JP5642016B2 - 生産計画作成システム及び生産計画作成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、生産計画に応じて変動する生産設備の使用用役の生成に係る物理量を低減できる生産計画作成システム及び生産計画作成方法に関する。
生産計画作成方法は、目的ごとに各種提案されている。特許文献1では、製品納期を順守しつつ利益を最大化すると共に製品の生産時間を短縮させることを目的とし、製品の原材料の入荷から製品出荷までの全工程を示す生産計画を製品生産に係る様々な情報から作成し、その生産計画の各工程内容または各工程順序を変更することが記載されている。
また、特許文献2では、製造業において、離散的に発生する注文、そして特急オーダ、生産遅れなどのイレギュラ発生に対しての全体最適の生産計画作成方法が提案されている。生産計画に付加された余裕時間となるマージンを、調整関数を用いて生産計画の変動と連動して変更することで、各種イレギュラ発生に対して、生産計画修正が可能となり、かつ他の生産計画に影響を最小限にするような生産計画の作成方法が記載されている。
また、特許文献3では、製造プラントなどの設備において、エネルギー需要データと、ユーティリティプラントの運転コスト及び設備機器性能を考慮し、ユーティリティプラントの供給能力が需要を上回りつつ、最小の運転コストとなるように設備機器の起動停止を決定し、製造プラントなどの設備コストの低減を図ることが記載されている。
特開2006−309577号公報 特開2004−127170号公報 特開2009−282799号公報
特許文献3によれば、ユーティリティ(用役)プラントである電力や蒸気を供給する用役設備の運転コストを考慮しているが、用役需要を変更することなく供給設備の稼働状況のみを変化させて運転コストの低減を図っている。用役設備の運転コストは、用役需要に関係するため最小の運転コストを得るためには、更なる検討を必要とする。
いずれにしても既存技術以上に、生産計画に対しては、生産設備が用いる電気・温水・冷水・蒸気などの用役生成に必要なエネルギー、CO2などのコストを十分に反映する必要がある。なお、本明細書では、あるものごとを達成するのに掛かった物理量(エネルギー、CO2など)を総称してコストという。
本発明は、前記の課題を解決するための発明であって、生産計画に応じて変動する生産設備の使用用役の生成に係る物理量を低減できる生産計画作成システム及び生産計画作成方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、本発明の生産計画作成システムは、ユーザが入力した生産ライン情報に基づき生産ラインのペトリネットモデルを、工程開始時間を求めたい箇所を設定するとともに、用役使用量をユーザが設定可能であるように作成する生産ラインペトリネットモデル作成部と、生産ラインに用役を供給する用役設備モデルの用役設備情報を設定する用役設備情報設定部と、用役設備で最小化したい物理量を目的関数として設定する目的関数設定部と、ペトリネットモデルと用役設備情報と目的関数とに基づいて、生産ラインにおいて満たすべき条件と用役設備の運転に必要な条件とを制約条件として、数理計画法を用いて、製品の納期内で用役設備の物理量を最小化する計算をし、該計算に基づいて生産ラインにおける工程開始時間を決定する計算部(例えば、制約設定・最適計算部105)とを有することを特徴とする。
本発明によれば、生産計画に応じて変動する生産設備の使用用役の生成に係る物理量を低減できる。
実施形態1における生産計画作成システムの構成図の例である。 生産ラインの例である。 生産ラインにエアを供給するコンプレッサの構成の例である。 4台のコンプレッサを台数制御した場合の電力消費特性の例である。 ペトリネットの概要を示す図の例である。 生産計画作成方法の処理を説明するフローチャートである。 生産ラインペトリネットモデル作成部でユーザが生産ラインのモデルを作成するのに用いるペトリネットの要素を示す図の例である。 図2に示す生産ラインを図7のペトリネットの要素を用いてモデル化した例である。 プレースとトランジションの値設定を示す表の例である。 成り行きで生産を行った場合のエア需要量を示す図の例である。 実施形態1において、生産計画システムを利用する効果を示す図の例である。 実施形態2における用役設備の構成の例である。 コジェネレーションシステムの発電効率特性と排熱割合特性の例である。 複数の貫流ボイラの燃料消費特性の例である。 実施形態2において、生産計画システムを利用する効果を示す図の例である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1における生産計画作成システム101の構成図の例である。