次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本発明にかかるバイポーラ/ユニポーラ変換回路の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明にかかるバイポーラ/ユニポーラ変換回路1の第1の実施形態を示し、バイポーラ/ユニポーラ変換回路1は、正極RZ変換回路2、負極RZ変換回路3、論理和回路4、位相比較回路5、周波数発振回路6、NRZ変換回路7、正極検出回路8、負極検出回路9、入力断検出回路10、符号則誤り検出回路11及びバイアス設定回路12で構成される。
正極RZ変換回路2は、バイポーラ信号である入力信号Iと、バイアス設定回路12から供給される正極バイアス値V(+)とを比較し、入力信号Iの振幅レベルが正極バイアス値V(+)以上の場合に「H」となり、正極バイアス値V(+)未満の場合に「L」となるRZ信号を出力する。負極RZ変換回路3は、入力信号Iと、バイアス設定回路12から供給される負極バイアス値V(−)とを比較し、入力信号Iの振幅レベルが負極バイアス値V(−)以下の場合に「H」となり、負極バイアス値V(−)を超える場合に「L」となるRZ信号を出力する。
論理和回路4は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から供給された各々のRZ信号の論理和を演算し、両極RZ信号Aを出力する。位相比較回路5及び周波数発振回路6は、PLLを構成し、論理和回路4から出力された両極RZ信号Aに周波数及び位相同期したクロック信号CLKを生成して出力する。NRZ変換回路7は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKを用いてリタイミングし、論理和回路4から供給された両極RZ信号AをNRZ信号に変換して出力する。
正極検出回路8は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKに基づき、正極RZ変換回路2から出力されるRZ信号のパルスの有無及びパルス幅を監視し、パルスの有無及びパルス幅が1クロック幅を超えたか否かを示す信号を出力する。負極検出回路9は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKに基づき、負極RZ変換回路3から出力されるRZ信号のパルスの有無及びパルス幅を監視し、パルスの有無及びパルス幅が1クロック幅を超えたか否かを示す信号を出力する。
入力断検出回路10は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKを用いて、論理和回路4から出力される両極RZ信号Aの有無を監視し、両極RZ信号Aの状態を示す信号を出力する。具体的には、例えば、両極RZ信号Aが出力されない状態が一定時間以上連続した場合には、「入力断」状態であることを示す信号を出力し、両極RZ信号Aが出力される状態が一定時間以上連続した場合には、「入力有り」状態であることを示す信号を出力する。
符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力される各々のRZ信号が、予め規定された符号化の規則に従っているか否かを監視し、監視結果を示すエラー信号ERR1を出力する。また、図示しないが、符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力される各々のRZ信号から特定のパターンを検出した場合に、この特定のパターンを検出したことをNRZ変換回路7に通知する。この場合、NRZ変換回路7は、受け取った通知に基づき、両極RZ信号Aにおける特定のパターンを所定のパターンに置き換えたNRZ信号を出力する。
予め規定される符号化方式としては、例えば、B8ZS(Bipolar with 8 Zero Substitution)符号化方式を適用することができる。B8ZS符号は、「1」及び「0」の2値で表現される伝送データの値「1」を「正極又は負極のパルス有り」、値「0」を「パルスなし」とすると共に、パルスの極性(「+」及び「−」)を交互に変化させることで符号化したものである。
このB8ZS符号化では、例えば、符号化の対象となる伝送データ中に、連続する8個の値「0」が存在する場合には、この連続する8個の値「0」(「00000000」)を、上述した特定のパターン(「000−+0+−」又は「000+−0−+」)に置き換える。具体的には、「00000000」の直前のパルスの極性が「−」であれば、「00000000」を「000−+0+−」に置き換え、極性が「+」であれば「000+−0−+」に置き換える。
