実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による車両接近通報装置の構成の概要を示すブロック図であり、図2は電動移動体に搭載された車両接近通報装置を示す概念図である。車両接近通報装置100は、電気自動車やハイブリッド自動車などのように、少なくとも一部の駆動力を電動機によって発生する電動移動体200に備えられている。車両接近通報装置100は、報知音信号を出力する報知音制御ユニット10と、その報知音信号によって報知音を車外に発生するスピーカなどの発音体40を備えている。ここでの報知音は車両の走行状態を想起させる音を示す。報知音は従来の自動車のエンジン音を想起させる音でも良いし、そうでなくても良い。
報知音制御ユニット10は、車両信号20を取得し、車両信号20の取得信号を出力する車両信号取得部1と、取得信号の信号処理を行う信号処理部2と、調整情報テーブル3から調整情報を取得して、報知音を変化させるためのピッチや音量の倍率を算出する調整情報取得部4と、報知音データ5をピッチや音量の倍率に基づいて報知音を生成する報知音生成部6と、報知音生成部6により生成した報知音を発音体40に出力する報知音出力部7とを備える。車両信号20は、車両から取得される車両の挙動を示す情報である。車両信号20は、車速信号やアクセル開度信号、ブレーキ信号の各信号、もしくはこれら複数の信号を表す。車両信号20は、ハードワイヤから取得される信号でも良いし、CAN(Controller Area Network)バスやLIN(Local Interconnect Network)バスなどといった車載通信から取得される信号でも良い。車両信号20は車両信号取得部1により取得される。
車両接近通報装置100の動作を説明する。車両信号取得部1は、車両信号20を取得周期T毎に取得する。信号処理部2は車両信号取得部1により取得した車両信号20の取得信号の時間分解能を向上させる信号処理を行う。信号処理部2は、今回の取得信号の信号値を取得周期Tよりも短い時間だけ遅延させて処理信号値とする、すなわち遅延処理を行うと共に、今回の取得信号の信号値と前回の最後の処理信号値との間に内挿処理を行い、演算すべき処理信号値が残っている場合には外挿処理を行うことにより、車両信号20の取得信号の時間分解能を改善させる。調整情報取得部4は、信号処理部2から得られた情報(処理信号値)に対応して報知音を変化させるためのピッチや音量の倍率を調整情報テーブル3から算出する。調整情報テーブル3は、車速やアクセル開度などの車両信号に対して報知音の音量・ピッチがどのように変化するかを示すデータを含んでいる。また、調整情報取得部4は、報知音生成部6にピッチや音量の倍率を出力する。
報知音データ5は、報知音を生成するための元となる音素を指し、これは1つでも複数でも良い。音素は、従来のエンジン音を想起するものだけに制限されず、正弦波やホワイトノイズ、メロディ音など、どのようなものでも良い。また報知音データは、内部メモリや外部メモリのROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)に保存されたデータでも良いし、リアルタイムに入力されるデータでも良い。
報知音生成部6は、調整情報取得部4から取得したピッチや音量の倍率から報知音データ5のピッチや音量を調整し、報知音出力部7に出力する。報知音データ5が複数の場合、報知音生成部6はピッチや音量の調整のほか、音素の合成処理を行っても良い。報知音出力部7は、報知音生成部6により生成された報知音の最終的な音圧の調整を行い、報知音を発音体40に出力する。発音体40は、報知音を再生ための車外に取り付けられたスピーカを示す。発音体40は1つでも良いし、複数あっても良い。
信号処理部2の信号処理について詳しく説明する。まず、図3を用いて、車両信号20の取得信号を説明する。車両信号20の取得信号は、車両信号20を取得周期T毎に取得した信号値(適宜、取得値とも称する)の集合である。図3は、車両信号波形及び車両信号の取得波形の例を示す図である。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。図3は、車両信号20の取得周期Tが200msの例であり、この場合の取得信号の時間分解能は200msである。図3の黒丸は、車両信号取得部1により取得した車両信号20の信号値である。車両信号20の波形は、本来車両信号波形51のように滑らかであるが、車両信号取得部1における取得信号の時間分解能が悪い場合、取得信号の波形は、取得波形52のように段階的な変化となる。この段階的な変化は最終的に報知音に現れる。そのため信号処理部2では、取得した車両信号20の信号値から得られる情報に基づいて取得信号の時間分解能を良くして、車両信号波形51の形(理想値)に近づける処理を行う。
車両信号20の取得信号の時間分解能が悪い場合における従来の内挿処理(補間処理とも呼ばれる)について説明する。図4は内挿処理波形の例を示す図であり、図5は内挿処理のフローチャートである。図4において、横軸は時間であり、縦軸は信号値である。内挿処理波形53は、車両信号20の信号値を取得周期Tの時間と同じ時間遅延54だけ遅延させて内挿処理を行った波形である。従来の内挿処理は、図5のステップS001、S002、S003の処理を行う。ステップS001にて、車両信号取得部1から現在(nサンプル目)の信号値x(n)と、前回(n−1サンプル目)の信号値x(n−1)を取得する。ステップS002にて、処理信号値の変化量δを計算し、変化量δを更新する。取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数をmとすると、変化量δは式(1)のように表せる。
δ=(x(n)−x(n−1))/(m+1) ・・・(1)
例えば、取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数mを3とすると、変化量δは式(2)のように表せる。