生産計画作成システム101は、ユーザ106が入力した生産ライン110の情報に基づき生産ライン110のペトリネットモデルを作成する生産ラインペトリネットモデル作成部102と、ユーザ106が入力した用役設備109の情報に基づき用役設備109の各種情報を設定する用役設備情報設定部103と、費用やCO2(温室効果ガス排出量)などの最小化したいコストを設定する目的関数設定部104と、生産ラインペトリネットモデル作成部102のペトリネットモデルと用役設備情報設定部103の用役設備情報と目的関数設定部104で設定された目的関数に基づいて、コストを最小化するように生産ライン110における各工程開始時間を含む用役設備109の運転計画を決定する制約設定・最適計算部105(計算部)を含んで構成される。なお、制約設定・最適計算部105で決定された工程開始時間は、現場作業者107及び生産ライン制御装置108に送信される。
なお、前記したように、本実施形態において、あるものごとを達成するのに掛かった物理量(費用、エネルギー、CO2など)を総称してコストという。また、用役設備109には、生産ライン110に必要な蒸気、電力、圧縮空気などを扱う設備が含まれる。
図2は、生産ライン110の例である。図2に示すラインは、工程1(202)、工程2(203)、工程3(206)、工程4(207)、工程5(208)、工程6(210)、工程7(211)の7つの工程を有している。工程1(202)と工程2(203)は一続きのラインであり、置き場201から投入する部品Aから中間製品Aを作り、置き場204に仮置きされる。工程3(206)、工程4(207)と工程5(208)も一続きのラインであり、置き場205から投入する部品Bから中間製品Bを作り置き場209に仮置きされる。なお、工程1(202)などにおいて、部分の名称と符号を明りょうにするため、符号は適宜括弧内に記載する。
工程6(210)と工程7(211)も一続きのラインとなっていて、中間製品Aと中間製品Bの2つを組み合わせて製品とし、製品置き場212に保管される。各置き場では、1つの容器に部品や中間製品が複数個まとめて入っており、それを1単位として工程が実施されるものとする。図2には、例として、容器213に部品214が格納されている様子が吹き出し内に示されている。用役の使用については、工程1(202)、工程4(207)、工程5(208)、及び工程7(211)において、用役としてエアが使われるものとする。なお、生産ライン110はこの形状のみを限定するものではない。
図3は、生産ライン110にエアを供給するコンプレッサの構成の例である。適宜図を参照する。用役設備109の詳細を図3に示す。生産ライン110にエアを供給するため、4台のコンプレッサA(301),B(302),C(303),D(304)を使用している。これらは全て同一吐出空気量(1[m/min]とする)である。コンプレッサD(304)は吐出空気量調整のためインバータ制御を行い、4台で台数制御を行っているとする。この内、コンプレッサC(303)の効率が他のコンプレッサA(301),B(302)と比べて悪いとする。
図4は、4台のコンプレッサを台数制御した場合の電力消費特性の例である。台数制御の場合は、部分負荷をインバータ機であるコンプレッサD(304)が受け持つため、電力消費量と空気使用量との関係は図4に示す通りとなる。図中A,B,C,Dは、コンプレッサA(301),B(302),C(303),D(304)がエアを供給する領域を示す。コンプレッサA,Bのどちらを先に立ち上げるかは予め指定しており、効率の悪いコンプレッサC(303)はなるべく利用しない様にエア使用量大の場合のみ利用する。なお、生産ライン110の場合と同様に、これらも用役設備109の構成・特性を限定するものではない。
図5は、ペトリネットの概要を示す図の例である。ペトリネットとは、離散事象システムをモデル化するツールとして考案されたもので、プレース、トークン、アーク、トランジションの4つの基本要素からなり、接続元のプレースにおけるトークンの生成・消滅によって状態の移り変わりを表す。トランジションは、アークで結ばれた各プレースにあるトークン数が設定値を超えている場合に発火し、接続元のトークンを同数消去し、アークによる接続先のプレースに予め定められた数だけトークンを出現させる。トークンが、作業の状態あるいは直接製品を表すとして、生産状態のモデル化にも用いられている。例えば、特開平8−36602号公報、特開平11−328259号公報がある。
図6は、生産計画作成方法の処理を説明するフローチャートである。生産計画作成システム101による生産計画作成方法の処理を、図1を適宜参照して説明する。まず、生産ラインペトリネットモデル作成部102が、ユーザ106の設定に基づき、生産ラインのペトリネットモデルを作成し、用役設備情報設定部103が用役設備モデルの情報を設定する(ステップS601)。目的関数設定部104が最適化させたい目的関数を設定し、制約設定・最適計算部105が制約条件を設定する(ステップS602)。そして、制約設定・最適計算部105が最適化計算を行う(ステップS603)。