従って、符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力される各々のRZ信号に基づき、特定のパターン「000−+0+−」又は「000+−0−+」を検出した場合に、この特定のパターンを検出したことをNRZ変換回路7に通知する。そして、NRZ変換回路7は、この通知に基づき、両極RZ信号Aにおける特定のパターン「000−+0+−」又は「000+−0−+」を「00000000」に置き換えて、両極RZ信号AをNRZ信号に変換する。
バイアス設定回路12は、入力断検出回路10から供給された、両極RZ信号Aの状態を示す信号に基づき、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を調整して出力する。バイアス設定回路12には、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)に対して予め最大値及び最小値が設定されている。
バイアス設定回路12は、入力断検出回路10から供給された信号に基づき「入力断」状態である場合に、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を予め設定された最小値で出力する。また、バイアス設定回路12は、「入力断」状態が解除され、「入力有り」状態となった場合に、バイアス値の設定動作を開始し、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を予め設定された最大値で出力すると共に、所定時間毎に予め設定された変分ずつ減少させる。
このとき、バイアス設定回路12は、正極検出回路8及び負極検出回路9から供給される信号に基づき、正極検出回路8及び負極検出回路9がRZ信号有りを最初に検出したときの正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を最大値として記憶する。また、正極検出回路8及び負極検出回路9で検出されたRZ信号のパルス幅が1クロック幅を超えたとき、又は、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が予め設定された最小値となったときの正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を最小値として記憶する。
そして、バイアス設定回路12は、記憶された正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の最大値及び最小値の中間値を正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)に設定して出力する。このようにして出力される正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)は、入力信号Iを検出することができるバイアス値の中央レベル(最大マージン)となる。
また、バイアス設定回路12は、符号則誤り検出回路11から供給されたエラー信号ERR1に基づき、符号則誤りを検出した場合にも、上述した正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の設定を行う。
次に、上記構成を有するバイポーラ/ユニポーラ変換回路1の動作について説明する。バイポーラ/ユニポーラ変換回路1に対して入力信号Iが入力されると、入力信号Iは、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に供給される。正極RZ変換回路2は、バイアス設定回路12から供給された正極バイアス値V(+)に基づき、供給された入力信号IをRZ信号に変換する。また、負極RZ変換回路3は、正極RZ変換回路2と同様に、バイアス設定回路12から供給された負極バイアス値V(−)に基づき、供給された入力信号IをRZ信号に変換する。正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3で変換された各々のRZ信号は、論理和回路4に供給される。
論理和回路4は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から供給された各々のRZ信号の論理和を演算し、両極RZ信号Aを生成する。生成されたRZ信号は、NRZ変換回路7及び位相比較回路5に供給される。位相比較回路5及び周波数発振回路6で構成されるPLLは、論理和回路4から供給された両極RZ信号Aに基づきクロック信号CLKを生成する。NRZ変換回路7は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKを用いてリタイミングし、論理和回路4から供給された両極RZ信号AをNRZ信号に変換して出力する。