δ=(x(n)−x(n−1))/4 ・・・(2)
ステップS003にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。拡張データ数mを3とすると、処理信号値の数は、m+1、すなわち4になる。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ式(3)〜(6)のように表せる。
x0(n)=x(n−1) ・・・(3)
x1(n)=x(n−1)+(m−2)*δ
=x(n−1)+δ ・・・(4)
x2(n)=x(n−1)+(m−1)*δ
=x(n−1)+2*δ ・・・(5)
x3(n)=x(n−1)+m*δ
=x(n−1)+3*δ ・・・(6)
図4は、車両信号20の取得周期Tが200msであり、拡張データ数mが3である例である。信号処理部2で内挿処理を行うことにより、取得信号の時間分解能を改善している。従来の内挿処理は、車両信号20の取得値を1周期分遅らせて、信号値の間の値を線形補間しているため、誤差が小さい。しかし1周期分、信号値を遅らせるため、車両信号20の取得信号の時間分解能が悪い場合、例えば図3、図4のように取得周期Tが200msの場合には、200msという大幅な時間遅延が発生してしまう。このことから、内挿処理は可能な限り早いレスポンスが要求されるアクセル開度などの信号を取得し、この取得信号の時間分解能の改善処理には不向きである。
車両信号20の取得信号の時間分解能が悪い場合における従来の外挿処理(補外処理とも呼ばれる)について説明する。図6は外挿処理波形の例を示す図であり、図7は外挿処理のフローチャートである。図6において、横軸は時間であり、縦軸は信号値である。外挿処理波形55は、車両信号20の信号値に対して外挿処理を行った波形である。従来の外挿処理は、図7のステップS001、S002、S004の処理を行う。外挿処理のステップS001、S002は、図5の内挿処理と同様である。
ステップS004にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。拡張データ数mを3とすると、処理信号値の数は、m+1、すなわち4になる。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ式(7)〜(10)のように表せる。
x0(n)=x(n) ・・・(7)
x1(n)=x(n)+(m−2)*δ
=x(n)+δ ・・・(8)
x2(n)=x(n)+(m−1)*δ
=x(n)+2*δ ・・・(9)
x3(n)=x(n)+m*δ
=x(n)+3*δ ・・・(10)
図6は、図4と同様に車両信号20の取得周期Tが200msであり、拡張データ数mが3である例である。信号処理部2で外挿処理を行うことにより、取得信号の時間分解能を改善している。従来の外挿処理は1周期前(前回)に取得した信号値と今回の信号値から1周期後(次回)の信号値を推定し、その推定値と今回の取得値の間を線形補間している。そのため、内挿処理とは異なり、時間遅延は発生しない。しかし1周期後の信号値を推定することから誤差が大きく、図6の破線図形56、57で示した領域のように不連続な値、特に車両信号波形51が下がり傾向の場合における信号値の下降から上昇する値(傾向外上昇値)が発生してしまう。この不連続の値は、音とび現象として報知音にあらわれる。このことから、従来の外挿処理は、車両信号20の車両信号波形51が急激に変化するような車両信号に対して、車両信号20の取得信号の時間分解能を改善する処理には不向きである。
上記で説明した従来の内挿処理と従来の外挿処理のそれぞれの欠点を解決する方法を説明する。図8は本発明の実施の形態1による信号処理のフローチャートであり、図9は本発明の実施の形態1による信号処理を説明する図である。本発明で実施する信号処理を、データ数拡張処理と呼ぶことにする。ここでは、例として車両信号取得部1により取得される車両信号20の取得周期Tが200ms、信号処理後の処理信号値の周期を50msとし、車両信号20の遅延時間を100ms(T/2)とした場合における信号処理について説明する。上述した従来の内挿処理や従来の外挿処理と同様に、現在(nサンプル目)の信号値をx(n)とし、前回(n−1サンプル目)すなわち、1サンプル前(200ms前)に取得した信号値をx(n−1)とする。さらに、データ数が拡張された現在(nサンプル目)の処理信号値を、x0(n)、x1(n)、x2(n)、x3(n)と表すこととする。処理信号値x0(n)、x1(n)、x2(n)、x3(n)は、それぞれ信号値x(n)から0ms、50ms(T/4)、100ms(T/2)、150ms(3T/4)後の信号である。
車両接近通報装置100を起動すると、まず信号処理部2は、ステップS101にて、初期値設定を行う。サンプル番号nを1とし、拡張データ数mを3とし、信号値の初期値x(0)を0に設定し、処理信号値の初期値x0(0)、x1(0)、x2(0)、x3(0)を0に設定する。ステップS102にて、車両信号取得部1から現在(nサンプル目)の信号値x(n)(今回取得値)を取得する。
ステップS103にて、処理信号値の変化量δを計算し、変化量δを更新する。取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数がmであり、車両信号20の現在(nサンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値と前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値x3(n−1)との時間差分がmT/(m+1)である場合、変化量δは式(11)のように表せる。
δ=(x(n)−x3(n−1))/m ・・・(11)
取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数mに、初期設定された3を代入すると、変化量δは式(12)のように表せる。