ステップS604において、制約設定・最適計算部105がユーザ106からの条件変更があるか否かを判定し、条件変更があれば(ステップS604,Yes)、(1)ペトリネットモデル、用役モデルの変更要求であれば、ステップS601に戻り、(2)目的関数、制約条件の変更要求であれば、ステップS602に戻る。一方、条件変更がなければ(ステップS604,No)、処理を終了する。
以後、各フローの詳細を生産設備と用役設備の場合で説明する。
図7は、生産ラインペトリネットモデル作成部102でユーザ106が生産ライン110のモデルを作成するのに用いるペトリネットの要素を示す図の例である。図7を参照して、ステップS601の生産ラインのペトリネットモデル作成について述べる。プレースとしては、生産ライン110上を示すプレース701(図7(a)参照)と生産ライン110外を示すプレース703(図7(c)参照)がある。例えば、ユーザ106(図1参照)が画面上でプレース701をマウスなどでクリックすると、表701Tに示す子画面が表示され、ユーザ106により、トークンの初期個数、トークンが存在する場合に消費する用役の種類(用役種類)や量(用役量)、及び用役の単位(用役単位)が設定される。プレース703に係る表703Tには、上限個数と初期個数が設定される。なお、表701Tには上限個数欄はないが、プレース701の上限個数は1で固定である。用役量としては、その工程における処理や作業で必要となる最大使用量または平均使用量などが設定される。なお、表701Tにおいて、用役として電気と蒸気(スチーム)の双方を使用するとき、電気と蒸気を個別に設定することができる。
トランジションとしては、発火からトークンの消滅・生成までの時間を指定することが可能なトランジション704(図7(e)参照)、工程の開始時間を求めたい箇所に用いるトランジション706(図7(g)参照)がある。トランジション704に係る表704T(図7(f)参照)には、時間及び時間単位を設定することができる。
アークとしては、矢印で示すプレース・トランジション間を接続するアーク707(図7(h)参照)がある。
図8は、図2に示す生産ラインを図7のペトリネットの要素を用いてモデル化した例である。図9は、プレースとトランジションの値設定を示す表の例である。図2に示す201〜204の流れについて詳細を述べる。図8は、ユーザ106が、生産ラインペトリネットモデル作成部102が表示したモデル作成画面を使用して作成するものとして説明する。生産ラインペトリネットモデル作成部102は、入力された生産ラインペトリネットモデルの入力可否などの整合性をチェックし、入力誤りなどがある場合には、表示画面にその旨を通知するとよい。
まず、部品Aの置き場をプレース801で表している。ここでは初めに5個の部品Aの入った容器があるとして、図9(a)に示す表901のように初期個数5の値を設定する。続いて、工程1(202)の開始をいつにしたいかを決定するため、ラインの直前に開始時間決定のためのトランジション802を設置する。続くプレース803は工程1(202)を表す。ここでは、エアを消費するため、図9(b)に示す表902に示すように値を設定する。
続くトランジション804では、工程1(202)にかかる時間を、図9(c)に示す表903のように設定する。続くプレース805は工程2(203)であり、ここでは用役を用いないため用役量は設定しない。
以下、同様にしてトランジション806に工程2(203)の時間を指定し、続いて、工程1(202)、工程2(203)を終えてできた中間製品Aの置き場をプレース807で表している。これ以外の工程3(206)〜工程7(211)についても同様に、1工程1プレースとしてモデル化している。工程6(210)は中間製品Aと中間製品Bの2つが揃わないと工程が開始できないため、アーク808とアーク809をトランジション810に接続することでその条件をモデルに反映している。最終的に、完成した製品は置き場であるプレース816に蓄積することとなる。
この実施形態では、他にプレース817に初期個数5、プレース818にエアを1[m/min]、プレース819にエアを1.0[m/min]、プレース820にエアを1[m/min]を、また、各工程の時間は10[min]として、全てのトランジション704(図7(e)、(f)参照)に10[min]を設定する。
図10は、成り行きで生産を行った場合のエア需要量を示す図の例である。成り行きで生産とは、工程の生産開始時間などの制御を全く行わない場合である。すなわち、トランジション802、810、821が利用されないで、その位置に時間0のトランジション704(図7(e)参照)を置くことに相当する。図10を参照すると、40[min]〜50[min]の間にエア需要量が3[m/min]を超えており、図4より効率の悪いコンプレッサC(303)を利用してしまっていることが分かる。