一方、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力された各々のRZ信号は、正極検出回路8及び負極検出回路9にも各々供給され、正極検出回路8及び負極検出回路9は、クロック信号CLKに基づき、RZ信号のパルスの有無及びパルス幅が1クロック幅を超えたか否かをバイアス設定回路12に通知する。また、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力された各々のRZ信号は、符号則誤り検出回路11にも供給され、符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力される各々のRZ信号が、予め規定されたB8ZS符号化の規則に従っているか否かを監視し、エラー信号ERR1をバイアス設定回路12に供給する。
論理和回路4から出力された両極RZ信号Aは、入力断検出回路10にも供給され、入力断検出回路10は、クロック信号CLKを用いて、両極RZ信号Aの有無を監視し、両極RZ信号Aの状態(「入力断」状態又は「入力有り」状態)をバイアス設定回路12に通知する。
また、論理和回路4から出力された両極RZ信号Aは、バイアス設定回路12にも供給され、バイアス設定回路12は、正極検出回路8及び負極検出回路9から通知されたRZ信号のパルスの状態や、入力断検出回路10から通知された両極RZ信号Aの状態に基づき、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を調整する。調整された正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に供給される。
さらに、バイアス設定回路12は、符号則誤り検出回路11から供給されたエラー信号ERR1に基づき、符号則誤りを検出した場合にも、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を調整する。
ここで、バイアス設定回路12の状態遷移について説明する。バイアス設定回路12は、図2に示すように、入力断検出回路10からの通知や符号則誤り検出回路11の検出結果に応じて、入力信号断状態51、バイアス設定状態52及び定常状態53の3つの状態を遷移する。
まず、バイポーラ/ユニポーラ変換回路1の電源投入時や、入力断検出回路10から「入力断」状態の通知を受けている場合、バイアス設定回路12の状態は、入力信号断状態51である。入力信号断状態51では、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が予め設定された最小値に設定され、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に対して出力される。この状態において、入力断検出回路10から「入力有り」状態の通知を受け、「入力断」状態が解除されると、バイアス設定回路12の状態は、バイアス設定状態52に遷移する。
バイアス設定状態52では、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が予め設定された最大値で出力されると共に、所定時間毎に予め設定された変分ずつ減少される。このとき、正極検出回路8及び負極検出回路9がRZ信号を最初に検出した場合の正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が最大値として記憶される。また、正極検出回路8及び負極検出回路9で検出されたRZ信号のパルス幅が1クロック幅を超えた場合、又は、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が予め設定された最小値となった場合の正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が最小値として記憶される。
そして、記憶された最大値及び最小値の中間値が最適値として決定され、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)に設定される。正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の設定が終了すると、バイアス設定回路12の状態は、定常状態53に遷移する。
定常状態53では、バイアス設定状態52で設定された正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に対して出力される。定常状態53において、符号則誤り検出回路11からの検出結果により符号則誤りが検出されると、バイアス設定回路12の状態が入力信号断状態51に遷移する。
尚、入力信号断状態51、バイアス設定状態52及び定常状態53の何れの状態において、入力断検出回路10から「入力断」状態の通知を受けた場合には、バイアス設定回路12の状態が直ちに入力信号断状態51に遷移する。
このように状態が遷移することにより、バイアス設定回路12は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に対して供給する正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)を設定することができる。