δ=(x(n)−x3(n−1))/3 ・・・(12)
ステップS104にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。拡張データ数mは3なので、処理信号値の数は、m+1、すなわち4になる。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ式(13)〜(16)のように表せる。
x0(n)=x3(n−1)+δ ・・・(13)
x1(n)=x0(n)+δ ・・・(14)
x2(n)=x(n) ・・・(15)
x3(n)=x2(n)+δ
=x(n)+δ ・・・(16)
ステップS105にて、信号処理部2は生成された処理信号値を調整情報取得部4に通知する。ステップS106にて、信号処理部2は、処理継続の有無を判定する。処理継続の結果が継続する場合には、ステップS107にて、サンプル番号nの値に1を加算し、ステップS102に戻り、再度車両信号の信号値を取得する。一方、処理継続の結果が継続しない場合には、処理を終了する。この処理継続の有無の判定は、図示しない車両情報取得部からのイグニッションOFF信号やブレーキ信号などを用いることが考えられる。また、この処理継続の有無の判定は、車両信号20の取得が停止した場合などに処理を中止しても良い。
図9に、車両信号20の信号値、および処理信号値と経過時間の関係を示した。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。拡張データ数mが3であり、4つの処理信号値を生成する場合は、処理信号値の処理周期はT/4である。信号処理波形62は、車両信号波形61の信号値x(n)をT/2(処理信号値の2処理周期)だけ遅延させ、その信号値x(n)を取得する直前のn−1サンプル目の最後の処理信号値x3(n−1)と信号値x(n)との間を内挿処理し、この内挿処理の後に演算すべき処理信号値x3(n)が残っているので内挿処理と同じ変化量で外挿処理を行ったものである。処理信号値x0(n)、x1(n)は、内挿処理を行ったものであり、処理信号値x2(n)は遅延処理を行ったものであり、処理信号値x3(n)は外挿処理を行ったものである。
また、信号処理波形62のn−1サンプル目では、信号値x(n−1)をT/2(処理信号値の2処理周期)だけ遅延させ、その信号値x(n−1)を取得する直前のn−2サンプル目の最後の処理信号値x3(n−2)と信号値x(n−1)との間を内挿処理し、この内挿処理の後に演算すべき処理信号値x3(n−1)が残っているので内挿処理と同じ変化量で外挿処理が行われることで、処理信号値x0(n−1)、x1(n−1)、x2(n−1)、x3(n−1)が生成されている。信号処理波形62のn+1サンプル目では、同様に信号処理され、処理信号値x0(n+1)、x1(n+1)、x2(n+1)、x3(n+1)が生成されている。なお、処理信号値x3(n+1)は、図9において省略されている。
図10は、本発明の実施の形態1による信号処理波形の例を示す図である。図10では、図4及び図6と同様に車両(電動移動体200)が加速及び減速を行った場合であり、車両信号20の取得周期Tが200msであり、拡張データ数mが3である例である。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。信号処理波形58は、車両信号20を遅延時間100msとしてデータ数拡張処理を行ったものである。図10に示すように、実施の形態1の信号処理は、信号処理部2でデータ数拡張処理を行うことにより、取得信号の時間分解能を改善することができ、かつ、従来の内挿処理のような取得周期T以上の遅延が発生せず、従来の外挿処理のような音とび現象も発生していない。実施の形態1の信号処理は、今回(現在)の処理期間(nサンプル目)において車両信号20の信号値x(n)を取得周期Tよりも短い時間遅延だけ遅延させて、その信号値x(n)を取得する前回の処理期間(n−1サンプル目)における最後の処理信号値x3(n−1)と信号値x(n)との間に内挿処理を実行するので、従来の内挿処理より短い遅延時間で、かつ小さい誤差で取得信号の時間分解能を改善することができる。また、実施の形態1の信号処理は、演算すべき処理信号値が残っている場合には外挿処理を行うので、必要な拡張データ数を維持することができる。実施の形態1の信号処理は、拡張データ数m個のデータ全てを外挿処理する従来の外挿処理とは異なり、外挿処理を行う場合に必要な最低限度の数だけで実行するので、音とび現象の発生を防ぐことができる。
上記で説明したデータ数拡張処理では、処理期間の最後の処理信号値3(x3(n))は明らかに外挿処理で推定した信号値である。また、処理期間の処理信号値0(x0(n))及び処理信号値1(x1(n))は、明らかに内挿処理で推定した信号値である。このように外挿処理で推定した信号値と内挿処理で推定した信号値を含む場合には、データ数拡張処理は、外挿処理の処理信号値に内挿処理の処理信号値を介在させた信号処理とも言える。
実施の形態1の車両接近通報装置100によれば、電動移動体200の車両信号20を取得周期T毎に取得し、取得信号を出力する車両信号取得部1と、取得信号の信号処理を行うことにより2以上である所定数の処理信号値を生成する信号処理部2と、を備え、信号処理部2は、今回取得した取得信号の今回取得値x(n)を取得周期Tよりも短い遅延時間Tdだけ遅延させる遅延処理を実行し、処理信号値である第1の処理信号値を生成すると共に、今回取得値x(n)と前回の最後の処理信号値x3(n−1)との間に内挿処理を実行し、処理信号値である第2の処理信号値を生成し、第1の処理信号値及び第2の処理信号値のデータ数が所定数よりも少ない場合に、第1の処理信号値よりも時間が進む側に外挿処理を実行し、処理信号値である第3の処理信号値を生成することを特徴とするので、取得信号の時間分解能が悪い場合でも、時間分解能を改善し、且つ、時間遅延や音とびの問題を解決することができる。
実施の形態2.
