント線材10の周囲を取り囲むようにNbセグメント線材20を配置して超電導マトリクス5を作製する工程と、安定化銅層2の内周側に拡散バリア層3を配置するとともに拡散バリア層3の内周側に超電導マトリクス5を配置して複合体(縮径加工前の前駆体1)を作製する工程と、複合体を縮径加工する工程と、を備える。
この構成により、上記(効果1)と同様の効果が得られる。
前駆体1等は次のように変形しても良い。例えば、上記実施形態では前駆体1の断面を円形とした。しかし、前駆体1の断面は、例えば楕円形や矩形状(矩形の4つの角が丸いものを含む)等でも良い。前駆体1の断面を矩形状とした場合は、前駆体1を用いて製造した超電導線材を巻線としてコイルを形成したときに、超電導線材間のデッドスペースを減らせる。
2 安定化銅層
3 拡散バリア層
5 超電導マトリクス
10 Snセグメント線材
11 Cuマトリクス
12 Sn芯材
20 Nbセグメント線材
30 Nb単芯線材
31 Cuマトリクス
32 Nb芯材
40 Ti単芯線材
41 Cuマトリクス
42 Nb層
43 Ti芯材
Claims (6)
- 安定化銅層と、
前記安定化銅層の内周側に配置された拡散バリア層と、
前記拡散バリア層の内周側に配置された超電導マトリクスと、を備え、
前記超電導マトリクスは、
Snセグメント線材と、
前記Snセグメント線材の周囲を取り囲むように配置されたNbセグメント線材と、を備え、
前記Snセグメント線材は、Cuマトリクスの内周側に配置されたSn芯材を備え、
前記Sn芯材は、Ti以外の金属とSnとからなるSn合金、または純Snで形成され、
前記Nbセグメント線材は、Nb単芯線材と、Ti単芯線材と、を備え、
前記Nb単芯線材は、Cuマトリクスの内周側に配置されたNb芯材を備え、
前記Ti単芯線材は、
Cuマトリクスの内周側に配置されたNb層と、
前記Nb層の内周側に配置されたTi芯材と、を備え、
前記Ti芯材は、純TiまたはNbTi合金で形成される、
内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体。 - 前記Ti単芯線材の量は、前記超電導マトリクス内のNb成分に対するTi成分の割合が質量百分率で0.1〜5.0%になるように調整される、請求項1に記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体。
- 請求項1または2に記載の前駆体に対して、拡散熱処理を施してNb3Sn系超電導相を形成した、Nb3Sn超電導線材。
- 純TiまたはNbTi合金で形成されたTi芯材を準備する工程と、
Cuマトリクスの内周側にNb層を配置するとともに前記Nb層の内周側に前記Ti芯材を配置してTi単芯線材を作製する工程と、
Cuマトリクスの内周側にNb芯材を配置してNb単芯線材を作製する工程と、
前記Ti単芯線材と前記Nb単芯線材とを組み合わせてNbセグメント線材を作製する工程と、
Ti以外の金属とSnとからなるSn合金、または純Snで形成されたSn芯材を準備する工程と、
Cuマトリクスの内周側に前記Sn芯材を配置してSnセグメント線材を作製する工程と、
前記Snセグメント線材の周囲を取り囲むように前記Nbセグメント線材を配置して超電導マトリクスを作製する工程と、
安定化銅層の内周側に拡散バリア層を配置するとともに前記拡散バリア層の内周側に前記超電導マトリクスを配置して複合体を作製する工程と、
前記複合体を縮径加工する工程と、
を備える内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体の製造方法。 - 前記Ti単芯線材の量は、前記超電導マトリクス内のNb成分に対するTi成分の割合が質量百分率で0.1〜5.0%になるように調整される、請求項4に記載の内部Sn法Nb3Sn超電導線材製造用前駆体の製造方法。
- 請求項4または5に記載の製造方法により製造された前駆体に対して、拡散熱処理を施してNb3Sn系超電導相を形成する工程を備える、Nb3Sn超電導線材の製造方法。
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