次に、入力信号Iに対して設定された正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)に基づき、外部の送信機器からの送信データを復元する動作について、図3及び図4に示すタイムチャートを参照して具体的に説明する。
まず、図3及び図4に示す各信号について説明する。「送信データ」は、外部の送信機器から送信される、値が「1」及び「0」からなる2値のビット列のディジタルデータを示す。この例では、送信データを「1100010110」とする。「信号S」は、送信データをB8ZS符号化の規則に従ってバイポーラ信号に変換して送信機器から出力される信号の波形を示す。
「入力信号I」は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に入力される信号であり、送信機器から送信された信号Sが、伝送路上のケーブル容量の変化等により劣化した状態の信号を示す。「両極RZ信号A」は、論理和回路4から出力される信号であり、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3によって入力信号Iから変換された各々のRZ信号を論理和演算することにより得られるRZ信号を示す。「クロック信号CLK」は、位相比較回路5及び周波数発振回路6で構成されるPLLから出力される、両極RZ信号Aに同期したクロック信号を示す。
「受信データ」は、NRZ変換回路7から出力されるNRZ信号に基づき、入力信号Iから復元された受信データ(2値のディジタルデータ)であり、両極RZ信号Aをクロック信号CLKの立ち上がりエッジでリタイミングしたデータを示す。「エラー信号ERR1」は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力されるRZ信号がB8ZS符号化の規則に従っているか否かを示す信号である。このエラー信号ERR1の値が「H」である場合に、RZ信号に対する符号則誤りが検出されたことを示す。
図3は、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が最適値に設定された場合における、各信号の状態を示すタイムチャートである。尚、バイポーラ/ユニポーラ変換回路1に対して入力信号Iが入力される時点では、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の設定が終了しているものとし、バイアス設定回路12の状態は、図2に示す定常状態53となっているものとする。
まず、外部の送信機器において、送信データがバイポーラ信号である信号Sに変換される。この例では、送信データがB8ZS符号化の規則に従ってバイポーラ信号に変換されるので、送信データの値が「0」の場合はそのまま、値が「1」の場合は極性が交互に置き換えられる。従って、送信データ「1100010110」は、信号S「+−000+0−+0」に変換される。
このように変換された信号Sが伝送路を介して送信されると、伝送路のケーブル容量の変化等により信号Sが劣化し、図3に示す波形状態でバイポーラ/ユニポーラ変換回路1の正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に入力信号Iとして入力される。
正極RZ変換回路2は、入力信号Iと正極バイアス値V(+)とを比較し、入力信号Iを、正極バイアス値V(+)以上となる場合に「H」となるRZ信号に変換する。すなわち、正極RZ変換回路2は、正極バイアス値V(+)に基づき入力信号Iの振幅x1、x2及びx3を検出し、これらの振幅に対応するパルスX1、X2及びX3を有するRZ信号を生成する。
負極RZ変換回路3は、入力信号Iと負極バイアス値V(−)とを比較し、入力信号Iを、負極バイアス値V(−)以下となる場合に「H」となるRZ信号に変換する。すなわち、負極RZ変換回路3は、負極バイアス値V(−)に基づき入力信号Iの振幅y1及びy2を検出し、これらの振幅に対応するパルスY1及びY2を有するRZ信号を生成する。
そして、論理和回路4は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力された各々のRZ信号の論理和を演算し、パルスX1、X2、X3、Y1及びY2を有する両極RZ信号Aを生成する。
次に、NRZ変換回路7は、論理和回路4で生成された両極RZ信号Aを、クロック信号CLKの立ち上がりエッジ(図3のタイミングa〜j)でリタイミングし、RZ信号をNRZ信号に変換することにより、受信データを得る。このとき、クロック信号CLKの立ち上がりのタイミングにおいて両極RZ信号Aが「H」の場合に、受信データの値が「1」となり、両極RZ信号Aが「L」の場合に、受信データの値が「0」となる。この例では、タイミングa、b、f、h及びiにおける両極RZ信号Aが「H」であるので、得られる受信データは「1100010110」となり、送信データと同一ビット列のデータとなる。