図11は本発明の実施の形態2による信号処理波形の例を示す図である。実施の形態2の信号処理では、実施の形態1よりも短い遅延時間Tdでデータ数拡張処理を行う。図11において、横軸は時間であり、縦軸は信号値である。信号処理波形59は、車両信号20の信号値に対して、遅延時間Tdを処理信号値の1処理周期(50ms)としてデータ数拡張処理を行ったものである。また、信号処理波形59は、車両信号20の取得周期Tが200msであり、拡張データ数mが3である例である。
図11に示した信号処理波形59を得るためのデータ数拡張処理は、図8のステップS104の信号処理が異なる。ステップS104にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ式(17)〜(20)のように表せる。
x0(n)=x3(n−1)+δ ・・・(17)
x1(n)=x(n) ・・・(18)
x2(n)=x1(n)+δ
=x(n)+δ ・・・(19)
x3(n)=x2(n)+δ
=x(n)+2*δ ・・・(20)
実施の形態2の信号処理は、式(17)〜(20)のように、内挿処理が実行された処理信号値(x0(n))と、遅延処理が実行された信号処理値(x1(n))と、2つの外挿処理が実行された処理信号値(x2(n)、x3(n))を生成する。実施の形態2の信号処理波形59は、実施の形態1の信号処理波形58に比べて、減速開始時の音の変化は急となるが、実施の形態1よりも遅延時間Tdをより少なくすることが可能である。
実施の形態3.
実施の形態3では、車両の走行状態に応じて、複数の信号処理パターンから最も適した信号処理パターンを選択する例を説明する。ここでは、車両の走行状態に応じて、拡張データ数mを変更する例を示す。電動移動体200が急加速や急減速する場合には、車両信号20の信号値が著しく変化する。このように車両信号20の信号値が著しく変化する場合は、取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数mは多い方が望ましい。
車両信号取得部1によって車両信号20を取得した際に、その信号値が図12や図13に示すように大きく変化する場合を考える。このとき、拡張データ数mを3とした場合と拡張データ数mを1とした場合を比較する。図12及び図13は、本発明の実施の形態3による信号処理の拡張データ数を説明する図である。図12は拡張データ数mが3の場合であり、図13は拡張データ数mが1の場合である。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。車両信号20の信号値を取得する取得周期Tは200msである。拡張データ数mが3の場合は、処理信号値が4つ(x0(n)、x1(n)、x2(n)、x3(n))であり、処理信号値の処理周期がT/4=50msであり、遅延時間Tdが取得周期Tよりも短い、すなわち2処理周期の100msである。また、拡張データ数mが1の場合は、処理信号値が2つ(x0(n)、x1(n))であり、処理信号値の処理周期がT/2=100msであり、遅延時間Tdが1処理周期の100msである。拡張データ数mが3の場合の階段状波形63は、拡張データ数mが1の場合の階段状波形64よりも、1段毎の変化量が小さくなっている。拡張データ数mが少ないほど車両信号20の時間分解能が低くなり、これに応じて報知音の変化の分解能も低くなるため、車両接近通報装置100が放出する報知音が不自然に聞こえる可能性が高くなる。これより、車両信号20の取得周期T当たりの変化量が著しい場合には、拡張データ数mを多くした方がよいと考えられる。
上記と異なり、電動移動体200が一定速度で走行している場合や、一定の加速度で加速またな減速している場合には車両信号20の信号値がほぼ一定になっている。このように車両信号20の信号値がほぼ一定になっている場合は、取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数mは少なくても構わない。拡張データ数mを少なくすると、システムの処理負荷を削減することができる。