なお、図8に示したモデルに関しては、工程を1単位としているが、工程をさらに細かく分割する、または、複数工程を1つにまとめるなどのモデルの組み方であっても当然よく、ユーザ106が任意に設定可能である。また、工程開始時間を決定したい箇所も連続したラインの直前全てにする必要はなく、またライン上での停止が可能であればライン途中に設けてもよい。また、置き場であるプレース807と置き場であるプレース815から工程6までに距離があり工程開始までの最低時間を設定したい場合には、アーク808とアーク809の先に、図示しない時間付トランジションとプレースを設けて、そこに一時的にトークンが置かれるようにするなどで、対処可能である。このユーザ106(図1参照)が作成したペトリネットモデルを、生産ラインペトリネットモデル作成部102(図1参照)が最適化計算のために数値化する。
トランジションに発火からトークンの消滅・生成までの時間を指定することが可能な
ペトリネットは、時間ペトリネットと呼ばれるもので、プレースのトークン個数の推移を数式化すると以下の式で表される。適宜図7を参照する。
Figure 0005642016
数1式の最初の式(第1式)の右辺は、第1項〜第3項からなり、第1項は、あるプレースにおける時間kのマーキング数(トークン個数)、第2項は、あるトランジションを基準として、トランジション704から該当プレースへのトークンの移動量を表す項である。第2項中のσは、あるトランジションに対してその手前にトークンが規定個数以上来ているかを見るもので、来ていれば1、それ以外では0とすることで、トークンの移動可否を示す(数2式参照)。第2項中のw(t,p)-w(p,t)がトークンの移動個数を示し、eについては、数3式を参照する。第3項は、トランジション706から該当プレースへのトークンの移動を表す項である。第3項中のw(tc,p)-w(p,tc)がトークンの移動個数を示し、Bはトランジションtcの発火(前後のトークンの生成・消滅の可否)を示す0または1で表す変数であり、この値を最適化変数としてその解を求めることで、用役設備のコストが最小となる工程開始時間を決定できる。
なお、mはマーキングと言いプレースのトークン個数を示し、mは時間が1進む前での遷移を表すために用いるものである。wはプレースとトランジションのつながりとその重みを示す接続行列の成分である。m(p,k)で+を右肩につけているのは、時間kがk+1に進む途中を示す。kは時間であり、これが進むごとに状態が遷移していく。pはプレース(プレース701、プレース703)、tはトランジション704、tcはトランジション706の番号(1から順番に2,3,4・・・と抜けの数字がなく付けられる番号)を表す。
e、σ、σcは、トークンの時間トランジションの残り時間が0になった時にトークンの消滅・生成を許すなどの、条件を表すもので、以下に示す数2、数3、数4で与えられる。この内、θはトランジション704に表704Tを用いて設定する時間であり、c、c、σは時間の進みごとに他の値により定まる値である。
Figure 0005642016
Figure 0005642016
Figure 0005642016
数3式のc(t,k)は、トランジション704にトークンが到着してからの時間カウントで、数4式で設定された後、単位時間毎に減少する値である。そのカウントが0になったときにeが1となり、σの1と合わせて数1式でトークンが移動できるようになる。数4式中の+の添字は、時間kが1進む間の段階を示す(k→k→k+1)。これは計算上必要なためで、変数の意味自体はcもcも同じである。cは該当トランジション手前にトークンが到達し、通過不可から可となったときに、時間を設定し直す。それ以外では1つずつ減少する。
生産ラインペトリネットモデル作成部102は、ユーザの作成したペトリネットモデルから、この式に必要となる時刻0における初期マーキング数、トランジションに設定した時間θ、プレースとトランジション間のつながりからwを取得する。プレース、トランジションの番号については、任意で構わないためモデル生成後にモデルから数値データを取得する際に自動的に割り振るような機能を持つとしてもよいし、ユーザがモデル生成時に1つずつ番号を振るようにしてもよい。ただし重複させてはならない。
マーキングm(p、k)と、表701Tで設定した用役量(u(p)とする)とを用いると、用役量U(k)は以下の式で表されるため、この式を内部で生成し、最適計算に用いる。
Figure 0005642016