ここで、符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力されたRZ信号を監視し、RZ信号がB8ZS符号化の規則に従っているか否かを判断する。具体的には、符号則誤り検出回路11は、B8ZS符号化の規則に従い、パルスの極性「+」及び「−」が交互に出現しているか否か、また、特定のパターン「000−+0+−」又は「000+−0−+」が存在するか否かを判断する。
この例では、両極RZ信号Aにおいて、極性が「+」となるパルスX1、X2及びX3がタイミングa、f及びiで出現し、極性が「−」となるパルスY1及びY2がタイミングb及びhで出現しており、極性「+」及び「−」が交互に出現する。また、特定のパターンも存在しない。そのため、符号則誤り検出回路11は、RZ信号がB8ZS符号化の規則に従っていると判断し、値が常時「L」となるエラー信号ERR1を出力する。
これにより、バイアス設定回路12は、RZ信号の符号則誤りがないものと判断し、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の設定を維持する。従って、バイアス設定回路12の状態は、図2に示す定常状態53のままとなる。
図4は、バイアス値を設定した後、何らかの理由により入力信号Iの振幅レベルが小さくなり、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が適切な値でなくなった場合における、各信号の状態を示すタイムチャートである。尚、この例では、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)として、図3の例と同一の値が設定されているものとし、バイポーラ/ユニポーラ変換回路1に対して入力信号Iが入力される時点では、バイアス設定回路12の状態は、図2に示す定常状態53となっているものとする。
図3の例と同様に、まず、外部の送信機器において、送信データがB8ZS符号化の規則に従って信号Sに変換される。これにより、送信データ「1100010110」は、信号S「+−000+0−+0」に変換される。
信号Sが伝送路を介して送信されると、伝送路のケーブル容量の変化等により信号Sが劣化し、図4に示す波形状態で正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に入力信号Iとして入力される。尚、この例では、送信機器の出力異常等により、図3の例と比較して信号Sの振幅レベルが小さくなっている。そのため、入力信号Iの振幅レベルも小さくなる。
この場合、入力信号Iの振幅レベルがバイアス値に近づき、相対的にバイアス値が最適値となる中央レベルから大きく離れてしまう。そのため、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3で生成されるRZ信号のパルス幅が短くなり、場合によっては、入力信号Iの振幅を検出できずにパルスが生成されないことがある。
正極RZ変換回路2は、入力信号Iと正極バイアス値V(+)とを比較し、入力信号Iを、正極バイアス値V(+)以上となる場合に「H」となるRZ信号に変換する。ここで、上述したように、正極バイアス値V(+)が最適値でないため、正極RZ変換回路2は、正極バイアス値V(+)に基づき入力信号Iの振幅x1’x3’を検出するが、振幅x2’の振幅レベルが正極バイアス値V(+)未満となるために検出できず、振幅x1’及びx3’に対応するパルスX1’及びX3’のみを有するRZ信号を生成する。
負極RZ変換回路3は、入力信号Iと負極バイアス値V(−)とを比較し、入力信号Iを、負極バイアス値V(−)以下となる場合に「H」となるRZ信号に変換する。すなわち、負極RZ変換回路3は、負極バイアス値V(−)に基づき入力信号Iの振幅y1’及びy2’を検出し、これらの振幅に対応するパルスY1’及びY2’を有するRZ信号を生成する。
そして、論理和回路4は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力された各々のRZ信号の論理和を演算し、パルスX1’、X3’、Y1’及びY2’を有する両極RZ信号Aを生成する。
次に、NRZ変換回路7は、論理和回路4で生成された両極RZ信号Aを、クロック信号CLKの立ち上がりエッジ(図4のタイミングa〜j)でリタイミングし、RZ信号をNRZ信号に変換することにより、受信データを得る。このとき、タイミングa、b、h及びiにおける両極RZ信号Aが「H」であることから、得られる受信データは「1100000110」となる。この受信データは、送信機器からの送信データ「1100010110」と異なるビット列のデータとなり、送信データを正しく復元できなかったことを示す。
これは、本来、正極RZ変換回路2において振幅x2’を検出する必要があるが、設定された正極バイアス値V(+)が入力信号Iの振幅レベルに近く、最適値に設定されていないために、振幅x2’を検出できないことでパルスX2’を生成できなかったためである。