車両信号取得部1によって車両信号20を取得した際に、その信号値が図14や図15に示すようにほぼ一定である場合を考える。図14及び図15は、本発明の実施の形態3による信号処理の拡張データ数を説明する図である。図14は拡張データ数mが3の場合であり、図15は拡張データ数mが1の場合である。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。図12や図13と同様に、車両信号20の信号値を取得する取得周期Tは200msである。拡張データ数mが3の場合は、処理信号値が4つ(x0(n)、x1(n)、x2(n)、x3(n))であり、処理信号値の処理周期がT/4=50msであり、遅延時間Tdが2処理周期の100msである。また、拡張データ数mが1の場合は、処理信号値が2つ(x0(n)、x1(n))であり、処理信号値の処理周期がT/2=100msであり、遅延時間Tdが取得周期Tよりも短い、すなわち1処理周期の100msである。拡張データ数mが3の場合の階段状波形65は、拡張データ数mが1の場合の階段状波形66と同等であり、1段毎の変化量が同等である。拡張データ数mが1の場合は、車両信号20の時間分解能が低くなり、これに応じて報知音の変化の分解能も低くなるものの、拡張データ数mが3の場合と同等の、ほぼ一定の報知音が放出される。これより、車両信号20の取得周期T当たりの変化量がほぼ一定の場合には、拡張データ数mは少なくても構わない。拡張データ数mを少なくすると、システムの処理負荷を削減することができる。
車両の走行状態に応じて、複数の信号処理パターンから最も適した信号処理パターンを選択する実施の形態3の信号処理フローを説明する。図16は、本発明の実施の形態3による信号処理のフローチャートである。図16のフローチャートは、信号値の判定を行うステップS108と、拡張データ数mが異なる他の処理系統であるステップS109、S110とが追加された点で図8のフローチャートと異なる。また、ステップS103、S104の処理は図8のフローチャートと同様であるが、前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値は、x3(n−1)とは異なる場合、すなわち他の処理系統の処理信号値である場合もあるので、xa(n−1)と表記した。ステップS101、S102、S105、S106、S107の処理は、図8のフローチャートと同じであり、説明は繰り返さない。
ステップS108にて、ステップS102で取得した信号値x(n)の判定を行う。例えば、信号値x(n)の変化割合Δ(|(x(n)−x(n−1))/(x(n−1)−x(n−2))|)を信号値x(n)の判定指標Hとし、この判定指標Hが10%等の所定の範囲内の場合には、ステップS109へ進む。また、判定指標Hが10%等の所定の範囲を超えた場合には、ステップS103へ進む。判定指標Hは、信号値x(n)の変化の程度を表すものである。なお、第1回目における変化割合Δは、|x(n)−x(n−1)|とする。
ステップS109にて、処理信号値の変化量δを計算し、変化量δを更新する。取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数mを、ステップS103よりも小さい値、例えば1にする。車両信号20の現在(nサンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値と前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値xa(n−1)との差分を用いて、変化量δを式(21)のように算出する。
δ=(x(n)−xa(n−1))/2 ・・・(21)
ステップS110にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。処理信号値の数は、m+1、すなわち2になる。2つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))は、それぞれ式(22)、(23)のように表せる。
x0(n)=xa(n−1)+δ ・・・(22)
x1(n)=x(n) ・・・(23)
なお、前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値xa(n−1)が、拡張データ数mが1である処理系統(ステップS109、S110を実行する処理系統)からのものである場合、処理信号値0(x0(n))は、式(24)のように表せる。
x0(n)=xa(n−1)+δ
=x(n−1)+δ ・・・(24)
実施の形態3の車両接近通報装置100は、車両信号20の信号値を判定し、この信号値の判定結果に基づいて、拡張データ数mが異なるデータ数拡張処理を行うので、車両信号20の取得周期T当たりの変化割合Δが大きい場合には時間分解能を高めることができ、この変化割合Δが小さい場合は時間分解能を低くすることによりシステムの処理負荷を削減することができる。
実施の形態4.