続いて、図6のステップS601の用役設備モデル情報入力について述べるため、用役設備情報設定部103について説明する。ここではユーザ106が、用役設備ごとの用役量と負荷率(用役設備の部分負荷時出力/用役設備の定格出力、出力は発生エネルギー、エア吐出量、蒸気発生量など、設備による)との関係、エネルギーと負荷率との関係式を設定する。本実施形態の同吐出空気量コンプレッサの台数運転の場合、図4より用役(エア)の使用量とエネルギー消費量(電力消費量)との関係が一義的に求まるため全体で1つの用役設備109として計算する。
設備負荷率(エア吐出量/4台分のエア定格出力)をx(k)(kは時間)として、4台分の定格エア吐出量をαとおくと、エアの使用量Ua(k)=α×x(k)となる。また、電力消費量E(k)との関係は図4を利用してユーザが作成し、入力する。複数区間に分割して各々に直線近似式を立てる一般的な方法であれば、以下の数6式の形になる。
Figure 0005642016
iは各区間を表しており、zは1または0の変数である。和が1以下という条件より、一つの区間が選ばれるように機能する。ユーザ106は、αと区間分割数とそれぞれに対応するa(i),b(i)を設定する。以上のようにして、用役設備情報設定部103による、ステップS601(図6参照)での用役設備モデル情報の設定が行われる。
次に、図6のステップS602の目的関数の設定について説明する。用役設備のコストとしてはエネルギー、CO2など考えられるが、この場合は電力消費量E(k)を時間について足し合わせたものとする。足し合わせの時間(製品製造終了の限度時刻以上の値を設定)は、ユーザ106が入力する。式では以下に示す数7式の形となる。
数7式は、用役設備109で最小化したい物理量である目的関数を示す。
Figure 0005642016
次に、図6のステップS602の制約条件の設定について述べる。最適化計算を行う上では目的関数と制約条件を用いる必要があり、目的関数を目的関数設定部104で総エネルギー消費量とし、用役設備109のエネルギー消費量を足し合わせる。
制約条件の制約式として、生産設備のペトリネットモデルと用役設備109のモデルとで用役量が等しいという条件から以下の数8式の制約式を用いる。この式は、用役種別ごとに成立する。
Figure 0005642016
数8式によって用役設備モデルと生産ラインペトリネットモデルの最適化をつなぐ。必要な値は、生産ラインペトリネットモデル作成部102と用役設備情報設定部103から制約設定・最適計算部105が値を取得して設定する。
エネルギー消費量を最小にするだけでなく、納期に間に合わせることが必要なため、生産を終えたい時間をk_M、それまでに作成したい製品数(容器ごとに1つとして数えたもの)をm_s、製品置き場を表すプレース番号をp_f(最終プレース)として、k_Mとm_sはユーザが入力し、p_fは生産ラインペトリネットモデルで終端にあるプレースのものが自動的に取得される。この実施形態では、作成する製品個数が容器5つ分で、製品作成終了が100[min]以内として各値をk_Mとm_sに入力する。
Figure 0005642016
他に、生産ラインペトリネットモデル作成部102からマーキング数の上限も取得して制約式を作成する。また、生産ラインから置き場までの複数個にわたってある個数を上回ることがないようにしたい場合も、ここでその式を設定する。なお、その他の制約は、これまでの数1式〜数4式までの数式が入る。
制約式を作成し終えた後、図6のステップS603において、制約設定・最適計算部105は最適化計算を行う。この最適化計算の問題は、条件分岐による非線形項が含まれるため制約充足問題として解くこととなる。省エネ効果を得るためには必ずしも最適解を得る必要はなく、バックトラッキング法をベースにした厳密解法で解いてもよいし、局所探索やタブーサーチを用いた近似解法を用いて解いてもよい。解としては、生産工程開始時間B(tc,k)と、用役設備の負荷率が決まる。
具体的には、B(tc,k)はトランジション706をトークンが通過することを許可する(1:許可、0:不許可)変数である。これが1の時にトークンの通過が許可される。すなわち、製品をラインに進めるとは生産工程の開始という意味になる。
実施形態1の場合には、生産工程開始時間としては、トランジション802、821については常に1、トランジション810については40[min]〜50[min]の間で0となり、それ以外は1となる解が得られる。数1式から分かるようにこの期間において、このトランジション810の前後のプレースにおけるトークンの消滅・生成ができないことを示していて、10分間だけ工程6(プレース811)の開始を遅らせることを意味する。
図11は、実施形態1において、生産計画システムを利用する効果を示す図の例である。破線で示すライン1102は、図10の例に相当するエア需要量であり、実線で示すライン1101は、最適化計算後のエア需要量である。このように、エアの需要量は、図10の例に相当するライン1102の場合と異なり、ライン1101に示す通りとなる。解として得られる用役設備の負荷率は(実線のライン1101の値)/(全コンプレッサのエア定格吐出空気量の和)に相当する。図10の例に相当するエア需要量(破線のライン1102)と比較すると、エア需要量が3[m/min]を下回ることで効率の悪いコンプレッサC(303)を利用せずにエアを供給できていることが分かる。また、100分以内に製品製造を終えるという条件も満たしている。