ここで、符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力されたRZ信号を監視し、RZ信号がB8ZS符号化の規則に従っているか否かを判断する。しかしながら、この例では、両極RZ信号AにおけるパルスX1’、Y1’、Y2’及びX3’の極性の順序が「+−−+」となり、極性「−」が連続するため、パルスの極性「+」及び「−」が交互に出現するというB8ZS符号化の規則に違反することになる(バイオレーション)。そのため、符号則誤り検出回路11は、RZ信号がB8ZS符号化の規則に違反すると判断し、違反のタイミングhで値が「H」となるエラー信号ERR1を出力する。
このエラー信号ERR1により、バイアス設定回路12は、RZ信号の符号則誤りが検出されたと判断し、状態が図2に示す入力信号断状態51に遷移する。そして、入力断検出回路10からの通知により「入力断」状態が解除されると、バイアス設定回路12の状態が入力信号断状態51からバイアス設定状態52に遷移し、バイアス設定回路12は、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の再設定を行う。
以上のように、第1の実施形態によれば、バイポーラ信号である入力信号を変換したRZ信号が所定の符号化規則に従った信号であるか否かを判断し、符号則誤りを検出した場合に、入力信号に対するバイアス値を再設定するため、入力信号の振幅レベルが変化した場合でも、最適なバイアス値を設定することができ、より信頼性を高めることが可能になる。
次に、本発明にかかるバイポーラ/ユニポーラ変換回路の第2の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、符号則誤りを検出した場合に、入力信号に対するバイアス値を再設定することができるが、データを正しく復元することができない。そこで、第2の実施形態では、符号則誤りを検出した場合に、バイアス値を再設定すると共に、誤って復元されたデータを補正する。
図5は、本発明にかかるバイポーラ/ユニポーラ変換回路20の第2の実施形態を示す。尚、以下の説明においては、上述の第1の実施形態によるバイポーラ/ユニポーラ変換回路1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
正極検出回路22は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKに基づき、正極RZ変換回路2から出力されるRZ信号のパルスの有無及びパルス幅を監視して、監視結果をバイアス設定回路12に通知すると共に、パルス幅が1クロック幅を超えた場合に、エラー信号ERR2をNRZ変換回路21に対して出力する。
負極検出回路23は、正極検出回路22と同様に、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKに基づき、負極RZ変換回路3から出力されるRZ信号のパルスの有無及びパルス幅を監視して、監視結果をバイアス設定回路12に通知すると共に、パルス幅が1クロック幅を超えた場合に、エラー信号ERR3をNRZ変換回路21に対して出力する。
NRZ変換回路21は、周波数発振回路6から供給されたクロック信号CLKを用いてリタイミングし、論理和回路4から供給された両極RZ信号AをNRZ信号に変換することにより得られる受信データを出力する。また、NRZ変換回路21は、正極検出回路22及び負極検出回路23から供給されたエラー信号ERR2及びERR3に基づき、NRZ信号に基づく受信データを補正する。具体的には、エラー信号ERR2及びERR3の論理和を反転したデータと、受信データとの論理積を演算することにより、受信データをビット単位でマスクする。
次に、外部の送信機器からの送信データを復元する動作について、図6に示すタイムチャートを参照して具体的に説明する。図6は、バイアス値を設定した後、何らかの理由により、図3と比較して入力信号Iの振幅レベルが大きくなり、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が適切な値でなくなった場合における、各信号の状態を示すタイムチャートである。尚、この例では、正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)として、図3の例と同一の値が設定されているものとする。
図6において、「エラー信号ERR2/ERR3」は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力されるRZ信号のパルス幅が1クロック幅を超えているか否かを示す信号である。このエラー信号ERR2/ERR3の値が「H」である場合に、復元した受信データの対応するビットが誤りであることを示す。
図3の例と同様に、まず、外部の送信機器において、送信データがB8ZS符号化の規則に従って信号Sに変換される。これにより、送信データ「1100010110」は、信号S「+−000+0−+0」に変換される。