実施の形態4では、車両の走行状態に応じて、複数の信号処理パターンから最も適した信号処理パターンを選択する他の例を説明する。ここでは、車両の走行状態に応じて、データ数拡張処理の遅延時間Tdを変更する例を示す。アクセルの空吹かしを短時間で何度も行う場合など、電動移動体200の車両信号20の増減が短時間で変化する場合には、データ数拡張処理の遅延時間Tdは短い方が望ましい。
車両信号取得部1によって車両信号20を取得した際に、その信号値が図17、図18や図19に示すように短時間で増減する場合を考える。車両信号20の信号値を取得する取得周期Tは200msとし、拡張データ数mは3としたときに、データ数拡張処理の遅延時間Tdが50ms、100ms、150msである場合を比較する。図17、図18及び図19は、本発明の実施の形態4による信号処理の遅延時間を説明する図である。図17は遅延時間Tdが50msの場合であり、図18は遅延時間Tdが150msの場合であり、図19は遅延時間Tdが100msの場合である。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。図19に示す遅延時間Tdが100msの場合は、実施の形態1で説明したように、外挿処理の処理信号値及び内挿処理の処理信号値がそれぞれ1つ及び2つである。外挿処理の処理信号値はx3(n)であり、内挿処理の処理信号値はx0(n)、x1(n)である。
図17に示す遅延時間Tdが50msの場合は、外挿処理の処理信号値及び内挿処理の処理信号値がそれぞれ2つ及び1つである。外挿処理の処理信号値はx2(n)、x3(n)であり、内挿処理の処理信号値はx0(n)である。図18に示す遅延時間Tdが150msの場合は、外挿処理の処理信号値がなく、内挿処理の処理信号値が3つである。内挿処理の処理信号値は、x0(n)、x1(n)、x2(n)である。
図18に示すように遅延時間が長い場合には、車両信号20の変化と報知音の変化の時間差が大きくなる。この場合、電動移動体200の車両信号20が増加しているのに車両信号20が減少している報知音になったり、電動移動体200の車両信号20が減少しているのに車両信号20が増加している報知音になったりするので、このような報知音は歩行者などにとって適切な報知音とはならない。また、このような報知音は、運転者に非常に大きな違和感を与えるので、運転者にとっても適切な報知音とはならない。したがって、このような場合は遅延時間Tdを短くした方がよいと考えられる。
上記のような車両信号20の増減が短時間で変化する場合と異なる通常の走行時には、データ数拡張処理の遅延時間Tdは問題にならない遅延時間に設定しておくことが望ましい。
車両信号取得部1によって車両信号20を取得した際に、その信号値が図20、図21や図22に示すように増加後に一定となる場合を考える。車両信号20の信号値を取得する取得周期Tは200msとし、拡張データ数mは3としたときに、データ数拡張処理の遅延時間Tdが50ms、100ms、150msである場合を比較する。図20、図21及び図22は、本発明の実施の形態4による信号処理の遅延時間を説明する図である。図20は遅延時間Tdが50msの場合であり、図21は遅延時間Tdが150msの場合であり、図22は遅延時間Tdが100msの場合である。横軸は時間であり、縦軸は信号値である。図22に示す遅延時間Tdが100msの場合は、図19と同様であり、実施の形態1で説明したように、外挿処理の処理信号値及び内挿処理の処理信号値がそれぞれ1つ及び2つである。外挿処理の処理信号値はx3(n)であり、内挿処理の処理信号値はx0(n)、x1(n)である。
図20に示す遅延時間Tdが50msの場合は、図17と同様であり、外挿処理の処理信号値及び内挿処理の処理信号値がそれぞれ2つ及び1つである。外挿処理の処理信号値はx2(n)、x3(n)であり、内挿処理の処理信号値はx0(n)である。図21に示す遅延時間Tdが150msの場合は、図18と同様であり、外挿処理の処理信号値がなく、内挿処理の処理信号値が3つである。内挿処理の処理信号値は、x0(n)、x1(n)、x2(n)である。
図20に示すように遅延時間Tdが短い場合には、処理信号値が振動し、それに伴って報知音の変化も振動するので、このような報知音は、歩行者や運転者に非常に大きな違和感を与えるので、適切な報知音とはならない。したがって、このような場合は遅延時間Tdを長くした方がよいと考えられる。
車両の走行状態に応じて、複数の信号処理パターンから最も適した信号処理パターンを選択する実施の形態4の信号処理フローを説明する。図23は、本発明の実施の形態4による信号処理のフローチャートである。図24は図23のステップS112のフローチャートであり、図25は図23のステップS115のフローチャートであり、図26は図23のステップS118のフローチャートである。図23のフローチャートは、図8のフローチャートのステップS103、S104の処理に変えて、ステップS111、S112、S115、S118の処理を行うものである。ステップS101、S102、S105、S106、S107の処理は、図8のフローチャートと同じであり、説明は繰り返さない。
ステップS111にて、ステップS102で取得した信号値x(n)の判定を行う。例えば、信号値x(n)の変化量絶対値S(|(x(n)−x(n−1))|)を信号値x(n)の判定指標Hとし、判定結果に応じて変化量δの更新及び信号処理を行う。判定指標Hは、信号値x(n)の変化の程度を表すものである。変化量絶対値Sが、0≦S<A1の場合はステップS112の処理を実行する。変化量絶対値Sが、A1≦S<A2の場合はステップS115の処理を実行する。変化量絶対値Sが、A2≦Sの場合はステップS118の処理を実行する。ただし、閾値A1は、閾値A2よりも小さい値である。車両信号20の信号値を取得する取得周期Tは200msとし、拡張データ数mは3とした場合、ステップS112、S115、S118の各処理の遅延時間Tdは、それぞれ150ms、100ms、50msである。
遅延時間Tdが最も長い(大状態である)ステップS112の処理を説明する。ステップS113にて、処理信号値の変化量δを計算し、変化量δを更新する。車両信号20の現在(nサンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値と前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値x3(n−1)との差分を用いて、変化量δを式(25)のように算出する。