この様に、工程開始時間の最適化で、圧縮機の中からエネルギー効率の良いものだけを利用できるようになり、エネルギーの削減が可能となる。
(実施形態2)
実施形態2では、用役設備の運転状態を制御可能な場合に、その運転計画も合わせて立案できることについて説明する。図12とともに適宜図1を参照して説明する。生産計画作成システム101の全体構成は、図1と同じであるので説明を省略する。また、生産計画作成の処理フローも図6と同様である。
図12は、実施形態2における用役設備の構成の例である。図1における用役設備109は、図12に示すように、コジェネレーションシステム1201(CGS)、廃熱ボイラ1203、及び貫流ボイラ1202とを含んで構成される。生産ライン110では、買電1205による電気とコジェネレーションシステム1201で発生する電気を用いる。コジェネレーションシステム1201は電主熱従運転を行うとして、電力生成時の廃熱を廃熱ボイラ1203で蒸気に変え空調1204に用いる。また、発生する電気量は指定可能(運転制御可)であるとする。空調需要に対して廃熱ボイラ1203の熱が足りない場合には、貫流ボイラ1202で蒸気を補充する。
生産ライン110については、実施形態1と同様に図2で表されるラインとする。ただし、工程1(202)、工程4(207)、工程5(208)と工程7(211)においては、エアではなく電熱加温のために電気が使われるものとする。そのため、図6のステップS601における生産ラインペトリネットモデル作成時における用役種類の指定では図7の表701Tの用役種類では電気を選択して、必要な量と単位を入力する。ペトリネットを用いたラインのモデル化は、図8と同様にモデル化し、数値化を行うとする。この例では生産ライン稼働のための電力を除外しているが、その値が無視できない程大きい場合には、これを足し合わせて全電力量とする入力を受け入れられるようにすればよい。
各用役設備について、図6のステップS601で、用役設備モデル情報を指定に必要な詳細を以下に述べる。図13は、コジェネレーションシステム1201の発電効率特性と排熱割合特性の例である。図13には、コジェネレーションシステム1201について、ガスエンジンの定格出力に対する出力の割合を負荷率とした場合の発電効率のグラフ1301と排熱割合のグラフ1302を示す。グラフ1301に示すように、負荷率が高い程、発電効率が上昇する。逆に、グラフ1302に示すように、排熱割合は飽和傾向にあり小さくなる。負荷率をxとして、
グラフ1301を、ae(i)×x+be(i)とおき、
グラフ1302を、ah(i)×x+bh(i)とおく。
なお、iは区間を表す。
そして、負荷率に対する燃料消費量を
af(i)×x+bf(i)とする。
次に、買電1205については、電力会社との契約により、その使用量ebuyによって以下のようにその単価cbuyが変わるとする。
cbuy=c1(0<ebuy<e1)、c2(e1>ebuy)
図14は、複数の貫流ボイラの燃料消費特性の例である。図14には、貫流ボイラ1202について、効率がほぼ一定であるために複数台ある場合の蒸気消費量と燃料消費量との関係をグラフ1401に示す。この例では蒸気需要量に対する個々の貫流ボイラの蒸気発生量が小さく、その数が多いとしてグラフ1402のように蒸気消費量と燃料消費量の直線近似をする。この時、全ての貫流ボイラ1202を使用した場合の発生蒸気量を最大値とした蒸気使用割合を負荷率xboilとした場合には、燃料消費量を、
fa×xboil+fb
と表せる。なお、近似できない場合でも個別の機器ごとに式を立てれば対応可能である。
廃熱ボイラ1203については、コジェネレーションシステム1201の排熱の内、割合βの熱量を空調1204に与えることができるとする。
空調1204では、その熱需要をha(l)[J]とおく。lは時間で単位は「時間」とする。生産ラインペトリネットモデルの時間kは、実施形態1と同様に「分」であるとする。この時間は、生産ラインペトリネットモデル作成部102と用役設備情報設定部103のそれぞれで各項目設定時に指定できるようにしておく。これは、生産ラインのペトリネットモデルが通常分単位のモデルとなるのに対し、コジェネレーションシステムなどの熱源設備の運転計画は一時間単位で立てられることによる。
図6のステップS602での目的関数を総費用として、数10式で示される。数10式は、用役設備109で最小化したい物理量である目的関数を示す。
Figure 0005642016