信号Sが伝送路を介して送信されると、伝送路のケーブル容量の変化等により信号Sが劣化し、図6に示す波形状態で正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3に入力信号Iとして入力される。尚、この例では、何らかの理由により、図3の例と比較して信号Sの振幅レベルが大きくなっている。そのため、入力信号Iの振幅レベルも大きくなる。
この場合、入力信号Iの振幅レベルがバイアス値から遠ざかり、相対的にバイアス値が最適値となる中央レベルから大きく離れてしまう。この状態は、例えば、図3に示す状態において、バイアス値が最小値近傍に設定された場合と等しい状態である。この場合には、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3で生成されるRZ信号のパルス幅が長くなり、場合によっては、パルス幅がクロック信号CLKの1クロック幅を超えてしまうことがある。
正極RZ変換回路2は、入力信号Iと正極バイアス値V(+)とを比較し、入力信号Iを、正極バイアス値V(+)以上となる場合に「H」となるRZ信号に変換する。すなわち、正極RZ変換回路2は、正極バイアス値V(+)に基づき入力信号Iの振幅x1”、x2”及びx3”を検出し、これらの振幅に対応するパルスX1”、X2”及びX3”を有するRZ信号を生成する。
負極RZ変換回路3は、入力信号Iと負極バイアス値V(−)とを比較し、入力信号Iを、負極バイアス値V(−)以下となる場合に「H」となるRZ信号に変換する。すなわち、負極RZ変換回路3は、負極バイアス値V(−)に基づき入力信号Iの振幅y1”及びy2”を検出し、これらの振幅に対応するパルスY1”及びY2”を有するRZ信号を生成する。
尚、この例では、入力信号Iの振幅レベルに対して、設定された正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が小さいため、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3で生成されるRZ信号のパルスX1”、X2”、X3”、Y1”及びY2”のパルス幅は、クロック信号CLKの1クロック幅よりも長くなる。
論理和回路4は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力された各々のRZ信号の論理和を演算し、パルスX1”、X2”、X3”、Y1”及びY2”を有する両極RZ信号Aを生成する。
次に、NRZ変換回路21は、論理和回路4で生成された両極RZ信号Aを、クロック信号CLKの立ち上がりエッジ(図6のタイミングa〜j)でリタイミングし、RZ信号をNRZ信号に変換することにより、受信データを得る。この例では、タイミングa、b、c、f、g、h、i及びjにおける両極RZ信号Aが「H」であるので、得られる受信データは「1110011111」となる。この受信データは、送信機器からの送信データ「1100010110」と異なるビット列のデータとなり、送信データを正しく復元できなかったことを示す。
これは、入力信号Iの振幅レベルに対して、設定された正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)が小さいことから、両極RZ信号Aのパルス幅がクロック信号CLKの1クロック幅より長くなり、連続するクロック信号CLKの立ち上がりエッジのタイミングで同一のパルスをリタイミングしてしまうためである。
具体的には、タイミングb及びcにおいてパルスY1”をリタイミングすると共に、タイミングf及びgにおいてパルスX2”をリタイミングし、さらに、タイミングi及びjにおいてパルスX3”をリタイミングする。これにより、本来、タイミングc、g及びjにおいて復元される受信データの値は「0」となるはずが、誤って値「1」となる。
ここで、符号則誤り検出回路11は、正極RZ変換回路2及び負極RZ変換回路3から出力されたRZ信号を監視し、RZ信号がB8ZS符号化の規則に従っているか否かを判断する。しかしながら、この例では、極性の順序が「+−−00++−++」となり、同一の極性が連続するバイオレーションが発生し、B8ZS符号化の規則に違反するため、符号則誤り検出回路11は、RZ信号がB8ZS符号化の規則に違反すると判断する。
また、正極検出回路22及び負極検出回路23は、RZ信号のパルス幅を監視しており、パルス幅が1クロック幅を超えるタイミングで、値が「H」となるエラー信号ERR2及びERR3を出力する。
すなわち、正極検出回路22は、パルスX2”及びX3”のパルス幅が1クロック幅を超えることから、タイミングg及びjにおいて値が「H」となる信号「LLLLLLHLLH(又は0000001001)」をエラー信号ERR2として出力する。また、負極検出回路23は、パルスY1”のパルス幅が1クロック幅を超えることから、タイミングcにおいて値が「H」となる信号「LLHLLLLLLL(又は0010000000)」をエラー信号ERR3として出力する。これにより、NRZ変換回路21に供給されるエラー信号ERR2及びERR3の論理和は、「LLHLLLHLLH(又は0010001001)」となる。