δ=(x(n)−x3(n−1))/4 ・・・(25)
ステップS114にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ式(26)〜(29)のように表せる。
x0(n)=x3(n−1)+δ ・・・(26)
x1(n)=x0(n)+δ ・・・(27)
x2(n)=x1(n)+δ ・・・(28)
x3(n)=x(n) ・・・(29)
遅延時間Tdが中程度(中状態)であるステップS115の処理を説明する。ステップS116にて、処理信号値の変化量δを計算し、変化量δを更新する。車両信号20の現在(nサンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値と前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値x3(n−1)との差分を用いて、変化量δを式(30)のように算出する。
δ=(x(n)−x3(n−1))/3 ・・・(30)
ステップS117にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ実施の形態1にて示した式(13)〜(16)のように表せる。
遅延時間Tdが最も短い(小状態である)ステップS118の処理を説明する。ステップS119にて、処理信号値の変化量δを計算し、変化量δを更新する。車両信号20の現在(nサンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値と前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値x3(n−1)との差分を用いて、変化量δを式(31)のように算出する。
δ=(x(n)−x3(n−1))/2 ・・・(31)
ステップS120にて、現在(nサンプル目)の処理信号値の数を以下のように、拡張する。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ実施の形態2にて示した式(17)〜(20)のように表せる。
実施の形態4の車両接近通報装置100は、車両信号20の信号値を判定し、この信号値の判定結果に基づいて、データ数拡張処理の遅延時間Tdが異なるデータ数拡張処理を行うので、車両信号20の取得周期T当たりの変化量絶対値Sの値に応じて、適切な遅延時間Tdでデータ数拡張処理を行うことができる。上記の例のように、実施の形態4の車両接近通報装置100は、車両信号20の取得周期T当たりの変化量絶対値Sが小さい場合、すなわち車両信号20の信号値が安定している場合には遅延時間Tdを150msのように長くでき、この変化量絶対値Sが大きい場合、すなわち車両信号20の信号値が短時間で変化する場合には遅延時間Tdを50msのように小さくでき、この変化量絶対値Sが中の場合には遅延時間Tdを100msのように中間の値にできる。
なお、信号値x(n)の判定指標が変化量絶対値Sである例で説明したが、信号値x(n)の判定指標を実施の形態3で説明した変化割合Δ(|(x(n)−x(n−1))/(x(n−1)−x(n−2))|)としても構わない。この場合、ステップS111におけるケース(1)、(2)、(3)のSはΔとなる。
実施の形態5.
図27は、本発明の実施の形態5による信号処理のフローチャートである。実施の形態1〜4のデータ数拡張処理により生成する処理信号値は、本来の車両信号20が取りうる範囲よりも大きい値を生成する可能性がある。そこで、実施の形態5では、処理信号値が所定の閾値よりも大きい値とならないように、または所定の閾値よりも小さい値とならないように、リミッタ処理を行う。実施の形態5のデータ数拡張処理は、図27のステップS101、S102、S103、S104、S112、S105、S106、S107の処理を行う。実施の形態5のデータ数拡張処理のステップS101、S102、S103、S104、S105、S106、S107は、実施の形態1のデータ数拡張処理と同様である。なお、ステップS101、S102、S103、S104の処理は、リミッタ処理を行う前の処理信号値を生成する第1の信号処理ステップ(ステップS130)であり、実施の形態3や4におけるステップS105よりも前の処理であってもよい。
ステップS112において、リミッタ処理を行う。例えば、信号値に上限を設ける場合を説明する。信号値の閾値を上限閾値s1とし、ステップS104で生成した各処理信号値が上限閾値s1より大きくなった場合に各処理信号値を上限閾値s1にする。また、信号値に下限を設ける場合には、例えば以下のようにする。信号値の閾値を下限閾値s2とし、ステップS104で生成した各処理信号値が下限閾値s2より小さくなった場合に各処理信号値を下限閾値s2にする。信号値に上限及び下限を設ける場合には、例えば以下のようにする。信号値の大きい側の閾値を上限閾値s1とし、小さい側の閾値を下限閾値s2とし、リミッタ処理を行う。このリミッタ処理は、ステップS104で生成した各処理信号値が上限閾値s1より大きくなった場合に各処理信号値を上限閾値s1にすると共に、ステップS104で生成した各処理信号値が下限閾値s2より小さくなった場合に各処理信号値を下限閾値s2にする。これにより、実施の形態5の車両接近通報装置100は、車両信号20の取得信号の時間分解能を向上させる信号処理後に、異常値が出力されるのを防ぐことができる。
例えば、車両信号20がアクセル開度の場合、本来の入力範囲の最小値は0%であり、また本来の入力範囲の最大値は100%である。この場合は、上限閾値s1は100%であり、下限閾値s2は0%である。したがって、ステップS104で生成した処理信号値が、本来の入力範囲の最小値である0%よりも小さい値である場合は、0%になるように処理すれば良い。また、ステップS104で生成した処理信号値が、本来の入力範囲の最大値である100%よりも大きい値である場合は、100%になるように処理すれば良い。車速信号も同様に、本来の入力範囲の最小値である0km/hよりも小さい値を推定した場合は、0km/hになるように処理すれば良い。
実施の形態6.