数10式は、目的関数の式であり、kについてのΣ(第1項)と、lについてのΣ(第2項)の2項で構成される。第1項は、買電によって用いる電気の費用である。第2項は、コジェネレーションシステム1201の燃料消費量、貫流ボイラ1202の燃料消費量を加算した燃料消費量に対し費用への変換係数fcを乗じた燃料の費用である。すなわち、電気の費用と燃料の費用を足し合わせて全体の費用(総費用)とし、目的関数としている。なお、費用はコストの一形態である。
最後に、図6のステップS602の制約条件を設定をする。生産ラインで必要とされる電力と空調で必要とされる熱需要を満たす必要があるため、数11式の2式を作成する。第1式(上段)は電力についての需要と供給の一致を表し、第2式(下段)は蒸気についての需要と供給の一致を表す。貫流ボイラ1202を定格運転した場合の蒸気総量をwとして、単位蒸気あたりに空調に加えることのできる熱量をqwとおいた。
Figure 0005642016
数11式を詳細に説明すると、第1式(上段)の左辺のU(k)は、生産ライン110の電気消費量で、1時間の内の最大の値を求めている。その値は用役設備109で確保しなくてはならない。第1式(上段)の右辺は、第1項と第2項の2項からなり、第1項は買電で得る電気量であり、第2項はコージェネレーションシステム(CGS)によって生成する電気量である。
第2式(下段)h(k)は分ごとの空調が必要とする熱量で、同様に左辺で1時間の内最大の値を求めている。第2式(下段)の右辺は、第1項と第2項の計2項からなり、第1項は、貫流ボイラの蒸気消費量で係数q(l)をかけることで、熱量に変換している。第2項は、CGSが負荷率xで運転された場合に出力される排熱量であり、係数βをかけることで空調に利用する排熱量へと変換する。
この両式の最大値の計算は、両モデルの時間を合わせるために行う。このとき、ペトリネットモデルで求めた需要量の最大値をコジェネレーションシステムの運転計画で出力できるような運転計画とする必要があるためこのような形となる。制約設定・最適計算部105では、両モデルの時間を比較して、より大きい側に合わせるようにする。
その他の、制限時間内の製品製造を示す制約(数9式)や、その他の生産ラインペトリネットモデル、用役設備モデルに対する制約式は、実施形態1と同様である。図6のステップS603の最適化計算についても実施形態1と同様である。
解としては、実施形態1と同様に、生産工程開始時間と用役設備の負荷率が決まる。これにより、用役設備のコジェネレーションシステム1201の運転計画の最適化と生産ライン110の工程開始時間の両方を同時に最適化することが可能となる。
図15は、実施形態2において、生産計画システムを利用する効果を示す図の例である。コジェネレーションシステム1201と買電1205、貫流ボイラ1202間で最適化を行う通常の用役設備最適運転では、コジェネレーションシステム1201をフル稼働させても、グラフ1501に示すように買電1205が契約電力の電力消費量の閾値e1(1503)をわずかに超えてしまうことで、費用増が回避できない場合がある。これに、生産工程開始時間の最適化が組み合わされることでグラフ1502のように契約電力の電力消費量の閾値e1(1503)を超えずにコストを削減できている。
コストの最小化を行う際、評価対象の物理量として複数のものがある場合に、2つ以上の互いにトレードオフを伴うような物理量がある。この場合には、その2つの物理量に適度な(どちらをより評価したいかにより大きさを変える)重み値を設定してその和の最小化をするとよい。なお、物理量がひとつの場合は、他のコストの重み値が0で、評価対象のコストの重み値を1とすると、1つの物理量についての評価となる。
例えば、物理量として、用役設備109の運転費用としての費用、用役設備109の温室効果ガス排出量があり、これらに重み付けした和を指定する。具体的に説明すると、用役設備109の費用と用役設備109の温室効果ガス(例えば、CO2)排出量で考えた場合に、費用は安いがCO2排出量は多くなるといった場合が考えられる。重み値をα、βとすると、その場合にα×(運転費用/M¥)+β×(CO2排出量/t)として、費用を安くしたい場合には、「α×(費用/¥)」が「β×(CO2排出量/t)」に対して、より大きくなるように重み値を設定する。費用と温室効果ガス排出量はそもそも次元の異なる量であるので、α、βはどちらをどれだけ重要視するかにより、適切と考える値をユーザが設定するとよい。
以上をまとめると、実施形態1によれば、ペトリネットモデルには、工程開始時間を求めたい箇所を示すトランジション(例えば、図8に示すトランジション802,810,821)を含み、プレースに用役使用量が指定できる。例えば、プレース803の工程1(202)には、エアを消費するため、図9(b)に示す表902に指定される。