NRZ変換回路21は、上述のようにして復元した受信データ「1110011111」を、正極検出回路22及び負極検出回路23から供給されたエラー信号ERR2及びERR3の論理和「0010001001」に基づき、補正する。ここで、エラー信号ERR2及びERR3の論理和が示す値のうち、値「1」は、エラーがあった箇所を示しているため、この値「1」の位置に対応する受信データのビット値を反転させることにより、受信データを補正することができる。
従って、NRZ変換回路21は、復元した受信データ「1110011111」と、エラー信号ERR2及びERR3の論理和を反転したデータ「1101110110」との論理積を演算することにより、補正した受信データ「1100010110」を得る。この受信データは、送信機器からの送信データ「1100010110」と同一ビット列のデータとなり、送信データを正しく復元できたことを示す。
尚、上述の例では、バイアス値が設定された状態で入力信号Iを受信した場合における受信データの補正方法について説明したが、これはこの例に限られない。例えば、バイアス値の設定中(バイアス値を最大値から最小値まで、所定時間毎に変化させて最適値を探索している間、等)においても、この補正方法を適用することができる。これにより、例えば、設定中のバイアス値が最小値近傍である場合で、RZ信号のパルス幅が1クロック幅を超えたときには、同様に受信データの補正が可能となるため、最初から正しい受信データを得ることができる。
以上のように、第2の実施形態によれば、入力信号を変換したRZ信号のパルス幅が1クロック幅を超えた場合に、符号則誤りの箇所を示すエラー信号を出力し、誤って復元した受信データをエラー信号に基づいて補正するため、受信データを正しく復元することが可能になる。
次に、本発明にかかるバイポーラ/ユニポーラ変換回路の第3の実施形態について説明する。上述した第1の実施形態では、送信機器から送信データが出力されてから入力信号を受信するまでの間に、何らかの理由によって入力信号の振幅レベルが変化した場合に、入力信号の符号則誤りを検出して、入力信号に対するバイアス値の再設定動作を行う。しかしながら、伝送路上で発生するビットエラー等、入力信号の振幅レベル変動に起因するエラー以外のエラーに基づいて符号則誤りを検出した場合にも、入力信号に対するバイアス値の再設定動作を行ってしまう。そこで、第3の実施形態では、伝送路上で発生するビットエラー等による不要なバイアス値の再設定動作を回避する。
図7は、本発明にかかるバイポーラ/ユニポーラ変換回路30の第3の実施形態を示す。尚、以下の説明においては、上述の第1の実施形態によるバイポーラ/ユニポーラ変換回路1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。バイポーラ/ユニポーラ変換回路30は、図1に示すバイポーラ/ユニポーラ変換回路1に対して保護回路31をさらに備える。
保護回路31は、符号則誤り検出回路11から供給される符号則誤りの検出結果に基づき、符号則誤りの回数(エラー回数)が所定回数を超えた場合に、エラーを検出したことを示す信号を出力する。保護回路31には、符号則誤りの回数に対する閾値が予め設定される。この閾値は、例えば、伝送路上のビットエラーの発生確率等を考慮して設定される。保護回路31は、エラー回数をカウントし、所定時間内にカウントされたエラー回数が閾値を超えた場合に、符号則誤りの検出結果をバイアス設定回路12に通知する。
バイアス設定回路12は、保護回路31から通知された符号則誤りの検出結果に基づき、入力信号Iに対する正極バイアス値V(+)及び負極バイアス値V(−)の再設定を行う。
このように、伝送路上のビットエラーの発生確率等を考慮して符号則誤りの回数に対する閾値を設定するため、所定時間内に検出される所定回数内の符号則誤りは、伝送路上で発生したビットエラー等の、入力信号の振幅レベル変動に起因する符号則誤り以外のエラーとみなすことができる。
以上のように、第3の実施形態によれば、符号則誤りの検出結果に基づく所定時間内の符号則誤りの回数が所定回数を超えた場合に、入力信号に対するバイアス値を再設定するため、入力信号の振幅レベル変動に起因する符号則誤り以外のエラーに基づく不要なバイアス値の再設定を回避することが可能になる。
以上、本発明の第1、第2及び第3の実施形態について説明したが、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述した第2及び第3の実施形態を組み合わせるようにしてもよい。これにより、入力信号の変化に対してより強く、信頼性の高いバイポーラ/ユニポーラ変換回路を提供することができる。