図28は、本発明の実施の形態6による車両接近通報装置の構成の概要を示すブロック図である。実施の形態6の車両接近通報装置100は、信号処理部2と調整情報取得部4の間にフィルタ処理部11が設けられた点で、実施の形態1〜5の車両接近通報装置100と異なる。フィルタ処理部11は、FIR(Finite Impulse Response)やIIR(Infinite Impulse Response)といったフィルタ処理を行う。実施の形態6の車両接近通報装置100は、取得信号の時間分解能を向上させる信号処理後の処理信号値にフィルタ処理を行うことにより、実施の形態1〜5よりも滑らかで自然な車両信号の変化を模擬することができる。ただし、ディジタルフィルタは処理負荷が高いため、処理能力の高いCPU(Central Processing Unit)で実施する必要がある。
なお、本発明のデータ数拡張処理に用いる変化量δについては、上述の式に限らず別の算出式を用いても良い。また、補間時と補外時でそれぞれ別の変化量δを用いても良い。補間時と補外時でそれぞれ別の変化量δを用いる例を説明する。内挿処理用の変化量をδin、外挿処理用の変化量をδoutと定義する。取得周期T毎に車両信号20のデータ数を拡張する拡張データ数がmであり、nサンプル目の処理期間において、外挿処理にて生成する処理信号値が最後の1つだけである例である。nサンプル目の処理期間における処理信号値の数はm+1であり、外挿処理にて生成する処理信号値が最後の1つだけなので、車両信号20の現在(nサンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値xd(n)と前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値xou(n−1)との時間差分がmT/(m+1)となる。前回(n−1サンプル目)における、遅延処理にて生成した処理信号値xd(n−1)、及び最後の処理信号値xou(n−1)と、現在(nサンプル目)の信号値x(n)(今回取得値)を用いると、変化量δinとδoutは、式(32)と式(33)のように表せる。
δin=(x(n)−xd(n−1))/(m+1)
・・・(32)
δout=x(n)−{xou(n−1)
+(m−1)*δin} ・・・(33)
式(32)は、x(n)−xd(n−1)の差分を利用している。xd(n−1)は車両信号20の前回(n−1サンプル目)の信号値を遅延させた処理信号値x(n−1)なので、変化量δinは、現在(nサンプル目)の信号値x(n)と前回(n−1サンプル目)の信号値x(n−1)との差分を、現在(nサンプル目)の処理期間において均等にしたものと言うことができる。式(33)における「xou(n−1)+(m−1)*δin」は、前回(n−1サンプル目)における最後の処理信号値xou(n−1)に変化量δinの(m−1)倍を加えたものなので、「xou(n−1)+(m−1)*δin」は、現在(nサンプル目)における最後の内挿処理により生成した信号値xb(n)となる。変化量δoutは、現在(nサンプル目)の信号値x(n)と現在(nサンプル目)における最後の内挿処理により生成した信号値xb(n)の差分であると言うことができる。
実施の形態1と同様に、図8のステップS101にて初期設定された3を拡張データ数mに代入すると、変化量δinとδoutは、式(34)と式(35)のように表せる。また、各処理期間の信号処理における処理信号値の数は4なので、xd(n−1)はx2(n−1)であり、xou(n−1)はx3(n−1)である。
δin=(x(n)−xd(n−1))/4
=(x(n)−x2(n−1))/4 ・・・(34)
δout=x(n)−{xou(n−1)+2*δin}
=x(n)−{x3(n−1)+2*δin} ・・・(35)
式(34)及び式(35)を用いた処理信号値は以下のようになる。4つの処理信号値0(x0(n))、処理信号値1(x1(n))、処理信号値2(x2(n))、処理信号値3(x3(n))は、それぞれ式(36)〜(39)のように表せる。
x0(n)=x3(n−1)+δin ・・・(36)
x1(n)=x0(n)+δin ・・・(37)
x2(n)=x(n) ・・・(38)
x3(n)=x2(n)+δout
=x(n)+δout ・・・(39)
図29は、上記の式(36)〜(39)を用いて信号処理をした場合の信号処理波形の例、すなわち、内挿(補間)時と外挿(補外)時でそれぞれ別の変化量δを用いる場合の本発明による信号処理波形の例を示す図である。図29において、横軸は時間であり、縦軸は信号値である。信号処理波形60は、上記の式(36)〜(39)を用いて信号処理をした場合の信号処理波形である。また、信号処理波形60は、車両信号20の取得周期Tが200msであり、遅延時間Tdが100msであり、拡張データ数mが3である例である。信号処理波形60は、図10の信号処理波形58と比べて、僅かながら滑らかに変化したものにできた。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。