実施形態1によれば、用役設備情報設定部103は、用役設備の負荷率に対するエネルギー消費特性を設定し、目的関数設定部104は、物理量であるコストとして用役設備の運転に必要なエネルギー消費量を設定し、制約設定・最適計算部105は、負荷率を変数として生産ラインの製品の流れとともに計算し、運転に必要なエネルギー消費量を最小化する生産計画を作成することができる。
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
101 生産計画作成システム
102 生産ラインペトリネットモデル作成部
103 用役設備情報設定部
104 目的関数設定部
105 制約設定・最適計算部(計算部)
106 ユーザ
107 現場作業者
108 生産ライン制御装置
109 用役設備
110 生産ライン
701,703 プレース
704,706 トランジション
701T,703T,704T 表
707 アーク
1201 コジェネレーションシステム
1202 貫流ボイラ
1203 廃熱ボイラ
1204 空調
1205 買電

Claims (8)

  1. ユーザが入力した生産ライン情報に基づき生産ラインのペトリネットモデルを、工程開始時間を求めたい箇所を設定するとともに、用役使用量を前記ユーザが設定可能であるように作成する生産ラインペトリネットモデル作成部と、
    前記生産ラインに用役を供給する用役設備モデルの用役設備情報を設定する用役設備情報設定部と、
    前記用役設備で最小化したい物理量を目的関数として設定する目的関数設定部と、
    前記ペトリネットモデルと前記用役設備情報と前記目的関数とに基づいて、前記生産ラインにおいて満たすべき条件と前記用役設備の運転に必要な条件とを制約条件として、数理計画法を用いて、製品の納期内で前記用役設備の物理量を最小化する計算をし、該計算に基づいて前記生産ラインにおける前記工程開始時間を決定する計算部とを有する
    ことを特徴とする生産計画作成システム。
  2. 前記作成されたペトリネットモデルの要素の内、前記工程開始時間を求めたい箇所トランジションによって定められ前記用役使用量はプレースにその用役使用量が指定される
    ことを特徴とする請求項1に記載の生産計画作成システム。
  3. 前記物理量として、前記用役設備の運転費用、前記用役設備の温室効果ガス排出量のうち少なくともいずれかを含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の生産計画作成システム。
  4. 前記用役設備情報設定部は、前記用役設備の負荷率に対するエネルギー消費特性を設定し、
    前記目的関数設定部は、前記物理量として前記用役設備の運転に必要なエネルギー消費量を設定し、
    前記計算部は、前記負荷率を変数として前記生産ラインの製品の流れとともに計算し、前記運転に必要なエネルギー消費量を最小化する生産計画を作成する
    ことを特徴とする請求項1に記載の生産計画作成システム。
  5. 用役を供給する用役設備を有する生産ラインの生産計画作成方法であって、
    生産ラインペトリネットモデル作成部は、ユーザが入力した生産ライン情報に基づき前記生産ラインのペトリネットモデルを、工程開始時間を求めたい箇所を設定するとともに、用役使用量を前記ユーザが設定可能であるように作成し、
    用役設備情報設定部は、前記生産ラインに用役を供給する用役設備モデルの用役設備情報を設定し、
    目的関数設定部は、前記用役設備で最小化したい物理量を目的関数として設定し、
    計算部は、前記ペトリネットモデルと前記用役設備情報と前記目的関数とに基づいて、前記生産ラインにおいて満たすべき条件と前記用役設備の運転に必要な条件とを制約条件として、数理計画法を用いて、製品の納期内で前記用役設備の物理量を最小化する計算をし、該計算に基づいて前記生産ラインにおける前記工程開始時間を決定する
    ことを特徴とする生産計画作成方法。
  6. 前記作成されたペトリネットモデルの要素の内、前記工程開始時間を求めたい箇所はトランジションよって定められ、前記用役使用量はプレースにその用役使用量が指定される
    ことを特徴とする請求項5に記載の生産計画作成方法。
  7. 前記物理量として、前記用役設備の運転費用、前記用役設備の温室効果ガス排出量のうち少なくともいずれかを含む
    ことを特徴とする請求項5に記載の生産計画作成方法。
  8. 前記用役設備情報設定部は、前記用役設備の負荷率に対するエネルギー消費特性を設定し、
    前記目的関数設定部は、前記物理量として前記用役設備の運転に必要なエネルギー消費量を設定し、
    前記計算部は、前記負荷率を変数として前記生産ラインの製品の流れとともに計算し、前記運転に必要なエネルギー消費量を最小化する生産計画を作成する
    ことを特徴とする請求項5に記載の生産計画作成方法。
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